特許第6670255号(P6670255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670255ミスト化および噴霧化システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670255
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】ミスト化および噴霧化システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/02 20060101AFI20200309BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20200309BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B05B3/02 101
   B05D1/02 Z
   B05D3/00 B
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-570239(P2016-570239)
(86)(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公表番号】特表2017-520392(P2017-520392A)
(43)【公表日】2017年7月27日
(86)【国際出願番号】US2015034809
(87)【国際公開番号】WO2015191516
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2018年6月8日
(31)【優先権主張番号】14/301,466
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】317008333
【氏名又は名称】スナップ アイピー エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】テンチ,セオドア
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第2730738(US,A)
【文献】 特開2013−169500(JP,A)
【文献】 米国特許第4040385(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00−3/18,
7/00−9/08
B05D 1/00−7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧化装置(10)であって、該噴霧化装置は:
空間だけ離隔された上部プレート(14)と下部プレート(16)とを含む接触プレート(12);
上部プレート(14)を通って伸びる、複数の毛細管状の開口部(20);
複数の毛細管状の開口部(20)と流体連絡する液体源(26);および
中心軸(32)まわりを放射方向に回転するブラシ(28)を含み、
毛細管状の開口部(20)は、0.1mmから3.0mmの直径を有し;
ブラシ(28)は1つ以上のフィラメント(30)を含み;
フィラメント(30)は、ブラシ(28)が接触プレート(12)に接しているときに湾曲し;
フィラメント(30)は、ブラシ(28)が接触プレート(12)との接触を離脱した後に、1回以上の振動を受け;および
それらの振動の間に、フィラメント(30)は、微細な液体の液滴を射出させる、
ことを特徴とする噴霧化装置(10)。
【請求項2】
接触プレート(12)と流体連絡する下方部(40)と、フィラメント(30)から射出させられた微細な液体の液滴が開口(36)を通るように構成された、開口(36)を含む上方部(38)とを有する、ハウジング(34)をさらに含む、請求項1に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項3】
毛細管状の開口部(20)の直径は0.5mm以上2.0mm以下である、請求項1に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項4】
1フィラメントにつき1時間当たり実質的に0.25mLの速度で液体を微細な液体の液滴のミストに変換するように構成される、請求項1に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項5】
フィラメント(30)から射出させられた微細な液体の液滴は、中心軸(32)まわりを放射方向に測定された、接触プレート(12)から約180度の角度で放出される、請求項1に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項6】
液体源(26)は、毛細管状の開口部(20)が全容積未満に充満されるように、液体の放出を制御するように構成された、請求項1に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項7】
液体源(26)は、上部プレート(14)と下部プレート(16)の間の液体量を維持するように構成された正圧源を含む、請求項1に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項8】
フィラメント(30)の材料組成および寸法は、フィラメント(30)が中心軸(32)まわりのブラシ(28)の全回転のそれぞれのために、1回以上の振動を受けるように構成される、請求項1に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項9】
フィラメント(30)は、ブラシ(28)が接触プレート(12)からのおよそ90度の角度を介して回転した後に、振動を開始するように構成される、請求項8に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項10】
フィラメント(30)は、中心軸(32)まわりのブラシ(28)の全回転のそれぞれのために22回の振動を受けるように構成される、請求項8に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項11】
振動が開始する前にフィラメント(30)によって射出される大きな液体の液滴をブロックする障壁をさらに含む、請求項1に記載の噴霧化装置(10)。
【請求項12】
噴霧化装置(10)のための噴霧化方法であって、該噴霧化装置(10)は、上部プレート(14)と下部プレート(16)とを備える接触プレート(12);上部プレート(14)を通って伸び、且つ0.1mmから3.0mmの直径を有する、複数の毛細管状の開口部(20);複数の毛細管状の開口部(20)と流体連絡する液体源(26);および1つ以上のフィラメント(30)を含むブラシ(28)を含み、該方法は、
ブラシ(28)を中心軸(32)まわりを放射方向に回転させる工程;
ブラシ(28)と接触プレート(12)とを接触させ、それによって、フィラメント(30)を湾曲させる工程;および
ブラシ(28)と接触プレート(12)との接触を離脱させ、それによって、フィラメント(30)を振動させ、微細な液体の液滴を射出させる工程を含む、噴霧化方法。
【請求項13】
毛細管状の開口部(20)それぞれの中の液体は、フィラメントが液体と接触したときに、高さが0.9mmから1.5mmの範囲で減少するメニスカスを形成する、請求項12に記載の噴霧化方法。
【請求項14】
フィラメント(30)から射出させられた微細な液体の液滴は、中心軸(32)まわりを放射方向に測定された、接触プレート(12)から約180度の角度で放出される、請求項12に記載の噴霧化方法。
【請求項15】
振動を開始する前にフィラメント(30)によって射出させられる大きな液体の液滴をブロックする工程をさらに含む、請求項12に記載の噴霧化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2014年6月11日に出願された米国仮出願第14/301,466号の優先権を主張し、参照によって組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本願の対象は全般的に、水、塗料およびその他のスプレー液に使用され得る、ミスト化および噴霧化システムおよび方法に関する。
【0003】
様々な液体のための、様々なミスト化またはスプレー方法が存在する。各々はそれらに特有の欠点および課題を有する。現在利用可能なシステムおよび方法に関する多くの問題点が、従来の塗料吹き付け器やミスト冷却噴霧器に関してよく示されている。従って、本願の開示の多くは、これらの適用を参照するものである。しかしながら、塗料およびミスト冷却に関して本明細書で提供される教示は、広い範囲の流体に渡り適用可能であることが理解される。
【0004】
表面に塗料を塗るための一般的な方法は、円筒状に形成された塗料ローラまたは塗料の供給源に浸漬されるブラシの使用を含んでいる。これらの方法は表面に対する塗料の適切な浸透を提供するが、これらの方法は、時間がかかると共に、汚れ作業である。
【0005】
対照的に、より高速の塗装処理を可能にする吹付け方法が開発されているが、これらの方法は、これらに特有の欠点を有する。塗料が加圧されて塗料塗布器へ供給される、様々な吹付け塗装システムが提案されている。不運にも、これらのシステムにおいて、塗料塗布器は閉塞を起こしがちであり、それにより、システムが役立たないことが示されるとともに、使用者が替わりの装置を購入することが必要となる。
【0006】
さらに、現在のスプレー式塗装装置は、塗料が適切な速度で供給されるように制御される方法で、基材に塗料を提供しない。最適な噴霧化を得るためには、非常に高圧を使用しなくてはならず、通常の動作条件において、1時間当たり5ガロン以上で吹き付けるように機器が駆動される。非常にわずかの割合の高度に熟練した技術者だけが、非常に多量の噴流の塗料を正確に塗布することが可能である。さらに塗料はしばしば、塗装表面に対し、均一性が不適当または不規則な状態で散布される。さらに、希釈による塗料粘度の小さな変化が、現行の装置を用いる際に、予測できない吹付け品質を生み出す。結果として、粘度の測定による吹付けの微調整は、現行装置では困難である。
【0007】
さらに、広い噴霧パターンにわたって、吹付けの均一噴射を提供する代わりに、現在のスプレー装置は小さな開孔を通じて吹付けを実施するものであり、不均一な噴霧パターンを生成する多くの塗料は、端部よりも、吹付け中心に到達する。塗料の一噴霧が広範囲であるのが所望されるような出荷時設定において、多数のノズルの複合セットアップは、均一配分に近づけるために、1つのものの別のものに対する近接度合を設定し、微調整しなければならない。そして勿論、ノズルのうちの1つが閉塞した場合、塗装セッション全体が危うくなる。さらに、そのようなシステムにおいて使用される高圧は、急速にノズルを磨耗させ、吹付け品質を損ない、頻繁な検査および交換を必要とさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ほとんどすべての従来の塗料吹付け機の他の重大な欠点は、過剰スプレーである。例えば、塗料粒子の霧が、噴霧化処理によって生成され、これが部屋全体を、任意の表面に張り付く小さな液滴で充満させる。過剰スプレーは危険でもある:ほとんどの吹付け塗料は、生命に危険性を及ぼし得る。塗料の液滴の吸入を防ぐために、マスクを装着している間に塗布をしなくてはならない。出荷時設定において、吹付け塗料は通常、換気用の特別なブロワーを用いて、密封された箱または小さな部屋内で塗布される。私的家庭で塗布される吹付け塗料は、塗装が所望されないすべての表面を、プラスチックシートの気密層で覆うことによって保護することが要求される。隣接する部屋でさえも、このように保護されねばならない。過剰スプレーはしばしば、スプレーされた全塗料の30%を超えるまでに達する塗料の浪費をもたらし、これは特に、塗装および洗浄に要するかなりのコストを考慮すると、相当の損失である。
【0009】
従来の吹付け塗装方法のさらなる欠点は、跳ね返りである。特に、噴霧化処理はしばしば、塗料液滴の周囲を移動する空気の高速突風を生成する。突風の気流は、塗布標的から反射し、標的へ向かう途中の他の液滴を、標的から完全に押し出す。跳ね返りの副作用として、多くの現在の塗料吹付け機は、幅が2mm程度以下の小さなクラックを、任意の塗料で任意の深さまで充填することができない。跳ね返りを引き起こす高速気流のさらなる欠点は、高速で液滴を吹きつけて、それらが標的に当たる前にそれらを乾燥させてしまう可能性があることである。
【0010】
さらに、加圧式塗装システムの多くは、多数の部品で複雑化しており、したがって、清掃および修理が難しい。吹付け機の清掃は、最も高価なものでさえ、時間を要し、一晩中の浸漬さえも必要となり得る。塗布プロジェクトの途中で塗料の色を変更することは、従来の機器では採用可能ではない。さらに、典型的な従来のシステムは、1つのタイプの液体、すなわち塗料にのみ適合する。したがって、ユーザーは、殺虫剤や空気清浄剤などのような、他の液体を供給するためには、完全に異なる装置を購入する必要が生じるであろう。
【0011】
さらに、現在の加圧式塗装システムは、相当量のエネルギー、高圧、電気コード、バッテリーパック、または、表面に塗料を供給するためのポンプを必要とする。
【0012】
水の蒸発による冷却は、噴霧装置の別の一般的な適用であり、それに特有の範囲の課題をもたらす。廉価の冷却ミストは、良好に噴霧されず、不快かつ不十分な吹付けを生成する。例えば、これらの廉価な噴霧化装置によって生成される大きな液滴は、噴霧化経路および気流経路に直接乗ることが事実上できないので、非常に不快である。次に、従来の噴霧化装置は、非常に大きなサイズの粒子を生成し、それらのうちの多数は全く蒸発しないので、冷却効果を生むことができない。
【0013】
より高価なミスト冷却システムは、高品質の噴霧を生成する。しかしながら、噴霧の生成に必要な高圧が、装置環境内の湿度を上昇させるという、望まれない効果をもたらす。例えば、最小の4つのノズル装置からの水の流れが、1分当たり0.116ガロン未満となるのはまれであり、通常はそれ以上である。水の量は、1分間に装置が、ほぼ2000立方フィートの空気の湿度を50%から70%かそれ以上まで増加させるほどに多い。そのようなレベルでは、蒸発冷却システムは著しく効率が悪くなる。さらに、この追加される湿度が、システムのユーザーにとって不快であるので、典型的には、彼ら自身を冷却するためにシステムを使用することになる。言いかえれば、従来のシステムは、ユーザーが冷却の直接的な利益を受けるのを拒み、全面的に湿度を大幅に上昇させる。典型的な冷却システムのさらなる欠点は、最少の冷却装置と比較して、装置の高コストをもたらすことである。さらに、冷却装置は典型的には、コンプレッサーの動作から、ハイレベルのミストを操作するのに十分な大きさのファンの動作により、および、ノズルからの非常に大きな摩擦により、60デシベル以上の不快な大音量の雑音を生成する。さらに、現在の冷却装置は典型的には、一度に1つのスプレーノズルからミストを生成するのみであり、冷却能力を増大させるには、複数ノズルが必要である。結局、噴霧化は、液滴すべてが噴出されるごく小さな点のまわりのごく狭い領域に、全ての液滴を集中させるものであるから、最良の噴霧化装置は、邪魔であり、不快であり、および平滑表面上で容易に再凝縮する重い霧を生成するという、追加的な欠点を有する。
【0014】
従って、使用中の適応性と同様に、容易なメンテナンス性および清掃性をシステムがもたらすような比較的簡単な構造および組み付け状態を備え、定常的な態様で静かに噴霧を供給する装置に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願の開示は、噴霧装置を実施するための装置および方法を提供する。装置および方法の様々な実施例は、本明細書で提供される。
【0016】
開示される装置は、先行技術の装置と比較して、究極的に小さな粒子から成る微細なミストを提供する。微細なミストは、少なくとも一部が、装置の設計の結果であり、これは、2つの処理の組合せに依存する:第1は、フィラメント上への液体の限定的付着、および第2は、各振動ごとに1つの液滴を放出するように制御されたフィラメントの振動、である。液体は、ストリーム中のフィラメントから、フィラメントがはね返った後、放出され、続いて振動処理を受け、そこでフィラメントは、フィラメントの中立位置を通って前後に曲がる。特に、開示される装置は、ブラシと接触プレートを含み、接触プレートは、複数の毛細管状の開口部を含む。毛細管が、外力を付加することなく、液体を毛細管状の開口部内へ吸収するために、液体は、毛細管状の開口部の下のキャビティまたは空間に供給される。装置の動作において、毛細管は液体を「枯渇」させることが可能であり、毛管現象が可能な限界まで毛細管を充満させるのに十分な液体は決して提供されない。代わりに、チューブ最頂部におけるメニスカスは、上方から接触する液体の小さな端部のみを表示するために、誇張された双曲線の形態に湾曲することが可能である。ブラシが接触プレートに接すると、そのフィラメントは、毛細管状の開口部上で一つずつ引っ張られ、そこにおいて、毛細管状の開口部内の少量の液体(0.00001立方センチメートル単位)が、ブラシの個々のフィラメントに付着する。ブラシの回転が継続すると、フィラメントはプレートとの接触を維持し、それによって、この液体を搬送する。その後、液体は、フィラメントが、接触プレートとの接触から離脱して振動するときに、均等な小さな部分に分割されてフィラメントから放出され、フィラメントの方向変化のたびごとに1つの液滴が放出される。ブラシが軸方向に回転する場合、液体は、接触プレートから約180度で放出される。接触プレートは、扁平形態であってもよく、そこにおいて、フィラメントは連続的な湾曲が及ぼされ、放出動作によってフィラメントが待機状態から変形し、フィラメントから任意の液体を放出の前に脱落させるような衝撃を全く生成せずに、それらの弾性力による位置エネルギーを蓄積して放出する。扁平形態は、蓄積された液体の過剰分が、放出点に集中するのを防ぐ。
【0017】
水と同じ粘度の液体が使用される場合、接触プレート下部の囲まれたキャビティの深さは約1‐2ミリメートルに固定され、液体を毛細管状の開口部へ、それらを溢れさせることなく連続的に供給するという、重要で、非常に簡単であり、かつ低廉である方法を提供する。毛細管およびこれが規定する狭い空間内の液体に作用する他の外力によって、空間は液体に作用して、仮にフィラメントに付着した場合、噴霧品質を損なうような大型の液滴を形成させることなく、液体自体を毛細管の下部領域の全体にわたり均等に分散させる、これは、可動部を持たない簡単な機械的構造で達成される。さらに、この小空間内で機能する水様の液体の各種特性に依存して、キャビティは、装置が任意の向きで使用されることを可能にし、重力によって、液体が任意の1箇所に過度に集中して、フィラメントを溢れさせるのを防止する。装置が水の粘度の液体を噴霧化するために使用される場合、空間の深さは1‐2mmでよく、その距離において、元来の粘度、毛細管作用および液体の粘着力に従って、水が分散され、空間を充満させる。過剰の液体が空間に入ることが防止される場合、これらの自然力は、空間の内部に液体を強固に維持して、フィラメントが付着して少量を引っ張り出さない限り、液体が毛細管の頂部を離れるのを防止し、装置を任意の配置で、たとえば上下逆さまでも、フィラメントの付着力以外の外力によって液体を空間内から離脱させることなく、利用することを可能する。
【0018】
本願装置の特定の設計は、吸収した液体をフィラメント上に放出するか、または、接触プレートからおよそ180度逆立てて、そこで、接触プレートがフィラメントに液体を供給する。これに対し、一動作(flicking)に依存する最も一般的な霧噴装置は、スナップバーから約90°で噴霧吹付けを生成する。
【0019】
液体のストリーム内への放出は、フィラメントが接触プレートから弾かれてから約100分の3秒後に開始し、これは、最初の振動に要する時間でもある。ストリームは、その後、10分の2秒まで継続する。これに対し、従来の霧噴装置は、フィラメントが離れたときに、より大きなサイズの液滴を、バーから直接弾きだす。言いかえれば、本願システムは、振動機能を含まない従来の低い回転数(rpm)の装置よりも、はるかに小さな液滴を生成する振動機能を含んでいる。
【0020】
ブラシが接触プレートに接触すると、毛細管状の開口部内のごく少量の液体が、ブラシのフィラメントの先端部に付着する。この装置の限定的付着特性は、毛細管状の開口部上に引っ張られるときの各フィラメントに利用可能な液体の量が、約0.00001立方センチメートルであるようなものである。これに対し従来の装置は、この時点で、フィラメントがはるかに大量の液体に接することを容認しており、その際、自然力によって、フィラメントは、本願装置より何倍も多くの液体を吸収し、続いて放出される粒子のサイズを劇的に増大させ、噴霧品質を低下させる。非常に高い回転数(rpm)によってのみ、液体のこのような量を有効に噴霧化することが可能であり、これには、エネルギーの高コストと騒音とを伴わざるを得ない。限定的な付着処理の結果として、本願装置は、800rpm、または400rpmにおいてさえも、微細なミスト、すなわち、良質の噴霧を得るための、他の装置では数千Rmが必要とされる細片を生成する。
【0021】
装置からの液体の噴霧は、湾曲させたフィラメントを接触プレートから離脱させた結果であり、その位置で、フィラメントは、待機位置または通常の直線位置に戻る。特に、離脱後、フィラメントは、その通常の直線位置を通過して、その通常の直線位置へ戻る前に、前方に湾曲した位置へ移動する。振動から生成される加速が、3500rpmで回転するスピニングディスク噴霧化システムの加速に匹敵するので、この振動が噴霧を生成する。フィラメントが離脱した後も振動が継続するので、およびフィラメントは軸回転構造であるので、液体は、接触プレートから180度の範囲で放出される。さらに、この振動工程は、フィラメント頂部のごく小量の液体をさらに少量へ粉砕することによって、噴霧化を格段に増強する:フィラメントの各振動につき1つの液滴だけが放出される。振動が液体を噴霧化するのに十分な外力を与える場合に、振動の数および強度の決定は、フィラメントを離脱前に湾曲させる要因であるフィラメント材料、厚さ、長さおよび量などの多数の特性の理解に依存する。振動による噴霧化は、過剰スプレーを防止する:粒子はすべて、平行な前方への運動量と、振動周期の末端における同一の前進速度とを持って放出される。したがって、それらは、従来の加圧吹付け機の生成物のように、ストリームから離れて浮遊したり漂流したりすることがない。さらに振動は、噴霧化した粒子の高度に拡散した一噴きという利点を有し、1度に1つの粒子が放出されることにより、自動的に相互に分離される。
【0022】
フィラメントの長さは、任意の適当な長さでよい。例えば、より短いフィラメント長さは、フィラメントから液体を放出するための、より高速のスナップ(snap)を生成する。より短いフィラメントは、塗料のような、より高粘度の液体を放出するのに特に適している。回動速度を大きくしても、スナップ力が増大する。フィラメントは、変形時に弾性エネルギーを蓄える任意の物質で製造され得る。これには、ステンレススチール、ばね鋼および他の物質を含む。
【0023】
跳ね返り防止:
フィラメントを回転させることにより生成される気流はほとんど無視できるので、装置は、液滴を伴う気流をほぼ生成しない。同時に装置は、スナップの速度にブラシの回転速度が加わるので、フィラメントの回転によって生成される前方への運動量よりも高速の速度で射出される液体の粒子または液滴を生成し得る。例えば、ブラシが約900rpmで回転する場合、2m/sの前進速度が生成され、接触プレートから離れた時のフィラメントのスナップによって、液滴の射出速度にさらに2m/sが加わる。速い気流速度を有する液滴と、液滴を囲む非常に低い速度を有する大気との組合せは、「跳ね返り」の代わりに、液滴が、荷重のない気流よりも、実際に先へ進んでいることを意味する。結果として、装置は、基材上の幅1mm程度の細く、かつ深さ10mmのクラックの内部を被覆するための塗料のミストを提供するのに適している。
【0024】
本願の開示は、上部プレートと下部プレートとを含む接触プレートを含む噴霧化装置であって、上部プレートと下部プレートとは、それらの間に空間を規定するための距離だけ離されている噴霧化装置を提供する。上部プレートは、天面から底面まで上部プレートを通じて伸びる複数の毛細管状の開口部を含む。装置はさらに、空間と流体流通可能に連絡する液体源であって、空間および複数の毛細管状の開口部に、限定された量の液体を供給する液体源と、ブラシであって、回転する回転ブラシの中心軸から放射状(radial)に延びる複数のフィラメントを含むブラシ、とを含む。
【0025】
ブラシは、第1の放射方向へ回転すると、フィラメントが、接触プレートに接したときに湾曲し、接触プレートとの接触を離脱したときに解放されて、フィラメントから液体を射出させるものである。フィラメントが接触する接触プレートの部分は、螺旋状に湾曲した表面を含み、半径は、第1の放射方向に続く経路に沿って減少している。
【0026】
実施例において、装置は筒状のハウジングを含み、ハウジングは、接触プレートと回転ブラシを含み、ハウジングは、開口部を含み、ブラシが回転すると、フィラメントからの液体が、開口部を通じて射出される。ハウジングは、上方部と下方部とを含み、接触プレートは下方部内に配置され、開口部は上方部内に配置される。
【0027】
他の実施例において、装置は、接触プレートの下側から伸び、ブラシの部分を囲むアーチ形の障壁を含み、アーチ形の障壁は、フィラメントから放出される液体の一部を収集し、障壁は、液体源と流体連絡している。障壁は、フィラメントによって接触プレートから即座に放出されて噴霧化されなかったより大きな液滴を収集してもよい。大型の液滴は、多くの従来の噴霧化装置の唯一の生成物である。これに対し本願装置は、ミストの形状において所望されるより小さな液滴サイズを維持するために、大型の液滴をストリームから除去する。さらに障壁は、フィラメントの振動によって後方へ投げつけられた液滴を捕捉し得る。言いかえれば、振動から順方向にフィラメントから射出された液体のみが、結果的にミストを生成する。後方への振動動作から射出された液体は、障壁によって収集され得る。
【0028】
ブラシの回転は、モータによって、または手動で駆動されてもよい。実施例において、装置は、毎時600mLの液体をミストに変換するように構成される。
【0029】
実施例において、装置は、フィラメントからの液体を供給することができ、液体は、液体粒子の形態で射出され得るものであり、液体粒子の少なくとも50%は、100ミクロン以下の径寸法を有する。装置は、20μm以上350μm以下の間の寸法を有する液体粒子を生成するのに適している。装置は、20μm以上100μm以下の間の寸法を有する液体粒子を生成するのに適している。
【0030】
毛細管状の開口部の直径は、0.5mm以上2.0mm以下である。実施例において、毛細管状の開口部の直径は、1mm、1.5mm、2mmまたは2.5mmである。
【0031】
毛細管状の開口部は、液体を含む得るものであって、フィラメントによって運ばれる液体の一部は、接触プレートから約180度の範囲でフィラメントから放出される。約180度は、回転するブラシの放射経路に沿って測定されるものである。
【0032】
液体源は、液体が上部プレートの頂面から溢れださないよう、毛細管状の開口部における液体量を維持するために、液体の放出を制御し得る。実施例において、液体源は正圧源を含み、正圧によって、上部プレートと下部プレートとの間の液体量が維持される。
【0033】
本願の開示は、前述のように、噴霧化装置を提供する工程を含む、噴霧化方法を提供する。方法はさらに、フィラメントが接触プレートと接触するように、ブラシを回転させることを含み、フィラメントは、毛細管状の開口部内からフィラメントへ供給される液体の一部を吸収する。ブラシが第1の放射方向に回転すると、フィラメントは、接触プレートに接しているときに湾曲し、接触プレートとの接触を離脱したときに解放されて、フィラメントから液体を射出し、フィラメントが接触する接触プレートの一部は、螺旋状に湾曲した表面を含み、半径は、第1の放射方向に続く経路に沿って減少する。
【0034】
方法は、接触プレートとの接触を離脱したときに、フィラメントが、直線位置を通って、前方湾曲位置と後方湾曲位置との間で振動することを含み、フィラメントは、フィラメントが、前方位置および後方位置とで方向を変化させるたびごとに、液体を射出させる。
【0035】
本明細書で提供される装置の利点は、高rpmのディスクまたはブラシ、または液体を供給するための高圧を使用する装置と比べて、よりコスト効率が良く、エネルギー効率のよい霧噴装置を提供することである。本願装置では、噴霧化が生じるときのみ、エネルギーが消費される。これに対し従来の装置は、装置が必要とするエネルギーの大部分は、たとえ電力の大部分が実際の噴霧化に使用されなくても、装置に対する電力の一定供給を維持することに消費される。
【0036】
装置の他の利点は、静かであるということである:フィラメントを振動させることによる噴霧化は、きわめて小さいノイズしか発生させないので、居住環境内で快適に利用することが可能である。装置は、室内生活圏に対し推奨される、ユニットから6フィートの距離で50デシベル未満という音圧範囲内で動作することができる、例えば、多くの現在のミスト冷却システムの音は、これより10倍大きく、60デシベル以上である。
【0037】
本願が提供する装置の他の利点は、1タイプの物質だけを吹付けるように設計された現在のミスト化または吹付け装置とは対照的に、塗料、殺虫剤、空気清浄剤、他の物質を供給するためにも装置を使用し得ることである。本願装置は、使用される物質または液体のタイプに依存して選択され得る、交換可能な回転ブラシおよび障壁を含み得る。例えば、ユーザーは、水と共に使用する場合よりもラテックス系塗料と使用する場合に、異なる回転ブラシを使用することが有利であると感じるかもしれない。例えば、装置が塗料と共に使用される場合、より堅い剛毛状であるものが有用であり得る。
【0038】
さらに装置の他の利点は、他の従来装置と比べて、より穏やかな吹付け速度を生成することである。結果として、装置のユーザーは、l/16インチの正確なトリムラインを描くための1インチ/秒のより扱いやすい速度で、吹付けを行い得る。したがって、本願装置は、専門家のみならず、任意の一般人によっても容易に操作され得る。
【0039】
ミスト冷却に使用された場合の装置の他の利点は、装置が、ユーザーに対し、快適に微細化され高度に拡散された冷却ミストを生成し、ストリームが、ユーザーを直接的に指向し得るということである。さらに、直接的ストリームが不快であるために、対象の周囲の全雰囲気の冷却に頼らねばならないような他のシステムと比べて、そのような直接的ストリームは、よりはるかに効率的に水を使用する、広範な冷却を提供することが可能である。
非常に少量の水しか蒸発に使用しないので、本願装置は、そのようなシステムほどには、環境湿度を増加させることがない。
【0040】
さらに、装置の他の利点は、1点でだけでなく、ブラシの全長にわたり、吹付けを生じさせるということである。液体の拡散は、塗料のより均等な被覆を生成する。
【0041】
本明細書で提供される装置の他の利点は、大抵の商用霧噴装置とは対照的に、本装置は閉塞を起こさないということである。水のミスト化の場合は約1ミリメートル未満、塗料吹付けの場合は約2ミリメートル未満を通過させないことにより、閉塞せずに通過する通常の液体内のすべての一般的な異物用の広い部屋が提供される。さらに、ラテックス塗料を供給する例において、装置は、供給前の塗料の希釈を必要としない。
【0042】
本明細書で提供される装置のさらなる利点は、装置が、分解清掃するのに便利かつ容易であるということである。
【0043】
さらに本明細書に開示される装置の他の利点は、使用中の間でも、装置から噴出されたミストの一噴きサイズを容易に変更できるように設計されているということである。例えば、多数のノズルを使用せずに、他の従来のシステムによって典型的には達成できなかった、20フィートよりも長い1噴きの吹付けを生成し得る。さらに本願装置によって生成される一噴きのサイズは、装置の使用中に変更し得る。
【0044】
本発明の他の利点は過剰スプレーの大幅な低減である。言いかえれば、本願装置は、廃棄物として犠牲にされる超過吹付けの損失を防止する。過剰スプレーが無くなることにより、本願装置は、ユーザーの使用に対し、より安全である。本装置は、ユーザーが吸引を回避すべきミストの雲を生成する従来の吹付け装置のようには、すべての方向に液滴を射出しないので、装置は過剰スプレーを生成しない。その代わりに本願装置は、塗料液滴の直線的な吹付けを生成する。
【0045】
本願装置のさらなる利点は、いくつかの構造において、それが任意の向きで使用され得るということである。これに対し従来の吹付け機は、ただ1つの向きにしか使用されない。本願装置は、使用中に、傾斜状態、および天地逆さまの状態にさえもなし得る。
【0046】
実施例の追加の目的、利点および新規の特徴は、後続の記載中で一部述べられる。一部は、後続の記載および添付図面を検討することで当業者に明白になり、あるいは、実施例を製造または操作することによって理解され得る。本概念の目的および利点は、添付の特許請求の範囲で特に指摘される方法、手段および組合せによって実現および達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図面は本発明の概念に従った1つ以上の実施を、実施例としてのみ示し、制限する目的では示さない。図において、同様の参照符号は同一または類似の要素を示す。
【0048】
図1】噴霧化装置の実施形態の側面図である。
図2】ハウジングを含む噴霧化装置の実施形態の断面図である。
図3】障壁を含む噴霧化装置の実施形態の断面図である。
図4A】毛細管状の開口部にフィラメントが接する様子を示す実施形態の側面図である。
図4B】毛細管状の開口部にフィラメントが接する様子を示す実施形態の側面図である。
図4C】毛細管状の開口部にフィラメントが接する様子を示す実施形態の側面図である。
図5A】接触プレートとの接触からフィラメントが離脱する前後を示す実施形態の側面図である。
図5B】接触プレートとの接触からフィラメントが離脱する前後を示す実施形態の側面図である。
図5C】接触プレートとの接触からフィラメントが離脱する前後を示す実施形態の側面図である。
図6】接触プレートの実施形態の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、本明細書で提供されるような噴霧化装置10の実施形態を示し、装置10は接触プレート12、液体源26、およびブラシ28を含む。接触プレート12は上部プレート14および底部プレート16を含む。コネクタ17が上部プレート14と底部プレート16の間の空間18を囲むように、上部プレート14および底部プレート16は接続される。図1−3に示されるように、上部プレート14は任意の適切なコネクタ17によって底部プレート16に接続され得る。コネクタ17は、限定されないが、とりわけ、壁、ねじ、釘、ボルト、ラッチを含む。さらに、コネクタ17はプラスチックなどの任意の適切な材質であり得る。代替的に、上部プレート14および底部プレート14は、例えば、溶接、のり、または任意の適切な接着剤で、互いに直接接続され得る。
【0050】
上部プレート14は、上面22から底面24へ上部プレート14を通過して伸長する、複数の毛細管状の開口部20を含む。毛細管状の開口部20は、毛細管現象に基づいて上部プレート14より下の空間18から液体を吸収し、かつそれらが開口部の上部と接触する場合に、非常に少量の液体をフィラメント30の先端に付着させるために現れるように適合させられる。毛細管状の開口部20の直径は、異なる粘性の液体に適合させる、または放出された液滴の大きさを変更するために、増加または減少され得る。毛細管状の開口部20は、望まれる工程中に噴霧化するためのフィラメント30が毛細管状の開口部20内の液体に接触する事を確実にする、任意の適切な方法で配置され得る。例えば、毛細管状の開口部20は、スタッガード格子型(staggered grid pattern)に配置され得る。
【0051】
毛細管状の開口部20の直径は、液体の噴霧化を生成する任意の適切な直径であり得る。毛細管状の開口部20の直径は、少なくとも0.1mm、少なくとも0.3mm、少なくとも0.5mm、少なくとも0.7mm、少なくとも0.9mm、または少なくとも1.1mmであり得る。代替的に、または加えて、毛細管状の開口部20の直径は、3mm未満、2mm未満、1.5mm未満、1.3mm未満、1.1mm未満、0.9mm未満、0.7mm未満、または0.5mm未満であり得る。毛細管状の開口部20の直径は、上記の終点の任意の2つによって定義され得る。例えば、毛細管状の開口部20の直径は、0.5mm以上ら1.5mm以下、0.9mm以上1.1mm以下、0.7mm以上1.3mm以下、または0.9mm以上1.3mm以下であり得る。実施例において、毛細管状の開口部20の直径は1mmである。
【0052】
上部プレート14と底部プレート16間の空間は、およそ0.5mmから2mm、例えば1mmであり得る。水の粘性を有する液体の場合の毛細管現象の相互作用に加えて、上部プレート14と底部プレート16の隣接により、装置10は任意の向きでの使用が可能である。言い換えれば、接触プレート12は、直立または上下逆を含む任意の向きにおいて、毛細管状の開口部20を通じてフィラメント30に十分な液体を供給する。
【0053】
さらに、接触プレート12の一部は、フィラメント30が接触する螺旋状に湾曲した表面を含む。ブラシ28が第1の放射方向で回転すると共に、螺旋状に湾曲した面の半径は、第1の放射方向に続く経路に沿って減少する。その結果、ブラシのフィラメント30が螺旋状に湾曲した面の末端に近づくと共に、フィラメント30は次第により著しく湾曲する。
【0054】
螺旋状に湾曲した面を含む上部プレート14の利点は、従来の吹き付け器において毛(bristle)を弾いて液滴を放出するために使用される共通の要素である衝突プレートの後部における液体の蓄積を防止することを含む。衝突プレートの後部に蓄積するいかなる液体も、典型的には続いて接近する毛に付着し、射出された液滴の大きさを劇的に増大し、悪いことに噴霧化を阻害するだろう。上部プレート14の螺旋状に湾曲した面は、フィラメント30上で最適な量の液体を維持し、悪いことに噴霧化を阻害する液体が上部プレート14の上面22に蓄積することを防ぎ、その後フィラメント30によって吸収される。
【0055】
上述のように、装置10はさらに空間18と流体連絡する液体源26を含み、液体源26は、空間18に液体を供給し、複数の毛細管状の開口部20が空間18の液体に接触する。図1−3で示されるように、液体源は、例えば液体が液体源26から空間18へ流れ得る底部プレート16中の開口部を通じて、底部プレート16に接続し得る。液体源26は、空間18に任意の適切な液体を供給し得る。
【0056】
液体源26は、液体が毛細管状の開口部20から上部プレート14の上面22に溢れないように空間18中の液体の量を維持するため、液体の放出を制御し得る。実施例において、液体源26は正圧の供給源を含み、正圧は上部プレート14と底部プレート16の間の液体の量を維持する。
【0057】
液体源26は、接触プレート12の外部に位置し得る。代替的に、または加えて、液体源26は、以下でさらに議論するハウジング34内であり得る。さらに、液体源20は、液体源20に液体を供給する液体の貯槽と流体連絡し得る。
【0058】
実施例において、液体源26から供給した液体の量が大きすぎる場合、装置10は安定した液体のミストを生成せず、大きすぎる不均一な液滴を供給することになる。代替的に、液体源26から供給した液体の量が少な過ぎる場合、装置10は安定した液体のミストを生成せず、噴霧の際に間隔が空いてしまうことになる。好ましくは、液体源は、毛細管状の開口部内の液体の量を毛細管状の開口部の全容量未満に維持するように、液体の放出を制御する。
【0059】
液体源20で供給される液体は、限定されないが、水、塗料、殺虫剤、空気清浄剤、燃料、製薬のコーティング、工業用のコーティング、工業用の油、調理用の油、ボディクリーム、可燃性液体または石油の派生物、またはその組み合わせを含む、任意の適切な種類の液体であり得る。本明細書において記載される主要な実施形態では、噴霧装置10は、一般的に剪断減粘性の性質(すなわち、流体の流動への抵抗は剪断応力の比率の増大と共に減少する)を持つ液体である、塗料を用いて実施されるように設計される。しかしながら、当業者は、本明細書において提供される解決方法および記載に基づいた剪断減粘性でない液体のために、本明細書において記載されるシステムの要素をわずかに修正することを理解するだろう。
【0060】
装置10はさらに、回転ブラシ28の中心軸32から拡散するフィラメント30を含んでいるブラシ28を含む。フィラメントの先端がプレートに接する状態でブラシ28が第1の放射方向に回転すると共に、液体は毛細管状の開口部内からフィラメントの先端に付着し、フィラメント30は接触プレート12に接触している時に湾曲し、接触プレート12との接触状態から離脱する時に解放してフィラメント30から液体を射出する。一度フィラメント30と接触プレート12間の接触状態が離脱すると、フィラメント上の液体を各振動につき1つの液滴に噴霧化する振動工程が開始する。代替的に、ブラシ28は直線状であり、フィラメント30はブラシ28の一面から伸長する。そのような実施例において、ブラシを回転させる代わりに、水平のブラシ28は接触プレート12上をスライドする、または振動し得る。
【0061】
フィラメント30は一定の範囲の柔軟性を有する様々な材質で構成され得る。一実施例では、フィラメント30は柔軟な材質を含み得る。フィラメント30の柔軟性のレベルは、接触プレート12との接触に際して、フィラメント30がその本来の向きから曲がる、または湾曲するようになっていなければならない。接触プレート12からの解放に際し、フィラメント30は、フィラメント30の本来の直線状の向きへ戻るまで急速に振動して、それにより、各振動中にフィラメント30から液体を放射する。
【0062】
以下でさらに説明されるように、解放に際して、フィラメント30は典型的にはそれらの本来の向きへはね返るだけでなく、それらの本来の向きを通り過ぎて前方に湾曲した位置まで曲がり続けて、その後それらの直線位置に戻る。フィラメント30は直線位置まで戻った後、後方に湾曲した位置まで曲がり得る。この前方に湾曲した位置から後方に湾曲した位置への振動は、フィラメント30が前方または後方に湾曲した位置に振動するごとに液体がフィラメント30から離れる際にミスト化または噴霧化を引き起こす。フィラメント30は曲がり、本来の向きへ跳ね返り、フィラメント30上の液体がミスト状の形態で射出されることを可能にするように十分に柔軟である。長さが1インチであるフィラメント30を有する実施例において、フィラメント30は、その中間の直線位置へ戻る前に約20回振動し得る。
【0063】
フィラメント30は、回転ブラシ24上で均等に分散し得る。代替的に、フィラメント30は回転ブラシに沿って列など任意の数のパターンで配置され得る。射出された液滴の大きさもまた、ブラシ28の中心軸32の面または表面上のフィラメント30の配置を変更することで調節可能である。中心軸32の表面上のフィラメント30がより拡散されるほど、より小さい別々の液滴が射出される。さらに、フィラメント30は、ブラシ24の表面から垂直に伸長し得る。代替的に、フィラメント30は、液滴をブラシの中心から外側を指す線に近い方向に射出するために、回転の向きに対して後方に傾斜するなどの(ブラシ24に垂直に伸長するフィラメント30によって接線方向に射出される液滴とは対照的に)、垂直以外の角度で伸長し得る。
【0064】
フィラメント30の長さは液体の噴霧化を生成する任意の適切な長さであり得る。フィラメント30の長さは少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、少なくとも25mm、少なくとも30mm、少なくとも35mm、または少なくとも40mmであり得る。代替的に、または加えて、フィラメント30の長さは、50mm未満、45mm未満、40mm未満、35mm未満、30mm未満、25mm未満、または20mm未満であり得る。フィラメントは上記の終点の任意の2つによって長さを定義される。例えば、フィラメント30の長さは15mm以上50mm以下、25mm以上30mm以下、20mm以上40mm以下、または25mm以上35mm以下であり得る。
【0065】
一実施形態において、回転ブラシは置換可能である。例えば、利用者は回転ブラシ28を、例えば、異なる密度のフィラメント30または異なるパターンのフィラメント30を有するブラシ等の異なる回転ブラシと置換可能であり、それによって、利用者は様々なミスト化の状態およびパターンを生成することが可能である。
【0066】
回転ブラシ28は、電気的なモータ44で駆動され得る。代替的に、回転ブラシ28はサムローラ(thumb roller)など手動のクランクで駆動され得る。いずれの場合も、利用者は、ブラシ28の回転速度を指定する、あるいは制御することが可能であり得る。実施例において、装置10は1時間ごとに500mLから800mLの液体をミストに変換するように構成される。例えば、装置は1時間ごとに600mLの液体をミストに変換するように構成され得る。
【0067】
実施例では、図2に示されるように、装置10はハウジング34を含む。一実施形態では、ハウジング34は一般的に円柱形である。しかしながら、ハウジング34の大きさおよび形状は限定されない。図2は一般的に円柱状のハウジング34を示しているが、ハウジングは、噴霧装置10を支持するのに適した任意の数の形状であり得ることが理解されている。ハウジング34は接触プレート12及び回転ブラシ28を含み得る。ハウジング34は、ブラシ28が回転することで、フィラメント30が液体を開口36から射出する、開口36を含む。例えば、ハウジング34は上方部38および下方部40を含み、接触プレート12は、下方部40の下部に位置し、開口36は上方部38内に位置する。
【0068】
開口36の形状は任意の適した形状であり得る。例えば、開口36の形状は一般的に長方形、正方形、円形、または横長(oblong)であり得る。開口36は、狭いスリット、小型の円形の開口部、またはより大きな長方形の開口部であり得る。さらに、ハウジング34は2つ以上の開口36を含む場合があり、従って、装置10が様々なミスト化のパターンを提供することを可能にする。例えば、ハウジング34の上方部38は列状または連続する小型の開口36を含む。
【0069】
実施例において、ハウジング34の上方部38中の開口36の大きさは調整可能であり得る。例えば、開口36は、手動または電子的に、拡大または縮小することが可能である。手動の調整の場合は、開口36がたとえ使用中であっても、利用者が開口部の形状を変更することを可能にする調整可能な構成要素を持ち得る。さらに、毛細管状の開口部20は、特定の群単位で開閉可能であり得、カスタマイズされた液体の噴霧の幅を可能にする。
【0070】
別の実施例において、図3に示されるように、装置10は、ブラシ28の一部分を囲み接触プレート12の下部から伸長するアーチ形の障壁42を含み、アーチ型の障壁42はフィラメント30から放出された液体の一部を収集し得る。障壁はハウジング34の一部であり得る。代替的に、障壁42はハウジング34に追加され得る。
【0071】
図3に示されるように、障壁42は接触プレート12の下から接触プレートに対し約90度まで伸長し、約90度はフィラメント30の放射経路に沿って測定される。そのような実施例において、障壁42は、90度または90度未満で早過ぎる時期に放出された任意の液体を収集し得る。障壁42は、集めた液体が液体源26へ帰還するように、液体源26と流体連絡する。
【0072】
フィラメントを保持するブラシが放射方向に回転する場合には、フィラメント30によって運ばれた液体の一部は、接触プレート12から約180度でフィラメントからミスト状の形態で放出され、約180度は回転ブラシの放射経路に沿って測定される。フィラメント30が振動するまで噴霧化が起こらず、およびフィラメント30はおよそ90度を回転させた後でのみ振動開始するため、噴霧された液滴の方向は接触プレート12から180度である。振動工程を伴わずにスナッププレートから液体を約90度で投げる従来の吹き付け器とは対照的に、本発明の装置は接触プレート12から約180度でミストを射出する。
【0073】
装置10は任意の適切な大きさまたは形の噴霧化された粒子を生成するように構成され得る。例えば、より大きな粒子を生成するために、回転ブラシ28の回転速度は遅くなるか、フィラメント30に供給される液体の量が増加されるか、毛細管状の穴の直径が増加されるか、フィラメント30の厚さが増加されるか、フィラメント30の剛性が減少されるか、またはそれらの組み合わせであり得る。代替的に、装置10から押し出された液体の粒子の大きさを縮小するために、回転ブラシ28の回転速度が増加されるか、フィラメント30に供給される液体の量が減少されるか、毛細管状の穴の直径が減少されるか、フィラメント30の厚さが減少されるか、フィラメント30の剛性が増加されるか、またはそれらの組み合わせであり得る。粒子の形状は球状、胚珠型、魚雷形、円筒状、弾丸形であり得る。さらに、装置10は、異なる距離に液体の粒子を噴霧するように構成されるものであって、例えば、剛性の減少させられたフィラメント30より遠くに粒子を噴霧するためにフィラメント30の剛性を増加させ得る。最終的に、装置が液体を非常に急速に噴霧化するため、小さな粒子を生成する中間の段階を完全に飛ばして、液体から気体への即時の蒸発を引き起こす。
【0074】
液体の粒子は、少なくとも10μm、少なくとも20μm、少なくとも30μm、少なくとも40μm、または、少なくとも60μmの平均のサイズ(すなわち平均の粒径)であり得る。代替的に、あるいは加えて、液体の粒子は、350μm以下、300μm以下、200μm以下、180μm以下、160μm以下、150μm以下、120μm、100μm以下、50μm以下、または20μm以下の直径の寸法であり得る。液体の粒子は上記の終点の任意の2つによって平均の粒子の大きさを制限され得る。例えば、液体の粒子は、10μmから20μm、10μmから50μm、10μmから200μm、20μmから100μm、20μmから3500μm、50μmから120μm、20μmから150μm、または60μmから100μmの平均の粒子の大きさを有し得る。実施例において、装置10は、液滴の少なくとも50%が100ミクロン以下の直径を有し、液滴の形態で液体が射出され得るようにフィラメント30から液体を供給することが可能である。
【0075】
実施例において、装置10は、フィラメント30が1分あたり約800の液体の吸着と振動による噴霧とを行うことを通じて、平均の直径の寸法が115ミクロンである液滴を1回の完全なフィラメントの振動のサイクルにつき約7個生成し、フィラメント30の1本につき1時間あたり0.25MLの液体をミストに変換するように構成される。
【0076】
本明細書はさらに、前記の噴霧化装置10のいかなる実施形態も提供することを含む、噴霧化の方法を提供する。方法はさらに、フィラメント30が接触プレート12に接触し、フィラメント30が、フィラメント30が得られる毛細管状の開口部20内からの液体の一部を吸収するように、ブラシ28を回転させることを含む。図4A−4Cで示されるように、フィラメント30は接触プレート14の上部プレート14を擦り、外部の供給源が毛細管状の開口部20を通じて追加の液体を押し出さなくても、毛細管状の開口部20から液体を吸収する。図4Bから図4Cの間の経過が示すように、一度約100のフィラメント30が毛細管状の開口部20を通過すると直径約1.1mmである毛細管状の開口部で、毛細管状の開口部20内の液体のメニスカスの高さは約1mm減少する。これは、各フィラメントが約0.00001立方センチメートルの液体を毛細管状のチューブを通過するたびに吸収し、100×0.00001立方cc=0.001立方cc、すなわち約1立方ミリメートル、すなわち毛細管状の開口部から失われた液体の量であり、段落0016の概算と一致する。
【0077】
ブラシ28が第1の放射方向に回転するにつれて、フィラメント30は接触プレート12に接触する時に湾曲し、接触プレート12との接触状態から離脱した時に解放してフィラメント30から液体を射出する。図5A−5Dで示されるように、フィラメント30は接触プレート12から解放された後、フィラメント30は中間の(直線状の)位置へ戻り、その後、接触プレート12による湾曲とは反対方向に曲がり続ける。その後、フィラメント30は中間の位置へと戻り、その後中間を超えて逆方向に湾曲し、方向が変わる毎に1つの液滴を放出する。フィラメント30の中間または直線位置を越えて曲がるフィラメント30の特定の振動の周期は、本発明の噴霧化を生成する。言いかえれば、本明細書の装置で利用されるような振動する動きの代わりに、従来の吹き付け器の毛は、単に後方に曲げられ、その後前方に弾かれ直線位置に戻り、払う運動を加え得る。
【0078】
1インチの長さの0.012ナイロンフィラメント30は、22回の振動のサイクル、すなわち約44回の跳ね返りを引き起こす。振動のテストにおいて、「直径1の」長さのフィラメント0.012は、1つの方向に、4分の1秒に22の液滴の範囲の同一の時間間隔で分けられた別々の液滴のストリームを放つことが可能である。装置10は、600rpmで操作された時、振動の最初の約15%を利用する。各振動で、フィラメントは、フィラメント30の末端に付着する液体の1つの液滴を回転に対して前方に、および後方にもう1つを射出する。方向が逆転する点での加速は、3,500rpmで回転する回転ディスクによる噴霧化システムの噴霧化の地点に集中した力と同等である。
【0079】
図6は、底部プレート16が、底部プレート16の上面から上部プレート14の底面24まで垂直に広がる支柱46を含む、接触プレート12の実施形態を表す。加えて、底部プレート16は、支柱46の間の個別の空間18に液体が供給されるように、複数の液体源26を含み得る。その結果、液体源26は、支柱46の間の毛細管状の支柱の一部に液体を供給するのに適している。そのような実施例は、水に対して使用するために設計された毛細管状のプレートには適していない塗料などの、より粘性の強い液体を噴霧化するのに特に適し、既に任意の向きで使用することが可能である。
【0080】
支柱46は、装置が様々な向きで使用されることを可能にする。言いかえれば、装置10は使用中に傾けられても適切なミスト化の能力を維持し得る。支柱46を導入しなければ、装置が傾けられる場合、空間18中の液体は全て空間18の片方の端に蓄積し得る。その結果、液体が蓄積される端での毛細管状の開口部20だけが、液体を吸収し、それによって、フィラメント30へ液体を付与する可能性が変わる。対照的に、上部プレート14と底部プレート16の間の支柱46の導入によって、装置10は空間18の片方の端に液体が蓄積することなく傾けることが可能である。代わりに、支柱46は、装置10の向きに関わらず、複数の毛細管状の開口部20のすべてに適切な液体の量が接触可能であることを確かにする。
【0081】
装置10はさらに、装置10が安定して液体のミストを生成するために、液体源20中に適切な液体の量を維持するように構成されたオーバーフロー機構(ovrflow mechanism)を含み得る。オーバーフロー機構は、液体源26に液体の特定の量を維持するように構成された任意の機械的または電気的な装置であり得る。オーバーフロー機構は、液体の量が装置10の連続的なミストを生成するための最適な量を超過するという液体源26からのフィードバックに際して、オーバーフロー機構が過剰液を液体の貯槽へ保存または導くように、液体源26と連絡し得る。オーバーフロー機構は、液体の量が装置10の適切な噴霧化を生成するための最適な量を超過するという空間18からのフィードバックに際して、オーバーフロー機構が過剰液を液体源26へ保存または導くように、空間18と連絡し得る。別の実施形態では、装置10は、空間18中に一定の量の液体を維持するように構成されたフロート弁を含む。代替的に、空間18中の液体の所定のレベルまたは高さは、調節用のノブを使用して調整可能であり得る。
【0082】
装置10はさらに、ミストの生成を補助する空気の流れを提供する空気圧機構を含み得る。空気圧機構は、例えば、制限されないが、ファンなどの気流を供給するあらゆる機構であり得る。例えば、気流は回転ブラシ28の長手方向に沿って流れ得る。代替的に、空気圧機構は、回転ブラシ28の回転に対して接線方向に気流を提供し得る。例えば、空気圧機構は、ハウジング34内の開口36の方向に空気を供給し、それによって、フィラメント30からの液体の放出を補助する。空気圧機構はさらに、例えば液体が水である場合、冷却効果を提供し得る。
【0083】
本明細書において記載された実施形態への様々な変化および変更が当業者にとって明白であることに注意するべきである。そのような変化および変更は、本発明の趣旨および範囲から外れることはなく、それに付随する利点が縮小されることなく行なわれ得る。例えば、装置10の様々な実施形態は、本明細書において提供される主題からの特徴および機能の様々な組み合わせに基づいて提供され得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6