特許第6670260号(P6670260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670260
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】電動錠装置および引戸
(51)【国際特許分類】
   E05B 47/00 20060101AFI20200309BHJP
   E05F 15/649 20150101ALI20200309BHJP
   E05B 53/00 20060101ALI20200309BHJP
   E05C 3/04 20060101ALN20200309BHJP
【FI】
   E05B47/00 J
   E05F15/649
   E05B53/00 D
   !E05C3/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-20246(P2017-20246)
(22)【出願日】2017年2月7日
(65)【公開番号】特開2018-127790(P2018-127790A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 史智
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇博
【審査官】 桐山 愛世
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−152630(JP,A)
【文献】 特開平03−129073(JP,A)
【文献】 特開2010−196807(JP,A)
【文献】 特開2010−196458(JP,A)
【文献】 特開2011−132707(JP,A)
【文献】 特開2006−029032(JP,A)
【文献】 特開2011−208414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 47/00
E05B 53/00
E05B 65/08
E05F 15/00−15/79
E05C 3/04
E05C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸体に装着可能な電動操作ユニットと、前記戸体の解錠および施錠を行う錠と、前記戸体の蹴り出しを行う蹴り出し機構と、前記電動操作ユニット、前記錠および前記蹴り出し機構を連結した連動バーとを備え、
前記電動操作ユニットは、解錠操作および施錠操作可能な操作部と、電動モータと、前記操作部の操作に基づいて前記電動モータの駆動を制御する制御部と、前記電動モータの駆動を前記連動バーに伝達する伝達機構とを備え、
前記連動バーは、施錠位置と、蹴り出し位置と、当該施錠位置および蹴り出し位置間にある解錠位置とに移動可能に配置され、
前記錠は、前記連動バーの前記施錠位置から前記解錠位置への移動に連動して解錠し、かつ、前記連動バーの前記解錠位置から前記施錠位置への移動に連動して施錠する構成とされ、
前記蹴り出し機構は、前記連動バーの前記解錠位置から前記蹴り出し位置への移動に連動して前記戸体の蹴り出しを行う構成とされ、
前記制御部は、前記操作部の解錠操作に基づいて、前記連動バーを前記施錠位置から前記解錠位置を通過して前記蹴り出し位置まで移動させ、その後、前記連動バーを前記蹴り出し位置から前記解錠位置まで移動させる前記電動モータの駆動制御を実行し、かつ、前記操作部の施錠操作に基づいて、前記連動バーを前記解錠位置から前記施錠位置まで移動させる前記電動モータの駆動制御を実行する構成とされている
ことを特徴とする電動錠装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動錠装置において、
前記連動バーは上下動可能に配置され、
前記伝達機構は、前記電動モータに連結された減速歯車機構と、前記減速歯車機構に連結された回動部材と、前記連動バーに取り付けられたスライダとを備え、
前記回動部材には、その回動軸心から離間した位置にガイドピンが取り付けられ、
前記スライダには、前記ガイドピンが配置された横ガイド溝が形成されている
ことを特徴とする電動錠装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電動錠装置において、
前記連動バーに係合してその移動を規制する空掛け防止機構を備え、
前記空掛け防止機構は、前記戸体に装着可能なケースと、前記ケースに対して進退可能に配置された戸当り部材と、前記戸当り部材を前記ケースに対して前進方向に付勢する付勢部材とを備え、
前記連動バーには切欠き部が形成され、
前記戸当り部材は、前記ケースに対して前進した状態で前記切欠き部に係合し、前記ケースに対して後退した状態で前記切欠き部との係合が外れる構成とされている
ことを特徴とする電動錠装置。
【請求項4】
枠体と、枠体内に配置されたスライド可能な戸体と、前記戸体に装着された請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動錠装置とを備えている
ことを特徴とする引戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸体の施錠、解錠および蹴り出しを行う電動錠装置および引戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば大型で重たい戸体を開放方向にスライドさせるため、戸体を開放方向に向かって蹴り出す蹴り出し機構(開放支援機構)付きの錠装置が用いられる。
この錠装置としては、例えば特許文献1に記載された開放支援機構付き鎌錠が知られている。
【0003】
この鎌錠は、図11に示すように、縦枠に取り付けられたストライカー104に係合可能なフックボルト115と、フックボルト115を施錠姿勢と解錠姿勢とに切り換え操作するサムターンレバーと一体のサムターン軸120と、解錠状態のフックボルト115が施錠姿勢に切り換わるのを規制するトリガー117と、開放支援機構とを備えており、これらの構成は、引戸102に装着されたケース110に設けられている。
【0004】
開放支援機構は、キックレバー142と、付勢ばね146と、操作ハンドル145とによって構成されている。キックレバー142は、ケース110内における待機姿勢と、当該キックレバー142の一部がケース110外へ突出した作動姿勢との間で往復動可能にケース110に軸支されている。付勢ばね146は、キックレバー142を待機姿勢となる方向へ向かって付勢する引張コイルばねによって構成されている。操作ハンドル145は、付勢ばね146の付勢力に抗してキックレバー142を待機姿勢から作動姿勢に切り換え操作可能に配置されている。
キックレバー142およびフックボルト115は、リンク棒147を介して連動可能に連結されている。この開放支援機構は、操作ハンドル145のハンドル動作によってキックレバー142を回動させることで、キックレバー142による縦枠に対する蹴り出し動作と、キックレバー142に連動するフックボルト115によるストライカー104との係合を解除する解錠動作を行う構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4426477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載された鎌錠では、キックレバー142の作動姿勢から待機姿勢への回動はフックボルト115の施錠動作とは連動しない。このため、施錠動作は、操作ハンドル145とは別のサムターンレバーを操作しなければならず、操作が煩雑である。
【0007】
本発明の目的は、簡単な操作で施錠、解錠および蹴り出し動作を行うことができる電動錠装置および引戸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動錠装置は、戸体に装着可能な電動操作ユニットと、前記戸体の解錠および施錠を行う錠と、前記戸体の蹴り出しを行う蹴り出し機構と、前記電動操作ユニット、前記錠および前記蹴り出し機構を連結した連動バーとを備え、前記電動操作ユニットは、解錠操作および施錠操作可能な操作部と、電動モータと、前記操作部の操作に基づいて前記電動モータの駆動を制御する制御部と、前記電動モータの駆動を前記連動バーに伝達する伝達機構とを備え、前記連動バーは、施錠位置と、蹴り出し位置と、当該施錠位置および蹴り出し位置間にある解錠位置とに移動可能に配置され、前記錠は、前記連動バーの前記施錠位置から前記解錠位置への移動に連動して解錠し、かつ、前記連動バーの前記解錠位置から前記施錠位置への移動に連動して施錠する構成とされ、前記蹴り出し機構は、前記連動バーの前記解錠位置から前記蹴り出し位置への移動に連動して前記戸体の蹴り出しを行う構成とされ、前記制御部は、前記操作部の解錠操作に基づいて、前記連動バーを前記施錠位置から前記解錠位置を通過して前記蹴り出し位置まで移動させ、その後、前記連動バーを前記蹴り出し位置から前記解錠位置まで移動させる前記電動モータの駆動制御を実行し、かつ、前記操作部の施錠操作に基づいて、前記連動バーを前記解錠位置から前記施錠位置まで移動させる前記電動モータの駆動制御を実行する構成とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の電動錠装置によれば、操作部の解錠操作によって電動モータを駆動して連動バーを移動することで、錠を解錠し、この解錠に連続して蹴り出し機構による戸体の蹴り出しを行うことができる。また、操作部の施錠操作によって電動モータを駆動して連動バーを移動することで、錠を施錠できる。このように、簡単な操作で施錠、解錠および蹴り出し動作を行うことができる。
【0010】
本発明の電動錠装置では、前記連動バーは上下動可能に配置され、前記伝達機構は、前記電動モータに連結された減速歯車機構と、前記減速歯車機構に連結された回動部材と、前記連動バーに取り付けられたスライダとを備え、前記回動部材には、その回動軸心から離間した位置にガイドピンが取り付けられ、前記スライダには、前記ガイドピンが配置された横ガイド溝が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、電動モータの駆動が減速歯車機構によって減速されるので、減速された分だけ大きなトルクで蹴り出し動作を行うことができ、例えば一般的な戸体よりも大型で重たい戸体を大きな力で蹴り出すことができる。
【0011】
本発明の電動錠装置では、前記連動バーに係合してその移動を規制する空掛け防止機構を備え、前記空掛け防止機構は、前記戸体に装着可能なケースと、前記ケースに対して進退可能に配置された戸当り部材と、前記戸当り部材を前記ケースに対して前進方向に付勢する付勢部材とを備え、前記連動バーには切欠き部が形成され、前記戸当り部材は、前記ケースに対して前進した状態で前記切欠き部に係合し、前記ケースに対して後退した状態で前記切欠き部との係合が外れる構成とされていることが好ましい。
このような構成によれば、引戸の縦枠に対して戸当り部材が当接してケースに対して後退した状態では、戸当り部材と連動バーの切欠き部との係合が外れているので、連動バーは移動可能であり、操作部の解錠操作や施錠操作によって錠および蹴り出し機構を動作させることができる。一方、縦枠に対して戸当り部材が離れてケースに対して前進した状態では、戸当り部材と連動バーの切欠き部とが係合しているので、連動バーの移動はできず、錠および蹴り出し機構を不作動状態にできる。
【0012】
本発明の引戸は、枠体と、枠体内に配置されたスライド可能な戸体と、前記戸体に装着された前述した本発明の電動錠装置とを備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の引戸によれば、前述した本発明の電動錠装置と同様の作用効果を発揮できる引戸を構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な操作で施錠、解錠および蹴り出し動作を行うことができる電動錠装置および引戸を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る引戸を示す内観姿図。
図2】前記実施形態に係る引戸の電動錠装置を示す正面図。
図3】前記実施形態に係る引戸の電動操作ユニットを分解して示す斜視図。
図4】前記実施形態に係る引戸のスライダを示す斜視図。
図5】前記実施形態に係る引戸の蹴り出し機構を示す斜視図。
図6】前記実施形態に係る引戸の連動バーを示す斜視図。
図7】前記実施形態に係る引戸の空掛け防止機構を示す説明図。
図8】前記実施形態に係る引戸の電動操作ユニットの動作を示す縦断面図。
図9】前記実施形態に係る引戸の電動錠装置の動作を示す説明図。
図10】前記実施形態に係る引戸の空掛け防止機構の動作を示す斜視図。
図11】従来における開放支援機構付き鎌錠を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、本実施形態に係る引戸としての引き違い戸1は、枠体2と、枠体2内に左右方向に引き違い可能に配置された戸体3,4と、戸体3,4にそれぞれ取り付けられた電動錠装置10とを備えている。戸体3は、戸体4よりも室外側に配置されている。
【0017】
枠体2は、上枠21、下枠22および左右の縦枠23を枠組みして構成されている。上枠21には、その室外側および室内側に上レール(図示省略)が形成されており、各上レールには、戸体3,4の後述する上框31,41が、左右方向にスライド可能に嵌合している。下枠22には、その室外側および室内側に下レール(図示省略)が形成されており、各下レールには、戸体3,4の後述する下框32,42に設けられた戸車が左右方向に走行可能に載置されている。
【0018】
戸体3は、上框31、下框32および左右の縦框33と面材としての複層ガラスパネル34を框組みして構成されている。図1において左側に示す縦框33が戸先縦框であり、この戸先縦框に対して右側にある縦框(図示省略)が外召合せ框である。なお、本実施形態では、複層ガラスパネル34を用いているが、単層ガラスパネルであってもよい。
【0019】
戸体4は、上框41、下框42および左右の縦框43と面材としての複層ガラスパネル44を框組みして構成されている。図1において右側に示す縦框43が戸先縦框であり、この戸先縦框に対して左側にある縦框が内召合せ框43である。なお、本実施形態では、複層ガラスパネル44を用いているが、単層ガラスパネルであってもよい。また、内召合せ框43および前述した外召合せ框にはクレセント錠5が取り付けられている。
【0020】
戸体3,4に取り付けられた電動錠装置10は、互いに同様に構成されているので、以下、戸体4に取り付けられた電動錠装置10について詳細に説明し、戸体3に取り付けられた電動錠装置10についてはその詳細な説明を省略する。
【0021】
電動錠装置10は、図2に示すように、戸体4の戸先側の縦框43に装着された電動操作ユニット50と、戸体4の解錠および施錠を行う図示しない錠と、戸体4の蹴り出しを行う蹴り出し機構60(開放支援機構)と、電動操作ユニット50、蹴り出し機構60および錠を連結した連動部材である連動バー80と、連動バー80に係合してその移動を規制する空掛け防止機構70とを備えている。
【0022】
電動操作ユニット50は、図3に示すように、解錠操作および施錠操作可能な操作部51と、電動モータ52と、バッテリボックス53と、操作部51の操作に基づいて電動モータ52の回転駆動を制御する制御部54と、電動モータ52の回転駆動を連動バー80に伝達する伝達機構56と、操作部51、電動モータ52、バッテリボックス53、制御部54および伝達機構56が設けられた縦長のケース57とを備えている。
ケース57は、戸体4の戸先側の縦框43に形成された開口に配置されており、操作部51は、ケース57の室内面側に露出して操作可能に配置されている。電動モータ52および制御部54は、取付板6に取り付けられている。電動モータ52の回転軸は上下方向に沿って配置されている。制御部54は、制御基盤によって構成されており、後述する解錠ボタン512、施錠ボタン513、電動モータ52およびバッテリボックス53に電気的に接続されており、操作部51の操作に基づいてバッテリボックス53から電動モータ52に電力を供給する。
【0023】
操作部51は、ケース57の室内面に装着される操作カバー511と、操作カバー511に形成された二つの孔部にそれぞれ操作可能に配置された解錠ボタン512および施錠ボタン513(図2参照)とを備えている。
【0024】
伝達機構56は、電動モータ52に連結された減速歯車機構561と、減速歯車機構561に連結された回動部材59と、連動バー80に取り付けられたスライダ55とを備えている。
【0025】
減速歯車機構561は、電動モータ52の回転軸に取り付けられた第一ねじ歯車562と、第一ねじ歯車562と噛合した第二ねじ歯車563と、第二ねじ歯車563に同軸上に取り付けられた第一歯車564(平歯車)と、第一歯車564と噛合した大径歯部565Aおよび大径歯部565Aよりも小径の小径歯部565Bを有した段付歯車565と、段付歯車565の小径歯部565Bと噛合した第二歯車566(平歯車)とを備えている。段付歯車565および第二歯車566の軸部は、一対の支持板567A,567Bに軸支されており、第二ねじ歯車563および第一歯車564の軸部は、支持板567A,567Bおよび取付板6に軸支されている。第二歯車566の軸部は回動部材59に取り付けられている。
【0026】
第一ねじ歯車562の軸部は、上下方向に沿っている。一方、第二ねじ歯車563および第一歯車564の軸部は水平方向に沿っており、電動錠装置10の縦框43への取付け状態では、戸体4の見込み方向に沿って配置されている。このように、第一ねじ歯車562および第二ねじ歯車563は食い違い軸であるので、本実施形態のように回転軸が上下方向に沿うように電動モータ52を縦向きに配置しても、第二ねじ歯車563の軸部を水平方向に沿って配置できる。これにより、電動モータ52を縦長のケース57内に収容することが容易であり、電動モータ52が戸体4の見込み方向に突出して配置されることをなくし得る。
【0027】
第一歯車564は、段付歯車565の大径歯部565Aよりも小径であり、このため、第一歯車564の回転は段付歯車565に減速(一次減速)されて伝達される。また、段付歯車565の小径歯部565Bは、第二歯車566よりも小径であり、このため、段付歯車565の回転は第二歯車566に減速(二次減速)されて伝達される。このように電動モータ52の回転駆動は、第一ねじ歯車562側から第二歯車566側に減速して伝達されるので、トルクが大きくなった回転が回動部材59に伝達される。
【0028】
回動部材59は、円板状基部591と、円板状基部591の周縁に連続した扇状回動部592とを有しており、円板状基部591の中心部に前述した第二歯車566の軸部が取り付けられている。扇状回動部592には、回動部材59の回動軸心から離れて配置されたカラー付きのガイドピン59Aが取り付けられている。
【0029】
スライダ55は、図4に示すように、断面略L字形状に形成された板状部材であり、スライダ55の板状の本体部551と、本体部551の上下間において直角に折曲された取付部552とを有している。取付部552は、板状であって本体部551よりも上下方向に短く形成されている。
【0030】
本体部551には、上下方向に同じ長さで互いに一直線上に延在して形成された一対の上下のガイド溝551A,551Bが形成されている。
また、本体部551の上下方向における中間部分には、その一方の側縁から幅方向(横方向)に沿った横ガイド溝551Cが形成されており、この横ガイド溝551Cには、前述したガイドピン59Aが挿入されている。
取付部552には、上下一対の孔552A,552Bが形成されている。取付部552は、孔552A,552Bに挿通されたねじ(図示省略)によって連動バー80にねじ止めされている。
【0031】
ケース57は、ケース本体571と、ケース本体571にねじ止めされて当該ケース本体571の開口を閉じるケースカバー572とを備えている。
ケース本体571の内部には、電動モータ52、バッテリボックス53、制御部54および伝達機構56が収容されている。また、ケース本体571は、第一当接部573と、第二当接部574とを有している。第一当接部573は、電動錠装置10による戸体4の施錠状態において回動部材59の扇状回動部592の周方向における一方の縁部に当接する位置に配置されている。第二当接部574は、電動錠装置10による戸体4の解錠状態において回動部材59の扇状回動部592の周方向における他方の縁部に当接する位置に配置されている。
ケースカバー572のスライダ55に対する対向面側には、ガイドピン58A,58Bが設けられており、ガイドピン58A,58Bは、それぞれスライダ55のガイド溝551A,551Bに挿入されている。
【0032】
電動錠装置10の錠は、連動バー80の上下動に連動して回動する周知の掛け金などのロック装置によって構成されている。掛け金は、戸体4に対して戸先側の縦枠23に固定された掛止部に掛けられた状態で戸体4を施錠状態とし、掛止部から外れた状態で戸体4を解錠状態とする。
前述したロック装置は任意の構造(例えば、実公昭59−15584号公報、特開2006−241748号公報に記載された錠など)が採用可能である。ここで、電動操作ユニット50で直接に掛け金などを回動させるものに限られず、連動バー80の上下動に連動して施錠、解錠する構成であってもよい。
【0033】
蹴り出し機構60は、図5に示すように、取付用の基板61と、基板61に回動可能に連結された蹴り出しアーム63とを備えている。
基板61は、戸体4の戸先側の縦框43に取り付けるための取付部61Aと、取付部61Aから直角に折曲されたアーム支持部61Bとを備えている。この基板61は、断面略L字状に形成されている。
アーム支持部61Bには、図5(A)に示すように、その上端部に連結ピン62で蹴り出しアーム63が回転可能に取り付けられており、蹴り出しアーム63の自由端(回動端)には蹴り出しローラ64が回転可能に取り付けられている。
【0034】
アーム支持部61Bには、縦方向に沿った第1のガイド溝611が形成されており、また、蹴り出しアーム63には、縦方向のガイド溝部分の上端から斜め上方へ屈曲した溝を有した第2のガイド溝631が形成されている。第2のガイド溝631は、全体として略へ字状に形成されている。各ガイド溝611,631の縦方向部分は、互いに位置整合されて配置されている。
【0035】
連動バー80には、図5(B)に示すように、断面略L字状のガイドピン取付部材84の取付面84Aがねじ止めされている。ガイドピン取付部材84の取付面84Aから直角に折曲されたガイドピン取付面84Bには、ガイドピン86が立設されている。
【0036】
ガイドピン86は、図5(A)に示すように、基板61のアーム支持部61Bの第1のガイド溝611と蹴り出しアーム63の略へ字状に屈曲した第2のガイド溝631の両方に挿通されている。
【0037】
この連動バー80は、上下動によって施錠位置(図9(A)参照)、解錠位置(図9(B)参照)および蹴り出し位置(図9(C)参照)に配置可能である。ここで、連動バー80の施錠位置は下方に下がった位置であり、連動バー80の蹴り出し位置は上方に上がった位置であり、連動バー80の解錠位置は、施錠位置および蹴り出し位置間の位置である。
この構成において、戸体4の閉鎖状態から、電動操作ユニット50の解錠ボタン512の操作により電動モータ52を回転駆動して連動バー80を施錠位置から解錠位置へ上昇させると、ガイドピン86は第1のガイド溝611と第2のガイド溝631の縦方向溝部分中を上昇する。ここで、ガイドピン86が第2のガイド溝631の縦方向溝部分中を上昇する間は、蹴り出しアーム63は駆動されず不動であるが、この間に錠の解錠が行われる。
【0038】
錠の解錠に続いて、連動バー80が解錠位置から蹴り出し位置へさらに上昇し、ガイドピン86が第2のガイド溝631の斜め上方向き溝部分に至ると、上昇するガイドピン86が、斜め上向きの溝部分を押し上げる。これにより、蹴り出しアーム63は、連結ピン62の回りで回動して戸体4の縦框43から外方に出て、図1において右側に示す縦枠23を蹴って戸体4を開放方向に押し出す。
【0039】
このように、本実施形態では、電動操作ユニット50の操作により、まず錠の解錠を行い、その後に蹴り出しアーム63による蹴り出しを行う。この場合、連動バー80の上昇開始から蹴り出しアーム63による蹴り出し開始までの動作は、ガイドピン86が第2のガイド溝631の縦方向溝部分中を移動するガイドピン86の空動きによって遅延される。
なお、本実施形態では、第2のガイド溝631の縦方向溝部分の長さは、操作部51の電動モータ52を回転駆動させたときのスライダ55および連動バー80の摺動長さに設定されている。
【0040】
連動バー80は、電動操作ユニット50の操作によるスライダ55の上下動を蹴り出し機構60に伝達する連動部材として構成されており、板状であっても棒状であってもよい。図6に示すように、連動バー80の下端側は、スライダ55の取付部552に連結されており、連動バー80の上端側は、ガイドピン取付部材84に連結されている。
【0041】
連動バー80の上下方向における中間部には、図6に示すように、横方向に沿った切欠き部85が形成されており、切欠き部85は、図2に示す空掛け防止機構70の一部を構成している。具体的には、切欠き部85は、戸体4の開放時において後述する空掛け防止機構70のストッパとなる壁部723に係合し、それにより、連動バー80の上下動が阻止されて、戸体4の開放時におけるロック装置の空掛け防止がなされている。
【0042】
空掛け防止機構70は、図7に示すように、戸体4の戸先側の縦框43に装着されたケース75と、ケース75に対して戸体4の開閉方向に進退可能に配置された戸当り部材72(トリガ)と、戸当り部材72を戸体4に対して戸先側の縦枠23側に向かう前進方向に付勢する付勢部材としてのコイルばね74(圧縮コイルばね)とを備えている。ケース75の側壁は戸当り部材72が進退動作する際のガイドとなっている。
【0043】
戸当り部材72は、戸体4に対して戸先側の縦枠23の見込み面に当接する当接面721と、連動バー80の通過を許容する溝部722と、戸体4に対して戸先側の縦枠23から当該戸体4が離れて戸当り部材72が戸先側の縦框43から突出したとき、連動バー80の切欠き部85の上下の端部851,852(図6参照)に当接して、連動バー80の上下動を阻止するストッパとなる壁部723とを備えている。
【0044】
戸当り部材72は、戸体4が全閉した状態では、戸体4に対して戸先側の縦枠23に当接面721が当接し、コイルばね74を圧縮してケース75に対して後退する。一方、戸体4を開放した状態では、コイルばね74の弾性的な付勢力によってケース75に対して前進して戸先側の縦框43から前記戸先側の縦枠23側に向かって突出する。なお、図7(A)および図7(B)は、いずれも戸当り部材72がコイルばね74の付勢力によって突出した状態を示している。
【0045】
ここで、図7(B)に示す戸当り部材72の溝部722の幅W1は、連動バー80の幅W2よりも広く構成されている。従って、全閉状態の戸体4が所定の幅W1に相当する幅(距離)だけ開く間は、連動バー80は自由に上下動可能である。
戸体4が幅W1に相当する幅だけ開くと、連動バー80の切欠き部85と戸当り部材72の壁部723とが当接して連動バー80の上下動を阻止する。この状態では、連動バー80が拘束されるため、ロック装置の空掛けおよび蹴り出しアーム63の作動が阻止される。
【0046】
戸体4を閉じる場合には、戸体4が全閉位置に近づいて戸先側の縦框43から突出した戸当り部材72の当接面721が当該戸体4に対して戸先側の縦枠23に当接すると、戸当り部材72は、コイルばね74の付勢力に抗して後退する。この場合、戸当り部材72の後退幅が、連動バー80と当接している溝部722の壁部723の幅W2(連動バー80の幅と等しく形成されることが好ましい)を越えると、連動バー80は戸当り部材72との当接が外れ、戸当り部材72の溝部722中を自由に上下動可能になる。従って、この位置において、つまり全開位置に至るのに先立って戸体4の施錠動作が可能になる。
【0047】
なお、戸体3に取り付けられた電動錠装置10は、戸体4に取り付けられた電動錠装置10と同様に構成されており、前述同様に戸体3の施錠、解錠および蹴り出しをするものであるので、その詳細な説明を省略する。
【0048】
[本実施形態の動作]
以下、本実施形態に係る引き違い戸1の戸体4側における動作を説明する。なお、戸体3側における動作も概略同様であるのでその説明を省略する。
戸体4側の電動錠装置10は、電動モータ52の回転駆動に基づいて錠を施錠または解錠するとともに、蹴り出し機構60を作動して戸体4を全閉位置から蹴り出して、戸体4の開放を支援する。また、戸体4の開放状態においては、空掛け防止機構70により電動錠装置10(蹴り出し機構60を含む)の作動を禁止する。以下詳述する。
【0049】
[解錠動作]
図8(A)および図9(A)は、戸体4が閉じかつ電動錠装置10で施錠された施錠状態を示している。操作部51の解錠ボタン512が押されると、電動モータ52が回転駆動し、この回転駆動が減速歯車機構561を介して回動部材59に伝達され、回動部材59が上方に向かって回動することでガイドピン59Aが横ガイド溝551Cに沿って揺動しながら上昇し、このガイドピン59Aの上昇によって、スライダ55は、上下のガイド溝551A,551Bがケースカバー572のガイドピン58A,58Bに案内されながら押し上げられる。スライダ55の上昇することで、当該スライダ55に取り付けられた連動バー80も施錠位置から解錠位置へ向かって上昇する。
【0050】
連動バー80が上昇すると、連動バー80の上部に取り付けたガイドピン取付部材84のガイドピン86は、第1のガイド溝611および第2のガイド溝631に沿って上昇する。同時に、連動バー80の上昇に連動して図示しない掛け金を戸体4に対して戸先側の縦枠23の掛止部から引き上げて解錠する。このとき、スライダ55および連動バー80は図8(B)および図9(B)に示す解錠位置に配置される。
操作部51の電動モータ52の回転駆動に伴って連動バー80がさらに上昇すると、連動バー80のガイドピン取付部材84のガイドピン86は、蹴り出しアーム63の第2のガイド溝631の斜め上方へ向かう屈曲部に到達する。
【0051】
電動モータ52は戸体4の解錠後も連続して回転駆動するので、連動バー80に連結されたガイドピン取付部材84のガイドピン86はさらに上昇し、第2のガイド溝631の斜め上方に傾斜した部分に達すると、その斜めになった第2のガイド溝631の上側の壁に当接してこれを押し上げる。これにより、第2のガイド溝631を設けた蹴り出しアーム63は連結ピン62の周りで上方に向かって回動する。
【0052】
この回動に伴い、蹴り出しアーム63の自由端(回動端)に回転可能に支持された蹴り出しローラ64は、戸体4に対して戸先側の縦枠23を押して当該戸体4を戸先側の縦枠23から引き離す(即ち、蹴り出す)。この蹴り出しローラ64による戸体4の蹴り出しは、スライダ55および連動バー80が図8(C)および図9(C)に示す蹴り出し位置に到達するまで続けられる。スライダ55および連動バー80が蹴り出し位置にそれぞれ到達すると、回動部材59の扇状回動部592の一方の縁部が第一当接部573に当接し、電動モータ52における電流値が上昇する。制御部54は、この電流値の上昇を検知して電動モータ52の回転駆動を一旦停止させ、逆方向に所定量だけ回転駆動させる。この逆方向の回転駆動が伝達機構56などを介してスライダ55および連動バー80を蹴り出し位置から解錠位置まで下降して停止する。
【0053】
ここで、連動バー80が蹴り出し位置から解錠位置へ向かって下降することによって、ガイドピン取付部材84のガイドピン86は、蹴り出しアーム63の第2のガイド溝631の斜め上方へ向かう屈曲部を下降し、蹴り出し機構60の蹴り出しローラ64は、戸体4の縦框43内の待機位置へ戻る。
このようにして、電動錠装置10によって戸体4の解錠および蹴り出しを連続動作させる解錠動作を行う。
【0054】
[施錠動作]
図8(B)および図9(B)は、戸体4が開きかつ電動錠装置10によって錠が解錠された解錠状態を示している。操作部51の施錠ボタン513が押されると、電動モータ52が回転駆動し、この回転駆動が減速歯車機構561を介して回動部材59に伝達され、回動部材59が下方に向かって回動することでガイドピン59Aが横ガイド溝551Cに沿って揺動しながら下降し、このガイドピン59Aの下降によって、スライダ55は、上下のガイド溝551A,551Bがケースカバー572のガイドピン58A,58Bに案内されながら押し下げられる。スライダ55が下降することで、当該スライダ55に取り付けられた連動バー80も解錠位置から施錠位置へ向かって下降する。
【0055】
連動バー80が下降すると同時に連動バー80の下降に連動して図示しない掛け金を戸体4に対して戸先側の縦枠23の掛止部に掛け落として施錠する。このとき、スライダ55および連動バー80は図8(A)および図9(A)に示す施錠位置に配置される。
スライダ55および連動バー80が施錠位置にそれぞれ到達すると、回動部材59の扇状回動部592の他方の縁部が第二当接部574に当接し、電動モータ52における電流値が上昇する。制御部54は、この電流値の上昇を検知して電動モータ52の回転駆動を停止する。
このようにして、電動錠装置10によって戸体4の施錠動作を行う。
【0056】
[空掛け防止機構の動作]
次に、一連の戸体4の解錠および蹴り出し動作が終了した段階で、空掛け防止機構70が作動して、錠の空掛けが防止される。次に、その点について説明する。
前述したように、戸先側の縦框43の連動バー80に沿った操作部51および蹴り出し機構60間の位置に空掛け防止機構70が設けられている。
【0057】
電動錠装置10による施錠状態では、空掛け防止機構70は、図10(A)に示すように、戸先側において戸体4の縦框43と縦枠23とが当接しており、この状態では、戸当り部材72はコイルばね74の付勢力に抗して縦枠23に当接している。そのため、戸当り部材72は縦框43側に止まっており、連動バー80は、戸当り部材72の溝部722中を自由に移動できる。
【0058】
電動錠装置10による解錠状態では、空掛け防止機構70は、図10(B)に示すように、連動バー80が上昇し、その切欠き部85が戸当り部材72の溝部722を通過する。この段階ではロックの解錠がなされているが、まだ、蹴り出し機構60は作動していない。そのため、戸先側において戸体4の縦框43と縦枠23とが当接しており、連動バー80は図10(A)に示す状態と同様に戸当り部材72の溝部722中を自由に移動できる。
【0059】
電動錠装置10による蹴り出し状態では、空掛け防止機構70は、図10(C)に示すように、戸体4が戸先側の縦枠23から離れるため、戸当り部材72に対する戸体4からのコイルばね74に対する抗力は作用しない。従って、戸当り部材72は戸体4の縦框43から外方に突出しようとするが、連動バー80の切欠き部85の下側の部分が戸当り部材72の溝部722の下側側壁部と当接しているため、戸当り部材72の突出が阻まれている。
【0060】
図10(D)は、一旦蹴り出した蹴り出しローラ64が元の待機位置に戻るために連動バー80が図10(C)に示す状態から下降した状態を示している。連動バー80の下降中に、連動バー80の切欠き部85が溝部722の位置に合致すると、連動バー80の拘束が解かれる。このため、戸当り部材72はコイルばね74の付勢力によって連動バー80の切欠き部85を通って縦框33から飛び出した空掛け防止状態となる。
【0061】
戸当り部材72が一旦縦框33から飛び出すと、連動バー80の切欠き部85の上下の端部851,852は、戸当り部材72の上下を挟み込む位置関係になる。そのため、連動バー80を上昇させようとすれば戸当り部材72の壁部723が切欠き部85の上側の端部851に当接し、また、連動バー80を下降させようとすれば、戸当り部材72の下壁面が切欠き部85の下側の端部852に当接する。そのため、連動バー80の移動は不可能になる。従って、ロック装置の空掛けを防止できる。
【0062】
[本実施形態の効果]
(1)本実施形態では、電動錠装置10は、戸体4(3)に装着可能な電動操作ユニット50と、戸体4(3)の解錠および施錠を行う錠と、戸体4(3)の蹴り出しを行う蹴り出し機構60と、電動操作ユニット50、錠および蹴り出し機構60を連結した連動バー80とを備え、電動操作ユニット50は、解錠操作および施錠操作可能な操作部51と、電動モータ52と、操作部51の操作に基づいて電動モータ52の駆動を制御する制御部54と、電動モータ52の駆動を連動バー80に伝達する伝達機構56とを備え、連動バー80は、施錠位置と、蹴り出し位置と、当該施錠位置および蹴り出し位置間にある解錠位置とに移動可能に配置され、錠は、連動バー80の施錠位置から解錠位置への移動に連動して解錠し、かつ、連動バー80の解錠位置から施錠位置への移動に連動して施錠する構成とされ、蹴り出し機構60は、連動バー80の解錠位置から蹴り出し位置への移動に連動して戸体4(3)の蹴り出しを行う構成とされ、制御部54は、操作部51の解錠操作に基づいて、連動バー80を施錠位置から解錠位置を通過して蹴り出し位置まで移動させ、その後、スライダ55を蹴り出し位置から解錠位置まで移動させる電動モータ52の駆動制御を実行し、かつ、操作部51の施錠操作に基づいて、連動バー80を解錠位置から施錠位置まで移動させる電動モータ52の駆動制御を実行する構成とされていることを特徴とする。
上記構成を有するため、操作部51の解錠操作によって電動モータ52を駆動して連動バー80を上方に移動することで、錠を解錠し、この解錠に連続して蹴り出し機構60による戸体4(3)の蹴り出しを行うことができる。また、操作部51の施錠操作によって電動モータ52を駆動して連動バー80を下方に移動することで、錠を施錠できる。このように、簡単な操作で施錠、解錠および蹴り出し動作を行うことができる。
さらに、本実施形態では、以下の各効果を発揮できる。
(2)前記実施形態では、連動バー80は上下動可能に配置され、伝達機構56は、電動モータ52に連結された減速歯車機構561と、減速歯車機構561に連結された回動部材59と、連動バー80に取り付けられたスライダ55とを備え、回動部材59には、その回動軸心から離間した位置にガイドピン59Aが取り付けられ、スライダ55には、ガイドピン59Aが配置された横ガイド溝551Cが形成されている。
このため、電動モータ52の駆動が減速歯車機構561によって減速されるので、減速された分だけ大きなトルクで蹴り出し動作を行うことができ、例えば一般的な戸体よりも大型で重たい戸体4(3)を大きな力で蹴り出すことができる。また、施錠時には、戸体4(3)と縦枠23に介在されたエアタイト材を潰しながら施錠することが可能である。
(3)前記実施形態では、連動バー80に係合してその移動を規制する空掛け防止機構70を備え、空掛け防止機構70は、戸体4(3)に装着可能なケース75と、ケース75に対して進退可能に配置された戸当り部材72と、戸当り部材72をケース75に対して前進方向に付勢する付勢部材としてのコイルばね74とを備え、連動バー80には切欠き部85が形成され、戸当り部材72は、ケース75に対して前進した状態で切欠き部85に係合し、ケース75に対して後退した状態で切欠き部85との係合が外れる構成とされている。
このため、戸先側の縦枠23に対して戸当り部材72が当接してケース75に対して後退した状態では、戸当り部材72と連動バー80の切欠き部85との係合が外れているので、連動バー80は移動可能であり、操作部51の解錠操作や施錠操作によって錠および蹴り出し機構60を動作させることができる。一方、戸先側の縦枠23に対して戸当り部材72が離れてケース75に対して前進した状態では、戸当り部材72と連動バー80の切欠き部85とが係合しているので、連動バー80の移動はできず、錠および蹴り出し機構を不作動状態にできる。
また、錠の空掛け防止を、戸当り部材72と連動バー80との当接による簡易な構成により自動で行えるため、全体として電動錠装置10の操作を単純化できる。
【0063】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、電動錠装置10の蹴り出し機構60は一つであるものとして説明したが、これに限られず、複数の蹴り出し機構60があってもよい。例えば、複数の蹴り出し機構60を縦框43(33)内において上下方向に所定間隔を隔てて取り付け、これらを一つの連動バー80に連動させてもよい。このように構成した場合には、複数の蹴り出し機構60を同時に作動でき、一つの蹴り出し機構60だけの場合よりも、戸体4(3)をバランス良く押し出すことができ、戸体4(3)の全閉位置からの押出し動作をスムーズに行うことができる。
【0064】
前記実施形態では、伝達機構56は、電動モータ52の回転を回動部材59に減速して伝達する減速歯車機構561を備えているが、これに限られず、十分なトルクが得られる場合には、減速せずに伝達する歯車機構を備えていてもよい。
【0065】
前記実施形態では、電動錠装置10は、空掛け防止機構70を備えているが、錠の空掛け防止を戸体4(3)の開閉に応じて自動的に行う必要性がない場合には、この空掛け防止機構70の構成を省略してもよい。
【0066】
前記実施形態では、引き違い戸1を引戸として説明したが、片引き戸であってもよく、また、引き違い窓や片引き窓であってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…引き違い戸(引戸)、10…電動錠装置、102…引戸、104…ストライカー、110…ケース、115…フックボルト、117…トリガー、120…サムターン軸、142…キックレバー、145…操作ハンドル、146…付勢ばね、147…リンク棒、2…枠体、21…上枠、22…下枠、23…縦枠、3,4…戸体、31,41…上框、32,42…下框、33,43…縦框、34,44…複層ガラスパネル、5…クレセント錠、50…電動操作ユニット、51…操作部、511…操作カバー、512…解錠ボタン、513…施錠ボタン、52…電動モータ、53…バッテリボックス、54…制御部、55…スライダ、551…本体部、551A,551B…ガイド溝、551C…横ガイド溝、552,61A…取付部、552A,552B…孔、56…伝達機構、561…減速歯車機構、562…第一ねじ歯車、563…第二ねじ歯車、564…第一歯車、565…段付歯車、565A…大径歯部、565B…小径歯部、566…第二歯車、567A,567B…支持板、57,75…ケース、571…ケース本体、572…ケースカバー、573…第一当接部、574…第二当接部、58A,58B,59A,86…ガイドピン、59…回動部材、591…円板状基部、592…扇状回動部、6…取付板、60…蹴り出し機構、61…基板、611…第1のガイド溝、61B…アーム支持部、62…連結ピン、63…蹴り出しアーム、631…第2のガイド溝、64…蹴り出しローラ、70…空掛け防止機構、72…戸当り部材、721…当接面、722…溝部、723…壁部、74…コイルばね、80…連動バー、84…ガイドピン取付部材、84A…取付面、84B…ガイドピン取付面、85…切欠き部、851,852…端部。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11