【実施例】
【0042】
実施例1
核酸等温増幅の阻害剤を減少させるかまたは除去するための、有機溶媒を含むより低温の加熱に対する煮沸の比較
商業的なC.ディフィシレ試験を用いて、核酸抽出の記載する方法を評価した。等温増幅用に糞便標本から核酸を調製するため、煮沸、加熱なし、あるいは3%の有機溶媒を含むまたは含まない65℃を含む、異なる抽出条件を試験した。この試験は、
図3に例示するように、ターゲット(tcdB遺伝子)および内部対照(IC)の増幅を含有する。
図3Aは、列挙する条件下でのC.ディフィシレ陽性糞便試料(試料10233)から抽出した未精製DNAを用いた等温増幅を例示する。加熱ブロック上で反応を行い、そして増幅産物を1%アガロースゲル上で分離した。結果を
図3A(試料10233)および3B(試料16)に提供する。DNAを加熱せずに調製した場合(レーン3)、tcdB遺伝子のアンプリコンはまったく観察されなかった(
図3Aに例示するとおり)。
図3Aにおいて、煮沸を用いることによって(レーン2)、3%エタノールを添加する(レーン4)か、または有機溶媒を添加せずに(レーン5)65℃で3分間加熱することによって、DNAを調製した場合、増幅DNA断片の強度は、ゲル中で同様であった。
図3Bは、示す条件下で、試料16から抽出した未精製DNAを用いた等温増幅を示す。tcdB遺伝子の増幅を
図3BのレーンA〜Cで調べた。内部対照の増幅を
図3BのレーンD〜Fで評価した。増幅産物を1%アガロースゲル上で分離した。
図3Bに示すように、試料16を、抽出緩衝液中の3%エタノールで、65℃で3分間処理した際、tcdB遺伝子および内部対照は、強い増幅を示した(
図3B、レーンAおよびD)。しかし、試料16を、3%エタノールで加熱を伴わずに、または65℃の加熱のみで処理した際、tcdB増幅はまったく起こらなかった(
図3B、レーンBおよびC)。この結果は、3%エタノールを、65℃で3〜5分間のインキュベーションと組み合わせたものが、DNA増幅のために標本から阻害を減少させる際、最適であり、そして煮沸に匹敵することを示した。いくつかの試料において、加熱工程を伴わない抽出緩衝液中の有機溶媒の添加は、煮沸法に比較した際、同じ量のアンプリコンを示す。
【0043】
実施例2
ヒト糞便試料を用いた、エタノールを含みまたは含まずに抽出した核酸の等温増幅
レコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)およびニック形成酵素関連反応(NEAR)等温増幅を用いて、核酸増幅に対する阻害効果を減少させる際の有機溶媒を評価した。未精製糞便DNAを、
図1に示す方法にしたがって、C.ディフィシレ感染(CDI)患者から調製した。試料6654にはRPA C.ディフィシレ試験を用い、そして試料9637、9638、9648、9665、および9669にはNEAR C.ディフィシレ試験を適用した。3%エタノールの添加を伴いまたは伴わずに、抽出緩衝液を用い、そして65℃で5分間インキュベーションした。RPAおよびNEAR等温増幅を用いることによって、C.ディフィシレ毒素B遺伝子(tcdB)を抽出DNA試料から増幅した。Axxin T16蛍光読み取り装置を用いることによって、増幅産物の相対量(RFU:相対蛍光単位(
Relative
Fluorescence
Unit))を測定した。
図4および
図5に結果を提供する。
図4は、C.ディフィシレRPA等温増幅アッセイにおける未精製DNAの分析を例示する。3%エタノールを補充した抽出緩衝液(実線)または抽出緩衝液のみ(破線)を用いて、試料6654からDNAを抽出し、一方、
図5は、NEAR等温増幅を用いて、糞便試料から抽出したDNAの分析を示す。抽出緩衝液中にエタノールを含まず(
図5A)または含み(
図5B)、5つの糞便試料(試料9637、9638、9648、9665、および9669)から未精製DNAを抽出した。Axxin T16蛍光読み取り装置を用いることによって、tcdBの増幅を測定した。
図5中のNTCは、テンプレート不含対照を意味し、したがって、この反応にはテンプレートはまったく添加されなかった。
【0044】
有機溶媒を含有する抽出緩衝液から精製したDNA(
図4実線および
図5B)は、抽出緩衝液中に有機溶媒を含まずに精製したDNA(
図4破線および
図5A)に比較して、より強いシグナルおよび迅速な増幅を生じた。これらの結果は、DNA増幅の阻害が、抽出緩衝液中に3%エタノールを添加し、そして65℃でインキュベーションすることによって、実質的に減少することを示す。
【0045】
実施例3
細菌および寄生虫を含有するヒト糞便試料を用いた、有機溶媒を伴いまたは伴わずに抽出したDNAの増幅の比較
本実施例で用いるヒト糞便試料は、C.ディフィシレ、志賀様毒素産生大腸菌(E. coli)、カンピロバクター属(Campylobacter)、H.ピロリ(H.pylori)、赤痢菌属(Shigella)、サルモネラ属(Salmonella)、ジアルディア属(Giardia)、クリプトスポリジウム属(Cryptosporidium)、およびE.ヒストリティカ(E. histolytica)に感染した患者由来であった。
図1に関連して記載する方法を用いて、これらの臨床試料からDNAを抽出した。Biomerieux NucliSENS easyMAG自動化装置を用いることによってもまた、これらの試料からDNAを精製し、そして比較のための対照として用いた。PCR、レコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、およびニック形成酵素関連反応(NEAR)等温増幅を利用して、抽出核酸の品質および量を評価した。
【0046】
PCR増幅:
IQパワーミックス(Bio−Rad)またはSYBRグリーナーマスターミックス(Life Technologies)のいずれかを用いて、20μl体積で試験管または96ウェルプレート中で、PCR反応を行った。各病原体に対する特異的プライマーおよび/またはプローブを反応に使用した。SYBRマスターミックスに関しては、PCR増幅後、融解曲線分析を行った。
【0047】
図1に関連して記載する方法で精製したDNAを用いることによって、多重リアルタイムPCRを行って、ジアルディア属、クリプトスポリジウム属、およびE.ヒストリティカを検出した。ジアルディア属、クリプトスポリジウム属、またはE.ヒストリティカ陽性試料に関しては、3%エタノールで精製した未精製DNAおよびBiomerieux NucliSENS easyMAG自動化装置によって精製したDNAは、類似のDNA増幅を示した。
【0048】
ニック形成酵素増幅反応(NEAR):
Nt.BstNBI(New England Biolabs)およびBst DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)またはManta DNAポリメラーゼ(Enzymatics)を用いて、50μl体積中でNEAR反応を行った。C.ディフィシレ毒素B遺伝子、志賀毒素stx1遺伝子および志賀毒素stx2遺伝子をターゲティングする特異的プライマーおよびプローブを反応中で用いた。増幅シグナルを検出するため、Axxin T16蛍光読み取り装置を用いた。NEAR試験を用いた、C.ディフィシレ陽性糞便試料に関する例を実施例2に示している。
【0049】
レコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA):
[0085]TwistDxによって調製された凍結乾燥材料を用いて、50μl体積中、RPA反応を行った。C.ディフィシレ毒素B遺伝子、志賀毒素stx1遺伝子、志賀毒素stx2遺伝子、カンピロバクター属16S rRNA遺伝子、およびサルモネラ属invA遺伝子をターゲティングする特異的プライマーおよびプローブを反応中で用いた。増幅シグナルを検出するため、Axxin T16蛍光読み取り装置を用いた。低い割合の有機溶媒を用いることによって精製したDNA由来の毒素B遺伝子、志賀毒素stx1遺伝子、志賀毒素stx2遺伝子、カンピロバクター属16S rRNA遺伝子、およびサルモネラ属invA遺伝子の増幅シグナルは、煮沸法を用いることによって、または商業的核酸精製系、Biomerieux NucliSENS easyMAG自動化装置を用いることによって精製したDNAテンプレートと同じ強度を示した。サルモネラ属invA遺伝子(試料3、4、6、7、および8)および志賀毒素stx2遺伝子(試料3および12)に関するRPA試験を、
図6および7に示す。
図6は、糞便試料から抽出したDNAを用いたサルモネラ属RPA試験を示す。煮沸法(
図6Aに例示するとおり)または65℃で3分間のインキュベーションを伴う3%エタノールを含有する抽出緩衝液(
図6Bに例示するとおり)を用いて、5つのサルモネラ属陽性試料(試料3、4、6、7、および8)から未精製DNAを抽出した。DNA試料からのサルモネラ属invAの増幅曲線を示す。NTC:テンプレート不含対照。
【0050】
図7Aおよび7Bは、糞便試料から抽出したDNAにおける志賀毒素stx2遺伝子を検出するRPA試験を例示する。煮沸法(
図7Aに例示するとおり)または65℃で3分間のインキュベーションを伴う3%エタノールを含有する抽出緩衝液(
図7Bに例示するとおり)を用いて、2つのstx2陽性試料(試料3および12)から未精製DNAを抽出した。DNA試料からの志賀stx2遺伝子の増幅曲線を示す。
【0051】
煮沸法または本発明に記載する方法から調製したDNA試料に関して、増幅曲線上の増幅出発時間および最高終点読み取りは匹敵した。本発明に提示する組成物および方法を用いて、結果は、細菌および寄生虫を含有するヒト糞便試料から抽出したDNAの品質および量が、PCRおよび等温増幅に十分であることを例示する。
【0052】
実施例4
DNAおよびRNAウイルスを含有する培養物およびヒト糞便試料を用いた、エタノールを伴いまたは伴わずに抽出した核酸の増幅の比較
ウイルス核酸抽出のための緩衝液および方法の効率を評価するため、本実施例を提供する。アデノウイルスおよびノロウイルス陽性臨床糞便試料を本実施例で用いた。
図1に関連して記載する方法を用いて、これらの試料から核酸を抽出した。抽出核酸、およびアデノウイルスのヘキソン(hexon)遺伝子(カプシドタンパク質II)をターゲティングする特異的プライマーを用いて、リアルタイムPCRを実行して、アデノウイルス陽性試料から抽出した核酸の品質および量を評価した。アデノウイルス陽性試料から抽出した未精製DNAは、アデノウイルスカプシドタンパク質II遺伝子の非常に強い増幅を示した。リアルタイムPCRで、同じ量のDNAを用いた際、
図1に関連して記載する方法を用いることによって精製されたDNAに関する閾値サイクル(Ct)値は、BioMerieux NucliSENS easyMAG自動化装置で精製したDNAとほぼ同じであった。
【0053】
図8は、ノロウイルス陽性糞便試料から抽出されたRNAの逆転写およびPCR分析を例示する。本発明で提示する、3%エタノールを含む抽出緩衝液を用いて、ノロウイルス陽性試料から抽出したRNAを、煮沸、煮沸なし、または有機溶媒を含まない65℃でのインキュベーションで抽出したRNAに比較した。BioMerieux NucliSENS easyMAG自動化装置を用いてもまたRNAを抽出し、そして対照として利用した。次いで、逆転写のために、dsDNアーゼとともに、Thermo Scientific Maxima Hマイナス第一鎖cDNA合成キットを用いた。逆転写後、ノロウイルスのORF1領域の3’端をターゲティングする特異的プライマーをリアルタイムPCRで用いた。有機溶媒処理試料由来のノロウイルスのターゲット領域の331bpバンドを、
図8に例示するように増幅した。BioMerieux NucliSENS easyMAG自動化装置で精製したRNAを5倍多い出発材料量で対照として用いた。煮沸工程は、3%エタノールでのみ処理した試料に比較して、生物学的試料からのRNAの収率を劇的に減少させた。PCR産物を1%アガロースゲル上で分離した。結果は、本発明で提示する抽出緩衝液および方法が、ウイルスをロバストに溶解し、PCRおよび逆転写PCRに非常に適した核酸を放出させうることを立証する。
【0054】
実施例5
本明細書に開示する核酸調製法を植物組織に適用することも可能である
植物組織を用いて、本発明で提示する抽出緩衝液の能力を試験するために、本実施例を提供する。
図9は、ベンサミアナタバコの葉から抽出した未精製DNAを用いたPCR増幅を例示する。本発明で記載する方法を用いて、未精製植物DNAを抽出した。アクチン遺伝子の増幅を実線で示す。点線は、テンプレート不含対照(NTC)を示す。ベンサミアナタバコ植物の葉から生体材料を得た。乳鉢を用いることによって、葉をすりつぶし、そして3%エタノールを含有する抽出緩衝液を用いて、スクイーズイージーチューブに移した(100μg)。チューブをボルテックスし、そして活性炭フィルターチップを通じて、500μlのPBSを含有する1.5mlエッペンドルフチューブ内に、緩衝液1滴を絞り出した。エッペンドルフチューブを65℃で3〜5分間インキュベーションした。抽出したDNA、およびベンサミアナタバコのアクチン遺伝子を特異的にターゲティングするプライマーを用いて、SmartCycler上でリアルタイムPCR分析を行った。植物アクチン遺伝子のPCR増幅の成功は、本発明に記載する方法で植物組織から抽出したDNAテンプレートを、PCR反応に使用可能であることを立証した(
図9に例示するとおり)。
【0055】
実施例6
本明細書に開示するDNA抽出法を用いて、血液試料中の増幅阻害剤を排除するかまたは減少させることも可能である
血液によるDNA増幅の阻害を試験するため、本実施例を提供する。ヒト血液を5%の濃度でスパイク処理したC.ディフィシレ陽性臨床糞便試料をこの方法で用いた。抽出緩衝液および
図1に関連して記載する方法を用い、スパイクした試料から抽出したDNAを用いて、等温反応を実行した。3%エタノールを含む抽出緩衝液を含有するスクイーズチューブに、血液試料スワブを添加して、そして刻み目のマーカーで、スワブを折った。活性炭フィルターチップをスクイーズチューブの最上部に配置した後、1滴の抽出緩衝液を反応チューブ外に絞り出した。反応チューブを65℃で3分間インキュベーションした後、50μlの抽出DNAをC.ディフィシレRPA反応に用いた。抽出核酸は、等温増幅反応において、tcdB遺伝子および内部対照を増幅可能であった。しかし、5%ヒト血液でスパイク処理した試料に関して、エタノールを含まない抽出緩衝液を用いた場合、未精製DNAからのC.ディフィシレのtcdB遺伝子および内部対照の増幅は、RPA試験において完全に抑制された。結果は、本発明が、血液試料から阻害剤を有効に除去したことを示す。
【0056】
実施例7
低い割合の有機溶媒を、核酸抽出プロセス中の、溶解工程前、溶解工程中、および溶解工程後に添加することも可能である
この方法で用いるヒト糞便試料は、C.ディフィシレに感染した患者由来であった。有機溶媒を、核酸抽出中の異なる工程で添加した。最初の実験群において、有機溶媒を糞便試料に直接添加した。3%エタノールを含む250μlのPBSを含有するエッペンドルフチューブに、糞便試料(100μl)を添加し、そして10秒間ボルテックスした。次いで、これらを、エタノールを含まない抽出緩衝液を含有するスクイーズイージーチューブに移した。その後、
図1に関連して記載する方法にしたがって、DNAを抽出した。第二の実験群において、糞便試料を溶解した後に、エタノールを添加した。エタノールを含まない抽出緩衝液を含有するスクイーズイージーチューブに糞便試料(100μl)を添加し、そしてフィルターチップをチューブの最上部で折った。スクイーズイージーチューブをボルテックスし、そして約100μlの溶解試料をチューブから絞り出した。3%エタノールを100μlの溶解試料に添加し、そしてボルテックスした。溶解試料1滴(約25〜30μL)を反応チューブ中で希釈し、そして65℃で3分間インキュベーションした。次いで、未精製DNAを直接PCR増幅に用いた。第三の実験群において、有機溶媒を抽出緩衝液に添加した。
図1に関連して記載する方法にしたがって、3%エタノールを含有する抽出緩衝液を用いて、糞便試料から未精製DNAを抽出した。
【0057】
上記に言及する方法を用いて調製した未精製DNA、およびTwistDxによって調製した凍結乾燥材料を用いて、50μl体積中、RPA反応を行った。C.ディフィシレ毒素B遺伝子をターゲティングする特異的プライマーおよびプローブを反応に用いた。DNA増幅からのシグナルを検出するために、Axxin T16蛍光読み取り装置を用いた。核酸抽出中の異なる工程でのエタノールの添加は、抽出されたDNAからの増幅のシグナル強度にまったく相違を生じず;異なる方法で抽出したすべての未精製DNAで増幅成功が達成された(
図10に例示するとおり)。
【0058】
図10は、核酸抽出中の異なる工程で、有機溶媒を添加することによって、増幅阻害剤が排除可能であることを例示する。未精製DNAをヒト糞便試料から抽出した。エタノール(3%)を抽出緩衝液(実線)に、希釈糞便試料(破線)に、または糞便試料溶解物(点線)に添加して、その後、65℃で3分間インキュベーションした。抽出DNA中のC.ディフィシレ毒素B遺伝子の増幅を、C.ディフィシレRPAアッセイで測定した。結果は、ヒト糞便試料から、本発明の方法を用いて抽出したDNAの品質および量が、PCRおよび等温増幅に適しており、そして有機溶媒処理は、核酸抽出前、抽出中、または抽出後、PCRまたは等温反応緩衝液中で希釈する前に、適用可能であることを示す。
【0059】
実施例8
核酸抽出緩衝液におけるエタノールに対する代替物
本発明で提示する核酸抽出緩衝液中のエタノールに対する代替物として、有機溶媒群を試験した;例には、アセトン、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、およびDMSOが含まれる。2つの陽性(試料6654および6799)および2つの陰性C.ディフィシレ試料(試料4268および6901)から、
図1に関連して記載する方法を用いることによって、未精製DNAを抽出した。これらの4つの試料から、有機溶媒の添加を伴わずに調製した未精製DNAは、増幅の強い阻害効果を提示し、内部対照の増幅失敗を生じた(表1、カラム2)。各有機溶媒を用いて、抽出緩衝液中のエタノールを置換した。C.ディフィシレRPA試験を使用して、異なる有機溶媒で抽出したDNAの品質および量を評価した。C.ディフィシレRPA試験を(1)失敗−検出可能な増幅シグナルなし、(2)損なわれた(compromised)−対照に比較してより少ないアンプリコンシグナル、または(3)満足できる(nominal)−対照と同様のアンプリコンとスコア付けした。すべての有機溶媒は、既知の陽性試料で強いシグナルを生じた(表1)。これらの結果は、エタノール、アセトン、ブタノール、DMSOを含むがこれらの有機溶媒に限定されない有機溶媒が、本発明で使用可能であることを立証する。
【0060】
表1. C.ディフィシレRPAアッセイにおける、エタノールに対する代替物試験
【0061】
【表1】
【0062】
表2. 0.5%〜15%の範囲のエタノール濃度でのDNA増幅
【0063】
【表2】
【0064】
さらに、異なる濃度の有機溶媒(0.5%〜20%)を抽出緩衝液中で試験した。未精製DNA抽出物由来のC.ディフィシレのgluDおよびtcdB遺伝子の増幅(試料4および16)は、有意な相違を示さなかった。リアルタイムPCRのCt値は、異なる濃度のエタノールで抽出した未精製DNAに関して同様であった(表2)。RPA結果は、抽出緩衝液中、0.5%〜15%の範囲のエタノール濃度が、DNA増幅に干渉しなかったことを示す(表2)。
【0065】
実施例9
多重PCRおよび多重等温増幅における、自動化系に対する、本発明にしたがって抽出した核酸の品質および量の比較
志賀毒素遺伝子stx1およびstx2に関して陽性である臨床糞便試料から、本発明に提示するDNA抽出緩衝液を用い、そして
図1に関して記載する方法にしたがうことによって、DNAを抽出した。さらに、Biomerieux NucliSENS easyMAGから精製したDNAが対照として働いた。stx1およびstx2遺伝子をターゲティングする特異的プライマーを多重PCRおよび多重RPA反応において利用した。これらの試料から抽出したDNAを用いて、stx1およびstx2遺伝子両方の増幅シグナルを、PCR装置によって多重PCRにおいて、そしてAxxin T16蛍光読み取り装置によって多重RPA反応において、検出した。本発明に提示する3%のエタノールを用いて抽出したDNAは、Bionerieux NucliSENS easyMAGから精製したDNAと同じ、stx1およびstx2の増幅シグナルを生じた。これは、本発明の方法を用いることによって抽出した未精製核酸の品質および量が、Biomerieux NucliSENS easyMAG自動化装置から精製したDNAと同等であることを示した。
【0066】
本発明は、特定の側面に関連して記載されてきており、これらはすべての観点で、限定ではなく例示であることが意図される。本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の多くのありうる側面が作製可能であるため、本明細書に示すすべてのものは、例示であり、そして限定の意味ではないと解釈されることが理解されるものとする。本発明が関連する技術分野の一般の当業者には、その範囲から逸脱することのない、代替の側面が明らかであろう。
【0067】
前述から、本発明が、上述のすべての目標および目的を達成するようによく適応されたものであることがわかるであろう。特定の特徴およびサブコンビネーションが有用であり、そして他の特徴およびサブコンビネーションに関わりなく使用可能であることが理解されるであろう。これが意図され、そして特許請求の範囲内である。
本発明は、非限定的に以下の態様を含む。
[態様1]
核酸抽出のために生物学的試料を処理するための方法であって:(a)生物学的試料を得て;(b)0.5〜20重量%の有機溶媒を含む抽出緩衝液中で生物学的試料を希釈して、混合物を形成し;(c)混合物を、15℃〜35℃の温度で、5秒間〜30分間インキュベーションして、さらなるプロセシングのため、生物学的試料中に存在する核酸を生物学的試料の少なくとも一部から抽出し;(d)核酸の少なくとも一部を生物学的試料から分離し;(e)1またはそれより多い増幅反応緩衝液中で核酸の少なくとも一部を希釈して、増幅混合物を形成し;そして(f)増幅混合物を25℃〜70℃で1〜10分間インキュベーションする工程を含む、前記方法。
[態様2]
前記生物学的試料が、1またはそれより多いヒト標本、細菌、ウイルス、寄生虫、糞便試料、体液、植物、または培養物を含む、態様1の方法。
[態様3]
前記有機溶媒が、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、またはジメチルスルホキシド(DMSO)の1またはそれより多くを含む、態様1の方法。
[態様4]
抽出緩衝液が3重量%〜10重量%の有機溶媒を含み、有機溶媒がエタノール、アセトン、またはその組み合わせを含む、態様1の方法。
[態様5]
生物学的試料から核酸の少なくとも一部を分離する工程が、混合物をフィルターで濾過する工程を含む、態様1の方法。
[態様6]
フィルターが50μm〜250μmの孔サイズを有する、態様5の方法。
[態様7]
フィルターが多孔性プラスチック、多孔性ポリマー繊維、または多孔性ガラス繊維の1またはそれより多くを含む、態様5の方法。
[態様8]
フィルターが、活性炭に包埋されたガラス繊維フィルターを含む、態様7の方法。
[態様9]
前記生物学的試料を25℃〜70℃で3〜5分間インキュベーションする、態様1の方法。
[態様10]
増幅反応緩衝液中で核酸の少なくととも一部を希釈する前に、核酸の少なくとも一部に、有機溶媒を、0.5〜20重量%の濃度まで添加する工程をさらに含む、態様1の方法。
[態様11]
有機溶媒を核酸の少なくとも一部に添加する工程が、エタノールを核酸の少なくとも一部に添加する工程を含む、態様10の方法。
[態様12]
前記インキュベーション温度が50℃〜65℃の間である、態様1の方法。
[態様13]
有機溶媒の添加が、加熱、酵素消化、インキュベーション、分離、核酸沈殿、または溶出の1またはそれより多くの必要性を排除しうる、態様1の方法。
[態様14]
前記加熱が95℃またはそれより高い温度である、態様13の方法。
[態様15]
増幅反応緩衝液が、等温増幅、PCR、配列決定、遺伝子型決定、およびハイブリダイゼーションに適した緩衝液である、態様1の方法。
[態様16]
等温が、ニック形成酵素関連反応(NEAR)、レコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、ループ仲介等温増幅(LAMP)、鎖置換増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、ローリングサークル増幅、および他の等温増幅法を含む、態様15の方法。
[態様17]
増幅反応において核酸の少なくとも一部を増幅する工程をさらに含む、態様1の方法。
[態様18]
有機溶媒を含む抽出緩衝液を用いるが、加熱を行わずに、増幅を行う、態様17の方法。
[態様19]
有機溶媒を含む抽出緩衝液を用いて、加熱を行い、増幅を行う、態様17の方法。
[態様20]
抽出緩衝液が、核酸増幅に用いる抽出緩衝液を含む、態様1の方法。
[態様21]
核酸抽出のために生物学的試料を処理するための方法であって:(a)生物学的試料を得て、該生物学的試料が糞便試料を含み;(b)0.5〜20重量%の有機溶媒を含む抽出緩衝液中で、生物学的試料を希釈して、混合物を形成し;(c)混合物を15℃〜70℃の温度で、5秒間〜30分間インキュベーションして、さらなるプロセシングのため、生物学的試料中に存在する核酸を生物学的試料の少なくとも一部から抽出し:(d)核酸の少なくとも一部を生物学的試料から分離し;そして(e)1またはそれより多い増幅反応緩衝液中で核酸の少なくとも一部を希釈して、増幅混合物を形成する工程を含む、前記方法。
[態様22]
核酸抽出のために生物学的試料を処理するための方法であって:(a)生物学的試料を得て、該生物学的試料が、糞便、血液、唾液、または尿の1またはそれより多くを含み;(b)生物学的試料を、0.5〜20重量%の有機溶媒を含む抽出緩衝液中で希釈して、混合物を形成し;(c)混合物を、15℃〜35℃の温度で、5秒間〜30分間インキュベーションして、さらなるプロセシングのため、生物学的試料中に存在する核酸を生物学的試料の少なくとも一部から抽出し;(d)生物学的試料から、核酸の少なくとも一部を分離し;(e)有機溶媒を、核酸の少なくとも一部に、0.5〜20重量%の濃度まで添加して、処理核酸を形成し;(f)処理核酸の少なくとも一部を、1またはそれより多い増幅反応緩衝液中で希釈して、増幅混合物を形成し;そして(g)増幅反応中の核酸の少なくとも一部を増幅する工程を含む、前記方法。