特許第6670282号(P6670282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670282端子付き電線および端子付き電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670282
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】端子付き電線および端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20200309BHJP
   H01R 43/048 20060101ALI20200309BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20200309BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R43/048 Z
   H01B7/00 306
   H01B13/00 521
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-227436(P2017-227436)
(22)【出願日】2017年11月28日
(65)【公開番号】特開2019-96568(P2019-96568A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鍋田 泰徳
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0324727(US,A1)
【文献】 特開2011−082127(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146640(WO,A1)
【文献】 特開2009−152054(JP,A)
【文献】 特開2014−56753(JP,A)
【文献】 特開2014−211952(JP,A)
【文献】 特開2014−211959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00 − 4/22
H01R43/027−43/08
H01B 7/00
H01B13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の一部で所定の長さにわたって被覆が非存在であることで導体が露出しており、この露出している導体の一部に、前記導体の素線同士が接合されている接合部位が、所定の長さにわたって形成されている電線と、
ワイヤバレル部を備え、このワイヤバレル部の、前記被覆側に位置している端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置するようにして、前記ワイヤバレル部が前記接合部位に直接接し、前記ワイヤバレル部が前記接合部位の少なくとも一部を覆っている端子と、
を有し、前記ワイヤバレル部の、前記被覆側に位置している端部には、ベルマウス部が形成されており、
前記ベルマウス部の、前記被覆側に位置している端とは反対側の端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置していることを特徴とする端子付き電線。
【請求項2】
請求項1に記載の端子付き電線において、
前記被覆側に位置しているベルマウス部における前記被覆側の端部と前記導体の素線との間には、間隙が形成されていることを特徴とする端子付き電線。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の端子付き電線において、
前記電線の長手方向と前記ワイヤバレル部の前後方向とがお互いに一致しており、
前後方向で、前記接合部位が前記ワイヤバレル部の内側に位置していることを特徴とする端子付き電線。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の端子付き電線において、
複数本の前記電線に1つの前記端子が設置されていることを特徴とする端子付き電線。
【請求項5】
長手方向の一部で所定の長さにわたって被覆が非存在であることで導体が露出している電線の、前記露出している導体の長手方向の一部で、前記導体の素線同士を接合して接合部位を形成する接合部位形成工程と、
前記接合部位形成工程で接合部位を形成した後、ワイヤバレル部を備えた端子を、前記ワイヤバレル部の、前記電線の被覆側に位置している端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置するようにして、前記ワイヤバレル部が前記接合部位に直接接し、前記ワイヤバレル部が前記接合部位の少なくとも一部を覆うように、前記電線に前記端子を設置する端子設置工程と、
を有し、前記ワイヤバレル部の、前記被覆側に位置している端部には、ベルマウス部が形成されており、
前記端子設置工程で前記電線に前記端子を設置した状態では、前記ベルマウス部の、前記被覆側に位置している端とは反対側の端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置していることを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線および端子付き電線の製造方法に係り、特に、複数本の素線同士が接合されて接合部位が形成されている導体に端子のワイヤバレル部を設置するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図10(c)で示すような端子付き電線301が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この端子付き電線301は次に示すようにして形成される。まず、一端部で被覆303が除去されて導体(芯線)305が露出している電線307(図10(a)参照)で、露出している導体305の先端部に、超音波接合によって接合部位309を形成する(図10(b)参照)。
【0004】
すなわち、複数本の素線311で構成されている導体305の先端部を、各素線311同士を超音波接合によって接合することで接合部位309を形成する。
【0005】
この接合部位309のところに、ワイヤバレル部313をカシメて端子315を設置することで端子付き電線301(図10(c)参照)を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−231079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の端子付き電線301では、接合部位309の端(被覆303側の端)317で素線切れ(芯線切れ)が発生するおそれがあるという問題がある(図10(d)参照)。
【0008】
すなわち、接合部位309を形成した電線307にワイヤバレル部313をカシメて端子315を圧着するときに、図10(d)で示すように、接合部位309の端(接合部位309と非接合部位との境界部分)317が、ワイヤバレル部313の外に位置していると、端子315の圧着により、境界部分317が引っ張られる。
【0009】
境界部分317では、接合処理の影響で残留応力の値が大きくなっており、素線311が切れやすくなっている。また、境界部分317では、導体305の断面形状(長手方向に対して直交する平面による断面の形状)が急激に変化していることで、応力集中が発生しやすくなっている。
【0010】
そして、端子315の圧着により、素線311に引張り応力が発生すると芯線切れが発生してしまう。図10(d)に参照符号311Aで示すのは、芯線切れよって生じた素線である。
【0011】
また、図11に示すように、接合部位309が露出している導体305の長手方向の中央部に形成されていることで電線307の先端側(図11の左側)に非接合部位が存在している場合であっても、接合部位309の端(被覆303とは反対側の端)319がワイヤバレル部313の外に位置していると、端子315の圧着により、接合部位309と非接合部位との境界部分319が引っ張られ、芯線切れが発生してしまう。図11に参照符号311Bで示すのは、芯線切れよって生じた素線である。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、導体の一部に接合部位を形成し、この接合部位のところに端子のワイヤバレル部が設置してある端子付き電線等において、接合部位の境界での素線切れの発生を抑制することができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、長手方向の一部で所定の長さにわたって被覆が非存在であることで導体が露出しており、この露出している導体の一部に、前記導体の素線同士が接合されている接合部位が、所定の長さにわたって形成されている電線と、ワイヤバレル部を備え、このワイヤバレル部の、前記被覆側に位置している端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置するようにして、前記ワイヤバレル部が前記接合部位に直接接し、前記ワイヤバレル部が前記接合部位の少なくとも一部を覆っている端子とを有し、前記ワイヤバレル部の、前記被覆側に位置している端部には、ベルマウス部が形成されており、前記ベルマウス部の、前記被覆側に位置している端とは反対側の端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置している端子付き電線である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の端子付き電線において、前記被覆側に位置しているベルマウス部における前記被覆側の端部と前記導体の素線との間には、間隙が形成されている端子付き電線である。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の端子付き電線において、前記電線の長手方向と前記ワイヤバレル部の前後方向とがお互いに一致しており、前後方向で、前記接合部位が前記ワイヤバレル部の内側に位置している端子付き電線である。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の端子付き電線において、複数本の前記電線に1つの前記端子が設置されている端子付き電線である。
【0017】
請求項5に記載の発明は、長手方向の一部で所定の長さにわたって被覆が非存在であることで導体が露出している電線の、前記露出している導体の長手方向の一部で、前記導体の素線同士を接合して接合部位を形成する接合部位形成工程と、前記接合部位形成工程で接合部位を形成した後、ワイヤバレル部を備えた端子を、前記ワイヤバレル部の、前記電線の被覆側に位置している端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置するようにして、前記ワイヤバレル部が前記接合部位に直接接し、前記ワイヤバレル部が前記接合部位の少なくとも一部を覆うように、前記電線に前記端子を設置する端子設置工程とを有し、前記ワイヤバレル部の、前記被覆側に位置している端部には、ベルマウス部が形成されており、前記端子設置工程で前記電線に前記端子を設置した状態では、前記ベルマウス部の、前記被覆側に位置している端とは反対側の端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置している端子付き電線の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、導体の一部を接合して接合部位を形成し、この接合部位のところに端子のワイヤバレル部が設置してある端子付き電線等において、接合部位の境界での素線切れの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る端子付き電線で、電線に端子を設置する前の状態を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る端子付き電線の概略構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る端子付き電線の概略構成を示す断面図である。
図4】変形例に係る端子付き電線で、電線に端子を設置する前の状態を示す図である。
図5】変形例に係る端子付き電線の概略構成を示す断面図である。
図6図5の端子付き電線を模式的に示した図である。
図7図5の端子付き電線の変形例を模式的に示す図である。
図8】変形例に係る端子付き電線であって、電線の長手方向の中間部に接合部位を形成し、そこに端子を設置したものを示す図である。
図9】変形例に係る端子付き電線であって、複数本(たとえば、2本)の電線に1つの端子を設置したものを示す図である。
図10】従来の端子付き電線を示す図である。
図11】従来の端子付き電線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る端子付き電線1は、図1図3で示すように、接合部位(接合領域)3が形成されている電線5と、ワイヤバレル部7を備えた端子(端子金具)9とを備えて構成されている。
【0021】
ここで、説明の便宜のために、端子付き電線1における所定の一方向を前後方向とし、この前後方向に対して直交する所定の一方向を高さ方向とし、前後方向と高さ方向とに対して直交する方向を幅方向とする。
【0022】
電線5では、長手方向(長さ方向)の一部(たとえば、一端部)で、所定の長さにわたって被覆11が非存在であることで(たとえば、被覆11の一部が除去されて)、導体13が露出している。
【0023】
また、電線5では、露出している導体(露出導体)13Aの一部に、導体13が接合されている接合部位3が、所定の長さにわたって形成されている。接合部位3は、導体13を構成している複数本の素線15同士が、たとえば、超音波接合(超音波処理)されたことで形成されている。
【0024】
さらに説明すると、電線5は、複数本の素線15が集まって形成されている導体(芯線)13と、この導体13を覆っている(被覆している)被覆(絶縁体)11とを備えて構成されている。
【0025】
導体13の素線15は、銅、アルミニウム、もしくは、アルミニウム合金等の金属で細長い円柱状に形成されている。導体13は、複数本の素線15を撚った形態、もしくは、複数本の素線15がまとまって直線状に延びている形態で構成されている。
【0026】
また、電線5は可撓性を備えている。被覆11が存在している電線5の部位の断面(長手方向に対して直交する平面による断面)は、円形状等の所定形状に形成されている。
【0027】
被覆11が存在している電線5の部位における導体13の断面は、複数本の素線15がほとんど隙間の無い状態で束ねられていることで、たとえば、概ね円形状に形成されている。被覆11が存在している電線5の部位における被覆11の断面は、たとえば、所定の幅(厚さ)を備えた円環状に形成されている。導体13の外周の全周に被覆11の内周の全周が接触している。
【0028】
接合部位3では、導体13を構成している複数本の素線15同士が、上述したように、超音波接合されたことで導体13がたとえば単線化している。
【0029】
なお、上記説明では、超音波接合によって接合部位3が形成されているが、超音波接合以外の接合手段によって素線15同士を接合することで、接合部位3が形成されていてもよい。たとえば、素線15の再結晶温度以下の温度で素線15同士が冶金接合されていることで、超音波接合した場合と同様にして接合部位3が形成されていてもよい。
【0030】
さらに、接合部位3が、超音波処理以外の、冷間圧接、摩擦撹拌接合、摩擦圧接、電磁圧接、拡散接合、ろう付け、はんだ付け、抵抗溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、光ビーム溶接等の処理で形成されていてもよい。
【0031】
なお、接合部位3と被覆11とは、電線5の長手方向で、たとえば、所定の長さだけ離れている。これにより、接合部位3と被覆11との間では、お互いが接してはいるが非接合状態になっている複数本の素線(非接合状態の導体)13Bが露出している。
【0032】
すなわち、電線5の長手方向の一端から他端に向かって、所定長さの接合部位3、非接合状態の導体13B、被覆11で覆われている導体13(被覆11が存在している電線5の部位)がこの順でならんでいる。
【0033】
端子9が設置される前の接合部位3の断面形状(長手方向に対して直交する平面による断面形状)は、円形状等もしくは矩形状等の所定形状に形成されている。
【0034】
また、端子9が設置される前の非接合状態の導体13Bの断面形状(長手方向に対して直交する平面による断面形状)は、接合部位3の断面形状から被覆11で覆われている導体13の断面形状に徐々に移行している。
【0035】
端子付き電線1では、電線5や導体13の長手方向と、ワイヤバレル部7(端子9)の前後方向とがお互いに一致している。また、電線5の長手方向の一端が前側に位置しており、電線5の長手方向の他端が後側に位置している。
【0036】
また、端子付き電線1では、端子9のワイヤバレル部7の端(後端;前後方向における被覆11側に位置している端)7Aが、接合部位3の端(後端;長手方向における被覆11側に位置している端)3Aよりも、被覆11側(後側)に位置している。そして、端子付き電線1では、ワイヤバレル部7を、たとえば、カシメることで、ワイヤバレル部7が接合部位3の少なくとも一部を包み込んで覆っている。カシメによりワイヤバレル部7の筒の内側の面のほぼすべてが接合部位3に付勢力をもって接している。
【0037】
端子9は、たとえば、平板状の金属の素材を所定形状に形成した状態にしてから、この所定形状に形成したものを折り曲げたことで形成されている。
【0038】
端子9は、前側から後側にむかって、たとえば、相手側端子に接続される端子接続部16、ワイヤバレル部7、インシュレーションバレル部17がこの順にならんでいる。
【0039】
カシメがされる前のワイヤバレル部7の断面形状(前後方向に対して直交する平面による断面形状)は、たとえば、厚さ方向がほぼ高さ方向になっている底板部(円弧状の底板部)19と、一対の側板部21とを備えて「U」字状に形成されている。一対の側板部21のそれぞれは、底板部19の幅方向の両端から、斜め上方に起立している。一対の側板部21間の寸法の値(幅方向の寸法値)は、下側から上側に向かうにしたがって次第に大きくなっている。
【0040】
カシメがされる前のインシュレーションバレル部17の断面形状(前後方向に対して直交する平面による断面形状)も、ワイヤバレル部7の断面と同様な「U」字状に形成されている。
【0041】
端子付き電線1では、ワイヤバレル部7がカシメられたことで、接合部位3とワイヤバレル部7とが一体化しており、インシュレーションバレル部17がカシメられたことで、被覆11とインシュレーションバレル部17とが一体化している。
【0042】
ワイヤバレル部7やインシュレーションバレル部17のカシメは、主として、一対の側板部21が塑性変形して、ワイヤバレル部7やインシュレーションバレル部17が筒状になることでなされている。ワイヤバレル部7をカシメることで、接合部位3が変形する。
【0043】
また、前後方向では、たとえば、ワイヤバレル部7とインシュレーションバレル部17とは、僅かに離れているが(間に接続部23が設けられているが)、ワイヤバレル部7にインシュレーションバレル部17が接していてもよい。
【0044】
ここで、前後方向における電線5と端子9との関係についてさらに詳しく説明する。
【0045】
電線5の長手方向では、上述したように、前側から後側に向かって、所定の長さの接合部位3と、非接合状態の導体13Bと、被覆11で覆われている導体13がこの順でならんでいる。被覆11で覆われている導体13の長さは、接合部位3や非接合状態の導体13Bよりもはるかに長くなっている。
【0046】
端子9の前後方向では、上述したように、前側から後側に向かって、端子接続部16と、ワイヤバレル部7と、ワイヤバレル部7とインシュレーションバレル部17との間の接続部23と、インシュレーションバレル部17とがこの順にならんでいる。なお、ワイヤバレル部7の前後方向の寸法の値は、接続部23やインシュレーションバレル部17の前後方向の寸法の値よりも大きくなっている。
【0047】
端子付き電線1では、図3等で示すように、前後方向で、接合部位3の一端(前端)3Bが、ワイヤバレル部7の前端7Bよりも僅かに前側に位置している。これにより、接合部位3の一端部がワイヤバレル部7の前端7Bから前側に僅かに突出している。接合部位3のワイヤバレル部7からの突出寸法の値(前側への突出量)は、接合部位3の高さ寸法の値よりも小さくなっている。
【0048】
なお、接合部位3の一端(前端)3Bが、ワイヤバレル部7の前端7Bよりも僅かに後側に位置していてもよい。
【0049】
接合部位3の他端(後端)3Aは、ワイヤバレル部7の後端7Aよりも僅かに前側に位置していている。これにより、接合部位3と被覆11との間の非接合状態の導体13Bの前端部は、ワイヤバレル部7によって包み込まれている。
【0050】
なお、接合部位3の後端3Aとワイヤバレル部7の後端7Aとの間の寸法の値(前後方向での寸法の値)も、接合部位3の高さ寸法の値よりも小さくなっている。
【0051】
また、端子付き電線1では、非接合状態の導体13Bの高さ寸法の値は、前側から後側に向かうにしたがって、次第に大きくなっている。電線5の被覆11の前端(非接合状態の導体13Bの後端)は、インシュレーションバレル部17の前端よりも僅かに前側に位置している。
【0052】
ここで、端子付き電線1の製造方法について説明する。端子付き電線1は、接合部位形成工程と、端子設置工程とを経て製造される。
【0053】
接合部位形成工程では、露出導体13Aの長手方向の一部で、導体13を接合して接合部位3を形成する。
【0054】
続いて、接合部位形成工程で接合部位3を形成した後、図1で示すように、端子9に対する電線5の位置決めをする。
【0055】
続いて、端子設置工程で、ワイヤバレル部7とインシュレーションバレル部17とをカシメて、電線5に端子9を設置する。このとき、ワイヤバレル部7の後端7Aが、接合部位3の後端3Aよりも、後側に位置しており、ワイヤバレル部7が接合部位3の少なくとも一部を包み込んで覆う。
【0056】
端子付き電線1によれば、ワイヤバレル部7の後端7Aが接合部位3の後端3Aよりも後側に位置するようにして、ワイヤバレル部7が接合部位3を覆っているので、接合部位3の境界部分(接合部位3と非接合状態の導体13Bとの境界)3Aでの素線15切れの発生を抑制することができる。
【0057】
すなわち、接合部位3を形成した電線5にワイヤバレル部7をカシメて端子9を圧着するときに、接合部位3の後端(接合部位と非接合状態の導体との境界部分)3Aが、ワイヤバレル部7の内に位置しているので、端子9の圧着によって境界部分3Aが引っ張られることがほぼなくなり、境界部分3Aでの芯線切れ(非接合状態の導体13Bでも素線15の切れ)の発生を抑制することができる。
【0058】
そして、素線15切れが抑制されることで、圧着部性能が安定し(電線5と端子9との機械的接合度および電気的接合度が安定し)、また、コンタミネーションの発生が抑制される。
【0059】
なお、上記説明では、図3等で示すように、ワイヤバレル部7の前端7Bから接合部位3が前側に僅かに突出しているが、図4で示すように、ワイヤバレル部7の前端7Bが接合部位3の前端3Bよりも前側に位置していてもよい。すなわち、前後方向におけるワイヤバレル部7の寸法の値が、前後方向における接合部位3の寸法の値よりも大きくなっており、前後方向で、接合部位3がワイヤバレル部7の内側に位置していてもよい。
【0060】
また、図4では、接合部位3の前端3Bから非接合状態の導体13Bが僅かに前側に突出しているが、接合部位3の前端3Bから前側に突出している非接合状態の導体13Bが削除されていてもよい。
【0061】
図4に示す端子付き電線1によれば、前後方向で、接合部位3がワイヤバレル部7の内側に位置しているので、接合部位3の両端(後端3Aと前端3Bと)での素線15切れの発生を抑制することができる。
【0062】
ところで、図1図4で示す端子付き電線1では、ワイヤバレル部7にベルマウス部が設けられていないが、図5図7で示すように、ワイヤバレル部7にベルマウス部25が設けられていてもよい。
【0063】
この場合、ベルマウス部25は、図1図4で示す端子付き電線1のワイヤバレル部7の後端7Aから後側に突出している態様、図1図4で示す端子付き電線1のワイヤバレル部7の前端7Bから前側に突出している態様で設けられている。
【0064】
図5図6で示す端子付き電線1では、ワイヤバレル部7が、本体部27と、一対のベルマウス部25(後側ベルマウス部25Aおよび前側ベルマウス部25B)とを備えて構成されている。前後方向では、前側から後側に向かって、前側ベルマウス部25B、本体部27、後側ベルマウス部25Aがこの順にならんでいる。
【0065】
さらに説明すると、ワイヤバレル部7の、被覆11側に位置している端部(後端部)には、ベルマウス部25(後側ベルマウス部25A)が形成されている。
【0066】
そして、図5図6で示す端子付き電線1では、後側ベルマウス部25Aの前端(前後方向における被覆11側に位置している後端とは反対側の端;後側ベルマウス部25Aと本体部27との境界)が、接合部位3の後端((長手方向における被覆11側に位置している端)3Aよりも、被覆11側(後側)に位置している。
【0067】
図5図6で示す端子付き電線1では、ワイヤバレル部7の本体部27は前後方向で径がほぼ一定である筒状に形成されており、後側ベルマウス部25Aは本体部27から離れるにしたがって(前側から後側に向かうにしたがって)、径が次第に大きくなる筒状に形成されている。なお、後側ベルマウス部25Aの前端の径(本体部27との境界での径)は、本体部27の径と一致している。
【0068】
図5図6で示す端子付き電線1では、前側ベルマウス部25Bは、後側ベルマウス部25Aと同様にして、本体部27から離れるにしたがって(後側から前側に向かうにしたがって)、径が次第に大きくなる筒状に形成されている。
【0069】
また、図5図6で示す端子付き電線1では、前後方向で、ワイヤバレル部7の本体部27と被覆11との間の存在している導体13(後側ベルマウス部25Aの前端と被覆11との間に位置している後側の非接合状態の導体13B)の高さ寸法や径の値は、後側に向かうにしたがって次第に大きくなっている。
【0070】
また、図5図6で示す端子付き電線1では、電線5の接合部位3の前端からは、非接合状態の導体(前側の非接合状態の導体)13Bが、前側に所定の長さだけ突出している。
【0071】
これにより、図5図6で示す端子付き電線1では、前後方向で、前側の非接合状態の導体13Bの後端(前側の非接合状態の導体13Bと接合部位3との境界)が、前側ベルマウス部25Bの後端よりも後側に位置しており、前側の非接合状態の導体13Bの前端が、前側ベルマウス部25Bの前端よりも前側に位置している。
【0072】
さらに、前側ベルマウス部25Bの前端(前端の開口)では、図6で示すように、導体13(前側の非接合状態の導体13B)と前側ベルマウス部25Bとの間に僅かな間隙29が形成されており、後側ベルマウス部25Aの後端(後端の開口)でも、導体13と後側ベルマウス部25Aとの間に僅かな間隙29が形成されている。
【0073】
なお、前側ベルマウス部25Bの前端(前端の開口)で、前側ベルマウス部25Bと導体13とが接しており、前側ベルマウス部25Bが導体13を抑え込んでおり、後側ベルマウス部25Aの後端(後端の開口)で、後側ベルマウス部25Aと導体13とが接しており、後側ベルマウス部25Aが導体13を抑え込んでいる構成であってもよい。
【0074】
なお、図5図6で示す端子付き電線1において、後側ベルマウス部25A、前側ベルマウス部25Bのいずれかが削除されていてもよい。たとえば、前側ベルマウス部25Bを削除した構成であってもよい。この場合、端子付き電線1では、前後方向で、前側の非接合状態の導体13Bの後端が、ワイヤバレル部7の本体部27の前端よりも後側に位置することになる。
【0075】
図5図6で示す端子付き電線1によれば、ワイヤバレル部7の本体部(ベルマウス部25を除いた本体部)27の内側に接合部位3が位置しているので、端子9を電線5に設置するときの導体13切れの発生を抑制することができる。
【0076】
また、図5図6で示す端子付き電線1によれば、非接合状態の導体13Bの一部(接合部位3側の部位)がベルマウス部25内に収まっているので、接合部位3と非接合部位13Bとの境界部分での導体13切れの発生を一層抑制することができる。
【0077】
なお、ベルマウス部25が設けられている図5図6で示す端子付き電線1では、接合部位3がワイヤバレル部7の本体部27の内側に位置しているのであるが、前後方向で、接合部位3の前端が前側ベルマウス部25Bの中間部に位置しており、接合部位3の後端が後側ベルマウス部25Aの中間部に位置していてもよい。
【0078】
さらに、図7で示すように、前側の非接合状態の導体13Bを削除した構成であってもよい。図7で示す端子付き電線1では、接合部位3の前端が、前側ベルマウス部25Bの前端よりも前側に位置しているが、接合部位3の前端が、前側ベルマウス部25Bの後端よりも後側に位置していてもよいし、接合部位3の前端が、前側ベルマウス部25Bのところに位置していてもよい。
【0079】
ところで、上記説明では、電線5の長手方向の一端部に接合部位3を形成し、そこに端子9を設置しているが、図8で示すように、電線5の長手方向の中間部に接合部位3を形成し、そこに端子9を設置してもよい。
【0080】
さらに説明すると、電線5の長手方向の一方の側から他方の側に向かって、被覆11で覆われている導体13(被覆が存在している電線の一端側部位)、非接合状態の導体13B(一端側の非接合状態の導体)、接合部位3、非接合状態の導体13B(他端側の非接合状態の導体)、被覆11で覆われている導体13(被覆が存在している電線の他端側部位)がこの順にならんでいる電線の、接合部位3のところに端子9を設置してもよい。
【0081】
このような端子付き電線では、電線5の長手方向(端子9の前後方向)での、端子9のワイヤバレル部7(もしくはワイヤバレル部の本体部27)の長さ寸法の値が、接合部位3の長さ寸法の値よりも大きくなっており、電線5の長手方向(端子9の前後方向)で、端子9のワイヤバレル部7(もしくはワイヤバレル部の本体部27)の内側に接合部位3が位置している。
【0082】
さらに、上記説明では、1本の電線5に1つの端子9を設置しているが、図9で示すように、複数本(たとえば、2本)の電線5に1つの端子9を設置してもよい。すなわち、上述した場合と同様にして、各電線5の接合部位3が1つの端子9のワイヤバレル部7(もしくはワイヤバレル部の本体部27)の内側に入るようにして、ワイヤバレル部7を各電線5の接合部位3のところに設置してもよい。
【0083】
また、複数本の電線5に1つの端子9を設置する場合、各電線5の導体13のそれぞれに個別に接合部位3を形成しておいて、各電線5を1つの端子9を設置してもよいし、各電線5のうちの少なくとも2本の電線5の導体13をまとめて、このまとめたものに接合部位3を形成しておいて、各電線5を1つの端子9を設置してもよい。
【0084】
また、複数本の電線5に1つの端子9を設置する場合に、各電線5のうちの少なくとも1本の電線5で、電線5の長手方向の中間部に接合部位3が形成されている態様であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 端子付き電線
3 接合部位
3A 接合部位の後端
5 電線
7 ワイヤバレル部
7A ワイヤバレル部の後端
9 端子
11 被覆
13 導体
13A 露出している導体(露出導体)
15 素線
25 ベルマウス部
25A 後側ベルマウス部
25B 前側ベルマウス部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11