(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保護膜形成フィルムおよび前記保護膜形成フィルムから形成された保護膜の少なくとも一方は、測定温度0℃で測定された破断応力(MPa)が1MPa以上である、請求項1に記載の保護膜形成フィルム。
前記保護膜形成フィルムおよび前記保護膜形成フィルムから形成された保護膜の少なくとも一方は、測定温度0℃で測定された破断ひずみ(単位:%)は、0.5%以上である、請求項1又は2に記載の保護膜形成フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
1.保護膜形成フィルム
本実施形態に係る保護膜形成フィルムは、ワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物に保護膜を形成するためのものである。この保護膜は、保護膜形成フィルム、好ましくは硬化した保護膜形成フィルムから構成される。ワークとしては半導体ウエハが例示され、当該ワークを加工して得られる加工物としては半導体チップが例示されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、ワークが半導体ウエハの場合、保護膜は、半導体ウエハの裏面側(バンプ等の電極が形成されていない側)に形成される。
【0026】
(1)物性
(1−1)破断インデックス
本実施形態に係る保護膜形成フィルムまたは保護膜形成フィルムから形成された保護膜(本明細書において、保護膜形成フィルムおよび保護膜を総称して「保護膜等」ともいう。)は、測定温度0℃で測定された破断応力(MPa)と測定温度0℃で測定された破断ひずみ(単位:%)との積(本明細書において、この積を「破断インデックス」ともいう。)が、1MPa・%以上250MPa・%以下である。
【0027】
本実施形態に係る保護膜等の測定温度0℃で測定された破断応力(MPa)は、1MPa以上100MPa以下であることがより好ましく、5MPa以上45MPa以下であることが特に好ましい。
【0028】
本実施形態に係る保護膜等の測定温度0℃で測定された破断ひずみ(単位:%)は、0.5%以上100%以下であることがより好ましく、2%以上25%以下であることが特に好ましい。
【0029】
エキスパンド工程により割断される対象が保護膜形成フィルムである場合には、保護膜形成フィルムの破断インデックスが上記の条件を満たせばよい。保護膜形成フィルムから形成された保護膜が割断対象である場合には、保護膜の破断インデックスが上記の条件を満たせばよい。すなわち、ワークが分割される際にワークとともに分割される対象としての保護膜形成フィルムまたは保護膜が、破断インデックスに関して上記の条件を満たせばよい。したがって、保護膜形成フィルムおよび保護膜形成フィルムから形成された保護膜の双方について、上記の破断インデックスの条件を満たす必要はない。双方が上記の破断インデックスの条件を満たしていても構わない。
【0030】
保護膜等の破断ひずみが短ければ分割し易いが、保護膜等の破断ひずみが小さくても、その破断応力が過度に大きい場合には、エキスパンド工程により保護膜等を伸長させても、保護膜等が均一に伸びず、破断しないことがある。一方、保護膜等の破断応力が小さくても、その破断ひずみが過度に大きい場合には、エキスパンド工程において保護膜等は均一に伸びるものの、伸びても破断に至らないことがある。したがって、保護膜等の破断インデックスが適切な範囲内にあれば、バランス良く保護膜等を割断することが可能となる。
【0031】
保護膜等の破断インデックスが250MPa・%超の場合には、エキスパンド工程によって保護膜等を分割できなくなるおそれがある。保護膜等の破断インデックスが1MPa・%未満の場合には、目的の分割ライン以外の部分でも保護膜形成層が破断してしまうおそれがある。本実施形態に係る保護膜等の破断インデックスは、2MPa・%以上220MPa・%以下であることがより好ましく、3MPa・%以上200MPa・%以下であることが特に好ましい。
【0032】
(1−2)光線透過率
本実施形態に係る保護膜形成フィルムは、波長1064nmの光線透過率が30%以上であることが好ましい。本明細書における光線透過率は、積分球を使用して測定した値とし、測定器具としては分光光度計を使用する。
【0033】
半導体ウエハなどのワークの内部に改質層を形成した後、保護膜形成フィルムを貼付する場合には、保護膜形成フィルムの波長1064nmの光線透過率は限定されない。
【0034】
半導体ウエハなどのワークに保護膜形成フィルムを貼付した後に、ワーク内に改質層を形成しようとする場合には、保護膜形成フィルムの波長1064nmでの光線透過率は30%以上99%以下であることが望ましく、40%以上98%以下であることが更に望ましく、45%以上97%以下であることが特に望ましい。上記の場合において、半導体ウエハの裏面などワークの一の面に貼付された保護膜等の波長1064nmでの光線透過率が30%以下であると、レーザー照射によってワークの内部に改質層を形成することが容易でなくなる。保護膜等の波長1064nmでの光線透過率が99%以上の場合には、ワーク内に改質層を形成するためのレーザー照射を行う際に保護膜が貼付されているか否かの装置認識が困難になるおそれがある。
【0035】
なお、保護膜形成フィルムが未硬化の硬化性接着剤からなる場合、当該保護膜形成フィルムの光線透過率は、硬化前であっても硬化後であってもほとんど変化しない。したがって、硬化前の保護膜形成フィルムの波長1064nmの光線透過率が30%以上であれば、保護膜形成フィルムが硬化して得られる保護膜の波長1064nmの光線透過率も30%以上となる。
【0036】
保護膜形成フィルムとダイシングシートとを別々に貼付後、または保護膜形成フィルム兼ダイシングシートを貼付後に、ワーク内に改質層を形成することを可能とするには、保護膜等単体ではなく、保護膜等とダイシングシートとの積層体について、波長1064nmでの光線透過率が30%以上99%以下であることが望ましく、45%以上98%以下であることがより望ましく、55%以上97%以下であることが特に望ましい。
【0037】
ここで、本実施形態に係る保護膜形成フィルムは、単層からなるものであってもよいし、複数層からなるものであってもよいが、光線透過率の制御の容易性および製造コストの面から単層からなることが好ましい。保護膜形成フィルムが複数層からなる場合には、光線透過率の制御の容易性の面から、当該複数層全体として上記の光線透過率を満たすことが好ましい。
【0038】
(2)材料
保護膜形成フィルムは、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。この場合には、保護膜形成フィルムにワークを重ね合わせた後、保護膜形成フィルムを硬化させることにより、保護膜をワークに強固に接着することができ、耐久性を有する保護膜をチップなどの分割物に積層することができる。
【0039】
保護膜形成フィルムは、常温で粘着性を有するか、加熱により粘着性を発揮することが好ましい。これにより、上記のように保護膜形成フィルムにワークを重ね合わせるときに両者を貼合させることができる。したがって、保護膜形成フィルムを硬化させる前に位置決めを確実に行うことができる。
【0040】
上記のような特性を有する保護膜形成フィルムを構成する硬化性接着剤は、硬化性成分とバインダーポリマー成分とを含有することが好ましい。硬化性成分としては、熱硬化性成分、エネルギー線硬化性成分、またはこれらの混合物を用いることができるが、熱硬化性成分を用いることが特に好ましい。
【0041】
熱硬化性成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0042】
エポキシ樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な被膜を形成する性質を有する。このようなエポキシ樹脂としては、従来より公知の種々のエポキシ樹脂が用いられるが、通常は、分子量300〜2000程度のものが好ましく、特に分子量300〜500のものが好ましい。さらには、分子量330〜400の常態で液状のエポキシ樹脂と、分子量400〜2500、特に500〜2000の常温で固体のエポキシ樹脂とをブレンドした形で用いることが好ましい。また、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、50〜5000g/eqであることが好ましい。
【0043】
このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。
【0044】
これらの中でも、ビスフェノール系グリシジル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。これらエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
エポキシ樹脂を用いる場合には、助剤として、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤を併用することが好ましい。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤とは、室温ではエポキシ樹脂と反応せず、ある温度以上の加熱により活性化し、エポキシ樹脂と反応するタイプの硬化剤である。熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の活性化方法には、加熱による化学反応で活性種(アニオン、カチオン)を生成する方法;室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法;モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤で高温で溶出して硬化反応を開始する方法;マイクロカプセルによる方法等が存在する。
【0046】
熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤の具体例としては、各種オニウム塩や、二塩基酸ジヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、アミンアダクト硬化剤、イミダゾール化合物等の高融点活性水素化合物等を挙げることができる。これら熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。上記のような熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、特に好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.3〜5重量部の割合で用いられる。
【0047】
フェノール系樹脂としては、アルキルフェノール、多価フェノール、ナフトール等のフェノール類とアルデヒド類との縮合物などが特に制限されることなく用いられる。具体的には、フェノールノボラック樹脂、o−クレゾールノボラック樹脂、p-クレゾールノボラック樹脂、t−ブチルフェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンクレゾール樹脂、ポリパラビニルフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、あるいはこれらの変性物等が用いられる。
【0048】
これらのフェノール系樹脂に含まれるフェノール性水酸基は、上記エポキシ樹脂のエポキシ基と加熱により容易に付加反応して、耐衝撃性の高い硬化物を形成することができる。このため、エポキシ樹脂とフェノール系樹脂とを併用してもよい。
【0049】
バインダーポリマー成分は、保護膜形成フィルムに適度なタックを与え、保護膜形成用シート3の操作性を向上することができる。バインダーポリマーの重量平均分子量は、通常は5万〜200万、好ましくは10万〜150万、特に好ましくは20万〜100万の範囲にある。分子量が低過ぎると、保護膜形成フィルムのフィルム形成が不十分となり、高過ぎると他の成分との相溶性が悪くなり、結果として均一なフィルム形成が妨げられる。このようなバインダーポリマーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系ポリマー等が用いられ、特にアクリル系ポリマーが好ましく用いられる。
【0050】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと(メタ)アクリル酸誘導体から導かれる構成単位とからなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。ここで(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が用いられる。また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0051】
上記の中でもメタクリル酸グリシジル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーにグリシジル基を導入すると、前述した熱硬化性成分としてのエポキシ樹脂との相溶性が向上し、保護膜形成フィルムの硬化後のガラス転移温度(Tg)が高くなり、耐熱性が向上する。また、上記の中でもアクリル酸ヒドロキシエチル等を構成単位として用いてアクリル系ポリマーに水酸基を導入すると、ワークへの密着性や粘着物性をコントロールすることができる。
【0052】
バインダーポリマーとしてアクリル系ポリマーを使用した場合における当該ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは10万以上であり、特に好ましくは15万〜100万である。アクリル系ポリマーのガラス転移温度は通常20℃以下、好ましくは−70〜0℃程度であり、常温(23℃)においては粘着性を有する。
【0053】
熱硬化性成分とバインダーポリマー成分との配合比率は、バインダーポリマー成分100重量部に対して、熱硬化性成分を、好ましくは50〜1500重量部、特に好ましくは70〜1000重量部、さらに好ましくは80〜800重量部配合することが好ましい。このような割合で熱硬化性成分とバインダーポリマー成分とを配合すると、硬化前の状態および硬化後の状態の少なくとも一方において前述の破断インデックスの条件を満たしつつ、硬化前には適度なタックを示し、貼付作業を安定して行うことができ、また硬化後には、被膜強度に優れた保護膜が得られる。
【0054】
保護膜形成フィルムは、着色剤および/またはフィラーを含有することが好ましい。保護膜形成フィルムがフィラーを含有する場合には、フィラーの種類や配合量を調整することにより、保護膜等が前述の破断インデックスの条件を満たすようにすることが容易となる。着色剤およびフィラーの両者を含有する場合には、波長1064nmの光線透過率を前述した範囲に制御することが容易となる。また、保護膜形成フィルムがフィラーを含有することにより、保護膜の硬度を高く維持することができるとともに、耐湿性を向上させることができる。さらには、保護膜形成フィルムがフィラーを含有することにより、保護膜の熱膨張係数を半導体ウエハなどのワークの熱膨張係数に近づけることができ、これによって加工途中のワークの反りを低減することができる。
【0055】
着色剤としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料など公知のものを使用することができるが、光線透過率の制御性を高める観点から、着色剤は有機系の着色剤を含有することが好ましい。着色剤の化学的安定性(具体的には、溶出しにくさ、色移りの生じにくさ、経時変化の少なさが例示される。)を高める観点から、着色剤は顔料からなることが好ましい。したがって、本実施形態に係る保護膜形成フィルムが含有する着色剤は、有機系顔料からなることが好ましい。
【0056】
有機系の着色剤である有機系顔料および有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素およびスレン系色等が挙げられる。
【0057】
有機系の着色剤は、1種類の材料から構成されていてもよいし、複数種類の材料から構成されていてもよい。波長1064nmの光線透過率を30%以上とすることを容易とする観点から、本実施形態に係る保護膜形成フィルムが含有する着色剤は複数種類の材料から構成されていることが好ましい。
【0058】
例えば、黄色系の顔料であるイソインドリノン系色素、青色系の顔料であるフタロシアニン系色素、および赤色系の顔料であるジケトピロロピロールを適切な比率で配合すれば、保護膜等の波長1064nmの光線透過率を30%以上とすることを容易に実現可能である。
【0059】
無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0060】
本実施形態に係る保護膜形成フィルム中における着色剤は、有機系の着色剤および無機系の着色剤から構成されていてもよい。
【0061】
保護膜形成フィルム中における着色剤の配合量は、保護膜形成フィルムの厚さも考慮しつつ、保護膜形成フィルムの波長1064nmの光線透過率が30%以上となるように適宜設定することが好ましい。保護膜形成フィルム中における着色剤の配合量が過度に高い場合には、保護膜形成フィルムの他の物性、例えばワークへの接着性が低下する傾向がみられる場合もあるため、この点も考慮して、上記の配合量を設定することが好ましい。
【0062】
着色剤の平均粒径は限定されない。上記の保護膜形成フィルムの波長1064nmの光線透過率が30%以上となるように設定されることが好ましい。着色剤の平均粒径が過度に大きい場合には、波長によらず光線透過率を高めにくくなる傾向がみられることがある。着色剤の平均粒径が過度に小さい場合には、そのような着色剤の入手が困難となったり取扱い性が低下したりするといった副次的な問題が生じる可能性が高まる。したがって、着色剤の平均粒径は、1〜500nmであることが好ましく、特に3〜100nmであることが好ましく、さらには5〜50nmであることが好ましい。なお、本明細書における着色剤の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,ナノトラックWave−UT151)を使用して、動的光散乱法により測定した値とする。
【0063】
フィラーとしては、結晶シリカ、溶融シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラスバルーン等の無機フィラーが挙げられる。中でもシリカが好ましく、合成シリカがより好ましく、特に半導体装置の誤作動の要因となるα線の線源を極力除去したタイプの合成シリカが最適である。フィラーの形状としては、球形、針状、不定形等が挙げられるが、球形であることが好ましく、特に真球形であることが好ましい。フィラーが球形または真球形であると、光線の乱反射が生じ難く、保護膜形成フィルムの光線透過率のスペクトルのプロファイルの制御が容易となる。
【0064】
また、保護膜形成フィルムに添加するフィラーとしては、上記無機フィラーの他にも、機能性のフィラーが配合されていてもよい。機能性のフィラーとしては、例えば、ダイボンド後の導電性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、セラミック、またはニッケル、アルミニウム等を銀で被覆した導電性フィラーや、熱伝導性の付与を目的とした、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、シリコン、ゲルマニウム等の金属材料やそれらの合金等の熱伝導性フィラーなどが挙げられる。
【0065】
フィラー(特にシリカフィラー)の平均粒径は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜3μmであることがより好ましく、特に0.03〜2μmであることが好ましく、さらには0.05〜1μmであることが好ましい。フィラーの平均粒径が0.01μm以上であると、半導体チップ等における研削痕が目視で見えないように、波長550nmの光線透過率を20%以下に制御し易い。一方、フィラーの平均粒径が10μmを超えると、保護膜形成フィルムの表面状態が悪くなるおそれがある。また、フィラーの平均粒径が3μmを超えると、赤外線の乱反射により、保護膜形成フィルムの光線透過率のスペクトルのプロファイルを制御しにくくなる場合がある。なお、本明細書におけるフィラーの1μm未満の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,ナノトラックWave−UT151)を使用して、動的光散乱法により測定した値とする。また、フィラーの1μm以上の平均粒径は、粒度分布測定装置(日機装社製,マイクロトラックMT3000II)を使用して、レーザー回折・散乱法により測定した値とする。
【0066】
破断インデックスについての前述の条件を満たすことを容易とする観点から、保護膜形成フィルム中におけるフィラー(特にシリカフィラー)の配合量は、10〜80質量%であることが好ましく、特に20〜70質量%であることが好ましく、さらには30〜65質量%であることが好ましい。
【0067】
保護膜形成フィルムは、カップリング剤を含有してもよい。カップリング剤を含有することにより、保護膜形成フィルムの硬化後において、保護膜の耐熱性を損なわずに、保護膜とワークとの接着性・密着性を向上させることができるとともに、耐水性(耐湿熱性)を向上させることができる。カップリング剤としては、その汎用性とコストメリットなどからシランカップリング剤が好ましい。
【0068】
シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種を単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0069】
保護膜形成フィルムは、硬化前の凝集力を調節するために、有機多価イソシアナート化合物、有機多価イミン化合物、有機金属キレート化合物等の架橋剤を含有してもよい。また、保護膜形成フィルムは、静電気を抑制し、チップの信頼性を向上させるために、帯電防止剤を含有してもよい。さらに、保護膜形成フィルムは、保護膜の難燃性能を高め、パッケージとしての信頼性を向上させるために、リン酸化合物、ブロム化合物、リン系化合物等の難燃剤を含有してもよい。
【0070】
保護膜形成フィルムの厚さは、当該保護膜形成フィルムから形成された保護膜としての機能を効果的に発揮させるために、3〜300μmであることが好ましく、特に5〜200μmであることが好ましく、さらには7〜100μmであることが好ましい。
【0071】
2.保護膜形成用シート2
図1は本発明の一実施形態に係る保護膜形成用シートの断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用シート2は、保護膜形成フィルム1と、保護膜形成フィルム1の一方の面(
図1では下側の面)に積層された剥離シート21とを備えて構成される。ただし、剥離シート21は、保護膜形成用シート2の使用時に剥離されるものである。
【0072】
剥離シート21は、保護膜形成用シート2が使用されるまでの間、保護膜形成フィルム1を保護するものであり、必ずしもなくてもよい。剥離シート21の構成は任意であり、フィルム自体が保護膜形成フィルム1に対し剥離性を有するプラスチックフィルム、およびプラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができるが、これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。剥離シート21の厚さについては特に制限はないが、通常20〜250μm程度である。
【0073】
上記のような剥離シート21は、保護膜形成フィルム1の他方の面(
図1では上側の面)にも積層されてもよい。この場合は、一方の剥離シート21の剥離力を大きくして重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シート21の剥離力を小さくして軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0074】
本実施形態に係る保護膜形成用シート2を製造するには、剥離シート21の剥離面(剥離性を有する面;通常は剥離処理が施された面であるが、これに限定されない)に、保護膜形成フィルム1を形成する。具体的には、保護膜形成フィルム1を構成する硬化性接着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する保護膜形成フィルム用の塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって剥離シート21の剥離面に塗布して乾燥させて、保護膜形成フィルム1を形成する。
【0075】
本実施形態に係る保護膜形成用シート2を用いて、一例として、ワークとしての半導体ウエハから、加工物としての保護膜が積層されたチップを製造する方法を以下に説明する。最初に、表面に回路が形成され、バックグラインド加工された半導体ウエハの裏面に、保護膜形成用シート2の保護膜形成フィルム1を貼付する。このとき、所望により保護膜形成フィルム1を加熱して、粘着性を発揮させてもよい。
【0076】
次いで、保護膜形成フィルム1から剥離シート21を剥離する。その後、保護膜形成フィルム1を硬化させて保護膜を形成し、保護膜が積層された半導体ウエハを得る。保護膜形成フィルム1が熱硬化性接着剤の場合には、保護膜形成フィルム1を所定温度で適切な時間加熱すればよい。なお、保護膜形成フィルム1の硬化は、ダイシング工程後に行ってもよい。
【0077】
上記のようにして保護膜が積層された半導体ウエハが得られたら、所望により、その保護膜に対してレーザー光を照射し、レーザー印字を行う。なお、このレーザー印字は、保護膜形成フィルム1の硬化前に行ってもよい。
【0078】
次いで、レーザー印字が行われた保護膜が積層された半導体ウエハを、分割加工用レーザー照射装置に設置し、保護膜に覆われている半導体ウエハの表面の位置を検出したのち、加工用レーザーを用いて、半導体ウエハ内に改質層を形成する。ここで、本実施形態に係る保護膜形成フィルム1が前述の光線透過率に関する条件を満たす場合には、加工用レーザーから照射されたレーザー光は、保護膜越しに半導体ウエハ6に照射されても、改質層を容易に形成することができる。
【0079】
こうして得られた改質層がその内部に形成された半導体ウエハおよび保護膜からなる積層体の保護膜側の面にダイシングシートを貼付する。そして、ダイシングシートを伸長させるエキスパンド工程を実施することにより、保護膜が積層された半導体ウエハ6に力(主面内方向の引張力)を付与する。その結果、ダイシングシートに貼着する上記の積層体は分割されて、保護膜が積層されたチップが得られる。その後は、ピックアップ装置を用いて、保護膜が積層されたチップをダイシングシートからピックアップする。
【0080】
3.他の保護膜形成用シート3
図2は本発明の他の一実施形態に係る保護膜形成用シートの断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用シート3は、基材41の一方の面に粘着剤層42が積層されてなるダイシングシート4と、ダイシングシート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成フィルム1と、保護膜形成フィルム1におけるダイシングシート4とは反対側の周縁部に積層された治具用粘着剤層5とを備えて構成される。治具用粘着剤層5は、保護膜形成用シート3をリングフレーム等の治具に接着するための層である。
【0081】
本実施形態に係る保護膜形成用シート3は、ワークを加工するときに、当該ワークに貼付されて当該ワークを保持するとともに、当該ワークまたは当該ワークを加工して得られる加工物に保護膜を形成するために用いられる。この保護膜は、保護膜形成フィルム1、好ましくは硬化した保護膜形成フィルム1から構成される。
【0082】
本実施形態に係る保護膜形成用シート3は、ワークに対して分割加工などを行う際にワークを保持するとともに、分割加工により得られる加工物が保護膜を備えるものとするために用いられる。
【0083】
(1)ダイシングシート
本実施形態に係る保護膜形成用シート3のダイシングシート4は、基材41と、基材41の一方の面に積層された粘着剤層42とを備えて構成される。
【0084】
(1−1)基材
ダイシングシート4の基材41は、ワークの加工、例えば半導体ウエハのダイシングおよびエキスパンディングに適するものであれば、その構成材料は特に限定されず、通常は樹脂系の材料を主材とするフィルム(以下「樹脂フィルム」という。)から構成される。
【0085】
樹脂フィルムの具体例として、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム、高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム等のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン−ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。またこれらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムのような変性フィルムも用いられる。上記の基材41はこれらの1種からなるフィルムでもよいし、さらにこれらを2種類以上組み合わせた積層フィルムであってもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
【0086】
上記の中でも、環境安全性、コスト等の観点から、ポリオレフィン系フィルムが好ましく、その中でも耐熱性に優れるポリプロピレンフィルムが好ましい。ポリプロピレンフィルムであれば、ダイシングシート4のエキスパンド適性やチップのピックアップ適性を損なうことなく、基材41に耐熱性を付与することができる。基材41がかかる耐熱性を有することにより、保護膜形成用シート3をワークに貼付した状態で保護膜形成フィルム1を熱硬化させた場合にも、ダイシングシート4の弛みの発生を抑制することができる。
【0087】
上記樹脂フィルムは、その表面に積層される粘着剤層42との密着性を向上させる目的で、所望により片面または両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
【0088】
基材41は、上記樹脂フィルム中に、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。
【0089】
基材41の厚さは、保護膜形成用シート3が使用される各工程において適切に機能できる限り、特に限定されない。好ましくは20〜450μm、より好ましくは25〜400μm、特に好ましくは50〜350μmの範囲である。
【0090】
本実施形態におけるダイシングシート4の基材41の破断伸度は、23℃、相対湿度50%のときに測定した値として100%以上であることが好ましく、特に200〜1000%であることが好ましい。ここで、破断伸度はJIS K7161:1994(ISO 527−1 1993)に準拠した引張り試験における、試験片破壊時の試験片の長さの元の長さに対する伸び率である。上記の破断伸度が100%以上である基材41は、エキスパンド工程の際に破断し難く、ワークを切断して形成したチップを離間し易いものとなる。
【0091】
また、本実施形態におけるダイシングシート4の基材41の25%ひずみ時引張応力は5〜15N/10mmであることが好ましく、最大引張応力は15〜50MPaであることが好ましい。ここで25%ひずみ時引張応力および最大引張応力はJIS K7161:1994に準拠した試験により測定される。25%ひずみ時引張応力が5N/10mm以上、最大引張応力が15MPa以上であると、ダイシングシート4にワークを貼着した後、リングフレームなどの枠体に固定した際、基材2に弛みが発生することが抑制され、搬送エラーが生じることを防止することができる。一方、25%ひずみ時引張応力が15N/10mm以下、最大引張応力が50MPa以下であると、エキスパンド工程時にリングフレームからダイシングシート4自体が剥がれたりすることが抑制される。なお、上記の破断伸度、25%ひずみ時引張応力、最大引張応力は基材41における原反の長尺方向について測定した値を指す。
【0092】
(1−2)粘着剤層
本実施形態に係る保護膜形成用シート3のダイシングシート4が備える粘着剤層42は、非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、保護膜形成フィルム1との密着性が高く、ダイシング工程等にてワークまたは加工物の脱落を効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0093】
一方、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線照射により粘着力が低下するため、ワークまたは加工物とダイシングシート4とを分離させたいときに、エネルギー線照射することにより、容易に分離させることができる。
【0094】
粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合、保護膜形成用シート3における粘着剤層42は硬化していることが好ましい。エネルギー線硬化性粘着剤を硬化した材料は、通常、弾性率が高く、かつ表面の平滑性が高いため、かかる材料からなる硬化部分に接触している保護膜形成フィルム3を硬化させて保護膜を形成すると、保護膜の当該硬化部分と接触している表面は、平滑性(グロス)が高くなり、チップの保護膜として美観に優れたものとなる。また、表面平滑性の高い保護膜にレーザー印字が施されると、その印字の視認性が向上する。
【0095】
粘着剤層42を構成するエネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、エネルギー線硬化性を有しないポリマーとエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。
【0096】
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
【0097】
エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。このエネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有する(メタ)アクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0098】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とからなる。
【0099】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
【0100】
上記官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0101】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1〜20であるアルキル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが用いられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が用いられる。
【0102】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を通常3〜100質量%、好ましくは5〜40質量%の割合で含有し、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を通常0〜97質量%、好ましくは60〜95質量%の割合で含有してなる。
【0103】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0104】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する置換基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0105】
不飽和基含有化合物(a2)が有する置換基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、官能基がヒドロキシル基、アミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはアミノ基、カルボキシル基またはアジリジニル基が好ましい。
【0106】
また不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2−(1−アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0107】
不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマー100当量当たり、通常10〜100当量、好ましくは20〜95当量の割合で用いられる。
【0108】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、官能基と置換基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0109】
このようにして得られるエネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量は、1万以上であるのが好ましく、特に15万〜150万であるのが好ましく、さらに20万〜100万であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリスチレン換算の値である。
【0110】
エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0111】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0112】
かかるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0113】
エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、エネルギー線硬化性粘着剤中におけるエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、5〜80質量%であることが好ましく、特に20〜60質量%であることが好ましい。
【0114】
ここで、エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させるためのエネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤(C)を添加することが好ましく、この光重合開始剤(C)の使用により、重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0115】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0116】
光重合開始剤(C)は、エネルギー線硬化型共重合体(A)(エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合には、エネルギー線硬化型共重合体(A)およびエネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の合計量100質量部)100質量部に対して0.1〜10質量部、特には0.5〜6質量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
【0117】
エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0118】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000〜250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。
【0119】
架橋剤(E)としては、エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアナート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0120】
これら他の成分(D),(E)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。これら他の成分の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0〜40質量部の範囲で適宜決定される。
【0121】
次に、エネルギー線硬化性粘着剤が、エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0122】
エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。エネルギー線硬化性樹脂組成物中におけるエネルギー線硬化性を有しないポリマー成分の含有量は、20〜99.9質量%であることが好ましく、特に30〜80質量%であることが好ましい。
【0123】
エネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択される。エネルギー線硬化性を有しないポリマー成分とエネルギー線硬化性の多官能モノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、ポリマー成分100質量部に対して、多官能モノマーおよび/またはオリゴマー10〜150質量部であるのが好ましく、特に25〜100質量部であるのが好ましい。
【0124】
この場合においても、上記と同様に、光重合開始剤(C)や架橋剤(E)を適宜配合することができる。
【0125】
粘着剤層42の厚さは、保護膜形成用シート3が使用される各工程において適切に機能できる限り、特に限定されない。具体的には、1〜50μmであることが好ましく、特に2〜30μmであることが好ましく、さらには3〜20μmであることが好ましい。
【0126】
治具用粘着剤層5を構成する粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、リングフレーム等の治具との密着性が高く、ダイシング工程等にてリングフレーム等から保護膜形成用シート3が剥がれることを効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。なお、治具用粘着剤層5の厚さ方向の途中には、芯材としての基材が介在していてもよい。
【0127】
一方、治具用粘着剤層5の厚さは、リングフレーム等の治具に対する接着性の観点から、5〜200μmであることが好ましく、特に10〜100μmであることが好ましい。
【0128】
(2)保護膜形成用シートの製造方法
保護膜形成用シート3は、好ましくは、保護膜形成フィルム1を含む第1の積層体と、ダイシングシート4を含む第2の積層体とを別々に作製した後、第1の積層体および第2の積層体を使用して、保護膜形成フィルム1とダイシングシート4とを積層することにより製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0129】
第1の積層体を製造するには、第1の剥離シートの剥離面に、保護膜形成フィルム1を形成する。具体的には、保護膜形成フィルム1を構成する硬化性接着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する保護膜形成フィルム用の塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって第1の剥離シートの剥離面に塗布して乾燥させて、保護膜形成フィルム1を形成する。次に、保護膜形成フィルム1の露出面に第2の剥離シートの剥離面を重ねて圧着し、2枚の剥離シートに保護膜形成フィルム1が挟持されてなる積層体(第1の積層体)を得る。
【0130】
この第1の積層体においては、所望によりハーフカットを施し、保護膜形成フィルム1(および第2の剥離シート)を所望の形状、例えば円形等にしてもよい。この場合、ハーフカットにより生じた保護膜形成フィルム1および第2の剥離シートの余分な部分は、適宜除去すればよい。
【0131】
一方、第2の積層体を製造するには、第3の剥離シートの剥離面に、粘着剤層42を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する粘着剤層用の塗布剤を塗布し乾燥させて粘着剤層42を形成する。その後、粘着剤層42の露出面に基材41を圧着し、基材41および粘着剤層42からなるダイシングシート4と、第3の剥離シートとからなる積層体(第2の積層体)を得る。
【0132】
ここで、粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合には、この段階で粘着剤層42に対してエネルギー線を照射して、粘着剤層42を硬化させてもよいし、保護膜形成フィルム1と積層した後に粘着剤層42を硬化させてもよい。また、保護膜形成フィルム1と積層した後に粘着剤層42を硬化させる場合、ダイシング工程前に粘着剤層42を硬化させてもよいし、ダイシング工程後に粘着剤層42を硬化させてもよい。
【0133】
エネルギー線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。エネルギー線の照射量は、エネルギー線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で50〜1000mJ/cm
2が好ましく、特に100〜500mJ/cm
2が好ましい。また、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0134】
以上のようにして第1の積層体および第2の積層体が得られたら、第1の積層体における第2の剥離シートを剥離するとともに、第2の積層体における第3の剥離シートを剥離し、第1の積層体にて露出した保護膜形成フィルム1と、第2の積層体にて露出したダイシングシート4の粘着剤層42とを重ね合わせて圧着する。ダイシングシート4は、所望によりハーフカットし、所望の形状、例えば保護膜形成フィルム1よりも大きい径を有する円形等にしてもよい。この場合、ハーフカットにより生じたダイシングシート4の余分な部分は、適宜除去すればよい。
【0135】
このようにして、基材41の上に粘着剤層42が積層されてなるダイシングシート4と、ダイシングシート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成フィルム1と、保護膜形成フィルム1におけるダイシングシート4とは反対側に積層された第1の剥離シートとからなる保護膜形成用シート3が得られる。最後に、第1の剥離シートを剥離した後、保護膜形成フィルム1におけるダイシングシート4とは反対側の面の周縁部に、治具用粘着剤層5を形成する。
【0136】
治具用粘着剤層5の形成方法は限定されない。一例を挙げれば次のとおりである。まず、治具用粘着剤層5を形成するための粘着剤組成物と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗工用組成物を用意する。別途用意した剥離シートの剥離面に、上記の塗工用組成物を塗布し、得られた塗膜を乾燥させることにより、剥離シート上に治具用粘着剤の層を形成する。この剥離シート上の治具用粘着剤の層の露出している面に、さらに別の剥離シートの剥離面を貼付して、剥離シート/治具用粘着剤の層/剥離シートの構成を備える3層積層体を得る。続いて、この3層積層体の一方の剥離シートおよび治具用粘着剤の層が切断されるようなハーフカットを行って、残余部を剥離除去することにより、上記の3層積層体における他方の剥離シート上に、平面視で、外周と内周とが同心である円環形状を有し、剥離シートと治具用粘着剤の層とからなる2層積層体を形成する。この2層積層体と剥離シートとからなる積層体の、切断加工が施された方の剥離シートを剥離して、治具用粘着剤の層の面を表出させる。この表出した面を、保護膜形成フィルム1におけるダイシングシート4とは反対側の面の周縁部に貼付することにより、治具用粘着剤の層を保護膜形成フィルム1上に積層された治具用粘着剤層5とする。最後に、治具用粘着剤層5上の剥離シートを剥離することにより、
図2の構成を備える保護膜形成用シート3が得られる。なお、治具用粘着剤層5は、上記の例のように粘着剤層のみから構成されていてもよいし、芯材の両面に粘着剤層が積層されてなる両面粘着テープから構成されていてもよい。
【0137】
(3)保護膜形成用シート3の使用方法
本実施形態に係る保護膜形成用シート3の使用方法の一例として、ワークとしての半導体ウエハから、加工物としての保護膜が積層されたチップを製造する方法を以下に説明する。
【0138】
図4に示すように、保護膜形成用シート3の保護膜形成フィルム1を半導体ウエハ6に貼付するとともに、治具用粘着剤層5をリングフレーム7に貼付する。保護膜形成フィルム1を半導体ウエハ6に貼付するにあたり、所望により保護膜形成フィルム1を加熱して、粘着性を発揮させてもよい。
【0139】
その後、保護膜形成フィルム1を硬化させて保護膜を形成し、伸長可能なダイシングシートとして機能するダイシングシート4の粘着剤層42側の面に保護膜が積層された半導体ウエハ6が積層された構成を備える積層構造体(本明細書において、かかる積層構造体を「第1の積層構造体」ともいう。)を得る。
図4に示される第1の積層構造体は、治具用粘着剤層5およびリングフレーム7をさらに備える。保護膜形成フィルム1が熱硬化性接着剤の場合には、保護膜形成フィルム1を所定温度で適切な時間加熱すればよい。なお、保護膜形成フィルム1の硬化は、レーザーによる改質層の形成の後に行ってもよい。
【0140】
上記のようにして保護膜が積層された半導体ウエハ6を備える第1の積層構造体が得られたら、所望により、その保護膜に対して、ダイシングシート4を介してレーザー光を照射し、レーザー印字を行う。なお、このレーザー印字は、保護膜形成フィルム1の硬化前に行ってもよい。
【0141】
次いで、第1の積層構造体を、分割加工用レーザー照射装置に設置し、保護膜1に覆われている半導体ウエハ6の表面の位置を検出したのち、加工用レーザーを用いて、半導体ウエハ6内に改質層を形成する。ここで、本実施形態に係る保護膜形成用シート3が前述の光線透過率に関する条件を満たす場合には、加工用レーザーから照射されたレーザー光は、保護膜とダイシングシートとの積層体越しに半導体ウエハ6に照射されても、改質層を容易に形成することができる。
【0142】
その後、ダイシングシートとして機能するダイシングシート4を伸長させるエキスパンド工程を実施することにより、保護膜が積層された半導体ウエハ6に力(主面内方向の引張力)を付与する。その結果、ダイシングシート4に貼着する保護膜が積層された半導体ウエハ6は分割されて、保護膜が積層されたチップが得られる。その後は、ピックアップ装置を用いて、保護膜が積層されたチップをダイシングシート4からピックアップする。
【0143】
4.さらに他の保護膜形成用シート3A
図3は本発明のさらに他の一実施形態に係る保護膜形成用シートの断面図である。
図3に示すように、本実施形態に係る保護膜形成用シート3Aは、基材41の一方の面に粘着剤層42が積層されてなるダイシングシート4と、ダイシングシート4の粘着剤層42側に積層された保護膜形成フィルム1とを備えて構成される。実施形態における保護膜形成フィルム1は、面方向にてワークとほぼ同じか、ワークよりも少し大きく形成されており、かつダイシングシート4よりも面方向に小さく形成されている。保護膜形成フィルム1が積層されていない部分の粘着剤層42は、リングフレーム等の治具に貼付することが可能となっている。
【0144】
本実施形態に係る保護膜形成用シート3Aの各部材の材料および厚さは、前述した保護膜形成用シート3の各部材の材料および厚さと同様である。ただし、粘着剤層42がエネルギー線硬化性粘着剤からなる場合には、粘着剤層42における保護膜形成フィルム1と接触する部分は、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させ、それ以外の部分は、エネルギー線硬化性粘着剤を硬化させないことが好ましい。これにより、保護膜形成フィルム1を硬化させた保護膜の平滑性(グロス)を高くすることができるとともに、リングフレーム等の治具に対する接着力を高く維持することができる。
【0145】
なお、保護膜形成用シート3Aのダイシングシート4の粘着剤層42における基材41とは反対側の周縁部には、前述した保護膜形成用シート3の治具用粘着剤層5と同様の治具用粘着剤層が別途設けられていてもよい。
【0146】
5.加工物の製造方法
以下、本実施形態に係る保護膜形成フィルム1または保護膜形成用シート3,3Aを用いて、ワークから加工物を製造する方法について、ワークに対して改質層を形成する工程である改質層形成工程の対象ごとにまとめて説明する。
【0147】
(1)改質層形成工程の対象がワークである場合(第1ケース)
改質層形成工程の対象がワーク単体である場合には、まず、半導体ウエハなどのワークの内部に設定された焦点に集束されるように赤外域のレーザー光を照射して、ワーク内部に改質層を形成する第1改質層形成工程が行われる。次に、改質層が形成されたワークの一の面(半導体ウエハの場合には、回路が形成された面の反対側の面、すなわち裏面)に、保護膜形成フィルム1を積層する第1保護膜形成フィルム積層工程が行われる。
【0148】
以下、次の分割工程と保護膜形成工程とが行われることにより、加工物が得られる。
【0149】
分割工程では、改質層が形成されたワークに対して力を付与して分割することにより分割物を得る。この分割工程が開始されるまでには、ワークに積層されている保護膜形成フィルム1または当該保護膜形成フィルム1から形成された保護膜における、ワークに対向する面と反対側の面に対して、ダイシングシート4が積層された状態が実現されることになる。
【0150】
保護膜形成工程では、保護膜形成フィルム1から保護膜を形成する。分割工程と保護膜形成工程との実施の順番は限定されない。いずれが先であってもよい。保護膜形成フィルム1が上記のように熱硬化性の材料を含有する場合には、保護膜形成工程は加熱、例えば130℃で2時間保持すること、を含む工程となるため、分割工程後に保護膜形成工程を行う場合には、ダイシングシート4は保護膜形成工程における加熱に耐えうる材料であることが求められる。
【0151】
このような工程により、分割工程の結果物として、ワークの分割物(ワークが半導体ウエハの場合には分割物は半導体チップとなる。)の一の面(ワークが半導体ウエハの場合には当該面は裏面となる。)上に保護膜が積層されてなる加工物(ワークが半導体ウエハの場合には保護膜が積層された半導体チップが加工物となる。)が得られる。
【0152】
第1ケースでは、ワークに対して改質層が形成されていることから、分割工程が保護膜形成工程の前に行われる場合には、本実施形態に係る保護膜形成フィルム1が前述の破断インデックスに関する条件を満たしていればよく、分割加工が保護膜形成工程の後に行われる場合には、本実施形態に係る保護膜形成フィルム1から形成された保護膜が前述の破断インデックスに関する条件を満たしていればよい。本実施形態に係る保護膜等が前述の光線透過率に関する条件を満たすか否かは、分割加工性に影響を与えない。
【0153】
第1ケースでは、改質層が形成されたワークに対して積層される、保護膜等とダイシングシート4との積層状態は限定されない。すなわち、改質層が形成されたワークに対して、保護膜形成フィルム1が積層され、その保護膜形成フィルム1に対してダイシングシート4が積層されてもよいし、ワークに積層された保護膜形成フィルム1から保護膜を形成し、その保護膜に対してダイシングシート4が積層されてもよい。あるいは、改質層が形成されたワークに対して保護膜形成用シート3,3Aが積層されてもよい。保護膜形成用シート3,3Aが積層される場合には、ワークに積層される保護膜形成フィルム1は、一の面にダイシングシート4が積層された状態にあることになる。
【0154】
(2)改質層形成工程の対象がワークと保護膜形成フィルム1との積層構造体である場合(第2ケース)
改質層形成工程の対象がワークと保護膜形成フィルム1との積層構造体である場合には、まず、保護膜形成フィルム1をワークの一の面に積層する第2保護膜形成フィルム積層工程が行われる。
【0155】
次に、保護膜形成フィルム1が積層されたワークの内部に設定された焦点に集束されるように、赤外域のレーザー光を、保護膜形成フィルム1越しにワークに照射して、ワーク内部に改質層を形成する第2改質層形成工程が行われる。レーザー光は保護膜形成フィルム1越しにワークに照射されることから、第2ケースの場合には、保護膜形成フィルム1は、前述の光線透過率に関する条件を満たすことが好ましい。
【0156】
以下、前述の分割工程と保護膜形成工程とが行われることにより、加工物が得られる。分割工程と保護膜形成工程との実施の順番は任意である。分割加工が保護膜形成工程の前に行われる場合には、保護膜形成フィルム1が前述の破断インデックスに関する条件を満たしていればよい。分割加工が保護膜形成工程の後に行われる場合には、保護膜が前述の破断インデックスに関する条件を満たしていればよい。
【0157】
また、ワークに対して積層される、保護膜等とダイシングシート4との積層状態は限定されないが、上記のように、第2ケースの場合には、レーザー光は保護膜形成フィルム1越しにワークに照射されることから、ワークに対して保護膜形成用シート3,3Aが積層されることはない。すなわち、第2改質層形成工程後に、改質層が形成されたワークに積層された状態にある保護膜等に対してダイシングシートが積層される工程が行われる。
【0158】
(3)改質層形成工程の対象がワークと保護膜形成フィルム1とダイシングシート4との積層構造体である場合(第3ケース)
改質層形成工程の対象がワークと保護膜形成フィルム1とダイシングシート4との積層構造体である場合には、まず、ワークと、ワークの一の面に積層された、保護膜形成フィルム1と、保護膜形成フィルム1のワークに対向する側と反対側の面に積層されたダイシングシート4とを備えた積層構造体を用意する。一例として、保護膜形成用シート3,3Aをワークに積層することによりこの積層構造体を得ることができる。
【0159】
この積層構造体のワークに、ワークの内部に設定された焦点に集束されるように、ダイシングシート4側から赤外域のレーザー光を照射して、前記ワーク内部に改質層を形成する第3改質層形成工程が行われる。レーザー光は、ダイシングシート4および保護膜形成フィルム1越しにワークに照射されることから、第3ケースの場合には、保護膜形成フィルム1は、前述の光線透過率に関する条件を満たすことが好ましい。第3ケースの場合において、保護膜形成用シート3,3Aを用いるときには、保護膜形成用シート3,3Aも前述の光線透過率に関する条件を満たすことが好ましい。
【0160】
以下、前述の分割工程と保護膜形成工程とが行われることにより、加工物が得られる。分割工程と保護膜形成工程との実施の順番は任意である。また、ワークに対して積層される、保護膜形成フィルム1とダイシングシート4との積層状態は限定されない。第3改質層形成工程が開始される段階で、保護膜形成フィルム1とダイシングシート4との積層体がワークに対して適切に積層されていればよい。具体的には、保護膜形成フィルム1がまずワークに対して積層され、その後、ダイシングシート4が積層されてもよいし、保護膜形成用シート3,3Aがワークに対して積層されてもよい。
【0161】
(4)改質層形成工程の対象がワークと保護膜との積層構造体である場合(第4ケース)
改質層形成工程の対象がワークと保護膜との積層構造体である場合には、保護膜形成フィルム1をワークの一の面に積層する第2保護膜形成フィルム積層工程が行われる。次に、保護膜形成フィルム1から保護膜を形成する保護膜形成工程が行われる。続いて、保護膜が積層されたワークの内部に設定された焦点に集束されるように、赤外域のレーザー光を、保護膜越しにワークに照射して、ワーク内部に改質層を形成する第4改質層形成工程が行われる。したがって、第4ケースの場合には、保護膜が前述の光線透過率に関する条件を満たすことが好ましい。そのためには、保護膜形成フィルム1が前述の光線透過率に関する条件を満たせばよい。
【0162】
そして、改質層が形成されたワークに対して力を付与して分割することにより分割物を得る分割工程が行われて、この分割工程の結果物として、分割物の一の面上に保護膜が積層されてなる加工物が得られる。したがって、第4ケースの場合には、保護膜が前述の破断インデックスに関する条件を満たしていればよい。
【0163】
(5)改質層形成工程の対象がワークと保護膜とダイシングシート4との積層構造体である場合(第5ケース)
改質層形成工程の対象がワークと保護膜とダイシングシート4との積層構造体である場合には、まず、この積層構造体を用意する工程が行われる。この積層構造体を用意する方法には、逐次積層と一括積層とがある。
【0164】
すなわち、前者では、保護膜形成フィルム1をワークの一の面に積層する第2保護膜形成フィルム積層工程と、保護膜形成フィルム1から保護膜を形成する保護膜形成工程と、ワークに積層された保護膜上に、ダイシングシート4を積層する第2ダイシングシート積層工程とが行われる。
【0165】
一方、後者では、ダイシングシート4が積層された状態にある保護膜形成フィルム1を、ワークの一の面に積層する第3保護膜形成フィルム積層工程が行われる。典型的には、保護膜形成用シート3,3Aをワークに積層すればよい。続いて、保護膜形成フィルム1から保護膜を形成する保護膜形成工程が行われる。
【0166】
こうして得られた積層構造体のワークの内部に設定された焦点に集束されるように、赤外域のレーザー光を、保護膜およびダイシングシート4越しに前記ワークに照射して、ワーク内部に改質層を形成する上記の第5改質層形成工程が行われる。レーザー光は、ダイシングシート4および保護膜越しにワークに照射されることから、第5ケースの場合には、保護膜形成フィルム1は、前述の光線透過率に関する条件を満たすことが好ましい。第5ケースの場合において、保護膜形成用シート3,3Aを用いるときには、保護膜形成用シート3,3Aも前述の光線透過率に関する条件を満たすことが好ましい。
【0167】
続いて、改質層が形成されたワークに対して力を付与して分割することにより分割物を得る分割工程が行われて、この分割工程の結果物として、分割物の一の面上に保護膜が積層されてなる加工物が得られる。したがって、第5ケースの場合には、保護膜が前述の破断インデックスに関する条件を満たしていればよい。
【0168】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0169】
例えば、保護膜形成用シート3,3Aの保護膜形成フィルム1におけるダイシングシート4とは反対側には、剥離シートが積層されてもよい。
【実施例】
【0170】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0171】
〔実施例1から9ならびに比較例1および2〕
次の各成分を表1に示される配合比(固形分換算質量部)で混合し、固形分濃度が61質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成フィルム用塗布剤を調製した。
(A−1)重合体成分:n−ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部、および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度:−1℃)
(A−2)重合体成分:n−ブチルアクリレート55質量部、メチルアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート20質量部、および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度:−28℃)
(A−3)重合体成分:メチルアクリレート85質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量:80万、ガラス転移温度:6℃)
(B−1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、エポキシ当量184〜194g/eq)
(B−2)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製「エピクロンHP−7200HH」、エポキシ当量255〜260g/eq)
(B−3)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、エポキシ当量800〜900g/eq)
(B−4)固体エポキシ樹脂:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「EPPN502H」、エポキシ当量167g/eq)
(B−5)アクリロイル基付加クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製「CNA-147」、エポキシ当量518g/eq、数平均分子量2100、不飽和基含有量:エポキシ基と等量)
(C−1)熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(ADEKA社製「アデカハードナーEH−3636AS」、活性水素量21g/eq)
(C−2)硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
(C−3)熱硬化剤:アラルキル型フェノール樹脂(三井化学社製「ミレックスXLC−4L」)
(D)シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、平均粒子径0.5μm)
(E)着色剤:カーボンブラック(三菱化学社製「#MA650」、平均粒径28nm)
(F)イソシアナート化合物(東洋インキ製造社製「BHS−8515」)
(G)シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM403」)
(H)熱可塑性樹脂(東洋紡績社製「バイロン220」)
【0172】
【表1】
【0173】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1の剥離シートR(リンテック社製,SP−PET382150,厚さ38μm)と、PETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2の剥離シートR’(リンテック社製,SP−PET381031,厚さ38μm)とを用意した。
【0174】
第1の剥離シートRの剥離面上に、前述の保護膜形成フィルム用塗布剤を、最終的に得られる保護膜形成フィルムP
0の厚さが25μmとなるように塗布した後、オーブンにて120℃で2分間乾燥させて、保護膜形成フィルムP
0を形成した。次いで、得られた保護膜形成フィルムP
0の面に第2の剥離シートR’の剥離面を貼合して、第1の剥離シートR(
図1における剥離シート21)と、保護膜形成フィルムP
0(
図1における保護膜形成フィルム1)(厚さ:25μm)と、第2の剥離シートR’とからなる保護膜形成用シートRP
0R’を得た。
【0175】
上記の方法により保護膜形成用シートRP
0R’を別途用意し、第2の剥離シートR’を剥離し、表出させた保護膜形成フィルムP
0の面を、ダイシングシートD(リンテック社製「AdwillD−821HS」)の粘着剤層の面に調合して、保護膜形成フィルムP
0とダイシングシートDとからなる積層体[P
0D]を、保護膜形成フィルムP
0側の面に第1の剥離シートRが貼付された状態で得た。
【0176】
〔試験例1〕<破断応力および破断ひずみの測定>
動的機械分析装置(ティー・エイ・インスツルメント社製「DMA Q800」)を用いて、保護膜形成フィルムP
0および保護膜形成フィルムP
0から形成された保護膜P
1の引張り試験を行った。実施例および比較例で得られた保護膜形成用シートRP
0R’の2枚について、第2の剥離シートR’を剥離し、表出させた保護膜形成フィルムP
0の面が対向するように、これらの保護膜形成用シートRP
0を貼付し、それぞれの第1の剥離シートRを剥離させることにより、厚さが50μmの保護膜形成フィルムP
0を得て、この保護膜形成フィルムP
0を幅5mm×長さ5mmに裁断して、保護膜形成フィルムP
0からなる試験片とした。保護膜P
1からなる試験片は、上記の厚さが50μmの保護膜形成フィルムP
0からなる試験片を別途作製し、これを130℃2時間の条件で加熱することにより用意した。
【0177】
各試験片を温度0℃に1分間保持した後に、10N/分の速度で引張り試験を行った。その結果から破断応力(単位:MPa)および破断ひずみ(単位:%)を抽出した。測定結果および破断インデックス(単位:MPa・%)の算出結果を表2に示す。
【0178】
〔試験例2〕<保護膜形成フィルム分割加工性評価>
ワークとしての厚さ100μm、外径8インチのシリコンウエハSに、レーザー照射装置(DISCO社製「DFL7360」、レーザー波長:1064nm)を用いて、シリコンウエハS内部で集光するレーザーを、9mm×9mmのチップ体が形成されるように設定された切断予定ラインに沿って走査させながら照射しシリコンウエハS内部に改質層を形成した。
【0179】
シリコンウエハSと同形状に切断加工された保護膜形成フィルムP
0を、貼付装置(リンテック社製「RAD−3600 F/12」)を用いて70℃に加熱したテーブル上で貼付して、レーザー照射により内部に改質層が形成されたシリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0との積層体SP
0を得た。
【0180】
積層体SP
0の保護膜形成フィルムP
0側に、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700 F/12」)を用いて、ダイシングシートD(リンテック社製「Adwill D−821HS」)を貼付して、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0とダイシングシートDとの積層体SP
0Dを、リングフレームに固定された状態で得た。
【0181】
エキスパンド装置(DISCO社製「DDS2300」)を用いて、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSを備える積層体SP
0Dの温度を0℃に維持した状態で、引き落とし速度100mm/秒、エキスパンド量10mmでエキスパンドを行った。その結果、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSの少なくとも一部が分割予定ラインに沿って分割され、複数のチップが得られた。
【0182】
以上の工程を実施して、切断予定ラインに沿って実際に生じたシリコンウエハSの切断ラインの長さに対する、シリコンウエハSの切断ラインに沿って生じた保護膜形成フィルムP
0の切断ラインの長さの割合である第1分割率(単位:%)を用いて、次の基準で保護膜形成フィルムP
0の分割性を評価した。
第1分割率100%:分割性優良(表1中「A」)
第1分割率80%以上100%未満:許容される分割性を有する(表1中「C」)
第1分割率80%未満:許容される分割性を有しない(表1中「D」)
評価結果を表2に示す。
【0183】
〔試験例3〕<保護膜分割加工性評価>
厚さ100μm、外径8インチのシリコンウエハSに、レーザー照射装置(DISCO社製「DFL7360」、レーザー波長:1064nm)を用いて、シリコンウエハS内部で集光するレーザーを、9mm×9mmのチップ体が形成されるように設定された切断予定ラインに沿って走査させながら照射しシリコンウエハS内部に改質層を形成した。
【0184】
保護膜形成フィルムP
0をシリコンウエハSと同形状に切断加工し、貼付装置(リンテック社製「RAD−3600 F/12」)を用いて、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSに対して、切断加工後の保護膜形成フィルムP
0を70℃に加熱したテーブル上で貼付して、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0との積層体SP
0を得た。この積層体SP
0を、大気雰囲気下、130℃で2時間加熱して、積層体SP
0が備える保護膜形成フィルムP
0から保護膜P
1を形成して、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSと保護膜P
1とからなる積層体SP
1を得た。
【0185】
積層体SP
1の保護膜P
1側に、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700 F/12」)を用いて、ダイシングシートD(リンテック社製「Adwill D−821HS」)を貼付して、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSと保護P
1とダイシングシートDとの積層体SP
1Dを、リングフレームに固定された状態で得た。
【0186】
エキスパンド装置(DISCO社製「DDS2300」)を用いて、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSを備える積層体SP
1Dの温度を0℃に維持した状態で、引き落とし速度100mm/秒、エキスパンド量10mmでエキスパンドを行った。その結果、シリコンウエハSの少なくとも一部が分割予定ラインに沿って分割され、複数のチップが得られた。
【0187】
以上の工程を実施して、切断予定ラインに沿って実際に生じたシリコンウエハSの切断ラインの長さに対する、シリコンウエハSの切断ラインに沿って生じた保護膜P
1の切断ラインの長さの割合である第2分割率(単位:%)を用いて、次の基準で保護膜P
1の分割性を評価した。
第2分割率100%:分割性優良(表1中「A」)
第2分割率80%以上100%未満:許容される分割性を有する(表1中「C」)
第2分割率80%未満:許容される分割性を有しない(表1中「D」)
評価結果を表2に示す。
【0188】
〔試験例4〕<光線透過率の測定>
実施例および比較例で得られた保護膜形成用シートRP
0R’から第1の剥離シートRおよび第2の剥離シートR’を剥離して、保護膜形成フィルムP
0を用意した。
【0189】
実施例および比較例で得られた保護膜形成用シートRP
0R’から第2の剥離シートR’を剥離し、オーブン内において、大気雰囲気下、130℃で2時間加熱し、保護膜形成フィルムP
0を熱硬化させて保護膜P
1とした。その後、第1の剥離シートRを剥離して、保護膜P
1を用意した。
【0190】
実施例および比較例で得られた保護膜形成用シートRP
0R’から第2の剥離シートR’を剥離して得られた積層体の保護膜形成フィルムP
0の面と、ダイシングシートD(リンテック社製「Adwill D−821HS」)の粘着剤層の面とを貼合することにより、積層体[P
0D]を用意した。
【0191】
実施例および比較例で得られた保護膜形成用シートRP
0R’から第2の剥離シートR’を剥離し、オーブン内において、大気雰囲気下、130℃で2時間加熱し、保護膜形成フィルムP
0を熱硬化させて保護膜P
1とした。その後、第1の剥離シートRを剥離して、保護膜P
1の面と、ダイシングシートD(リンテック社製「Adwill D−821HS」)の粘着剤層側の面とを貼合することにより、積層体P
1Dを用意した。
【0192】
分光光度計(島津製作所社製,UV−VIS−NIR SPECTROPHOTOMETER UV−3600)を用いて、上記のようにして用意した、保護膜形成フィルムP
0、保護膜P
1、積層体[P
0D]および積層体P
1Dの光線透過率を測定し、波長1064nmの光線透過率(単位:%)を抽出した。測定には、付属の大形試料室MPC−3100を用い、内蔵の積分球を使用して測定を行った。結果を表2に示す。
【0193】
〔試験例5〕<ウエハ分割加工性評価>
(試験例5−1)レーザー照射対象が積層体SP
0である場合
厚さ100μm、外径8インチのシリコンウエハSに、シリコンウエハSと同形状に切断加工された保護膜形成フィルムP
0を、貼付装置(リンテック社製「RAD−3600 F/12」)を用いて70℃に加熱したテーブル上で貼付して、シリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0との積層体SP
0を得た。
【0194】
得られた積層体SP
0の保護膜形成フィルムP
0側から、レーザー照射装置(DISCO社製「DFL7360」、レーザー波長:1064nm)を用いて、シリコンウエハ内部で集光するレーザーを、9mm×9mmのチップ体が形成されるように設定された切断予定ラインに沿って走査させながら照射しシリコンウエハS内部に改質層を形成した。
【0195】
こうして得られた、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSを備える積層体SP
0の保護膜形成フィルムP
0側に、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700 F/12」)を用いて、ダイシングシートD(リンテック社製「Adwill D−821HS」)を貼付して、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0とダイシングシートDとの積層体SP
0Dをリングフレーム固定された状態で得た。
【0196】
エキスパンド装置(DISCO社製「DDS2300」)を用いて、得られた積層体SP
0Dの温度を0℃に維持した状態で、引き落とし速度100mm/秒、エキスパンド量10mmでエキスパンドを行った。その結果、シリコンウエハSの少なくとも一部が分割予定ラインに沿って分割され、複数のチップが得られた。
【0197】
以上の工程を実施して、保護膜等(保護膜形成フィルムP
0または保護膜P
1)の割断有無は評価対象とせずに、シリコンウエハSの全ての切断予定ラインに沿ってシリコンウエハSが切断された場合に得られるチップ数に対する、実際に分割されて得られたチップの数の割合である第3分割率(単位:%)を用いて、次の基準で分割性を評価した。
第3分割率100%:分割性優良(表1中「A」)
第3分割率95%以上100%未満:分割性良好(表1中「B」)
第3分割率80%以上95%未満:許容される分割性を有する(表1中「C」)
第3分割率80%未満:許容される分割性を有しない(表1中「D」)
評価結果を表2の「積層体SP
0」の列に示す。
【0198】
(試験例5−2)レーザー照射対象が積層体SP
1である場合
厚さ100μm、外径8インチのシリコンウエハSに、シリコンウエハSと同形状に切断加工された保護膜形成フィルムP
0を、貼付装置(リンテック社製「RAD−3600 F/12」)を用いて70℃に加熱したテーブル上で貼付して、シリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0との積層体SP
0を得た。
【0199】
得られた積層体SP
0を、大気雰囲気下にて130℃で2時間加熱して、保護膜形成フィルムP
0から保護膜P
1を形成して、シリコンウエハSと保護膜P
1との積層体SP
1を得た。
【0200】
得られた積層体SP
1の保護膜側から、レーザー照射装置(DISCO社製「DFL7360」、レーザー波長:1064nm)を用いて、シリコンウエハS内部で集光するレーザーを、9mm×9mmのチップ体が形成されるように設定された切断予定ラインに沿って走査させながら照射しシリコンウエハS内部に改質層を形成した。
【0201】
こうして得られた、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSを備える積層体SP
1の保護膜P
1側に、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700 F/12」)を用いて、ダイシングシートD(リンテック社製「Adwill D−821HS」)を貼付して、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSと保護膜P
1とダイシングシートDとの積層体SP
1Dをリングフレームに固定された状態で得た。
【0202】
エキスパンド装置(DISCO社製「DDS2300」)を用いて、得られた積層体SP
1Dの温度を0℃に維持した状態で、引き落とし速度100mm/秒、エキスパンド量10mmでエキスパンドを行った。その結果、シリコンウエハSの少なくとも一部が分割予定ラインに沿って分割され、複数のチップが得られた。
【0203】
以上の工程を実施して、試験例5−1と同様の評価を行った。評価結果を表2の「積層体SP
1」の列に示す。
【0204】
(試験例5−3)レーザー照射対象が積層体SP
0Dである場合
厚さ100μm、外径8インチのシリコンウエハSに、シリコンウエハSと同形状に切断加工された保護膜形成フィルムP
0を、貼付装置(リンテック社製「RAD−3600 F/12」)を用いて70℃に加熱したテーブル上で貼付して、シリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0との積層体SP
0を得た。
【0205】
積層体SP
0の保護膜形成フィルムP
0側に、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700 F/12」)を用いて、ダイシングシートD(リンテック社製「Adwill D−821HS」)を貼付して、シリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0とダイシングシートDとの積層体SP
0Dをリングフレームに固定された状態で得た。
【0206】
得られた積層体SP
0DのダイシングシートD側から、レーザー照射装置(DISCO社製「DFL7360」、レーザー波長:1064nm)を用いて、シリコンウエハS内部で集光するレーザーを、9mm×9mmのチップ体が形成されるように設定された切断予定ラインに沿って走査させながら照射して、積層体SP
0Dが備えるシリコンウエハSの内部に改質層を形成した。
【0207】
エキスパンド装置(DISCO社製「DDS2300」)を用いて、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSを備える積層体SP
0Dの温度を0℃に維持した状態で、引き落とし速度100mm/秒、エキスパンド量10mmでエキスパンドを行った。その結果、シリコンウエハSの少なくとも一部が分割予定ラインに沿って分割され、複数のチップが得られた。
【0208】
以上の工程を実施して、試験例5−1と同様の評価を行った。評価結果を表2の「積層体SP
0D」の列に示す。
【0209】
(試験例5−4)レーザー照射対象が積層体S[P
0D]である場合
厚さ100μm、外径8インチのシリコンウエハSに、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700 F/12」)を用いて、ダイシングシートとしての機能を有する保護膜形成用シート[P
0D]を70℃に加熱したテーブル上で貼付して、シリコンウエハSと保護膜形成用シート[P
0D]との積層体S[P
0D]をリングフレームに固定された状態で得た。
【0210】
得られた積層体S[P
0D]の保護膜形成用シート[P
0D]側から、レーザー照射装置(DISCO社製「DFL7360」、レーザー波長:1064nm)を用いて、シリコンウエハS内部で集光するレーザーを、9mm×9mmのチップ体が形成されるように設定された切断予定ラインに沿って走査させながら照射しシリコンウエハS内部に改質層を形成した。
【0211】
エキスパンド装置(DISCO社製「DDS2300」)を用いて、得られた積層体S[P
0D]の温度を0℃に維持した状態で、引き落とし速度100mm/秒、エキスパンド量10mmでエキスパンドを行った。その結果、シリコンウエハSの少なくとも一部が分割予定ラインに沿って分割され、複数のチップが得られた。
【0212】
以上の工程を実施して、試験例5−1と同様の評価を行った。評価結果を表2の「積層体S[P
0D]」の列に示す。
【0213】
(試験例5−5)レーザー照射対象が積層体SP
1Dである場合
厚さ100μm、外径8インチのシリコンウエハSに、シリコンウエハSと同形状に切断加工された保護膜形成フィルムP
0を、貼付装置(リンテック社製「RAD−3600 F/12」)を用いて70℃に加熱したテーブル上で貼付して、シリコンウエハSと保護膜形成フィルムP
0との積層体SP
0を得た。
【0214】
得られた積層体SP
0を大気雰囲気下にて130℃で2時間加熱して、保護膜形成フィルムP
0から保護膜P
1を形成して、シリコンウエハSと保護膜P
1との積層体SP
1を得た。
【0215】
積層体SP
1の保護膜P
1側に、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700 F/12」)を用いて、ダイシングシートD(リンテック社製「Adwill D−821HS」)を貼付して、シリコンウエハSと保護膜P
1とダイシングシートDとの積層体SP
1Dをリングフレームに固定された状態で得た。
【0216】
得られた積層体SP
1DのダイシングシートD側から、レーザー照射装置(DISCO社製「DFL7360」、レーザー波長:1064nm)を用いて、シリコンウエハS内部で集光するレーザーを、9mm×9mmのチップ体が形成されるように設定された切断予定ラインに沿って走査させながら照射しシリコンウエハS内部に改質層を形成した。こうして、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSを備える積層体SP
1Dを得た。
【0217】
エキスパンド装置(DISCO社製「DDS2300」)を用いて、内部に改質層が形成されたシリコンウエハSを備える積層体SP
1Dの温度を0℃に維持した状態で、引き落とし速度100mm/秒、エキスパンド量10mmでエキスパンドを行った。その結果、シリコンウエハSの少なくとも一部が分割予定ラインに沿って分割され、複数のチップが得られた。
【0218】
以上の工程を実施して、試験例5−1と同様の評価を行った。評価結果を表2の「積層体SP
1D」の列に示す。
【0219】
【表2】
【0220】
表2から分かるように、分割加工されるワークに積層される保護膜形成フィルムまたは保護膜の破断インデックスが1MPa・%以上250MPa・%以下である実施例の保護膜形成フィルムは、分割加工性に優れるものであった。