特許第6670338号(P6670338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670338
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】整流フィン
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20200309BHJP
   B62D 37/02 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B60R19/48 R
   B62D37/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-69956(P2018-69956)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-177848(P2019-177848A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2018年11月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月12日〜14日幕張メッセにおいて開催されたTOKYO AUTO SALON 2018に出展
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207653
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】塩貝 僚
(72)【発明者】
【氏名】阿部 将寛
(72)【発明者】
【氏名】福田 正剛
(72)【発明者】
【氏名】湯沢 峰司
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−127367(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/126069(WO,A1)
【文献】 特開2017−065445(JP,A)
【文献】 実開平1−65770(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/48
B62D 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の下部に設けられ、車幅方向両側に配置された該車両の左右の前輪の間よりも前方位置から前記車両の前後方向に延設された整流フィンであって、
前記整流フィンは、前記車両の前部に取付けられたフロントバンパのバンパ底面に形成され、前記車両の車幅方向中央側の中央側整流フィンと、前記中央側整流フィンを車幅方向から挟むように前記前輪側に配置された左右の外側整流フィンとを備え、
前記外側整流フィンの後部が前記中央側整流フィンの後部よりも後方に位置し、前記中央側整流フィン及び外側整流フィンの後部が前記左右の前輪の間よりも前方に位置し、
前記外側整流フィンは前記車両の前輪の左右のタイヤハウスの内側に配置されることを特徴とする整流フィン。
【請求項2】
前記中央側整流フィンが2カ所設けられていることを特徴とする請求項1記載の整流フィン。
【請求項3】
前記左右の外側整流フィンは、前記車幅方向中央側の内壁面が前記車両の前側から後側に向かって前記車幅方向中央側に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の整流フィン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部に設ける整流フィンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして、自動車の下部を覆うように配置されると共に車幅方向中央部を前後方向に延びる凹状のトンネル部が形成された床部材において空気流の流れをガイドする空気流ガイド構造であって、前記自動車の前方から前記床部材の下側に流入した空気流を後方へガイドするために前記床部材に沿って前後方向に延びるように形成され、後端部がフロントタイヤより後方で且つ前記自動車の側部と前記トンネル部との間に配置されるガイド壁を備えた空気流ガイド構造(例えば特許文献1)がある。
【0003】
前記空気流ガイド構造では、走行時における車両下部の空気抵抗の増加を抑制するために床部材の下側を流れる空気流の速度を均一化させることを目的としている。
【0004】
また、フロントタイヤの車両前方位置にフロントディフレクタを設け、走行中、前部床下の周りを流れる走行風の流れを整える車両の前部床下構造において、前記フロントディフレクタは、前記フロントタイヤの直進状態タイヤ先端面の位置よりも車両前方位置であって、前記フロントタイヤの直進状態タイヤ内面の位置よりも車両センターラインに近い車幅方向内側位置に配置され、車両後方に向かう走行風の流れを、車両内方と車両外方の2方向に分岐する前方頂部と、前記前方頂部よりも車両後方位置であって、前記前方頂部よりも車幅方向内側位置に配置した内側端部と、前記前方頂部と前記内側端部とを接続するとともに前記内側端部の近傍部位において車幅方向内側に傾斜し、車両前方からの走行風を受けると、受けた走行風の流れを、車幅方向内側に向かう流れに整える第1整流面と、を有する車両の前部床下構造(例えば特許文献2)がある。
【0005】
前記車両の前部床下構造では、走行中、前部床下の周りを流れる走行風による空気抵抗を低減することで、所望の空力性能向上を実現することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−65445号公報
【特許文献2】特許第5522254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明において、発明者の研究に基づく新たな知見では、走行車両において、従来よりさらに、高速直進安定性を空力的に向上させるには、車両のセンターラインにおける前後のバランスを整え、空力慣性中心を最適に整える必要があり、また、直進時、旋回時におけるタイヤ設定荷重を最適化することが重要である。これに対して、車両の床面に沿う空気の流れを中央に集め、床面中央に均一な圧力の軸を造ることによりロール軸方向のモーメント力を適正化し、走行性能及び乗り味を向上することができる。
【0008】
図24及び図25は、走行時の車両下部の数値流体力学による解析結果を示し、図24(A)及び図25(A)は車両前後方向と平行な走行風条件で直進走行に相当し、図24(B)及び図25(B)は車両前後方向に対して傾いた斜めの走行風条件で、この傾き角度が旋回角度であり、旋回走行に相当する。尚、前記傾き角度がスリップ角度である。また、図24は走行風の流れの流線、図25は走行風の流れ速度分布を示している。
【0009】
図24に示すように、車両の中央下部の走行風の高速領域H,Hが、前輪101,101の後方において、左右に離れて広がるように形成され、左右の高速領域H,Hの間にこれより低速の低速領域Lが発生する。
【0010】
一方、図25に示すように、旋回走行のシミュレーションでは、旋回角度に対応して左右の高速領域H,Hが斜めに形成され、旋回方向内側の後輪102の後方において、左右で偏って圧力が低下した領域LPが発生し、負圧により矢印のように後部に引っ張られる。
【0011】
そこで、本発明は上記した課題に鑑み、車両の操安性を向上することができる整流フィンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両の下部に設けられ、車幅方向両側に配置された該車両の左右の前輪の間よりも前方位置から前記車両の前後方向に延設された整流フィンであって、前記整流フィンは、前記車両の前部に取付けられたフロントバンパのバンパ底面に形成され、前記車両の車幅方向中央側の中央側整流フィンと、前記中央側整流フィンを車幅方向から挟むように前記前輪側に配置された左右の外側整流フィンとを備え、前記外側整流フィンの後部が前記中央側整流フィンの後部よりも後方に位置し、前記中央側整流フィン及び外側整流フィンの後部が前記左右の前輪の間よりも前方に位置し、前記外側整流フィンは前記車両の前輪の左右のタイヤハウスの内側に配置されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、前記中央側整流フィンが2カ所設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、前記左右の外側整流フィンは、前記車幅方向中央側の内壁面が前記車両の前側から後側に向かって前記車幅方向中央側に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の構成によれば、操縦安定性を向上させることができる。
【0016】
請求項2の構成によれば、フィンの内側の気流を作ることにより、車幅方向中央部の流速を高くして、高速直進安定性を向上することができる。
【0017】
請求項3の構成によれば、車幅方向中央部の流速を高くして、高速直進安定性を向上することができる。
【0018】
請求項の構成によれば、フロントバンパに設けることにより、旋回性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1を示す車両の底面図である。
図2】同上、車両の正面図である。
図3】同上、フロントバンパの底面図である。
図4】同上、フロントバンパのバンパ底面の拡大側面図である。
図5】同上、フロントバンパの正面図である。
図6】同上、フロントバンパの側面図である。
図7】同上、バンパ底面の要部の拡大底面図である。
図8】同上、第1整流フィンを正面から見た拡大断面図である。
図9】同上、第2整流フィンを正面から見た拡大断面図である。
図10】同上、車両下部を流れる走行風に流れを示す走行風流れ図であり、図10(A)は比較例、図10(B)は実施例を示す。
図11】同上、実施例における車両下部を流れる走行風に流れを示す走行風流れ図であり、図11(A)はスリップ角度を有する場合、図11(B)は直進走行の場合を示す。
図12】同上、比較例における車両下部を流れる走行風に流れを示す走行風流れ図であり、図12(A)はスリップ角度を有する場合、図12(B)は直進走行の場合を示す。
図13】本発明の実施例2を示す第2整流フィンの拡大正面図である。
図14】同上、第2整流フィンの拡大背面図である。
図15】本発明の実施例3を示すフロントバンパの正面図である。
図16】同上、背面図である。
図17】同上、平面図である。
図18】同上、底面図である。
図19】同上、左側面図である。
図20】同上、右側面図である。
図21】同上、斜視図である。
図22】同上、第2整流フィンの拡大正面図である。
図23】同上、第2整流フィンの拡大背面図である。
図24】従来例の車両下部を流れる走行風に流れを示す走行風流れ図であり、図24(A)は直進走行の場合、図24(B)はスリップ角度を有する場合を示す。
図25】従来例の車両下部を流れる走行風に流れを示す走行風流れ図であって、速度分布を示し、図25(A)は直進走行の場合、図25(B)はスリップ角度を有する場合である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の整流フィンの実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1図1は本発明の実施例1を示し、同図に示すように、自走式の車両1は左右の前輪2L,2Rと左右の後輪3L,3Rとを有し、これら前輪2L,2R及び後輪3L,3Rを収納する前後のタイヤハウス4,4,5,5が車両1の左右に設けられている。
【0022】
前記車両1の前部には、フロント樹脂部材たるフロントバンパ7が設けられ、このフロントバンパ7は、樹脂を金型で成形してなる。また、前記フロントバンパ7には、ラジエータ等を冷却するために外気を車両1の内部に流入させる開口部8が設けられている。そして、前記フロントバンパ7の下部に第1及び第2整流フィン31,41が設けられ、これら、第1及び第2整流フィン31,41は、車幅方向を厚さ方向として、車両1の前輪2L,2Rの間よりも前方位置から車両前後方向に延設されている。尚、合成樹脂製の第1及び第2整流フィン31,41は、フロントバンパ7の成形時に一体成形される。
【0023】
前記フロントバンパ7は、バンパ前面11と、バンパ前面11の上部に設けられるバンパ上面12と、前記バンパ前面11の左右端部に設けられるバンパ側面13,13と、前記バンパ前面11及びバンパ側面13の下部に設けられたバンパ底面14とを一体に有する。
【0024】
また、前記バンパ上面12は、車幅方向(左右方向)のフードエッジ部15と、このフードエッジ部15の左右端部を前記バンパ前面11に連結する縦方向の連結部16,16とを備える。尚、フロントバンパ7は、バンパ上面12部分を別体で金型により成形し、このバンパ上面12をバンパ前面11側と一体に組み立てても良い。
【0025】
図5などに示すように、前記バンパ前面11は、左右方向に長く形成されたバンパ前面中央部17と、このバンパ前面中央部17の車幅方向端部と前記バンパ側面13,13とを連結するバンパ前面傾斜部18,18とを一体に有し、前記バンパ前面中央部17の高さ方向中央に前記開口部8が形成されている。
【0026】
そして、前記バンパ前面中央部17は、前記開口部8の上部分のバンパ前面中央上部17Uと、前記開口部8の下部分のバンパ前面中央下部17Sとからなる。
【0027】
また、図3などに示すように、前記バンパ前面中央上部17Uの前面及びバンパ前面中央下部17Sの前面は、車両前後方向に対して直交する車幅方向で直線状に形成されており、前記バンパ前面中央上部17U及びバンパ前面中央下部17Sの端部と、前記バンパ前面傾斜部18,18との間に、屈曲箇所19U,19U,19S,19Sが設けられ、それらバンパ前面傾斜部18,18は車幅方向外側に後側になるように傾斜している。
【0028】
バンパ前面中央上部17Uの屈曲箇所19U,19Uの位置に対して、車幅方向外側に前記バンパ前面中央下部17Sの屈曲箇所19S,19Sが設けられている。また、図1に示すように、左右の屈曲箇所19S,19Sは、前記タイヤハウス4,4の内壁面4N,4Nの車両前後方向の前方位置に設けられ、屈曲箇所19Sと内壁面4Nとが車両前後方向に並んで配置されている。
【0029】
前記バンパ前面中央下部17Sの下部に、前記バンパ底面14の前側が連続して設けられ、前記バンパ前面中央下部17S,バンパ前面傾斜部18及びバンパ側面13と、前記バンパ底面14との間に凸状の湾曲部14Wが設けられている。
【0030】
前記両側のバンパ前面傾斜部18,18には、フォグランプ21を取り付けるための開口部であるフォグランプ開口部22が形成され、このフォグランプ開口部22にフォグランプ21が取り付けられている。
【0031】
前記バンパ上面12とバンパ前面11との間に、アッパグリル23を取り付けるための開口部であるアッパグリル開口部24が形成されている。
【0032】
図2及び図5に示すように、前記バンパ上面12の左右縁と前記バンパ前面傾斜部18の上縁及びバンパ側面13の上縁とに添って、ヘッドライト25が配置される。また、前記フードエッジ部15の後縁は、車両1のエンジンフード26を閉めた状態で、該エンジンフード26の前端縁26Fが係合し、フードエッジ部15の後方には、エンジンフード26の前端縁26Fの下面を受ける受け部15Aが一体に設けられている。
【0033】
前記バンパ側面13は、その後上端部に、後方側に位置するフェンダ27と連結する連結部13Bが形成されており、その連結部13Bをフェンダ27に連結して、車両1に支持されている。また、前記バンパ側面13の後端には、前輪2L,2Rのタイヤハウス4,4の前側の一部を形成する後縁部13Aが設けられている。
【0034】
図1に示すように、前記フロントバンパ7のバンパ底面14は、車両1の下部の床部材28の前縁に連続して配置され、前記バンパ底面14の下面と床部材28の前縁側下面とが面一で連続する。前記床部材28は車幅方向に渡るように配置され、略平坦な形状、即ちタイヤハウス4,5を除いて急激な凹凸を抑制して緩やかに湾曲するように形成されている。この場合、床部材28は1枚ものでもよいし、複数枚を連続して配置したもので構成してもよい。
【0035】
図3に示すように、前記バンパ底面14の後縁部20は、車幅方向外側の後縁外側部20A,20Aと、車幅方向中央の後縁中央部20Bとの間に、斜めの後縁傾斜部20C,20Cが設けられ、これにより後縁中央部20Bが後縁外側部20A,20Aより前側に位置し、左右の後縁傾斜部20C,20Cは、前記屈曲箇所19U,19Uの後方に位置する。また、前記後縁中央部20Bの中央には、前側に凹んだ後縁中央凹部20Dが形成されている。
【0036】
このように車両前後方向において、前側から後側に、中央の後縁中央凹部20D、後縁中央部20B、左右の後縁外側部20A,20Aが形成されている。尚、後縁中央凹部20Dの底部と、後縁中央部20Bと、左右の後縁外側部20A,20Aは、車幅方向に形成されている。
【0037】
前記左右の後縁傾斜部20C,20Cは車両後方に向かって僅かに間隔が広がるように傾斜している。また、左右の後縁外側部20Aの車幅方向中央側,後縁中央部20B及び後縁中央凹部20Dの底部は、左右方向に形成されている。
【0038】
図1図3などに示すように、前記バンパ底面14の下面には、車幅方向中央側に中央側整流フィンたる第1整流フィン31,31が車幅方向に間隔を置いて突出形成され、それら第1整流フィン31,31は前記後縁中央凹部20Dに近接すると共に、後縁中央凹部20Dを挟んで左右に配置されている。
【0039】
また、前記第1整流フィン31,31を車幅方向から挟むように前記前輪2L,2R側に、外側整流フィンたる第2整流フィン41,41が配置され、これら左右の第2整流フィン41,41は、前記後縁傾斜部20C,20Cの車幅方向外側で前記バンパ底面14の下面に突出形成されている。
【0040】
そして、前記第2整流フィン41,41は、前記屈曲箇所19U,19Uの後方近傍で、前記左右の屈曲箇所19S,19Sの間、即ちバンパ前面中央下部17Sの間に位置する。また、図1に示すように、前記左右の第2整流フィン41,41は、前記左右のタイヤハウス4,4の内壁面4N,4N位置より車幅方向中央側に位置する。
【0041】
図1に示すように、車両1の車幅Wに対して前記バンパ前面中央下部17Sの直線部分の車幅方向の幅WSは2分の1以上、3分の2以下(1/3〜2/3)である。尚、バンパ前面中央下部17Sの直線部分は前記左右の屈曲箇所19S,19Sの間である。幅WSを車幅Wの2分の1以上とし、その幅WSの間で後方に整流フィン31,31,41,41を配置することにより、バンパ前面傾斜部18のように走行風が外側に流れることなく、湾曲部14Wからスムーズに走行風が車両1の下部に流れ込み、この走行風を整流することができるため、整流フィン31,31,41,41よる整流効果に優れたものとなる。
【0042】
さらに、整流フィン31,41の車幅方向中央の間隔については、第2整流フィン41,41の間隔WFが前記左右の屈曲箇所19U,19Uより狭く、隣り合う第1及び第2整流フィン31,41の間隔W2が第1整流フィン31,31の間隔W1より広く、前記間隔W2は前記間隔W1の1.1〜1.3倍程度である。
【0043】
このように間隔W2を間隔W1より多少広くすることにより、広範囲で走行風を集め、その中央で第1整流フィン31,31により前輪2L,2Rの前で整流して車幅方向中央に導くことができる。
【0044】
そして、前記第1及び第2整流フィン31,41は、直進状態の前記前輪2L,2Rの間よりも前方に位置する。即ち、図1に示すように、前輪2L,2Rの前縁を連結した仮想線Kの位置より第1及び第2整流フィン31,41の後部は車両前方側に位置する。尚、前記第1及び第2整流フィン31,41を左右のタイヤハウス4,4の前部より前側とすることが、より好ましい。また、図3に示すように、第1及び第2整流フィン31,31,41,41は車両1の中心線Sに対して対称の位置で線対称に設けられている。
【0045】
図4に示すように、前記第1整流フィン31は、その下面32が車両前後方向において後側が前側より僅かに低くなるように傾斜し、下面32の水平との角度は2〜5度(2度以上、5度以下)程度である。尚、バンパ底面14の下面も前記下面32と略同様に傾斜している。また、下面32の前端とバンパ底面14の下面との間には、前傾斜面33が設けられ、この前傾斜面33は水平に対して45度未満で傾斜している。さらに、前記下面32の後端とバンパ底面14の下面との間には、後傾斜面34が設けられ、この後傾斜面34の水平との角度は、30〜60度程度である。
【0046】
また、第1整流フィン31の下面32は、車両前後方向に長い等脚台形の形状をなし、平面視で左右の壁面35,35の挟角は3〜7度程度である。さらに、図8に示すように、第1整流フィン31は、正面視で上から下に向かって間隔が狭まるテーパー状に形成されている。尚、第1整流フィン31の高さT1は、5〜15mm程度が例示される。
【0047】
図4に示すように、前記第2整流フィン41は、その下面42が車両前後方向において後側が僅かに低くなるように傾斜し、下面42の水平との角度は2〜5度程度であり、前記下面32と同一角度である。また、下面42の前端とバンパ底面14の下面との間には、前傾斜面43が設けられ、この前傾斜面43は水平に対して45度未満で傾斜し、前記前傾斜面33と同一角度である。さらに、前記下面42の後端とバンパ底面14の下面との間には、後傾斜面44が設けられ、この後傾斜面44の水平との角度は、30〜60度程度であり、前記後傾斜面34と同一角度である。
【0048】
そして、第1及び第2整流フィン31,41の後部たる後傾斜面34,44は、前記仮想線Kより車両前方に位置し、且つ後傾斜面44が後傾斜面34より車両後方に位置する。このように後傾斜面44が後傾斜面34より車両後方に位置することにより、第1整流フィン31,31により整流された空気流を、左右の第2整流フィン41,41の内壁面45により車幅方向の中央に集めることができる。
【0049】
また、第2整流フィン41の下面42は、車両前後方向に長い台形形状をなし、左右の第2整流フィン41,41の車幅方向中央側の内壁面45,45は、車両前後方向において前側から後側に向かって間隔が狭まるように形成されている。そして、図7に示すように、前記内壁面45の車両前後方向に対する角度θは、1〜5度、より好ましくは1.5〜4度である。
【0050】
一方、左右の第2整流フィン41,41の車幅方向外側の外壁面46,46は、車両前後方向において前側から後側に向かって間隔が広がるように形成されるか、或は外壁面46,46は、相互に平行で、車両前後方向に形成されている。そして、図7に示すように、外壁面46の車両前後方向に対する角度θSは、前記角度θ以下、好ましくは前記角度θよりも小さく(θ>θS)、且つ0度以上、好ましくは0.5〜4.5度、好ましくは1〜3.5度である。また、図9に示すように、内壁面45,外壁面46同士は、正面視で上から下に向かって間隔が狭まるテーパー状に形成されている。尚、第2整流フィン41の高さT2は、前記第1整流フィン31の高さT1と同じで、5〜15mm程度が例示される。尚、上記範囲で、高さT1と高さT2が異なっていてもよい。
【0051】
この場合、車両1の下部中央の流速を高くするために第2整流フィン41,41の内壁面45,45の角度θを上記のように設定することが好ましく、一方、空気抵抗の面から角度θSは0度以上とし、第2整流フィン41の外壁面46の角度θSが大きいと、前輪2L,2R側への流れを乱す虞があり、後述する数値流体力学による解析と合わせて上記の範囲を採用した。
【0052】
図10図12は走行時の車両下部の数値流体力学による解析結果を示し、図10(B)及び図11は実施例、図10(A)及び図12は比較例である。尚、実施例は比較例の車両1に第1及び第2整流フィン31,31,41,41を設けたものである。図10図11(B)及び図12(B)は車両前後方向と平行な走行風条件で直進走行に相当し、図11(A)及び図12(A)は車両前後方向に対して傾いた斜めの走行風条件で、旋回角度を有する旋回走行に相当する。また、いずれも走行風の流れの流線を示している。尚、整流フィン31,41の高さT1,T2は10mm、内壁面45の角度θを2.5度、外壁面46の角度θSを2度として解析した。
【0053】
図10(A)中、破線51は車両1の中央で走行風が真っ直ぐに流れる領域の後部を示し、図10(B)中、破線52は車両1の中央で走行風が真っ直ぐに流れる領域の後部を示している。このように、車両1の下部で前輪2L,2Rの前方に第1及び第2整流フィン31,31,41,41を設けることにより、図10に示すように、実施例(図10(B))のものは比較例(図10(A))に比べて車両1の中央で走行風が真っ直ぐに流れる領域が後側まで長く形成され、車両1の下部の車幅方向中央における流れが均一で、前輪2L,2R周りの流れの乱れも少ないものとなり、車幅方向中央において走行風の均一な高速領域が得られるため、高速直進安定性に優れたものとなる。
【0054】
また、スリップ角度を有する場合である図11(A)の実施例と図12(A)の比較例とを対比するに、比較例に比べて実施例では流れの乱れが少なく、特に前輪2L,2R周りの流れの乱れが少なく、実施例は旋回性能に優れる。
【0055】
さらに、第1及び第2整流フィン31,41により、前輪2L,2R及び後輪3L,3Rにおけるダウンフォースの変化、車両1の下面における整流効果が得られ、また、車両1の前後方向中央の中心線Sにおける前後バランスの均一化の効果が得られると共に、前後のタイヤの接地変動が少なくなり、トラクション性能の向上にも効果がある。
【0056】
このように本実施例では、請求項1に対応して、車両1の下部に設けられ、車幅方向両側に配置された該車両1の左右の前輪2L,2Rの間よりも前方位置から車両1の前後方向に延設された整流フィンであって、整流フィンは、車両1の前部に取付けられたフロントバンパ7のバンパ底面14に形成され、車両1の車幅方向中央側の中央側整流フィンたる第1整流フィン31,31と、第1整流フィン31,31を車幅方向から挟むように前輪2L,2R側に配置された左右の外側整流フィンたる第2整流フィン41,41とを備え、第2整流フィン41の後部が第1整流フィン31の後部よりも後方に位置し、第1整流フィン31,31及び第2整流フィン41,41の後部が前輪2L,2Rの間よりも前方に位置し、第2整流フィン41,41は車両2の前輪2L,2Rの左右のタイヤハウス4,4の内側に配置されるから、中央側の第1整流フィン31,31により走行風を中央側に集め、加えて、第1整流フィン31の後部よりも後部が後方に位置すると共に第1整流フィン31,31の左右に位置する第2整流フィン41,41により、走行風を中央側に集めることによって、操安性を向上させることができる。
【0057】
このように本実施例では、請求項2に対応して、中央側整流フィンたる第1整流フィン31,31が2カ所設けられているから、第1整流フィン31,31の内側の気流を作ることにより、車幅方向中央部の流速を高くして、高速直進安定性を向上することができる。
【0058】
このように本実施例では、請求項3に対応して、左右の外側整流フィンたる第2整流フィン41,41は、車幅方向中央側の内壁面45,45が車両1の前側から後側に向かって車幅方向中央側に傾斜しているから、車幅方向中央部の流速を高くして、高速直進安定性を向上することができる。このように内壁面45が傾斜することにより、第1整流フィン31,31の左右に位置する第2整流フィン41,41により、効果的に走行風を中央側に集めることができる。
【0059】
このように本実施例では、請求項に対応して、中央側整流フィンたる第1整流フィン31,31及び外側整流フィンたる第2整流フィン41,41の後部が前輪2L,2Rの間よりも前方に位置するから、フロントバンパ7に設けることにより、旋回性能を向上させることができる。
【0060】
上記特許文献1の空気流ガイド構造を車体に装備する場合、前部側床部材と中央床部材にガイド壁を設け、ガイド壁の後部が前輪の後方まで延びるため、車両の下部の前部のみでなく、床部材にもガイド壁を設けるため、装備にコストが掛かるという問題もある。
【0061】
これに対して、フロントバンパ7に第1整流フィン31,31及び第2整流フィン41,41を設けるだけで済むから、床部材28に変更や加工を施す必要がない。この場合、中央側の第1整流フィン31,31により走行風を中央側に集め、加えて、第1整流フィン31の後部よりも後部が後方に位置すると共に第1整流フィン31,31の左右に位置する第2整流フィン41,41により、走行風を中央側に集めることができるため、フィンを長くしなくても、フロントバンパ7だけで所望の整流効果が得られる。
【0062】
以下、実施例上の効果として、第1及び第2整流フィン31,31,41,41の前側には、左右方向のバンパ前面中央下部17S及び湾曲部14Wが位置するから、バンパ前面中央下部17Sから均一に走行風がバンパ底面14へと流れ込む。また、外壁面46の車両前後方向に対する角度θSが内壁面45の角度θより小さいか、或いは外壁面46が車両1の中心線Sと略平行に設けられているから、第2整流フィン41の車幅方向外側の気流を乱すことなく、整流することができる。また、左右の第2整流フィン41,41は、左右のタイヤハウス4,4の内壁面4N,4N位置より車幅方向中央側に位置するから、タイヤハウス4,4の前方に配置した場合に比べて、タイヤハウス4,4へと流れる空気流を乱すことなく、整流してタイヤハウス4側に送ることができると共に、角度θが1〜5度だから、車両1の下部の車幅方向中央側に空気流を集めることができる。また、車幅方向に真っ直ぐなバンパ前面中央下部17Sの後方に整流フィン31,31,41,41を配置したから、バンパ前面傾斜部18のように走行風が外側に流れることなく、湾曲部14Wからスムーズに走行風が車両1の下部に流れ込み、この走行風を整流するため、整流フィン31,31,41,41よる整流効果に優れたものとなる。
【0063】
また、間隔W2を間隔W1より多少広くすることにより、広範囲で走行風を集め、その中央で第1整流フィン31,31により前輪2L,2Rの前で走行風を整流して車両中央に導くことができる。また、第2整流フィン41の後傾斜面44が第1整流フィン31の後傾斜面34より車両後方に位置するから、第1整流フィン31,31により整流された空気流を、左右の第2整流フィン41,41の後に延びた内壁面45により車幅方向の中央に集めることができ、流速の早い部分を車両1の下部の車幅方向中央に形成することができるため、高速直進安定性を向上することができる。また、第1整流フィン31の下面32は、車両前後方向に長い等脚台形の形状をなすから、整流効果が得られる。
【実施例2】
【0064】
図13図14は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。同図に示すように、この例では、第2整流フィン41が中空形状に形成されており、後傾斜面44は設けられていない。また、図示しないが、第1整流フィン31も中空形状に形成されており、後傾斜面34は設けられていない。
【0065】
第2整流フィン41は、板状をなす下板部42Mに前記下面42が設けられ、その下板部42Mの左右両側に板状をなす内壁板部45Mと外壁板部46Mが設けられ、それら内壁板部45Mと外壁板部46Mの外面が前記内壁面45と外壁面46である。
【0066】
第2整流フィン41の前側は、板状の前傾斜板部43Mにより塞がれており、この前傾斜板部43Mの外面が前記前傾斜面43であり、第2整流フィン41の後側には、後部開口部47が設けられている。
【0067】
また、前記内壁板部45Mと外壁板部46Mの内面間は前方から後方に向かって拡大するように形成されている。従って、車両前後方向を型開き方向とする成形型により、フロントバンパ7に整流フィン31,41を容易に一体成形することができる。
【実施例3】
【0068】
図15図23は本発明の実施例3を示し、上記各実施例と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。同図に示すように、この例のフロントバンパ7は、中空形状の第1整流フィン31及び第2整流フィン41を備えるものである。
【0069】
図15及び図16に示すように、第1整流フィン31は、板状をなす下板部32Mに前記下面32が設けられ、その下板部32Mの左右両側に板状をなす壁板部35M,35Mが設けられ、それら壁板部35M,35Mの外面が前記壁面35,35である。
【0070】
第1整流フィン31の前側は、板状の前傾斜板部33Mにより塞がれており、この前傾斜板部33Mの外面が前記前傾斜面33であり、第1整流フィン31の後側には、後部開口部37が設けられている。
【0071】
また、左右の前記壁板部35M,35Mの内面間は前方から後方に向かって拡大するように形成されている。従って、車両前後方向を型開き方向とする成形型により、フロントバンパ7に整流フィン31,41を容易に一体成形することができる。
【0072】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、第2整流フィンの外壁面の角度θSは実施例に限定されることなく、適宜選定可能である。また、整流フィンの高さは実施例に限定されず、適宜選定可能である。さらに、実施例では、整流フィンをフロントバンパに一体成形したが、別体の整流フィンをフロントバンパにネジなどの取付手段により取り付けてもよい。また、第1整流フィンは、1個又は3個以上でもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 車両
2L,2R 前輪
7 フロントバンパ
11 バンパ前面
31 第1整流フィン(中央側整流フィン)
41 第2整流フィン(外側整流フィン)
45 内壁面
図1
図2
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