(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6670356
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】聴音装置
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20200309BHJP
H04R 1/00 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
H04R25/00 F
H04R1/00 317
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-181366(P2018-181366)
(22)【出願日】2018年9月27日
【審査請求日】2018年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】516040866
【氏名又は名称】BoCo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】謝 端明
【審査官】
秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/072107(WO,A1)
【文献】
特開2004−015716(JP,A)
【文献】
実開昭51−101134(JP,U)
【文献】
特開2000−175280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 25/00
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内において骨伝導を利用した聴音装置であって、
音響電気信号が入力される入力部と、
音響電気信号を振動に変換して振動を出力する振動部と、
前記振動部を収容する筐体と、
前記筐体の端部近傍に配置され、前記振動部の振動が伝達される噛み部と、
前記振動部の動作を操作する操作部と、
を具備し、
前記噛み部と前記筐体との間には、制振材が配置され、
前記入力部は、前記筐体に対して脱着可能な有線のマイク、又は、有線のマイクとの接続部であり、前記マイクで集音した音響を、前記振動部で振動に変換可能であり、
前記筐体が、前記振動部を収容する内部筐体と、前記内部筐体を覆う外部筐体との2重構造であり、前記内部筐体と前記外部筐体の間には、制振材が配置され、前記内部筐体と前記外部筐体との間の振動の伝達を抑制可能であり、
前記噛み部を歯で噛むことで、骨伝導により聴音可能であることを特徴とする聴音装置。
【請求項2】
前記入力部は、前記筐体に対して脱着可能な有線の前記マイクであり、前記筐体から線を引き出して使用することができることを特徴とする請求項1に記載の聴音装置。
【請求項3】
前記振動部は、振動板およびハウジングを備え、前記振動板は前記内部筐体に固定され、前記ハウジングは前記内部筐体と隙間をあけて配置され、前記ハウジングと前記内部筐体の隙間には、弾性部材が配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の聴音装置。
【請求項4】
前記噛み部は、前記筐体よりも細く、硬質材で構成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の聴音装置。
【請求項5】
前記噛み部は、前記筐体から脱着可能であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の聴音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内から骨に振動を与えることで音を認識させる骨伝導を利用した聴音装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽や会話を聴く手段として、ヘッドホンやイヤホンなどのような装置(以下、聴音装置という。)が広く使用されてきている。このような聴音装置としては、空気振動を利用したものと骨伝導を利用したものとがある。空気振動を利用したものは、電気信号として入力された音源を空気振動に変換して鼓膜に伝えて振動させ、鼓膜の振動が耳の奥の中耳を通って、脳に音の情報が伝達され認識される仕組みを利用している。
【0003】
一方、骨伝導を利用した聴音装置は、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換し、その振動を適切な位置から骨に与えて骨に振動を伝え、その振動により伝わる骨伝導音で音を認識させるものである。この骨伝導を利用した聴音装置は、ヘッドホンやイヤホンのように耳孔に挿入して使用する必要がなく、耳には周囲の音が遮蔽されることなく入ってくるので、装着していても安全である。また、鼓膜の振動を利用しないことから、難聴の人でも音を認識することができ、補聴器等への利用も進められている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−62199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような骨伝導を利用した聴音装置は、通常、こめかみや乳様突起と呼ばれる部位に振動部を接触させて聴音するものである。したがって、聴音装置を頭部等へ装着する必要がある。
【0006】
しかし、使用者の中には、このような聴音装置を常に装着することに抵抗を感じる者もおり、使用したいときのみ装着したいという要望がある。しかし、そのたびに、聴音装置の脱着を行うのは面倒である。
【0007】
また、一部の使用者では、従来の頭蓋骨部への骨伝導を利用した聴音装置では聞き取りにくい場合があり、より小さなパワーでより大きな音量を得ることが可能な聴音装置が求められている。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、使用したい時に直ちに使用することが可能であり、振動を効率良く骨に伝達することが可能な骨伝導を利用した聴音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明は、口腔内において骨伝導を利用した聴音装置であって、音響電気信号が入力される入力部と、音響電気信号を振動に変換して振動を出力する振動部と、前記振動部を収容する筐体と、前記筐体の端部近傍に配置され、前記振動部の振動が伝達される噛み部と、前記振動部の動作を操作する操作部と、を具備し、
前記噛み部と前記筐体との間には、制振材が配置され、前記入力部は、前記筐体に対して脱着可能な有線のマイク、又は、有線のマイクとの接続部であり、前記マイクで集音した音響を、前記振動部で振動に変換可能であり、前記筐体が、前記振動部を収容する内部筐体と、前記内部筐体を覆う外部筐体との2重構造であり、前記内部筐体と前記外部筐体の間には、制振材が配置され、前記内部筐体と前記外部筐体との間の振動の伝達を抑制可能であり、前記噛み部を歯で噛むことで、骨伝導により聴音可能であることを特徴とする聴音装置である。
【0010】
前記入力部は、前記筐体に
対して脱着可能な有線の前記マイクであり、
前記筐体から線を引き出して使用することができてもよい。
【0011】
前記振動部は、振動板およびハウジングを備え、前記振動板は前記内部筐体に固定され、前記ハウジングは前記内部筐体と隙間をあけて配置され、前記ハウジングと前記内部筐体の隙間には、弾性部材が配置されてもよい。
【0013】
前記噛み部は、前記筐体よりも細く、硬質材で構成されることが望ましい。
【0014】
前記噛み部は、前記筐体から脱着可能であることが望ましい。
【0016】
本発明によれば、噛み部を歯で噛んで聴音装置を保持することで、必要なときのみ噛み部を噛めばよいため、常に聴音装置を頭部等に装着する必要がない。また、歯を介して、振動を効率良く骨に伝達することができるため、より小さなパワーで大きな音量を得ることができる。このため、従来の頭蓋骨への骨伝導を利用した聴音装置では聞き取りにくかった使用者であっても、容易に聴音可能である。
【0017】
また、聴音装置にマイクを搭載することで、別途のマイクを接続することなく、マイクで音を集音することができる。
【0018】
また、聴音装置にジャックなどの接続部を配置することで、一般的に用いられている市販のマイクを接続して使用することもできる。
【0019】
また、聴音装置に受信部を内蔵することで、他のマイク等からの音響電気信号を無線で受信することもできる。
【0020】
また、噛み部を硬質材で構成することで、振動を効率良く歯に伝達することができる。
【0021】
また、噛み部を筐体から脱着可能とすることで、使用後の洗浄や、歯型などのついた噛み部の交換等を容易に行うことができる。
【0022】
また、振動部を収容する内部筐体と、内部筐体を覆う外部筐体の2重構造とすることで、振動部の振動が筐体の外部に伝達することを抑制することができる。
【0023】
本発明によれば、使用したい時に直ちに使用することが可能であり、振動を効率良く骨に伝達することが可能な骨伝導を利用した聴音装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図1のA−A線断面図であって、聴音装置1の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、聴音装置1の斜視図、
図2は、聴音装置1の断面図であって、
図1のA−A線断面図である。聴音装置1は、主に、外部筐体3a、内部筐体3b、噛み部5、操作部7、マイク9、振動部10等から構成される。なお、
図2において、バッテリー等の図示を省略する。
【0026】
聴音装置1の筐体は、振動部10等を収容する内部筐体3bと、内部筐体3bを覆う外部筐体3aとの2重構造である。内部筐体3bと外部筐体3aとの間には、例えば制振材21等が配置され、内部筐体3bから外部筐体3aへの振動の伝達が抑制可能である。なお、以下の説明において、内部筐体3bと外部筐体3aとを合わせて、単に筐体ということがある。
【0027】
内部筐体3bの内部には、振動部10が収容される。振動部10は、主に、ハウジング13、振動出力部11、振動板15等からなる。
【0028】
ハウジング13の内部には、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換して振動する振動体が収容される。なお、音響電気信号を振動に変換するとは、外部から入力された音響電気信号を機械振動に変換することであり、例えば、音響電気信号によって振動板15を振動させることで、音響電気信号を骨に伝達する機械振動に変換する。なお、本発明においては、振動体における振動方式は、特に限定されるものではなく、音響電気信号を機械振動に変換できればよく、圧電式、電磁式、超磁歪など、従来から用いられている方法を採用することができる。
【0029】
振動部10は、内部筐体3bに固定される。例えば、振動板15を内部筐体3bに対してねじ止めすることで、振動部10が内部筐体3bに固定される。この際、振動部10のハウジング13等が、内部筐体3bに直接接触せず、隙間をあけて配置される。なお、この隙間に弾性部材を配置してもよい。
【0030】
振動部10で得られた振動は、振動出力部11から噛み部5に伝達される。すなわち、噛み部5の一端は、振動出力部11と接触する。なお、噛み部5は、例えば硬質樹脂などの硬質材で形成される。例えば、噛み部5は、口腔23内で、唾液等で変質や変形するものではなく、歯で噛んだ際に、容易に変形しないものであることが望ましい。
【0031】
噛み部5の他端は、外部筐体3aの端部から外部に露出する。すなわち、噛み部5は、外部筐体3aの端部近傍に配置される。なお、噛み部5と筐体との間には、必要に応じて制振材21が配置される。
【0032】
また、噛み部5は、内部筐体3bおよび外部筐体3aよりも細い。また、外部筐体3aと噛み部5の中心は、略一致する。このため、聴音装置1を机上に置いた際にも、噛み部5が机から浮いた状態となり、机等と噛み部5とが接触することがない。
【0033】
図2に示すように、噛み部5は、筐体に対して脱着可能であることが望ましい。例えば、振動出力部11に対して、噛み部5の端部を嵌合させることで、必要に応じて、容易に噛み部5を脱着することができる。
【0034】
筐体には、マイク9が設けられる。マイク9は、音響電気信号が入力される入力部として機能する。すなわち、マイク9で集音した音響を、振動部10で機械振動に変換可能である。マイク9は、例えばケーブル19によって制御部17を介して振動部10に接続される。なお、図示した例では、ケーブル19は、内部筐体3b内に収容する例を示すが、ケーブル19の配置は特に限定されない。
【0035】
なお、制御部17は、振動部10の動作を制御するもので、操作部7と接続される。操作部7の一部は外部筐体3aの外部に露出し、使用者は操作部7を操作することができる。操作部7は、振動部10の動作を操作するもので、例えば、操作部7によって電源やボリューム等を操作することができる。
【0036】
次に、聴音装置1の使用方法について説明する。聴音装置1は、口腔23内において骨伝導を利用したものである。噛み部5を上歯27と下歯25とで噛むことで、歯を介して骨伝導により聴音が可能である。この際、必要に応じて、マイク9を筐体から引き出して、相手側に向けて配置してもよい。マイク9を筐体から離して配置することで、ハウリング等を抑制することができる。
【0037】
以上、本実施の形態によれば、使用者は、使用したい時だけ聴音装置1の噛み部5を噛むだけで、直ちに、マイク9で集音した音声を、骨伝導を利用して聞くことができる。このため、常時聴音装置1を頭部等に装着する必要がない。また、歯を介して骨伝導を行うため、皮膚を介して骨伝導を行う場合よりも効率よく振動を骨に伝達することができる。
【0038】
また、噛み部5は、脱着が可能であるため、使用後の洗浄や、噛み部5の交換等が容易である。また、噛み部5のみが収容可能なケースを用いれば、噛み部5をコンパクトに清潔に保管可能であり、使用時にだけ噛み部5を装着することもできる。
【0039】
また、噛み部5が硬質材で構成されるため、振動部10の振動を効率よく歯に伝えることができる。また、噛み部5の径が外部筐体3aの径よりも小さいため、聴音装置1を机上に置いた際にも、噛み部5が机等と接触することを防止することができる。
【0040】
なお、噛み部5の形態は、振動部10との接触部から先端に行くにつれて急激な断面形状変化部がなく、断面積が長手方向で略同一または、断面積が先端に行くにつれてやや小さくなるものが望ましい。断面積の急激な変化部や、先端側により大きなマスが存在すると、噛み部5の共振や減衰の問題が生じるため望ましくない。したがって、噛み部5は、全長にわたっておおむね同一の材質であって外径変化の小さなものであることが望ましい。
【0041】
また、筐体が内部筐体3bと外部筐体3aの2重構造であるため、振動部10の振動が外部筐体3aに伝達することを抑制することができる。特に、内部筐体3bと外部筐体3aとの間に制振材21を配置することで、効率よく内部筐体3bから外部筐体3aへの振動の伝達を抑制することができる。
【0042】
また、マイク9が有線で振動部10と接続され、マイク9を筐体から脱着可能とすることで、使用時にはマイク9を話し相手側に向けて配置することができ、効率よく音声を集音することができるとともに、筐体の振動によるハウリング等を抑制することができる。
【0043】
次に、第2の実施形態について説明する。
図4は、聴音装置1aを示す断面図である。なお、以下の説明において、聴音装置1と同様の機能を奏する構成については、
図2と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
聴音装置1aは、聴音装置1とほぼ同様の構成であるが、音声の入力部が異なる。聴音装置1aの入力部は、マイク9からの音響電気信号を無線で受信する受信部29である。受信部29は、無線(例えばBluetooth(登録商標))などの近距離無線通信を行うことができる。
【0045】
筐体に対して脱着可能なマイク9で集音した音響情報は、マイク9内の送信部で受信部29へ送信され、受信部29で受信した音響データは振動部10で機械的な振動に変換可能である。
【0046】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、マイク9から振動部10への音響データの伝達は、有線であってもよく無線であってもよい。
【0047】
また、
図5は、第3の実施形態にかかる聴音装置1bを示す断面図である。聴音装置1bは、聴音装置1とほぼ同様の構成であるが、筐体に設けられる入力部が接続部31である点で異なる。
【0048】
接続部31には、例えば市販のコネクタ33を有するマイク9を脱着可能である。接続部31にマイク9を接続することで、マイク9で集音した音響を、振動部10で機械的な振動に変換可能である。
【0049】
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、振動部10への音声情報の入力方法は特に限定されない。
【0050】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
例えば、筐体は必ずしも2重構造でなくてもよい。また、操作部7及び入力部は、制御部17を介して振動部10と接続したが、振動部10の内部に制御機能を持たせてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1、1a、1b………聴音装置
3a………外部筐体
3b………内部筐体
5………噛み部
7………操作部
9………マイク
10………振動部
11………振動出力部
13………ハウジング
15………振動板
17………制御部
19………ケーブル
21………制振材
23………口腔
25………下歯
27………上歯
29………受信部
31………接続部
33………コネクタ
【要約】
【課題】 使用したい時に直ちに使用することが可能であり、振動を効率良く骨に伝達することが可能な骨伝導を利用した聴音装置を提供する。
【解決手段】 聴音装置1の筐体は、振動部10等を収容する内部筐体3bと、内部筐体3bを覆う外部筐体3aとの2重構造である。内部筐体3bの内部には、電気信号として入力された音響信号を機械的な振動に変換して振動する振動部10が収容される。振動部10で得られた振動は、振動出力部11から噛み部5に伝達される。すなわち、噛み部5の一端は、振動出力部11と接触する。なお、噛み部5は、例えば硬質樹脂などの硬質材で形成される。噛み部5の他端は、外部筐体3aの端部から外部に露出する。すなわち、噛み部5は、外部筐体3aの端部近傍に配置される。
【選択図】
図2