(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記制御工程において、上記走行速度の測定値が増加したときには、上記紫外線の強度を増加させ、上記走行速度の測定値が減少したときには、上記紫外線の強度を減少させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
照射装置内(より具体的には石英管内)を走行する光ファイバ素線の走行速度は、一定とは限らず、揺らぎが生じる可能性がある。例えば、光ファイバ裸線の外径を一定に保つために、光ファイバ素線を引き取る引取装置の引取速度が制御されている場合、照射装置内を走行する光ファイバ素線の走行速度は、引取装置の引取速度に応じて変動する。また、引取装置に加わる電気的なノイズや、引取装置を構成するモータの回転ムラなどに起因して、照射装置内を走行する光ファイバ素線の走行速度に予期せぬ変動が生じる可能性もある。
【0009】
照射装置内を走行する光ファイバ素線の走行速度が変動すると、光ファイバ素線の各点に対して紫外線が照射される時間が変動することになる。そのため、光ファイバ素線の各点が受ける紫外線の強度を一定に保ったとしても、光ファイバ裸線の各点が受ける紫外線の積算強度が変動することになる。このため、上述した特許文献1及び特許文献2に記載された技術では、被覆硬化度が長手方向において均一にならない可能性がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被覆硬化度の長手方向における均一性の高い光ファイバ素線を製造することが可能な製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る光ファイバ素線の製造方法は、被覆を構成する紫外線硬化樹脂の一部又は全部が未硬化状態の光ファイバ素線であって、走行する上記光ファイバ素線の各点に対して、紫外線発光ダイオードが発する紫外線を照射する照射工程と、上記光ファイバ素線の走行速度を測定する測定工程と、上記測定工程において得られた上記走行速度の測定値の変化に応じて、上記照射工程において上記紫外線発光ダイオードが発する紫外線の強度を変化させる制御工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る光ファイバ素線の製造装置は、被覆を構成する紫外線硬化樹脂の一部又は全部が未硬化状態の光ファイバ素線であって、走行する上記光ファイバ素線の各点に対して、紫外線発光ダイオードが発する紫外線を照射する照射部と、上記光ファイバ素線の走行速度を測定する測定部と、上記測定部によって得られた上記走行速度の測定値の変化に応じて、上記照射部において上記紫外線発光ダイオードが発する紫外線の強度を変化させる制御部と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係るプログラムは、被覆を構成する紫外線硬化樹脂の一部又は全部が未硬化状態の光ファイバ素線であって、走行する上記光ファイバ素線の各点に対して、紫外線発光ダイオードが発する紫外線を照射する照射部と、上記光ファイバ素線の走行速度を測定する測定部と、を含む光ファイバ素線の製造装置を制御するプログラムであって、上記測定部から上記走行速度の測定値を取得する手順と、上記走行速度の測定値の変化に応じて、上記照射部において上記紫外線発光ダイオードが発する紫外線の強度を変化させる手順と、をコンピュータ装置に実行させることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、被覆硬化度の長手方向における均一性の高い光ファイバ素線を製造することが可能になる。
【0015】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法において、上記制御工程では、上記走行速度の測定値が増加したときには、上記紫外線の強度を増加させ、上記走行速度の測定値が減少したときには、上記紫外線の強度を減少させる、ことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、光ファイバ素線の走行速度が変化しても、光ファイバ素線の各点に対して紫外線発光ダイオードが発光する紫外線の積算強度の変化が小さくなる。その結果、光ファイバ素線の走行速度に揺らぎが生じても、光ファイバ素線の被覆硬化度の長手方向における均一性が向上する。
【0017】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法において、上記制御工程では、上記紫外線の強度の変化率が上記走行速度の測定値の変化率と一致するように、上記紫外線の強度を変化させる、ことが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、光ファイバ素線の走行速度が変化しても、光ファイバ素線の各点に対して紫外線発光ダイオードが発光する紫外線の積算強度が一定に保たれる。その結果、光ファイバ素線の走行速度に揺らぎが生じても、光ファイバ素線の被覆硬化度の長手方向における均一性がさらに向上する。
【0019】
本発明に係る光ファイバ素線の製造方法において、上記測定工程では、上記走行速度として、上記光ファイバ素線を引き取る引取装置の引取速度を測定する、ことが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、引取装置の引取速度を用いることで、光ファイバ素線の走行速度の測定値を取得することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、被覆硬化度の長手方向における均一性の高い光ファイバ素線を製造することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1の実施形態〕
〔光ファイバ素線の構成〕
本実施形態により製造される光ファイバ素線10について、
図1を参照して説明する。
図1は、光ファイバ素線10の横断面(光軸に直交する断面)を示す断面図である。
【0024】
光ファイバ素線10は、円柱状の光ファイバ裸線11と、光ファイバ裸線11の側面を覆う被覆12と、を備えている。
【0025】
光ファイバ裸線11は、円柱状のコア11aと、コア11aの側面を覆う円筒状のクラッド11bと、により構成される。コア11a及びクラッド11bは、何れも石英ガラスにより構成されている。ただし、クラッド11bを構成する石英ガラスの屈折率は、コア11aを構成する石英ガラスの屈折率よりも低い。コア11aとクラッド11bとの屈折率差は、例えば、コア11aを構成する石英ガラスに屈折率を上昇させるためのドーパント(例えば、ゲルマニウム)を添加することによって、あるいは、クラッド11bを構成する石英ガラスに屈折率を低下させるためのドーパント(例えば、フッ素)を添加することによって形成される。なお、クラッド11bの屈折率をコア11aの屈折率よりも低くするのは、コア11aに光を閉じ込める機能を光ファイバ裸線11に付与するためである。
【0026】
被覆12は、光ファイバ裸線11の側面(クラッド11bの外側面)を覆う円筒状の1次被覆12aと、1次被覆12aの外側面を覆う円筒状の2次被覆12bと、により構成されている。1次被覆12a及び2次被覆12bは、何れも紫外線硬化樹脂により構成されている。ただし、1次被覆12aを構成する紫外線硬化樹脂のヤング率は、2次被覆12bを構成する紫外線硬化樹脂のヤング率よりも低い。1次被覆12aと2次被覆12bとのヤング率差は、例えば、1次被覆12a及び2次被覆12bを構成する紫外線硬化樹脂の重合度を異ならせることにより形成される。なお、2次被覆12bのヤング率を相対的に高く、1次被覆12aのヤング率を相対的に低くするのは、硬質の2次被覆12bにより耐外傷性を向上させると共に、軟質の1次被覆12aにより衝撃吸収性を向上させるためである。
【0027】
1次被覆12a及び2次被覆12bを構成する紫外線硬化樹脂には、それぞれ、光重合開始剤が含まれている。これらの紫外線硬化樹脂の硬化は、光重合開始剤の吸収波長帯に属する波長を有する紫外線により開始される。なお、硬化時の温度が高いほど、2次被覆12bを構成する紫外線硬化樹脂の硬化が進みやすく、1次被覆12aを構成する紫外線硬化樹脂の硬化が進みにくい傾向がある。また、硬化時の温度が低いほど、2次被覆12bを構成する紫外線硬化樹脂の硬化が進みにくく、1次被覆12aを構成する紫外線硬化樹脂の硬化が進みやすい傾向がある。
【0028】
(光ファイバ素線の製造装置の構成)
製造装置1の構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、製造装置1の構成を示すブロック図である。
【0029】
製造装置1は、光ファイバ素線10(
図1参照)を製造するための装置であり、線引部101、冷却部102、裸線外径測定部103、塗布部104、素線外径測定部105、1次照射部106、引取部107、2次照射部108、及び巻取部109を備えている。これらの構成要素は、光ファイバ素線10の走行経路に沿ってこの順に配置される。さらに、製造装置1は、引取部107の引取速度を測定する引取速度測定部107aを備えている。また、製造装置1は、裸線外径測定部103及び素線外径測定部105から取得したモニタ信号を参照して塗布部104及び引取部107を制御する制御部110を備えている。また、製造装置1は、複数のプーリ111_1〜111_6を備えている。光ファイバ素線10の走行経路は、これらのプーリ111_1〜111_6によって規定される。
【0030】
線引部101は、光ファイバ裸線11の母材となるプリフォームを線引きするための手段である。本実施形態においては、加熱炉を線引部101として用いる。プリフォームは、この加熱炉により加熱され、溶融する。そして、溶融したプリフォームは、自重により引き伸ばされる。このように、プリフォームを溶融して引き伸ばすことを、「線引き」という。線引部101において線引きされたプリフォームは、線引部101の下方に配置された冷却部102に送り込まれる。
【0031】
冷却部102は、線引きされたプリフォームを冷却するための手段である。本実施形態においては、冷却筒を冷却部102として用いる。線引きされたプリフォームは、この冷却筒内を流れる冷却ガスにより冷却され、硬化する。これにより、光ファイバ裸線11が得られる。冷却部102において得られた光ファイバ裸線11は、光ファイバ裸線11の外径を測定するための裸線外径測定部103を経由した後、冷却部102の下方に配置された塗布部104に送り込まれる。
【0032】
塗布部104は、被覆12の母材となる未硬化状態の紫外線硬化樹脂を光ファイバ裸線11の側面に塗布するための手段である。本実施形態においては、2つの塗布ダイスが重ねて設けられた二重塗布ダイスを塗布部104として用いる。光ファイバ裸線11の側面には、上流側の塗布ダイスによって、1次被覆12aの母材となる未硬化状態の紫外硬化樹脂が塗布され、1次被覆12aの外側面には、下流側の塗布ダイスによって、2次被覆12bの母材となる未硬化状態の紫外線硬化樹脂が塗布される。これにより、1次被覆12a及び2次被覆12bが共に未硬化状態である光ファイバ素線10が得られる。この状態の光ファイバ素線10のことを、以下、光ファイバ素線10αと記載する。塗布部104において得られた光ファイバ素線10αは、光ファイバ素線10αの外径を測定するための素線外径測定部105を経由した後、塗布部104の下方に配置された1次照射部106に送り込まれる。
【0033】
なお、塗布部104が塗布する紫外線硬化樹脂の厚みは、可変であり、素線外径測定部105にて測定された光ファイバ素線10αの外径に基づいて、制御部110により制御されている。制御部110は、光ファイバ素線10αの外径が予め定められた値よりも小さい場合、塗布する紫外線硬化樹脂の厚み増加するように塗布部104を制御する。逆に、制御部110は、光ファイバ素線10αの外径が予め定められた値よりも大きい場合、塗布する紫外線硬化樹脂の厚みが減少するように塗布部104を制御する。これにより、得られる光ファイバ素線10の外径を予め定められた値に近づけることができる。
【0034】
1次照射部106は、光ファイバ素線10αに対して、低酸素雰囲気化においてUVランプ(紫外線ランプ)を用いて紫外線を照射するための手段である。本実施形態においては、UVランプを光源とするn個(nは1以上の自然数)のUVランプユニット106_1〜106_nを、1次照射部106として用いる。各1次照射ユニット106_i(iは1以上n以下の自然数)の構成については、参照する図面を代えて後述する。なお、
図2においては、n=3の場合を例示しているが、1次照射部106を構成するUVランプユニット106_iの個数は任意である。
【0035】
被覆12の母材となる紫外線硬化樹脂は、1次照射部106におけるUVランプを用いた紫外線照射によって、外側から順に硬化していく。1次照射部106におけるUVランプを用いた紫外線照射では、主に2次被覆12bを構成する紫外線硬化樹脂が硬化する。ただし、1次照射部106におけるUVランプを用いた紫外線照射が完了した段階では、少なくとも2次被覆12bの表層を構成する紫外線硬化樹脂が十分に硬化していればよく、その余の紫外硬化樹脂は、未硬化状態であっても、半硬化状態であっても構わない。この状態の光ファイバ素線10のことを、以下、光ファイバ素線10βと記載する。1次照射部106において得られた光ファイバ素線10βは、プーリ111_1を経由した後、引取部107に送り込まれる。プーリ111_1は、光ファイバ素線10βの走行経路を重力方向に平行な第1方向(
図2における下方向)から重力方向に垂直な第2方向(
図2における右方向)に変えるターンプーリとして機能する。
【0036】
引取部107は、光ファイバ素線10βを特定の引取速度で引き取るための手段である。ここで、引取速度とは、引取部107が単位時間あたりに引き取る光ファイバ素線10βの長さのことである。本実施形態においては、キャプスタンを引取部107として用いる。引取部107により引き取られた光ファイバ素線10βは、プーリ111_2〜111_6を経由した後、引取部107の側方に配置された2次照射部108に送り込まれる。ここで、プーリ111_5は、第1方向と平行に(
図2における上下方向に)変位可能なダンサープーリである。このプーリ111_5を第1方向に(
図2における下方向に)付勢することによって、光ファイバ素線10βに張力が掛けられる。
【0037】
なお、引取部107の引取速度は、可変であり、裸線外径測定部103にて測定された光ファイバ裸線11の外径に基づいて、制御部110により制御されている。制御部110は、光ファイバ裸線11の外径が予め定められた値よりも小さい場合、引取速度が低下するように引取部107を制御する。逆に、制御部110は、光ファイバ裸線11の外径が予め定められた値よりも大きい場合、引取速度が上昇するように引取部107を制御する。これにより、得られる光ファイバ裸線11の外径を予め定められた値に近づけることができる。また、引取部107の引取速度は、引取速度測定部107aによって測定される。本実施形態では、引取速度測定部107aによって測定される引取速度の測定値を、光ファイバ素線10が走行経路を走行する走行速度の測定値とみなす。引取速度測定部107aは、本発明における測定部の一例を構成する。
【0038】
2次照射部108は、光ファイバ素線10βに対して、UVLED(紫外線発光ダイオード)を用いて紫外線を照射するための手段である。本実施形態においては、UVLEDを光源とするm個(mは1以上の自然数)のUVLEDユニット108_1〜108_mを、2次照射部108として用いる。各UVLEDユニット108_j(jは1以上m以下の自然数)の構成については、参照する図面を代えて後述する。なお、
図2においては、m=2の場合を例示しているが、2次照射部108を構成するUVLEDユニット108_jの個数は任意である。なお、2次照射部108は、本発明における照射部の一例を構成する。
【0039】
被覆12の母材となる紫外線硬化樹脂のうち、1次照射部106におけるUVランプを用いた紫外線照射でも未だ十分に硬化していない紫外線硬化樹脂は、2次照射部108におけるUVLEDを用いた紫外線照射によって硬化が完了する。2次照射部108におけるUVLEDを用いた紫外線照射では、主に1次被覆12aを構成する紫外線硬化樹脂が硬化する。これにより、光ファイバ素線10が得られる。2次照射部108において得られた光ファイバ素線10は、巻取部109に送り込まれる。
【0040】
巻取部109は、光ファイバ素線10を巻き取るための手段である。本実施形態においては、第2方向に平行な回転軸を有する巻取ドラム109aと、第2方向と平行に変位可能なプーリ109bを、巻取部109として用いる。巻取ドラム109aを回転させながら、プーリ109bを第2方向と平行に往復移動させることによって、光ファイバ素線10が巻取ドラム109aに均等に巻き取られる。
【0041】
以上のように、製造装置1においては、1次照射部106の光源として、UVランプを用いると共に、2次照射部108の光源として、UVLEDを用いている。これは、以下の理由による。
【0042】
UVLEDは、UVランプに比べて消費電力が小さい。また、UVLEDは、高温になりにくいため、冷却装置を簡略化することができ、その結果、運転時の消費電力を更に抑えることができる。また、UVLEDには、高温環境下で生じ得る紫外線硬化樹脂の劣化を抑えることができるというメリットがある。しかしながら、1次照射部106の光源として、UVLEDを用いると、次のような問題を生じる。
【0043】
すなわち、
図3に示すように、UVLEDから発せられる紫外線は、UVランプから発せられる紫外線に比べてスペクトル幅が狭い。そのため、UVLEDのピーク波長が、2次被覆12bに含まれる光重合開始剤の吸収波長と異なる可能性が高い。加えて、2次被覆12bは、硬化時のファイバ温度が高いほど硬化が進みやすい傾向がある。そのため、1次照射部106にUVLEDを用いると、2次被覆12bの表層を構成する紫外線硬化樹脂を1次照射部106において十分に硬化することができない可能性が高くなる。そうすると、光ファイバ素線10βがプーリ111_1に接触した際に、2次被覆12bの表面がプーリ111_1に付着して剥離されるといった問題を生じる。そこで、製造装置1においては、1次照射部106の光源として、UVランプを用いることによって、これらの問題を回避している。
【0044】
制御部110は、製造装置1の各部を制御する。具体的には、制御部110は、上述した引取速度の制御及び塗布する紫外線硬化樹脂の厚みの制御に加えて、2次照射部108のUVLEDの強度を変化させる制御を行う。制御部110の構成の詳細については後述する。
【0045】
〔1次照射ユニット及び2次照射ユニットの構成〕
製造装置1が備えるUVランプユニット106_iの構成について、
図4を参照して説明する。
図4は、UVランプユニット106_iの断面図である。
【0046】
UVランプユニット106_iは、筐体106aと、筐体106aを貫通する石英管106bと、筐体106aの内部に収容されたUVランプ106cと、筐体106aの内部において石英管106b及びUVランプ106cを取り囲む反射板106dと、を備えている。UVランプ106cとしては、例えば、メタルハライドランプを挙げることができる。UVランプ106cから発せられた紫外線は、直接、又は、反射板106dにて反射された後、石英管106bの内部を走行する光ファイバ素線10αに照射される。
【0047】
なお、筐体106aには、冷却用ガスを筐体106a内に給気するための給気口106a1と、この冷却用ガスを筐体106a外に排気するための排気口106a2とが設けられている。筐体106aの内部に収容されたUVランプ106cは、この冷却用ガスによって冷却される。
【0048】
また、UVランプユニット106_iは、さらに、筐体106aから上方に突出した石英管106bの上端を収容する上部キャップ106eと、筐体106aから下方に突出した石英管106bの下端を収容する下部キャップ106fと、を備えている。上部キャップ106eには、低酸素濃度の不活性ガスを上部キャップ106e内に供給するための給気口106e1が設けられており、下部キャップ106fには、この不活性ガスを下部キャップ106f外に排気するための排気口106f1が設けられている。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、又はヘリウムが挙げられる。上部キャップ106e、石英管106b、及び下部キャップ106fの内部は、この不活性ガスにより満たされる。このため、石英管106bの内部を走行する光ファイバ素線10αは、低酸素雰囲気下で紫外線を照射されることになる。
【0049】
次に、製造装置1が備えるUVLEDユニット108_jの構成について、
図5を参照して説明する。
図5は、UVLEDユニット108_jの断面図である。
【0050】
UVLEDユニット108_jは、筐体108aと、筐体108aを貫通する石英管108bと、筐体108aの内部に収容されたUVLEDバー108cと、筐体108aの内部においてUVLEDバー108cと対向するように石英管108bを取り囲む反射板108dと、を備えている。UVLEDバー108cは、L個(Lは1以上の自然数)のUVLED素子108ck(kは1以上L以下の自然数)を直線状に並べた紫外線光源である。UVLEDバー108cから発せられた紫外線は、直接、又は、反射板108dにて反射された後、石英管108bの内部を走行する光ファイバ素線10βに照射される。
【0051】
各UVLED素子108ckは、電源(図示せず)によって駆動される。具体的には、UVLED素子108ckは、電源から供給される電流値に応じた強度の紫外線を発する。なお、
図6においては、L=5の場合を例示しているが、UVLEDバー108cを構成するUVLED素子108ckの個数は任意である。
【0052】
(制御部の構成の詳細)
制御部110は、例えば、プロセッサ及びメモリを備えたコンピュータ装置によって構成される。
図6は、制御部110の機能ブロック構成図である。
図6に示すように、制御部110は、裸線外径調整部110aと、素線外径調整部110bと、紫外線強度調整部110cとを含む。これらの各機能ブロックは、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行することによって実現される。
【0053】
裸線外径調整部110aは、裸線外径測定部103によって測定された光ファイバ裸線11の外径に基づいて、光ファイバ裸線11の外径を調整する制御を行う。前述のように、光ファイバ裸線11の外径は、走行速度により調整される。そこで、裸線外径調整部110aは、光ファイバ裸線11の外径を予め定められた値に近づけるよう、引取部107の引取速度を制御する。
【0054】
素線外径調整部110bは、素線外径測定部105によって測定された、光ファイバ素線10の外径に基づいて、当該外径を調整する制御を行う。具体的には、素線外径調整部110bは、光ファイバ素線10の外径を予め定められた値に近づけるよう、塗布部104を制御する。
【0055】
紫外線強度調整部110cは、引取速度測定部107aによって測定された引取速度の測定値の変化に応じて、2次照射部108_jにおける各UVLED素子108ckの強度を変化させる。なお、引取部107の引取速度は、裸線外径調整部110aの制御により変動することに加えて、引取部107に加わる電気的なノイズや、引取部107を構成するモータの回転ムラなどに起因して変動が生じる可能性もある。紫外線強度調整部110cは、このように変動する引取速度の測定値の変化に応じて、2次照射部108_jにおける各UVLED素子108ckの強度を変化させる。
【0056】
詳細には、紫外線強度調整部110cは、引取速度の測定値が増加したときには、各UVLED素子108ckの強度を増加させ、引取速度の測定値が減少したときには、各UVLED素子108ckの強度を減少させる。これにより、光ファイバ素線10βの各点に対する紫外線の積算強度の変化が小さくなる。例えば、紫外線強度調整部110cは、各UVLED素子108ckの強度の変化率が引取速度の測定値の変化率と一致するように、各UVLED素子108ckの紫外線の強度を変化させる。これにより、光ファイバ素線10βの各点に対する紫外線の積算強度がほぼ一定に保たれる。
【0057】
具体的には、紫外線強度調整部110cは、引取速度の測定値の変化率と、各UVLED素子108ckに供給する駆動電流の変化率とを一致させるよう駆動電流を制御すればよい。このとき、各UVLED素子108ckの応答速度、すなわち、各UVLED素子108ckに駆動電流を供給する電流源に対する制御を開始してから、各UVLED素子108ckの発する紫外線の強度の変更が完了するまでにかかる時間は、一般的に数ミリ秒である。これは、引取速度の変動周期と比べて十分に短い。また、これは、走行する光ファイバ素線βの各点が2次照射部108内に滞在する時間に比べても十分に短い。
【0058】
(光ファイバ素線の製造方法)
光ファイバ素線10の製造方法S1について、
図7を参照して説明する。
図7は、光ファイバ素線10の製造方法S1を示すフローチャートである。製造方法S1は、光ファイバ素線10(
図1参照)を製造するための方法であり、以下に説明する工程S101〜S109を含んでいる。
【0059】
工程S101:線引部101は、光ファイバ裸線11の母材となるプリフォームを線引きする。
【0060】
工程S102:冷却部102は、工程S101にて線引きされたプリフォームを冷却する。これにより、光ファイバ裸線11が得られる。
【0061】
工程S103:裸線外径測定部103は、工程S102にて得られた光ファイバ裸線11の外径を測定し、外径の測定値を表すモニタ信号を制御部110に提供する。
【0062】
工程S104:塗布部104は、工程S103にて外径を測定された光ファイバ裸線11の側面に、被覆12の母材となる未硬化状態の紫外線硬化樹脂を塗布する。詳細には、塗布部104は、光ファイバ裸線11の外側面に、1次被覆12aの母材となる未硬化状態の紫外硬化樹脂を塗布する作業と、1次被覆12aの外側面に、2次被覆12bの母材となる未硬化状態の紫外線硬化樹脂を塗布する作業とを一括して実施する。これにより、光ファイバ素線10αが得られる。
【0063】
なお、工程S104にて塗布される紫外線硬化樹脂の厚みは、後述する工程S105で測定される光ファイバ素線10αの外径に基づく制御部110の制御により調整される。
【0064】
工程S105:素線外径測定部105は、工程S104にて得られた光ファイバ素線10αの外径を測定し、外径の測定値を表すモニタ信号を制御部110に提供する。
【0065】
工程S106:1次照射部106は、工程S105にて得られた光ファイバ素線10αに、UVランプを用いて紫外線を照射する。これにより、主に2次被覆12bの母材となる紫外線硬化樹脂が硬化し、光ファイバ素線10βが得られる。少なくとも2次被覆12bの表層を構成する紫外線硬化樹脂は、本工程において十分に硬化される。
【0066】
工程S107:引取部107は、工程S106にて得られた光ファイバ素線10βを特定の引取速度で引き取る。
【0067】
なお、工程S107にて光ファイバ素線10βを引き取る引取速度は、前述した工程S103で測定された光ファイバ裸線11の外径に基づく制御部110の制御により調整される。
【0068】
工程S107a(測定工程):引取速度測定部107aは、引取部107による光ファイバ素線10βの引取速度を測定し、引取速度の測定値を表すモニタ信号を制御部110に提供する。引取速度の測定値に基づく制御部110の動作の詳細については後述する。
【0069】
工程S108(照射工程):2次照射部108は、工程S107にて引き取られた光ファイバ素線10βに、UVLEDを用いて紫外線を照射する。これにより、主に1次被覆12aの母材となる紫外線硬化樹脂が硬化し、光ファイバ素線10が得られる。
【0070】
なお、工程S108にて照射される紫外線の強度は、制御部110により引取速度に基づき調整される。この制御部110の動作の詳細については後述する。
【0071】
工程S109:巻取部109は、工程S108にて得られた光ファイバ素線10を巻取ドラム109aに巻き取る。これにより、巻取ドラム109aに巻き取られた光ファイバ素線10が得られる。
【0072】
次に、工程S107a及び工程S108における制御部110の動作(制御工程)の詳細について説明する。
図8は、制御部110が紫外線の強度を調整する処理を説明するフローチャートである。
【0073】
工程S201:紫外線強度調整部110cは、引取速度測定部107aから引取速度の測定値を取得する。
【0074】
工程S202:紫外線強度調整部110cは、引取速度の測定値が前回の測定値から変化した変化率と紫外線の強度の変化率とが一致するように、2次照射部108の各UVLED素子108ckが発する紫外線の強度を変化させる。
【0075】
例えば、変化前の引取速度の測定値が1000メートル毎秒であり、変化後の測定値が1010メートル毎秒であったとする。すなわち、引取速度が1%速くなる変化が生じたとする。この場合、各UVLED素子108ckの強度を1%増加させれば、光ファイバ素線10βの各点に対する2次照射部108における積算強度はほぼ一定となる。
【0076】
そこで、紫外線強度調整部110cは、各UVLED素子108ckが発する紫外線の強度を1%だけ増加させるよう、各UVLED素子108ckへ駆動電流を供給する電源に対して制御信号を送出する。
【0077】
このとき、2次照射部108において紫外線の強度の制御にかかる応答速度は、前述したように、数ミリ秒である。例えば、引取速度が1010メートル毎分に変化し、石英管108bのうち照射区間の長さが1メートルであったとする。この場合、例えば応答速度4ミリ秒の間に光ファイバ素線10βの各点が走行する距離は、約0.1メートルである。この距離は、照射区間の長さ1メートルと比較して十分に短い。その結果、光ファイバ裸線11の各点に対する照射区間内での積算強度は、引取速度の変化に関わらずほぼ一定に保たれるといえる。
【0078】
比較のため、光源がUVランプであると仮定した場合について説明する。UVランプの強度の制御にかかる応答速度は、UVランプの強度を変化させる量が大きいほど長くかかるのが一般的である。そのため、引取速度の変化に応じて紫外線の強度を変化させる制御に時間がかかり、光ファイバ素線10の各点に対する照射区間内での積算強度が、引取速度の変化に応じて一定に保たれない可能性がある。したがって、UVランプは、引取速度の変化に応じて紫外線の強度を変化させる制御の対象に適しているとはいえない。
【0079】
例えば、UVランプの強度の制御にかかる応答速度が、0.0267(秒)×[強度の変化率](%)で算出されるとする。また、上述と同様に、引取速度が1%速くなる変化が生じ、UVランプの強度を1%増加させるとする。この場合、UVランプの強度を1%増加させるのにかかる応答速度は、上述した式によれば、26.7ミリ秒となる。また、上述と同様に、引取速度が1010メートル毎分に変化し、石英管108bのうち照射区間の長さが1メートルであったとする。この場合、応答速度26.7ミリ秒で光ファイバ素線10βの各点が走行する距離は、約0.5メートルである。この距離は、照射区間の長さ1メートルの約半分に相当する。そのため、光ファイバ素線10βの各点に対する照射区間内での積算強度は、引取速度の変化に伴い変化する可能性がある。
【0080】
このように、各UVLED素子108ckを光源に用いた2次照射部108は、UVランプを光源に用いる場合と比較して、引取速度の変化に応じて十分な応答速度で紫外線の強度の調整を行うことができる。
【0081】
以上の工程S201〜S202の処理を、制御部110は、所定間隔毎に繰り返し実施する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の製造装置1を用いた製造方法は、引取速度の変化に応じて、2次照射部においてUVLEDが発する紫外線の強度を変化させる。その結果、本実施形態は、引取速度に揺らぎが生じる場合でも、製造された光ファイバ素線10において被覆硬化度の長手方向における均一性を向上させる。
【0083】
(変形例)
なお、上述した本発明の第1の実施形態において、紫外線の強度の制御対象となるUVLEDを用いた2次照射部を、光ファイバ素線10の走行経路の後段に配置する例について説明した。ただし、本実施形態において、紫外線の強度の制御対象となる照射部が配置される位置は、光ファイバ素線の走行経路の後段に限定されない。また、本実施形態において、紫外線の強度の制御対象となる照射部の個数は、任意である。
【0084】
例えば、本実施形態において、1次照射部及び2次照射部は、共にUVLEDを光源として含んでいてもよい。その場合、制御部110の紫外線強度調整部110cは、引取速度の測定値の変化に応じて、1次照射部及び2次照射部のそれぞれに対して、UVLEDの強度を変化させる制御を行えばよい。
【0085】
〔ソフトウェアによる実現例〕
上述した第1の実施形態における制御部は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0086】
後者の場合、制御部は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラム及び各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)又は記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。
【0087】
そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0088】
〔付記事項〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。