特許第6670249号(P6670249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670249流体の流れの物理パラメータを感知可能な素子の製造方法及び対応する感知素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670249
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】流体の流れの物理パラメータを感知可能な素子の製造方法及び対応する感知素子
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/18 20060101AFI20200309BHJP
【FI】
   G01K7/18 A
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-558079(P2016-558079)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(65)【公表番号】特表2017-509888(P2017-509888A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】EP2015055583
(87)【国際公開番号】WO2015140182
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2018年1月31日
(31)【優先権主張番号】1452188
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514100153
【氏名又は名称】オキシトロル エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】グラ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ドナ,カトリーヌ
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−239433(JP,A)
【文献】 米国特許第5161894(US,A)
【文献】 国際公開第2014/061069(WO,A1)
【文献】 特開平4−107277(JP,A)
【文献】 特開2014−16158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/18
H01C 1/02,1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流れの少なくとも一つの物理パラメータを感知可能な素子を製造する方法であって、
プレアセンブルされた感知素子が組み立てられた感知素子になることを可能にする、単一の浸漬サイクルを含み、
前記単一の浸漬サイクルは、前記プレアセンブルされた感知素子の芯を、溶融ガラス中に浸漬することを含み、前記溶融ガラスは、400℃から1200℃の範囲のある温度において液体の形態であり、
前記芯は少なくとも二つの長手方向の通路を有し、少なくとも2本巻の巻線に接続される少なくとも二本の伝導性接続ワイヤが前記通路を長手方向に通過し、前記巻線は、前記物理パラメータを検出するための抵抗回路又は誘導性回路を形成するために適しており、
前記浸漬により、単一の浸漬において、前記通路内で前記接続ワイヤを封止し、前記通路を埋め、前記芯の外側を被覆することが可能となり、
前記芯は、前記単一の浸漬サイクルの終わりに、封止され且つ被覆され、
前記単一の浸漬サイクルは、
前記溶融ガラス中における、第1の速度での前記芯の部分浸漬のステップを有し、
その後、前記第1の速度よりも速い第2の速度での、前記溶融ガラス中における、前記芯の完全な浸漬のステップが続く、
方法。
【請求項2】
前記2本巻の巻線は、前記芯の外表面上に巻かれており、
前記浸漬により、前記芯の外側の被覆が可能になる、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記巻線は、前記長手方向の通路の内側で巻かれた“らせん”であり、
前記浸漬により、前記接続ワイヤを前記巻線上の適切な位置に保持し、前記巻線のターンの間の空間を制御することが可能になる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記プレアセンブルされた感知素子は、前記芯を取り囲む管を有し、
前記管は、ガラス又はセラミックで構成され、
前記管により、浸漬中の前記被覆の最小厚さが制御可能になる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記単一の浸漬サイクルは、前記プレアセンブルされた感知素子を予備加熱し、クリーニングするステップを含み、
当該ステップは、前記プレアセンブルされた感知素子を浸漬することなく、前記プレアセンブルされた感知素子を前記溶融ガラスに接近して配置するステップを有し、
前記溶融ガラスは前記プレアセンブルされた感知素子を加熱し、前記プレアセンブルされた感知素子が前記溶融ガラスの温度に近い温度、すなわち溶融ガラスの温度の75%と95%との間の温度に達する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記単一の浸漬サイクルは、
前記溶融ガラスから前記芯を、数mm/秒の速度で持ち上げるステップを含み、
その後、炉の高温領域から前記芯を、より速い速度で持ち上げるステップを含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
単一の浸漬サイクルを含む前記ステップに続いて、最終的な感知素子を得るために、中程度の制御された温度で前記ガラスを熱処理することにより、応力緩和による、前記組み立てられた感知素子の電気的挙動を安定化するステップ、
を含む、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記接続ワイヤ及び前記巻線は、白金合金で構成され、
前記芯は、例えばイットリウム酸化物又はマグネシウム酸化物を加えることにより、一部又は全体が安定化ジルコニウムで構成される、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度、振動、速度又は圧力などの、流体流れの少なくとも一つの物理パラメータを測定するための装置の感知素子を製造する方法に関する。そのような測定装置は、特に航空学において用途を有する。
【背景技術】
【0002】
流体流れの少なくとも一つの物理パラメータを感知可能な素子は、特に航空学において、温度変化、供給電流変化、衝撃、振動、圧力及び流体の流れる力に可能な限り耐えながら、侵襲的な環境内で動作することができなくてはならない。
【0003】
感知素子は、芯の外表面上に巻かれた1本巻又は2本巻の巻線に接続する伝導性接続ワイヤが長手方向に通過する細長い主軸、並びに細長い芯及びその1本巻又は2本巻の巻線を取り囲む絶縁ガラス被覆を有することが知られる。
【0004】
そのような感知素子を製造するため、通路の内側に伝導性接続ワイヤを封止するために、ガラス及び水の混合物が、巻かれた芯に及び接続ワイヤが通過する長手方向の通路の中にブラシを用いて塗布される。次いで芯は、乾かされ、炉の中で焼かれる。そのような作業は、良好な品質の被覆及び封止を保証するために数回繰り返される。
【0005】
製造中に、ガラスで外側を覆うため、巻かれた芯は、周囲温度でガラス及び水の混合物内に浸漬され、次いで乾かされ、炉で焼かれる。ここでも同様に、そのような作業は、ガラスの所望の厚さを得るために数回繰り返される。
【0006】
この浸漬が行われることができない状況において、外側ガラス被覆は、周囲温度でガラス及び水の混合物を塗布するためにブラシを使用することによって作り出されて、また次いで乾かされ、炉で焼かれもよい。ここでも同様に、そのような作業は、ガラスの所望の厚さを得るために数回繰り返される。
【0007】
製造中に、芯の穴の内側に接続ワイヤを封止するために、セラミックスリップ(泥漿)(周囲温度の水とガラス質の且つ/或いは水晶質の酸化物との混合物)が、スリップ内への浸漬及び真空への曝露によって及び/又はブラシを用いて、穴の中に取り込まれ、次いでもう一度乾かされ、炉で焼かれる。その方法によれば、そのような作業は、所望の封止品質を得るために数回繰り返されてもよい。
【0008】
一つの課題は、そのような方法は、数回繰り返されなければならない多くのステップを有するので、複雑なことである。スリップを用いた場合は、ひとたびこのスリップが焼かれると通路を交換することが難しく、それは感知素子を弱くするので、通路の内側の末端の封止は改良され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題を解決し、この目的のために、流体流れの少なくとも一つの物理パラメータを感知可能な素子を製造する方法であって、プレアセンブルされた感知素子(e’le’ment sensible pre’assemble’)が組み立てられた(assemble’)感知素子になることを可能にする、単一の浸漬サイクルを含み、単一の浸漬サイクルは、溶融ガラス内への、すなわち液状且つ高温のガラス内への、プレアセンブルされた感知素子の芯の浸漬を含み、芯は少なくとも二つの長手方向の通路を有し、少なくとも2本巻の巻線に接続する少なくとも二本の伝導性接続ワイヤが通路を長手方向に通過し、巻線は、物理パラメータを検出するための抵抗回路又は誘導性回路を形成するために適しており、浸漬は、単一の浸漬において通路の内側に接続ワイヤを封止すること、通路を満たすこと及び芯の外側を被覆することを可能にし、芯は、単一の浸漬サイクルの終わりに、封止され且つ被覆され、単一の浸漬サイクルは、低い速度での、溶融ガラス内への芯の部分的浸漬のステップ、及び続いて、速い速度での、溶融ガラス内への芯の完全な浸漬のステップ、を含む、方法、を提案する。
【0010】
本発明は、有利には、単独で又はそれらの技術的可能な組み合わせのいずれかで採用される以下の複数の特徴によって完成される。
【0011】
2本巻の巻線は、芯の外表面上に巻かれており、浸漬は、このようにして巻かれた芯の外側を被覆することを可能にする。
【0012】
巻線は、長手方向の通路の内側で巻かれた“らせん”であり、浸漬は、接続ワイヤを巻線上に適切に保持し、巻線のターン(spires)の間の間隔を制御することを可能にする。
【0013】
プレアセンブルされた感知素子は、芯を取り囲む管を有し、管は、好ましくはガラス又はセラミックで作られており、管は、浸漬中の被覆の最小厚さを制御することを可能にする。
【0014】
単一の浸漬サイクルは、プレアセンブルされた感知素子の予熱及びクリーニングのステップを含み、当該ステップは、プレアセンブルされた感知素子が溶融ガラスに近い温度に達するように、プレアセンブルされた感知素子を溶融ガラスに接近して配置することから成る。
【0015】
単一の浸漬サイクルは、溶融ガラスからの芯の遅い抜き取りのステップ、及び続いて、炉の熱い領域からの芯の急速な抜き取りのステップ、を含む。
【0016】
方法は、単一の浸漬サイクルから成るステップに続いて、最終的な感知素子を得るために、穏やか且つ制御された温度でガラスを焼き戻すことによる応力緩和による、組み立てられた感知素子の電気的挙動の安定化のステップ、を含む。
【0017】
接続ワイヤ及び巻線は、白金合金で作られており、芯は、例えばイットリウム酸化物又はマグネシウム酸化物を加えることによって、部分的又は全体的に安定化されたジルコニウムで作られている。
【0018】
溶融ガラスは、400℃と1200℃の間の温度、典型的には950℃の温度を有する。
【0019】
本発明はまた、本発明による方法によって得られた感知素子、並びに一つのそのような感知素子を有する測定装置に関する。
【0020】
したがって、本発明は、芯、好ましくはセラミックに完璧に適合した特徴(高温粘性、制御された膨張、弾性、焼き入れ適性、化学的侵襲性等)を備えた溶融ガラスを、接続ワイヤ及び巻線の材料に使用すること、並びに、芯を溶融ガラス内に浸漬して、同じ作業の間に、以下を引き起こすことに本質的なものがある:
‐長手方向の通路内を上がるガラスによる接続ワイヤの封止(液体ガラスの十分な通過及び/又は毛管現象);
‐任意の可能な不使用の通路の閉塞(芯が標準化される場合);
‐芯上の液体ガラスの表面張力による外側の被覆。
【0021】
巻線が、芯の内側の、“らせん”である場合には、後者は、芯の複数の穴(二つ又は四つの穴)の内側で保護されるが、溶融ガラス内への浸漬によって接続ガラスと共に適切に保持される。これは、らせん巻線のターンに機械的に応力をかけることなく、接続ワイヤが有効に封止されるまで徐々に穴を満たすことを可能にする。
【0022】
具体的には、芯がジルコニウムで作られており、接続ワイヤが白金で作られている場合に、ジルコニウムの熱膨張係数が白金の熱膨張係数に十分に近いため、ターンは、粒子が化学的に結合されていない圧縮された粉末などの“柔軟な”ものよりはむしろ、ガラスなどの“剛性”材料によって適切に保持されることができ、それ故に高い振動応力の下での挙動を改善し、また、抵抗回路と芯の外表面との間の非常に高い誘電性を容易に保証することを可能にする。その上に、(白金に直接的に接着されたか、又は例えばニッケル等のより容易に酸化可能な金属による白金の微細な電気的な結合を介して接着された)ほんの数マイクロメートルのセラミックエナメルの層を用いて最初に覆われた白金ワイヤを使用することによって、素子の電気抵抗の校正は、接続ワイヤ及びターンがセラミック芯の穴の中に挿入すらされる前に、“直線部分上で”行われ得る。加えて、そのような構成において、セラミック芯は、もはや必ずしも引き延された形状でも、一定の断面でなくてもよい。この代替は、このようにして、測定されるべき領域、センサの本体上でのその機械的組み立て又は任意の他の幾何学的制約との関連で、セラミックの形状を最適化することも可能にするであろう。このセラミック部分は更に、我々の現在の芯のように押し出しによって得られ得るが、CIM(セラミック射出成形)又は密度が高いバルク材料への機械加工によっても得られ得る。
【0023】
感知素子がガラス又はセラミックの管を有する場合には、後者は、製造コストを低減しつつ、より高い電気応力に耐えることができる。この設計は、以下の主な利点を有する。
‐現在のセラミック芯を保ち、また、中心セラミック芯の機械加工を単純化する(通路が現れるまで応力緩和することが、半球状の末端を作り出すことよりも少ない巧妙さ及び時間を要求する)こと;
‐巻かれたワイヤ/接続ワイヤを“見ないで”操作することを回避すること;
‐巻線と外側との間の高い誘電性を保証すること:
‐半径方向:管絶縁体及びガラスの最小厚さ、
‐軸方向:ワイヤとの関連での芯の余分な長さ。
【0024】
さらに、管の厚さのおかげで、溶融ガラスは、もはや外側被覆の著しい厚さを形成する必要がない。
【0025】
有利には、非常に流動性の高いガラスの使用は、この外側被覆の厚さを、及びそれ故に不整(水滴効果)さえも低減することを可能にする。毛管効果は、この非常に流動性の高いガラスを、満たされた内部体積の内側に適切に保持することを可能にする。
【0026】
本発明はまた、本発明によって得られる感知素子を提案する。
【0027】
最後に、本発明はまた、本発明による感知素子を有する測定装置を提案する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の他の特徴、目的及び利点は、以下の記述から明らかになるであろう。以下の記述は、純粋に説明のためであり、非限定的である。また、以下の記述は、添付の図面を参照して読まれなくてはならない。
図1】本発明による、感知素子の全体図を示す。
図2】本発明による、感知素子の斜視図を示す。
図3】本発明による、感知素子の断面図を示す。
図4】本発明による、感知素子の伝導性ワイヤを含む長手方向の通路の部分図を示す。
図5】本発明による、感知素子の断面図を示す。
図6】本発明による、感知素子の断面図を示す。
図7】本発明による、感知素子を製造する方法の複数のステップを示す。
図8】本発明による、感知素子を製造する方法の複数のサブステップを示す。
図9a図8を参照して記述される、複数のサブステップの実行を示す。
図9b図8を参照して記述される、複数のサブステップの実行を示す。
図9c図8を参照して記述される、複数のサブステップの実行を示す。
図9d図8を参照して記述される、複数のサブステップの実行を示す。
図9e図8を参照して記述される、複数のサブステップの実行を示す。 全ての図面について、同様の要素は同一の参照番号を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、流体流れの少なくとも一つの物理パラメータを感知可能な素子1は、細長い本体2を有し、本体2から伝導性接続ワイヤ3が延びる。
【0030】
図2を参照すると、細長い本体2は特に細長い芯4を有し、巻線5に接続する伝導性接続ワイヤ3が芯4を長手方向に通過し、巻線5は、芯4の周りに巻かれた伝導性ワイヤから成る接続ワイヤ3の数に依存して少なくとも2本巻である。
【0031】
図2に見られるように、巻線5は、芯4の外表面上に巻かれている。
【0032】
ガラス又はガラス‐セラミックで作られた絶縁被覆6は、細長い芯4及びその巻線5を取り囲み、ワイヤの強度及び外部環境に対する素子の水密性を確かにする。ガラス又はガラス‐セラミックの絶縁被覆は、(以下に詳述されるように)特定の浸漬サイクルの間に溶融ガラス内に芯4を浸漬することによって得られる。
【0033】
図3を参照すると、細長い芯4は、伝導性接続ワイヤ3を通すための、少なくとも二つの長手方向の通路7を有する。
【0034】
有利には、接続ワイヤ3は、細長い芯4の他端からアクセス可能であり、溶接又はハンダ8を使用して、その後芯4の外表面上に巻かれた巻線5に接続される。接続ワイヤ3は、摩擦によってそれらを長手方向の通路の内側に適切により良く保持するために、有利には“Z”字形状に予め形作られている。図4は、“Z”字形状に予め形作られた接続ワイヤ3と共に、長手方向の通路7の部分図を示す。
【0035】
代替的に、図5を参照すると、2本巻の巻線は、長手方向の通路7の内側で巻かれた“らせん”である。
【0036】
接続ワイヤ3及び巻線5は、それらが高温で酸化しないように、好ましくは白金又はパラジウムのような貴金属で作られている。
【0037】
芯4は、その細長い幾何学的形状のおかげで、従来から押し出しによって得られる。
【0038】
一つの例示として、接続ワイヤ3は、10分の1ミリメートル又は10分の5ミリメートル程度の直径を通常有し、巻線は、10マイクロメートルから50マイクロメートル程度の直径をもつ白金ワイヤから成る。
【0039】
さらに、芯4は、典型的にはセラミックであり、特にイットリウム又はマグネシウムを含む(すなわち、ジルコニウムが数パーセントのイットリウム酸化物又はマグネシウム酸化物を用いて安定化されている)。理解されるように、これは、感知素子の主な構造である。
【0040】
芯4の材料は、芯に以下の性質を与える。
‐それは、機械的に抵抗力があり、機械的応力(屈曲、ねじれ、牽引/圧縮、振動、衝撃等)に耐える。
‐それは、伝導性巻線の妨げとなることを回避するために十分に電気的に絶縁性である(絶縁抵抗及び誘電強度)。
‐それは、両方の動作温度(−260℃/+500℃)に耐えるのみならず、浸漬サイクルの一部分として含まれる温度(400℃から1200℃)にも耐える。
‐それは、動作中の熱衝撃(最大で150℃/秒)に耐えるのみならず、浸漬サイクルの間に直面するはるかに厳しい熱衝撃(摂氏数百度の範囲を超え、およそ2000℃/秒)にも耐える。
‐異なる熱膨張によって、それが白金巻線に関して課す圧迫は、通常の動作温度において無視できるほどであり、白金の自然な膨張は、その電気的応答に直接的に影響を与え(数1)、感知素子がカレンダーバンドゥーセン(CALLENDAR‐VAN DUSSEN)の法則に接近して従うことを可能にする。
【数1】
‐それは、巻線によって取り込まれる熱測定の妨げとなることを回避するために十分に熱的に絶縁性である。
‐それは、取り付け区域の温度を巻き付け区域に伝達すること(軸方向の熱伝導)を回避するために十分に熱的に絶縁性である。
‐それは、その応答時間を最小化するために、測定されるべき領域に巻線が可能な限り接近すること(小型の本体内に封入された素子)又は流体流れが可能な限り多く巻線と接触すること(素子の周りの空気熱流れ)を可能にするために最適な形状を有する。加えて、その回転形状は、それが流体流れの角度方向を感知可能であることを阻む。
【0041】
さらに、ジルコニウムの使用は、RTDs(抵抗温度検出器又は装置)のために伝統的に使用されるセラミック:フォルステライト又はアルミニウムに関して、より良好な熱機械的性能を可能にする。これは、ジルコニウムが、特に有益な熱的性質:非常に低い熱伝導性及び比熱を有するからであり、それは、比較的高い単位体積当たりの質量に関わらず、低い熱噴出性(捕捉面はあまり熱を交換しないため、良い“熱スクリーン”)、非常に低い熱拡散性(表面に捕捉された熱は材料の中にあまり拡散しないため、良い“熱バリア”)、を引き起こす。安定化されたジルコニウムはまた、優れた機械的特性を有する:屈曲に対する良好な機械的抵抗性、比較的穏やかなヤング率(“剛性”及び“脆い”というよりもむしろ“弾性的な”応答)。これらの機械的な性質はまた、厚さを更に低減することによって、芯を小型化することを可能にする。
【0042】
さらに、ジルコニウムは、航空学において巻線用に使用される主な金属材料(主に白金合金)に非常に近い熱膨張率を有し、それは、温度によるそれらの電気的応答の妨害を最小化する。
【0043】
さらに、マグネシウムは本来非常に親水性が高いが、ジルコニウムの安定剤としてのその使用は、湿熱に対する後者の感受性を最小化すること、及び如何なる外部の機械的応力さえもなく、単位体積当たりおよそ3%膨らむことによって、イットリウムを含むジルコニウムの破壊の原因となる正方結晶相から単斜晶相への変換につながることを回避することを可能にする。
【0044】
マグネシウムを含むジルコニウムの他の利点は、その色である。マグネシウムは、それに黄土色を与え、その色は、その含有量が増えるにつれてより顕著になり、例えばイットリウムを含むジルコニウムは、そのイットリウム酸化物含有量に関わらず本来白色である。
【0045】
したがって、この色は、製造工程に続くセラミックの結晶状態の簡単且つ迅速な“視覚的指標”として使用されてもよい。
【0046】
代替的に又は追加的に、図6を参照して、感知素子1はガラス又はセラミックの管40を有し、芯4が巻線5及び接続ワイヤ3と共に管40の中に挿入される。管40は、芯4の周りの被覆6の厚さを制御することを可能にする。特に、管40は、この被覆6の厚さを制限することを可能にする。この場合において、芯の末端は応力緩和され、長手方向の通路が通して見えることを可能にする。巻線は、二つの接続点50において出力側(接続ワイヤが芯4の外に出る場所)の接続ワイヤ3に接続され、芯4上に位置付けられる接続点51において、反対側に対して所望の抵抗値を備えて二つ一組で接続される。
【0047】
これから図7を参照して、一つの実施形態による感知素子を製作する方法の記述が続く。
【0048】
我々は、少なくとも二つの長手方向の通路7を有する細長い芯4をもって開始する。
【0049】
第1ステップ(E1)において、芯4の外周面の周りに巻かれた伝導性ワイヤの巻線5を得るために、伝導性ワイヤが芯4の周りに巻かれる。
【0050】
巻線5がらせんである場合は、それは、長手方向の通路の中に挿入される。
【0051】
第2ステップ(E2)において、巻かれた伝導性ワイヤ5は、耐熱性の(re’fractaire)ガラス(ブラシによって塗布され、乾かされ、その後炉で焼かれる水及び酸化物のスリップ)を用いて芯4に接合させられる。このステップは、金属合金の結晶構造を変えることによって巻線5を電気的に再生することを可能にし、部品の操作を可能にする。
【0052】
第3ステップ(E3)において、接続ワイヤは、長手方向の通路7の内側に挿入される。接続ワイヤは、長手方向の通路の内側でのそれらの保持を改善するために、有利には“Z”字形状に予め形作られている(図4参照)。
【0053】
第4ステップ(E4)において、巻線(5)は、測定されるべき物理パラメータを感知可能な抵抗回路を形成するために、接続ワイヤ3に接続される。先に述べられたように、このステップは、ハンダ又は溶接8を用いて実行される。
【0054】
第5ステップ(E5)において、接続ワイヤ3は、耐熱性のガラス又はガラス‐セラミック(ブラシによって塗布され、乾かされ、その後炉で焼かれる水及び酸化物のスリップ)を用いて芯4に部分的に予め接合させられる。
【0055】
有利には、部分的に予め接合させるこのステップは、製造工程の間の感知素子の操作を可能にすることに本質的に役立つが、芯4に接続するワイヤ3の封止に対して何ら貢献しないことが、留意される。
【0056】
有利には、第6ステップに、工程内のこの段階においては、二本一組で適当な長さに巻かれた巻線をハンダ付けすることによる、巻線の電気抵抗の校正(ステップE6)に続いてもよい。
【0057】
上記のステップの終わりに、芯4、巻線5及び接続ワイヤ3から成り、管40が適用可能な、プレアセンブルされた感知素子10が得られる。プレアセンブルされた感知素子10は、組み立てられた感知素子10’を得るために変更され得る感知素子である。
【0058】
ここで任意的に、図5の感知素子について、第7ステップ(ステップE7)において、芯4を管40の中に挿入することが可能である(図6においてステップE7は、それが任意的であることを示す点線内に表示されている)。第8ステップ(ステップE8)において、単一の浸漬サイクルが実行され、このサイクルの間に、高温(400℃から1200℃)の溶融ガラス内での、プレアセンブルされた感知素子10の芯4の単一の浸漬における、ガラスの層を用いた巻かれた芯の被覆に、及び長手方向の通路7内への接続ワイヤ3の最終的な封止に続く。プレアセンブルされた感知素子10の浸漬は全体的ではないことが、ここに明記される。具体的には、全体的に浸漬されるのは芯4及びその巻線(芯4の内部又は外部)のみであり、接続ワイヤ3のほんの小さな部分のみが浸漬される(ミリメートル又はそれ以下の位)。
【0059】
さらに、用語“浸漬サイクル”は、具体的には感知素子を下降させること、溶融ガラス内への浸漬それ自体、溶融ガラスからの抜き取り(以下に詳述される複数のサブステップ)及びその制御された凝固を含む、一連のサブステップを本明細書において意味すると理解されることが、ここに明記される。さらに、浸漬サイクルに続き、芯4は完全に被覆されることが、明記される。
【0060】
本発明によれば、その間に被覆及び最終的な封止が行われる浸漬サイクル(ステップE8)は、有利には、図8及び図9a乃至図9eを参照して記述される続く複数のサブステップを含む。
【0061】
準備のサブステップE70において、感知素子10は、一対のピンセット(図示なし)の末端に取り付けられる。
【0062】
サブステップE71において、芯4を予め加熱して、それが続く浸漬の間にガラス51を冷却することを回避するために、プレアセンブルされた感知素子10は、それが、耐熱性のるつぼ50内に入っている高温の(すなわち、液体状且つ高温(400℃から1200℃)の)溶融ガラス51の上方にくるまで、炉60の中に(すなわち、数センチメートル、典型的には2から10センチメートル)迅速に下降させられる(図9a参照)。芯4が続く浸漬の間にガラス51を冷却することは、長手方向の通路7の中に進入して長手方向の通路7の内側に接続ワイヤ3を封止することが可能であるためには、ガラスが粘性となり過ぎるであろう。したがって、芯4は、溶融ガラスの温度の75%と95%との間のある温度に達する。好ましくは、プレアセンブルされた感知素子10は、数十秒の間、典型的には1分間にわたって溶融ガラスよりも高い温度のままである。
【0063】
ガラスは、有利には、二つの主な構成物質の群から作られる。
【0064】
‐ネットワーク形成剤:
○シリカ SiO2:高価でなく、熱衝撃に対する良好な抵抗性を有する。他方で、それは、高い融解温度(構造に依存して1650℃から1730℃)を有し、低い熱膨張係数を有し、低い焼き入れ強度を有する。
○酸化鉛 PbO:低い融解温度(888℃)を有し、非常に流動性の高いガラスをもたらし、良好な焼き入れ強度を有する(非常に弾性)。他方で、それは、不十分な高温電気的絶縁特性(>250℃)を有する。
○酸化亜鉛 ZnO:酸化鉛の代替品として次第に使用されており、かなり流動性の高いガラスをもたらし、良好な焼き入れ強度を有する。他方で、それは、高い融解温度(1975℃)を有し、不十分な高温電気的絶縁特性(>400℃)を有する。
○無水ホウ酸 B:低い融解温度(450℃)を有し、熱衝撃に対する良好な耐久性を有し、良好な焼き入れ強度を有する(弾性)。他方で、それは、過冷却されると、高い沸騰温度(1860℃)に関わらず分解及び蒸発する可能性があり、低い膨張を有し、化学的な侵襲(水、酸等)に対する低い抵抗性を有する。
○無水リン酸 P:低い融解温度(340℃)を有する。他方で、それは、過冷却されると(360℃に沸点)、非常に迅速に蒸発する可能性がある。
○アモルファスアルミニウム Al:高い表面張力を有し、化学的な侵襲(水、酸等)に対する良好な抵抗性を有し、良好な電気的絶縁特性を有し、良好な熱伝導性を有する。他方で、それは、非常に高い融解温度(2054℃)を有し、それは非常に粘性が高く、低い焼き入れ強度を有する。
○アモルファスジルコニウム ZrO:高い表面張力を有し、化学的な侵襲(水、酸等)に対する良好な抵抗性を有する。他方で、それは、非常に高い融解温度(2715℃)を有し、それは非常に粘性が高く、不十分な高温電気的絶縁特性(>500℃)を有し、低い熱導電性を有する。
【0065】
アモルファスアルミニウム及びアモルファスジルコニウムは使用が難しく高価であることに留意されたい。
【0066】
‐ネットワーク改質剤
○第一の範疇は、溶融剤を含む:それらは、概して原子結合又は核結合を弱くすることによって、しばしば化学的な侵襲に対する抵抗性を犠牲に、ネットワークを改質することを可能にする。それらは、概してアルカリ酸化物を含む:
●ソーダ Na2O:融解温度及び粘性を低下させることを可能にする。
●酸化ポタシウム(カリウム) K2O:融解温度及び粘性を低下させることを可能にし、焼き入れ耐久性を改善する(接合の弾性を増大する)。
●アモルファス酸化マグネシウム MgO:化学的な侵襲(水、酸等)に対する抵抗性及び熱伝導性を改善する。
●酸化バリウム BaO(エナメル及びセラミックグレーズにおいて極めて一般的に使用される酸化物):それ自体の高い融解温度(1920℃)に関わらず、融解温度を低下させ、焼き入れ耐久性(弾性及び機械的な強度を大いに増大する)及び表面硬度を改善する。他方で、それは、過冷却されると、高い沸騰温度(2000℃)に関わらず分解及び蒸発する可能性がある。
●酸化鉛 PbO:融解温度を低下させ、流動性を増大し、焼き入れ耐久性を改善する(接合の弾性を増大する)が、高温電気的絶縁特性を低下させる。
○第二の範疇は、安定剤である:それらは、溶融剤によって弱められたネットワークを安定化又は制御することを可能にする。
●酸化カルシウム CaO(最も一般的に使用される“安価な”安定剤):機械的強度を改善し、化学的な侵襲(水、酸等)に対する抵抗性を改善するが、焼き戻し中の再結晶化の危険性を増大させる。
●酸化亜鉛 ZnO(酸化鉛の代替品として次第に使用されている):それは、良好な焼き入れ強度を備えた(非常に弾性)かなり流動性の高いガラスをもたらす。他方で、それは、高い融解温度(1975℃)を有し、不十分な高温電気的絶縁特性(>400℃)を有する。
●酸化鉄 Fe:高温電気的絶縁特性を低下させる。緑色の着色は、(“ガラス製造人の石鹸”としても知られる)酸化マンガン MNO2を用いて“洗われ”てもよい。
●酸化鉛 PbO:融解温度を低下させ、流動性を増大させ、焼き入れ強度を改善する(接合の弾性を増大させる)が、高温電気的絶縁特性を低下させる。
【0067】
ガラス及び特に後者のその製作(組み立て)方法は、以下を備えたガラスを得るように選択されることができる。
‐セラミック芯、巻線及び連結ワイヤに適合する熱膨張係数、外部グレーズと内部封止との間の妥協;
‐工程に適合する粘性及び表面力;
‐素子の動作温度に関して十分に高いが、芯及び巻線への機械的応力を制限するために十分に低い融解温度;
‐剥離又はひび割れを回避するための良好な焼き入れ強度;
‐低温での焼き戻しのための安定性;
‐化学的な侵襲(水、酸、塩基、リン酸エステル等)に対する良好な抵抗性;
‐接続ワイヤの封止のための良好なせん断強度;
‐セラミック芯及び接続ワイヤへの良好な化学的接着;
‐セラミック芯及び金属ワイヤに対して有害な化学的な侵襲が無いこと。
【0068】
一例として、ガラスは、以下から成ってもよい。
‐およそ15%のみのシリカ;
‐70%以上の高い酸化鉛含有量;
‐10%以上の高い酸化ホウ素含有量。
【0069】
芯4の予熱と同時に、後者は、炉60内に広がる熱に起因する熱分解によるクリーニングを受ける。したがって、芯4は有機性の汚染(手からの皮脂等)から浄化され、それは、芯4及び巻線5へのガラスの接着の繰り返し性を保証する。
【0070】
サブステップE72において、プレアセンブルされた感知素子10の芯4は、溶融ガラス51内へ部分的に浸漬される(図9b参照)。用語“部分的に浸漬される”は、図9bに見られるように、芯4がほぼ全体的に(その長さのおおよそ90%まで)浸漬されることを意味すると理解される。
【0071】
部分的な浸漬はゆっくりと実行され(数ミリメートル毎秒、典型的には2ミリメートル毎秒と10ミリメートル毎秒との間)、それ故に芯4は、通路を満たすためにかかる時間(典型的には1分間程度)にわたって浸漬されたまま残される。
【0072】
芯4のこの部分的な浸漬は、以下を可能にする:
‐十分にゆっくりとした部分的な浸漬によって、芯4を溶融ガラス51と同じ温度に至らせることを徐々に完了する;
‐十分にゆっくりとした部分的な浸漬のおかげで、巻線3のターンの間に空気の微小な泡を捕らえることを回避する;
‐芯4の浸漬されていない部分を介して自由に空気を逃がすことによって、毛管現象により長手方向の通路7を満たす(溶融ガラスは空気を逃がすには粘性が高すぎる);
‐高度に侵襲的な溶融ガラスが材料(金属及びセラミック)の表層をアタックすることのおかげで、ガラスの最適な取り付けを確かにする;
‐耐熱性ガラスへの接合の焼くステップの間に開始された、巻かれたワイヤ3の電気的な再生を継続する(ステップE2参照)。
【0073】
サブステップE73において、芯4は溶融ガラス内に完全に浸漬され、したがって芯4は、数分間にわたって溶融ガラス51内に完全に浸漬されたまま残される(図9c参照)。先に説明されたように、接続ワイヤのうちの芯4の外部のほんの小さな部分のみが浸漬される。
【0074】
このステップE73に続いて、組み立てられた感知素子10’が得られる(仕上げられていないが、所望の構造を備えている)。
【0075】
サブステップE74において、芯4の完全な浸漬の後に、芯4を溶融ガラス51の外にゆっくりと運ぶために、組み立てられた感知素子10’はゆっくりと持ち上げられる(図9d参照)。用語“ゆっくりと持ち上げられる”は、数ミリメートル毎秒、典型的には2ミリメートル毎秒と10ミリメートル毎秒との間の上昇速度を参照すると理解される。
【0076】
上昇速度は、それが、溶融ガラスの特性(粘性、表面張力、単位体積当たりの質量)に加えて、芯4を被覆するガラス層の厚さの規則性に直接的な影響を有するので、重要である。
【0077】
同様に、長手方向の通路7を満たすことは、通路の寸法(長さ、直径)に加えて、上記のガラスの毛細現象及び熱膨張(次いでその冷却での凝固による体積後退)と同じ現象によって決定される。
【0078】
最後に、サブステップE75において、組み立てられた感知素子10’は、芯4を炉60から外に迅速に運ぶために、迅速に持ち上げられる(図9e参照)。用語“迅速に持ち上げられる”は、ゆっくりとした上昇速度よりも2倍から10倍迅速な上昇速度を意味すると理解される。
【0079】
組み立てられた感知素子10’の芯4の迅速な引き抜きは、芯4の垂直な姿勢を考えると、重要である。被覆の間に芯4上に堆積させられた液体ガラスは、垂れて以下を形成する自然な傾向を有する:
‐下部上の滴り(過剰な直径);
‐芯の上端と下端との間の不整な厚さ。
【0080】
その結果として、これらの影響を限定するために可能な限り迅速に芯4の周りにガラスが固められなければならないので、取り出しの速度は、その重要性を有する。
【0081】
芯の完全な被覆のために得られるガラス層は、非常に密度が高いと同時に、アモルファスのままであり従って透明である。この透明性は、数ある中でも、被覆の品質(巻かれたワイヤの間の微小な泡)及び巻かれたワイヤの間の間隔の容易な制御を可能にし、例えば複数の回路間の誘電特性を保証する。
【0082】
さらに、被覆は、熱い部分で行われ、熱分解され、また高度に反応性の溶融ガラスを用いて行われるので、ガラスと芯との間の接着は大いに改善される。
【0083】
ひとたび炉から外に出ると、第8ステップ(ステップE9)において、次いで最終的な感知素子を得るために、そのガラスのガラス転位温度よりも低い温度でのガラスの焼き戻しの間に被覆を応力緩和することによって、組み立てられた感知素子の電気的挙動が、安定化される。
【0084】
この応力緩和のステップ(ステップE9)は、浸漬サイクルに続いて、ガラス層は未だ熱い耐熱性の芯(4)の上に迅速に固まるという点で、重要である。次いで後者が冷えるときに、それは縮み、その厚さにおいてガラスを圧縮し(芯急冷効果)、ガラス/芯の境界面でそれを引き延す。したがって、使用されるガラスは、破壊(スポーリング)することなくこれらの制約に一時的に耐えるために、十分に“弾性”でなければならない。
【0085】
この応力緩和のステップ(ステップE9)の間に、熱による焼き戻しは、時間と共に白金巻線の電気的挙動を安定化するために、ガラスに蓄えられた残留応力を緩める目的を有する。それ自体は知られている方法において、白金の熱膨張は、カレンダーバンドゥーセンの法則によって電気的に特徴付けられることに留意されたい。したがって、そのときガラスが熱膨張の差によって白金を圧縮又は膨張させるならば、白金の電気的応答を変えてしまう。
【0086】
さらに、冷却の際にガラスに蓄えられた残留応力はまた、そのとき同じように白金巻線の応答を変えてしまう。典型的な過度に粘性な流体挙動によって、ガラスは、それが機械的応力を受けると、(それ自体の重量下の氷原のように)時間と共に分子が微小に動くことが可能である。これは、時間と共に、ガラスが“ひとりでに”その内部応力を緩めることができ、それ故にその最初の電気特性を変えることを意味する。
【0087】
その結果として、応力緩和のステップの間に、焼き戻しは、ガラス転位温度よりも低い温度で実行される。温度が低いほど、アモルファスガラスの再結晶の危険性が低い。しかしながら、温度が低過ぎると、ガラスの粘性が応力を緩和するために数年を要することになる。ガラス製造産業において、焼き戻しの限界は、ガラスが1014,5ポアズの粘性をもつ“下限焼き戻し温度”として知られる標準化された温度でのおよそ1時間の曝露によって概して特徴付けられることに留意されたい(1019ポアズのガラスを応力緩和するためには、18ケ月程度を要する)。
【0088】
本発明の文脈において、熱による焼き戻しは、感知素子が設計される動作温度(概して−100℃と+400℃との間)において時間と共に電気的にドリフトすることの危険性を完全に一掃するために、意図的に標準化された焼き戻しの限界温度よりも低い温度(典型的には250℃から500℃程度まで)で数日間にわたって続く。
【0089】
以上で記述された方法は、ステップE5,E7,E8及びE9は、接続ワイヤを封止し芯を被覆するためにある数のステップの手による繰り返しを要求した既知の技術と違い、資格をもつ労働者の1時間の四分の一以下しか要求しないという利点を有する。
【0090】
本発明の方法を使用して得られる感知素子は、多くの部分に関して、セラミック芯に起因する良好な機械的性質(屈曲、圧縮及び牽引における機械的抵抗性、振動下での剛性、等)を保っており、同時に、被覆層のガラスの特性(ガラスの高密度化、セラミック芯へのガラスの非常に良好な接着、水密性、硬度、摩耗に対する抵抗性、化学的な侵襲に対する抵抗性、高い誘電性、高い絶縁抵抗、等)を加えている。
【0091】
さらに、上記の感知素子は、流体流れの物理パラメータを測定するために、大きな力で応力をかけられる装置において有利に使用される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e