(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670289
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】電気機械式ブレーキキャリパーアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/18 20060101AFI20200309BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20200309BHJP
F16D 55/226 20060101ALI20200309BHJP
F16D 65/095 20060101ALI20200309BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20200309BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20200309BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20200309BHJP
F16D 125/06 20120101ALN20200309BHJP
【FI】
F16D65/18
B60T13/74 G
F16D55/226 104A
F16D65/095 C
F16H25/22 C
F16H25/24 B
F16D121:24
F16D125:06 A
F16D125:06 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-500835(P2017-500835)
(86)(22)【出願日】2015年7月3日
(65)【公表番号】特表2017-524880(P2017-524880A)
(43)【公表日】2017年8月31日
(86)【国際出願番号】IB2015055019
(87)【国際公開番号】WO2016005867
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2018年6月15日
(31)【優先権主張番号】BG2014A000025
(32)【優先日】2014年7月8日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501016696
【氏名又は名称】フレニ・ブレンボ エス・ピー・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・サーラ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ・パガーニ
【審査官】
大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−183723(JP,A)
【文献】
特開昭51−123475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00−13/74
F16D 49/00−71/04
F16H 19/00−37/16
49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリパー本体(10)と、電気機械式アクチュエータ(11)とを備えた電気機械式キャリパー(9)であって、
長軸(x)を中心として回転可能なねじ(14)と、
前記ねじ(14)に回転可能に連結され、前記ねじ(14)の長軸(x)に沿って移動可能なナットねじ(16)と、
前記ナットねじ(16)と同軸の長軸(y)上に配置されて前記ナットねじ(16)に螺合する可動スラスト要素(18,32)と、
前記ナットねじ(16)に設けられる少なくとも第1連結面(C)と、可動スラスト要素(18,32)に設けられる少なくとも第2連結面(CI,CIV)とを備え、前記第2連結面(CI,CIV)が前記第1連結面(C)に少なくとも一部を連結され、前記第1連結面(C)に対して押圧可能であるナットねじ(16)と可動スラスト要素(18,32)の間の連結面と、
を備え、
前記連結面(C,CI,CIV)の1つ(C)は凹状、残り(CI,CIV)は凹状の連結面(C)に係合する凸状であり、前記連結面(C,CI,CIV)の配置は、ねじ(14)の長軸(x)にほぼ垂直な単一の予め決められた軸(k)を中心として可動スラスト要素(18,32)に対してナットねじ(16)の相対的な揺動を可能とすると共に、
ナットねじ(16)と可動スラスト要素(18)の間の長軸(y)を中心とする相対的な回転が阻止され、
前記第1及び第2連結面(C,CI,CIV)は、一部に互いを補完する同軸の円筒面を有し、前記ナットねじ(16)と可動スラスト要素(18.32)は、前記第1及び第2連結面(C,CI,CIV)と共通の軸を中心として相対的に揺動可能であることを特徴とする電気機械式キャリパー(9)。
【請求項2】
前記第1及び第2連結面(C,CI,CIV)は、前記単一の予め決められた横軸(k)にほぼ沿い、相補的な形状をそれぞれ備えることを特徴とする請求項1に記載の電気機械式ブレーキキャリパー。
【請求項3】
前記第1及び第2連結面(C,CI,CIV)は、二者択一的にいずれかがナットねじ(16)と仮想固体(30)の側面の間、又は、可動スラスト要素(18,32)と仮想固体(30)の間の境界面であり、
前記仮想固体(30)は、ねじの長軸、あるいは、スラスト要素(18,32)の長軸(y)に対して仮想角度(δ)傾斜した垂直軸(z)を備え、
前記仮想固体(30)は、前記ナットねじ(16)又は可動スラスト要素(18,32)の少なくとも一部と交差する前記請求項1又は2に記載の電気機械式ブレーキキャリパー。
【請求項4】
前記仮想固体(30)は円筒であることを特徴とする請求項3に記載の電気機械式ブレーキキャリパー。
【請求項5】
前記仮想角度(δ)は90°であることを特徴とする請求項3又は4に記載の電気機械式ブレーキキャリパー。
【請求項6】
前記スラスト要素(18,32)は、ピストン(18)と、環状の外形形状(CIII,CV)によって同軸で互いに連結されたインサート(32)とを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電気機械式ブレーキキャリパー。
【請求項7】
前記インサート(32)は、少なくとも1つの平坦部(32b)を備え、ピストンの窪みに係合し、共通軸(y)を中心とするピストン(18)に対してインサート(32)の相対的な回転を阻止するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の電気機械式ブレーキキャリパー。
【請求項8】
前記可動スラスト要素(18)とキャリパー本体(10)の間に、可動スラスト要素(18)の長軸(y)を中心とする相対的な回転を阻止するように構成した対照手段(26,28)が設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の電気機械式ブレーキキャリパー。
【請求項9】
前記対照手段(26,28)は、
前記スラスト要素(18,32)に軸方向に長尺な凹部(28)と、
前記キャリパー本体(10)に一体化され、前記凹部(28)に少なくとも一部が突出する回転対照要素(26)と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の電気機械式ブレーキキャリパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にはブレーキシステム、特に電気機械式ブレーキキャリパーのためのアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の技術分野は電気機械式ブレーキキャリパーであり、一般に、電動駆動、減衰システム、及び、回転運動を直線運動に変換するためのシステムを必要とする。
【0003】
運動の変換は、キャリパー本体に収容された回転可能なねじと、ナットねじとの間の噛み合い、通常、ねじとナットねじの間の境界面での循環ボール、いわゆるボールねじによって行われる。
【0004】
ねじの回転により、ナットねじに対して並進運動が伝達される。ナットねじは、ピストンを押圧して一対のブレーキパッドの一方に係合する。ナットねじは、ブレーキディスクに対してキャリパー本体とは対称に搭載される。ディスクでのパッドの押圧力が制動力を引き起こし、その反力はキャリパーとそこに連結された要素とに伝えられる。この反力により、ねじの軸心とピストンの軸心との間の芯ずれが発生する。支持部及び変速要素での補正のない圧力のため、装置の効率、又は機械的健全性が損なわれる。
【0005】
実際に、ブレーキパッドが圧縮されると、ブレーキキャリパーの湾曲がキャリパー自身に作用する反力によってどのようにして引き起こされ、ブレーキパッドのピストンの支持面と、ねじの回転軸との間の相対的な回転(結果的に、ねじの長軸に対するピストンの長軸の芯ずれ)をどのようにして引き起こすのかは公知である。言い換えれば、ねじの駆動軸は、キャリパー本体のねじの軸方向に隣接する平面と垂直に維持される一方、ピストンの駆動軸はパッド−ディスク平面と垂直に維持される。
【0006】
この軸の芯ずれにより、ねじを支持するスラスト軸受に不均一な負荷が作用し、ねじとナットねじの間に挿入される回転要素に、結果としてボールに均質でないヘルツ圧を付与し、構成要素の疲労寿命に関する問題と共に不完全な負荷を作用させる。この問題を解決するため、キャリパー本体の剛性を大きくして、その変形を抑制できる。この結果、ピストン軸に対するねじ軸の振動又は傾き(すなわち、ピストンの駆動軸とねじの間の芯ずれ)は抑制されるが、結果としてブレーキの全体サイズと重量が顕著に増大する。
【0007】
これに代えて、システムにさらなる自由度を与えることができ、これによりピストン循環ねじ軸の駆動角度の違いを補償可能となる。関節継ぎ手、すなわち周方向の拘束が、ピストンとナットねじの間の境界面に付加され、ピストン自身をねじの長軸とは一致しない方向に方向付けることできる一方、ナットねじをピストンに係合させて押圧可能な状態に維持する。
【0008】
ナットねじとピストンの間の面に対して円錐状の連結面を使用する、スラストピストンとねじ−ナットのねじ組立品との間の芯ずれを補正するような解決法が、米国特許第8,607,939号明細書で公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第8,607,939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、公知の解決法は、一般にナットねじとピストンの境界面に円錐又は球状のジョイントを採用しており、ナットねじに対して相対的にピストンが部分的に回転可能となることを抑えることができない。これは、ナットねじとピストンの間の連結点において、ピストンとナットねじの間で角度ずれを発生させる接触面間で相互にスライドするからである。
【0011】
そのような回転により、電気モータの軸の回転角度(角度「a」)と、スラストピストンの移動(ストローク「c」)との間の相関関係にエラーがもたらされる。そのような相関関係は、ブレーキ装置の操作効率を保証するために、(温度、速度等の)全ての使用条件で設計パラメータについて保証されなければならない。
【0012】
実際に、回り止めシステムがナットねじ、ピストン及びキャリパー本体の間になければ、キャリパー本体に対して軸方向への変位なしに、ねじの押し付け回転と、ナットねじ又はピストンの回転とがもたらされる。したがって、(機械伝達の削減割合によりモータの回転に関連する)ねじの押し付け回転について、電子制御ユニットがブレーキキャリパー駆動装置の適切で効率的な管理を可能とするために、予め決められた関係にあるナットねじ/ピストンの対応する軸方向の移動があることが必要である。
【0013】
電気機械式キャリパーに関する運動連鎖を分析すると、スラストピストンと、動きを回転から直動に変換する機械システムとの間の境界面は、(ブレーキ動作の操作条件では、)設計式に対する実際の角度とストロークの強固な相関関係を考慮した最も重要な領域である。
【0014】
「aとc」の関係を保証するのに有用な(例えば、捩りや干渉等による)堅い境界面の完成により、荷重下、ブレーキキャリパーの変形を補正するために、部品自体では対応できないことに起因する圧力により、機械部品の寸法が大きくなり過ぎるという結果がもたらされる。
【0015】
しかしながら、従来技術は、名目上の「aとc」の関係と、操作条件下(すなわち、キャリパーがディスクにブレーキ力を作用させる際)での「aとc」の関係との間の位相変化を回避したり、例えば、ピストンとナットねじの間の連結面のみを利用したりするための有利な解決方法を提供しない。
【0016】
そこで、「aとc」の関係を保証する結合形状を創作したり、特別な装置を追加したりすることが必要である。
【0017】
本発明の目的は、芯ずれの補正と名目上の「a−c」の相関関係を同時に保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この問題を解決するため、ピストンとナットねじにはアーチ状の連結面が形成され、これらは少なくとも部分的に相補的な形状を有しており、キャリパー本体が優先的に変形する平面に垂直な回転軸に対してこれらの構成部品を相互に回転可能とし、このとき軸方向のスラスト力によって押圧し、同時にピストンがナットねじに対して周方向にスライドしにくくする。
【0019】
回止ピンは、キャリパー本体と一体化されて、キャリパー本体のみならず、長軸を中心としても回転できないようにピストンに係合するのが好都合である。
【0020】
この構成により、ナットねじとピストンの間の芯ずれを補償できる一方、ピストンとナットねじの間の相対的な回転を、ピストンとキャリパー本体の間の場合と同様に抑え、設計上の相互関係「a−c」を維持する。
【発明の効果】
【0021】
このように、ねじ−ナット、ねじ−ピストンの組立品によって形成されるアクチュエータの効率が最大化される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータを備えた電気機械式ブレーキキャリパーの側面断面図である。
【
図2】
図1のアクチュエータを含む、ねじ-ナットのねじ組立品の斜視図である。
【
図3】
図2の組立品を含む、ナットねじの側面断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、
図1のアクチュエータを含むスラストピストンの側面断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、ブレーキ力を作用させた状態でのアクチュエータを備えた、電気機械式ブレーキキャリパーの側面断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るナットねじの連結面を形成するようにねじ-ナットのねじ組立品を横断する垂直シリンダの斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るナットねじの連結面を形成するようにねじ-ナットのねじ組立品を横断する垂直シリンダの斜視図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る付加アダプタを備える、ピストン-ナットのねじ組立品の斜視図である。
【
図10】
図9のナット-ねじのアダプタ組立品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の複数の実施形態を詳細に説明する前に、本発明の適用例がその構成の詳細や、後述する記載あるいは図面の構造には制限されないことを明らかとする。本発明は、他の実施形態を想定でき、実用化又は異なる方法で理解できる。
【0024】
最初に
図1を参照すると、本発明の好ましい実施形態では、電気機械式ブレーキキャリパー9は、循環式ボールねじ12及び可動スラスト要素18,32を有する機械式アクチュエータ11が収容されるキャリパー本体10を備える。循環式ボールねじ12は、第1長軸xを中心として回転可能なねじ14を備え、このねじ14はナットねじ16に対して相対的に回転し、第1長軸xに沿って平行に往復移動可能である。
【0025】
ナットねじ16は可動スラスト要素18,32に係合する。可動スラスト要素18,32は、ナットねじ16の軸方向の移動によって押圧される。また、可動スラスト要素18,32は、一対のパッド20の一方にスラスト力を発生させ、ブレーキディスク(図示せず)にブレーキ力を付与する。
【0026】
本発明の実施形態によれば、可動スラスト要素は、パッド20に直接係合し、ブレーキディスクを押圧する、中空円筒状のピストン18である。
【0027】
ねじ14はアキシャル軸受22によって支持され、ピストン18の内筒にはシーガータイプのリング24を保持するための溝24a(
図4で視認可能)が形成されているのが好ましい。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る循環式ボールタイプねじを詳細に示す。図面から、ねじ14及び
ナットねじ16が第1長軸xと同軸上に位置し、ねじ14の回転に応じたナットねじ16の移動や、ねじの角度変化につながるストロークがあることは明らかである。ナットねじ16の反対面には、ピストン18との接触領域に隣接して、ナットねじ16の反対面に対向する凹面を有するように図示された例として、第1連結面Cが形成されている。
図3は、連結面Cがナットねじ16の径方向周辺が、可能であれば2つの平面セグメント
CIIで囲まれ、ピストン18との接触面として機能する、平坦で湾曲した疑似円環面の形態を、どのように形成するのかを示している。
【0029】
この説明及び特許請求の範囲で、「長手方向の」、「横軸の」等、位置や方向を示す用語及び表現は第1長軸xに関するものである。
【0030】
図4で理解できるように、ピストン18は、第2長軸yに沿って軸方向に延びる2つの内方の円筒キャビティ18a,18bを有する。すなわち、第1円筒キャビティ18aは、アキシャル軸受22に隣接し、循環式ボールタイプねじ12、特にナットねじ16が同心上に収容されるように構成されている。第2軸方向キャビティ18bはナットねじ16を超えて長手方向に延びるねじの一部が収容されている。
【0031】
ピストン18は、内方に第2連結面
CIが位置するように形成されている。第2連結面Cは、対応する第1連結面Cに係合する。第1連結面Cは、ナットねじ16の外径歯に形成されている。2つの連結面C,
CIは、ナットねじ16が軸方向に移動して接触する際、ピストン18を軸方向に直動させるためにスラスト関係で協働し、横断スラスト面Aを押圧することによりパッド20を押し出す。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、軸方向のキャビティ18a,18bは、ピストンの内方に異なる半径R1,R2を有し、その半径の違いにより、第2長軸yと垂直な面に第2連結面
CIの環状突出部を形成する。ピストンの厚みの違いという条件は、軸方向のキャビティ18a,18bの半径R1,R2の違いに関係する。限定するものではないが、例えば、ピストンが同一半径を有する2つの内方キャビティを有することができるので、境界面は、径方向に厚さを有する環状の隔壁と、この厚さに等しい軸方向の拡張部分と、第2接触面Cの延長部分との間に配置されているのが好ましい。
図1及び
図6に示すように、ナットねじ16とピストン18にそれぞれ関係する第1及び第2連結面C,
CIの間を、連結及び接触させることによりナットねじをピストンに係合して押圧する。
【0033】
前述のように、キャリパー9、特にキャリパー本体10が、ピストン18によって作動するブレーキパッド20のブレーキ力に対してブレーキディスクに働く反作用に従った圧力により、キャリパー本体自身の変形、ピストンの反対面(
図1及び
図6に含まれる実質的な平面)での際立った曲げ変形が引き起こされる。キャリパー本体10の分岐には、ピストン18の第2長軸yにほぼ垂直な軸を中心とするキャリパー本体10の横軸の反作用面Bの回転が含まれる。そのような反作用面Bの回転により、同様にねじ14が上方へと回転し、その結果、(
図6で理解できるように)循環式ボールねじの第1長軸xとピストンの第2長軸yとの間に角度βのずれが発生する。
【0034】
連結面C,Cにより、キャリパー本体10の変形しやすい面に沿ったナットねじ16とピストン18の間のずれは許容されるが、ナットねじ16に対するピストンの第2長軸yを中心とする相互の回転は阻止される。このように、ピストン18は第1長軸xにほぼ垂直な予め決められた横軸kを中心として揺動可能であるが、第2長軸yを中心とする回転は不能である。本発明の実施形態によれば、キャリパー本体10に対するピストン自身の長軸y回りのさらなる回転は、回転体26,28すなわち対照要素(例えば、図示しない方法でのピン又はキー)には対照手段によって阻止され、長軸xと垂直な軸においてキャリパー本体に適宜挿入され、ピストン18の外方の厚み部分に形成される、凹部又は軸方向に長尺な溝に係合可能である。溝は、ピストンの径方向の厚み部分を貫通していても、貫通していなくてもよい。
【0035】
ピン26は、一端を溝28内に突出させ、ピストンが長軸yを中心として回転初期段階にあるとき、ピストン18の回転を阻止する。したがって、軸方向に延びる溝では、その内部にピン26の先端が突出して当接し、長軸の周囲でのピストンの回転が阻止される。対照手段26,28の構成は逆にできる。つまり、キャリパー本体10内に凹部を形成し、対照要素をピストン18に一体化できる。
【0036】
図7及び
図8は、図示しない方法で、仮想固体30、例えば、ねじ16の第1長軸xに対して垂直角δ(
図8に図示)で方向付けられた垂直軸zを有するシリンダを備えたピストン18のナットねじ16の面から始まる連結面がどのように定義できるかを示す。仮想角度δは直角であるのが好ましい。
【0037】
本発明の実施形態に係るシリンダは、半径R23の円形部を有するが、(例えば、楕円状、放射状、双曲状、多角形状等)どのような形状の閉鎖部又は開放部を有していてもよい。但し、この部位がy軸に対してナットねじとピストンの間の相対的な回転を阻止するものの、キャリパー本体の最大変形面に垂直な軸に対してピストン−ねじ軸の間の相対的な回転が可能となることを保証することが条件である。
【0038】
仮想固体30の幾何学上の他の形状(例えば、ドーナツ形状)は排除しない。また、垂直軸zは直線形状から変更できる(例えば、トロイドの軸が円形であるが、機能的に楕円状、放射状等であってもよい)。
【0039】
一実施形態では、第1連結面Cはナットねじ16が交差する垂直シリンダ30の外面の一部として定義できる。仮想シリンダ30又はピストンの一部を(半径方向又は長軸方向に)変形させたり、ナットねじ16に対する軸の方向δを変更したりすることにより、第1接触面Cの凹面、形状、及び拡張部分を変形できる。例えば、図示しない方法により、仮想シリンダ30とナットねじ16が交差する仮想角度δを変更することにより、異なる曲率半径を有する一対の湾曲凹部を備える第1連結面Cを得ることができる。好ましい実施形態では、仮想角度δは90°である。第1連結面は、長軸xを通り、
図1の平面とほぼ同一面内に位置する直径面P(
図7に示す)に対して鏡面対称である。仮想角度δがキャリパー本体の最も変形した平面と垂直でない場合、変形の補正効果は損なわれ、δが0°に等しければ(すなわち、関節継ぎ手でないが、最大変形面に対して拘束されているならば)ゼロになる。
【0040】
例えば、仮想シリンダ30の側面とピストン18の径方向の少なくとも一部の厚みとの間の交差部分を考慮すると、ピストン18についても同様な理由が存在し得ることが分かる。
【0041】
さらに、
図9は本発明の他の実施形態、特にピストンが(小さな製品容量の場合の)成型よりもむしろ機械工具で機械加工して製造するのに適した実施形態を示す。この場合、可動スラスト要素18,32は、ナットねじ16とピストン18の間の境界面に挿入されたインサート32である。インサート32は、ピストンの内方の厚み部分に形成され、環状ハウジングシートCvとそれぞれ一致する環状外形形状C
III、C
IVをそれぞれ備えると共に、第1連結面Cを形成されるナットねじ16の横断境界面を備える。
【0042】
図10は、特に、インサート32とナットねじ16の連結状態を示す。インサート32はナットねじ16の厚み部分に形成された連結面Cに係合する曲線形状C
IVを有する。ナットねじとインサートの相補面間の連結のため、ピストンとナットねじの間の連結にも同様な考えが有効である。
【0043】
本発明の実施形態によれば、1以上の平坦部32bにより(好ましくは、この例で示されるのは一対である)、インサート32をピストン18に回転
不能に固定し、ピストン18の内方厚み部分に形成された適切なシートに隣接させることができる。図示しない変形例によれば、インサート32とピストン18の間の非回転機能により、相対的な回転を阻止できる、一般的な形状の結合又は他のタイプの結合(ねじ、溶接、接着等)で効果を得ることができる。
【0044】
ピストンとナットねじの間を直接連結する場合と、インサート32を介在させて連結する場合のいずれであっても、2つの面の少なくとも一部が相互に一致又は僅かに触れ、相互に接触していれば十分であるので、連結面C,C及びC
IVが完全に重なる必要はない。一致した形状(結果として、ここで図示した場合のように同軸)の場合、予め決められた回転横軸kはその形状の共通軸と一致している。逆に、連結面(C,C
III及びC
IV)が相互に接触するものの異なる曲率半径を有すれば、ナットねじ16とスラスト要素18,32の間の予め決められた回転横軸kは、連結面の形状に接する軸に合致する。また、ナットねじの凹状形状と、ピストンの関連する凸形状とを置き換えたり、これらを逆に置き換えたりすることができる(同様なことがインサート32とナットねじ16の連結にも適用される)。
【0045】
この結果、ここに記載した実施形態により、ピストンと循環ボールねじの間の芯ずれ6が補正され、同時にピストン18、ナットねじ16及びキャリパー本体10の間の相互の回転が阻止されることになり、ピストンのストロークとねじの回転との間の予め決められた相関関係が維持される。本発明に係る、電気機械式キャリパーのためのアクチュエータの種々の態様及び実施形態について説明した。各実施形態は他のいずれにも組み合わせるようにしても構わない。また、本発明は記載された実施形態に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲によって特定される範囲内で変更可能である。