(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670293
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物を含有する絶縁材、封止剤および導電ペースト、当該熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物、当該熱硬化性樹脂組成物を有する基板材料、当該熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグ、当該プリプレグの熱硬化性樹脂組成物を硬化させた部材、熱膨張率の調整方法、ならびに当該調整方法を用いて製造された部材
(51)【国際特許分類】
C08G 59/32 20060101AFI20200309BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20200309BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
C08G59/32
C08J5/24CFC
H05K1/03 610S
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-503372(P2017-503372)
(86)(22)【出願日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2016052422
(87)【国際公開番号】WO2016139989
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2018年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2015-43020(P2015-43020)
(32)【優先日】2015年3月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】海老原 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小山 治
【審査官】
佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−120890(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/041764(WO,A1)
【文献】
国際公開第2015/076399(WO,A1)
【文献】
特開2015−120885(JP,A)
【文献】
特開2015−116813(JP,A)
【文献】
特開2015−054856(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/163352(WO,A1)
【文献】
特開2015−120889(JP,A)
【文献】
特開2015−117361(JP,A)
【文献】
特開2015−121775(JP,A)
【文献】
特開2015−194748(JP,A)
【文献】
特開2015−117363(JP,A)
【文献】
西独国特許出願公開第01932305(DE,A)
【文献】
特開昭56−122313(JP,A)
【文献】
特開2010−224533(JP,A)
【文献】
特開昭57−168956(JP,A)
【文献】
特開平11−171887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00−59/72
C08J 5/24
H05K 1/03
H01L23/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)のグリコールウリル誘導体化合物
およびビスマレイミド化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する絶縁材。
【請求項3】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する封止材。
【請求項4】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する導電ペースト。
【請求項5】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
【請求項6】
線熱膨張係数が40ppm/℃以下である請求項5に記載の硬化物。
【請求項7】
ガラス転移温度が180℃以上である請求項5に記載の硬化物。
【請求項8】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を有する基板材料。
【請求項9】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグ。
【請求項10】
請求項3に記載の封止材、請求項4に記載の導電性ペースト、請求項8に記載の基板材料の前記熱硬化性樹脂組成物または請求項9に記載のプリプレグの前記熱硬化性樹脂組成物を硬化させた部材。
【請求項11】
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた部材の線熱膨張係数を測定する測定工程と、
前記測定された線熱膨張係数に基づいて、前記熱硬化性樹脂組成物における前記式(1)のグリコールウリル誘導体化合物の含有量を調整する調整工程と、
を備える部材の線熱膨張係数の調整方法。
【請求項12】
前記式(1)のグリコールウリル誘導体化合物の含有量が、請求項11に記載の線熱膨張係数の調整方法を用いて設定されたものである請求項10に記載の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物を含有する絶縁材、封止剤および導電ペースト、当該熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物、当該熱硬化性樹脂組成物を有する基板材料、当該熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグ、当該プリプレグの熱硬化性樹脂組成物を硬化させた部材、熱膨張率の調整方法、ならびに当該調整方法を用いて製造された部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電気電子産業を中心とする各種の分野において、電子機器の小型化、多機能化、通信速度の高速化などが追及されるに伴い、電子機器に用いられる回路基板のさらなる高密度化が要求されている。このような高密度化の要求にこたえるため回路基板の多層化が図られている。
【0003】
多層化された回路基板は、例えば、電気絶縁層とその表面に形成された導体層とからなる内層基板に積層した電気絶縁層上に導体を形成し、さらに電気絶縁層上と導体の形成を繰り返すことにより作製される。回路基板の多層化の要求にこたえるために、熱硬化性樹脂組成物が種々提案されている(特許文献1〜3)。
【0004】
特許文献1には、無機充填材を高充填することにより生じる問題を解決するために、特定のエポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド化合物及び無機充填材を含有する樹脂組成物を用いることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、回路基板の絶縁層形成に好適に使用することができる樹脂組成物として、特定の、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填剤を含有してなるものが記載されている。
【0006】
特許文献3には、低熱膨張性、そり特性に優れるプリプレグ等を提供するために、プリプレグに含まれる熱硬化性樹脂組成物層を、特定のマレイミド化合物、特定のシロキサンジアミン、および特定の酸性置換基を有するアミン化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物で構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−185221号公報
【特許文献2】特開2011−89038号公報
【特許文献3】特開2014−24927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3に開示されている熱硬化性樹脂組成物は、線熱膨張係数を低下させるために無機充填剤を用いている。しかし、無機充填剤の配合は熱硬化性樹脂組成物の成形しやすさ(以下、「成形性」ともいう。)を低下させる原因となる。
特許文献3には、特定の熱硬化性樹脂組成物を用いて線熱膨張率係数を低下させることが記載されている。しかし、同文献に記載されている熱硬化性樹脂組成物は、基材に含浸させて用いられるものであって、熱硬化性樹脂組成物のみからなる硬化物の線熱膨張係数を低下させるものではない。
【0009】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物の線熱膨張係数を低くすることができる熱膨張性調整剤、熱膨張性調整剤としての使用、熱硬化性樹脂組成物、当該熱硬化性樹脂組成物を含有する封止剤および導電ペースト、当該熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物、当該熱硬化性樹脂組成物を有する基板材料、当該熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグ、当該プリプレグの熱硬化性樹脂組成物を硬化させた部材、熱膨張率の調整方法、ならびに当該調整方法を用いて製造された部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
〔1〕下記式(1)のグリコールウリル誘導体化合物
およびビスマレイミド化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
【0011】
〔2〕〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する絶縁材。
〔3〕〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する封止材。
〔4〕〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を含有する導電ペースト。
【0012】
〔5〕〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物。
〔6〕線熱膨張係数が40ppm/℃以下である
〔5〕に記載の硬化物。
[7〕ガラス転移温度が180℃以上である
〔5〕に記載の硬化物。
【0013】
〔8〕〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を有する基板材料。
〔9〕〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させたプリプレグ。
〔10〕〔3〕に記載の封止材、
〔4〕に記載の導電性ペースト、
〔8〕に記載の基板材料の前記熱硬化性樹脂組成物または
〔9〕に記載のプリプレグの前記熱硬化性樹脂組成物を硬化させた部材。
【0014】
〔11〕〔1〕に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた部材の線熱膨張係数を測定する測定工程と、前記測定された線熱膨張係数に基づいて
、前記熱硬化性樹脂組成物における
前記式(1)のグリコールウリル誘導体化合物の含有
量を調整する調整工程と、を備える線熱膨張係数の調整方法。
【0015】
〔12〕前記式(1)のグリコールウリル誘導体化合物の含有量が、
〔11〕に記載の線熱膨張係数の調整方法を用いて設定されたものである
〔10〕に記載の部材。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、硬化性樹脂を硬化させて形成される硬化物の線熱膨張係数を低くすることができる。したがって、回路基板等を構成する硬化物よりなる部材と他の部材との間の線熱膨張係数の差を抑制し、熱応力による回路基板等の変形を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の熱膨張性調整剤は、下記の式(1)のグリコールウリル誘導体化合物を含有する。
【0018】
【化2】
【0019】
発明者らは、熱硬化性樹脂組成物中に式(1)で示されるグリコールウリル誘導体化合物(以下、適宜、「グリコールウリル誘導体化合物」ともいう。)について、それ自体を硬化させることにより線熱膨張係数が低い硬化物が得られること、および、熱硬化性樹脂組成物に配合すると熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物の線熱膨張係数が小さくなることを見出した。すなわち、発明者らは、上述したグリコールウリル誘導体化合物の新たな性質を見出したことにより、グリコールウリル誘導体化合物を含有する熱膨張性調整剤に係る本発明に想到したものである。
【0020】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、グリコールウリル誘導体化合物を含有しているから、熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物により、線熱膨張率が低い部材を形成することができる。
【0021】
本実施形態のグリコールウリル誘導体化合物を含有する熱膨張性調整剤は、グリコールウリル誘導体化合物をその成分の一部として含むもの、およびグリコールウリル誘導体化合物のみからなるもののいずれも含む。また、熱膨張性調整剤を含有する熱硬化性樹脂組成物も同様に、熱膨張性調整剤をその成分の一部として含むもの、および熱膨張性調整剤のみからなるもののいずれも含む。
【0022】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでいる。熱硬化性樹脂の例としてエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂の種類は、特に限定されるものではないが、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノール、ナフトールなどのキシリレン結合によるアラルキル樹脂のエポキシ化物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂などの一分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独使用でも2種類以上併用してもよい。
【0023】
エポキシ樹脂の硬化に際しては、硬化促進剤を併用することが好ましい。硬化促進剤としては、エポキシ樹脂をフェノール系硬化剤で硬化させるための公知の硬化促進剤を用いることができ、例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩、イミダゾール類、尿素化合物、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩などを挙げることができる。より具体的には、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア、3−(o−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−(p−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、1,1’−フェニレンビス(3,3−ジメチルウレア)、1,1’−(4−メチル−m−フェニレン)−ビス(3,3−ジメチルウレア)などの尿素化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、トリフェニルホスホニオフェノラート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラナフトエ酸ボレートなどのホスホニウム塩を挙げることができる。
【0024】
グリコールウリル誘導体化合物は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱膨張調整剤であるとともにエポキシ樹脂でもある。熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂として、グリコールウリル誘導体化合物および他のエポキシ樹脂などを含んでいても、グリコールウリル誘導体化合物のみを含んでいてもよい。
【0025】
グリコールウリル誘導体化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、種々の形状の硬化物を形成することができる。したがって、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いれば、所定の線熱膨張性係数を備えた部材を容易に形成することができる。
【0026】
熱硬化性樹脂組成物中にグリコールウリル誘導体化合物を配合することにより、線熱膨張係数が小さい硬化物を得ることができる。上記のグリコールウリル誘導体化合物を熱硬化性樹脂組成物に配合することにより、線熱膨張係数が40ppm/℃以下、さらには25ppm/℃以下である硬化物を得ることができる。
【0027】
熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物の線熱膨張係数を小さくするために、従来、無機充填剤が用いられていた。本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、グリコールウリル誘導体化合物を含有する熱膨張性調整剤を含有する。したがって、硬化物の線熱膨張係数を小さくするために必要な無機充填剤の量を少なくすることができる。さらには、無機充填剤を配合しないで線熱膨張係数が小さい硬化物を形成することもできる。
【0028】
硬化物のガラス転移温度は、180℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。
ガラス転移温度を上記範囲内とすることにより、硬化物よりなる部材の剛性や耐熱性を良好にすることができる。ガラス転移温度は、示唆熱分析法(TMA)を用いて40℃から300℃まで毎分10℃で昇温して測定して得られた値をいう。
【0029】
熱硬化性樹脂組成物におけるグリコールウリル誘導体化合物の配合量は、硬化物に要求される線熱膨張係数に応じて調整すれば良いが、熱膨張性調整剤としての効果を得るためには、熱硬化性樹脂組成物100質量%中に5質量%以上配合されることが好ましく、20質量%以上配合されることがさらに好ましい。
【0030】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、絶縁材としての用途が好ましい。例えば、封止材(アンダーフィル材)、導電ペースト、成形材、各種バインダー、マウンティング材、コーティング材、積層材などとして用いることができる。
【0031】
封止材とは、隙間を封じることにより、回路基板を構成する部品が外気に触れることを防止するものをいう。不要な部分にはんだが付着することを防止する目的で用いられるソルダーレジストも封止材に含まれる。
【0032】
導電ペーストとは、はんだの代わりに用いられる導電性のあるペースト状の材料をいい、一般に、低温溶融金属粒子を熱硬化性樹脂組成物中に分散させた樹脂組成物が用いられる。
【0033】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物を有する基板材料や、基材に熱硬化性樹脂組成物を含浸させたプリプレグとして用いることができる。これら基板材料およびプリプレグの熱硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、線熱膨張係数の低い部材を作製することができる。得られた部材は、フレキシブル基板やリジッド基板を構成する部材として用いられる。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物を有する基板材料は、その原料または構成要素として熱硬化性樹脂組成物を用いたものをいう。このような基板材料としては、たとえば、熱硬化性樹脂組成物をフィルム状にした絶縁樹脂シート等のフィルム状基板材料や、熱硬化性樹脂組成物を含有する樹脂を備えた樹脂付き銅箔(Resin Coated Copper、RCC)等が挙げられる。
【0035】
プリプレグとは、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物をワニスとし、基材に含浸させて、加熱または乾燥させて半硬化状態にしたものをいう。基材としては、例えば、ガラスクロス、炭素繊維などの無機繊維、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどの有機繊維が用いられる。これらは、単独または複数を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、高耐熱、難燃性に優れたものとする観点から、ポリマレイミド化合物およびフェノール化合物を含んでいてもよい。ポリマレイミド化合物としては、1分子中に2個以上のマレイミド基を有するものが好ましい。また、フェノール化合物としては、分子中に少なくとも2個のOH基を有するものが好ましい。これらポリマレイミド化合物およびフェノール化合物としては、具体的には、国際公開番号WO2012/057171に記載されたものを用いることができる。
【0037】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤、無機充填剤、カップリング剤、離型剤、着色剤、難燃剤、低応力剤などを添加することができ、また、これらを予め反応して用いることもできる。
【0038】
無機充填剤の例として、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ガラス、珪酸カルシウム、マグネサイト、クレー、タルク、マイカ、マグネシア、硫酸バリウムなどを挙げることができるが、特に非晶性シリカ、結晶性シリカ、硫酸バリウムが好ましい。また優れた成形性を維持しつつ無機充填剤の配合量を高めたい場合は、細密充填を可能とするような粒度分布の広い球形の無機充填剤を使用することが好ましい。
【0039】
カップリング剤の例としては、メルカプトシラン系、ビニルシラン系、アミノシラン系、エポキシシラン系などのシランカップリング剤やチタンカップリング剤を、離型剤の例としてはカルナバワックス、パラフィンワックスなど、また着色剤としてはカーボンブラックなどをそれぞれ例示することができる。難燃剤の例としては、リン化合物、金属水酸化物など、低応力剤の例としては、シリコンゴム、変性ニトリルゴム、変性ブタジエンゴム、変性シリコンオイルなどを挙げることができる。
【0040】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物は、熱膨張性調整剤としてグリコールウリル誘導体化合物を用いているから、無機充填剤の含有量の少ない部材を形成することができる。例えば、硬化物よりなる部材の100質量%に対する無機充填剤の含有量を80質量%以下、さらには50質量%以下とすることができる。熱硬化性樹脂組成物中の無機充填剤の含有量を少なくすることにより、無機充填剤に起因する成形性の低下を抑えることができる。
【0041】
本発明は、線熱膨張係数(熱膨張率)の調整方法として実施することもできる。本実施形態の調整方法は、上述した本実施形態の熱硬化性樹脂組成物を硬化させた部材の線熱膨張係数を測定する測定工程と、前記測定された線熱膨張係数に基づいて、前記熱硬化性樹脂組成物の使用量および前記熱硬化性樹脂組成物における熱膨張率調整剤の含有量の少なくとも1つを調整する調整工程と、を備えている。
【0042】
測定工程において測定された線熱膨張係数の測定値に基づいて、調整工程において、熱硬化性樹脂組成物の使用量および熱硬化性樹脂組成物における熱膨張率調整剤の含有量含有量の少なくとも1つを調整する。この調整工程により、部材の線熱膨張係数を所定の値に近付けることができる。したがって、測定工程と調整工程とを必要に応じて繰り返すことにより、線熱膨張係数を調整して所定の線熱膨張係数を備えた部材を得ることができる。
【0043】
上述した部材の線熱膨張係数の調整方法によれば、調整工程により、熱硬化性樹脂組成物の使用量、または熱硬化性樹脂組成物中の熱膨張率調整剤の含有量を調整し、所定の線熱膨張係数の硬化物よりなる部材を容易に得ることができる。
【0044】
熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物よりなる部材としては、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物をワニスとして加熱させて硬化させた樹脂フィルムや、プリプレグを加熱して硬化させたものなどが挙げられる。ワニスには樹脂成分の溶剤として、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのような汎用されているものを用いることができ、溶剤の配合量は特に限定されない。
【実施例】
【0045】
以下に実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
(評価方法)
以下の、実施例および比較例の性能評価において用いた試験方法は次のとおりである。
(1)ガラス転移温度
実施例で得られたプリプレグ1枚の上下部分にセパニウム(アルミニウム箔表面を耐熱離型皮膜で処理した離型剤)を配し、4MPa、180〜230℃で120分加熱し、熱硬化させた。得られた試料(サンプル)のガラス転移温度を測定した。測定装置、測定条件等は以下のとおりであった。
測定機器:リガク社製「TMA8310evo」
雰囲気:窒素中
測定温度:30〜300℃
昇温速度:10℃/min
荷重:47mN
(2)線熱膨張係数
樹脂フィルムはその状態のままで、プリプレグは1枚の上下部分にセパニウムを配し、4MPa、180〜230℃で120分加熱し、熱硬化させた。得られた成形品の線熱膨張係数を測定した。測定装置、測定条件等は以下のとおりであった。
測定機器:リガク社製「TMA8310evo」
雰囲気:窒素中
測定温度:50〜100℃
昇温速度:10℃/min
荷重:47mN
【0047】
実施例および比較例において用いた原料の詳細は以下のとおりである。
(1)グリコールウリル誘導体:1,3,4,6−テトラグリシジルクリコールウリル、TG−G(商品名、四国化成(株)社製)
(2)エポキシ樹脂A:ビスフェノールエポキシ樹脂、JER828EL(商品名、三菱化学(株)社製)
エポキシ樹脂B:ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂、NC3000(商品名、日本化薬(株)社製)
(3)ビスマレイミド化合物A:フェニルメタンマレイミド、BMI−2000(商品名、大和化成工業(株)社製)
(4)ビスマレイミド化合物B:4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、BMI−1000(商品名、大和化成工業(株)社製)
(5)フェノール樹脂:ナフトールアラルキル樹脂、SN−485(商品名、新日鉄住金化学(株)社製)
(6)硬化促進剤:U−CAT 3513N(商品名、三洋化成工業(株)社製)
(7)反応希釈剤:ネオアリルG(商品名、ダイソー(株)社製)
【0048】
(合成例1)
(ワニス(I)の合成)
攪拌機、温度計、冷却管を設置した丸底フラスコに4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド(BMI−1000)270質量部、ナフトールアラルキル樹脂(SN−485)82質量部、ビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(NC−3000)221質量部、メチルエチルケトン(MEK)120質量部を仕込み、内温が80℃に到達後2時間混合攪拌した。その後、反応性希釈剤(アリルグリシジルエーテル)27質量部、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)12質量部を添加し、80℃を4時間保持した。
次にNMP28質量部を添加して更に80℃で18時間保持した。MEK200質量部、NMP40質量部を添加して2時間攪拌して、均一に溶解した状態の変性ポリイミド樹脂組成物のワニス(I)を得た。
【0049】
(実施例1)
TG−G:30質量部とワニス(I):70質量部とを混合し、硬化促進剤としてU−CAT3513N:0.2質量部加え、150℃から230℃で6時間硬化して薄い膜状の樹脂フィルムを得た。TG−G用の溶剤として、メチルエチルケトン20質量部を用いた。
(実施例2)
実施例1のTG−Gを20質量部としたこと、ワニス(I):70質量部をワニス(I):78.4質量部とJER828EL:1.6質量部とを混合したものとしたこと、および、TG−G用の溶剤としてのメチルエチルケトンを15質量部としたこと以外、実施例1と同じ方法で薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
【0050】
(比較例1)
TG−G:30質量部およびワニス(I):70質量部の代わりに、ワニス(I):100質量部を用いたこと、TG−G用の溶剤としてのメチルエチルケトンを用いなかったこと以外、実施例1と同じ方法で薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
(比較例2)
TG−G:30質量部およびワニス(I):70質量部の代わりに、JER828EL:100質量部およびSN−485:115.0質量部を用いたこと以外、実施例1と同じ方法で薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
【0051】
実施例1、2および比較例1、2の結果を以下の表に示す。
【表1】
【0052】
熱硬化性樹脂組成物にTG−Gが配合されている実施例1および2は、TG−Gが配合されていない比較例1および2より、硬化物である薄い膜状のフィルムの線熱膨張係数が小さくなった。これらの結果から、TG−Gには、硬化物の線熱膨張係数を小さくする性質があり、熱硬化性樹脂組成物の熱膨張調整剤として有用であることが分かった。
【0053】
(実施例3)
TG−G:100質量部に、硬化促進剤としてU−CAT3513N:0.2質量部を加え、150℃から230℃で6時間硬化して薄い膜状の樹脂フィルムを得た。
(実施例4)
TG−G:100質量部をTG−G:30質量部およびBMI−2000:70質量部としたこと、SN485:64質量部を加えたこと、およびTG−G用の溶剤としてジメチルアセトアミドを110質量部用いたこと以外は、実施例3と同じ方法で樹脂フィルムを得た。
(実施例5)
SN485を47質量部としたこと以外は、実施例4と同じ方法で樹脂フィルムを得た。
(実施例6)
BMI−2000:70質量部をBMI−1000:70質量部としたこと以外は、実施例4と同じ方法で樹脂フィルムを得た。
(実施例7)
BMI−2000:70質量部をBMI−1000:70質量部としたこと以外は、実施例5と同じ方法で樹脂フィルムを得た。
【0054】
【表2】
【0055】
熱硬化性樹脂組成物中の熱硬化性樹脂としてTG−Gのみを用いること、およびエポキシ樹脂の主成分としてTG−Gを用いることにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物として、線熱膨張係数の小さい薄い膜状の樹脂フィルムが得られることが分かった。
【0056】
(実施例8)
TG−G:10質量部に、ワニス(I):88.2質量部、JER828EL:1.8質量部、メチルエチルケトン:7質量部、硬化促進剤としてU−CAT3513N:0.5質量部、添加剤(レベリング剤):0.01質量部、無機充填剤(球状シリカ):65質量部を加え均一に攪拌し、樹脂ワニスを調製した。
これをガラスクロス(旭化成イーマテリアル(株)社製2319)に含浸し、230℃で2時間乾燥して、プリプレグを得た。このプリプレグを2枚重ね合わせ、さらにその上下の最外層に18μmの銅箔を配して、2〜4MPaの圧力で、180〜230℃、120分の加熱条件で成形して銅張積層板を得た。
【0057】
(実施例9)
TG−G:10質量部、ワニス(I):88.2質量部、JER828EL:1.8質量部およびメチルエチルケトン:7質量部を、TG−G:20質量部、ワニス(I):78.4質量部、JER828EL:1.6質量部、メチルエチルケトン:13質量部にしたこと以外は、実施例8と同じ方法で銅張積層板を得た。
【0058】
(実施例10)
TG−G:10質量部、ワニス(I):88.2質量部、JER828EL:1.8質量部およびメチルエチルケトン:7質量部を、TG−G:30質量部、ワニス(I):68.6質量部、JER828EL:1.4質量部およびメチルエチルケトン:20質量部にした以外は、実施例8と同じ方法で銅張積層板を得た。
【0059】
上記のようにして作成した実施例8〜10のプリプレグについて、実施例の説明の最初に評価方法として記載した方法にて、ガラス転移温度ならびに線熱膨張係数を測定した。結果を以下の表に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
上記の結果から、TG−Gの配合量を増加させることにより、プリプレグの熱硬化性樹脂組成物を硬化させて得られた硬化物の線熱膨張係数が小さくなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明により提供される熱膨張性調整剤は、例えば回路基板の材料等として用いられる熱硬化性樹脂組成物の硬化物の熱膨張性を調整し、所望の線熱膨張係数の部材を得るために有用である。
【0063】
本発明により提供される熱硬化性樹脂組成物は、線熱膨張係数の低い優れる硬化物を与えることができる組成物であって、具体的な一例では、エポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物である。