特許第6670429号(P6670429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670429透明基材計測装置および透明基材計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670429
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】透明基材計測装置および透明基材計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   G01B11/24 K
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-245604(P2015-245604)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-111013(P2017-111013A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】503098724
【氏名又は名称】株式会社オキサイド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 保士
(72)【発明者】
【氏名】川部 英雄
(72)【発明者】
【氏名】福本 敦
(72)【発明者】
【氏名】大迫 純一
(72)【発明者】
【氏名】久保田 重夫
【審査官】 齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−105942(JP,A)
【文献】 特開平06−267820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の1または複数の個所に点状もしくは線状の投影光を照射可能に構成された投射装置と、
前記投射装置から出射された1または複数の前記投影光の前記透明基板での反射光が作り出す虚像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置による撮像により得られた画像データに基づいて前記透明基板の特性を導出する情報処理装置と
を備え、
前記投射装置は、
1または複数の前記投影光を出射する光源ユニットと、
前記光源ユニット全体を移動させる第1機構部と
を有し、
前記光源ユニットは、
ピンホールを有する点光源もしくはスリットを有する線光源と、
当該投射装置の光軸上に配置されたテレセントリック投影光学系と、
前記点光源もしくは前記線光源と前記テレセントリック投影光学系との間に配置された非点収差補正光学系と、
前記投影光と前記透明基板とが交差する位置を変えずに、前記投影光の前記透明基板への入射角度を変化させる第2機構部と
を有する
透明基材測定装置。
【請求項2】
前記第2機構部は、前記ピンホールもしくは前記スリットを移動させることにより、前記投影光と前記透明基板とが交差する位置を変えずに、前記投影光の前記透明基板への入射角度を変化させる
請求項1に記載の透明基材測定装置。
【請求項3】
前記非点収差補正光学系は、レンズ効果のある方向が互いに交差するように配置された2つのシリンドリカルレンズによって構成されている
請求項2に記載の透明基材測定装置。
【請求項4】
前記2つのシリンドリカルレンズのうち少なくとも一方が当該投射装置の光軸と平行な軸を回転軸として回転可能に支持されている
請求項3に記載の透明基材測定装置。
【請求項5】
前記第1機構部は、当該投射装置の位置調整と当該投射装置の光軸の角度調整とを可能に構成されている
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の透明基材測定装置。
【請求項6】
前記第1機構部は、当該投射装置の光軸に対して垂直方向に移動するXYの2軸と、当該投射装置の光軸方向に移動するZの1軸と、XZ平面内およびYZ平面内で回転する2軸の合計5軸で、前記光源ユニット全体を移動させる機構を有している
請求項5に記載の透明基材測定装置。
【請求項7】
前記撮像装置の開口数は、以下の式を満たす
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の透明基材測定装置。
1.22λ/NA≧2Pp
λ:前記投射装置の波長
NA:前記撮像装置の開口数
Pp:前記撮像装置のピクセルピッチ
【請求項8】
前記情報処理装置は、前記特性として、前記虚像の二重像間隔、歪み量およびボケ量を含む光学特性を、前記画像データに基づいて導出する
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の透明基材測定装置。
【請求項9】
前記情報処理装置は、前記画像データに含まれる主像と副像との距離と、前記撮像装置の光学倍率と、前記撮像装置のピクセルピッチとに基づいて、前記虚像の二重像間隔を導出する
請求項8に記載の透明基材測定装置。
【請求項10】
前記情報処理装置は、前記画像データに含まれる主像と基準点との距離と、前記撮像装置の光学倍率と、前記撮像装置のピクセルピッチとに基づいて、前記虚像の歪みを導出する
請求項8に記載の透明基材測定装置。
【請求項11】
前記情報処理装置は、前記画像データに含まれる前記虚像の光強度分布における半値幅もしくは1/e2幅を、前記ボケ量として導出する
請求項8に記載の透明基材測定装置。
【請求項12】
前記投射装置は、前記透明基板の複数の箇所に前記投影光を同時もしくは順次、照射する
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の透明基材測定装置。
【請求項13】
透明基板の所定の箇所に点状もしくは線状の投影光を光源ユニットから照射している間に、前記投影光の、前記透明基板での反射光が作り出す虚像が、指定した測定点に移動するように、前記投影光と前記透明基板とが交差する位置を変えずに、前記投影光の前記透明基板への入射角度を変化させることにより、前記光源ユニットの位置および姿勢の調整を行うことと、
前記調整の完了後に得られた前記虚像を撮像することと、
前記虚像の撮像により得られた画像データに基づいて前記透明基板の特性を導出することと
を含み、
前記光源ユニットは、
ピンホールを有する点光源もしくはスリットを有する線光源と、
当該投射装置の光軸上に配置されたテレセントリック投影光学系と、
前記点光源もしくは前記線光源と前記テレセントリック投影光学系との間に配置された非点収差補正光学系と
を有し、
当該透明基板測定方法は、前記ピンホールもしくは前記スリットを移動させることにより、前記投影光と前記透明基板とが交差する位置を変えずに、前記投影光の前記透明基板への入射角度を変化させることを更に含む
透明基板測定方法。
【請求項14】
前記透明基板の複数箇所に対して前記調整を行うことと、
前記透明基板の、前記調整を行った各個所に順次、前記投影光を前記光源ユニットから照射している間に、前記投影光の、前記調整を行った各個所での反射光が作り出す虚像を撮像することと、
虚像の撮像によって得られた複数の画像データに基づいて前記透明基板の特性を導出することと
を更に含む
請求項13に記載の透明基板測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラスや樹脂などで構成された透明基材の特性を計測する透明基材計測装置および透明基材計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車のフロントガラスには、従来の強化ガラスに替わり、合わせガラスが使用されている。このフロントガラスをスクリーンとする虚像視ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display:HUD)が普及し始めている。虚像視HUDでは、プロジェクタからの投射画像が、合わせガラスの2つの界面で反射するので、一般的には、二重像が発生する。そこで、貼り合わされた2枚のガラスの間にある中間層に対して適当な楔角を与えることにより二重像を補正することが、例えば、特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5315358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載用フロントガラスは複雑な自由曲面形状を有している。形状バラツキ、即ち面位置や自由曲面の曲率バラツキがあると、反射光が設計上の理想状況から外れる。この場合、反射光が作り出す虚像に歪みやボケが発生する。更に、歪み、ボケに関しては、その発生原因が凹面鏡やHUD光学ユニットにある場合もあるため、発生原因の切り分けが可能な測定を行うべきである。しかしながら、現状では、HUD光学ユニット、凹面鏡、およびフロントガラスを組み合わせて測定を行わざるを得ず、ボケ、歪みの原因が何れに起因しているのかを判別するのが難しい。
【0005】
HUDシステムの開発を効率よく進める上では、凹面鏡やHUD投影光学系の試作がまだ完成していない時点でも、ガラス単体で、ガラスがHUDシステムの求める光学スペックを満たしているかを評価できることが望ましい。また、ボケ、歪みの原因がガラスにあるのか、それ以外にあるのかを切り分けるためにも、ガラス単体で評価できることが望ましい。なお、このような要望は、車載用フロントガラスの分野だけでなく、ガラスや樹脂などで構成された透明基材をスクリーンとして利用する技術分野全般にあるものと思われる。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光学的な不具合の発生原因の切り分けが可能な透明基材計測装置および透明基材計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る透明基材測定装置は、投射装置、撮像装置および情報処理装置を備えている。投射装置は、透明基板の1または複数の個所にピンホール状もしくはスリット状の投影光を照射可能に構成されている。撮像装置は、投射装置から出射された1または複数の投影光の透明基板での反射光が作り出す虚像を撮像する。情報処理装置は、撮像装置による撮像により得られた画像データに基づいて透明基板の特性を導出する。投射装置は、1または複数の投影光を出射する光源ユニットと、光源ユニット全体を移動させる第1機構部とを有している。光源ユニットは、ピンホールを有する点光源もしくはスリットを有する線光源と、当該投射装置の光軸上に配置されたテレセントリック投影光学系と、点光源もしくは線光源とテレセントリック投影光学系との間に配置された非点収差補正光学系と、投影光と透明基板とが交差する位置を変えずに、投影光の透明基板への入射角度を変化させる第2機構部とを有している。
【0008】
本発明の一実施の形態に係る透明基板測定方法は、以下の(A),(B),(C)を含む。
(A)透明基板の所定の個所に点状もしくは線状の投影光を光源ユニットから照射している間に、投影光の、透明基板での反射光が作り出す虚像が、指定した測定点に移動するように、投影光と透明基板とが交差する位置を変えずに、投影光の透明基板への入射角度を変化させることにより、光源ユニットの位置および姿勢の調整を行うこと
(B)調整の完了後に得られた虚像を撮像することと、
(C)虚像の撮像により得られた画像データに基づいて透明基板の特性を導出することと
【0009】
本発明の一実施の形態に係る透明基材測定装置および透明基板測定方法では、透明基板の所定の個所に点状もしくは線状の投影光が照射されている間に、投影光の、透明基板での反射光が作り出す虚像が撮像される。さらに、撮像により得られた画像データに基づいて透明基板の特性が導出される。これにより、例えば、凹面鏡やHUD光学ユニットを用いずに、透明基板の特性を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る透明基材測定装置および透明基板測定方法によれば、凹面鏡やHUD光学ユニットを用いずに、透明基板の特性を得ることができるようにしたので、例えば、二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合の発生原因を切り分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係る透明基材計測装置の構成例を表す図である。
図2】被検体の構成例を表す図である。
図3】被検体の機能を説明する図である。
図4】置台の構成例を表す図である。
図5】ターゲット部の構成例を表す図である。
図6図1の光源ユニットの構成例を表す図である。
図7図1の光源ユニットの他の構成例を表す図である。
図8】互いに近接する2つの像の強度分布の一例を表したものである。
図9】ピンホールまたはスリットを移動させたときの光線の変位の一例を表す図である。
図10】イメージセンサにおけるサンプリングを説明するための図である。
図11】情報処理装置の構成例を表す図である。
図12】教示データ取得手順の一例について説明する図である。
図13】複数の視点で教示データを取得する方法の一例について説明する図である。
図14】複数の測定点で教示データを取得する方法の一例について説明する図である。
図15】被検体の光学特性の計測手順の一例について説明する図である。
図16】二重像の計測方法の一例を表す図である。
図17】歪みの計測方法の一例を表す図である。
図18】ボケの計測方法の一例を表す図である。
図19】被検体を補正冶具で補正する方法の一例を表す図である。
図20図1の透明基材計測装置の構成の一変形例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本発明の一具体例であって、本発明は以下の態様に限定されるものではない。また、本発明は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。
【0013】
<1.実施の形態>
[構成]
本発明の一実施の形態に係る透明基材計測装置1の構成について説明する。図1は、透明基材計測装置1の構成例を表したものである。透明基材計測装置1は、被検体100の特性(例えば、二重像、歪み、ボケなどの光学特性)を計測するためのものである。
【0014】
(被検体100)
被検体100は、映像を投射されるスクリーンとして利用され得るものであり、ガラスや樹脂などで形成された透明基材である。透明基材は、可視光を透過する板状部材であり、例えば、平坦なガラス板、平坦な樹脂板、または、平坦な樹脂フィルムによって構成されている。透明基材は、湾曲したガラス板、湾曲した樹脂板、または、湾曲した樹脂フィルムによって構成されていてもよい。
【0015】
図2は、被検体100の構成例を表したものである。なお、図2には、被検体100が車載用のフロントガラスである例が示されている。図2に示した被検体100では、互いに対向する一対の主面100A,100Bは自由曲面を有している。そのため、曲率が縦方向と横方向とで異なる。また、曲率を描く縦方向の円と横方向の円との成す角は、図中のα1,α2に示したように、自由曲面内の場所ごとに変化する。フロントガラスの機種によっても、この縦横の曲率は異なる。
【0016】
次に、被検体100の機能について説明する。図3は、被検体100の機能の一例を説明するためのものである。被検体100は、投射装置から出射される虚像Iv1の光(投影光L)を、被検体100の背後の景色と共に、観察者200に視認させるためのものである。被検体100において、互いに対向する一対の主面100A,100Bは、投影光Lに対して反射面として機能する一方で、被検体100の背後から入射する外光に対して透過面として機能する。また、被検体100において、一対の主面100A,100Bは、一対の主面100A,100Bでの反射光によって、被検体100の背後に2つの虚像Iv2,Iv3を形成し得る。虚像Iv2は、所定の角度で主面100Aに入射した投影光Lの、主面100Aでの反射光線L2によって生成される。虚像Iv3は、所定の角度で主面100Aに入射した投影光Lの、主面100Bでの反射光線L3によって生成される。虚像Iv2,Iv3は、概ね同一の位置に生成され得る。
【0017】
主面100A,100Bは、虚像Iv1から発せられた1本の光線が主面100Aに斜めに入射することにより主面100Aで反射されるとともに、上述の1本の光線が主面100Aを屈折透過して主面100Bで反射されるように構成されている。主面100A,100Bは、さらに、主面100Aでの反射光線L2および主面100Bでの反射光線L3が観察者200の瞳孔210を介して観察者200の網膜220の位置で重なり合って結像するように構成されている。主面100A,100Bは、さらに、主面100Aでの反射光線L2および主面100Bでの反射光線L3が観察者200の瞳孔210を介して観察者200の網膜220の位置で目の解像度以下に結像するように構成されていることが好ましい。
【0018】
(透明基材計測装置1)
透明基材計測装置1は、投射装置10、撮像装置20、置台30、ターゲット部40および情報処理装置50を備えている。
【0019】
(置台30)
置台30は、被検体100を載置するためのものである。被検体100が車載用のフロントガラスである場合、置台30は、例えば、図4に示したように、車載用のフロントガラスが車に搭載されているときと同じ姿勢で、車載用のフロントガラスを保持可能な機構を有している。車載用のフロントガラスが車に搭載したときと同じ姿勢で保持されている場合には、車載用のフロントガラスには、実際に使用する時と同じ撓みが発生する。
【0020】
(ターゲット部40)
ターゲット部40は、投影光Lの、被検体100での反射光Lrが作り出す虚像Ivが投影される設計上の位置(例えば、被検体100の前方数mにおける規定の高さ)に配置されている。ターゲット部40は、例えば、図5に示したように、虚像表示エリアと同じ外形を持つ枠線と、測定を行いたい点(図中の測定点A〜E)とが描かれた紙面もしくはディスプレイである。なお、図5に示したようなターゲット部40を設ける代わりに、ターゲット部40に対応する仮想のターゲットを後述のカメラ21のファインダー像にオーバーレイさせ、情報処理装置50の表示画面上にCG(Computer Graphics)として描いてもよい。
【0021】
(投射装置10)
投射装置10は、被検体100の1または複数の個所に投影光Lを照射可能に構成されたものである。本実施の形態において、投射装置10は、被検体100の複数の個所に投影光Lを順次、照射する。投射装置10は、光源ユニット11および機構部12を有している。機構部12が、本発明の「第1機構部」の一具体例に相当する。
【0022】
機構部12は、光源ユニット11全体を移動させるためのものである。機構部12は、投射装置10の位置調整と投射装置10の光軸AX1の角度調整とを可能に構成されている。機構部12は、例えば、投射装置10(もしくは光源ユニット11)の光軸AX1に対して垂直方向に移動するXYの2軸と、光軸AX1方向に移動するZの1軸と、XZ平面内およびYZ平面内で回転する2軸の合計5軸を有している。機構部12は、例えば、情報処理装置50からの制御信号に基づいて光源ユニット11全体を5軸で移動させるサーボ機構で構成されている。機構部12がサーボ機構で構成されている場合には、ユーザは、光源ユニット11の位置や姿勢をサーボ機構に教示することにより、光源ユニット11の位置や姿勢を高精度に設定することができる。また、この場合には、透明基材計測装置1を生産ラインに組み込むことも容易となる。なお、機構部12は、例えば、手動のスライダーで構成されていてもよい。
【0023】
図6は、光源ユニット11の構成例を表したものである。光源ユニット11は、非点収差の補正、虚像Ivの位置調整、および投射装置10の光軸AX1の角度調整を可能に構成されている。光源ユニット11は、例えば、光源111、ピンホールマスク112、機構部113、シリンドリカルレンズ114,115、平凸レンズ116,117および機構部118を有している。光源111およびピンホールマスク112が、本発明の「点光源」の一具体例に相当する。シリンドリカルレンズ114,115が、本発明の「非点収差補正光学系」の一具体例に相当する。平凸レンズ116,117が、本発明の「投影光学系」、「テレセントリック光学系」の一具体例に相当する。機構部113,118は、投射装置10(もしくは光源ユニット11)の光軸AX1の角度(光線角度)調整を可能に構成されており、さらに、虚像Ivの位置調整も可能に構成されている。機構部113,118が、本発明の「第2機構部」の一具体例に相当する。
【0024】
光源111は、例えば、インコヒーレント光を発する発光ダイオードであり、可視領域の波長の光を出射する。上記の発光ダイオードは、例えば、白色発光ダイオードである。光源111は、例えば、ピンホールマスク112のピンホール112Aを均一に照明する。ピンホールマスク112は、シート状の遮光部材における所定位置にピンホール112Aが設けられたものである。ピンホール112Aは、光源111から発せられた光の発散角を調整する。光源111は、ピンホールマスク112を介して、点状の投影光Lを光学ユニット11の外部に出射する。
【0025】
なお、光源ユニット11において、例えば、図7に示したように、ピンホールマスク112の代わりに、スリットマスク121が設けられていてもよい。光源111およびスリットマスク121が、本発明の「線光源」の一具体例に相当する。この場合、光源111は、例えば、スリットマスク121のスリット121Aを均一に照明する。スリットマスク121は、シート状の遮光部材における所定位置にスリット121Aが設けられたものである。スリット121Aは、光源111から発せられた光の発散角を調整する。光源111は、スリットマスク121を介して、線状の投影光Lを光学ユニット11の外部に出射する。
【0026】
図8は、互いに近接する2つの像の強度分布の一例を表したものである。ピンホール112Aの開口幅Dpまたはスリット121Aの開口幅Dsが、以下の式(1),式(2)を満たすことが好ましい。ピンホール112Aの開口幅Dp、または、スリット121Aの開口幅Dsが、以下の式(1)を満たすことにより、カメラ21(後述)の角度分解能を目標の角度分解能δにすることが可能である。
Dx≦2fδ…(1)
Dx:ピンホール112Aもしくはスリット121Aの、撮影画像(画像データ52C)上の像の幅
f:カメラ21(後述)の焦点距離
δ:目標の角度分解能
【0027】
シリンドリカルレンズ114,115は、それぞれ、光源111から発せられた光を集光する。シリンドリカルレンズ114,115は、ともに、凸形状の面が光出射側となるように配置されている。シリンドリカルレンズ114,115は、シリンドリカルレンズ114においてレンズ効果のある方向と、シリンドリカルレンズ115においてレンズ効果のある方向とが交差角α(0°<α<180°)で交差するように配置されている。シリンドリカルレンズ114,115のうち少なくとも一方が光軸BX1と平行な軸を回転軸として回転可能に支持されている。光軸BX1は、ピンホール112Aもしくはスリット121Aを通過した光源111からの光の光軸である。シリンドリカルレンズ114,115は、交差角αの変化に応じて、シリンドリカルレンズ114,115に入射した光のビーム形状を変化させる。つまり、シリンドリカルレンズ114,115は、交差角αの変化に応じて、シリンドリカルレンズ114,115に入射した光の非点収差を変化させる。
【0028】
平凸レンズ116,117は、シリンドリカルレンズ114,115を透過した光を投影光Lとして被検体100に投影する。平凸レンズ116は、凸形状の面が光出射側となるように配置されている。平凸レンズ117は、凸形状の面が光入射側となるように配置されている。平凸レンズ116,117は、光源111を物体とする物体側テレセントリック光学系である。
【0029】
機構部113は、ピンホールマスク112またはスリットマスク121と、シリンドリカルレンズ114,115とを一緒に移動させるためのものである。機構部113は、例えば、光軸BX1に対して垂直方向に移動するXYの2軸と、光軸BX1方向に移動するZの1軸の合計3軸を有している。機構部113は、例えば、情報処理装置50からの制御信号に基づいて、ピンホールマスク112またはスリットマスク121と、シリンドリカルレンズ114,115とを3軸で一緒に移動させるサーボ機構で構成されている。機構部113がサーボ機構で構成されている場合には、ユーザは、位置情報をサーボ機構に教示することにより、ピンホールマスク112またはスリットマスク121の位置や、シリンドリカルレンズ114,115の位置を高精度に設定することができる。また、この場合には、透明基材計測装置1を生産ラインに組み込むことも容易となる。なお、機構部113は、例えば、手動のスライダーで構成されていてもよい。
【0030】
図9は、ピンホール112Aもしくはスリット121Aを機構部113により光軸BX1に対して垂直方向に移動させたときの、光線の変位の一例を表したものである。平凸レンズ116,117がテレセントリック光学系となっており、さらに、テレセントリック光学系の後ろ側焦点(図中のP)が被検体100上に配置されているとする。このとき、ピンホール112Aもしくはスリット121Aを機構部113により光軸BX1に対して垂直方向に移動させたときに、光線と被検体100とが交差する位置が変わらず、光線の、被検体100への入射角度のみが変化する。従って、機構部113は、機構部12との関係では、虚像Ivの投影位置の微調整に役立つ。
【0031】
機構部113は、シリンドリカルレンズ114,115を回転させるためのものでもある。機構部113は、例えば、上述の合計3軸の他に、XY面内で回転する1軸をさらに有している。これにより、機構部113は、間隙D1、間隙D2、間隙D3および交差角αを調整可能である。機構部113がサーボ機構で構成されている場合には、ユーザは、シリンドリカルレンズ114,115の位置や姿勢をサーボ機構に教示することにより、シリンドリカルレンズ114,115の位置や姿勢を高精度に設定することができる。また、この場合には、透明基材計測装置1を生産ラインに組み込むことも容易となる。なお、機構部113は、例えば、手動のスライダーで構成されていてもよい。
D1:ピンホールマスク112もしくはスリットマスク121とシリンドリカルレンズ114との間隙
D2:シリンドリカルレンズ114とシリンドリカルレンズ115との間隙
D3:シリンドリカルレンズ115と平凸レンズ116との間隙
【0032】
機構部118は、平凸レンズ116,117を移動させるためのものである。機構部118は、例えば、光軸BX1方向に移動するZの1軸を有している。これにより、機構部118は、間隙D3を調整可能である。機構部118がサーボ機構で構成されている場合には、ユーザは、平凸レンズ116,117の位置をサーボ機構に教示することにより、平凸レンズ116,117の位置を高精度に設定することができる。また、この場合には、透明基材計測装置1を生産ラインに組み込むことも容易となる。なお、機構部118は、例えば、手動のスライダーで構成されていてもよい。
【0033】
機構部113,118は、間隙D1、間隙D2および間隙D3を調整することで、虚像Ivの位置を調整する。これにより、機構部113,118は、虚像Ivの非点収差を補正し、回折限界まで虚像Ivを結像させることができる。
【0034】
(撮像装置20)
撮像装置20は、投射装置10から出射された1または複数の投影光Lの被検体100での反射光Lrが作り出す虚像Ivを撮像するものである。撮像装置20は、カメラ21および機構部22を有している。
【0035】
カメラ21は、光源ユニット11から発せられ、被検体100で反射された投影光Lを受光し、画像データ52C(後述)を生成する。カメラ21は、生成した画像データ52Cを情報処理装置50へ出力する。カメラ21は、例えば、対物レンズおよびイメージセンサを有する。対物レンズは、光源ユニット11から発せられ、被検体100で反射された投影光Lを集光する。イメージセンサは、対物レンズで集光された光を受光面で受光し、画像データ52Cを生成する。イメージセンサは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサである。対物レンズおよびイメージセンサは、人の目の角度分解能(例えば、1’)よりも高い角度分解能を有することが好ましい。
【0036】
図10は、カメラ21のイメージセンサにおけるサンプリングを説明するための図である。カメラ21の開口数NAは、以下の式(2)を満たす。サンプリング定理により離散的に取得した像を連続した像に復元するためには、カメラ21のイメージセンサ上の回折限界の像の大きさ(1.22λ/NA)が、カメラ21のイメージセンサにおけるピクセルピッチPpの2倍以上となっていることが必要である。サンプリング定理により離散的に取得した像を連続した像に復元できる条件を式で表すと、以下の式(2)となる。
1.22λ/NA≧2Pp…(2)
λ:投射装置10(もしくは光源111)の波長
Pp:カメラ21のイメージセンサにおけるピクセルピッチ
【0037】
情報処理装置50は、カメラ21による撮像により得られた画像データ52Cに基づいて被検体100の特性(例えば、二重像、歪み、ボケなどの光学特性)を導出する。情報処理装置50は、例えば、図11に示したように、制御部51、記憶部52、通信部53および入力部54を有している。
【0038】
通信部53は、投射装置10との間で通信を行うとともに、撮像装置20との間で通信を行う。入力部54は、ユーザからの入力を受け付けるものである。入力部54は、例えば、計測プログラム52Aのロードされた制御部51からの指示に従って、ユーザからの情報入力を受け付ける。入力部54は、例えば、キーボード、マウス、またはタッチパネルによって構成されている。
【0039】
記憶部52は、各種プログラムや各種データファイルを記憶可能となっている。記憶部52は、計測プログラム52Aを記憶している。記憶部52は、さらに、計測プログラム52Aが実行されることにより生成される各種データを記憶可能となっている。そのようなデータとしては、例えば、教示データ52Bおよび複数の画像データ52Cが挙げられる。記憶部52は、例えば、不揮発性メモリによって構成されており、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、抵抗変化型メモリなどによって構成されている。
【0040】
計測プログラム52Aは、被検体100の特性(例えば、二重像、歪み、ボケなどの光学特性)を導出するための一連の手順をプロセッサ(制御部51)に実行させるためのものである。計測プログラム52Aは、教示データ取得手順と、計測手順とを含んでいる。なお、以下では、教示データ取得手順と、計測手順とを分けて説明する。教示データ52Bには、例えば、機構部22,113,118に対して設定された教示データが含まれる。各画像データ52Cは、カメラ21によって得られた画像データである。画像データ52Cには、被検体100越しに見えるターゲット部40の画像が含まれている。複数の画像データ52Cのうち、一部の画像データ52Cには、被検体100越しに見えるターゲット部40の画像と、光源ユニット11から発せられ、被検体100で反射された投影光Lの画像とが重ね合わされた画像が含まれている。
【0041】
制御部51は、例えば、ユーザからの指示に基づいて、計測プログラム52Aを記憶部52から読み出し、読み出した内容を実行する。制御部51は、計測プログラム52Aに含まれる教示データ取得手順および計測手順を実行する。
【0042】
(教示データ取得)
まず、教示データ取得について説明する。図12は、教示データ取得手順の一例を表したものである。ユーザは、被検体100として、設計通りに製作されたマスター100Mを置台30に設置する(ステップS101、図13)。その後、ユーザは、入力部54を介して、制御部51に教示データ取得の実施を指示する。すると、制御部51は、計測プログラム52Aを記憶部52から読み出し、計測プログラム52Aに含まれる教示データ取得手順を実行する。
【0043】
具体的には、まず、ユーザは、カメラ21の光軸調整を行う(ステップS102)。ユーザは、カメラ21を複数の視点(例えば、視点Ch1〜Ch5)のうち、1つの視点(例えば、視点Ch1)に移動する。このとき、ユーザは、その視点(例えば、視点Ch1)において、被検体100越しに見えるターゲット部40の所定領域(具体的には、虚像Ivが表示され得る領域全体)がカメラ21の撮像領域内に入るよう、カメラ21の位置を微調整する。カメラ21の位置の微調整が完了したら、ユーザは、入力部54を介して、制御部51に教示データの取得を指示する。すると、制御部51は、そのときの機構部22の位置情報を機構部22から取得し、教示データ52Bとして記憶部52に記憶する(ステップS103)。
【0044】
ユーザは、他の視点における教示データ52Bの取得作業を行う場合には、再び、ステップS102を実行する(ステップS104;Y)。つまり、ユーザは、上記と同様にして、カメラ21を他の視点(例えば、視点Ch2〜Ch5)に順次移動し、カメラ21の位置の微調整が完了する度に、入力部54を介して、制御部51に教示データの取得を指示する。すると、制御部51は、その指示を受けるたびに、そのときの機構部22の位置情報を機構部22から取得し、教示データ52Bとして記憶部52に記憶する。
【0045】
ユーザは、全ての視点における教示データ52Bの取得作業を完了した場合には、1つの視点(例えば、視点Ch1)と1つの測定点(例えば、測定点E)を指定した上で、光源ユニット11の光軸調整を行う(ステップS105)。ユーザは、まず、入力部54を介して、制御部51に、1つの視点(例えば、視点Ch1)の設定と、投影光Lの出力とを指示する。すると、制御部51は、カメラ21が、記憶部52に記憶された教示データ52Bの中から、設定された視点(例えば、視点Ch1)に対応する教示データ52Bを読み出し、読み出した教示データ52Bを制御信号として機構部22に出力する。機構部22は、カメラ21を、制御部51から入力された制御信号に基づく位置に設定する。その後、制御部51は、光源111から投影光Lを出力させる(図14)。このとき、ユーザは、光源111から投影光Lが出力している間に、光源ユニット11の位置や姿勢を微調整して、虚像Ivを、指定した測定点(例えば、測定点E)上に移動させる。光源ユニット11の位置や姿勢の微調整が完了したら、ユーザは、入力部54を介して、制御部51に教示データ52Bの取得を指示する。すると、制御部51は、そのときの機構部12,113,118の位置情報や姿勢情報を機構部12,113,118から取得し、教示データ52Bとして記憶部52に記憶する(ステップS106)。
【0046】
ユーザは、他の測定点における教示データ52Bの取得作業を行う場合には、再び、ステップS105を実行する(ステップS107;Y)。ユーザは、同様にして、光源ユニット11の位置や姿勢を微調整して、虚像Ivを、他の測定点(例えば、測定点A〜D)上に順次移動させる度に、入力部54を介して、制御部51に教示データ52Bの取得を指示する。すると、制御部51は、その指示を受けるたびに、そのときの機構部12,113,118の位置情報や姿勢情報を機構部12,113,118から取得し、教示データ52Bとして記憶部52に記憶する。
【0047】
ユーザは、設定した視点(例えば、視点Ch1)において全ての測定点(例えば、測定点A〜E)での教示データ52Bを取得した場合には、他の視点(例えば、視点Ch2〜Ch5)を順次選択し、再び、ステップS105を実行する(ステップS107;N、ステップS108;Y)。ユーザは、視点(例えば、視点Ch2〜Ch5)を設定するたびに、光源ユニット11の位置や姿勢を微調整して、虚像Ivを、各測定点(例えば、測定点A〜E)上に順次移動させる度に、入力部54を介して、制御部51に教示データ52Bの取得を指示する。すると、制御部51は、その指示を受けるたびに、そのときの機構部12,113,118の位置情報や姿勢情報を機構部12,113,118から取得し、教示データ52Bとして記憶部52に記憶する。このようにして、制御部51は、視点ごとおよび測定点ごとに取得した教示データ52Bを記憶部52に記憶する。
【0048】
なお、情報処理装置50は、機構部20,12,113,118の位置や姿勢の調整を、上述したような手動に代わって、カメラ21から得られた画像データ52Cに基づいて自動的に行うようにしてもよい。また、情報処理装置50は、1つの視点で教示データ52Bを取得する度に、各測定点での教示データ52Bを取得するようにしてもよい。
【0049】
(計測)
次に、計測について説明する。図15は、被検体100Tの光学特性の計測手順の一例を表したものである。ユーザは、被検体100として、光学特性を求める被検体100Tを置台30に設置する(ステップS201、図16)。その後、ユーザは、入力部54を介して、制御部51に、光学特性の計測の実施を指示する。すると、制御部51は、計測プログラム52Aおよび教示データ52Bを記憶部52から読み出し、計測プログラム52Aに含まれる計測手順を教示データ52Bに基づいて実行する。
【0050】
具体的には、まず、制御部51は、1つの視点(例えば、Ch1)を選択するとともに、1つの測定点(例えば、測定点E)を選択する(ステップS202,S203)。次に、制御部51は、選択した視点(例えば、Ch1)の教示データ52Bを制御信号として機構部22へ出力する。すると、機構部22が、選択した視点(例えば、Ch1)へカメラ21を移動させる(ステップS204)。制御部51は、さらに、選択した測定点(例えば、測定点E)の教示データ52Bを制御信号として機構部12,113,118へ出力する。すると、機構部12,113,118が、選択した測定点(例えば、測定点E)へ光源ユニット11を移動させる(ステップS205)。
【0051】
次に、制御部51は、光源ユニット11(光源111)に対して投影光Lの出力を指示する。すると、光源ユニット11(光源111)は、投影光Lを出力する(ステップS206、図16)。制御部51は、光源ユニット11(光源111)が投影光Lを出力している間に、カメラ21に対して撮影を指示する。すると、カメラ21は、選択された視点(例えば、視点Ch1)で、虚像Ivの撮影を行う(ステップS207)。カメラ21は、撮影により得られた撮影画像(画像データ52C)を記憶部52に保存する(ステップS208)。その後、制御部51は、カメラ21によって得られた画像データ52Cから光学特性を導出し(ステップS209)、導出した光学特性を保存する(ステップS210)。
【0052】
ユーザは、他の測定点の選択を望む場合には(ステップS211;Y)、再び、ステップS102の実行を制御部51に指示する。ユーザは、さらに、他の視点の選択を望む場合には(ステップS212;Y)、再び、ステップS103の実行を制御部51に指示する。制御部51は、視点ごとおよび測定点ごとに画像データ52Cを取得し、取得した画像データ52Cから光学特性を導出し(ステップS209)、導出した光学特性を保存する(ステップS210)。ユーザが、他の測定点や他の視点の選択を終了することを制御部51に指示した場合には、制御部51は、測定の実行を終了する。
【0053】
情報処理装置50(制御部51)は、被検体100Tの光学特性として、例えば、二重像、歪み、ボケを計測することができる。
【0054】
(二重像)
図16は、二重像の計測方法の一例を表したものである。情報処理装置50(制御部51)は、計測により得られた画像データ52Cごとに、二重像間隔DIdおよび二重像のズレ角度DIθを導出する。計測により得られた画像データ52Cが、例えば、図16に示したように、主像Imと副像Isとからなる二重像Idを含んでいるとする。ここで、主像Imは、投影光Lの、被検体100の主面(光源ユニット11側の面)での反射光Lrが作り出す虚像Ivである。副像Isは、例えば、投影光Lの、被検体100の主面(ターゲット部40側の面)での反射光Lrが作り出す虚像Ivである。
【0055】
このとき、情報処理装置50(制御部51)は、主像Imの座標と、副像Isの座標とに基づいて、主像Imおよび副像Isの距離と、主像Imおよび副像Isを結んだ線分の傾きを計測する。より詳細には、情報処理装置50(制御部51)は、主像Imの光強度がピークとなる点の座標と、副像Isの光強度がピークとなる点の座標とに基づいて、双方の点の距離と、双方の点を結んだ線分の傾きを計測する。その後、情報処理装置50(制御部51)は、得られた距離と、カメラ21の光学倍率mと、ピクセルピッチPpとに基づいて、二重像間隔DIdを導出する。情報処理装置50(制御部51)は、さらに、得られた線分の傾きと、カメラ21の光学倍率mと、ピクセルピッチPpとに基づいて、二重像のズレ角度DIθを導出する。情報処理装置50(制御部51)は、このようにして、二重像の数値化を行う。
【0056】
なお、情報処理装置50(制御部51)は、計測点ごとの計測により得られた複数の画像データ52Cを互いに重ね合わせることにより、合成画像データ52Dを導出してもよい。このようにした場合でも、情報処理装置50(制御部51)は、導出した合成画像データ52Dから、二重像間隔DId、および二重像のズレ角度DIθを算出することができる。
【0057】
(歪み)
図17は、歪みの計測方法の一例を表したものである。情報処理装置50(制御部51)は、計測点ごとの計測により得られた複数の画像データ52Cを互いに重ね合わせることにより、合成画像データ52Dを導出する。得られた合成画像データ52Dには、例えば、図17に示したように、複数の虚像Ivが測定点A〜Eごとに1つずつ対応して映し出されている。情報処理装置50(制御部51)は、合成画像データ52Dから、虚像Ivごとに、測定点(本来虚像Ivが投影されるべき基準点)の座標と、虚像Ivの座標とに基づいて、測定点および虚像Ivの距離と、測定点および虚像Ivを結んだ線分の傾きを計測する。より詳細には、情報処理装置50(制御部51)は、上記測定点の座標と、虚像Ivの光強度がピークとなる点の座標とに基づいて、上記測定点および虚像Ivの距離と、測定点および虚像Ivを結んだ線分の傾きを計測する。その後、情報処理装置50(制御部51)は、得られた距離と、カメラ21の光学倍率mと、ピクセルピッチPpとに基づいて、歪み量Sdを導出する。情報処理装置50(制御部51)は、さらに、得られた線分の傾きと、カメラ21の光学倍率mと、ピクセルピッチPpとに基づいて、歪みのズレ角度Sθを算出する。情報処理装置50(制御部51)は、このようにして、歪みの数値化を行う。
【0058】
なお、情報処理装置50(制御部51)は、得られた画像データ52Cごとに、測定点および虚像Ivの距離と、上記測定点および虚像Ivを結んだ線分の傾きとを計測してもよい。このようにした場合でも、情報処理装置50(制御部51)は、各画像データ52Cから、歪み量Sd、および歪みのズレ角度Sθを算出することができる。
【0059】
(ボケ)
図18は、ボケの計測方法の一例を表したものである。情報処理装置50(制御部51)は、計測により得られた画像データ52Cごとに、虚像Iv(例えば主像Im)の光強度分布における半値幅もしくは1/e2幅を、ボケ量として導出する。情報処理装置50(制御部51)は、このようにして、ボケの数値化を行う。
【0060】
なお、情報処理装置50(制御部51)は、計測点ごとの計測により得られた複数の画像データ52Cを互いに重ね合わせることにより、合成画像データ52Dを導出してもよい。このようにした場合でも、情報処理装置50(制御部51)は、導出した合成画像データ52Dから、虚像Iv(例えば主像Im)の光強度分布における半値幅もしくは1/e2幅を算出することができる。
【0061】
[効果]
次に、本実施の形態に係る透明基材測定装置1の効果について説明する。
【0062】
HUDシステムの開発を効率よく進める上では、凹面鏡やHUD投影光学系の試作がまだ完成していない時点でも、透明基板単体で、透明基板がHUDシステムの求める光学スペックを満たしているかを評価できることが望ましい。また、ボケ、歪みの原因が透明基板にあるのか、それ以外にあるのかを切り分けるためにも、透明基板単体で評価できることが望ましい。しかしながら、現状では、HUD光学ユニット、凹面鏡、および透明基板を組み合わせて測定を行わざるを得ず、ボケ、歪みの原因が何れに起因しているのかを判別するのが難しい。
【0063】
しかし、本実施の形態では、被検体100の所定の個所にピンホール状もしくはスリット状の投影光Lが照射されている間に、投影光Lの、被検体100での反射光Lrが作り出す虚像Ivが撮像される。さらに、撮像により得られた画像データ52Cに基づいて被検体100の光学特性が導出される。これにより、例えば、凹面鏡やHUD光学ユニットを用いずに、被検体100の光学特性を得ることができる。その結果、例えば、二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合の発生原因を切り分けることができる。また、得られた光学特性に基づいて、被検体100の形状バラツキを評価し、被検体100の設計改善に役立てることができる。
【0064】
また、本実施の形態では、投影光Lを出射する光源ユニット11が機構部12によって移動される。機構部12は、投射装置10の位置調整と投射装置10の光軸の角度調整とを可能に構成されている。これにより、被検体100の光学特性を計測する際に、光源ユニット11をあらかじめ位置決めしておくことにより得られた教示データ52Bを機構部12に与えることができる。従って、被検体100の光学特性を計測する際に、光源ユニット11の位置や姿勢を精度よく制御することができる。
【0065】
また、本実施の形態では、光源ユニット11では、非点収差の補正、虚像Ivの位置調整、および投射装置10の光軸AX1の角度調整を行うことができる。具体的には、光源ユニット11には、投射装置10の光軸AX1の角度調整や虚像Ivの位置調整を可能に構成された機構部12が設けられている。これにより、被検体100の曲率が例えば3m〜10mの範囲内にある場合において、回折限界まで虚像Ivを結像させることができるので、光源ユニット11の位置や姿勢を変えたときに、光源ユニット11の位置や姿勢に起因する二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合の発生を低減することができる。従って、被検体100の光学特性を計測する際に、例えば、二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合の発生原因を切り分けることができる。
【0066】
また、本実施の形態では、光源ユニット11には、ピンホール光を出射する光学系(光源111およびピンホールマスク112)と、光源ユニット11の光軸AX1上に配置された投影光学系(一対の平凸レンズ117)と、ピンホール光を出射する光学系(光源111およびピンホールマスク112)と投影光学系(一対の平凸レンズ117)との間に配置された非点収差補正光学系(2つのシリンドリカルレンズ114,115)が設けられている。これにより、光源ユニット11に起因する二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合の発生を低減することができる。従って、被検体100の光学特性を計測する際に、例えば、二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合の発生原因を切り分けることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、投影光学系(一対の平凸レンズ117)がテレセントリック光学系である。これにより、ピンホール112Aもしくはスリット121Aを機構部113により光軸AX1に対して垂直方向に移動させたときに、光線と被検体100とが交差する位置が変わらず、光線の、被検体100への入射角度のみが変化する。その結果、光源ユニット11の位置や姿勢の微調整を容易に行うことができる。従って、被検体100の光学特性を計測する際に、例えば、二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合の発生原因を切り分けることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、非点収差補正光学系が、レンズ効果のある方向が互いに交差するように配置された2つのシリンドリカルレンズ114,115によって構成されている。さらに、本実施の形態では、2つのシリンドリカルレンズ114,115のうち少なくとも一方が投射装置10の光軸AX1と平行な軸を回転軸として回転可能に支持されている。これにより、非点収差を容易に補正することができるので、被検体100の光学特性を計測する際に、例えば、二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合の発生原因を切り分けることができる。
【0069】
また、本実施の形態では、虚像Ivの非点収差の補正により、回折限界まで虚像Ivを結像させることができる。これにより、カメラ21の角度分解能を目標の角度分解能δにすることが可能である。その結果、二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合を高精度に計測することができる。
【0070】
また、本実施の形態では、光学特性として虚像Ivの二重像間隔DId、歪み量Sdおよびボケ量が、カメラ21によって得られた画像データ52Cに基づいて導出される。虚像Ivの二重像間隔DId、歪み量Sdおよびボケ量を計測する際に、別個の装置を用いたり、共通の装置で別々に計測したりする必要がない。その結果、二重像、ボケ、歪みなどの光学的な不具合を高速に計測することができる。
【0071】
<2.変形例>
以下に、上記実施の形態の透明基材計測装置1の変形例について説明する。なお、以下では、上記実施の形態と共通の構成要素に対しては、上記実施の形態で付されていた符号と同一の符号が付される。また、上記実施の形態と異なる構成要素の説明を主に行い、上記実施の形態と共通の構成要素の説明については、適宜、省略するものとする。
【0072】
[変形例A]
上記実施の形態において、被検体100として、設計通りに製作されたマスター100Mを用意することができない場合がある。つまり、試作の被検体100の出来が悪く、歪みを抑えることが出来ない場合には、測定点の教示用として用いるマスター100Mとして相応しくない。その場合には、例えば、図19に示したように、マスター100Mとは異なる被検体100を置台30に設置したときに、被検体100が所望の撓み(曲面)となるように被検体100を支持する補正冶具31が置台30に設けられていてもよい。補正冶具31は、投影光Lが通過する領域を避けて配置されていればよい。なお、補正冶具31のような被検体100の自重に頼った補正方法とは異なる方法で、被検体100を補正してもよい。
【0073】
[変形例B]
上記実施の形態では、投射装置10は、被検体100の複数の個所に投影光Lを順次、照射していた。しかし、例えば、図20に示したように、投射装置10が複数の光源ユニット11を有している場合には、投射装置10は、被検体100の複数の個所に投影光Lを同時に照射してもよい。このようにした場合には、上記実施の形態と比べて、測定時間を大幅に短縮することができる。
【0074】
[変形例C]
上記実施の形態において、被検体100として、設計通りに製作されたマスター100Mを用意することができない場合がある。その場合には、被検体100Tを用いて、制御部51は、測定したい複数の測定点の内、1つの測定点においてだけ、教示データ52Bを取得してもよい。そして、残りの測定点における教示データ52Bに関しては、CADやシミュレータソフトの計算で、1点目の測定点の位置との差分を算出し、この差分を実際に取得した測定点における教示データ52Bに加えてやることで、測定精度を十分に満たすオフライン教示が可能になる。
【0075】
もちろんすべての点に対しても、オフライン教示することも可能である。しかし、特に絶対位置ズレを計測する歪み測定では、高い精度は望めない。CADやシミュレーションでは、ソフト上での仮想空間に、被検体100、光源ユニット11、カメラ21を配置しているにすぎない。ソフト上の仮想空間と実際の装置においては、位置的なズレ誤差を発生する。例えば、被検体100の取り付け角度が少しでも誤差を持つと、被検体100で反射した光軸は、被検体100の角度誤差の2倍の反射角で反射し、数m離れた虚像表示部では、大きな照射位置ズレを引き起こしてしまうからである。
【0076】
[変形例D]
本発明は、HUDシステム用の二重像、ボケ、歪みの測定のみでなく、通常の透過像、即ち車の運転者が被検体100越しに見る信号機や道路標識に発生する二重像、ボケ、歪みの測定にも利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1…透明基材計測装置、10…投射装置、11…光源ユニット、12…機構部、20…撮像装置、21…カメラ、22…機構部、30…置台、31…補正冶具、40…ターゲット部、50…情報処理装置、51…制御部、52…記憶部、52A…計測プログラム、52B…教示データ、52C…画像データ、52D…合成画像データ、53…通信部、54…入力部、AX1…光軸、AX2…光軸、100,100T…被検体、100A,100B…主面、100M…マスター、111…光源、112…ピンホールマスク、112A…ピンホール、113…機構部、114,115…シリンドリカルレンズ、116,117…平凸レンズ、118…機構部、121…スリットマスク、121A…スリット、200…観察者、210…瞳孔、220…網膜、AX1,AX2…光軸、D1,D2,D3…間隙、DId…二重像間隔、DIθ…二重像のズレ角度、Id…二重像、Im…主像、Is…副像、Iv1,Iv2,Iv3…虚像、L…投影光、L2,L3…反射光線、α…交差角。



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