(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応槽は、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で接続されており、前記反応混合物は、液面レベルの高低差を利用して順次移動する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の連続脱塩重縮合装置。
収容室をさらに備えており、前記複数の反応槽のそれぞれは、回転中心を有する1以上の仕切板を前記収容室内に設けることによって隔てられた反応槽である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の連続脱塩重縮合装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0014】
〔実施形態1〕
図1は、本発明に係る連続重合装置の一実施形態(以下、「実施形態1」という。)を示す部分断面図である。以下、
図1に基づき、実施形態1の構成を説明する。
<連続重合装置>
実施形態1に係る連続重合装置100は、反応槽1a、1b、および1cの複数の反応槽を収容する収容室2を備えている。
【0015】
収容室2の形状は、反応槽1aに接する側壁3aおよび反応槽1cに接する側壁3bを底面とする中空円柱形を横倒ししたものである。なお、収容室2の形状はこれに限定されず、中空角柱形を横倒ししたもの等でもよい。
【0016】
収容室2の側壁3aには、収容室2に、原料モノマー等の原料および溶媒を連続的又は断続的に供給する供給ライン4が接続されており、これらは複数あってもよい。必要に応じて収容室2に水を供給する水供給ラインを接続してもよい。収容室2の側壁3bには、反応混合物に洗浄等の処理を適宜に施した反応処理物を収容室2から回収する反応処理物回収ライン7が接続されている。溶媒および各種原料は、気相部を介して反応槽1aの液相に供給されてもよいし、直接、反応槽1aの液相に供給されてもよい。
【0017】
本実施形態における反応処理物とは、上記の通り、反応混合物に洗浄等の処理を適宜に施したものであり、少なくとも一部の副生塩が分離または除去された反応混合物のことを示す。
【0018】
また、収容室2の壁面には、反応槽毎に温度を調節するヒーター等の温度制御装置(図示せず)が接続されていてもよく、これにより、例えば、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応槽1a〜1cの温度を上昇させることもできる。
【0019】
収容室2内に収容される複数の反応槽は、収容室の気相部を介して互いに連通するように、任意の隔離手段で隔離されている。
図1においては、反応槽1aと反応槽1bとは、収容室2の下部に設けられた隔壁8aによって隔てられ、反応槽1bと反応槽1cとは同じく隔壁8bによって隔てられている。反応槽1a、反応槽1bおよび反応槽1cは、収容室2における気相部を介して、互いに連通している。
【0020】
反応槽1a、反応槽1bおよび反応槽1cは、上記順番で直列に接続されている。なお、前記反応混合物の移動方向の最上流の反応槽1aを除いた各反応槽において、前記移動方向の上流側の隔壁の最小高さは、その反応槽の前記最大液面レベルよりも高い。即ち、反応槽1bにおいて、前記移動方向の上流側の隔壁8aの最小高さは、反応槽1bの最大液面レベルよりも高く、反応槽1cにおいて、前記移動方向の上流側の隔壁8bの最小高さは、反応槽1cの最大液面レベルよりも高い。これにより、反応槽1bから反応槽1aへの逆流、および、反応槽1cから反応槽1bへの逆流が防止される。反応槽1a、反応槽1bおよび反応槽1cは、それぞれ反応混合物9a、反応混合物9b、および反応混合物9cを収容し得る。反応槽1cの下流には沈降分離槽を設けてもよい(詳細は後述する)。
【0021】
このように、本発明に係る連続重合装置の好ましい一実施形態において、反応槽は、隣接する反応槽同士の組み合わせにおいて少なくとも1組以上が、反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で接続され、反応混合物は、最大液面レベルの高低差により、最大液面レベルのより高い反応槽から最大レベルのより低い反応槽に移動する構成としてもよい。
【0022】
この構成によれば、液面レベルの差と重力とに従って反応混合物が移動するため、反応混合物を次の反応槽へ移動させるために別途手段を設ける必要がなく、簡素な装置構成を実現することができる。
【0023】
収容室2においては、反応槽1a中の反応混合物9aを撹拌する撹拌翼10a、反応槽1b中の反応混合物9bを撹拌する撹拌翼10b、および反応槽1c中の反応混合物9cを撹拌する撹拌翼10cが、同一の撹拌軸11に設置されている。撹拌軸11は、収容室2外から側壁3aを貫き、側壁3bに達するように設置されている。撹拌軸11の側壁3a側の末端には、撹拌軸11を回転させる回転駆動装置12が設置されている。
【0024】
収容室2の側壁3a近傍には、排気ライン13の一端が接続されている。排気ライン13の他端には、収容室2における気相からの脱水を行う脱水部14が接続されている。
【0025】
収容室2の側壁3bには、収容室2における気相と連通し、反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、即ち、反応槽1cから反応槽1aに向けて、該気相に不活性ガスを送り込む送気部28が、送気ライン29を介して接続されている。不活性ガスとしては、特に限定されず、例えば、アルゴン等の希ガス;窒素等が挙げられる。
【0026】
また、収容室2の側壁3bには、さらに、反応処理物回収ライン7が接続されている。反応処理物回収ライン7から回収された反応処理物は、適宜、混入している微量の固体を濾過等により分離除去した後、必要に応じて、さらなる精製操作または追加の重合反応等に付される。一方、分離除去された固体は、水等に溶解され、検水後に排出される。本実施形態における固体とは、例えば、脱塩重縮合により副生する塩および反応原料等が挙げられる。
【0027】
反応混合物の移動方向の最下流に位置する反応槽1cの底部には、反応混合物に含まれる固体を沈降により分離するとともに、反応混合物の向流洗浄を行う洗浄部5が設けられている。なお、洗浄部は、最下流に位置する反応槽のさらに下流側に設けられていてもよい。本明細書における反応槽のさらに下流側とは、例えば、反応槽1bとは反対側で反応槽1cに隣接した沈降分離槽、および反応処理物回収ライン7の途中等を挙げることができる。洗浄部を、最下流に位置する反応槽またはその下流側に設けることにより、反応処理物回収ライン7から回収される反応処理物は、副生塩等の固形不純物の含有量が大幅に減じられた状態で回収することができ、その後の精製操作等を簡略化し得る点で好ましい。
【0028】
洗浄部において、洗浄される対象物は、固体を含む反応混合物等が意図される。
【0029】
連続重合装置100は、更に、重合体を更に高分子量化させる反応が行われる分子鎖延長部を追加してもよい。分子鎖延長部は、反応処理物回収ライン7から回収された反応処理物に対し、追加の重合反応を行う後重合部が好ましい。後重合部としては、重合缶等の重合反応槽、押出機、または加熱処理器による後重合部が挙げられる。重合反応槽方式では、重合助剤、及び、追加の重合反応の原料である分子鎖延長剤または官能基付与剤と一緒に反応させることで、より重合度の高い重合体および分岐または官能基を有する重合体等を得ることができる。押出機としては、好ましくは溶融状態で分子鎖延長を行えるニーダー、一軸または多軸の加熱混練機等を用いることができる。必要に応じて官能基付与剤等と一緒に混練することで、所望の重合体を得ることができる。また加熱処理器で、酸素存在下または不活性ガス存在下で熱処理することにより、架橋/分岐反応により分子鎖延長をすることができる。
【0030】
別の実施態様において、洗浄部は、いずれの反応槽に設けられていてもよい。好ましくは、上流から数えて2番目以降の反応槽、より好ましくは最下流に位置する反応槽に設けられる。洗浄部をより下流側に設けることで、反応液と共に最下流の反応槽に至った副生塩等の固体は、最終生成物である重合体が溶解した液体と分離される。これにより、最終生成物である重合体は、重合溶媒等により洗浄され、塩等の固形不純物を除かれた状態で効率よく回収することができる。
【0031】
さらに例えば、洗浄部は、副生塩が発生し易い反応槽に設けてもよい。洗浄部は反応槽の底部に設けることが好ましく、更に最底部に設けることがより好ましい。これにより、反応槽の底部に副生塩等の固体が蓄積して反応空間が縮小することを防ぎ、装置の洗浄およびメンテナンスの頻度を減じることができる。また、重力により反応槽底部に堆積した副生塩等を効率よく回収することができ、固体の分離除去のための複雑な構成を別途設ける必要がなく、簡素な装置構成を実現することができる。さらに別の実施態様において、洗浄部は、複数の反応槽の底部に設けることもできる。
【0032】
また、連続重合装置100において、反応混合物の移動方向の最下流に位置する反応槽1cに反応槽1bとは反対側で隣接した沈降分離槽をさらに設け、当該沈降分離槽の底部に洗浄部が設けられてもよい。
【0033】
本実施形態において、洗浄部5は、鉛直方向に延びる筒状構造部を有し、反応槽1cの底部に垂設されている。以下、筒状構造部の反応槽1c側を上部、反対側を下部とする。洗浄部5を構成する筒状構造部には、その筒内に静的な混合機構6が設けられている。また、洗浄部5には、洗浄部5の下方から上方に向けて、洗浄液供給ラインを通して洗浄液が供給される。そのため、筒内では、固体が沈降する下降流と、洗浄部の下方から上方に向けて供給される洗浄液による上昇流が存在し、静的な混合機構6により、これらが撹拌される。これにより、動的な撹拌機によるエネルギー消費なしに、ショートパスによる撹拌不足を防ぎ、反応混合物を効率よく洗浄することができる。洗浄液としては、反応混合物の特性に影響を与えずに、反応混合物から副生塩等の固体が分離できれば特に限定されるものではないが、例えば、重合溶媒、重合に使用した重合溶媒以外の有機溶媒、およびこれらと水の混合物等を用いることができる。
【0034】
重合溶媒としては、例えば、有機アミド溶媒;有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒;環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒が挙げられる。
【0035】
有機アミド溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジプロピルホルムアミド等のN,N−ジアルキルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド等のN,N−ジアルキルアセトアミド;N−メチル−ε−カプロラクタム、N−エチル−ε−カプロラクタム、N−プロピル−ε−カロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム化合物;N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」とも称する。)、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン又はN−シクロアルキルピロリドン;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N,N’−ジエチルイミダゾリジノン、N,N’−ジプロピルイミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物;テトラメチル尿素等のテトラアルキル尿素化合物;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のヘキサアルキルリン酸トリアミド等が挙げられる。本発明において、重合溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒としては、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、ヘキサメチレンスルホン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等のスルホン;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシドが挙げられる。
【0037】
環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒としては、1−メチル−1−オキソホスホラン等が挙げられる。
【0038】
重合に使用した重合溶媒以外の有機溶媒には、上記の重合溶媒でかつ重合に使用しなかった重合溶媒および重合溶媒以外の有機溶媒を含む。重合溶媒以外の有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、アミン類、カルボン酸類およびスルホン酸類等が挙げられる。
【0039】
洗浄部5の上部には、反応槽の底部に堆積した固体を含むスラリーを供給する一方で、洗浄液を排出する開口部(図示せず)が設けられている。
【0040】
洗浄部5の下部には、主にN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の重合溶媒および無機固体を含むスラリーを取り出すスラリー取出ライン、および、洗浄液を供給する洗浄液供給ライン(いずれも図示せず)が設けられている。供給される洗浄液の液量は取出しスラリー液量と同等以上であることが洗浄の程度を高める観点から好ましい。洗浄液により浄化された副生塩等の固体は、スラリー取出ラインから取り出され、その後、必要に応じて、水に溶解後、誘電率等を測定し、検水に付され、排出される。
【0041】
洗浄部5は、固体が逆流して洗浄液排出口から反応槽内に排出されないように、逆流を防ぐ任意の機構を設けてもよい。例えば、固体の沈降速度が重力方向に正の値になるように洗浄液を制御する機構が挙げられ、各供給口および排出口の流路面積を調節する等によって洗浄液の供給量を制御することにより、逆流を防止することができる。
【0042】
洗浄部5の筒状内部に固定される静的な混合機構6としては、筒状内に流入する固体の下降流および洗浄液の上昇流に対し、これらの流れの分割と合流を繰り返して混合・撹拌する任意の静的な混合機構が挙げられる。静的な混合機構6としては、例えば、スタティックミキサー、または内壁に任意の角度で衝突板を設けた混合機構を好適に用いることができる。動的な撹拌機を設けず、スタティックミキサー等による混合・撹拌を行うことにより、エネルギー消費を抑えることができる。また、静的な混合機構は動的な攪拌機と比較して構造が単純であるため、洗浄およびメンテナンスの手間を削減することができる。
【0043】
スタティックミキサーは、洗浄部を構成する、取り外し可能な装置であって、例えば、1以上のらせん状捻り翼を用いることができる。らせん状捻り翼は、例えば、長方形の板状を180度捻った構造を有する。スタティックミキサー内に流入した流体はらせん状捻り翼により混合および撹拌される。本実施形態において公知のスタティックミキサーを用いることができ、例えば、スタティックミキサーの製造業者としては、ノリタケカンパニーリミテド製のスタティックミキサー、マーキュリー・サプライ・システムズ製のスタティックミキサー、ジェイエムエス製のスタティックミキサー等が挙げられる。
【0044】
洗浄部のサイズとしては、特に限定されず、接続される反応槽のサイズ、副生し得る塩等の固体の量、および洗浄に付される反応混合物の量等に応じて適宜に設定することができる。例えば、副生塩の量が多い場合は、筒状構造部およびその内部に格納される静的な混合機構の長さを延長することにより、洗浄の程度を高めることができる。
【0045】
次に、
図1に基づき、本実施形態に係る重合体の連続製造方法について、連続重合装置の動作の説明と併せて説明する。
<重合体の連続製造方法>
本製造方法は、気相を介して互いに連通する複数の反応槽の少なくとも1つに重合溶媒および反応原料を供給する供給工程と、前記重合溶媒中で重合反応を行って反応混合物を形成する重合工程と、前記複数の反応槽の気相部に存在する水の少なくとも一部を除去する脱水工程と、各反応槽に前記反応混合物を順次移動させる工程と、前記反応混合物に含まれる固体を沈降により分離するとともに、前記反応混合物の向流洗浄を行う工程と、を含み、前記各工程は並行して行われる。
【0046】
本製造方法について具体的に説明すると、供給工程において、収容室2には、重合溶媒および反応原料が、供給ライン4を通じて供給される。原料および溶媒は、それぞれの供給ラインから別々に供給しても、その一部又は全部をあらかじめ混合してから供給してもよい。
【0047】
供給された溶媒および各種原料は、重合工程において、まず、反応槽1aにおいて混合され、重合溶媒中で重合反応が行われることにより、反応混合物9aが形成される。なお、場合によっては、反応槽1aにおいては重合反応が実質的に進行せず、脱水のみを行い、反応槽1b以降で重合反応が進行する構成であってもよい。
【0048】
なお、反応槽1a〜1cのうち少なくとも一つの反応槽に水を添加してもよい。その際に添加する水の量は、反応原料の量に応じて適宜に調整することができる。
【0049】
本製造方法では、脱水工程において、排気ライン13を通じた脱水部14の作用(詳細は後述する。)により、収容室2内の水の少なくとも一部が、収容室2における気相を介して、収容室2から除去される。これにより、反応槽1a〜1cに存在する水の少なくとも一部は除去される。収容室2内の水としては、収容室2に供給した水が挙げられる。ここで、収容室2に供給した水とは、例えば、積極的に収容室2に供給した水、および、積極的に水を収容室2に供給していない場合には、通常、反応原料に含まれた状態で反応原料とともに収容室2に供給された水を指す。水は蒸気圧が高いため、収容室2の気相に水分が多く含まれると、収容室2内が高圧となりやすく、収容室2の耐圧化が必要となるため、省資源化、設備コスト削減等を図りにくい。また重合反応を阻害させない程度まで水分量を低減することが望ましい。脱水部14により脱水を行い、収容室2内を低圧化することで、省資源化、設備コスト削減等を効果的に実現することができ、また脱水反応をスムーズに行わせることができる。
【0050】
反応系である収容室2内の圧力は、供給される溶媒が沸騰しない圧力まで低下させることができ、各反応槽の温度にもよるが、例えば、ゲージ圧0.3MPa程度まで低くすることができ、さらにはゲージ圧0.2MPa程度まで低くすることができる。また、好ましくはゲージ圧0.04MPa程度、さらにはゲージ圧0.0001MPa程度の加圧状態まで、または、ゲージ圧0MPaまで低くすることができる。負のゲージ圧にすることも可能ではあるが、負圧を生じさせるためのエネルギーコスト、溶媒の沸点低下などの観点から、加圧状態であることが好ましい。
【0051】
反応槽1a〜1cは、上述したように、収容室2における気相を介して、互いに連通しており、収容室2における気相の圧力は均一である。このことから、脱水工程においては、脱水部14により、反応槽1a〜1cのいずれからも同等に水が除去される。そのため、反応槽1aから反応槽1cに向かうほど、即ち、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応混合物中の水の量が少なくなる。その結果、水による反応阻害が抑制され、重合反応が促進される。また、反応混合物の沸点が上昇するため、高温での重合が可能となり、更に重合反応を促進できる。そして、上述の重合反応促進により、反応混合物の温度が上昇しやすくなり、更に重合反応が促進されやすくなる。
【0052】
以上の通り、連続重合装置100では、例えば、上述の通りに各部を配置し、連続反応を行うこと全体を通じて、前記移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応槽1a〜1cの温度を上昇させることもできる。言い換えれば、反応槽1a〜1cの内部温度が、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど高くなるように設けることができる。
【0053】
また、上述したように、反応槽1a〜1cは、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順に接続されている。これにより、反応混合物の移動工程において、最大液面レベルの高低差を利用して反応混合物を順次移動させることができる。より具体的には、反応混合物9aおよび反応混合物9bが最大液面レベルを超えたときに、それぞれ隔壁8aおよび隔壁8bを超えることができる。なお、反応槽1a、反応槽1b、および反応槽1cが、収容室2における気相を介して互いに連通することが妨げられない限り、隔壁8aおよび8bの形状は特に限定されず、任意の形状であってもよい。また、隔壁の開口部、例えば貫通口またはスリット(いずれも図示せず)により反応液が移動する構成としてもよい。
【0054】
各反応槽の反応混合物中には、固体、例えば、重合反応の進行に伴い副生する塩が存在し得る。これらの固体は、撹拌翼による撹拌および移動流により溶液中に分散され、隔壁を超えて順次移動し、洗浄部5を備えた反応槽1cに至る。ここで、本製造方法の洗浄工程において、溶液中に分散していた固体は、重力、および、洗浄部5の下方にある固体回収ラインからの排出流にしたがって反応槽1cの底部に沈殿し、湿潤状態またはスラリー状で、洗浄部の筒内を下降する。一方、洗浄液が、洗浄部5の下方から上方に向けて供給される。洗浄部5内の静的な混合機構6において、下降する固体および上昇する洗浄液が連続的に向流接触し、反応混合物の向流洗浄が行われる。
【0055】
副生し得る塩等の固体の量等に応じて洗浄時間を適宜に設定することができる。例えば、洗浄部の筒状構造部およびその内部に格納される静的な混合機構6の長さを延長したり、流速を変化させることにより、洗浄時間を適宜調節することができる。
【0056】
静的な混合機構6を通過して浄化された固体は、洗浄部5の下方の固体回収ラインから連続的、あるいは断続的に排出される。排出される固体は湿潤状態またはスラリー状であり得る。一方、固体が分離除去された反応処理物および洗浄液は、洗浄部5の上方の洗浄液排出口から連続的に排出され、側壁3bに接続された反応処理物回収ライン7から回収される。これにより、反応槽において重合反応を連続的に進行させると共に、洗浄部において、副生塩等の固体の向流洗浄および排出を連続的に行うことができる。反応処理物回収ライン7から回収された反応混合物に対しては、適宜、精製操作および/または追加の重合反応等を行って、所望の重合体を得ることができる。排出された固体は、そのまま廃棄または再利用してもよいし、水等で希釈または濃縮後に廃棄または再利用してもよい。
【0057】
更に、重合体を更に高分子量化させる分子鎖延長工程を追加してもよい。分子鎖延長工程としては、反応処理物回収ライン7から回収された反応処理物に対し、追加の重合反応を行う後重合工程が好ましい。後重合工程としては、重合缶等の重合反応槽、押出機、または加熱処理器による後重合工程が挙げられる。重合反応槽方式では、重合助剤、分子鎖延長剤、官能基付与剤等と一緒に反応させることで、より重合度の高い重合体および分岐または官能基を有する重合体等を得ることができる。押出機としては、好ましくは溶融状態で分子鎖延長を行えるニーダー、一軸または多軸の加熱混練機等を用いることができる。必要に応じて官能基付与剤等と一緒に混練することで、所望の重合体を得ることができる。また加熱処理器で、酸素存在下または不活性ガス存在下で熱処理することにより、架橋/分岐反応により分子鎖延長をすることができる。
【0058】
本実施形態では、反応槽1a、1b、1cの内部温度のいずれもが、140℃以上である。製造される重合体がポリアリーレンスルフィド(PAS)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、またはポリエーテルニトリル(PEN)である場合、反応原料が供給される供給反応槽、すなわち反応槽1aは、160℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、さらに好ましくは180℃以上である。製造される重合体が芳香族ポリスルホンである場合、反応槽1aは、140℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましい。
【0059】
また、製造される重合体がPAS、PAEK、またはPENの場合、供給反応槽以外の反応槽、すなわち反応槽1bおよび1cそれぞれの内部温度は、200〜300℃が好ましく、210〜280℃がより好ましく、220〜270℃がさらに好ましい。製造される重合体が芳香族ポリスルホンの場合、反応槽1bおよび1cそれぞれの内部温度は、165〜260℃が好ましく、170〜250℃がより好ましく、175〜240℃がさらに好ましい。
【0060】
さらに、製造される重合体がPASの場合、供給反応槽以外の反応槽のうち、少なくとも1つの反応槽の内部温度は、230〜285℃が好ましく、235〜280℃がより好ましく、240〜275℃がさらに好ましい。製造される重合体が芳香族ポリスルホンの場合、供給反応槽以外の反応槽のうち、少なくとも1つの反応槽の内部温度は、170〜260℃が好ましく、175〜250℃がより好ましく、180〜240℃がさらに好ましい。製造される重合体がPAEKまたはPENの場合、供給反応槽以外の反応槽のうち、少なくとも1つの反応槽の内部温度は、230〜300℃が好ましく、235〜280℃がより好ましく、240〜275℃がさらに好ましい。
【0061】
本実施形態では、互いに隣接する反応槽の内部温度の差が2℃以上であることが好ましく、3℃以上であることがより好ましく、5℃以上であることがさらに好ましい。このように反応槽1a〜1cの内部温度を設定することで、供給反応槽、すなわち反応槽1aにおいて、上述した脱水工程を主として行い、反応槽1aに対して反応混合物の移動方向の下流側に設けられた反応槽、すなわち反応槽1bにおいて、重合反応を主として行うことができ、その結果、重合反応をより効率良く行うことができる。
【0062】
本実施形態では、送気部28により、反応混合物の移動方向の下流側から上流側に向けて、即ち、反応槽1cから反応槽1aに向けて、収容室2における気相に不活性ガスを送り込むことが好ましい。上述の通りに、反応混合物の移動方向の上流側から下流側に向かうほど、反応混合物中の水の量が少なくなる状態を保つためには、反応混合物から蒸発した水分が上記下流側に流れて、反応混合物上で凝縮しないようにすることが好ましい。送気部28により上記の通り上記気相に不活性ガスを送り込むことにより、水蒸気が上記下流側に流れて反応混合物上で凝縮するのを効果的に防止することができる。
【0063】
回転駆動装置12により撹拌軸11が回転し、それに伴い、撹拌軸11に設置された撹拌翼10a〜10cが撹拌軸11の周りを回転して、反応混合物9a〜9cが撹拌される。撹拌翼10a〜10cは同一の撹拌軸11に設置されている。そのため、回転駆動装置12により撹拌軸11を回転させるだけで、撹拌翼10a〜10cの全てを同じ条件で回転させ、均質な撹拌を高い効率で実現することができる。なお、本発明において、撹拌軸11は単軸の場合を示しているが、2軸又は3軸以上の多軸であってもよく、その回転数は同じであっても異なってもよい。
【0064】
重合反応が脱塩重縮合反応である場合、重合反応の進行に伴い、アルカリ金属ハロゲン化物等の塩が析出する。塩が反応槽の底部に蓄積すると、十分な重合反応を進行させるのに有効な体積が減少し、生産性の低下等が生じやすい。そのため、蓄積した塩を除去するための余計なメンテナンス作業が発生してしまう。撹拌翼により反応混合物を撹拌することにより、塩を反応混合物中に分散させて、下流側の反応槽1cまで移動させ、その後、洗浄部の下部から排出することが容易となる。一方で、撹拌が激しすぎると、反応混合物は、隔壁8aおよび隔壁8bを超えて、上流側の反応槽から下流側の反応槽へ不必要に混入しやすい。
【0065】
本実施形態の製造方法によれば、洗浄部から塩を連続的に沈降分離し、また連続的に向流洗浄を行うことができるため、多量の副生塩を生じ得る溶液脱塩重縮合反応であっても、反応空間の縮小の問題または装置内の錆の発生等を防ぎ、洗浄およびメンテナンスを容易にすることができる。
【0066】
洗浄部5を備えない反応槽(
図1においては反応槽1aおよび1b)においては、塩等の固体の分散を促進し、反応槽間での反応混合物の不必要な混入を回避できるよう、適宜、撹拌翼の形状、枚数、回転数等を調整することが好ましい。このうち、撹拌翼の回転数としては、例えば、固体が沈降しない条件、より具体的には、与えられた槽、撹拌翼の形状及び枚数等において、撹拌翼による撹拌速度が粒子浮遊限界撹拌速度以上となるような回転数が挙げられる。なお、回転数の上限は、反応混合物が隔壁8aおよび/又は隔壁8bを超えるのを防ぎやすい点で、撹拌翼の回転数が120rpm以下となるような速度が好ましく、60rpm以下となるような速度がより好ましい。また、攪拌翼の回転形状は、適宜調整することができるが、具体的には、固体が沈降しないように、攪拌翼が反応槽の底部付近を通過するような形状とすることが好ましい。
【0067】
一方、洗浄部5を備える反応槽(
図1においては反応槽1c)においては、塩等の固体を洗浄部に沈降させるように、適宜、撹拌翼の形状、枚数、回転数等を調整することが好ましい。このうち、撹拌翼の形状、枚数としては、例えば、固体が沈降する条件、より具体的には、与えられた槽の形状及び回転数において粒子浮遊限界撹拌速度以下となるような撹拌翼の形状及び枚数等が挙げられる。具体的な攪拌翼の形状としては、固体が洗浄部に沈降するように、洗浄部入口直近では攪拌翼が通過しないような形状とすることが好ましい。
【0068】
脱水部14には、収容室2からの排気が排気ライン13を通じて供給される。脱水部14は、例えば、蒸留塔として作用し、一端(例えば、下部)からは、重合溶媒を主成分とする液体が回収され、他端(例えば、上部)からは、各種原料、および水を含む蒸気が回収される。
【0069】
脱水部14から回収された重合溶媒は、適宜、精製等を経て、重合反応の反応原料として、再度、収容室2に供給してもよい。回収された重合溶媒の供給先は、反応槽1a〜1cのいずれか1つでもよいし、これらの2以上の組み合わせでもよい。
【0070】
また、連続重合装置100の駆動には、最大液面レベルの高低差および固体の沈降に基づき、重力を利用して反応混合物の移動等を行っており、多大なエネルギーが不要である。よって、連続重合装置100は、省資源化、省エネルギー化、設備コスト削減等を図りやすい。
【0071】
また、本製造方法によれば、気相を介して互いに連通する複数の反応槽の少なくとも1つに反応原料を供給すればよいので、複雑な制御等が不要であり、重合体の製造が容易となる。また、重合反応を連続的に進行させつつ、これと同時に、副生塩等の固体の除去も連続して行うことができる。
【0072】
なお、本実施形態では特定の装置を用いた重合体の連続製造方法として説明したが、本発明に係る製造方法は、少なくとも気相を介して互いに連通する複数の反応槽および洗浄部を用いるものであって、上述した供給工程、重合工程、脱水工程、移動工程および洗浄工程を含み、これら各工程が並行して行われるものであれば、本製造方法はさらに他の工程を含んでいてもよい。
【0073】
また、本実施形態では特定形状の反応槽を用いているが、反応槽の形状は特に限定されるものではない。
【0074】
さらに、本実施形態において反応槽の数は特に限定されるものではない。また、反応槽は必ずしも
図1に示すように直列に接続されている必要はない。したがって、例えば複数の反応槽のうち一部が並列に並んでいてもよい。
【0075】
さらに、複数の反応槽のうち隣り合う少なくとも1対の反応槽は、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い方の反応槽が、反応混合物が移動する方向の上流側に位置しており、最大液面レベルの高低差を利用して、反応混合物を移動させることが好ましい。これにより、少なくとも1対の反応槽においては重力を利用して反応混合物の移動を行えるため、省資源化、省エネルギー化、設備コスト削減等を図ることができる。
【0076】
さらに、本実施形態において、不活性ガスを送り込む送り込み工程は、上述した各工程と並行して行うことが好ましい。さらにまた、反応原料の一部を分離して回収する分離回収工程と、反応原料の少なくとも一部を反応槽の少なくとも一つに供給する再供給工程は、上述した工程と並行して行うことが好ましい。
【0077】
さらに、本実施形態では反応槽1aに反応原料を供給する構成について説明したが、反応原料が供給される反応槽は特定されるものではない。
【0078】
〔実施形態2〕
続いて、連続重合装置の他の例について、
図2を用いて説明する。
図2は、連続重合装置の構成の他の例を概略的に示す図である。
【0079】
図2を参照して説明すると、連続重合装置200は、第1の反応槽50、第2の反応槽51および第3の反応槽52を備えている。第2の反応槽51は第1の反応槽50に対して、第3の反応槽52は第2の反応槽51に対して、それぞれ鉛直方向下方に配置されている。
【0080】
第1の反応槽50と第2の反応槽51とは、第1の配管65によって接続されている。また、第2の反応槽51と第3の反応槽52とは、第2の配管67によって接続されている。
【0081】
第3の反応槽52の底部には、上記実施形態1におけるものと同様の構成を有する洗浄部5が設けられている。
【0082】
重合溶媒および反応原料が、供給ライン4から第1の反応槽50に供給され、第1の配管65は、第1の反応槽50中の反応混合物が最大液面レベルを超えたときに、反応混合物が第1の配管65を通って第2の反応槽51に移動するように設けられている。また、第2の配管67は、第2の反応槽51中の反応混合物が最大液面レベルを超えたときに、反応混合物が第2の配管67を通って第3の反応槽52に移動するように設けられている。そして、第3の反応槽52の底部において、固体は沈降により洗浄部の下部から排出され、浄化された反応混合物および洗浄液は、反応処理物回収ライン7から回収される。
【0083】
第1〜第3の反応槽50〜52のそれぞれは、通気部70が接続されている。通気部70を介して、第1〜第3の反応槽50〜52は気相と介して連通している。
【0084】
このような連続重合装置200の構成によって、第1の反応槽50および第2の反応槽51のそれぞれの最大液面レベルの高低差を利用して反応混合物を順次移動させても、実施形態1と同様の効果が得られる。さらに連続重合装置200によれば、実施形態1に示したような隔壁を設ける必要がない。
【0085】
上記実施形態2に係る連続重合装置は、実施形態1と同様に、重合体を更に高分子量化させる分子鎖延長部を更に有してもよい。分子鎖延長部は、反応処理物回収ライン7から回収された反応処理物に対し、追加の重合反応を行う後重合部が好ましい。後重合部としては、重合缶等の重合反応槽、押出機、または加熱処理器による後重合部が挙げられる。重合反応槽方式では、重合助剤、及び、追加の重合反応の原料である分子鎖延長剤または官能基付与剤と一緒に反応させることで、より重合度の高い重合体および分岐または官能基を有する重合体等を得ることができる。押出機としては、好ましくは溶融状態で分子鎖延長を行えるニーダー、一軸または多軸の加熱混練機等を用いることができる。必要に応じて官能基付与剤等と一緒に混練することで、所望の重合体を得ることができる。また加熱処理器で、酸素存在下または不活性ガス存在下で熱処理することにより、架橋/分岐反応により分子鎖延長をすることができる。
【0086】
〔実施形態3〕
さらに、連続重合装置の他の例について、
図3を用いて説明する。
図3は、連続重合装置の構成の他の例を概略的に示す図である。
【0087】
図3を参照して説明すると、連続重合装置300は、実施形態1の収容室22内で、反応槽を隔離する隔離手段が、隔壁ではなく、回転中心を有する仕切板である点において、実施形態1と異なる。
【0088】
本実施形態では、反応槽1aと反応槽1bとは、仕切板20aによって隔てられ、反応槽1bと反応槽1cとは、仕切板20bによって隔てられている。反応槽1a、反応槽1bおよび反応槽1cは、収容室22における気相部を介して、互いに連通している。
【0089】
また、仕切板20aの片面には、反応槽1a中の反応混合物9aを撹拌する撹拌翼10aが取り付けられている。同様に、仕切板20bの片面には、反応槽1b中の反応混合物9bを撹拌する撹拌翼10bが取り付けられている。なお、本実施形態における撹拌翼10aおよび10bは、上述の実施形態における撹拌翼10aおよび10bと異なり、内側に開口が設けられている構造を有している。
【0090】
撹拌翼10aおよび10b並びに仕切板20aおよび20bは、いずれも同一の回転軸21に設置されている。回転軸21は、収容室22外から側壁3aを貫き、側壁3bに達するように設置されている。回転軸21の側壁3a側の末端には、回転軸21を回転させる回転駆動装置12が設置されている。
【0091】
なお、撹拌翼は、仕切板に対して任意の位置に設置可能である。仕切板は撹拌翼の上流側であってもよく、下流側であってもよく、またこれらが混在してもよい。仕切板は撹拌翼と離れていても良いが、
図3のように密着して連結させることにより、仕切板の固定および補強ができるので好ましい。また、撹拌翼と仕切板は必ずしも、一対である必要はなく、隣接する仕切板の間に、撹拌翼が無いところがあってもよい。少なくとも1つの撹拌翼を設けることにより、重合反応の進行を補助すると共に、反応混合物中の固体の移動をよりスムーズにすることができる。あるいは、撹拌翼は設けなくてもよく、これにより、より簡素な装置構成が可能になる。
【0092】
仕切板の形状としては、特に限定されず、回転中心を有し、且つ、収容室22内の鉛直断面を部分的に塞ぐ一方で、隣り合う反応槽が連通するように、所定の幅のクリアランスまたは開口部を与える任意の形状であってよい。例えば、収容室22が中空円柱形である場合、
図3に示されるように、収容室の内部空間よりも一回り小さい半径を有する円盤状の仕切板であってよい。なお、仕切板の形状はこれに限定されず、中心軸を有さなくてもよい。仕切り板が中心軸を有さない場合、例えば、隣り合う仕切板が網状部材を介して連結することにより、複数の仕切り板がかご状回転物を形成してもよい。かご状回転物は、外側の仕切り板(最も側壁3b側に位置する仕切り板)に回転軸を備え、該回転軸を回転させることによって、内側の仕切り板に中心軸がなくても、各仕切板を回転させることができる。
【0093】
回転軸上に設けられる仕切板の数は、収容室のサイズや重合反応の種類等に応じて、1以上の任意の数であってよい。
【0094】
仕切板が2枚以上設けられている場合、これらは同一の形状であっても、またはそれぞれ異なっていてもよい。
【0095】
回転中心を有する1以上の仕切板を収容室内に設けることによって、装置のメンテナンスを行う際には収容室から仕切板を引き抜き、残る収容室は中空の簡素な構造であるため、少ない作業工程数で簡便に洗浄およびメンテナンスを行うことができる。
【0096】
また、各仕切板の位置は、特に限定されず、任意の位置に設けることができる。
【0097】
一方、撹拌翼の形状としては、特に限定されず、仕切板と同軸に設けられ、反応混合物を撹拌する任意の形状であってよい。撹拌翼10は、
図3に示されるように、仕切板20のいずれか一方の面に取り付けられていてもよく、または、両面に取り付けられていてもよい。または、仕切板とは別個に、回転軸21上に取り付けられていてもよい。
【0098】
反応槽1a〜1cは、その液相部どうしが互いに連通している。その結果、反応槽1aに供給された原料および溶媒は、反応混合物として重合反応を進行させながら、反応槽1bおよび1cへと順次移動する。
【0099】
反応槽1cの底部には、上記実施形態1におけるものと同様の構成を有する洗浄部5が設けられている。
【0100】
反応槽を順次移動してきた反応混合物は、反応槽1cの底部において、固体は沈降により洗浄部の下部から排出され、浄化された反応混合物および洗浄液は、反応処理物回収ライン7から回収される。
【0101】
各反応槽における反応により析出した塩等の固体は、反応槽の底部に蓄積することなく、反応混合物と共に下流方向に移動し、洗浄部から排出される。したがって、反応槽の反応空間の減少を防ぐことができる。
【0102】
また、反応槽1a〜1cは、その気相部どうしも互いに連通している。その結果、収容室22内の気相の圧力は均一となる。そして、各反応槽内で重合時に発生する蒸発成分は、装置内部の温度差等により、この気相部を介して反応槽1cから、1bおよび1aの方向へと順次移動し、排気ライン13から排出される。
【0103】
本実施形態における連続重合装置300では、収容室22の内壁と、仕切板20a〜20bのそれぞれの外縁との間には、所定の幅のクリアランスが存在する。これにより、隣接する反応槽の気相部どうし、および、液相部どうしが連通し、反応混合物、蒸発成分を含む気体等が移動する。なお、クリアランスを設ける代わりに、仕切板に開口部、例えば貫通孔またはスリットを設け、これを介して反応槽を連通させてもよい。または、クリアランスおよび開口部の両方を設けてもよい。あるいは、仕切板は、複数の細かい貫通孔を有するメッシュ状であってもよい。
【0104】
クリアランスの幅または開口部のサイズは、特に限定されず、容器の形状、仕切板の形状および数等に応じて適宜に設定することができる。
【0105】
実施形態3において、上記以外の点については、実施形態1において説明したとおりである。
【0106】
〔実施形態4〕
続いて、本発明のさらに他の一実施形態について、詳細に説明する。
【0107】
本実施形態に係る連続製造装置(図示せず)は、収容室内において、複数の反応槽が鉛直方向に隣接して配置されている。互いに隣接する反応槽は、隙間のなく固定されている仕切板によって隔たれているとともに、接続管を通して上側の反応槽から下側の反応槽へと反応混合物が順次移動するように構成されている。また各反応槽は連通管により、各反応槽の気相部が互いに連通している。そのため収容室における各反応槽の気相の圧力はほぼ同一である。気相部を連通する連通管は、反応混合物が順次移動する接続管と同一であってもよいし、接続管とは別に設けた管であってもよい。ここで、鉛直方向上側から順に第1の反応槽と、第2の反応槽が設けられている場合を例にして具体的に説明する。第1の反応槽と第2の反応槽とは第1の接続管を通じて連通しており、第1の反応槽側には、第1の接続管の管壁が突出している。第1の接続管の管壁の高さは、第1の反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルと等しくなるように設けられている。第1の接続管は、第1の反応槽と第2の反応槽とを隔てる第1の仕切り板を貫通している。
【0108】
このような構成の連続製造装置において、反応混合物が第1の反応槽の最大液面レベルを超えると、反応混合物は、第1の接続管の管壁を超えて第1の接続管に流れ込み、第1の接続管を介して第2の反応槽に流れ込む。このような連続製造装置の構成として反応混合物を順次移動させてもよい。
【0109】
また第1の反応槽と第2の反応槽は、接続管または連通管により第1の反応槽の気相部と第2の反応槽の気相部とが互いに連通している。
【0110】
洗浄部は下位の反応槽の底部に備えることが好ましく、最下位の反応槽の底部に備えることがより好ましい。
【0111】
最下位の反応槽の底部に洗浄部を備えた場合、反応槽を順次移動してきた反応混合物は、最下位の反応槽の底部において、固体は沈降により洗浄部の下部から排出され、浄化された反応混合物および洗浄液は、反応処理物回収ラインから回収される。
【0112】
各反応槽における反応により析出した塩等の固体は、反応槽の底部に蓄積することなく、反応混合物と共に下流方向に移動し、洗浄部から排出される。したがって、反応槽の反応空間の減少を防ぐことができる。
【0113】
このような構成の連続製造装置において、反応混合物の高さが第1の反応槽の最大液面レベルを超えると、反応混合物は、第1の接続管の管壁を超えて第1の接続管に流れ込み、第1の接続管を介して第2の反応槽に流れ込む。このような連続製造装置の構成として反応混合物を順次移動させてもよい。
【0114】
また第一の反応槽と第二の反応槽は、接続管または連通管により第一の反応槽の気相部と第二の反応槽の気相部とが互いに連通している。
【0115】
本発明において、洗浄部で分離・洗浄されて回収される副生塩の回収率(回収量/理論生成量)は通常20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上である。ここで、副生塩の理論生成量とは脱塩重縮合反応に供されるすべてのモノマー原料の転化率が100%に達した際に生成する副生塩の量である。
【0116】
本発明において、洗浄部で分離・洗浄されて回収される副生塩の純度は、通常80%、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上である。
【0117】
本発明における芳香族ポリチオエーテルの場合は、洗浄部で分離・洗浄されて回収される副生塩に含まれる硫黄源の含有量は、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下である。
【0118】
上記実施形態1〜4に係る連続重合装置は、溶液脱塩重縮合により得られる種々の重合体の連続製造に用いることができる。このような重合体としては、硫黄、窒素及び酸素からなる群より選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含む芳香族重合体が挙げられる。
【0119】
具体的には、芳香族環と硫黄との結合であるチオエーテル結合を有する芳香族ポリチオエーテル、芳香族環と酸素との結合であるエーテル結合を有する芳香族ポリエーテルがある。重合体中にこれらの両方の結合が共存する場合は、モル含有比率の高い方の結合に対応する芳香族重合体に分類する。
【0120】
芳香族ポリチオエーテルとして、具体的にはポリアリーレンスルフィド(PAS)、より具体的にはポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドケトン(PPSK)、ポリフェニレンスルフィドケトンケトン(PPSKK)、ポリフェニレンスルフィドスルホン(PPSS)、ポリフェニレンスルフィドケトンスルホン(PPSKS)を挙げることができる。
【0121】
芳香族ポリエーテルには、芳香族環とエーテル結合とからなる芳香族重合体のほかに、これらの基に加えてさらに、スルホン基、ケトン基、窒素を含む基から選ばれる少なくとも一つの基を含む芳香族重合体も包含する。例えば、芳香族環およびエーテル結合に加えてさらに、スルホン基を有するポリスルホン(PSU)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリエーエルスルホン(PES)に代表される芳香族ポリスルホンを挙げることができる。また、芳香族環およびエーテル結合に加えてさらに、ケトン基を有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)を挙げることができる。具体的には、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)を挙げることができる。窒素原子を含む芳香族重合体としては、芳香族環及びエーテル結合に加えてさらに、窒素を含む基が芳香族環に結合する芳香族重合体を挙げることができる。具体的にはニトリル基を有するポリエーテルニトリル(PEN)を挙げることができる。
【0122】
上記において、重合体中に上述の複数の基が共存する場合は、モル含有比率の最も高い基に対応する芳香族重合体に分類する。
【0123】
本発明の方法による製造上の容易さから、これらの中でも、芳香族ポリチオエーテルおよび芳香族ポリエーテルが好ましく、ポリアリーレンスルフィド、芳香族ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトンおよびポリエーテルニトリルがさらに好ましい。
【0124】
以下、製造される重合体がポリアリーレンスルフィド(PAS)である場合の一実施形態を説明する。
【0125】
具体的には、供給工程において、反応槽の収容室には、重合溶媒である有機極性溶媒と、反応原料である、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物および硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源、ならびにジハロ芳香族化合物を、それぞれ供給ラインを通じて供給する。反応原料の一部または全部を予め混合してから収容室に供給してもよい。例えば、有機極性溶媒とジハロ芳香族化合物との混合物、または有機極性溶媒と硫黄源との混合物を予め調製し、この混合物を収容室に供給してもよい。また、該混合物を加温してから、または加温して反応させてから、または加温せずに反応させてから供給してもよい。
【0126】
供給された有機極性溶媒、硫黄源、およびジハロ芳香族化合物、ならびに任意で使用されるその他の反応原料は、重合工程において、まず、反応槽にて混合され、有機極性溶媒中で、硫黄源とジハロ芳香族化合物との重合反応が行われることにより、反応混合物が形成される。
【0127】
有機極性溶媒、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物および硫化水素からなる群より選ばれる少なくとも一種の硫黄源、ならびにジハロ芳香族化合物としては、PASの製造において通常用いられるものを用いることができる。
【0128】
有機極性溶媒としては、上述の有機アミド溶媒、有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒または環式有機リン化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒を用いることができる。N−メチル−ε−カプロラクタム等のN−アルキルカプロラクタム化合物;N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン等のN−アルキルピロリドン化合物またはN−シクロアルキルピロリドン化合物;1,3−ジアルキル−2−イミダゾリジノン等のN,N−ジアルキルイミダゾリジノン化合物ならびにこれらの混合物からなる群から選択される重合溶媒が好ましく、N−アルキルピロリドン化合物がより好ましく、NMPが特に好ましい。
【0129】
硫黄源としては、例えば、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物および硫化水素等を挙げることができる。取り扱いが容易である点および価格が安価である観点から、硫黄源としては、アルカリ金属硫化物およびアルカリ金属水硫化物が好ましい。硫黄源は、例えば、水性スラリーまたは水溶液の状態で扱うことができ、計量性および搬送性等のハンドリング性の観点から、水溶液の状態であることが好ましい。
【0130】
アルカリ金属硫化物としては、例えば、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム及び硫化セシウム等が挙げられる。
【0131】
アルカリ金属水硫化物としては、例えば、水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウムおよび水硫化セシウム等が挙げられる。
【0132】
硫黄源としてアルカリ金属水硫化物または硫化水素を使用する場合、アルカリ金属水酸化物を併用する。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウムおよび水酸化セシウム、ならびにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの中でも、工業的に安価に入手できる点で水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムが好ましい。また取扱い等の点から水溶液またはスラリー状のものが好ましい。
【0133】
アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物および硫化水素のいずれかを混合して用いる場合には、当該混合物が硫黄源となる。
【0134】
ジハロ芳香族化合物としては、例えば、o−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ−ジハロベンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシドおよびジハロジフェニルケトン等が挙げられる。ジハロ芳香族化合物におけるハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素である。ジハロ芳香族化合物における2個のハロゲン原子は、同じでも異なっていてもよい。ジハロ芳香族化合物として、p−ジハロベンゼン、m−ジハロベンゼン、およびこれらの混合物が好ましく、p−ジハロベンゼンがより好ましく、p−ジクロロベンゼン(pDCB)が、特に好ましい。
【0135】
アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、およびジハロ芳香族化合物はいずれも、単独で用いてもよいし、PASの製造が可能である組み合わせであれば、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0136】
重合反応において重合助剤を用いて行うことができる。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸金属塩、有機スルホン酸金属塩、ハロゲン化リチウム、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独または2種以上を同時に用いることができる。なかでも有機カルボン酸金属塩またはハロゲン化リチウムが好ましく用いられる。より具体的には、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウムおよびp−トルイル酸ナトリウムおよびハロゲン化リチウムなどが挙げられる。なかでも酢酸リチウムまたは酢酸ナトリウムが好ましく用いられ、安価で入手しやすいことから酢酸ナトリウムがより好ましく用いられる。これらの重合助剤は単独で用いてもよいし、PASの製造が可能である組合せであれば、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0137】
以下、製造される重合体が芳香族ポリスルホンである場合の一実施形態を説明する。
【0138】
芳香族ポリスルホンは、塩基および重合溶媒存在下、芳香族ジハロゲノスルホン化合物および芳香族ジヒドロキシ化合物を重縮合反応させることにより、製造することができる。本発明において、芳香族ポリスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)と、スルホニル基(−SO
2−)と、酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。当該芳香族ポリスルホンは、例えば、特開2013−159641号公報に記載される原材料を用いて製造することができる。
【0139】
即ち、芳香族ジハロゲノスルホン化合物および芳香族ジヒドロキシ化合物は、芳香族ポリスルホンを構成する繰返し単位に対応するものである。そして、芳香族ジハロゲノスルホン化合物は、一分子中に芳香環と、スルホニル基(−SO
2−)と、2個のハロゲノ基とを有する化合物であればよい。また、芳香族ジヒドロキシ化合物は、一分子中に芳香環と、2個のヒドロキシル基とを有する化合物であればよい。
【0140】
芳香族ジハロゲノスルホン化合物としては、例えば、ビス(4−クロロフェニル)スルホンおよび4,4’−ビス(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニルが挙げられる。
【0141】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)スルホン及びビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド及びビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール、フェニルヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、3,5,3’,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよび4,4’−ジヒドロキシ−p−クオターフェニルが挙げられる。本発明においては、芳香族ジハロゲノスルホン化合物および芳香族ジヒドロキシ化合物の全部または一部に代えて、4−ヒドロキシ−4’−(4−クロロフェニルスルホニル)ビフェニル等の、分子中にハロゲノ基およびヒドロキシル基を有する化合物を用いることもできる。
【0142】
本発明においては、目的とする芳香族ポリスルホンの種類に応じて、芳香族ジハロゲノスルホン化合物および芳香族ジヒドロキシ化合物は、いずれも、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
塩基としては、芳香族ジヒドロキシ化合物のヒドロキシル基を活性化できるものであればよく、なかでもアルカリ金属塩であることが好ましく、炭酸のアルカリ金属塩であることがより好ましい。
【0144】
炭酸のアルカリ金属塩としては、正塩である炭酸アルカリであってもよいし、酸性塩である重炭酸アルカリ(炭酸水素アルカリ)であってもよいし、正塩および酸性塩の混合物であってもよい。炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムが好ましく、重炭酸アルカリとしては、重炭酸ナトリウムまたは重炭酸カリウムが好ましい。
【0145】
本発明において、塩基は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基の組み合わせとしては、特に限定されず、目的に応じて適宜設定することができる。
【0146】
芳香族ポリスルホンの重合溶媒は、上述の有機アミド溶媒、有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒または環式有機リン化合物からなる非プロトン性重合溶媒を用いることができる。ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン、N−アルキル−2−ピロリドン、N,N’−ジアルキルイミダゾリジノン、N−アルキルカプロラクタムならびにこれらの混合物からなる群から選択される重合溶媒が好ましい。特に、スルホラン、N−エチル−2−ピロリドンおよびN−メチル−2−ピロリドンならびにこれらの混合物からなる群から選択される重合溶媒を用いることが好ましい。
【0147】
重縮合反応は、所定の分子量を容易に制御できるように、モル比を調整する。
【0148】
本発明においては、重縮合反応させるときに、価数がn(nは1以上の整数である)の塩基を1種以上配合し、芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対する塩基のモル数を、塩基の種類ごとにn/2倍した値の合計値が、好ましくは0.95〜1.15、より好ましくは1.00〜1.10となるように調整するとよい。nは、例えば、塩基が炭酸カリウムの場合には2であり、塩基が炭酸水素カリウムの場合には1である。
【0149】
以下、製造される重合体がポリアリールエーテルケトン(PAEK)である場合の一実施形態を説明する。
【0150】
PAEKは、特に制限なく、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とカルボニル結合及びエーテル結合を含む繰り返し単位からなる構造を有する。
【0151】
本発明におけるPAEKの製造には、例えば、特公昭61−10486号公報、特開平7−138360号公報、WO2003−050163号公報、特開2010−70657号公報、特表2014−532109号公報に記載される重合溶媒や原料モノマーを用いることができる。
【0152】
即ち、従来公知の原料モノマーとして芳香族ジハライド化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物を用いる。重合溶媒中、原料モノマーを、該芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノラート型の塩を形成可能な塩基性のアルカリ金属化合物である、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩またはアルカリ金属水酸化物と共に脱塩重縮合することによって製造する。
【0153】
芳香族ジハライド化合物としては、例えば、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンなどを例示することができるが、これらに限定されない。
【0154】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシン)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ハイドロキノン)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(4,4’−ビフェノール)、4,4’−ジヒドロキシターフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−テトラフェニルビスフェノールなどを例示することができるが、これらに限定されるものではなく、これらの他にも例えばビスフェノールA等の各種のジフェノール類が使用可能である。
【0155】
PAEKの重合溶媒としては、上述の有機アミド溶媒、有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒または環式有機リン化合物からなる非プロトン性重合溶媒を用いることができる。ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン、N−アルキル−2−ピロリドン、N,N’−ジアルキルイミダゾリジノン、N−アルキルカプロラクタムならびにこれらの混合物からなる群から選択される重合溶媒が好ましい。特に、N−アルキル−2−ピロリドン、中でもN−メチル−2−ピロリドンが好適に使用される。
【0156】
PAEK反応混合物を回収するとき、重合溶媒に対する原料モノマーの質量比を制御することにより、スラリー状態で回収することが好ましい。原料モノマー/重合溶媒の質量比は、重合溶媒100質量部に対して、原料モノマーが通常1〜25質量部、好ましくは3〜20質量部、さらに好ましくは5〜15質量部である。原料モノマー/重合溶媒の質量比が上述の範囲になるように、重合反応途中から回収までに、好ましくは重合反応終了後から回収までに溶媒を供給してもよい。重合溶媒に対する原料モノマーの質量比を上述の範囲で制御することによって、従来問題であった反応混合物回収時における反応混合物の固化の問題を解消できる。また、重合物の洗浄および溶媒等の回収またはリサイクルが容易となる。
【0157】
PAEKの製造時に用いられるアルカリ金属塩は、微細な粒径を有する固体粒状物であることが、供給性および反応性から好ましい。具体的には、アルカリ金属塩の平均粒子径は、95μm以下であることが好ましく、より好ましくは5〜80μm、さらに好ましくは7〜60μm、特に好ましくは10〜30μmである。本明細書において平均粒子径とは、質量平均粒径を意味しており、粒子分析用分析機器を用いて簡便に決定できる。また、ホモジナイザーおよびインパクトミル等一般的に利用される粉砕方法を使用して、得ることができる。
【0158】
以下、製造される重合体がポリエーテルニトリル(PEN)である場合の一実施形態を説明する。
【0159】
PENは、特に制限なく、シアノ基が結合した2価の芳香族基(シアノ基が結合した芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とエーテル結合を含む繰り返し単位からなる構造を有する。
【0160】
PENは、例えば、特開平7−138360号公報に記載される方法で得られる。
【0161】
即ち、PENは、従来公知の原料モノマーとして芳香族ジハライド化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物を用いる。重合溶媒中、原料モノマーを、該芳香族ジヒドロキシ化合物とフェノラート型の塩を形成可能な塩基性のアルカリ金属化合物である、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩またはアルカリ金属水酸化物と共に脱塩重縮合することによって製造する。
【0162】
芳香族ジハライド化合物としては、例えば、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリルなどを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
PENのアルカリ金属化合物は、前記反応に供する芳香族ジヒドロキシ化合物をアルカリ金属塩に変えることができる化合物であり、アルカリ金属化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムもしくはセシウムの炭酸塩、炭酸水素塩または水酸化物などを挙げることができる。アルカリ金属化合物としては、これらの中でも、通常、ナトリウムもしくはカリウムの化合物が好ましく、または、アルカリ金属の炭酸塩が好ましい。すなわち、アルカリ金属化合物としては、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムが、特に好ましい。これらのアルカリ金属化合物は、1種のみを用いてもよく、場合に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよく、混合物として用いてもよい。アルカリ金属化合物の使用量は、使用する芳香族ジヒドロキシ化合物1当量に対して、通常、1.01〜2.5当量の範囲に選定するのが適当である。なお、芳香族ジヒドロキシ化合物およびアルカリ金属炭酸塩は、いずれも1モルが2当量に相当し、アルカリ金属炭酸水素塩および水酸化物は、それぞれ、1モルが1当量に相当する。
【0164】
PENの重合溶媒としては、上述の有機アミド溶媒、有機硫黄化合物からなる非プロトン性有機極性溶媒または環式有機リン化合物からなる非プロトン性重合溶媒を用いることができる。ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−アルキル−2−ピロリドン、N,N’−ジアルキルイミダゾリジノン、N−アルキルカプロラクタムならびにこれらの混合物からなる群から選択される重合溶媒が好ましい。特に、N−アルキル−2−ピロリドン、中でもN−メチル−2−ピロリドンが好適に使用される。
【0165】
PENにおいて、芳香族重合体の製造時に用いられるアルカリ金属塩は、PAEKを製造する場合と同様である。
【0166】
本発明の重合体の連続製造方法によって得られる重合体液は、重合体の質量に対し0.1〜5質量%の脱塩重縮合反応により生じた塩を含む形態で得られる。好ましい塩の量は、0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%、特に好ましくは0.1〜1質量%未満である。従って、本発明の重合体液をそのまま、または他の材料との組成物として有用に用いることができる。なお、本明細書において、重合体液は上記反応混合物のことである。重合体液には、重合体溶液および重合体スラリーが含まれる。
【0167】
例えば、本発明の重合体液を用いて、芳香族ポリチオエーテル、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルニトリル(PEN)、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、芳香族ポリエステル、シンジオタクチックポリスチレン、ポリアミド、およびフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1種以上と容易かつ安価に有用な組成物を製造することができる。
【0168】
また、本発明の重合体液と、該重合体液に含まれる重合体とは異なる重合体を一種以上と、を含む組成物も、有用なポリマーアロイ、特にナノコンポジットを形成し得る。組成物は、例えば、本発明の重合体液と、該重合体液に含まれる重合体とは異なる重合体を混合させることによって得られることができる。
【0169】
さらに、上記組成物には、本発明の重合体の連続製造方法によって得られる重合体液に加えて、繊維充填剤や無機充填剤等の添加剤を含むことができる。繊維充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、ナノ繊維等が挙げられる。無機充填剤としては、シリカ、石英粉末、ケイ酸塩、たとえばケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、粘土、珪藻土及び珪灰石、これらのナノ粒子などを挙げることができる。組成物中に含めることができる他の添加剤としては、顔料、滑剤、酸化防止剤、安定化剤、界面活性剤、および流動性改良剤等、並びに特性及び加工性を改善するために添加される添加剤を含むことができる。
【0170】
また、本発明は、複数の重合体を含む組成物の製造方法であって、
複数の反応槽を有する連続重合装置に、重合溶媒および反応原料を供給する工程と、
少なくとも一以上の前記反応槽において、前記重合溶媒中で重合反応を行うことにより、反応混合物を形成する工程と、
前記反応槽の気相部における水の少なくとも一部を、前記反応槽から除去する工程と、
各反応槽に、前記反応混合物を順次移動させる工程と、
前記反応混合物に含まれる固体を沈降により分離するとともに、向流洗浄を行う工程と、を並行して行うことを含み、
前記複数の反応槽の各気相部は互いに連通し、
さらに、前記固体が除去された反応混合物と、反応混合物中に含まれる重合体とは異なる重合体とを混合させる工程を含むことを特徴とする組成物の製造方法である。
【0171】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0172】
[まとめ]
本実施形態に係る連続重合装置は、複数の反応槽を有し、前記複数の反応槽は、反応混合物が各反応槽を順次移動するように構成されており、前記複数の反応槽は、前記反応混合物より上部に形成される気相部が互いに連通しており、前記反応混合物に含まれる固体を沈降により分離するとともに、向流洗浄を行う洗浄部を備えている。
【0173】
前記洗浄部は、前記反応混合物の移動方向の最下流に位置する前記反応槽またはその下流側に設けられていることが好ましい。
【0174】
また、前記洗浄部は、前記固体が沈降するとともに、沈降方向とは逆向きに洗浄液が供給される筒状構造部を有しており、前記筒状構造部には、静的な混合機構が設けられていることが好ましい。
【0175】
また、前記静的な混合機構は、スタティックミキサーであることが好ましい。
【0176】
また、前記反応槽は、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で接続されており、前記反応混合物は、液面レベルの高低差を利用して順次移動することが好ましい。
【0177】
本実施形態に係る連続重合装置は、収容室をさらに備えており、前記複数の反応槽は、前記収容室内に収容されていることが好ましい。
【0178】
また、前記複数の反応槽のそれぞれは、収容室内の下部に1以上の隔壁を設けることによって形成された反応槽であり、前記隔壁の高さによって、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルが規定され、前記反応槽は、各反応槽が収容し得る液体の最大液面レベルの高い順番で接続されており、前記反応混合物は、液面レベルの高低差を利用して順次移動することが好ましい。
【0179】
また、本実施形態に係る連続重合装置は、収容室をさらに備えており、前記複数の反応槽のそれぞれは、回転中心を有する1以上の仕切板を前記収容室内に設けることによって隔てられた反応槽であることが好ましい。
【0180】
また、本実施形態に係る連続重合装置は、前記反応混合物中の重合体を高分子量化させる反応が行われる分子鎖延長部をさらに備えることが好ましい。
【0181】
また、前記分子鎖延長部が、重合反応槽、押出機および加熱処理器から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0182】
また、本実施形態に係る重合体の連続製造方法は、複数の反応槽を有する連続重合装置に、重合溶媒および反応原料を供給する工程と、
少なくとも一以上の前記反応槽において、前記重合溶媒中で重合反応を行うことにより、反応混合物を形成する工程と、
前記反応槽の気相部における水の少なくとも一部を、前記反応槽から除去する工程と、
各反応槽に、前記反応混合物を順次移動させる工程と、
前記反応混合物に含まれる固体を沈降により分離するとともに、向流洗浄を行う工程と、を並行して行うことを含み、
前記複数の反応槽の各気相部は互いに連通している。
【0183】
また、本実施形態に係る重合体の連続製造方法において、前記重合反応は脱塩重縮合反応であり、前記固体は前記脱塩重縮合反応により生じた塩であることが好ましい。
【0184】
また、前記反応混合物の移動方向の最下流に位置する前記反応槽に到達した前記反応混合物において、前記固体の分離および前記向流洗浄を行うことが好ましい。
また、本実施形態に係る重合体の連続製造方法において、重合体を更に高分子量化させる分子鎖延長工程をさらに含むことが好ましい。
【0185】
また、本実施形態に係る重合体の連続製造方法によって重合体液が得られる。重合体液はポリマーアロイやナノコンポジット等を形成し得る有用な組成物を提供し得る。
【0186】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明の以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0187】
重量平均分子量の測定方法:
<PASの重量平均分子量測定方法>
PASの重量平均分子量(Mw)は、株式会社センシュー科学製の高温ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)SSC−7101を用いて、以下の条件で測定した。重量平均分子量はポリスチレン換算値として算出した。
溶媒: 1−クロロナフタレン、
温度: 210℃、
検出器: UV検出器(360nm)、
サンプル注入量: 200μl(濃度:0.05質量%)、
流速: 0.7mL/分、
標準ポリスチレン: 616,000、113,000、26,000、8,200、及び600の5種類の標準ポリスチレン。
【0188】
<PPSU、PESの重量平均分子量測定方法>
PPSU、PESの重量平均分子量(Mw)は、日本分光製のゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)EXTREMAを用いて、以下の条件で測定した。重量平均分子量はポリスチレン換算値として算出した。
溶媒: LiBr 0.01MのNMP溶液、
温度: 40℃、
検出器: RI検出器、
サンプル注入量: 100μL(濃度:1mg/1mL)、
流速: 1.0mL/分、
標準ポリスチレン: 427,000、96,400、37,900、17,400、及び5,560の5種類の標準ポリスチレン。
【0189】
[実施例1]PASの製造
収容室2が5枚の隔壁により仕切られて形成された6個の反応槽を有する以外は、
図1に示すのと同様のPAS連続製造装置を用いた。このPAS連続製造装置は、隔壁が半円形であり、直径100mm×長さ300mmの寸法を有するTi製反応装置であった。上記PAS連続製造装置に、NMP950gを仕込んだ後、上流側から1番目の隔壁と2番目の隔壁とで区切られた部分の温度1を230℃、3番目の隔壁と4番目の隔壁とで区切られた部分の温度2を260℃に保持し、各供給ラインより定量ポンプを用いてNMP−パラジクロロベンゼン(pDCB)混合液4.61g/min(NMP:pDCB(重量比)=1317.4:342)、48重量%NaOH0.51g/min、45重量%NaSH0.76g/minの流量にて連続的に原料を供給した。同時にPAS連続製造装置に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.32MPaに制御しながら、PAS連続製造装置より連続的に水を除去し、更に、除去した水中のpDCBについては静置槽で分離してPAS連続製造装置に戻した。また、蒸留装置からのガスは圧力調整弁の下流側で2kgのNMPに通じた後、更に、5質量%の水酸化ナトリウム水溶液5kgに通じて硫化水素を完全に吸収・回収した後に排気した。
【0190】
重合反応物は、最下流の反応槽から連続的に沈降部に溢流させて、重合反応生成物中の副生塩NaClを沈降させるとともに、260℃に加熱した洗浄用NMPを副生塩の沈降下流側から上流側に2.5g/分の流量で流した。かくして副生塩を沈降分離するとともに洗浄溶媒NMPで副生塩NaClを向流連続洗浄した。洗浄用NMPを含む副生塩が除去された反応処理物は反応処理物回収ライン7から連続的に抜き出した。
【0191】
以上の操作を5時間継続した後に得られたPASを採取して分析したところ、このPASのGPCによる重量平均分子量Mwは27,000であった。
【0192】
分離され回収したNaClは、回収率(回収量/理論生成量)50%であり、純度は94%であり、含有されるNa
2Sは5質量%であった。
【0193】
[実施例2]PASの製造
収容室が、10枚の円盤型仕切板により仕切られて形成された11個の反応槽を有する以外は、
図3に示すのと同様の重合体連続製造装置を用いた。この重合体連続装置において、収容室は、内径108mm×長さ300mmの寸法を有するチタン製反応装置であった。10枚の仕切板はいずれも同一形状であり、径5mmの回転軸上に設けられた。それぞれの仕切板について、反応混合物の移動方向の上流側の面に、
図3に示されるように、2枚のアンカー型撹拌翼を十字に設けた。仕切板の直径は100mmであり、アンカー型撹拌翼の長手軸方向の長さaは90mmであり、短手軸方向の長さbは40mmであった。仕切板を設けた位置において、収容室の内部空間の鉛直断面に対し、クリアランスの断面積が占める割合は、約14%であった。
【0194】
重合体連続製造装置に、有機アミド溶媒としてNMP1600gを仕込んだ後、反応混合物の移動方向の上流側から数えて第11番目の反応槽の下流側から窒素ガスを流しながら、収容室の底部に設置した外部ヒーターにより、上流側から数えて第1〜4番目の反応槽の温度1を230℃、第5〜8番目の反応槽の温度2を260℃、第9〜11番目の反応槽の温度3を260℃に保持した。ここで、窒素ガスの流量は0.1NL/minであり、標準状態において、仕切板のクリアランスを通過する窒素ガス線速度は0.8cm/sであった。
【0195】
各供給ラインより定量ポンプを用いて、NMPを2.65g/min、p−DCBを1.61g/min、36.5wt%NaSH水溶液を1.63g/min、16.32wt%NaOH水溶液を2.6g/minの流量にて連続的に原料を供給した。なお、供給原料中のNaSH1モルあたりのNMP量は250g、p−DCB量は1.030モル、NaOH量は1.030モルであった。
【0196】
また、重合体連続製造装置に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.3MPaに制御しながら、重合体連続製造装置より連続的に水を除去した。また、水とともに留去されるp−DCBはデカンターで分離し、随時、収容室へ再供給した。さらに、排気ガス中に含まれる僅かなp−DCB、及びH
2Sガスは供給原料のNMP、NaOH水溶液にそれぞれを吸収させ回収し、収容室へ再供給した。
【0197】
重合反応物は、最下流の反応槽から連続的に沈降部に溢流させて、重合反応生成物中の副生塩を沈降させるとともに、260℃に加熱した洗浄用NMPを副生塩の沈降下流側から上流側に2.1g/分の流量で流した。かくして副生塩を沈降分離するとともに洗浄溶媒NMPで副生塩を向流連続洗浄した。洗浄用NMPを含む副生塩が除去された反応処理物は反応処理物回収ライン7から連続的に抜き出した。
【0198】
以上の操作を12時間継続した後に得られたPASを採取して分析したところ、このPASのGPCによる重量平均分子量Mwは11,000であった。
【0199】
分離され回収した副生塩は、回収率(回収量/理論生成量)40%であり、純度は95%であり、含有されるNa
2Sは4質量%であった。
【0200】
[実施例3]PPSUの製造
収容室が5枚の隔壁により仕切られて形成された6個の反応槽を有する以外は、
図1に示すのと同様の重合体連続製造装置を用いて重合反応を実施した。この重合体連続製造装置は、隔壁が半円形であり、内径108mm×長さ300mmの寸法を有するSUS製反応装置であった。
【0201】
この連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)950gを仕込んだ後、上流側から5番目の隔壁の下流側より、窒素ガスを0.1NL/minの流量で流しながら、収容室2の底部に設置した外部ヒーターにより上流側から1番目と2番目の隔壁で区切られた部分、すなわち上流側から第2番目の反応槽の温度1を200℃、上流側から第4番目の反応槽の温度2を210℃、上流側から第6番目の反応槽の温度3を210℃に保持した。定常状態において、上流側から第1番目の反応槽の温度4は180℃、上流側から第5番目の反応槽の温度5は210℃であった。各供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、4,4‘−ジヒドロキシビフェニル(DHBP)、ジクロロジフェニルスルホン(DCPS)および炭酸カリウムを、6.4g/min(NMP:DCPS(重量比)=760:201.01、DHBP:DCPS(モル比)=1:1、DHBP:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に8時間原料を供給した。
【0202】
なお、混合液中の平均粒子径100μm以上の炭酸カリウムは不溶で凝集しやすく、供給性が悪いため、供給前にホモジナイザーを用いて約10,000rpm/minでスラリー状に粉砕(平均粒子径95μm以下)した。
【0203】
同時に連続製造装置に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.1MPaに制御しながら、連続的に、反応で生成した水を連続製造装置から除去した。また、反応により生成する二酸化炭素ガスは、蒸留装置および貯水槽を経由して大気に放出した。
【0204】
重合反応物は、最下流の反応槽から連続的に沈降部に溢流させて、重合反応生成物中の副生塩を沈降させるとともに、210℃に加熱した洗浄用NMPを副生塩の沈降下流側から上流側に2.5g/分の流量で流した。かくして副生塩を沈降分離するとともに洗浄溶媒で副生塩を向流連続洗浄した。洗浄溶媒を含む副生塩が除去された反応処理物は反応処理物回収ラインから連続的に抜き出した。
【0205】
以上の操作を5時間継続した後に得られた当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリフェニルスルホン(PPSU)粉体を得た。このPPSU粉体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは77,500であった。
【0206】
分離され回収した副生塩は、回収率(回収量/理論生成量)約50%であった。
【0207】
[実施例4]PESの製造
実施例3で使用した連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)950gを仕込んだ後、窒素ガスを上流側から第5番目の隔壁の下流側より0.1NL/minの流量で流しながら、収容室2の底部に設置した外部ヒーターにより上流側から1番目の隔壁と2番目の隔壁で区切られた部分、すなわち上流側から第2番目の反応槽の温度1を200℃、上流側から第4番目の反応槽の温度2を210℃、上流側から第6番目の反応槽の温度3を210℃に保持した。
【0208】
各供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン(DHDPS)及び、ジクロロジフェニルスルホン(DCPS)を、3.6g/min(NMP:DCPS(重量比)=760:201.01、DHDPS:DCPS(モル比)=1:1)の流量、また、NMP、炭酸カリウムを2.8g/min(NMP:炭酸カリウム(重量比)=760:106.41、DHDPS:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に8時間原料を供給した。
【0209】
なお、炭酸カリウムの粉砕および圧力調整は実施例3と同様の方法で行った。
【0210】
重合反応物は、最下流の反応槽から連続的に沈降部に溢流させて、重合反応生成物中の副生塩を沈降させるとともに、215℃に加熱した洗浄用NMPを副生塩の沈降下流側から上流側に2.5g/分の流量で流した。かくして副生塩を沈降分離するとともに洗浄溶媒で副生塩を向流連続洗浄した。洗浄溶媒を含む副生塩が除去された反応処理物は反応処理物回収ラインから連続的に抜き出した。
【0211】
以上の操作を5時間継続した後に得られた当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリエーテルスルホン(PES)粉体を得た。このPES粉体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは9,000であった。
【0212】
分離され回収した副生塩は、回収率(回収量/理論生成量)約50%であった。
【0213】
[実施例5]PEEKの製造
実施例3で使用した連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)950gを仕込んだ後、窒素ガスを上流側から第5番目の隔壁の下流側より0.1NL/minの流量で流しながら、収容室の底部に設置した外部ヒーターにより上流側から1番目の隔壁と2番目の隔壁で区切られた部分、すなわち上流側から第2番目の反応槽の温度1を220℃、上流側から第5番目の反応槽の温度2を260℃、上流側から第6番目の反応槽の温度3を260℃に保持した。定常状態において、上流側から第1番目の反応槽の温度4は190℃、上流側から第4番目の反応槽の温度5は250℃であった。供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(DFBP)、ハイドロキノン(HQ)及び炭酸カリウムを、6.4g/min(NMP:DFBP(重量比)=1202.57:160.00、DFBP:HQ(モル比)=1:1、HQ:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に8時間原料を供給した。
【0214】
なお、炭酸カリウムの粉砕および圧力調整は実施例3と同様の方法で行った。
【0215】
重合反応物は、最下流の反応槽から連続的に沈降部に溢流させて、重合反応生成物中の副生塩を沈降させるとともに、260℃に加熱した洗浄用NMPを副生塩の沈降下流側から上流側に2.5g/分の流量で流した。かくして副生塩を沈降分離するとともに洗浄溶媒で副生塩を向流連続洗浄した。洗浄溶媒を含む副生塩が除去された反応処理物は反応処理物回収ラインから連続的に抜き出した。
【0216】
以上の操作を5時間継続した後に得られた当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)粉体を得た。
【0217】
分離され回収した副生塩は、回収率(回収量/理論生成量)約50%であった。また、PEEK粉体の還元粘度は0.3[dL/g]であり、還元粘度は以下の方法で求めた。
【0218】
<溶液調整方法>
PEEK0.1gおよび4−クロロフェノール10mLをオイルバスで180℃、20分間、加熱および撹拌して溶解させた。室温になるまで冷却したのち、該溶液3mLをo−ジクロロベンゼン7mLで希釈した。
【0219】
<還元粘度測定方法>
35℃においてウベローデ粘度計で測定した。
【0220】
<還元粘度の算出>
溶媒の粘度(η0)を、オストワルド型粘度管を用いて測定した。調整した溶液の粘度(η)と溶媒の粘度(η0)から、比粘性率((η−η0)/η0)を求め、この比粘性率を、溶液の濃度(0.3g/dL)で割ることにより、還元粘度(dL/g)を求めた。
【0221】
[実施例6]PEEKの製造
収容室が、9枚の円盤型仕切板により仕切られて形成された10個の反応槽を有する以外は、実施例2と同様の重合体連続製造装置を用いた。連続製造装置に、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1500gを仕込んだ後、反応混合物の移動方向の上流側から数えて第10番目の反応槽の下流側から窒素ガスを流しながら、収容室の底部に設置した外部ヒーターにより、上流側から数えて第3番目の反応槽の温度1を210℃、第5番目の反応槽の温度2を240℃、第9番目の反応槽の温度3を260℃、第10番目の反応槽の温度4を260℃に保持した。ここで、窒素ガスの流量は1NL/minであり、標準状態において、仕切板のクリアランスを通過する窒素ガス線速度は8cm/sであった。
【0222】
各供給ラインより定量ポンプを用いてNMP、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(DFBP)、ハイドロキノン(HQ)及び炭酸カリウムを、13.8g/min(NMP:DFBP(重量比)=2804.43:654.53、DFBP:HQ(モル比)=1:01、HQ:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にてスターラーで撹拌しながら連続的に6時間原料を供給した。
【0223】
なお、炭酸カリウムの粉砕および圧力調整は実施例3と同様の方法で行った。
【0224】
重合反応物は、最下流の反応槽から連続的に沈降部に溢流させて、重合反応生成物中の副生塩を沈降させるとともに、265℃に加熱した洗浄用NMPを副生塩の沈降下流側から上流側に16.3g/分の流量で流した。かくして副生塩を沈降分離するとともに洗浄溶媒で副生塩を向流連続洗浄した。洗浄溶媒を含む副生塩が除去された反応処理物は反応処理物回収ラインから連続的に抜き出した。
【0225】
以上の操作を5時間継続した後に得られた当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成した固形分をろ過した後、更にメタノールで洗浄・ろ過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)粉体を得た。そのPEEK粉体の還元粘度は0.6[dL/g]であり、還元粘度は上記の方法で求めた。
【0226】
[実施例7]PPSUの製造
反応容器本体が、10枚の円盤型仕切板により仕切られて形成された11個の反応槽を有する以外は、実施例2と同様の重合体連続製造装置を用いた。重合体連続製造装置に、有機アミド溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1700gを仕込んだ後、反応混合物の移動方向の上流側から数えて第11番目の反応槽の下流側から窒素ガスを流しながら、収容室の底部に設置した外部ヒーターにより、上流側から数えて第2番目の反応槽の温度1を200℃、第5番目の反応槽の温度2を210℃に保持した。ここで、窒素ガスの流量は0.1NL/minであり、標準状態において、仕切板のクリアランスを通過する窒素ガス線速度は0.8cm/sであった。
【0227】
供給ラインより定量ポンプを用いて、NMP、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(DHBP)、ジクロロジフェニルスルホン(DCPS)および炭酸カリウムの混合液を8.5g/min(NMP:DCPS(重量比)=760:201.01、DHBP:DCPS(モル比)=1:1、DHBP:炭酸カリウム(モル比)=1:1.1)の流量にて、スターラーで撹拌しながら8時間連続的に原料を供給した。なお、混合液中の平均粒子径95μm以上である炭酸カリウムを、供給前にホモジナイザーを用いて約10,000rpm/minでスラリー状に粉砕(平均粒子径95μm以下)した。
【0228】
同時に重合体連続製造装置に接続された蒸留装置を用いて、圧力調整弁によって圧力をゲージ圧0.1MPaに制御しながら、重合体連続製造装置より連続的に水を除去した。また、反応により生成する二酸化炭素ガスは、蒸留装置および貯水槽を経由して大気に放出した。
【0229】
重合反応物は、最下流の反応槽から連続的に沈降部に溢流させて、重合反応生成物中の副生塩を沈降させるとともに、21℃に加熱した洗浄用NMPを副生塩の沈降下流側から上流側に12.4g/分の流量で流した。かくして副生塩を沈降分離するとともに洗浄溶媒で副生塩を向流連続洗浄した。洗浄溶媒を含む副生塩が除去された反応処理物は反応処理物回収ラインから連続的に抜き出した。
【0230】
以上の操作を8時間継続した後に得られた反応物を採取して分析した。当該反応混合物を5倍量の水に滴下して生成物を析出させ濾過した後、さらにメタノールで洗浄・濾過し、得られたケークを真空下、60℃で8時間乾燥し、ポリフェニルスルホン(PPSU)粉体を得た。このPPSU粉体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量Mwは約130,000であった。