(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準エアロゾル量は、前記流量比が前記予め設計された値に一致するときの前記第1分流路に通過させるべきエアロゾル量の設計値によって規定される、請求項1から7のいずか1項に記載の香味吸引器。
前記基準エアロゾル量は、前記流量比が前記予め設計された値に一致するときの前記第1分流路に通過させるべきエアロゾル量の設計値を、前記流量比の前記予め設計された値で割った値によって規定される、請求項1から7のいずか1項に記載の香味吸引器。
前記制御部は、前記香味ユニットが前記霧化ユニットに取り付けられている状態で、前記情報源を介して前記補正値を読み取る、請求項12から18のいずれか1項に記載の香味吸引器。
前記制御部は、前記香味ユニットが前記霧化ユニットに取り付けられていない状態で、前記情報源を介して前記補正値を読み取る、請求項12から18のいずれか1項に記載の香味吸引器。
前記霧化部で発生するエアロゾル量の累積値又は前記第1分流路を通過するエアロゾル量の累積値が第1閾値を上回った場合に、前記霧化部で発生させるエアロゾル量を増加させる、請求項1から20のいずれか1項に記載の香味吸引器。
前記霧化部で発生するエアロゾル量の累積値又は前記第1分流路を通過するエアロゾル量の累積値が第2閾値を上回った場合に、前記霧化部への供給電力をオフにする、請求項1から21のいずれか1項に記載の香味吸引器。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下において、実施形態について説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。
【0033】
従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合があることは勿論である。
【0034】
[開示の概要]
開示の概要に係る香味吸引器は、エアロゾル源からエアロゾルを発生させる霧化部と、霧化部よりも下流に設けられた香味源と、香味源よりも下流に設けられた吸口部と、霧化部を制御する制御部と、霧化部から前記吸口部へ通じるエアロゾル流路と、霧化部で発生させるエアロゾルの量であって予め設計された量である基準エアロゾル量を補正する補正値と対応付けられた識別情報を保持する情報源と、を有する。エアロゾル流路は、霧化部と香味源との間で、香味源を通る第1分流路と、第1分流路と異なる第2分流路とに分岐している。前記補正値は、所定の流量で吸口部を吸ったときの所定の流量に対する第1分流路の流量である流量比に関する値である。制御部は、基準エアロゾル量と補正値とに基づいて算出した目標エアロゾル量に基づき霧化部を制御する。
【0035】
この香味吸引器では、制御部は、第1分流路と第2分流路に流れるエアロゾルの流量の比に応じて、霧化部で発生すべき目標エアロゾル量を変えることができる。これにより、制御部は、前述の流量比に応じて、第1分流路を通るエアロゾル量を調節することができる。
【0036】
[第1実施形態]
(香味吸引器)
以下において、第1実施形態に係る香味吸引器について説明する。
図1は、第1実施形態に係る香味吸引器100を示す図である。
図2は、香味吸引器100を構成する霧化ユニットを示す図である。
【0037】
香味吸引器100は、燃焼を伴わずに吸引成分(香味成分)を吸引するための器具である。香味吸引器100は、非吸口端E2から吸口端E1に向かう方向である所定方向Lに沿って延びる形状を有していてよい。
【0038】
香味吸引器100は、霧化ユニット111と、バッテリユニット112と、香味ユニット130と、を有する。霧化ユニット111は、バッテリユニット112に着脱可能に構成されていてよい。香味ユニット130は、霧化ユニット111に着脱可能に構成されていてよい。
【0039】
上記態様の代わりに、霧化ユニット111とバッテリユニット112とが一体的に構成されており、香味ユニット130が霧化ユニット111に着脱可能に構成されていてもよい。また、霧化ユニット111と香味ユニット130とが一体的なカートリッジとして構成されており、当該カートリッジがバッテリユニット112に着脱可能に構成されていてもよい。
【0040】
霧化ユニット111は、少なくとも霧化部111Rを有する。霧化部111Rは、後述するエアロゾル源からエアロゾルを発生させる。本実施形態では、霧化ユニット111は、リザーバ111P及びウィック111Qをさらに有する。
【0041】
リザーバ111Pは、エアロゾル源を保持する。エアロゾル源は、例えば、グリセリンやプロピレングリコールなどの液体であってよい。なお、エアロゾル源は、ニコチン成分等を含有する香味源を含んでいてもよく、ニコチン成分等を含有する香味源を含まなくてもよい。エアロゾル源は、ニコチン成分以外の成分を含む香味源を含んでいてもよく、ニコチン成分以外の成分を含む香味源を含まなくてもよい。
【0042】
リザーバ111Pは、例えば、繊維状又は多孔質性の素材から構成される。この場合、リザーバ111Pは、繊維間の隙間や多孔質材料の細孔に液体としてのエアロゾル源を保持することができる。この代わりに、リザーバ111Pは、液体を収容するタンクから構成されてもよい。リザーバ111Pは、エアロゾル源を補充可能な構成、又はエアロゾル源が消耗した際にリザーバ自体を交換可能な構成を有していてもよい。
【0043】
ウィック111Qは、リザーバ111Pに保持されているエアロゾル源を吸い上げる。ウィック111Qの一部はリザーバ111Pの内部に通じ、エアロゾル源と接触している。ウィック111Qの他の一部は霧化部111Rへ延びている。エアロゾル源は、ウィック111Qの毛細管効果によってリザーバ111Pから霧化部111Rへ運ばれる。例えば、ウィック111Qは、ガラス繊維によって構成される。
【0044】
霧化部111Rは、ウィック111Qに吸い上げられたエアロゾル源を霧化する。霧化部111Rは、例えば、ウィック111Qに近接又は当接する抵抗発熱体によって構成される。この抵抗発熱体は、ウィック111Qによって保持されるエアロゾル源を霧化する。抵抗発熱体は、例えば、ウィック111Qに所定ピッチで巻き回される抵抗発熱体、例えば電熱線によって構成される。上記実施形態の代わりに、霧化部111Rは、エアロゾル源を超音波振動によって霧化する超音波式霧化器であってもよい。
【0045】
上記実施形態の代わりに、リザーバ111P及びウィック111Qは、バッテリユニット112に設けられていてもよい。この場合、霧化ユニット111がバッテリユニット112に取り付けられたときに、霧化部111Rがウィック111Qに近接又は当接すればよい。
【0046】
さらに、霧化ユニット111は、霧化部111Rの固有情報を記憶する情報源111Mを有していてもよい。情報源111Mは例えばメモリから構成される。この場合、後述する制御部51は、メモリから霧化部111Rの固有情報を取得することができる。なお、固有情報の一例については後述する。
【0047】
バッテリユニット112は、少なくとも電力を蓄積するバッテリ40を有する。バッテリユニットは、制御部51を有していてもよい。制御部51は、霧化部111Rを電気的に制御する。具体的には、制御部51は、バッテリ40から霧化部111Rに供給される電力量を制御する。制御部51は、マイクロプロセッサ又はマイクロコンピュータとして構成された電子回路モジュールであり、メモリに格納されたコンピュータ実行可能命令に従って香味吸引器100の動作を制御するようにプログラムされる。メモリは、ROM、RAM、フラッシュメモリなどの情報記憶媒体である。メモリには、コンピュータ実行可能命令のほか、香味吸引器100の制御に必要な設定データが格納されていてよい。
【0048】
香味ユニット130は、少なくとも香味源132を有する。香味源132は、霧化部111Rより下流に設けられ、霧化部111Rで発生したエアロゾルに香味を付与する。香味源132は、例えば、刻みたばこや、たばこ原料を粒状、シート状、若しくは粉末状に成形した加工物などの、たばこ由来のもの、又は、たばこ以外の植物(例えばミントやハーブ等)から作られた非たばこ由来のものであってよい。一例として、香味源132は、ニコチン成分を含む。香味源132は、メントールなどの香料成分を含有してもよい。例えば、香味吸引器100は、香味源132にたばこ由来の香味物質を保持し、リザーバには非たばこ由来の香味物質を含むように構成されてもよい。
【0049】
香味吸引器100は、香味ユニット130の吸口端側に着脱可能に構成された吸口部160を有していてもよい。吸口部160は、吸引動作中にユーザによって咥えられる部分である。なお、吸口部160は、香味ユニット130の吸口端側の端部と一体に構成されていてもよい。
【0050】
香味吸引器100は、エアロゾル流路140及び空気流路148を有する。空気流路148は、通気口112Aから香味吸引器100内に空気を導入することができる。空気流路148は、通気口112Aから霧化部111Rに達している。
【0051】
エアロゾル流路140は、空気流路148と連通しており、霧化部111Rから吸口部へ通じる流路である。エアロゾル流路140は、空気流路148からの空気と霧化部111Rで生成されたエアロゾルとの混合流体を吸口部まで導く。
【0052】
エアロゾル流路140は、共通流路140Cと、第1分流路140Aと、第2分流路140Bと、を含む。具体的には、エアロゾル流路140は、霧化部111Rと香味源132との間で、香味源132を通る第1分流路140Aと、第1分流路140Aと異なる第2分流路140Bとに分岐している。第1分流路140Aと第2分流路140Bとの分岐点145は、霧化部111Rと香味源132との間に位置する。
【0053】
共通流路140Cは、霧化部111Rから分岐点145までの流路である。第1分流路140Aは、分岐点145から香味源132を通って吸口部160まで延びている。一方、第2分流路140Bは、香味源132を通ることなく吸口部160まで延びている。
【0054】
霧化部111Rで生成された混合流体は、共通流路140Cを通って分岐点145で第1分流路140A及び第2分流路140Bの2つの経路に分離される。第1分流路140Aへ流れ込んだエアロゾルは、香味源132からの香味成分を付与された後、吸口部160まで導かれる。第2分流路140Bへ流れ込んだエアロゾルは、香味源132に含まれる香味成分を付与されることなく吸口部160へ導かれる。第1分流路140Aからのエアロゾルと第2分流路140Bからのエアロゾルは、吸口部160を介してユーザに吸入される。
【0055】
本実施形態では、第1分流路110Aと第2分流路110Bは香味源132より下流の吸口部160において合流している。しかしながら、これは必須ではない。例えば、第2分流路140Bを流れるエアロゾルが香味源132の一部分(例えば香味源132の下流側の一部分)を通過するように、第2分流路140Bの終端(下流端)が、香味源132内で第1分流路140Aと合流していてもよい。さらに、
図2に例示された香味吸引器100では、第1分流路140Aにのみ香味源132が設けられているが、香味源132とは別の香味源、例えば、香味源132とは異なる香味成分をエアロゾルに付与することができる香味源が、第2分流路140Bに付加的に設けられてもよい。
【0056】
香味源132は、必ずしも香味自体を発するものに限られず、霧化部111Rで発生したエアロゾル中の香味成分と結合することで香味を増強する物質、例えばピルビン酸やレブリン酸等の酸性物質等であってもよい。
【0057】
香味吸引器100は、霧化ユニット111への香味ユニット130の接続を検知するセンサを有していてもよい。一例として、香味ユニット130は、霧化ユニット111に接続されたときに霧化ユニット111の電気回路に電気的に接続される抵抗器を有していてよい。これにより、香味ユニット130が霧化ユニット111に接続されたとき、霧化ユニット111に設けられた電気回路の一部分の電気抵抗値が変化する。制御部51は、この電気抵抗値の変化、又は電気抵抗値の変化に起因する電流若しくは電圧の変化を検知することにより、霧化ユニット111への香味ユニット130の接続を検知することができる。なお、接続検知用のセンサは、この態様に限られず、任意の構成のセンサであってよい。
【0058】
また、香味吸引器100は、バッテリユニット112への霧化ユニットの111の接続を検知するセンサを有していてもよい。一例として、霧化ユニット111は、バッテリユニット112に接続されたときにバッテリユニット112の電気回路に電気的に接続される抵抗器を有していてよい。これにより、霧化ユニット111がバッテリユニット112に接続されたとき、バッテリユニット112に設けられた電気回路の一部分の電気抵抗値が変化する。制御部51は、この電気抵抗値の変化、又は電気抵抗値の変化に起因する電流若しくは電圧の変化を検知することにより、バッテリユニット112への霧化ユニット111の接続を検知することができる。なお、霧化ユニット111に設けられる接続検知用の抵抗器は、霧化部111R自体であってもよい。また、接続検知用のセンサは、この態様に限られず、任意の構成のセンサであってよい。
【0059】
香味吸引器100は、接触センサ52を有していてもよい。接触センサ52は、香味吸引器100の非吸口側E2の端部に設けられていてよい。接触センサ52は、ユーザが接触センサ52を触れたことを検知することができる。例えば、接触センサ52は、互いに離間した一対の電極を有する。一対の電極がユーザの指のような外部要素で導通されたとき、一対の電極間に電流が流れる。接触センサ52はこの電流を検知することにより、一対の電極の導通を検知できる。したがって、接触センサ52は、ユーザの指による接触を検知することができる。このような接触センサ52は、例えば、正規ユーザであるか否かを判定するために利用することができる。この場合、例えば、ユーザが所定パターンで接触センサ52に触れたときに、制御部51は、香味吸引器100を、霧化部111Rに電力を供給可能な状態にすればよい。
【0060】
香味吸引器100は、ユーザにより操作される操作ボタン、及び/又はユーザによる吸引動作を検出する吸引センサ50を有していてよい。吸引センサ50は、例えば、空気流路148若しくはエアロゾル流路140内の圧力変動を検知する圧力センサであってよい。制御部51は、ユーザによる操作ボタンの押下、又は吸引センサ50による吸引動作の検知に応じて、霧化部111Rへの電力供給を開始する。これにより、霧化部111Rにおいてエアロゾルが発生する。
【0061】
上述したように、エアロゾル流路140を流れる流体は、霧化部111Rにおいて生成されたエアロゾルと、空気流路148から取り込まれた空気とを含む混合流体である。共通流路140Cを流れる空気の流量とエアロゾルの流量をそれぞれQ、A
f、第1分流路140Aを流れる空気の流量とエアロゾルの流量をそれぞれQ
1、A
f1、第2分流路140Bを流れる空気の流量とエアロゾルの流量をそれぞれQ
2、A
f2とする。ただしQ=Q
1+Q
2、A
f=A
f1+A
f2である。なお、本明細書では、「空気の流量」は、体積流量(mL/sec)を意味し、「エアロゾルの流量」は、質量流量(mg/sec)を意味するものとする。また、以下において、「エアロゾルの流量」と表記することなく、単に「流量」と表記した場合、「流量」は空気の流量を意味することに注意されたい。さらに、共通流路140Cを流れる空気の流量とエアロゾルの流量は、それぞれ、エアロゾル流路140を流れる空気の全流量とエアロゾルの全流量に実質的に一致する。
【0062】
本明細書では、流量比βを、エアロゾル流路140を流れる空気の全流量に対する第1分流路110Aを流れる空気の流量として定義する(すなわちβ=Q
1/Q)。ここで、流量比βは、エアロゾル流路140を流れるエアロゾルの全流量A
fに対する第1分流路140Aを流れるエアロゾルの流量A
f1と実質的に一致する(すなわちβ=Q
1/Q=A
f1/A
f)。また、流量比βは、所定時間、例えば1回のパフ動作に要する時間において霧化部111Rで発生されるエアロゾル量Aと、霧化部111Rで発生されるエアロゾル量Aのうちの第1分流路140Aを通るエアロゾル量A
1との比とも実質的に一致する(すなわちβ=Q
1/Q=A
1/A)。
【0063】
流量比βは、第1分流路140Aと第2分流路140Bのそれぞれの通気抵抗に依存する。通気抵抗は、流路の断面積や長さ、屈曲の度合い、分岐部や合流部の形状等に依存する。
【0064】
したがって、流量比βは、香味ユニット130に固有の値、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の組合せに固有の値であり、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111及び/又は香味ユニット130ごとに変化し得る。特に、分岐点145及びその下流の第1分流路140A及び第2分流路140Bが香味ユニット130内に設けられている場合には、流量比βは、香味ユニット130ごとに変化する。
【0065】
例えば、それぞれ積極的に異なる流量比βの値を有する霧化ユニット111及び/又は香味ユニット130が、バッテリユニット112に取り付け可能に構成されていてよい。この場合、例えば香味ユニット130に含まれる香味源132の種類や量に応じて流量比βを積極的に変えることができる。
【0066】
別の例として、設計どおりに霧化ユニット111及び/又は香味ユニット130を製造しようとしたとしても、製造誤差に起因するロットのばらつきに応じて、流量比βが霧化ユニット111及び/又は香味ユニット130ごとに変化することがある。したがって、同様の設計を有する製品(霧化ユニット111及び/又は香味ユニット130)を使用する場合であっても、流量比βは変わり得る。
【0067】
流量比βが変わると、霧化部111Rで発生するエアロゾル量が一定であっても、第1分流路140A、すなわち香味源132を通るエアロゾル量が変わる。
【0068】
第1分流路140A、第2分流路140B及び分岐点145は、香味ユニット130内に設けられていることが好ましい。この場合、流量比βは、香味ユニット130ごとに決まり、実質的に霧化ユニット111には依らない。この代わりに、第1分流路140A及び第2分流路140Bの一部と分岐点145とが霧化ユニット111に設けられていてもよい。この場合、流量比βは、香味ユニット130と霧化ユニット111との組み合わせによって決まる。
【0069】
本実施形態では、制御部51は、流量比βに応じて、霧化部111Rで発生させるエアロゾル量を変えるよう霧化部111Rを制御する。この目的のため、香味吸引器100は、補正値と対応付けられた識別情報を保持する情報源134Mを有する。補正値とは、具体的には、霧化部111Rで発生させるエアロゾルの量であって予め設計された量である基準エアロゾル量A
Rを補正する値である。なお、前述した情報源111Mは、後述するように、情報源134Mとは異なる識別情報を記憶するものである。
【0070】
情報源134Mは、例えば基準エアロゾル量A
Rを補正する補正値と対応付けられた識別情報を記憶するメモリであってよい。情報源134Mは、香味ユニット130に設けられていてよい。霧化ユニット111と香味ユニット130が一体のカートリッジを構成する場合、情報源134Mは、カートリッジ、すなわち香味ユニット130又は霧化ユニット111に設けられていてよい。この場合、情報源111Mと134Mは、同一のメモリから構成されていてもよい。
【0071】
補正値は、所定の流量で吸口部160を吸ったときの当該所定の流量Q
Aに対する第1分流路140Aの流量Q
1である流量比βに関する値である。具体的には、補正値は、流量比βの値自体であってよい。なお、吸口部160における所定の流量Q
Aは、共通流路140Cにおける流量Qと実質的に一致するものと考えられる。
【0072】
この代わりに、補正値は、流量比βに換算可能なパラメータであってもよい。そのようなパラメータとしては、例えば、所定の流量Q
Aに対する第2分流路140Bの流量Q
2の比や、第1分流路140Aの流量Q
1と第2分流路140Bの流量Q
2との比等が挙げられる。これらの例に限定されず、補正値は、流量比βを算出可能な任意の1以上のパラメータであってよい。
【0073】
なお、所定の流量Q
Aに対する第1分流路140Aの流量Q
1や第2分流路140Bの流量Q
2は、霧化ユニット111及び/又は香味ユニット130の製造時に予め測定されることによって決定される。例えば、各ロットで製造された香味ユニット130、又は香味ユニット130と霧化ユニット111からなるカートリッジに対して、吸口部160から所定の流量Q
Aで吸引する。この際に、流量Q
1,Q
2を実際に測定することによって補正値の値を決定できる。この補正値は、情報源134Mに予め記録される。
【0074】
なお、同一の製造ロットで製造された香味ユニット130、又は香味ユニット130と霧化ユニット111からなるカートリッジは、実質的に同一の流量比βを有することが期待される。そのため、必ずしもすべての製品に対して上記測定を行う必要はなく、同一の製造ロットで製造されたものについては同一の流量比βが得られるものとして補正値を決定してもよい。
【0075】
(エアロゾル量の補正)
図4に示すように、制御部51は、所定のタイミングで、情報源134Mを介して上記補正値を取得する(ステップS101)。これにより、制御部51は、流量比βを得ることができる。流量比βは、霧化部111Rで発生させるエアロゾル量を補正するために用いられる。
【0076】
基準エアロゾル量A
Rは、霧化部111Rで生成されるエアロゾルの量であって、予め設計された量によって規定される。第1実施形態では、より具体的には、基準エアロゾル量A
Rは、流量比が予め設計された基準値と一致するときの第1分流路140Aに通過させるべきエアロゾル量の設計値によって規定される。具体的には、基準エアロゾル量A
Rは、第1分流路140Aに通過させるべきエアロゾル量の初期設定値によって規定される。したがって、基準エアロゾル量A
Rは実際の流量比βに依存しない。基準エアロゾル量A
Rは、制御部51のメモリ又は情報源134Mに予め格納されていてよい。
【0077】
基準エアロゾル量A
Rは、香味源132の種類や量にかかわらず一定の値を有していてよい。この場合、基準エアロゾル量A
Rは、制御部51のメモリに格納することができる。この代わりに、基準エアロゾル量A
Rは、香味源132の種類や量に応じて香味ユニット130毎に異なる値を有していてもよい。この場合、基準エアロゾル量A
Rは、情報源134Mに格納されていてよい。
【0078】
制御部51は、所定のタイミングで、基準エアロゾル量A
Rと流量比βに基づいて目標エアロゾル量A
Tを決定する(ステップS102)。すなわち、制御部51は、流量比βに応じて霧化部111Rで霧化すべき目標エアロゾル量A
Tを変える。
【0079】
その後、ユーザによる操作ボタンの押下、又は吸引センサ50による吸引動作の検知により、制御部51は、目標エアロゾル量A
Tのエアロゾルが霧化部111Rで生成されるように霧化部111Rを制御する(ステップS103)。なお、霧化部111Rに供給する電力量によって霧化部111Rで生成されるエアロゾル量が調節可能である場合、制御部51は、上記のように決められた目標エアロゾル量A
Tのエアロゾルが霧化部111Rで生成されるように、霧化部111Rに供給する目標電力量E
Tを決定すればよい。目標電力量E
Tについての詳細は後述する。
【0080】
上記態様によれば、積極的に流量比βの異なる香味ユニット130、又は香味ユニット130と霧化ユニット111からなるカートリッジが利用された場合、香味ユニット130に含まれる香味源132の種類や量に応じて最適な目標エアロゾル量A
Tを設定できる。制御部51は、目標エアロゾル量A
Tのエアロゾルが霧化部111Rで生成されるように霧化部111Rを制御するので、香味ユニット130に含まれる香味源132の種類や量に応じて香味源132に通すエアロゾルの実際の流量を最適な値に調整できる。
【0081】
具体的な一例として、目標エアロゾル量A
Tは、流量比βが予め設計された値より大きいとき、流量比が予め設計された値に一致するときの目標エアロゾル量より小さく設定され、流量比βが予め設計された値より小さいとき、流量比が予め設計された値に一致するときの目標エアロゾル量より大きく設定される。この場合、第1分流路140Aの流量が大きくなると目標エアロゾル量A
Tが小さくなり、第1分流路140Aの流量が小さくなると目標エアロゾル量A
Tが大きくなる。したがって、流量比βが変化したとしても、1回のパフ動作において第1分流路140Aに流れるエアロゾル量をある程度均一化することができる。
【0082】
別の具体的な一例として、制御部51は、基準エアロゾル量A
Rと流量比βに基づいて、目標エアロゾル量A
Tを次式「A
T=A
R/β」を満たすように決定してもよい。すなわち、目標エアロゾル量A
Tは、基準エアロゾル量A
Rを流量比βで割った値に設定される。この場合、1回のパフ動作において第1分流路140Aに流れるエアロゾル量が、流量比βによらず一定になるように目標エアロゾル量A
Tが決められる。これにより、どのような香味ユニット130、又は香味ユニット130と霧化ユニット111のカートリッジを使用したとしても、ユーザは1回のパフ動作において概ね一定量の香味成分を吸引することができる。ここで、上記態様に係る香味吸引器100では、制御部51は、製造ロットのばらつきに起因する流量比βの変動を抑制するように、第1分流路140Aを流れるエアロゾル量を均一化することができる。したがって、製造誤差に起因するロットのばらつきによって生じる、ユーザによって吸引される香味成分の量の変動を抑制できる。また、製造誤差に起因するロットのばらつきによって生じる香味成分の量の変動を抑制することができるので、製造公差を大きくしても安定したエアロゾル量を香味源132に通すことができる。
【0083】
なお、ユーザに提供される香味の量は厳密に同一値に維持される必要はない。例えば、制御部51は、第1分流路140Aを通過するエアロゾル量の変動をいくらかでも抑制するように霧化部111Rを制御すればよい。
【0084】
(補正値を取得するタイミング)
制御部51が流量比βに関する値である補正値を取得するタイミングは、少なくとも目標エアロゾル量A
Tを算出する前に行われる。本実施形態において、香味ユニット130が霧化ユニット111に取り付けられている状態、又は香味ユニット130と霧化ユニット111のカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられている状態で、制御部51は、情報源134Mを介して補正値を読み取ることができる。
【0085】
一例として、制御部51は、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111への香味ユニット130の接続を検知したときに、情報源134Mを介して補正値を取得してもよい。別の例として、霧化ユニット111と香味ユニット130が一体的なカートリッジを構成する場合、制御部51は、バッテリユニット112へのカートリッジの接続を検知したときに、情報源134Mを介して補正値を取得してもよい。
【0086】
別の例として、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111へ香味ユニット130が接続された状態、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の一体的なカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられた状態で、ユーザにより霧化開始用の操作ボタンが押下されたとき、又は吸引センサ50が吸引動作を検知したときに、制御部51は、情報源134Mを介して補正値を取得してもよい。この場合、補正値の取得は、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111へ香味ユニット130が接続された後、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の一体的なカートリッジがバッテリユニット112に接続された後において、始めて霧化開始用の操作ボタンが押下されたとき、又は吸引センサ50が始めて吸引動作を検知したときに行われればよい。この場合、補正値の取得は、香味ユニット130又はカートリッジの接続後、1度だけ行われればよい。もっとも、ユーザにより霧化開始用の操作ボタンが押下される度、又は吸引センサ50が吸引動作を検知する度に、制御部51は、情報源134Mを介して補正値を取得してもよい。
【0087】
また、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111へ香味ユニット130が接続された状態、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の一体的なカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられた状態で、ユーザが所定パターンで霧化開始用の操作ボタンを押したとき、又は吸引センサ50が所定パターンの吸引動作を検知したときに、制御部51は、情報源134Mを介して補正値を取得してもよい。
【0088】
さらに、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111へ香味ユニット130が接続された状態、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の一体的なカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられた状態で、接触センサ52が所定パターンの導通を検知したときに、制御部51は、情報源134Mを介して補正値を取得してもよい。
【0089】
(目標エアロゾル量を算出するタイミング)
制御部51が目標エアロゾル量を算出するタイミングは、少なくとも補正値の取得よりも後に行われる。本実施形態において、香味ユニット130が霧化ユニット111に取り付けられている状態、又は香味ユニット130と霧化ユニット111のカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられている状態で、制御部51は、目標エアロゾル量を算出することができる。
【0090】
一例として、制御部51は、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111への香味ユニット130の接続を検知したときに、情報源134Mを介して補正値を取得し、それから目標エアロゾル量を算出してもよい。別の例として、霧化ユニット111と香味ユニット130が一体的なカートリッジを構成する場合、制御部51は、バッテリユニット112へのカートリッジの接続を検知したときに、情報源134Mを介して補正値を取得し、それから目標エアロゾル量を算出してもよい。
【0091】
別の例として、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111へ香味ユニット130が接続された状態、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の一体的なカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられた状態で、ユーザにより霧化開始用の操作ボタンが押下されたとき、又は吸引センサ50が吸引動作を検知したときに、制御部51は、目標エアロゾル量を算出してもよい。この場合、目標エアロゾル量の算出は、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111へ香味ユニット130が接続された後、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の一体的なカートリッジがバッテリユニット112に接続された後において、始めて霧化開始用の操作ボタンが押下されたとき、又は吸引センサ50が始めて吸引動作を検知したときに行われればよい。この場合、目標エアロゾル量を算出は、香味ユニット130又はカートリッジの接続後、1度だけ行われればよい。もっとも、ユーザにより霧化開始用の操作ボタンが押下される度、又は吸引センサ50が吸引動作を検知する度に、制御部51は、目標エアロゾル量を算出してもよい。
【0092】
また、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111へ香味ユニット130が接続された状態、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の一体的なカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられた状態で、ユーザが所定パターンで霧化開始用の操作ボタンを押したとき、又は吸引センサ50が所定パターンの吸引動作を検知したときに、制御部51は、目標エアロゾル量を算出してもよい。
【0093】
さらに、バッテリユニット112に取り付けられた霧化ユニット111へ香味ユニット130が接続された状態、又は霧化ユニット111と香味ユニット130の一体的なカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられた状態で、接触センサ52が所定パターンの導通を検知したときに、制御部51は、目標エアロゾル量を算出してもよい。
【0094】
(霧化部への供給電力の制御)
前述したように、制御部51は、霧化部111Rによって生成されるエアロゾル量が目標エアロゾル量A
Tとなるように、霧化部111Rを制御する。制御部51は、バッテリ40から霧化部111Rへ供給する電力量を変化させることで、霧化部111Rで生成されるエアロゾル量を制御することができる。霧化部111Rへの供給電力量と、その電力量により霧化部111Rで発生するエアロゾル量との関係は、例えば、情報源111Mに予め格納されていてもよい。制御部51は、情報源111Mを参照することによって、目標エアロゾル量A
Tから、霧化部111Rへ供給すべき電力量を取得することができる。
【0095】
この代わりに、霧化部111Rへの供給電力は、霧化部111Rで発生されるエアロゾル量と霧化部111Rに供給される電力量との関係を導く関係式に基づいて算出することもできる。以下、この点について詳細に説明する。
【0096】
霧化部111Rが抵抗発熱体である場合に、発明者等は、鋭意検討の結果、霧化部111Rに供給される電力量Eと霧化部111Rで発生するエアロゾル量Aとの間に線形性の関係があり、このような線形性の関係が霧化部111R毎に異なることを見出した(
図5参照)。
図5において、縦軸はエアロゾル量A[mg/puff]を表し、横軸は電力量E[J/puff]を表す。霧化部111Rで発生するエアロゾル量Aと霧化部111Rに供給される電力量Eとは、下限電力量E
MINから上限電力量E
MAXまでの範囲において、線形性の関係を有する。
【0097】
この線形性の関係は、「A=a×E+b」によって表される。ここで、「A」は、1回のパフ動作において霧化部で生成されるエアロゾルの量である。「E」は、1回のパフ動作で霧化部111Rに供給される電力量である。「a」及び「b」は、霧化ユニット111の固有パラメータである。霧化ユニット111の固有パラメータは、ウィック111Qの組成、霧化部111Rの組成、エアロゾル源の組成、霧化ユニット111(ウィック111Q及び抵抗発熱体111R)の構造などに依存する。したがって、固有パラメータa,bは、霧化ユニット111毎に異なった値を有する。また、パラメータE
MIN及びE
MAXについても、霧化ユニット111毎に異なっているため、霧化ユニット111の固有パラメータと考えてもよい。
【0098】
固有パラメータa、bは、霧化ユニット111に設けられた情報源111Mに予め記憶されていることが好ましい。この場合、制御部51は、情報源111Mから固有パラメータa、bを、情報源134Mから流量比βを取得することによって、目標エアロゾル量A
Tを決定することができる。
【0099】
制御部51は、「A=a×E+b」の関係式から目標エアロゾル量A
Tのエアロゾルを発生させるために必要な目標電力量E
Tを算出することができる。すなわち、パラメータa,bの値が既知であれば、制御部51は、「E
T=(A
T−b)/a」の関係式を満たすように、目標エアロゾル量A
Tから必要な電力量E
Tを算出することができる。目標エアロゾル量A
Tについては前述したとおりである。
【0100】
したがって、目標エアロゾル量A
Tが、基準エアロゾル量A
Rと流量比βに基づいて関係式「A
T=A
R/β」によって決定される場合には、制御部51は、「E
T=(A
R/β−b)/a」の関係式を満たすように目標エアロゾル量A
Tから目標電力量E
Tを算出することができる。なお、|b|の値が|A
R/β|の値よりも十分に小さいとき、上記関係式においてb=0と近似してもよい。
【0101】
なお、霧化ユニット111に備えられた情報源111Mは、パラメータa,bの値を記憶していてよい。これにより、制御部51は、情報源111Mを介してパラメータa,bの値を取得することができる。
【0102】
また、情報源111Mは、パラメータE
MIN及びE
MAXの値をさらに記憶していてもよい。但し、霧化部111Rが抵抗発熱体である場合、電力量Eは霧化部111Rに印加される電圧Vs及び電圧Vsの印加時間Tに影響される。そのため、E
MIN及びE
MAXは、電圧Vs、印加時間T
MIN及びT
MAXによって特定することもできる。すなわち、上述した情報源111Mは、パラメータE
MIN及びE
MAXの代わりに、パラメータ電圧Vs、印加時間T
MIN及びT
MAXを記憶していてもよい。なお、電圧Vsは、E
MIN及びE
MAXをT
MIN及びT
MAXに置き換えるために用いられるパラメータであり、一定値であってもよい。電圧Vsが一定値である場合、電圧Vsは情報源111Mに記憶されていなくてもよい。実施形態では、電圧Vsは後述する基準電圧値V
Cに相当し、情報源111Mは、パラメータT
MIN及びT
MAXを記憶する。
【0103】
制御部51は、1回のパフ動作における電力量E(T)がE
MAX(T
MAX)を超えないように、霧化部111Rに供給される電力量を制御してもよい。具体的には、例えば、電力量E(T)がE
MAX(T
MAX)に達した場合、制御部51は抵抗発熱体111Rへの電力供給を終了する。
【0104】
霧化部111Rへ供給される電力量をE、バッテリ40の出力電圧値をV、霧化部への電圧の印加時間をT、霧化部(抵抗発熱体)111Rの電気抵抗値をRとすると、「E=(V
2/R)×T」の関係式が満たされる。したがって、制御部51は、「E
T=(V
2/R)×T」の関係式に従って、目標エアロゾル量A
Tを発生させるために必要な目標電力量E
Tから、バッテリ40の出力電圧値V及び霧化部への電圧の印加時間Tを算出することができる。なお、目標電力量E
Tは、前述したように目標エアロゾル量A
Tに基づき決定することができる。「E
T=(V
2/R)×T」の関係式に従って、目標エアロゾル量A
Tを発生させるために必要な出力電圧値と、その出力電圧値を霧化部に印加すべき印加時間とを算出することができる。
【0105】
なお、V及びTは、制御部51によって検出可能な値であり、Rは情報源111Mからの読み出しによって制御部51が取得可能な値である。すなわち、情報源111Mは、霧化部(抵抗発熱体)111Rの電気抵抗値Rを記憶していることが好ましい。なお、Rは、制御部51によって推定されてもよい。
【0106】
ここで、制御部51は、前述のように算出された出力電圧値及び印加時間で霧化部111Rに電力を供給すればよい。これにより、前述した目標エアロゾル量A
Tのエアロゾルを霧化部111Rで発生させることができる。
【0107】
ユーザが複数回のパフ動作を行う場合、一例として、制御部51は、各回のパフ動作において同一の電圧値及び印加時間で霧化部111Rに電力を供給してもよい。この代わりに、
図6に示すように、パフ動作の回数(パフ回数)の増大に伴うバッテリ40の電圧降下が想定されるケースでは、制御部51は、バッテリ40の電圧降下に基づく霧化部への供給電力の低下を抑制するように、バッテリ40の出力電圧値及び印加時間をパフ回数に伴って補正することが好ましい。この場合、霧化部111Rへ供給される電力量をE、バッテリ40の出力電圧値をV、霧化部への電圧の印加時間をT、霧化部(抵抗発熱体)111Rの電気抵抗値をRとすると、概ね「E=D×(V
2/R)×T」の関係式が満たされる(
図6参照)。ここで、Dは、電圧降下に起因する補正項である。
【0108】
具体的には、補正項Dは、バッテリ40の出力電圧値V
A及びバッテリの基準電圧値V
Cに基づいて算出される。基準電圧値V
Cは、バッテリ40の種類等に応じて予め定められた値であり、少なくともバッテリ40の終止電圧よりも高い電圧である。バッテリ40がリチウムイオン電池である場合には、例えば、基準電圧値V
Cを3.2Vとすることができる。
【0109】
詳細には、
図6に示すように、バッテリの出力電圧値V
Aは、パフ回数の増大に伴って低下する。従って、補正項Dによる補正をしない場合、霧化部に供給される電力量Eもパフ回数の増大に伴って低下する(
図6の一点鎖線参照)。結果として、1回のパフ動作で生成されるエアロゾル量Aがパフ回数の増大とともに変化する。
【0110】
このような課題を解決するべく、制御部51は、D=V
C/V
Aの式に従って、補正項Dを設定する。このような補正項を導入すると、バッテリの出力電圧値V
Aが低下したときの、霧化部111Rへの電力量Eの低下を緩和することができる。好ましくは、制御部51は、D=V
C2/V
A2の式に従って、補正項Dを設定する。このような補正項を導入すると、バッテリの出力電圧値V
Aが低下したときの、霧化部111Rへの電力量Eの低下をより緩和することができる。
【0111】
上記のようなバッテリ40の電圧降下の観点から、制御部51は、「E
T=D×(V
2/R)×T」の関係式に従って、目標エアロゾル量A
Tを発生させるために必要な目標電力量E
Tから、霧化部111Rに印加すべき電圧値V及び印加時間Tを算出することができる。なお、目標電力量E
Tは、前述したように目標エアロゾル量A
Tに基づき決定することができる。この関係式から霧化部111Rに供給する目標電力量E
Tに基づき、電圧値V及び印加時間Tを決定することで、目標エアロゾル量A
T、すなわち流量比βに関する補正値を考慮しつつ、バッテリ40が電圧降下したときであっても1回のパフ動作で生成されるエアロゾル量を均一化することができる。
【0112】
ここで、霧化部111Rに供給する電力量の調整は、抵抗発熱体111Rに印加される電圧の絶対値の調整、又は抵抗発熱体111Rに印加される電圧の印加時間(すなわち、パルス幅及びパルス間隔)の調整、又はそれらの組み合わせによって行うことができる。なお、霧化部111Rに印加される電圧値の絶対値の補正は、DC/DCコンバータを用いて実現される。DC/DCコンバータは、降圧コンバータであってもよく、昇圧コンバータであってもよい。
【0113】
なお、制御部51は、関係式「A=a×E+b」と、「E=(V
2/R)×T」又は「E=D×(V
2/R)×T」とに基づいて、霧化部111Rへの供給電力量、又は印加電圧及び印加時間から、霧化部111Rで生成されるエアロゾルの量を推定することもできる。
【0114】
ここで、1回のパフ動作で発生するエアロゾル量は、1回のパフ動作で消費されるエアロゾル源の量と実質的に等しい。したがって、制御部51は、関係式「A=a×E+b」と、「E=(V
2/R)×T」又は「E=D×(V
2/R)×T」とに基づいて、霧化部111Rへの供給電力量、又は印加電圧及び印加時間から、消費されたエアロゾル源の量を推定することもできる。
【0115】
(パフ動作中の霧化部の制御)
図7は、霧化部111Rに電力供給を行っているとき、すなわちパフ動作中の制御部51の動作を示すフローチャートである。制御部51は、パフ動作中に霧化部111Rにおいて生成されたエアロゾル量の累積値を算出する(ステップS702)。前述したように、エアロゾルの生成量は、霧化部111Rへの供給電力量によって推定できる。すなわち、1回のパフ動作により霧化部111Rで発生するエアロゾルの生成量は、例えば、「A=a×E+b」、具体的には「E=(V
2/R)×T」、より具体的には「E=D×(V
2/R)×T」の関係式によって推定できる。
【0116】
制御部51は、バッテリ40から霧化部111Rへ供給される電力量(=電力×通電時間)を経時的に観測し、その電力量から推定されるエアロゾルの生成量を逐次加算する。これにより、制御部51は、霧化部111Rにおいて生成されたエアロゾル量の累積値を推定的に得ることができる。
【0117】
制御部51は、第1分流路140Aを通過したエアロゾル量の累積値を算出する(ステップS704)。第1分流路110Aを通過したエアロゾル量は、霧化部111Rで生成されたエアロゾル量の推定値と流量比βとから計算できる。制御部51は、第2分流路140Bを通過したエアロゾル量の累積値を同様に算出してもよい。なお、ステップS704は任意であり、省略されてもよい。
【0118】
制御部51は、霧化部111Rにおいて生成されたエアロゾル量の累積値が第1閾値を上回ったか否かを判定する(ステップS706)。エアロゾル量の累積値が第1閾値を上回っていれば、後述するステップS708へ進み、そうでなければ、前述のステップS702へ戻る。
【0119】
上記ステップS704において第1分流路140Aを通過したエアロゾル量の累積値を算出した場合、制御部51は、霧化部111Rにおけるエアロゾル生成量の累積値が第1閾値を上回ったか否かを判定するのに代えて、第1分流路140Aを通過したエアロゾル量の累積値が前記第1閾値に対応する所定の閾値を上回ったか否かを判定することとしてもよい。
【0120】
なお、ステップS706の判定は、例えば、1)1回のパフ動作が終了した後、2)吸引センサ50によってパフ動作が検知されてからエアロゾルの霧化が開始されるまでの所定のタイムラグ時間の間、3)パフ動作中(霧化部111Rへの通電期間中)、のいずれのタイミングで行ってもよい。
【0121】
ステップS708において、制御部51は、霧化部111Rにおけるエアロゾルの生成量を変化させる。具体的には、制御部51は、第1分流路140Aを通過するエアロゾル量が増大するように、霧化部111Rを制御する。香味源132からの香味成分の放出能力は、エアロゾルの通気によって徐々に低下することがある。よって、制御部51は、香味源132から放出される香味成分の量の低下を補うために、第1分流路140Aを通過するエアロゾルの累積値が所定の第1閾値を上回ったときに、第1分流路140Aを通過するエアロゾル量を増加させる。この場合、ステップS706の判定で用いられる第1閾値は、香味源132からある一定量の香味成分を消耗させるのに十分な累積エアロゾル量に相当する。このような制御によって、香味吸引器100は、香味源132の消耗による影響を抑え、ユーザに提供する香味成分の量を長期にわたって均一化することができる。
【0122】
ステップS710において、制御部51は、霧化部111Rにおいて生成されたエアロゾル量の累積値が第2閾値を上回ったか否かを判定する。エアロゾル生成量の累積値が第2閾値を上回っていれば、ステップS712へ進み、そうでなければ、ステップS702へ戻る。第2閾値は、上記の第1閾値よりも大きな値である。上記のステップS704において第1分流路140Aを通過したエアロゾル量の累積値を算出した場合は、制御部51は、霧化部111Rにおけるエアロゾル生成量の累積値が第2閾値を上回ったか否かを判定するのに代えて、第1分流路140Aを通過したエアロゾル量の累積値が前記第2閾値に対応する所定の閾値を上回ったか否かを判定することとしてもよい。
【0123】
ステップS712において、制御部51は、霧化部111Rへの電力供給を停止する。これによって、香味吸引器100は、過剰の香味がユーザに供給されることを防止することができる。また、著しく香味源の香味成分の放出能力が低下したときに、香味吸引器100を自動的に停止することもできる。
【0124】
上記のステップS710の判定は、前述したステップS706と同様、例えば、1)1回のパフ動作が終了した後、2)吸引センサ50によってパフ動作が検知されてからエアロゾルの霧化が開始されるまでの所定のタイムラグ時間の間、3)パフ動作中(霧化部への通電期間中)、のいずれのタイミングで行ってもよい。
【0125】
1回のパフ動作が終了した後にステップS710の判定を実施する場合、ステップS712の制御によりユーザのパフ動作中にエアロゾルの霧化が中断されることがなく、ユーザに与える違和感を抑制することができる。
【0126】
なお、ステップS706の判定及びそれに続くステップS708の制御と、ステップS710の判定及びそれに続くステップS712の制御は、順序を入れ替えて実施することもできる。
【0127】
[第2実施形態]
以下において、第2実施形態について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について説明する。
【0128】
基準エアロゾル量A
Rは、霧化部111Rで生成されるエアロゾルの量であって、予め設計された量によって規定される。第2実施形態では、より具体的には、基準エアロゾル量A
Rは、流量比が予め設計された値β’に一致するときの第1分流路140Aに通過させるべきエアロゾル量の設計値を、予め設計された値β’で割った値によって規定される。言い換えると、基準エアロゾル量A
Rは、予め設計された値β’と同じ流量比βを有する香味ユニット130及び/又は霧化ユニット111が用いられたときに、第1分流路140Aに通過させるエアロゾル量が上記設計値となるように、霧化部111Rで生成されるエアロゾル量に一致する。
【0129】
目標エアロゾル量A
Tは、基準エアロゾル量A
Rと流量比βとに基づいて算出される。具体的一例として、目標エアロゾル量A
Tは、流量比βが予め設計された値β’より大きいとき、流量比が予め設計された値β’に一致するときの目標エアロゾル量より小さく設定され、流量比βが予め設計された値β’より小さいとき、流量比が予め設計された値β’に一致するときの目標エアロゾル量より大きく設定される。
【0130】
具体的一例として、目標エアロゾル量A
Tは、基準エアロゾル量A
Rと流量比の予め設計された値β’との積を流量比βで割った値に設定される(すなわちA
T=A
R×β’/β)。この場合、1回のパフ動作において第1分流路140Aに流れるエアロゾル量が、流量比βによらず一定になるように目標エアロゾル量A
Tが決められる。
【0131】
制御部51は、霧化部111Rによって生成されるエアロゾル量が目標エアロゾル量A
Tとなるように、霧化部111Rを制御する。
【0132】
(霧化部への供給電力の制御)
第1実施形態と同様に、制御部51は、「E
T=(A
T−b)/a」の関係式から目標エアロゾル量A
Tのエアロゾルを発生させるために必要な目標電力量E
Tを算出することができる。すなわち、パラメータa,bの値が既知であれば、制御部51は、「E
T=(A
T−b)/a」の関係式を満たすように、目標エアロゾル量A
Tから必要な電力量E
Tを算出することができる。なお、パラメータa,bについては、第1実施形態で説明したとおりである。
【0133】
したがって、目標エアロゾル量A
Tが、基準エアロゾル量A
Rと流量比βに基づいて関係式「A
T=A
R×β’/β」によって決定される場合には、制御部51は、「E
T=((A
R×β’/β)−b)/a」の関係式を満たすように目標エアロゾル量A
Tから目標電力量E
Tを算出することができる。目標電力量E
Tを示す数式が形式的に変更されることを除き、霧化部111Rへの電力制御は、第1実施形態と同様に行うことができる。
【0134】
[第3実施形態]
以下において、第3実施形態について説明する。以下においては、第1実施形態に対する相違点について説明する。
【0135】
第1実施形態では、香味源130に備えられた情報源134Mは、流量比βに関する値を記憶していた。これに対して、第3実施形態では、情報源134Mは、流量比βに関する値と対応付けられた識別情報を記憶する。
【0136】
また、第1実施形態では、霧化ユニット111に備えられた情報源111Mは、霧化ユニット111の固有パラメータ(a,b,T
MIN,T
MAX)や、霧化部(抵抗発熱体)111Rの電気抵抗値(R)等を記憶する。これに対して、第2実施形態では、情報源111Mは、これらの情報と対応付けられた識別情報を記憶する。
【0137】
(ブロック構成)
以下において、第2実施形態に係る香味吸引器のブロック構成について説明する。
図8は、第2実施形態に係る香味吸引器100のブロック構成を示している。なお、
図8では、
図3と同様の構成について同様の符号を付していることに留意すべきである。
【0138】
ここで、
図8において、通信端末200は、サーバ300と通信を行う機能を有する端末である。通信端末200は、例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットなどである。
【0139】
サーバ300は、流量比βに関連する値を格納する外部記憶媒体である。サーバ300は、さらに霧化ユニット111の固有パラメータ(a,b,T
MIN,T
MAX)や抵抗発熱体111Rの抵抗値(R)を格納していてもよい。また、情報源134M,111Mは、上述したように、これらの情報と対応付けられた識別情報を記憶している。
【0140】
図8に示すように、制御部51は、外部アクセス部53を通じて、直接的又は間接的にサーバ300にアクセスする機能を有する。
図8では、外部アクセス部52が通信端末200を介してサーバ300にアクセスする機能を例示している。このようなケースにおいて、外部アクセス部53は、例えば、通信端末200と有線で接続するためのモジュール(例えば、USBポート)であってもよく、通信端末200と無線で接続するためのモジュール(例えば、Bluetooth(登録商標)モジュール或いはNFC(Near Field Communication)モジュール)であってもよい。
【0141】
但し、外部アクセス部53は、サーバ300と直接的に通信を行う機能を有していてもよい。このようなケースにおいて、外部アクセス部53は、無線LANモジュールであってもよい。
【0142】
通信端末200は、情報源111M,134Mから識別情報を読み出すとともに、読み出された識別情報を用いて、識別情報と対応付けられた情報、すなわち、流量比βに関する値や、霧化ユニット111の固有パラメータ(a,b,T
MIN,T
MAX)、抵抗発熱体111Rの抵抗値(R)等をサーバ300から取得する。流量比βに関する値や、霧化ユニット111の固有パラメータ(a,b,T
MIN,T
MAX)、抵抗発熱体111Rの抵抗値(R)等は、通信端末200から外部アクセス部53を介して制御部51に送られる。
【0143】
制御部51は、通信端末200を介してサーバ300から取得した流量比βに関する値や霧化ユニット111の固有パラメータ等に基づいて、前述したように霧化部111Rに供給する電力制御を行うことができる。
【0144】
第2実施形態では、情報源111M,134Mはメモリである。これに対して、情報源は、霧化ユニット111や香味ユニット130に設けられるバーコードや識別ラベルであってもよい。また、このようなバーコードや識別ラベルは、例えば霧化ユニット111や香味ユニット130の外側面に設けられたり、霧化ユニット111や香味ユニット130と一緒に同梱される説明書に設けられたり、霧化ユニット111や香味ユニット130を収容する箱などに設けられていてもよい。
【0145】
この場合、通信端末200は、バーコードや識別ラベルのような識別情報の入力又は識別情報の読み取りによって、識別情報と対応付けられた情報、すなわち、流量比βや、霧化ユニット111の固有パラメータ(a,b,T
MIN,T
MAX)、抵抗発熱体111Rの抵抗値(R)等をサーバ300から取得する。通信端末200によって取得されたこれらの情報は、外部アクセス部53を介して制御部51に送られる。
【0146】
第2実施形態に係る香味吸引器の場合、制御部51は、香味ユニット130が霧化ユニット111に取り付けられていない状態、又は香味ユニット130と霧化ユニット111のカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられていない状態で、情報源134Mを介して補正値を得ることができる。もっとも、制御部51は、香味ユニット130が霧化ユニット111に取り付けられた状態、又は及び香味ユニット130と霧化ユニット111のカートリッジがバッテリユニット112に取り付けられた状態で、補正値を取得してもよい。
【0147】
目標エアロゾル量A
Tの算出は、補正値の取得直後に行ってもよいし、補正値の取得後所定のタイミングで行ってもよい。目標エアロゾル量A
Tの算出に関する所定のタイミングについては、第1実施形態で説明したとおりである。
【0148】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更が可能である。