(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗セラミド抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、前記抗体がモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、およびscFvからなる群から選択される、前記抗体またはその抗原結合性フラグメント。
請求項1〜6のいずれか一項に記載の抗セラミド抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、吸入、静脈内、筋肉内、腹腔内、脳脊椎液内、皮下、滑液包内、くも膜下腔内、経口、または局所投与のために調剤されている、前記抗体またはその抗原結合性フラグメント。
それを必要とする対象においてアポトーシスを阻害するための薬剤の製造における、請求項1〜7のいずれか一項に記載の抗セラミド抗体またはその抗原結合性フラグメントの使用。
請求項8に記載の使用であって、前記アポトーシスが移植片対宿主病、放射能疾患、GI症候群および自己免疫性疾患からなる群から選択される疾患に随伴する前記使用。
請求項9に記載の使用であって、前記疾患が放射能疾患またはGI症候群であり、かつ前記抗セラミド抗体またはその抗原結合性フラグメントが、前記対象が放射線に被曝する前に投与される、前記使用。
【図面の簡単な説明】
【0013】
付属の図面は、本開示の1つまたはそれ以上の実施形態を例示し、また、書かれた記述と共に、本開示の典型的な実施形態の原理を説明する役割を果たす。
【
図1】(A)mAb 2A2の可変H鎖(VH)およびL鎖(VL)配列、および(B)2A2クローンおよびヒト生殖細胞系配列のアミノ酸配列アラインメントを示す。
【
図2】(A)ヒト化2A2 H鎖配列および(B)ヒト化2A2 L鎖配列を示す。
【
図3】粗上清を用いたh2A2、9H10、9H11、7B10、9A2、6B5、および6C8のインビトロ生物活性の図示である。
【
図4】精製抗体による10GyのJurkat細胞アポトーシスの典型的な阻害の図示である。
【
図5】ヒト化2a2およびマウス7B10、6c8および6b5を用いた、陰窩致死性の典型的な阻害の図示である。
【
図6】マウス抗体6B5、6C8、7B10、9H10、9H11、2A2およびヒト化2A2抗体(h2A2)の典型的な配列の図示、および抗セラミドコンセンサス配列の描出である。アラインメントおよびコンセンサス配列は、コンピュータプログラムMUSCLEマルチ配列アラインメントを用いて生成される。保存度はアラインメントまたは配列グループ上でヒストグラムとして視覚化し、各コラムにスコアを示す。保存されているカラムは「*」(スコア11でデフォルトアミノ酸特性グルーピング)で表示し、全ての特性が保持されている変異のカラムには「+」マーク(スコア10、全ての特性が保持されることを示す)を付与する。「−」はギャップを意味する。
【
図7】6B5 scFvの典型的なインビトロJurkat細胞アポトーシス阻害の図示である。
【
図8】被曝前に投与された場合の、インビボにおけるGI陰窩枯渇に対する典型的な6B5 scFv保護の例示である。
【
図9】被曝後に投与された場合の、インビボにおけるGI陰窩枯渇に対する典型的な6B5 scFv緩和の例示である。
【
図10】抗セラミドscFvが腸陰窩を用量依存的に保護することの図示である。C57BL/6マウスに対し、15Gy全身照射(TBI)の15分前に、ヒト化抗セラミド2A2(0〜1000マイクログラム/マウス)、または組換え抗セラミドscFv 6B5(0〜100マイクログラム/マウス)を静脈注射により投与した。TBIより3.5日後にマウスを安楽死させ、近位空腸の切断片を摘出し、3.15mmの切片に切り、4%パラホルムアルデヒドに入れた。近位空腸切片を輪切りにし、マウントし、スライドをH&E染色した後、WithersとElkind(1970)の方法に従って生存陰窩を定量した。腸陰窩は腸幹細胞の部位であるので、腸幹細胞の生存の代替としてマイクロコロニー測定法が一般的に用いられる。各群マウス数N=5。
【
図11】代替的な注射法で投与するとき抗セラミドscFvが有効性を保持することの図示である。C57BL/6マウスに対し、15Gy全身照射被曝より15分前に、ヒト化2A2抗セラミド抗体(50mg/kg)を静脈内(IV)、腹腔内(IP)または皮下(SC)注射により投与した。あるいは、マウスに対し、15Gy全身照射被曝(TBI)より15分前に、抗セラミドscFv 6B5 7.5mg/kgをIV、IP、SC、または筋肉内(IM)注射により投与した。TBIより3.5日後にマウスを安楽死させ、近位空腸の切断片を摘出し、3.15mmの切片に切り、4%パラホルムアルデヒドに入れた。近位空腸切片を輪切りにし、マウントし、スライドをH&E染色した後、WithersとElkind(1970)の方法に従って生存陰窩を定量した。腸陰窩は腸幹細胞の部位であるので、腸幹細胞の生存の代替としてマイクロコロニー測定法が一般的に用いられる。各群マウス数N=5。
【
図12】抗セラミドh2a2およびscFvが放射線GI症候群の致死作用を保護および緩和することの図示である。(左パネル)C57BL/6マウスに対し、14.5Gy全身照射(TBI)の15分前に、静脈内注射によりヒト化抗セラミド2A2(1000マイクログラム/マウス)、または皮下注射により組換え抗セラミドscFv 6B5(100マイクログラム/マウス)を投与した。マウスはTBIより16時間後に5×106個の自己由来骨髄細胞を投与され、罹患および死亡について連日モニタリングした。瀕死とみなされたマウスは速やかに安楽死させた。データは、ログ・ランク検定で分析したカプラン−マイヤー生存率プロットを示す。h2A2群およびscFv群について、いずれも生理食塩水対象と比較してp<0.05。(右パネル).14.5Gy全身照射(TBI)より24時間後に、静脈内注射によりヒト化抗セラミド2A2(1000マイクログラム/マウス)、または皮下注射により組換え抗セラミドscFv 6B5(100マイクログラム/マウス)を投与した以外は、左パネルと全く同じ方法で実験を実施した。各群マウス数N=5。h2A2群およびscFv群について、いずれも生理食塩水対象と比較してp<0.05。
【
図13】抗セラミドscFvが、致死的な急性移植片対宿主病からマウスを保護することの図示である。C57BL/6マウス(MHC H2
bハプロタイプ)に対し、1100cGy分割線量全身照射(TBI)より15分前に、PBSまたは抗セラミドscFv 6B5 7.5mg/kgを静脈内注射により投与した。マウスは、TBIより16〜20時間後に、B10.BRドナーマウス(MHC H2
k2ハプロタイプ)に由来する5×10
6骨髄(BM)、またはBMおよび2×10
6CD5+ナイーブT細胞からなる同種骨髄移植を受けた。マウスは、4、8、12および16日目にPBSまたは抗セラミドscFv 6B5 7.5mg/kgを投与された。マウスは、体重減少、皮膚病変、体毛の乱れおよび損失、および後彎を含めた、GvHDに関連する病的状態について週1回採点し、生存についてモニタリングした。データは、ログ・ランク検定で分析したカプラン−マイヤー生存率プロットを示す。scFv群について生理食塩水対象と比較してp<0.05。
【
図14】抗セラミドscFvが、致死的な急性移植片対宿主病の際にマウス腸幹細胞を保護することの図示である。C57BL/6マウス(MHC H2
bハプロタイプ)に対し、1100cGy分割線量全身照射(TBI)より15分前に、PBS、ヒト化h2A2抗体50mg/kgまたは抗セラミドscFv 6B5 7.5mg/kgを静脈内注射により投与した。マウスは、TBIより16〜20時間後に、B10.BRドナーマウス(MHC H2
k2ハプロタイプ)に由来する5×106骨髄(BM)またはBMおよび2×10
6CD5+ナイーブT細胞からなる同種骨髄移植を受けた。マウスは、4および8日目にPBSまたは抗セラミドscFv 6B5 7.5mg/kgを投与された。移植より10日後にマウスを安楽死させ、近位空腸の切断片を摘出し、3.15mmの切片に切り、4%パラホルムアルデヒドに入れた。近位空腸切片を輪切りにし、マウントし、スライドをH&E染色した後、WithersとElkind(1970)の方法に従って生存陰窩を定量した。腸陰窩は腸幹細胞の部位であるので、腸幹細胞の生存の代替としてマイクロコロニー測定法が一般的に用いられる。各群マウス数N=5。
【
図15】抗セラミドh2a2およびscFvが、腸間膜リンパ節内でのCD4+およびCD8+リンパ球の保持を高めることの図示である。C57BL/6マウス(MHC H2
bハプロタイプ)に対し、1100 cGy分割線量全身照射(TBI)より15分前に、PBS、ヒト化h2A2抗体50mg/kgまたは抗セラミドscFv 6B5 7.5mg/kgを静脈内注射により投与した。マウスは、TBIより16〜20時間後に、B10.BRドナーマウス(MHC H2k2ハプロタイプ)に由来する5×10
6骨髄(BMのみ)またはBMおよび2×10
6CD5+ナイーブT細胞からなる同種骨髄移植を受けた。マウスは、その後4および8日目にPBS、h2A2またはscFv 6B5を投与された。マウスは移植より10日後に安楽死させ、腸間膜リンパ節をフローサイトメトリーで分析した。データは、総ドナー(H2
k2ハプロタイプ陽性)CD45+リンパ球プールに由来するCD4+およびCD8+細胞の総数を表す。各群マウス数N=5。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の発明を実施するための形態は、任意の当業者が本発明を作製および使用することを可能とするために提示する。説明を目的として、特定の命名を記載して本発明の完全な理解を提供する。しかし、これらの具体的な詳細は本発明の実践に必要でないことは、当業者に明らかとなる。具体的な用途の記述は、代表的な実施例としてのみ提供される。本発明は提示した実施形態に限定することを意図していないものの、本願に開示される原理および特徴と一致する可能な限り最も広い範囲で一致させようとするものである。
【0015】
本願で用いる「治療的に有効な量」は、ある化合物の量が所望の生物学的または治療的効果を達成する量であること、すなわち治療されているかまたは予防されている列挙された疾患の1つまたはそれ以上の症状を予防、軽減または改善する量であることを意味する。
【0016】
本願で用いる用語「治療する」、「治療すること」または「治療」は、障害および/またはその付随する症状を軽減または抑制する方法を意味する。本願で用いる用語「予防する」、「予防すること」または「予防」は、対象が障害および/またはその付随する症状を獲得することを阻む方法を意味する。一定の実施形態においては、「予防する」、「予防すること」または「予防」は、障害および/またはその付随する症状を獲得するリスクを低減する方法を意味する。
【0017】
本願で治療に関して用いる用語「緩和する」、「緩和」および「緩和すること」は、急性事象の発生後の前記事象の治療、たとえば被曝より24時間後に放射線障害を緩和することを意味する。
【0018】
同様に、本願で治療に関して用いる用語「保護する」、「保護」および「保護すること」は、ある事象の発生前の前記事象の予防または阻害を目的とした、治療薬剤の予防的投与を意味する。
【0019】
本願で用いる用語「抗体」は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を意味する。用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、かつ具体的には、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体など)、scFvなどの組換え抗体、および抗体フラグメントが所望の生物学的活性を示す限りそれらを包含する。「特異的に結合する」または「免疫反応する」によって、抗体が所望の抗原の1つまたはそれ以上の抗原決定基と反応し、かつポリペプチドおよび脂質を含む他の抗原とは反応(すなわち結合)しないか、または他の抗原よりもさらに低い親和性で結合することを意味する。
【0020】
用語「抗体」は、全長抗体の一部、一般的には抗原結合またはその可変領域を含む抗体フラグメントも含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント;二重特異性抗体;直鎖抗体;単鎖可変フラグメント(scFv);および抗体フラグメントより形成される多重特異性抗体を含む。本発明の一定の実施形態においては、組織浸透性または腫瘍浸透性を高めるために、非修飾抗体ではなく抗体フラグメントが用いられる。他の実施形態においては、抗体フラグメントはその血清半減期を延長するようさらに修飾される。
【0021】
本願で用いる用語「モノクローナル抗体」は、相当均質な抗体集団から得られる1つの抗体、すなわち集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然発生可能な変異を除いて同一であることを意味する。モノクローナル抗体は、本願において、所望の生物学的活性を示す限り、H鎖および/またはL鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか、または相同である一方で、鎖の残りが他の種に由来するかまたは他の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体、さらにはそのような抗体のフラグメントの対応する配列と同一であるか、または相同である「キメラ」抗体を特に含む。
【0022】
非ヒト抗体の「ヒト化」型は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、大部分がヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、レシピエントの高頻度可変性領域に由来する残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の高頻度可変性領域に由来する残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリンである。ヒト化および他のキメラ抗体を作成する方法は技術上既知である。
【0023】
「二重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する抗体である。二重特異性抗体を作成する方法は技術上既知である。
【0024】
「ヘテロコンジュゲート抗体」の使用も、本発明の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は、共有結合した2つの抗体から構成される。そのような抗体は、たとえば免疫系細胞が望ましくない細胞を標的とするよう提案されている(米国特許第4,676,980号明細書)。架橋剤を包含する方法を含めた、タンパク質合成化学の既知の方法を用いて抗体をインビトロ調製することができることが意図されている。
【0025】
本願で用いる用語「LD
50」は「50%致死量」または「致死量中央値」を意味し、被験集団の50%を死滅させるのに必要とされる物質量である。
【0026】
(放射線誘導性アポトーシスには細胞外セラミドが必要とされる)
スフィンゴ脂質、具体的にはスフィンゴミエリンと強く会合するコレステロールから構成され、無秩序液体バルク細胞膜内で秩序液体ドメインを形成している特徴的な細胞膜マイクロドメインである液状ラフト。ラフトは、タンパク質および脂質組成が周囲の膜と異なり、多数のグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー蛋白質、Srcファミリーの二重アシル化チロシンキナーゼ、および膜貫通タンパク質を含むシグナリング分子を収容する。さらにラフトは、抗原と遭遇した際に、B細胞受容体(BCR)を含む複数の受容体が活性化するとき、その中またはその外へ移動する部位としての役割を果たす。これらの移動事象がマルチシグナル伝導カスケードにとって重要であることが、エビデンスより示唆される。
【0027】
スフィンゴ脂質は細胞膜の構造的コンポーネントであり、かつセラミドの生成を通じたシグナル伝導の重要な調節因子である。C16セラミドは分化、増殖および発育停止において重要な役割を果たす。またアポトーシスシグナリングの必須コンポーネントでもある。セラミド生成は、多数のチロシン、ウイルス/病原体、環境ストレスおよび化学療法誘導性アポトーシス事象の要件として特定されている。さらに、標的細胞の細胞膜上のセラミドに富む領域は、細胞障害性Tリンパ球(CTL)誘導性細胞死に対する感受性にとって重要である。
【0028】
(致死的GI症候群の治療および予防)
最近、リーベルキューン陰窩の底部より1〜3位に位置する細胞周期の陰窩底部円柱(CBC)細胞が腸幹細胞集団として定義されている。この細胞群は絶え間なく増殖および分化し、絨毛先端からの腸細胞およびその他の分化上皮細胞の生理的な損失を補充することにより、粘膜の解剖学的および機能的完全性を維持する。陰窩−絨毛単位の恒久的破壊にはこのコンパートメントの完全な、またはほぼ完全な枯渇が必要であるとみられる一方で、生存幹細胞クロノーゲンは、1陰窩あたり1個であっても、完全に機能的な陰窩を再生することが可能である。
【0029】
放射線の標的は消化管微小血管系および腸幹細胞コンパートメントである。微小血管内皮の機能不全は、照射より4時間後にアポトーシスとして検出され、GI症候群に至る主要な病変を呈する。内皮の機能不全により、CBC病変は亜致死から致死に転換され、再生陰窩の喪失をもたらし、GI毒性を促進する。免疫組織化学的試験および[
3H]TdRおよびBrdUrdによる標識試験より、陰窩幹細胞死は放射線被曝後に急性的に発生するのではないことが判明した。むしろ、最も早く検出可能な反応は、見かけ上放射線誘発性DNA二重鎖切断(dsb)がシグナルとなる、S期後半のチェックポイントから有糸分裂停止までの、線量依存的な一時的進行の遅れである。12Gyでの照射直後の24時間の間に、成長停止細胞に急激なアポトーシス死が発生し、総細胞死の33%に匹敵する。哺乳類細胞においては、DNAdsbはDNA障害認識および修復経路、および細胞周期チェックポイント活性の協調的調節を活性化する。腸幹細胞の有糸分裂停止は、この経路における調節された事象を表すとみられる。有糸分裂型細胞死は、この24〜48時間後の期間に発生し、全細胞死の66%を占める。この段階では、腸周長毎の陰窩数に有意な変化はないと見られるものの、通常の陰窩の通過による移動および陰窩から絨毛上皮細胞層への分化細胞の移動、および絨毛先端からの損失により、陰窩のサイズは徐々に小さくなる。12〜18時間後の有糸分裂活性の再開は、陰窩幹細胞クロノーゲンの急速な枯渇および周長毎の陰窩数の減少に随伴する。
【0030】
GI幹細胞クロノーゲンの致死性は、放射線被曝より3.5日後に生存している陰窩の個数によって最も良好に評価され、線量が上昇するに従って指数関数的に減少する。(C.S.Potten and M.Loeffler,Development 110(4),1001(1990),H.R.Withers,Cancer 28(1),75(1971)およびJ.G.Maj,F.Paris,A.Haimovitz−Friedman et al.,Cancer Res63,4338(2003))。生存幹細胞を含む陰窩は増殖速度が加速され、腸粘膜が正常な構造を取り戻すまで、分割するかまたは発芽して新たな陰窩を生成する典型的な再生陰窩を生成する。数種類のマウスモデルにおけるTBI実験により、8〜12Gy被曝後の生存陰窩幹細胞の個数は、通常、粘膜の完全な回復を支えるのに十分であることが証明される。しかしより高い線量では、幹細胞クロノーゲンの大量損失により陰窩−絨毛系のほぼ完全な崩壊、粘膜の表皮剥落、およびGI症候群による動物の死亡に至ることがある。GI死を誘導する閾値線量、および50%GI致死をもたらすTBI線量(LD
50)は系統特異的とみられる。TBI被曝したC57BL/6マウスの剖検試験により、14Gyに被曝したマウスの25%および15Gyに被曝したマウスの100%は6.8±0.99日目にGI症候群で死亡したことが判明し、GI死のLD
50は14Gyと15Gの間であると予測された。対照的に、BALB/cマウスについて報告されたLD
50D6(6日目のLD
50、GI死の代替マーカーとなる)は8.8±0.72Gy、BDF1マウスについては11.7±0.22Gy、C3H/Heマウスについては12.5±0.1Gy、C3H/SPFマウスについては14.9Gy(95%信頼限界13.9〜16.0Gy)、およびB6CF1マウスについては16.4±0.2Gyであり、マウスのGI症候群による死亡に対する感受性の系統特異的スペクトルを示している。骨髄および肺などの他の臓器の放射線に対する感受性における系統変動も報告されている。
【0031】
従来、透過線(IR)は、ゲノムDNAの直接的障害により細胞が死滅し、ゲノムの不安定化を引き起こし、再生細胞の死をもたらすことにより細胞を死滅させると考えられていた。Haimovitz−Friedmanら(Cancer Res 63,4338(2003))は、無細胞核系において、IRと細胞膜の相互作用によってアポトーシスシグナルが交互に生成されることがあると立証した。IRの誘導によるアポトーシスおよびクローン原性細胞死には、セラミドを介したラフトのクラスタ化が関与している。消化管(GI)粘膜のクローン原性コンパートメントは特異的であり、GI損傷の誘発において放射線の直接的標的であることが、長い間受け入れられてきた。
【0032】
本願の1つの態様は、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントであって:N末端から1位のGly、N末端から2位のTyrまたはPhe、N末端から4位のPheまたはLeu、およびN末端から6位のThrまたはHisおよびN末端から10位のHisまたはAsnを含む10アミノ酸のH鎖可変領域CDR1;N末端から2位のAsnまたはIle、N末端から4位のPheまたはSer、C末端から9位のThr、C末端から7位のTyr、C末端から6位のAsn、C末端から2位および4位のLysまたはAlaを含む16〜17アミノ酸のH鎖可変領域CDR2;N末端から4位のTyrまたはThrを含む7から11アミノ酸のH鎖可変領域CDR3;N末端から2位のAlaまたはSer、N末端から3位のSer、N末端から5位のSerまたはAsp、およびC末端から3位のTyr、Ser、またはPheを含む10〜16アミノ酸のL鎖可変領域CDR1;N領域から3位のSerまたはAsn、N末端から5位のLysまたはSerおよびN末端から7位のSerまたはAspを含む7アミノ酸のL鎖可変領域CDR2;およびN末端から1位のGln、LeuまたはTrp、N末端から2位のGln、N末端より7位のProおよびN末端から9位のThrを含む9アミノ酸のL鎖可変領域CDR3を含む抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントに向けられる。
【0033】
本願で用いる用語「CDR」は、免疫グロブリン(抗体)分子の「相補性決定領域」を意味する。CDRは、そこで抗体がその特異的抗原と結合する、抗体の可変ドメインの一部である。CDRは、リンパ球によって生成される抗原特異性の多様性にとって重要である。1つのIgG分子内の合計12のCDRおよびIgM分子内の60CDRについて、可変ドメイン毎に3つのCDR(すなわちL鎖の可変ドメインにおけるCDR1、CDR2、CDR3およびH鎖の可変ドメインにおけるCDR1、CDR2、CDR3)が存在する。可変ドメイン内では、CDR1およびCDR2はポリペプチド鎖の可変(V)領域内に存在し、CDR3は、L鎖領域の場合はVJ、H鎖領域の場合はVDJの組換えによってコードされるので、最大の変動性を示す。
【0034】
一部の実施形態においては、抗セラミド抗体のH鎖可変領域CDR1、またはその抗原結合性フラグメントは配列GYTFTDHTIH(配列番号1)を含み、前記H鎖可変領域CDR2は配列YNYPRDGSTKYNEKFKG(配列番号2)を含み、H鎖可変領域CDR3は配列GFITTVVPSAY(配列番号3)を含み、前記L鎖可変領域CDR1は配列RASKSISKYLA(配列番号4)を含み、L鎖可変領域CDR2は配列SGSTLQS(配列番号5)を含み、前記L鎖可変領域CDR3は配列QQHNEYPWT(配列番号6)を含む。
【0035】
さらなる実施形態においては、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは:配列QVQLQQSDAELVKPGASVKISCKVSGYTFTDHTIHWMKQRPEQGLEWIGYNPRDGSTKYNEKFGKATLTDADKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYFCAKGFITTVVPSAYWGQGTLVTVSA(配列番号7)を含むH鎖可変領域配列、または配列番号7を含むH鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列;および/または配列番号8を含むL鎖可変領域配列、または配列DVQITQSPSYLAASPGETITINCRASKSISKYLAWYQEKPGKTNKLLIYSGSTLQSGIPSRFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAMYYCQQHNEYPWTFGGGTKLEIK(配列番号8)を含むL鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%または95%の配列同等性を有する配列を含む。
【0036】
他の実施形態においては、抗セラミド抗体のH鎖可変領域CDR1、またはその抗原結合性フラグメントは配列GYAFSSYWMN(配列番号9)を含み、前記H鎖可変領域CDR2は配列QIYPGDGDTNYNGKFKG(配列番号10)を含み、H鎖可変領域CDR3は配列RCYYGLYFDV(配列番号11)を含み、前記L鎖可変領域CDR1は配列KASQDINRYLS(配列番号12)を含み、前記L鎖可変領域CDR2は配列RANRLVD(配列番号13)を含み、かつ前記L鎖可変領域CDR3は配列LQYDEFPYT(配列番号14)を含む。
【0037】
さらなる実施形態においては、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは:配列QVQLQQSGAELVKPGASVKISCKASGYAFSSYWMNWVKQRPGKGLEWIGQIYPGDGDTNYNGKFKGKATLTADKSSSTAYMQLSSLTSEDSAVYFCTRRCYYGLYFDVWGTGTTVTVSS(配列番号15)を含むH鎖可変領域配列、または配列番号15を含むH鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列;および/または配列DIKMTQSPSSRYASLGERVTITCKASQDINRYLSWFQQKPGKSPKTLIYRANRLVDGVPSSRFSGSGSGQDYSLTISSLEYEDMGIYYCLQYDEFPYTFGGGTKLEIK(配列番号16)を含むL鎖可変領域配列、または配列番号16を含むL鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0038】
さらなる他の実施形態においては、抗セラミド抗体のH鎖可変領域CDR1、またはその抗原結合性フラグメントは配列GYTFTSYWMH(配列番号17)を含み、前記H鎖可変領域CDR2は配列YINPSSGYTKYNQFKD(配列番号18)を含み、H鎖可変領域CDR3は配列GGYYGFAY(配列番号19)を含み、前記L鎖可変領域CDR1は配列SASSSVSYMY(配列番号20)を含み、前記L鎖可変領域CDR2は配列LTSNLAS(配列番号21)を含み、前記L鎖可変領域CDR3は配列QQWSSNPLT(配列番号22)を含む。
【0039】
さらなる実施形態においては、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは:配列QVQLQQSGAELAKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGYINPSSGYTKYNQKFKDKATLTADKSSSTAYMQLSSLTYEDSAVYYCARGGYYGFAYWGQGTLVTVSA(配列番号23)を含むH鎖可変領域配列、または配列番号23を含むH鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列;および/または配列QIVLTQSPALMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMYWYQQKPRSSPKPWIYLTSNLASGVPARFSGSGSGTSYSLTISSMEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGAGTKLELK(配列番号24)を含むL鎖可変領域配列、または配列番号24を含むL鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0040】
さらに他の実施形態においては、抗セラミド抗体のH鎖可変領域CDR1、またはその抗原結合性フラグメントは配列GFSLTGYGVH(配列番号25)を含み、前記H鎖可変領域CDR2は配列VIWSGGSTDYNAAFIS(配列番号26)を含み、H鎖可変領域CDR3は配列NYGYDYAMDY(配列番号27)を含み、前記L鎖可変領域CDR1は配列RASQSIGTSIH(配列番号28)を含み、前記L鎖可変領域CDR2は配列YASESIS(配列番号29)を含み、前記H鎖可変領域CDR3は配列QQSNSWPFT(配列番号30)を含む。
【0041】
さらなる実施形態においては、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは:配列番号31を含むH鎖可変領域配列、または配列QVQLKQSGPGVQPSSLSITCTVSGFSLTSYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGSTDYNAAFISRLSISKDNSKSQVFFKMNSLQADDTAIYYCARNYGYDYAMDYWGQGTSVTVSS(配列番号31)を含むH鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列;および/または配列DILLTQSPAILSVSPGERVSFSCRASQSIGTSIHWYQQRTNGSPRLLIKYASESISGIPSRFSGSGSGTDFTLSINSVESEDIADYYCQQSNSWPFTFGSGTKLEIK(配列番号32)を含むL鎖可変領域配列、または配列番号32を含むL鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0042】
さらに他の実施形態においては、抗セラミド抗体のH鎖可変領域CDR1またはその抗原結合性フラグメントは配列GYTFTNYWMH(配列番号33)を含み、前記H鎖可変領域CDR2は配列AIYPGDSDTSYNQKFKG(配列番号34)を含み、H鎖可変領域CDR3は配列GLYYGYD(配列番号35)を含み、前記L鎖可変領域CDR1は配列KSSQSLIDSDGKTFLN(配列番号36)を含み、L鎖可変領域CDR2は配列LVSKLDS(配列番号37)を含み、前記L鎖可変領域CDR3は配列WQGTHFPYT(配列番号38)を含む。
【0043】
さらなる実施形態においては、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは:配列EVQLQQSGTVLARPGASVKMSCKASGYTFTNYWMHWVKQRPVQGLEWIGAIYPGDSDTSYNQKFKGKAKLTAVTSTSTAFMELSSLTNEDSAVYYCTGLYYGYDWGQGTTLTVSS(配列番号39)を含むH鎖可変領域配列、または配列番号39を含むH鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列;および/または配列番号40を含むL鎖可変領域配列または、配列DVLMTQTPLTLSVTIGQPASISCKSSQSLIDSDGKTFLNWLLQRPGQSPKRLIYLVSKLDSGVPDRFTGSGSGTDFTLKISRVEAEDLGLYYCWQGTHFPYTFGGGTKLEIK(配列番号40)を含むL鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%または95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0044】
さらなる他の実施形態においては、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは:a)配列番号7、15、23、31および39からなる群から選択される配列を含むH鎖可変領域配列、または配列番号7、15、23、31および39からなる群から選択される配列を含むH鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列;および/またはa)配列番号8、16、24、32および40からなる群から選択される配列を含むL鎖可変領域配列、または配列番号8、16、24、32および40からなる群から選択される配列を含むL鎖可変領域配列と少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有する配列を含む。
【0045】
具体的な実施形態においては、抗セラミド抗体はモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、組換え抗体およびscFvからなる群から選択される。
【0046】
本願の他の態様は、本願の抗セラミド抗体と同じ抗原決定基と結合する抗セラミド単鎖可変フラグメント(scFv)に向けられる。scFvは:N末端から1位のGly、N末端から2位のTyrまたはPhe、N末端から4位のPheまたはLeu、およびN末端から6位のThrまたはHisおよびN末端から10位のHisまたはAsnを含む10アミノ酸のH鎖可変領域CDR1;N末端から2位のAsnまたはIle、N末端から4位のPheまたはSer、C末端から9位のThr、C末端から7位のTyr、C末端から6位のAsn、C末端から2位および4位のLysまたはAlaを含む16〜17アミノ酸のH鎖可変領域CDR2;N末端から4位のTyrまたはThrを含む7から11アミノ酸のH鎖可変領域CDR3;N末端から2位のAlaまたはSer、N末端から3位のSer、N末端から5位のSerまたはAsp、およびC末端から3位のTyr、Ser、またはPheを含む10〜16アミノ酸のL鎖可変領域CDR1;N領域から3位のSerまたはAsn、N末端から5位のLysまたはSerおよびN末端から7位のSerまたはAspを含む7アミノ酸のL鎖可変領域CDR2;およびN末端から1位のGln、LeuまたはTrp、N末端から2位のGln、N末端から7位のProおよびN末端から9位のThrを含む9アミノ酸のL鎖可変領域CDR3を含む。
【0047】
単鎖可変フラグメント(scFv)は、実際には抗体のフラグメントではなく、10から約25アミノ酸の短いリンカーペプチドと接続した、免疫グロブリンのH鎖(VH)およびL鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、通常は柔軟性を目的としたグリシン、さらには可溶性を目的としたセリンまたはスレオニンに富み、VHのN末端とVLのC末端を接続するか、またはVHのC末端とVLのL末端を接続することができる。scFvは、定常領域を除去してリンカーを導入しているにもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0048】
一部の実施形態においては、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFVは組換えDNA技術を用いて生成される。組換えタンパク質の発現および精製手順は、当該技術において十分に確立されている。
【0049】
生体系において本願の抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFVを発現するために、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvをコードするポリヌクレオチドが構築される。一定の実施形態においては、組換えポリヌクレオチドは、細菌、哺乳類、植物または昆虫細胞などの選択された原核生物または真核生物宿主細胞における発現に最適化されたコドンである。複製および発現を促進するために、ポリヌクレオチドは、原核生物または真核生物発現ベクターなどのベクターに組み入れることができる。本願に開示されるポリヌクレオチドは多様なベクター(たとえば細菌プラスミド;ファージDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドおよびファージDNA、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、偽狂犬病、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルスおよび他の多くのウイルスなどのウイルスDNAの組み合わせに由来するベクターを含む)のうちいずれか1つに含めることができるものの、最も一般的には、ベクターはポリペプチド発現産物を生成するのに適した発現ベクターである。発現ベクターにおいては、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFVをコードするポリヌクレオチドは、典型的には近位にかつ適切な転写制御配列(プロモーターおよび任意選択的に1つまたはそれ以上のエンハンサー)の方向に配置して、mRNA合成を誘導する。すなわち、目的のポリヌクレオチド配列は、適切な転写制御配列と機能的に結合する。そのようなプロモーターの例は:CMVの直前段階のプロモーター、LTRまたはSV40プロモーター、バキュロウイルスの多面体プロモーター、E.coli lacまたはtrpプロモーター、ファージT7およびλP
Lプロモーター、および原核生物または有核生物細胞またはそのウイルスにおいて遺伝子の発現を制御することが知られている他のプロモーターを含む。発現ベクターは、典型的には翻訳開始のリボソーム結合部位、および転写ターミネーターも含む。ベクターは、任意選択として発現の増幅にとって適切な配列を含む。さらに、発現ベクターは1つまたはそれ以上の選択的なマーカー遺伝子も任意選択として含み、真核細胞培養に対するジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、またはE.coliにおけるテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性などの、形質転換された宿主細胞の選択のための表現型形質を提供する。
【0050】
発現ベクターは、たとえば、翻訳の効率を改善するためなどに追加的な発現要素も含むことができる。これらのシグナルは、たとえばATG開始コドン、および隣接配列などを含むことができる。たとえば一部の例では、翻訳開始コドンおよび関連する配列要素は、目的のポリヌクレオチド配列(天然開始コドンなど)と同時に、適切な発現ベクターに挿入される。そのような場合、追加的な翻訳制御シグナルは必要とされない。しかし、ポリペプチドコーディング配列、またはその一部のみが挿入される場合、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルが、抗セラミド抗体またはscFvの発現のために提供される。開始コドンは、適正なリーディングフレーム内に配置されて、目的のポリヌクレオチド配列を確実に翻訳させる。外因性転写要素および開始コドンは、天然および合成双方の多様な由来であってよい。所望される場合、使用する細胞系に適したエンハンサーを含めることによって、発現の効率をさらに高めることができる。
【0051】
本願の抗セラミド抗体またはscFvを担持する発現ベクターは、ベクターおよび宿主細胞の選択に応じて、電気穿孔法、リポソーム媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈降法、感染、トランスフェクションなどの多様な周知の手順のいずれかによって、宿主細胞に導入することができる。
【0052】
したがって、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvをコードする核酸を含む宿主細胞も、本願の特徴の1つである。好ましい宿主細胞は、E.coliなどの原核生物(すなわち細菌)宿主細胞、さらには真菌(たとえばSaccharomyces cerevisiaeやPicchia pastorisなどの酵母)細胞、昆虫細胞、植物細胞、および哺乳類細胞(CHO細胞など)などの数多くの真核生物宿主細胞を含む。
【0053】
宿主細胞は、プロモーターを活性化、形質転換細胞を選択、または挿入したポリヌクレオチド配列を増幅するために必要に応じて改変した、従来の栄養培地で培養することができる。温度、pHなどの培養条件は、典型的には、発現のために選択された宿主細胞と共にこれまで用いられたものであり、かつ当業者に明らかとなる。宿主細胞は、任意選択的に、挿入された配列の発現を調節、または発現されたタンパク質を所望の様態でプロセシングするその能力について選択される。そのようなタンパク質の修飾はグリコシル化(およびアセチル化、カルボキシル化、リン酸化、脂質化、およびアシル化など)を含むが、これに限定されない。たとえば(フューリンプロテアーゼなどによって)タンパク質の前駆体型を開裂して成熟型とするなどの翻訳後プロセシングは、宿主細胞の状況において任意選択的に実施される。3T3、COS、CHO、HeLa、BHK、MDCK、293、WI38などの相異なる宿主細胞は、特異的な細胞機構およびそのような翻訳後活性のための特徴的なメカニズムを有し、導入された外来タンパク質の適正な修飾およびプロセシングを確実に行わせるために選択することができる。
【0054】
組換え抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFVポリペプチドの長期的な高収率生産のために、典型的には安定した発現系が用いられる。たとえば、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvをコードするポリヌクレオチドは、ウイルス由来の複製または内因性発現要素および選択可能マーカー遺伝子を含む発現ベクターを用いて、宿主細胞に導入される。ベクターの導入後、強化培地内で1〜2日間発育させた後、選択培地に切り替える。選択マーカーの目的は選択に対する耐性を付与することであり、またその存在によって導入した配列を問題なく発現する細胞の発育および回収を可能とする。たとえば、安定的に形質転換された耐性群またはコロニーは、細胞の種類に適した細胞培養技術を用いて増殖させることができる。抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvをコードする核酸で形質転換された宿主細胞は、任意選択的に、細胞培養からのコードされたタンパク質の発現および回収に適した条件下で培養される。
【0055】
好適な宿主細胞株の形質導入、および宿主細胞の適切な細胞密度までの発育後、選択したプロモーターを適切な手段で誘導し(温度シフトまたは化学的誘導など)、細胞を適切な期間培養する。次に、分泌されたポリペプチド産物を培地から回収する。代替的に、細胞を遠心分離で回収し、物理的または化学的手段で破壊し、生成した粗抽出物を保持してさらに精製することもできる。タンパク質の発現に用いられた真核細胞または微生物細胞は、凍結−解凍サイクル、超音波処理、機械的な破壊、または細胞溶解剤または当業者に周知であるその他の方法を含む任意の簡便な方法で破壊することができる。
【0056】
発現された抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvは、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈降法、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ(本願で言及されるタグ系のいずれかを用いるなど)、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、およびレクチンクロマトグラフィを含む数多くの技術上周知な方法のいずれかによって、組換え細胞培養から回収および精製することができる。タンパク質リフォールディングステップを、所望の通りに成熟タンパク質の立体配置を完成させる際に用いることができる。最終的に、最終精製ステップにおいて高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いることができる。
【0057】
一定の実施形態においては、核酸は、E.coli細胞などの原核細胞における導入および発現に好適なベクターに導入される。一部の実施形態においては、発現ベクターは(電気穿孔法などによって)好適な細菌宿主に導入される。他の実施例においては、バキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)を用いて、抗セラミド抗体またはscFvをコードするポリヌクレオチド配列が昆虫細胞に導入される。同様に、SF9と密接に関係するSF21、およびタマナキンウワバガTrichoplusia niに由来するHigh Five(Hi5)細胞株などの代替的な昆虫細胞を用いることができる。
【0058】
さらなる他の実施形態においては、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFVは、プラスミドベクターまたはウイルスベクターによりインビボ発現される。
【0059】
一定の実施形態においては、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、およびscFVは化学合成によって生成される。簡単に言うと、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvは、一方のアミノ酸のカルボキシル基またはC末端と他方のアミノ酸のアミノ基またはN末端の結合によって合成される。意図しない反応の可能性により、保護基が必要となることもある。化学的ペプチド合成はペプチドのC末端より開始し、N末端で終了する。これは、N末端で開始するタンパク質生合成と逆である。
【0060】
一部の実施形態においては、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、およびscFVは従来の液相または固相合成を用いて合成することもできる。Fmocおよびt−Boc固相ペプチド合成(SPPS)を用いて、ペプチドをカルボキシ末端からアミノ末端まで伸長させることができる。一定の実施形態においては、反応に添加される最終「アミノ酸」はPEG化されている。この最終アミノ酸は、カルボキシル−PEG−アミン、カルボキシル−PEO−アミン、またはアミン−PEG−酸と呼ばれ、これによりアミンは遮断されて反応より保護し、酸は遊離して事前に添加された反応中のアミノ酸に由来するアミン基と反応する。PEG(ポリエチレングリコール)およびPEO(ポリエチレンオキシド)は、エチレングリコールおよびエチレンオキシド単量体の反復サブユニットから構成されるポリマーである。1つの実施形態においては、PEG化抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、およびscFvは、PEG部分がポリペプチドのアミノ末端にあるヒスチジン残基(H)と結合するであろう。1つの実施形態においては、PEG部分はサイズが5から30kDaである。他の実施形態においては、PEG部分はサイズが10から20kDaである。
【0061】
合成中にPEG化末端アミノ酸を使用することに加えて、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvはPEG化によってPEG化しうる。PEG化は、ポリエチレングリコールポリマー鎖と他の分子、通常は薬剤または治療タンパク質との共有結合のプロセスである。PEG化は、PEGの反応性誘導体を標的抗セラミド抗体またはscFvとインキュベートすることにより達成することができる。PEGの抗セラミド抗体またはscFVとの共有結合は、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvを宿主の免疫系から「マスク」し(免疫原性および抗原性の低下)、抗セラミド抗体、その抗原結合性フラグメント、またはscFvの流体力学的サイズ(溶液内のサイズ)を増大することが可能であり、こうして腎クリアランスを減少させることによって循環時間が延長する。PEG化により疎水性タンパク質に水溶性を提供することも可能である。
【0062】
(アポトーシスを阻害する方法)
本願のさらなる他の態様は、それを必要とする対象における細胞死を阻害する方法であって、本願の抗セラミド抗体またはその抗原結合性フラグメントの治療的に有効な量を対象に投与することを含む方法に向けられる。一部の実施形態においては、抗セラミド抗体は抗セラミドscFvである。
【0063】
一部の実施形態においては、細胞死は移植片対宿主病、放射能疾患、GI症候群および自己免疫性疾患からなる群から選択される疾患に随伴する。一部のさらなる実施形態においては、疾患は放射能疾患またはGI症候群であり、また抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは、対象が放射線に被曝する前に投与される。
【0064】
本出願の他の態様は、それを必要とする対象におけるGI症候群における細胞死の緩和のための方法に向けられる。方法は抗セラミド抗体の有効量の投与を含む。一部の実施形態においては、方法は、前記対象の透過線への被曝直後に、前記対象に対して前記抗セラミド抗体を投与することを含む。他の実施形態においては、方法は、前記対象の透過線への被曝後1時間以内に、前記対象に対して前記抗セラミド抗体を投与することを含む。さらなる他の実施形態においては、方法は、前記対象の透過線への被曝後2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または18時間以内に、前記対象に対して前記抗セラミド抗体を投与することを含む。具体的な実施形態においては、方法は、前記対象の透過線への被曝後24時間以内に、前記対象に対して前記抗セラミド抗体を投与することを含む。他の実施形態においては、方法は、前記対象の透過線への被曝後30、36、42、48、54、60、66または72時間以内に、前記対象に対して前記抗セラミド抗体を投与することを含む。他の実施形態においては、方法は、前記対象の透過線への被曝前48、36、24、18、12、10、8、6、4、2または1時間以内に、または45、30または15分以内に前記対象に対して前記抗セラミド抗体を投与することを含む。
【0065】
他のさらなる実施形態においては、疾患は移植片対宿主病であり、また抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは、対象が移植片を受ける前に投与される。一部の実施形態においては、移植片は骨髄移植片である。さらなる他の実施形態においては、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは、対象が移植片を受けた後であっても移植片対宿主病の発症前に投与される。さらに他のさらなる実施形態においては、抗セラミド抗体、またはその抗原結合性フラグメントは、それを必要とする対象に、移植片対宿主病の発症後、移植片対宿主病におけるアポトーシスの緩和に有効な量で投与される。
【0066】
(抗体の投与)
抗体、またはその抗原結合性フラグメントは、ボーラスとして、または一定の時間をかけた連続注入による静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊椎液内(intracerobrospinal)、皮下、動脈内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、局所または吸入経路などの既知の方法で対象に投与してもよい。
【0067】
本発明の抗体およびその抗原結合性フラグメントは、通常許容される医薬品として許容される担体内で投与することができる。許容される担体は生理食塩水、緩衝化生理食塩水、グルコース生理食塩水溶液を含むが、これに限定されない。固形支持体、リポソーム、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノスフェア、またはマイクロスフェアも、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与のための担体として用いうる。
【0068】
抗体、またはその抗原結合性フラグメントの適切な用量(「治療的に有効な量」)は、たとえば治療しようとする状態、状態の重症度および経過、抗体の投与の目的が予防であるか治療であるか、前治療、患者の臨床履歴および抗体に対する反応、使用する抗体またはその抗原結合性フラグメントの種類、および主治医の裁量に依存することになる。抗体、またはその抗原結合性フラグメントは、患者に対して1回、または一連の治療を通じて好適に投与し、また診断以降の任意の時点で患者に投与しうる。抗体、またはその抗原結合性フラグメントは、単独治療として、または当該の状態を治療する上で有用な薬剤または治療法と組み合わせて投与しうる。
【0069】
一般的な提案として、投与される抗体、またはその抗原結合性フラグメントの治療的に有効な量は、1回投与であれそれ以上の回数の投与であれ、約1ng/kg体重/日から約100mg/kg体重/日の範囲となる。具体的な実施形態においては、投与される抗体の範囲は約1ng/kg体重/日から約1μg/kg体重/日、1ng/kg体重/日から約100ng/kg体重/日、1ng/kg体重/日から約10ng/kg体重/日、10ng/kg体重/日から約1μg/kg体重/日、10ng/kg体重/日から約100ng/kg体重/日、100ng/kg体重/日から約1μg/kg体重/日、100ng/kg体重/日から約10μg/kg体重/日、1μg/kg体重/日から約10μg/kg体重/日、1μg/kg体重/日から約100μg/kg体重/日、10μg/kg体重/日から約100μg/kg体重/日、10μg/kg体重/日から約1mg/kg体重/日、100μg/kg体重/日から約10mg/kg体重/日、1mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日および10mg/kg体重/日から約100mg/kg体重/日である。
【0070】
他の実施形態においては、抗体、またはその抗原結合性フラグメントは1ng〜10ng/注射、10ngから100ng/注射、100ngから1μg/注射、1μgから10μg/注射、10μgから100μg/注射、100μgから1mg/注射、1mgから10mg/注射、10mgから100mg/注射、および100mgから1000mg/注射の用量範囲で投与される。
【0071】
他の具体的な実施形態においては、投与される抗体、またはその抗原結合性フラグメントの用量範囲は、約1ng/kgから約100mg/kgである。さらに他の具体的な実施形態においては、投与される抗体の範囲は約1ng/kgから約10ng/kg、約10ng/kgから約100ng/kg、約100ng/kgから約1μg/kg、約1μg/kgから約10μg/kg、約10μg/kgから約100μg/kg、約100μg/kgから約1mg/kg、約1mg/kgから約10mg/kg、約10mg/kgから約100mg/kg、約0.5mg/kgから約30mg/kg、および約1mg/kgから約15mg/kgである。
【0072】
他の具体的な実施形態においては、投与される抗体、またはその抗原結合性フラグメントの量は、またはおおよそは、0.0006、0.001、0.003、0.006、0.01、0.03、0.06、0.1、0.3、0.6、1、3、6、10、30、60、100、300、600および1000mg/日である。予想されるように、用量は状態、サイズ、年齢および患者の病状に依存することになる。
【0073】
抗体、またはその抗原結合性フラグメントは、適宜または指示に従い、ボーラスとしての単回投与、または連続的注入、またはボーラスまたは連続的注入による複数回投与で投与しうる。複数回投与は、たとえば、1日に複数回、1日1回、2、3、4、5、6または7日毎、毎週、2、3、4、5または6週間毎、または毎月投与してもよい。しかし、他の用量レジメンも有用となりうる。この治療法の進捗は、従来の技術で容易にモニタリングすることができる。
【0074】
本発明は、制限的と解釈すべきではない以下の実施例によってさらに例示される。本願を通じて引用された全ての引用文献、特許および公開特許明細書、さらには図および表は、本願に参照文献として援用する。
【実施例1】
【0075】
(2A2 Abのヒト化および産生)
(ハイブリドーマからの2A2の可変L鎖およびH鎖のクローニング)
2A2ハイブリドーマ細胞を遠心分離により回収し、RNA精製キットを用いて総RNAを抽出した。この総RNAをcDNA合成に用い、「ファージディスプレイマニュアル」で公表されたプライマーセットを用いて2A2のV領域を最終的に分離した。
図1Aは、2A2の可変H鎖(VH)およびL鎖(VL)配列を示す。
【0076】
(2A2可変領域のヒト化)
通常、げっ歯類抗体はヒトに対して免疫原性となり、かつHAMA(ヒト抗マウス抗体)応答またはアナフィラキシーショックを含む非常に重篤な副作用を引き起こす可能性がある。この問題を克服するため、抗体操作を用いて非ヒト抗体をヒト化している。したがって、CDR移植法を用いて2A2のVLおよびVHをヒト化した。
【0077】
CDR移植法は、現在最も頻繁に用いられるげっ歯類mAbのヒト化のための戦略である。この手法では、げっ歯類mAbの抗原結合部位を構成するCDRループを対応するヒトフレームワーク領域に移植する。
【0078】
2A2のものと相同なヒトVLおよびVHを同定するため、VBASEオンラインデータベース(vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk)を用いて、2A2の可変領域をヒト生殖系列配列の可変領域と比較した。その結果、2つのヒト生殖系列VLおよびVH配列が確認された。2A2クローンのアミノ酸配列アラインメントおよびヒト生殖系列配列を
図1Bに示す。
【0079】
選択した2A2 VH配列は、VH1ファミリー由来のヒトV遺伝子1〜46およびヒトJ遺伝子JH6に対して最も相同であることが確認された。選択した2A2 VL配列は、Vk2ファミリー由来のヒトV遺伝子A1およびヒトJ遺伝子Jk2に対して最も相同であることが確認された。したがって、2A2 mAbのヒト化を目的として、マウスCDR配列のうち3つをそれぞれに含む合成されたVLおよびVHを、選択したヒトフレームワーク配列に移植した。
【0080】
(哺乳類細胞におけるヒト化2A2 IgG1の発現を目的としたベクターの構築)
本来2A2 mAbはマウスIgMである。IgG1は血清中で最も豊富であり(9mg/mL)、その半減期(21日)は他の抗体のいずれもよりも長く、かつ現在最も流通している治療抗体はIgG1フォーマットであるので、IgM抗体はIgG1フォーマットに変換される。哺乳類発現ベクターでヒト化2A2 IgG1を構築するために、pOptiVECおよびpcDNA3.3(インビトロジェン)ベクターを用いた。
【0081】
(哺乳類細胞におけるヒト化2A2 IgG1の発現を目的としたベクター)
典型的なベクターは、幅広い哺乳類細胞における組換えタンパク質の高レベル発現を目的として、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター/エンハンサーを含有する。ヒト化2A2 IgG1を構築するために、マウス2A2の3つのCDRをそれぞれ有するヒト可変L鎖およびH鎖を合成し、これら2つのDNAフラグメントを、PCRによりヒト定常L鎖およびH鎖に結合した。最後に、ヒト化2A2 L鎖をpcDNA3.3 TOPOにクローニングし、またヒト化2A2 H鎖をpOptiVEC TOPO抗体発現ベクターにクローニングした。ヒト2A2 IgG1の配列を
図2A〜Bに示すが、ヒト定常L鎖の第1アミノ酸(Arginine、赤い網掛け)は、全ヒト化L鎖の構築の際に欠失したことが示された。これらのヒト2A2 Ab発現ベクターを構築した後、DNAプラスミドを、CHO由来DHFR陰性DG44細胞にコトランスフェクトして、2A2 hIgG1抗体を産生する安定した細胞株を作製した。
【0082】
(抗体産生を目的とした安定細胞株の開発)
高レベルの抗体を産生する細胞株を得るため、CD OptiCHO培地およびジェネティシン500μg/mLを含有するCD OptiCHO培地を用いて2回の選択を行い、続いて、96ウェルプレート内の半固形培地でMTXゲノムの増幅選択および2回の単一細胞クローンの選択を行い、安定にトランスフェクトされた細胞のプールを選択した。ELISA測定定量により抗体の発現レベルをスクリーニングし、選択したh2A2IgG1−CHO細胞(G3A10、C5G6およびD5F11)株を徐々にスケールアップした。
【実施例2】
【0083】
(追加的な抗セラミド抗体の作製)
マウスにおける反復投与試験を目的としたモノクローナル抗体パネルを生成し、免疫原性を検討した。抗原(アルブミン結合ω−COOH C16−セラミド)を用いて、抗セラミドMabの選択を目的としたELISAによるハイブリドーマのスクリーニングを実施した。BSAおよびアルブミン結合ω−COOH C16ジヒドロセラミドに対して、陽性ヒットをカウンタースクリーニングした。次に、Mabの生物学的試験(Jurkat細胞アポトーシスのインビトロ阻害、放射線GI症候群のインビボ阻害)を実施した。9H10、9H11、9A2、7B10、6B5および6C8と命名したクローンを試験用に選択したところ、9A2を除く全てがインビトロで生物学的活性を示した。表1に示すように、クローンのパネルはC16:0カルボキシセラミド−BSAと優先的に結合した。Ag1はC16:0カルボキシセラミド−BSA300ng/ウェルでコーティングし、Ag2はC−16:0ジヒドロカルボキシセラミド−BSA300ng/ウェルでコーティングし、Ag3は非結合BSA(シグマA6003)300ng/ウェルでコーティングした。
【0084】
(表1−抗セラミドmAb)
【表1】
【0085】
クローン6B5および6C8はIgGと同定された一方、クローン7B10、9H10および9H11はIgMと同定された。IgGと同定されたものについての追加的なデータを表2に示す。Ag1は炭酸水素ナトリウム中のC16:0カルボキシセラミド−BSA500ng/ウェルでコーティングし、Ag2は炭酸水素ナトリウム中のC−16:0ジヒドロカルボキシセラミド−BSA500ng/ウェルでコーティングし、Ag3は炭酸水素ナトリウム中の非結合BSA(シグマA6003)500ng/ウェルでコーティングした。
【0086】
(表2−抗セラミドmAbの濃度曲線)
【表2】
【0087】
図3は、クローン9H10、9H11、7B10、6B5および6C8がインビトロで生物学的活性を示すことを示す。
【0088】
Jurkat細胞を10Gy透過線照射に被曝させることにより、陽性クローンを生物学的活性についてスクリーニングした。IRの直前にモノクローナル抗体(Mab)を指示された用量で培地に添加し、細胞を16時間インキュベートした後固定した。HOESCHSTビスベンズアミド染色および形態学的試験によりアポトーシスを定量した。結果を
図4に示した。
【0089】
クローン7B10(IgM)、6B5(IgG)および6C8(IgG)について陰窩致死性を検討した。
図5は、15Gy IRの15分前に投与するとき、いずれもが用量依存的に陰窩致死性を阻害したことを示す。
【0090】
6B5、6C8、7B10、9H10および9H11のCDRの配列を決定した。配列データより、これらのMab間、および2A2(代替的免疫/スクリーニングプロトコルにより作製)のCDRとの著しい相同性が判明した。IgMは、IgM同士および2A2との間でさらに大きな相同性を有するとみられる。同じく、2つのIgGは互い同士が最も類似していた。
図6は、6つのマウス抗体H鎖およびL鎖可変領域配列の配列アラインメント、およびヒト化h2A2(m2A2由来)の配列、およびコンピュータで作成したコンセンサス配列の描出を示す。H鎖可変領域のCDR1においては、各抗体はN末端から1位にGly、N末端から2位にTyrまたはPhe、N末端から4位にPheまたはLeu、およびN末端から5位にThrまたはSerおよびN末端から10位にHisまたはAsnを含む10アミノ酸を含む。H鎖可変領域のCDR2においては、各抗体はN末端から2位にAsnまたはIle、N末端から4位にPheまたはSer、C末端から9位にThr、C末端から7位にTyr、C末端から6位にAsnまたはArg、C末端から4位にLysまたはAla、およびC末端から3位にPheを含む16〜17アミノ酸を含む。マウス抗体のH鎖可変領域のCDR3においては、各抗体はN末端から4位にTyrまたはThrを含む7から11アミノ酸を含む。L鎖可変領域のCDR1においては、各抗体はN末端から2位にAlaまたはSer、N末端から3位にSer、N末端から5位にSerまたはAsp、およびC末端から3位にThr、SerまたはPheを含む10〜16アミノ酸を含む。L鎖可変領域のCDR2においては、各抗体はN末端から3位にSerまたはAsn、N末端から5位にLysまたはSer、およびN末端から7位にSerまたはAspを含む7アミノ酸を含む。L鎖可変領域のCDR3においては、各マウス抗体はN末端から1位にGln、LeuまたはTrp、N末端から2位にGln、N末端から7位にPro、およびN末端から9位にThrを含む9アミノ酸を含む。
【0091】
図6には、6B5、6C8、7B10、9H10および9H11のCDR配列に由来する配列情報に基づく、抗セラミドコンセンサス配列H鎖およびL鎖CDRを示す。驚くべきことに、本発明者らは、抗セラミド抗体のL鎖およびH鎖可変領域のCDR領域が一定の保存アミノ酸残基を有することを確認した。一部の実施形態においては、抗セラミド抗体6B5、6C8、7B10、9H10、9H11および2A2のうち2つまたはそれ以上の配列から決定されたコンセンサス配列を用いて、コンセンサスCDR、コンセンサス可変領域、またはコンセンサス可変領域配列と少なくとも80%、90%、または95%の配列同一性を含む可変領域を含むscFv抗体を作製することができる。
【実施例3】
【0092】
(抗セラミドscFvの作製)
Mabの有効性データに基づき、6B5のCDRを(2A2と共に)選択し、操作して単鎖Fvとした。2つの単鎖(sc)Fv構成体を操作してscFvを発現させ、有効性試験用の精製scFvを提供した。6B5 scFvは容易に発現および精製された。Mabと同様、Jurkat細胞アポトーシスのインビトロ阻害および放射線GI症候群のインビボ阻害を用いて、scFvの生物学的試験を実施した。
図5は、マイクロコロニー測定により、6B5 IgGが陰窩死より保護することを示す。
図7は、scFvがJurkat細胞アポトーシスを阻害することを示す。
図8は、6B5 scFvを15Gy被曝より15分前に投与した場合、インビボGI陰窩枯渇から保護することを示すことの例示である。
図9は、6B5 scFvを15Gy被曝より24時間後に投与した場合、インビボGI陰窩枯渇から保護することを示す。
【0093】
(抗セラミドscFvは致死的急性移植片対宿主病からマウスを保護する)
C57BL/6マウス(MHC H2
bハプロタイプ)に対し、生理食塩水、ヒト化抗セラミドh2A2 50mg/kgまたは抗セラミドscFv 6B5 7.5mg/kgを、指示された投与経路および投与スケジュールにより投与した。投与は1100cGy分割線量全身照射(TBI)の15分前に開始した。次にマウスは、TBIより16〜20時間後に、B10.BRドナーマウス(MHC H2
k2ハプロタイプ)に由来する5×10
6個の同種骨髄(BM)またはBMおよび2×10
6個の同種CD5+ナイーブT細胞からなる同種骨髄移植を受けた。マウスの生存を連日モニタリングした。データは、90日生存を表すと判定された10日目の生存を表す。投与予定日0、4および8日目に生理食塩水を静脈内投与したところ、10日後の生存率は30%となった。投与予定日0、4および8日目にh2A2モノクローナル抗体を静脈内投与したところ、10日後の生存率は100%となった(生理食塩水対照に対してp<0.001)。投与予定日0、4および8日目にscFVを静脈内投与したところ、10日後の生存率は60%となった(生理食塩水対照に対してp<0.05)。投与予定日0、2、4、6および8日目に生理食塩水を皮下投与したところ、10日後の生存率は0%となった。投与予定日0、2、4、6および8日目に生理食塩水を皮下投与したところ、10日後の生存率は100%となった(生理食塩水対照に対してp<0.001)。
【0094】
図10に示すように、抗セラミドscFvは腸陰窩を用量依存的に保護する。
図11に示すように、代替的な注射法で投与するとき抗セラミドscFvは有効性を維持する。
図12に示すように、抗セラミドh2a2およびscFvは放射線GI症候群の致死作用を保護および緩和する。
図13に示すように、抗セラミドscFvは致死的急性移植片対宿主病からマウスを保護する。
図14に示すように、抗セラミドscFvは致死的な急性移植片対宿主病の際にマウス腸幹細胞を保護する。
図15に示すように、抗セラミドh2a2およびscFvは腸間膜リンパ節内でのCD4+およびCD8+リンパ球の保持を高める(
図15)。
【0095】
上記の記述は、当業者に本発明を実践する方法を教示することを目的としており、記述を読むとき当業者に明らかとなるその明白な改変および変法のすべてを詳述することを意図していない。しかしそのような明白な改変および変法は、いずれも以下の請求項に定義される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。請求項は、文脈上特に反対のことが示されない限り、そこで意図する目的に合致ために有効な、任意の順の構成要素およびステップを包含することを意図する。