特許第6670490号(P6670490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670490面状抵抗発熱体および抵抗発熱シームレス管状物ならびに導電性粒子含有樹脂溶液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670490
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】面状抵抗発熱体および抵抗発熱シームレス管状物ならびに導電性粒子含有樹脂溶液
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/14 20060101AFI20200316BHJP
   H05B 3/34 20060101ALI20200316BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20200316BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20200316BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20200316BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   H05B3/14 F
   H05B3/34
   H05B3/20 313
   G03G15/20 515
   C08L79/08
   C08K3/04
【請求項の数】13
【全頁数】64
(21)【出願番号】特願2016-521088(P2016-521088)
(86)(22)【出願日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2015064159
(87)【国際公開番号】WO2015178337
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年5月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-103363(P2014-103363)
(32)【優先日】2014年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-103365(P2014-103365)
(32)【優先日】2014年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391059399
【氏名又は名称】株式会社アイ.エス.テイ
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀忠
(72)【発明者】
【氏名】武田 泰昭
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−252190(JP,A)
【文献】 特開2011−023178(JP,A)
【文献】 特開2009−266631(JP,A)
【文献】 特開2010−045025(JP,A)
【文献】 特開2010−102339(JP,A)
【文献】 特開2013−029728(JP,A)
【文献】 特開2007−272223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/14
C08K 3/04
C08L 79/08
G03G 15/20
H05B 3/20
H05B 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面を有する導電性粒子と、抵抗値安定化成分とを含有する樹脂から形成される発熱樹脂層と、
前記発熱樹脂層に接する一対の電極部と
を備え、
前記抵抗値安定化成分には、(a)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(b)硼素(B)を含有する硼酸由来の化合物が含まれており、
300℃の温度下において100時間経過したときの前記電極部間の抵抗値から前記電極部間の初期抵抗値を差し引いた値を、前記初期抵抗値で除して算出される抵抗値変動率が±30%の範囲内である
面状抵抗発熱体。
【請求項2】
金属表面を有する導電性粒子と、抵抗値安定化成分とを含有する樹脂から形成される発熱樹脂層と、
前記発熱樹脂層に接する一対の電極部と
を備え、
前記抵抗値安定化成分には、(a)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(b)硼素(B)を含有する硼酸由来の化合物が含まれており、
300℃の温度下において48時間経過したときの前記電極部間の抵抗値から前記電極部間の初期抵抗値を差し引いた値を、前記初期抵抗値で除して算出される抵抗値変動率が±15%の範囲内である
面状抵抗発熱体。
【請求項3】
前記抵抗値安定化成分には、(c)モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニオブ(Nb)の少なくとも一つの元素を含有する、ポリ酸またはその塩由来の化合物がさらに含まれる
請求項1または2に記載の面状抵抗発熱体。
【請求項4】
前記樹脂は、カーボンナノ材料をさらに含有する
請求項からのいずれか1項に記載の面状抵抗発熱体。
【請求項5】
前記発熱樹脂層は、膜厚が10μm以上である
請求項からのいずれか1項に記載の面状抵抗発熱体。
【請求項6】
前記導電性粒子の体積分率が20体積%以上70体積%以下の範囲内である
請求項からのいずれか1項に記載の面状抵抗発熱体。
【請求項7】
前記電極部間の初期抵抗値が5Ω以上150Ω以下の範囲内である
請求項1からのいずれか1項に記載の面状抵抗発熱体。
【請求項8】
樹脂または樹脂前駆体と、
金属表面を有する導電性粒子と、
抵抗値安定化剤と、
溶剤と
を含有し、
前記抵抗値安定化剤には、(d)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(e)硼酸が少なくとも含まれる
導電性粒子含有樹脂溶液。
【請求項9】
前記抵抗値安定化剤には、(f)ポリ酸またはその塩がさらに含まれる
請求項に記載の導電性粒子含有樹脂溶液。
【請求項10】
カーボンナノ材料をさらに含有する
請求項8または9に記載の導電性粒子含有樹脂溶液。
【請求項11】
請求項から10のいずれか1項に記載の導電性粒子含有樹脂溶液の塗膜を加熱して得られる、面状抵抗発熱体。
【請求項12】
金属表面を有する導電性粒子と、抵抗値安定化成分とを含有する樹脂から形成される発熱樹脂層と、
前記発熱樹脂層に接する一対の電極部と
を備え、
前記抵抗値安定化成分には、(a)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(b)硼素(B)を含有する硼酸由来の化合物が含まれており、
300℃の温度下において100時間経過したときの前記電極部間の抵抗値から前記電極部間の初期抵抗値を差し引いた値を、前記初期抵抗値で除して算出される抵抗値変動率が±30%の範囲内である
抵抗発熱シームレス管状物。
【請求項13】
金属表面を有する導電性粒子と、抵抗値安定化成分とを含有する樹脂から形成される発熱樹脂層と、
前記発熱樹脂層に接する一対の電極部と
を備え、
前記抵抗値安定化成分には、(a)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(b)硼素(B)を含有する硼酸由来の化合物が含まれており、
300℃の温度下において48時間経過したときの前記電極部間の抵抗値から前記電極部間の初期抵抗値を差し引いた値を、前記初期抵抗値で除して算出される抵抗値変動率が±15%の範囲内である
抵抗発熱シームレス管状物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状抵抗発熱体および抵抗発熱シームレス管状物に関する。本発明は、また、導電性粒子含有樹脂溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「カーボンナノ材料及びフィラメント状金属微粒子が分散されるポリイミド樹脂からなる発熱層を有する抵抗発熱シームレス定着ベルト」が提案されている(例えば、特開2007−272223号公報等参照)。この抵抗発熱シームレス定着ベルトは、通電されると自己発熱するシームレス定着ベルトであって、電子写真画像形成装置の画像定着部の主要部品として用いられる。
【0003】
しかしながら、このような抵抗発熱シームレス定着ベルトの発熱層において導電性材料として、銅、銀、ニッケル等の金属微粒子が用いられると、電子写真画像形成装置の使用に伴って金属微粒子が徐々に変質し、その変質に伴って抵抗発熱シームレス定着ベルトの抵抗値が徐々に変化し、延いてはその発熱量が変化してしまう。このため、このような抵抗発熱シームレス定着ベルトは、比較的短期間で交換しなければならない。
【0004】
このような問題を解決するために、過去に「導電性材料として特定の黒鉛繊維と、カーボンブラック又はカーボンナノファイバーとを用いた抵抗発熱シームレス定着ベルト」が提案されている(例えば、特開2013−037213号公報等参照)。この抵抗発熱シームレス定着ベルトでは、上記の通り、導電性材料として、金属微粒子に代えてカーボン系の微粒子が用いられている。このような抵抗発熱シームレス定着ベルトは、長時間使用においても抵抗値の変化がほとんどなく、安定した発熱特性を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−272223号公報
【特許文献2】特開2013−037213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このように抵抗発熱シームレス定着ベルトにおいて金属微粒子に代えてカーボン系の微粒子が用いられるとその抵抗値が著しく高くなるため、抵抗発熱シームレス定着ベルトを小型化することができなくなる。
【0007】
本発明の課題は、「使用に伴う抵抗値変動が小さいながらも小型化することが可能である面状抵抗発熱体(抵抗発熱シームレス定着ベルトを含む。)」を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係る面状抵抗発熱体は、発熱樹脂層および一対の電極部を備える。発熱樹脂層は、樹脂から形成される。樹脂は、金属表面を有する導電性粒子と、抵抗値安定化成分とを含有する。抵抗値安定化成分には、(a)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(b)硼素(B)を含有する硼酸由来の化合物が含まれている。なお、ここにいう「抵抗値安定化成分」とは、後述の導電性粒子含有樹脂溶液の抵抗値安定化剤が加熱処理されたものである。また、ここにいう「SH基」はメルカプト基であり、「SM基」はメルカプト基の「金属塩」または「置換若しくは無置換のアンモニウム塩」である。また、硼素(B)を含有する化合物は、例えば、酸化硼素等である。一対の電極部は、発熱樹脂層に接する。なお、ここにいう「面状」との文言には、シート状や管状も含まれ得る。また、この面状抵抗発熱体は、発熱樹脂層および一対の電極部のみから構成されていてもよいし、発熱樹脂層および一対の電極部を含む複数の層から構成されていてもよい。電極部は発熱樹脂層の両脇に配置されることが好ましい。また、面状抵抗発熱体がシート状である場合、電極部は、表側面に露出するように設けられてもよいし、裏側面に露出するように設けられてもよいし、埋設されてもよい。また、面状抵抗発熱体が管状である場合、電極部は、内周面に露出するように設けられてもよいし、外周面に露出するように設けられてもよいし、埋設されてもよい。また、発熱樹脂層の一部が電極部として機能してもよい。発熱樹脂層は、直接的に電極部に接合されてもよいし、1または複数の導電性樹脂層を介して間接的に電極部に接合されてもよい。そして、この面状抵抗発熱体は、300℃の温度下において100時間経過したときの電極部間の抵抗値から電極部間の初期抵抗値を差し引いた値を、初期抵抗値で除して算出される抵抗値変動率が±30%の範囲内である。
【0009】
この面状抵抗発熱体は、上述の通り、300℃の温度下において100時間経過したときの抗値変動率が±30%の範囲内である。このため、この面状抵抗発熱体は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さい。
【0010】
また、この面状抵抗発熱体において、金属表面を有する導電性粒子、および、抵抗値安定化成分を含有する樹脂から発熱樹脂層形成されている。このため、この面状抵抗発熱体は、その抵抗値を小さくすることができる。したがって、この面状抵抗発熱体は、使用に伴う抵抗値変動が小さいながらも小型化することができる。
【0011】
本発明の他の局面に係る面状抵抗発熱体は、発熱樹脂層および一対の電極部を備える。発熱樹脂層は、樹脂から形成される。樹脂は、金属表面を有する導電性粒子と、抵抗値安定化成分とを含有する。抵抗値安定化成分には、(a)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(b)硼素(B)を含有する硼酸由来の化合物が含まれている。なお、ここにいう「抵抗値安定化成分」とは、後述の導電性粒子含有樹脂溶液の抵抗値安定化剤が加熱処理されたものである。また、ここにいう「SH基」はメルカプト基であり、「SM基」はメルカプト基の「金属塩」または「置換若しくは無置換のアンモニウム塩」である。また、硼素(B)を含有する化合物は、例えば、酸化硼素等である。一対の電極部は、発熱樹脂層に接する。なお、ここにいう「面状」との文言には、シート状や管状も含まれ得る。また、この面状抵抗発熱体は、発熱樹脂層および一対の電極部のみから構成されていてもよいし、発熱樹脂層および一対の電極部を含む複数の層から構成されていてもよい。電極部は発熱樹脂層の両脇に配置されることが好ましい。また、面状抵抗発熱体がシート状である場合、電極部は、表側面に露出するように設けられてもよいし、裏側面に露出するように設けられてもよいし、埋設されてもよい。また、面状抵抗発熱体が管状である場合、電極部は、内周面に露出するように設けられてもよいし、外周面に露出するように設けられてもよいし、埋設されてもよい。また、発熱樹脂層の一部が電極部として機能してもよい。発熱樹脂層は、直接的に電極部に接合されてもよいし、1または複数の導電性樹脂層を介して間接的に電極部に接合されてもよい。そして、この面状抵抗発熱体は、300℃の温度下において48時間経過したときの電極部間の抵抗値から電極部間の初期抵抗値を差し引いた値を、初期抵抗値で除して算出される抵抗値変動率が±15%の範囲内である。
【0012】
この面状抵抗発熱体は、上述の通り、300℃の温度下において48時間経過したときの抗値変動率が±15%の範囲内である。このため、この面状抵抗発熱体は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さい。
【0013】
また、この面状抵抗発熱体において、金属表面を有する導電性粒子、および、抵抗値安定化成分を含有する樹脂から発熱樹脂層形成されている。このため、この面状抵抗発熱体は、その抵抗値を小さくすることができる。したがって、この面状抵抗発熱体は、使用に伴う抵抗値変動が小さいながらも小型化することができる。
【0014】
た、この抵抗値安定化成分には、(c)モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニオブ(Nb)の少なくとも一つの元素を含有する、ポリ酸またはその塩由来の化合物がさらに含まれるのが好ましい。金属表面粒子含有面状抵抗発熱体における電極部の劣化や電極部の膨張を防止することができるからである。
【0015】
なお、上述の金属表面粒子含有面状抵抗発熱体において、樹脂は、カーボンナノ材料をさらに含有するのが好ましい。カーボンナノ材料は、面状抵抗発熱体の抵抗調整材として機能するからである。カーボンナノ材料は、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの少なくとも一方が主成分であることが好ましい。なお、ここにいう「主成分」とは、90体積%以上を占める成分をいう。
【0016】
また、上述の金属表面粒子含有面状抵抗発熱体において、発熱樹脂層は、膜厚が10μm以上であるのが好ましい。この条件を満足すれば膜厚に少々のバラツキが生じても抵抗値の変動幅が実用に耐え得るほど極めて狭くなり、この面状抵抗発熱体を大量生産した場合であってもその発熱量を安定させることができるからである。
【0017】
また、上述の金属表面粒子含有面状抵抗発熱体において、導電性粒子の体積分率が20体積%以上70体積%以下の範囲内であるのが好ましい。面状抵抗発熱体に良好な柔軟性を付与することができ、抵抗発熱シームレス管状物への応用が可能となるからである。なお、この体積分率は、抵抗発熱シームレス管状物の体積に対するものである。
【0018】
また、上述の面状抵抗発熱体では、電極部間の初期抵抗値が5Ω以上150Ω以下の範囲内であるのが好ましく、15Ω以上75Ω以下の範囲内であるのがより好ましい。主要な国や地域において抵抗発熱シームレス管状物が、定着装置において要求され得る400W〜1200Wの出力を発揮することができるからである。さらに詳しくは、その初期抵抗値が5Ω以上40Ω以下の範囲内である場合、単相100V以上120V以下の範囲内の電圧を規格とする日本、米国、台湾等の国々や諸地域向けの抵抗発熱シームレス管状物とすることができ、その初期抵抗値が30Ω以上150Ω以下の範囲内である場合、単相200V以上240V以下の範囲内の電圧を規格とするヨーロッパ各国等の国々や諸地域向けの抵抗発熱シームレス管状物とすることができる。
【0019】
本発明の他の局面に係る導電性粒子含有樹脂溶液は、樹脂または樹脂前駆体、導電性粒子、抵抗値安定化剤および溶剤を含有する。導電性粒子は、金属表面を有する。なお、ここにいう「金属」は、純金属であってもよいし、合金であってもよい。また、導電性粒子は、金属のみから形成される金属粒子であってもよいし、コア・シェル型の粒子であってもよい。なお、導電性粒子がコア・シェル型の粒子である場合、シェルが金属で形成される。溶剤は、樹脂または樹脂前駆体を溶解させるものである。抵抗値安定化剤には、(d)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(e)硼酸が少なくとも含まれる。なお、ここにいう「SH基」はメルカプト基であり、「SM基」はメルカプト基の「金属塩」または「置換若しくは無置換のアンモニウム塩」である。
【0020】
この導電性粒子含有樹脂溶液には、上述の通り、抵抗値安定化剤が含有される。このため、この導電性粒子含有樹脂溶液から作製される面状抵抗発熱体(上述の金属表面粒子含有面状抵抗発熱体に該当する。)は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さい。また、この導電性粒子含有樹脂溶液には、上述の通り、金属表面を有する導電性粒子が含有される。このため、この導電性粒子含有樹脂溶液から作製される面状抵抗発熱体は、その抵抗値を小さくすることができる。したがって、この導電性粒子含有樹脂溶液を利用することによって、使用に伴う抵抗値変動が小さい小型の面状抵抗発熱体を作製することができる。
【0021】
また、この抵抗値安定化剤には、(f)ポリ酸またはその塩がさらに含まれるのが好ましい。面状抵抗発熱体における電極部の劣化や電極部の膨張を防止することができるからである。なお、ここにいう「ポリ酸」とは、金属原子などに酸素原子が4,5,6配位した結果、MO四面体、MO正方錘、MO六面体またはMO三方両錘からなる基本単位から構成される無機酸である。ポリ酸は、イソポリ酸であることが好ましく、ヘテロポリ酸であることがより好ましい。
【0022】
また、上述の導電性粒子含有樹脂溶液は、カーボンナノ材料をさらに含有するのが好ましい。カーボンナノ材料は、面状抵抗発熱体の抵抗調整材として機能するのみならず、導電性粒子含有樹脂溶液の粘度調節材としても機能するからである。カーボンナノ材料は、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの少なくとも一方が主成分であることが好ましい。なお、ここにいう「主成分」とは、90体積%以上を占める成分をいう。
【0023】
本発明の他の局面に係る面状抵抗発熱体は、上述の導電性粒子含有樹脂溶液の塗膜を加熱して得られる。上述の通り、上述の導電性粒子含有樹脂溶液には抵抗値安定化剤が含有される。このため、この導電性粒子含有樹脂溶液から作製されるこの面状抵抗発熱体(上述の金属表面粒子含有面状抵抗発熱体に該当する。)は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さい。また、上述の通り、上述の導電性粒子含有樹脂溶液には、金属表面を有する導電性粒子が含有される。このため、この導電性粒子含有樹脂溶液から作製されるこの面状抵抗発熱体は、その抵抗値を小さくすることができる。したがって、この面状抵抗発熱体は、使用に伴う抵抗値変動が小さいながらも小型化することができる。
【0024】
本発明の他の局面に係る抵抗発熱シームレス管状物は、発熱樹脂層および一対の電極部を備える。発熱樹脂層は、樹脂から形成される。樹脂は、金属表面を有する導電性粒子と、抵抗値安定化成分とを含有する。抵抗値安定化成分には、(a)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(b)硼素(B)を含有する硼酸由来の化合物が含まれている。なお、ここにいう「抵抗値安定化成分」とは、後述の導電性粒子含有樹脂溶液の抵抗値安定化剤が加熱処理されたものである。また、ここにいう「SH基」はメルカプト基であり、「SM基」はメルカプト基の「金属塩」または「置換若しくは無置換のアンモニウム塩」である。また、硼素(B)を含有する化合物は、例えば、酸化硼素等である。一対の電極部は、発熱樹脂層に接する。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、発熱樹脂層および一対の電極部のみから構成されていてもよいし、発熱樹脂層および一対の電極部を含む複数の層から構成されていてもよい。電極部は発熱樹脂層の両脇に配置されることが好ましい。また、電極部は、内周面に露出するように設けられてもよいし、外周面に露出するように設けられてもよいし、埋設されてもよい。また、発熱樹脂層の一部が電極部として機能してもよい。発熱樹脂層は、直接的に電極部に接合されてもよいし、1または複数の導電性樹脂層を介して間接的に電極部に接合されてもよい。そして、この抵抗発熱シームレス管状物は、300℃の温度下において100時間経過したときの電極部間の抵抗値から前記電極部間の初期抵抗値を差し引いた値を、初期抵抗値で除して算出される抵抗値変動率が±30%の範囲内である。
【0025】
この抵抗発熱シームレス管状物は、上述の通り、300℃の温度下において100時間経過したときの抗値変動率が±30%の範囲内である。このため、この抵抗発熱シームレス管状物は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さい。
【0026】
また、この抵抗発熱シームレス管状物において、金属表面を有する導電性粒子、および、抵抗値安定化成分を含有する樹脂から発熱樹脂層形成されている。このため、この抵抗発熱シームレス管状物は、その抵抗値を小さくすることができる。したがって、この抵抗発熱シームレス管状物は、使用に伴う抵抗値変動が小さいながらも小型化することができる。
【0027】
本発明の他の局面に係る抵抗発熱シームレス管状物は、発熱樹脂層および一対の電極部を備える。発熱樹脂層は、樹脂から形成される。樹脂は、金属表面を有する導電性粒子と、抵抗値安定化成分とを含有する。抵抗値安定化成分には、(a)SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属又は置換若しくは無置換のアンモニウムである。)ならびに(b)硼素(B)を含有する硼酸由来の化合物が含まれている。なお、ここにいう「抵抗値安定化成分」とは、後述の導電性粒子含有樹脂溶液の抵抗値安定化剤が加熱処理されたものである。また、ここにいう「SH基」はメルカプト基であり、「SM基」はメルカプト基の「金属塩」または「置換若しくは無置換のアンモニウム塩」である。また、硼素(B)を含有する化合物は、例えば、酸化硼素等である。一対の電極部は、発熱樹脂層に接する。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、発熱樹脂層および一対の電極部のみから構成されていてもよいし、発熱樹脂層および一対の電極部を含む複数の層から構成されていてもよい。発熱樹脂層は、金属表面を有する導電性粒子を含有する樹脂から形成される。電極部は発熱樹脂層の両脇に配置されることが好ましい。また、電極部は、内周面に露出するように設けられてもよいし、外周面に露出するように設けられてもよいし、埋設されてもよい。また、発熱樹脂層の一部が電極部として機能してもよい。発熱樹脂層は、直接的に電極部に接合されてもよいし、1または複数の導電性樹脂層を介して間接的に電極部に接合されてもよい。そして、この抵抗発熱シームレス管状物では、300℃の温度下において48時間経過したときの電極部間の抵抗値から電極部間の初期抵抗値を差し引いた値を、初期抵抗値で除して算出される抵抗値変動率が±15%の範囲内である。
【0028】
この抵抗発熱シームレス管状物は、上述の通り、300℃の温度下において48時間経過したときの抗値変動率が±15%の範囲内である。このため、この抵抗発熱シームレス管状物は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さい。
【0029】
また、この抵抗発熱シームレス管状物において、金属表面を有する導電性粒子、および、抵抗値安定化成分を含有する樹脂から発熱樹脂層形成されている。このため、この抵抗発熱シームレス管状物は、その抵抗値を小さくすることができる。したがって、この抵抗発熱シームレス管状物は、使用に伴う抵抗値変動が小さいながらも小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1および第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の外観斜視図である。
図2】本発明の第1および第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の正面図である。
図3】本発明の第1および第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の側面図である。
図4図2のA−A断面図である。
図5図3のB−B断面図である。
図6】本発明の第1および第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物を組み込んだ定着装置の簡略構成図である。
図7図6のC−C断面図である。
図8】本発明の第1および第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の製造工程の一部を示す図である。
図9】第1の実施の形態の変形例(I)に係る抵抗発熱シームレス管状物の長手方向縦断面図である。
図10】第1の実施の形態の変形例(J)に係る抵抗発熱シームレス管状物の長手方向縦断面図である。
図11】本発明の第2の実施の形態において好適に用いられ得るストランド連続金属粒子の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
−第1の実施の形態−
<面状抵抗発熱体の構成>
本発明の第1の実施の形態に係る面状抵抗発熱体は、シート状や管状の抵抗発熱体である。シート状の面状抵抗発熱体は管状の面状抵抗発熱体を長手方向に沿って切断することによって容易に形成される。このため、ここでは、図1に示される管状の面状抵抗発熱体(以下「抵抗発熱シームレス管状物」と称する。)100を用いて面状抵抗発熱体の詳細を説明し、シート状の面状抵抗発熱体の説明を省略する。
【0032】
本発明の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100は、図1から3に示されるように、主に、本体110および一対の電極120から構成される。以下、これらの構成要素110,120について詳述する。
【0033】
(1)本体
本体110は、図4および図5に示されるように、主に、発熱樹脂層112および離型層113から構成されている。以下、これらの層112,113について詳述する。
【0034】
(1−1)発熱樹脂層
発熱樹脂層112は、図4および図5に示されているように、シームレスの管状層であって、主として、抵抗発熱シームレス管状物100の使用時温度に耐え得る耐熱絶縁材料から形成されるのが好ましい。このような耐熱絶縁材料としては、例えば、耐熱性樹脂等が挙げられる。なお、本実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100において、耐熱性樹脂は、ポリイミド樹脂を主成分とする樹脂であることが好ましく、ポリイミド樹脂そのものであることがより好ましい。なお、耐熱性樹脂がポリイミド樹脂を主成分とする樹脂である場合、耐熱性樹脂には、本発明の本質を損なわない範囲内で、ポリアミドイミドやポリエーテルスルホンなどの他の耐熱性樹脂が添加されてもよい。
【0035】
そして、この発熱樹脂層112において、その耐熱性樹脂中に、直径0.3μm未満のカーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの少なくとも一方を含む非金属系ナノ充填材が導電性充填材として包含されている。なお、本実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100において、導電性充填材として金属系ナノ充填材は含まれない。なお、カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーの長さは3μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。カーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーの直径は0.015μm以上0.20μm以下の範囲内であることがより好ましく、0.08μm以上0.15μm以下の範囲内であることがさらに好ましく、0.10μm以上0.15μmの範囲内であることが特に好ましい。カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの少なくとも一方は、非金属系ナノ充填材の主成分であることが好ましい。
【0036】
本実施の形態において、発熱樹脂層112に対する非金属系ナノ充填材の体積分率は5体積%以上100体積%以下の範囲内であるが、5体積%以上70体積%以下の範囲内であることが好ましく、15体積%以上60体積%以下の範囲内であることがより好ましく、25体積%以上50体積%以下の範囲内であることがさらに好ましく、25体積%以上40体積%以下の範囲内であることが特に好ましい。もちろん、同体積分率は、目標とする抵抗値に依存して変更される必要があるが、同体積分率がこの範囲内であると発熱樹脂層112の機械的特性と発熱特性のバランスに優れるからである。
【0037】
また、この発熱樹脂層112の厚みは20μm以上であるが、40μm以上であることが好ましく、50μm以上であることがより好ましい。発熱樹脂層112の厚みがこの条件を満たせば発熱樹脂層112の厚みに少々のバラツキが生じても抵抗値の変動幅が実用に耐え得るほど極めて狭くなり、この抵抗発熱シームレス管状物100を大量生産した場合であってもその発熱量を安定させることができるからである。なお、製造しやすさや抵抗発熱シームレス管状物100の可撓性を考慮すると、この厚みは200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
本実施の形態において、発熱樹脂層112中のカーボンナノチューブまたはカーボンナノファイバーは長さ方向に配向して存在していることが好ましい。このようにすれば、比較的少量のカーボンナノ材料で電気抵抗値を効率的に下げることができ、かつ、均一な発熱特性が得られるからである。
【0039】
また、本実施の形態において、発熱樹脂層112には、熱伝導性等の向上を目的として、アルミナ、窒化硼素、窒化アルミニウム、炭化珪素、酸化チタン、シリカ、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化珪素等の電気絶縁性粒子を、機械的特性等の向上を目的としてチタン酸カリウム繊維、針状酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカ、テトラポット状酸化亜鉛ウィスカ、セピオライト、ガラス繊維等の繊維状粒子、モンモリロナイト、タルク等の粘度鉱物を、本発明の本質を損なわない程度に加えてもよい。
【0040】
(1−2)離型層
離型層113は、フッ素樹脂、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つから形成されるのが好ましい。この抵抗発熱シームレス管状物100がモノクロプリンターにおいて発熱定着ベルトとして利用される場合、離型層113は、フッ素樹脂から形成されるのが好ましい。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)が挙げられ、これらは単体で利用されてもよいし、混合して利用されてもよい。また、かかる場合、離型層113は、5μm以上30μm以下の範囲内の厚みであることが好ましく、10μm以上20μm以下の範囲内の厚みであることがより好ましい。
【0041】
そして、この離型層113は、プライマーを介して発熱樹脂層112に接着されるのが好ましい。かかる場合、プライマーの厚みは2μm以上5μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0042】
(2)電極
電極120は、図1に示されるように、本体110の両端部分において外表面に露出するように配設されている。この電極120は、例えば、銀ペースト等から形成され得る。なお、銀ペーストとしては、例えば、国際公開第08/016148号に開示されているものが利用可能である。そして、抵抗発熱シームレス管状物100が使用される際、この電極120には、図6に示されるように、給電部材210が接触する。これにより、電極120に接して配設されている発熱樹脂層112に給電が行われ、発熱樹脂層112が抵抗発熱する。なお、給電部材210としては、例えば、給電ブラシ、給電ロール、給電バー等が挙げられる。
【0043】
<第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の特性>
(1)初期抵抗値
第1実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100は、単相100V以上120V以下の範囲内の電圧を規格とする日本、米国、台湾等の国々や諸地域向けとされる場合には電極部間の初期抵抗値が5Ω以上40Ω以下の範囲内に調整されるのが好ましく、単相200V以上240V以下の範囲内の電圧を規格とするヨーロッパ各国等の国々や諸地域向けとされる場合には電極部間の初期抵抗値が30Ω以上150Ω以下の範囲内に調整されるのが好ましい。なお、前者の場合、電極部間の初期抵抗値が15Ω以上20Ω以下の範囲内に調整されるのがより好ましい。また、後者の場合、電極部間の初期抵抗値が65Ω以上75Ω以下の範囲内に調整されるのがより好ましい。この抵抗発熱シームレス管状物が、主要国や主要地域において、定着装置において要求され得る400W〜1200Wの出力を発揮することができるからである。なお、抵抗発熱シームレス管状物100の初期抵抗値は、常温常圧で測定される。
【0044】
(2)抵抗値変動率
第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100は、上述のように構成されることによって、300℃の温度下48時間経過時の抵抗値変動率を±15%の範囲内に抑えることができ、300℃の温度下100時間経過時の抵抗値変動率を±30%の範囲内に抑えることができ、300℃の温度下125時間経過時の抵抗値変動率を±30%の範囲内に抑えることができる。なお、300℃の温度下48時間経過時の抵抗値変動率は±10%の範囲内であることがより好ましく、±7%の範囲内であることがさらに好ましい。また、300℃の温度下100時間経過時の抵抗値変動率は±25%の範囲内であることがより好ましく、±20%の範囲内であることがさらに好ましく、±15%の範囲内であることがさらに好ましく、±10%の範囲内であることが特に好ましい。また、300℃の温度下125時間経過時の抵抗値変動率は±25%の範囲内であることがより好ましく、±20%の範囲内であることがさらに好ましく、±15%の範囲内であることがさらに好ましく、±10%の範囲内であることが特に好ましい。ここにいう「抵抗値変動率」は、以下に示す式1によって算出される。
【0045】
【数1】
【0046】
なお、上記式1中、「300℃下t時間経過時抵抗値」は300℃の温度下t時間経過時の抵抗発熱シームレス管状物100の抵抗値を示し、「初期抵抗値」は常温下の抵抗発熱シームレス管状物100の初期抵抗値を示している。
【0047】
<第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の製造方法の一例>
第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100は、主に、発熱樹脂層成形工程、電極成形工程、プライマー塗布工程、離型層成形工程、焼成工程および脱型工程を経て製造される。ただし、本製造方法は、一例に過ぎず、本願発明を限定することはない。以下、上記各製造工程について詳述する。
【0048】
(1)発熱樹脂層成形工程
発熱樹脂層成形工程では、図8に示されるように、リング状ダイス620を用いて非金属系ナノ充填材含有ポリイミド前駆体溶液VSを円柱状の芯体610の外周面に均一に塗布した後、その塗膜CV付きの芯体610を加熱する。なお、このときの加熱温度は、有機極性溶媒が揮発するがイミド化が進行しない程度の温度、例えば200℃以上250℃以下の範囲内の温度であることが好ましいが、段階的に300℃〜450℃まで上昇させてもかまわない。かかる場合、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーはリング状ダイスが走行した方向に向かって略一方向に並び、配向された状態となる。
【0049】
なお、非金属系ナノ充填材含有ポリイミド前駆体溶液は、以下の通りに調製されるポリイミド前駆体溶液に、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバー等の非金属系ナノ充填材を混合させることによって得られる。なお、非金属系ナノ充填材の添加方法は特に限定されず、ポリイミド前駆体溶液に非金属系ナノ充填材を直接添加する方法はもちろん、ポリイミド前駆体溶液調製中に非金属系ナノ充填材を添加する方法であってもよい。
【0050】
ポリイミド前駆体溶液は、以下の通りに調製される。
先ず、有機極性溶媒中に少なくとも1種のジアミンを溶解させてジアミン溶液を調製した後、そのジアミン溶液に少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を添加してジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを重合させてポリイミド前駆体溶液を調製する。なお、このとき、環境温度は、10℃以上90℃以下の範囲内であることが好ましい。また、固形分濃度は、塗布の条件によって決定され、通常は10質量%以上30質量%以下の範囲内である。また、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との重合反応が進むにつれて、溶液の粘度が上昇するが、使用に際しては溶媒で希釈して所望の粘度にしてから使用することができる。製造条件や作業条件によって通常1ポイズから5,000ポイズの粘度で使用されるが、このポリイミド前駆体溶液を金型の表面にキャスティング方法で塗布するためには、同ポリイミド前駆体溶液の粘度が10ポイズ以上1,500ポイズ以下の範囲内であるのが好ましく、50ポイズ以上1,000ポイズ以下の範囲内であるのがより好ましい。
【0051】
なお、上記のポリイミド前駆体溶液を調製し得る有機極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらのジアミンの中でも、特に、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)が好ましい。なお、これらの有機極性溶媒は、単独で用いられてもよいし、組み合わせて用いられてもよい。また、この有機極性溶媒には、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が混合されてもよい。
【0052】
また、上記のポリイミド前駆体溶液を調製し得るジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4、4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、2,2−ビス−(4−アミノフェニル)プロパン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。なお、これらのジアミンを2種以上混合して使用しても何ら差し支えない。これらのジアミンの中でも、特に、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(33DDS)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(44DDS)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(34ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(133APB)、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(134APB)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPSM)、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)が好ましい。
【0053】
さらに、上記のポリイミド前駆体溶液を調製し得るテトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、オキシジフタル酸無水物(ODPA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホキシド二無水物、チオジフタル酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物や9,9−ビス[4−(3,4’−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1−シクロヘキシルコハク酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物が挙げられる。なお、これらのテトラカルボン酸二無水物を2種以上混合して使用しても何ら差し支えない。これらのテトラカルボン酸二無水物の中でも、特に、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,2−ビス[3,4−(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BPADA)、オキシジフタル酸無水物(ODPA)が好ましい。
【0054】
本実施の形態では、ジアミンとしてパラフェニレンジアミンを用い、テトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることが特に好ましい。これらのモノマーから得られるポリイミド樹脂は機械的特性に優れ強靭であり、抵抗発熱シームレス管状物100の温度が上昇しても熱可塑性樹脂のように軟化、あるいは溶融することがなく、優れた耐熱性を有するからである。
【0055】
また、必要であれば、本発明の本質を損なわない範囲内で、このポリイミド前駆体溶液にポリアミドイミドやポリエーテルスルホンなどの樹脂が添加されてもかまわない。
【0056】
また、ポリイミド前駆体溶液には、本発明の性質を損なわない範囲内で、分散剤、固体潤滑剤、沈降防止剤、レベリング剤、表面調節剤、水分吸収剤、ゲル化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、皮張り防止剤、界面活性剤、帯電防止剤、消泡剤、抗菌剤、防カビ剤、防腐剤、増粘剤などの公知の添加剤が添加されてもよい。さらに、このポリイミド前駆体溶液には、化学量論以上の脱水剤およびイミド化触媒が添加されてもよい。
【0057】
また、ポリイミド前駆体溶液は、使用に際して予めろ過、脱泡などの処理が行われるのが好ましい。
【0058】
(2)電極成形工程
電極成形工程では、先ず、発熱樹脂層112の両端部の外周面に銀ペーストを塗布した後、既知の方法で銀ペーストの塗布厚みを均一にする。そして、発熱樹脂層112に銀ペーストが塗布された芯体を加熱することによって電極120を成形することができる。なお、銀ペーストには、バインダー樹脂としてポリイミド前駆体が添加されているのが好ましい。発熱樹脂層112との接着性を良好なものとすることができるだけでなく、高温化でも電極120が発熱樹脂層112に強固に接着した状態を保つからである。なお、このような銀ペーストとしては、例えば、国際公開第08/016148号に開示されているものが利用可能である。
【0059】
(3)プライマー塗布工程
プライマー塗布工程では、電極120をマスキングした状態で、発熱樹脂層112が形成された芯体610をプライマー液にディッピングすることによって、発熱樹脂層112の外周面にプライマー液が均一に塗布される。そして、その塗膜付きの発熱樹脂層112(芯体610付)が加熱される。なお、このときの加熱温度は、溶媒が揮発するが先のポリイミド前駆体のイミド化が進行しない程度の温度、例えば200℃以上250℃以下の範囲内の温度であることが好ましい。
【0060】
(4)離型層成形工程
離型層成形工程では、電極120がマスキングされたままの状態でフッ素樹脂ディスパーション液が塗布された後、その塗膜が乾燥させられて、プライマー層上にフッ素樹脂ディスパーション液の塗膜が形成される。
【0061】
(5)焼成工程
焼成工程では、マスキングが取り外された後、離型層成形工程で得られたものが焼成処理されて、抵抗発熱シームレス管状物100が得られる。このときの焼成温度は350℃以上400℃以下の範囲内の温度であることが好ましい。また、処理時間は30分以上2時間以下の範囲内であるのが好ましい。発熱樹脂層112のイミド化の完結と、離型層113のフッ素樹脂の焼成とが同時に行われ、抵抗発熱シームレス管状物100の製造時間の短縮化や熱効率の向上を実現することができるのみならず、各層112,113の接着力を高めることもできるからである。
【0062】
(6)脱型工程
脱型工程では、芯体610から抵抗発熱シームレス管状物100が抜き取られる。
【0063】
<電子写真画像形成装置の定着装置>
ここでは、第1実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100が組み込まれた画像定着装置の一実施形態を説明する。なお、この画像定着装置には、後述する第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100も組み込まれることができる。
【0064】
この画像定着装置400は、図6および図7に示されるように、主に、本実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100、ベルト支持体150、加圧ロール300および給電ロール210から構成されている。
【0065】
抵抗発熱シームレス管状物100は、上述の通りである。ベルト支持体150は、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等の耐熱絶縁性樹脂から形成されており、主に、円筒部151およびベルトガイド部152から構成されている。円筒部151は、図7に示されるように、抵抗発熱シームレス管状物100の内側に回転自在に配置されている。ベルトガイド部152は、抵抗発熱シームレス管状物100が幅方向に蛇行した場合にストッパーとして機能する。加圧ロール300は、ロール本体310およびシャフト320から構成されている。シャフト320は、ロール本体310の回転軸に沿って両側に延びており、駆動モータ(図示せず)に連結されている。図6および図7に示されるように、ロール本体310は抵抗発熱シームレス管状物100に圧接され、その結果、ロール本体310と抵抗発熱シームレス管状物100との間にニップ部Nが形成される。すなわち、駆動モータが駆動されると、ロール本体310が回転軸を中心として回転し、加圧ロール300と圧接された抵抗発熱シームレス管状物100が従動する。そして、図7に示されるようにそのニップ部Nに対して、未定着トナー像TNが形成された複写紙PPが順次送り込まれて、未定着トナー像TNが順次、複写紙PPに熱定着される。給電ロール210は、リード線220を介して交流電源230に接続されていると共に、抵抗発熱シームレス管状物100の電極120と接触している。このため、抵抗発熱シームレス管状物100には、交流電源230から給電ロール210を介して電気が供給される。抵抗発熱シームレス管状物100に通電がなされると、上述の通り、発熱樹脂層112が抵抗発熱する。
【0066】
<第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の特徴>
(1)
第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100は発熱樹脂層112を有しており、その発熱樹脂層112では、導電性充填材として、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーの少なくとも一方を主成分とする非金属系ナノ充填材のみが耐熱性樹脂中に分散されており、黒鉛繊維のような比較的サイズが大きい導電性充填材や、金属系導電性充填材が含まれていない。そして、この抵抗発熱シームレス管状物100は、300℃の温度下において48時間経過したときの抗値変動率が±15%の範囲内であり、300℃の温度下において100時間経過したときの抗値変動率が±30%の範囲内である。このため、この抵抗発熱シームレス管状物100は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さいだけでなく、強度低下を十分に小さくすることができる。したがって、この抵抗発熱シームレス管状物100は、比較的長期間使用することができる。
【0067】
(2)
第1実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100では発熱樹脂層112の膜厚が20μm以上とされている。このため、発熱樹脂層112の膜厚に少々のバラツキが生じても抵抗値の変動幅が実用に耐え得るほど極めて狭くなり、この抵抗発熱シームレス管状物100を大量生産した場合であってもその発熱量を安定させることができる。
【0068】
(3)
本実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100では発熱樹脂層112に対する非金属系ナノ充填材の体積分率が5体積%以上100体積%以下の範囲内である。この抵抗発熱シームレス管状物100に良好な柔軟性を付与することができる。
【0069】
<変形例>
(A)
第1の実施の形態では特に言及しなかったが、発熱樹脂層112の内周側に基層が設けられてもよい。基層は、シームレスの管状層であって、抵抗発熱シームレス管状物100の使用時温度に耐え得る耐熱絶縁材料から形成されるのが好ましい。このような耐熱絶縁材料としては、例えば、特殊ステンレス鋼や、耐熱性樹脂等が挙げられる。耐熱性樹脂は、ポリイミド樹脂またはシリコーンゴムを主成分とする樹脂であることが好ましく、ポリイミド樹脂そのものであることがより好ましい。また、抵抗発熱シームレス管状物100が定着チューブや定着ベルトとして電子写真画像形成装置の画像定着部に組み込まれる場合、この基層は、その動作に耐え得る機械的特性を有しているのが好ましい。また、このように本体110に基層が設けられる場合、発熱樹脂層112の膜厚は30μm以上であればよい。
【0070】
(B)
第1の実施の形態では特に言及しなかったが、本体110は、発熱樹脂層112のみから形成されてよい。
【0071】
(C)
第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100では電極120が両端部に設けられたが、電極120の配設位置は特に限定されず用途等に応じて適宜変更されてもよい。
【0072】
(D)
第1の実施の形態では特に言及しなかったが、発熱樹脂層112と離型層113との間に弾性層が設けられてもよい。なお、この弾性層は、シリコーンゴム及びフッ素ゴムより成る群から選択される少なくとも1つのゴムから成るのが好ましい。このゴムは、硬度が低く柔らかいものが好ましい。具体的には、例えばJIS−A硬度で3〜50度のシリコーンゴムなどが好適である。また、この弾性層の厚さは100μm以上500μm以下の範囲内であることが好ましい。このように発熱樹脂層112と離型層113との間に弾性層を設けることにより、抵抗発熱シームレス管状物100をフルカラー画像定着用途に適用することが可能となる。
【0073】
(E)
第1の実施の形態では特に言及しなかったが、発熱樹脂層112と離型層113との間に絶縁層が設けられてもよい。かかる場合、絶縁層と離型層113との層間には接着性を安定させるためにプライマーを用いることが好ましい。また、かかる場合、絶縁層には、上記「(1−1)発熱樹脂層」の欄で列記した熱伝導性改良用の充填材や、機械的特性改良用の充填材が添加されてもかまわない。絶縁層をこのように形成することにより、発熱樹脂層112の熱量を効率よく抵抗発熱シームレス管状物100の外表面まで伝導させることができ、延いてはクイックスタートあるいは省エネルギーを実現することができるからである。
【0074】
(F)
第1の実施の形態では、有機極性溶媒中に少なくとも1種のジアミンを溶解させてジアミン溶液を調製した後、そのジアミン溶液に少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物を添加してジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを重合させてポリイミド前駆体溶液を調製したが、ポリイミド前駆体溶液の製造方法は、特に限定されず、ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物のいずれか一方の誘導体が利用されてもよい。テトラカルボン酸二無水物の誘導体としては、例えば、エステル化合物が挙げられる。
【0075】
(G)
第1の実施の形態では発熱樹脂層112に接するように電極120が配設されたが(図5参照)、離型層113およびプライマーに導電性を付与すれば、電極120を離型層113に接するように配設してもかまわない。
【0076】
(H)
第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100では電極120が外周側に露出するように配設されていたが(図5参照)、離型層113に導電性を付与すれば、電極120を離型層113に埋設してもかまわない。
【0077】
(I)
第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100では電極120が外周側に露出するように配設されていたが(図5参照)、図9に示される抵抗発熱シームレス管状物100aのように、電極120が発熱樹脂層112の内周側に露出するように配設されてもよい。また、変形例(A)に記載のように、発熱樹脂層112の内周側に基層が設けられる場合、電極120が内周側に露出するように基層が設けられる。ただし、基層に導電性を付与すれば、電極120を基層に埋設してもかまわない。
【0078】
(J)
第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100では発熱樹脂層112の上に電極120が配設されていたが(図5参照)、図10に示される抵抗発熱シームレス管状物100bのように、電極120が発熱樹脂層112の横に配設されてもよい。かかる場合において離型層113が絶縁性を保持している場合には、電極120が内周側に露出するか、電極120が外周側に露出するように離型層113を発熱樹脂層112の外周面にのみ形成する。その一方、離型層113に導電性が付与されている場合には、離型層113が電極120を覆っていてもよい。
【0079】
また、変形例(A)に記載のように、発熱樹脂層112の内周側に基層が設けられる場合において基層が絶縁性を保持している場合には、電極120が外周側に露出するように離型層113を発熱樹脂層112の外周面にのみ形成するか(かかる場合、基層が電極120を覆っていてもよい。)、電極120が内周側に露出するように基層を発熱樹脂層112の内周面にのみ形成する(かかる場合、離型層113が電極120を覆っていてもよい。)。その一方、基層に導電性が付与されている場合には、基層が電極120を覆っていてもよい。
【0080】
−第2の実施の形態−
第2の実施の形態に係る管状の面状抵抗発熱体(以下「抵抗発熱シームレス管状物」と称する。)は、発熱樹脂層の構成の点でのみ、第1の実施の形態に係る管状の面状抵抗発熱体と相違する。したがって、以下、発熱樹脂層のみについて言及し、他の構成の説明を省略する。
【0081】
(1−1)発熱樹脂層
発熱樹脂層112は、図4および図5に示されているように、シームレスの管状層であって、主に「抵抗発熱シームレス管状物100の使用時温度に耐え得る耐熱絶縁材料」、「金属表面を有する導電性粒子(以下「金属表面導電性粒子」という。)」、「SH基およびSM基の少なくとも1つが含窒素芳香族複素環に直接結合される化合物(ただし、Mは金属または置換もしくは無置換のアンモニウムである。)(以下「メルカプト基含有含窒素芳香族複素環化合物」という。)」ならびに「硼素(B)を含有する化合物(以下「硼素含有化合物」という。)」から形成される。なお、これらの化合物は、第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物において発熱樹脂層112の必須成分である。また、第2の実施の形態において、金属表面導電性粒子、メルカプト基含有含窒素芳香族複素環化合物および硼素含有化合物は、耐熱絶縁材料に含有されている。
【0082】
また、この発熱樹脂層112には、必要に応じて「モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニオブ(Nb)の少なくとも一つの元素を含有するポリ酸由来の化合物(以下「ポリ酸由来化合物」という。)」がさらに含まれていてもよいし、導電補助材としてカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等のカーボンナノ材料が含まれていてもよいし、熱伝導性等の向上を目的として、アルミナ、窒化硼素、窒化アルミニウム、炭化珪素、酸化チタン、シリカ、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化珪素等の電気絶縁性粒子が含まれてもよいし、機械的特性等の向上を目的としてチタン酸カリウム繊維、針状酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカ、テトラポット状酸化亜鉛ウィスカ、セピオライト、ガラス繊維等の繊維状粒子、モンモリロナイト、タルク等の粘度鉱物が含まれてもよい。ただし、これらの任意成分は、本発明の本質を損なわない程度に添加されることが要求される。また、これらの任意成分は、耐熱絶縁材料に含有されることになる。以下、上述の必須成分および任意成分について詳述する。
【0083】
(1−1−1)耐熱絶縁材料
耐熱絶縁材料としては、例えば、耐熱性樹脂等が挙げられる。なお、本実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100において、耐熱性樹脂は、ポリイミド樹脂を主成分とする樹脂であることが好ましく、ポリイミド樹脂そのものであることがより好ましい。なお、ポリイミド樹脂の詳細は第1の実施の形態で十分に説明されているため、その説明を省略する。また、耐熱性樹脂がポリイミド樹脂を主成分とする樹脂である場合、耐熱性樹脂には、本発明の本質を損なわない範囲内で、ポリアミドイミドやポリエーテルスルホンなどの他の耐熱性樹脂が添加されてもよい。
【0084】
(1−1−2)金属表面導電性粒子
第2の実施の形態に係る金属表面導電性粒子は、金属粒子、または、コア粒子に金属シェルが被覆されている導電性粒子(以下「コア−シェル型導電性粒子」と称する。)である。なお、金属表面導電性粒子がコア−シェル型導電性粒子である場合、導電性粒子含有樹脂溶液(後述)のコスト低減あるいは軽量化を図ることができる。
【0085】
第2の実施の形態において金属粒子は特に限定されるものではないが、白金、金、銀、ニッケル、パラジウム等の導電性の高い金属粒子であるのが好ましい。また、この金属粒子は、鱗片状、針状、樹枝状、フィラメント状など、任意の形状のものであってよいが、少量で導電ネットワークを構築することができるという点からフィラメント状が好ましい。なお、本実施の形態において、金属粒子は、図11に示されるような「ストランドが三次元的に連なった形状を有する金属粒子(以下「ストランド連続金属粒子」という。)」であることが特に好ましい。このようなストランド連続金属粒子は、平均粒子径が0.1μm以上5.0μm以下の範囲内であり、比表面積が1.0m/g以上100m/gであるのが好ましい。また、このストランド連続金属粒子は、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等のカーボンナノ材料が併用される場合、カーボンナノ材料と線状に絡み合うことによって、低抵抗の発熱抵抗体を形成することができ、均一な体積抵抗率を有する発熱樹脂層を成形することができる。
【0086】
また、本実施の形態においてコア−シェル型導電性粒子のコア粒子は特に限定されるものではないが、コスト面および耐熱性等の特性の面から、カーボン、ガラス、セラミックスなどの無機粒子であるのが好ましい。無機粒子としては、鱗片状、針状、樹枝状など任意の形状のものを用いることができる。また、この無機微粒子は、ポリイミド前駆体溶液に混合したときの分散性、安定性および軽量化の面から、中空状、発泡状の微粒子であるのが好ましい。また、金属シェルは、コア粒子の表面積の80%以上を被覆しているのが好ましく、90%以上を被覆しているのがより好ましく、95%以上を被覆しているのがさらに好ましい。金属シェルは、単層であってもよいし、複数層であってもよい。また、かかる場合、金属シェルで被覆されていないコア粒子部分には、が他の金属で被覆されていてもよい。他の導電性金属としては、例えば、白金,金およびパラジウムなどの貴金属、モリブデン,ニッケル,コバルト,鉄,銅,亜鉛,錫,アンチモン,タングステン,マンガン,チタン,バナジウムおよびクロム等の卑金属が挙げられる。なお、コア粒子上に金属シェルを形成する方法としては、特に限定されず、例えば、電解めっき、無電解めっき、真空蒸着、スパッタリング等が挙げられる。
【0087】
また、金属表面導電性微粒子の平均粒子径は、1μm以上50μm未満の範囲内であるのが好ましい。金属表面導電性微粒子の平均粒子径がこの範囲内であると、導電性粒子含有樹脂溶液(後述)中で金属表面導電性微粒子が凝集しにくくなると共に、導電性粒子含有樹脂溶液から得られる塗膜やフィルムの表面粗度が低くなるからである。
【0088】
本実施の形態において、耐熱絶縁材料に対する金属表面導電性粒子の体積分率は20体積%以上70体積%以下の範囲内であることが好ましく、30体積%以上60体積%以下の範囲内であることがより好ましく、35体積%以上55体積%以下の範囲内であることがさらに好ましく、40体積%以上50体積%以下の範囲内であることが特に好ましい。もちろん、同体積分率は、目標とする抵抗値に依存して変更される必要があるが、同体積分率がこの範囲内であると発熱樹脂層112の機械的特性と発熱特性のバランスに優れる。
【0089】
また、本実施の形態において、発熱樹脂層112中の金属表面導電性粒子の形状が針状等である場合、その金属表面導電性粒子は長さ方向に配向して存在していることが好ましい。このようにすれば、比較的少量の金属表面導電性粒子で電気抵抗値を効率的に下げることができ、かつ、均一な発熱特性が得られるからである。
【0090】
(1−1−3)メルカプト基含有含窒素芳香族複素環化合物
本実施の形態において、メルカプト基含有含窒素芳香族複素環化合物は、下記の化学式(1)で表されるピリミジンチオール化合物、下記の化学式(2)で表されるトリアジンチオール化合物、メルカプト基および置換メルカプト基の少なくとも一方を有するイミダゾール化合物、メルカプト基および置換メルカプト基の少なくとも一方を有するチアゾール化合物であるのが好ましい。なお、このメルカプト基含有含窒素芳香族複素環化合物は、本実施の形態において金属捕捉剤としてのみならずイミド化剤としても機能するものである。
【0091】
【化1】

(式(1)中、R1、R2、R3及びR4のうち少なくとも1つはSH基またはSM基であり、Mは金属または置換もしくは無置換のアンモニウムである。)
【0092】
【化2】

(式(2)中、R5、R6及びR7のうち少なくとも1つはSH基またはSM基であり、Mは金属または置換もしくは無置換のアンモニウムである。)
【0093】
ピリミジンチオール化合物は、特に限定されるものではなく、ピリミジン骨格を有し、少なくとも1つのSH基(チオール基)またはSM基(チオール基の金属塩または置換もしくは無置換のアンモニウム塩)を有する化合物であればよい。また、金属塩の金属原子としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銅などが例示される。そして、このピリミジンチオール化合物としては、具体的には、例えば、2−メルカプトピリミジン(2MP)、2−ヒドロキシ−4−メルカプトピリミジン、4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2、4−ジアミノ−6−メルカプトピリミジン、4,6−ジアミノ−2−メルカプトピリミジン、4−アミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン、2−チオバルビツール酸、4−ヒドロキシ−2−メルカプト−6−メチルピリミジン、4,6−ジメチル−2−ピリミジンチオール(DMPT)、4,5−ジアミノ−2,6−ジメルカプトピリミジン、4,5−ジアミノ−6−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン等ならびにそれらの塩等が挙げられる。なお、これらのピリミジンチオール化合物は単独で用いられてもよいし併用されてもよい。
【0094】
トリアジンチオール化合物は、特に限定されるものではなく、トリアジン骨格を有し、少なくとも1つのSH基(チオール基)またはSM基(チオール基の金属塩または置換もしくは無置換のアンモニウム塩)を有する化合物であればよい。金属塩の金属原子としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銅などが例示される。そして、このトリアジンチオール化合物としては、具体的には、例えば、2−アミノ−1,3,5−トリアジン−4,6−ジチオール(ATDT)、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン(DBDMT)、2−フェニルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン、トリチオシアヌル酸(TTCA)等ならびにそれらの塩等が挙げられる。なお、これらのトリアジンチオール化合物の中でもトリチオシアヌル酸のナトリウム塩であるトリチオシアヌル酸モノナトリウム塩、トリチオシアヌル酸トリナトリウム塩(TTCA−3Na)が特に好適である。なお、これらのトリアジンチオール化合物は単独で用いられてもよいし併用されてもよい。
【0095】
メルカプト基および置換メルカプト基の少なくとも一方を有するイミダゾール化合物は、特に限定されるものではなく、イミダゾール骨格を有し、少なくとも1つのSH基(チオール基)またはSM基(チオール基の金属塩または置換もしくは無置換のアンモニウム塩)を有する化合物であればよい。金属塩の金属原子としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銅などが例示される。そして、このイミダゾール化合物としては、具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルイミダゾール、5−アミノ−2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール(MMI)、2−メルカプト−5−ニトロベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール−5−カルボン酸等ならびにそれらの塩等が挙げられる。なお、これらのイミダゾール化合物は単独で用いられてもよいし併用されてもよい。
【0096】
メルカプト基および置換メルカプト基の少なくとも一方を有するチアゾール化合物は、特に限定されるものではなく、チアゾール骨格を有し、少なくとも1つのSH基(チオール基)またはSM基(チオール基の金属塩または置換もしくは無置換のアンモニウム塩)を有する化合物であればよい。金属塩の金属原子としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銅などが例示される。そして、このイミダゾール化合物としては、具体的には、例えば、2−ベンゾチアゾールチオール(BTT)、6−アミノ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾール等ならびにそれらの塩等が挙げられる。なお、チアゾール化合物は単独で用いられてもよいし併用されてもよい。
【0097】
(1−1−4)硼素含有化合物
本実施の形態において、硼素含有化合物は、特に限定されないが、例えば、酸化硼素等である。
【0098】
(1−1−5)ポリ酸由来化合物
本実施の形態において、ポリ酸由来化合物は、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、タングステン(W)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)およびニオブ(Nb)の少なくとも一つの元素を含有する化合物であって、ポリ酸そのもの又はポリ酸塩そのものであってもよいし、ポリ酸又はポリ酸塩の加熱生成物であってもよいし、ポリ酸又はポリ酸塩と他の化合物の加熱生成物であってもよい。ポリ酸塩が金属塩である場合の金属原子としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銅などが例示される。
【0099】
このようなポリ酸由来化合物を生成するポリ酸としては、例えば、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、ケイモリブデン酸(シリコノモリブデン酸)、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、リンタングストモリブデン酸、リンバナドモリブデン酸などが挙げられる。また、このようなポリ酸由来化合物を生成するポリ酸塩としては、例えば、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0100】
なお、本実施の形態において特に好ましいポリ酸は、ケイタングステン酸、リンタングステン酸、リンモリブデン酸である。これらのポリ酸は、単独で用いられてもよいし、併用されてもよい。すなわち、ケイタングステン酸、リンタングステン酸およびリンモリブデン酸の少なくとも一種のポリ酸が用いられればよい。すなわち、本実施の形態において特に好ましいポリ酸由来化合物には、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)の少なくとも一方が含まれることになる。
【0101】
なお、この発熱樹脂層112の厚みは10μm以上であることが好ましい。発熱樹脂層112の厚みがこの条件を満たせば発熱樹脂層112の厚みに少々のバラツキが生じても抵抗値の変動幅が実用に耐え得るほど極めて狭くなり、この抵抗発熱シームレス管状物100を大量生産した場合であってもその発熱量を安定させることができるからである。なお、製造しやすさや抵抗発熱シームレス管状物100の可撓性を考慮すると、この厚みは200μm以下であることが好ましい。
【0102】
<第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の特性>
(1)初期抵抗値
第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100の初期抵抗値は、第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100の初期抵抗値と同様である。
【0103】
(2)抵抗値変動率
第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100の抵抗値変動率は、第1の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100の抵抗値変動率と同様である。
【0104】
<第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の製造方法の一例>
本実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100は、主に、導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液調製工程、発熱樹脂層成形工程、電極成形工程、プライマー塗布工程、離型層成形工程、焼成工程および脱型工程を経て製造される。ただし、本製造方法は、一例に過ぎず、本願発明を限定することはない。以下、上記各製造工程について詳述する。
【0105】
(1)導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液調製工程
導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液調製工程では、以下の通りに調製されるポリイミド前駆体溶液に上述の金属表面導電性粒子、上述のメルカプト基含有含窒素芳香族複素環化合物および硼酸が添加されて導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液が得られる。なお、本実施の形態において、メルカプト基含有含窒素芳香族複素環化合物および硼酸は、抵抗発熱シームレス管状物100の抵抗値を安定化する抵抗値安定化剤として機能する。また、この導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液には、任意成分として、上述のポリ酸、上述のカーボンナノ材料、上述の電気絶縁性粒子、上述の繊維状粒子、上述の粘度鉱物が添加されてもよい。なお、これらの粒子や化合物の添加方法は特に限定されず、ポリイミド前駆体溶液にこれらの粒子や化合物を直接添加する方法はもちろん、ポリイミド前駆体溶液調製中にこれらの粒子や化合物を添加する方法であってもよい。
【0106】
なお、第2の実施の形態において、金属表面導電性粒子は、導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液の固形分に対する体積分率が5体積%以上70体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが好ましく、10体積%以上60体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがより好ましく、15体積%以上50体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがさらに好ましく、20体積%以上40体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが特に好ましい。もちろん、同体積分率は、目標とする抵抗値に依存して変更される必要があるが、同体積分率がこの範囲内であると発熱樹脂層112の機械的特性と発熱特性のバランスに優れる。
【0107】
また、第2の実施の形態において、メルカプト基含有含窒素芳香族複素環化合物は、導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液の固形分に対する体積分率が0.01体積%以上10体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが好ましく、0.1体積%以上5体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがより好ましく、0.2体積%以上3体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがさらに好ましく、0.5体積%以上2体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが特に好ましい。もちろん、同体積分率は、目標とする抵抗値安定度に依存して変更される必要があるが、同体積分率がこの範囲内であると抵抗値安定化効率と低コスト化とのバランスに優れる。
【0108】
また、第2の実施の形態において、硼酸は、導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液の固形分に対する体積分率が0.01体積%以上30体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが好ましく、0.1体積%以上20体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがより好ましく、0.2体積%以上10体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがさらに好ましく、1体積%以上5体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが特に好ましい。もちろん、同体積分率は、目標とする抵抗値安定度に依存して変更される必要があるが、同体積分率がこの範囲内であると抵抗値安定化効率と低コスト化とのバランスに優れる。
【0109】
また、第2の実施の形態において、ポリ酸またはポリ酸塩は、導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液の固形分に対する体積分率が0.01体積%以上20体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが好ましく、0.1体積%以上10体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがより好ましく、0.2体積%以上5体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがさらに好ましく、0.5体積%以上3体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが特に好ましい。もちろん、同体積分率は、目標とする抵抗値安定度に依存して変更される必要があるが、同体積分率がこの範囲内であると抵抗値安定化効率と低コスト化とのバランスに優れる。
【0110】
また、第2の実施の形態において、カーボンナノ材料は、導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液の固形分に対する体積分率が0.1体積%以上50体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが好ましく、0.5体積%以上40体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがより好ましく、1体積%以上30体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることがさらに好ましく、2体積%以上25体積%以下の範囲内となるようにポリイミド前駆体溶液に添加されることが特に好ましい。もちろん、同体積分率は、目標とする抵抗値に依存して変更される必要があるが、同体積分率がこの範囲内であると発熱樹脂層112の機械的特性と発熱特性のバランスに優れる。
【0111】
なお、ポリイミド前駆体溶液は、第1の実施の形態で説明された通りに調製される。ただし、第2の実施の形態では、ジアミンとして4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いると共にテトラカルボン酸二無水物としてピロメリット酸二無水物を用いることが好ましく、ジアミンとしてパラフェニレンジアミンを用いると共にテトラカルボン酸二無水物として3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることが特に好ましい。これらのモノマーから得られるポリイミド樹脂は機械的特性に優れ強靭であり、抵抗発熱シームレス管状物100の温度が上昇しても熱可塑性樹脂のように軟化、あるいは溶融することがなく、優れた耐熱性を有するからである。
【0112】
(2)発熱樹脂層成形工程
発熱樹脂層成形工程では、図8に示されるように、リング状ダイス620を用いて導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液VSを円柱状の芯体610の外周面に均一に塗布した後、その塗膜CV付きの芯体610を加熱する。なお、このときの加熱温度は、有機極性溶媒が揮発するがイミド化が進行しない程度の温度、例えば200℃以上250℃以下の範囲内の温度であることが好ましいが、段階的に300℃〜450℃まで上昇させてもかまわない。かかる際において導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液に針状の金属表面導電性粒子や、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が添加されている場合、それらは、リング状ダイスが走行した方向に向かって略一方向に並び、配向された状態となる。
【0113】
(3)電極成形工程
電極成形工程は、第1の実施の形態に係る電極成形工程と同様である。なお、金属表面導電性粒子として「ニッケル粒子」または「ニッケルをシェルとするコア−シェル型導電性粒子」が利用される場合において銀ペーストが使用されると、通常、発熱樹脂層112と電極120との接触部分から徐々に劣化が進行してしまうが、導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液にポリ酸、特にリンモリブデン酸が添加されている場合には、この劣化を防止することができる。このため、導電性粒子含有ポリイミド前駆体溶液にはポリ酸が添加されるのが好ましい。
【0114】
(4)プライマー塗布工程、離型層成形工程、焼成工程および脱型工程
プライマー塗布工程、離型層成形工程、焼成工程および脱型工程は、第1の実施の形態に係るプライマー塗布工程、離型層成形工程、焼成工程および脱型工程と同様である。
【0115】
<第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物の特徴>
(1)
第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100は300℃の温度下において100時間経過したときの抗値変動率が±30%の範囲内である。このため、この抵抗発熱シームレス管状物100は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さい。また、この抵抗発熱シームレス管状物100は発熱樹脂層112を有しており、その発熱樹脂層112では、導電性粒子として、金属表面導電性粒子が耐熱性樹脂中に添加されている。このため、この抵抗発熱シームレス管状物100は、その抵抗値を小さくすることができる。したがって、この抵抗発熱シームレス管状物100は、使用に伴う抵抗値変動が小さいながらも小型化することができる。
【0116】
(2)
第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100では発熱樹脂層112の膜厚が10μm以上とされている。このため、発熱樹脂層112の膜厚に少々のバラツキが生じても抵抗値の変動幅が実用に耐え得るほど極めて狭くなり、この抵抗発熱シームレス管状物100を大量生産した場合であってもその発熱量を安定させることができる
【0117】
(3)
第2の実施の形態に係る抵抗発熱シームレス管状物100では発熱樹脂層112に対する金属表面導電性粒子の体積分率が20体積%以上70体積%以下の範囲内である。この抵抗発熱シームレス管状物100に良好な柔軟性を付与することができる。
【0118】
<変形例>
第2の実施の形態に対して第1の実施の形態の変形例(A)〜(J)を適用することができる。なお、変形例(A)については、本体110に基層が設けられる場合、発熱樹脂層112の膜厚は10μm以上であればよい。
【0119】
<実施例および比較例>
以下、実施例および比較例を示して、本実施の形態に係る面状抵抗発熱体をより詳しく説明する。なお、これらの実施例および比較例によって本願発明が限定されることはない。
【実施例1】
【0120】
(1)カーボンナノファイバー含有ポリイミド前駆体溶液Aの調製
ポリアミック酸溶液(組成:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と略する。)/パラフェニレンジアミン(以下「PPD」と略する。)、固形分17.0質量%)331.25g、Nーメチルピロリドン(以下「NMP」と略する。)156.66gおよびカーボンナノファイバー(以下「CNF」と略する。)32.09gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Aを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aの固形分に対して、CNFが28.51体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0121】
(2)銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Bの調製
ポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA、固形分15.4質量%)164.64g、銀粉59.44g、NMP38.35gおよび2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン(以下「DBDMT」と略する。)0.12gを混合して銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Bを得た。
【0122】
(3)抵抗発熱シームレス管状物の作製
先ず、表面が離型処理された円筒金型の表面にCNF含有ポリイミド前駆体溶液Aを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、150℃で20分間、250℃で30分間、400℃で15分間の条件で順に加熱して、厚み60μmのポリイミド管状物Aを得た。
【0123】
次に、ポリイミド管状物Aの両端25mmの表面に、銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Bを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Aの両端に厚み20μmの電極を形成した。
【0124】
次いで、「電極が形成されていないポリイミド管状物Aの中央部分の外表面」および「電極の中央部分側の端から5mmの部分の外表面」に、プライマー液を塗布し、その塗膜を150℃で10分間加熱した。そして、プライマー液塗布部分にシリコーンゴムを均一に塗布した後、150℃で30分間、200℃で30分間の条件で順に加熱してシリコーンゴムの加硫を行って厚み300μmの弾性層を形成した。
【0125】
続いて、弾性層の外表面にプライマー液を塗布し、その塗膜を150℃で10分間加熱した。そして、プライマー塗布部分にフッ素樹脂分散液を均一に塗布した後、その塗膜を60℃で10分間乾燥し、さらに340℃で10分間焼成して厚み20μmの離型層を形成した。その結果、厚み382μm、内径18.00mm、長さ390mmの抵抗発熱シームレス管状物を得た。なお、この抵抗発熱シームレス管状物の電極間距離は230mmであった。
【0126】
(4)初期抵抗値の測定
デジタルマルチメーターModel7562(横河電気株式会社製)を用いた四端子法により、抵抗発熱シームレス管状物の電極間の初期抵抗値を測定した。その初期抵抗値は19.08Ωであった(表1参照)。
【0127】
(5)300℃暴露時の抵抗値の測定
3つの抵抗発熱シームレス管状物を用意した。そして、これらの抵抗発熱シームレス管状物それぞれを300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、それらの抵抗発熱シームレス管状物を常温まで冷やした。そして、その抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を上述と同様にして求めた。48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は17.70Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は17.45Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は17.39Ωであった(表1参照)。
【0128】
(6)抵抗値変動率の算出
抵抗値変動率は、((300℃×t時間暴露後の抵抗値)−(初期抵抗値))/(初期抵抗値)×100で算出される。すなわち、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−7.23%(=(17.70Ω−19.08Ω)/19.08Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−8.54%(=(17.45Ω−19.08Ω)/19.08Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−8.86%(=(17.39Ω−19.08Ω)/19.08Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例2】
【0129】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Cの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)401.85g、NMP98.06gおよびCNF20.09gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Cを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Cの固形分に対して、CNFが17.07体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0130】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Cを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが382μm(うち基層60μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が18.00mmであり、長さが390mmであり、電極間距離が230mmあった。
【0131】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は69.26Ωであった(表1参照)。
【0132】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は62.77Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は61.07Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は60.75Ωであった(表1参照)。
【0133】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−9.37%(=(62.77Ω−69.26Ω)/69.26Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−11.83%(=(61.07Ω−69.26Ω)/69.26Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−12.29%(=(60.75Ω−69.26Ω)/69.26Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例3】
【0134】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Dの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)269.20g、NMP208.16gおよびCNF42.64gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Dを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Dの固形分に対して、CNFが39.47体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0135】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Dを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが392μm(うち基層70μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が25.00mmであり、長さが390mmであり、電極間距離が340mmあった。
【0136】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は5.06Ωであった(表1参照)。
【0137】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は4.74Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は4.09Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は3.85Ωであった(表1参照)。
【0138】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−6.32%(=(4.74Ω−5.06Ω)/5.06Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−19.17%(=(4.09Ω−5.06Ω)/5.06Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−23.91%(=(3.85Ω−5.06Ω)/5.06Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例4】
【0139】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Eの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)452.70g、NMP55.86gおよびCNF11.44gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Eを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Eの固形分に対して、CNFが9.43体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0140】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Eを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが392μm(うち基層70μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が25.00mmであり、長さが390mmであり、電極間距離が340mmあった。
【0141】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は149.50Ωであった(表1参照)。
【0142】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は130.66Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は117.22Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は112.29Ωであった(表1参照)。
【0143】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−12.60%(=(130.66Ω−149.50Ω)/149.50Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−21.59%(=(117.22Ω−149.50Ω)/149.50Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−24.89%(=(112.29Ω−149.50Ω)/149.50Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例5】
【0144】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Fの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)388.51g、NMP109.14gおよびCNF22.35gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Fを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Fの固形分に対して、CNFが19.15体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0145】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Fを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが522μm(うち基層200μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が15.00mmであり、長さが400mmであり、電極間距離が350mmあった。
【0146】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は30.12Ωであった(表1参照)。
【0147】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は27.79Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は27.60Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は27.50Ωであった(表1参照)。
【0148】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−7.74%(=(27.79Ω−30.12Ω)/30.12Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−8.37%(=(27.60Ω−30.12Ω)/30.12Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−8.70%(=(27.50Ω−30.12Ω)/30.12Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例6】
【0149】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Gの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)291.92g、NMP189.31gおよびCNF38.77gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Gを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Gの固形分に対して、CNFが35.36体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0150】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Gを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが372μm(うち基層50μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が3.18mmであり、長さが300mmであり、電極間距離が250mmあった。
【0151】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は65.04Ωであった(表1参照)。
【0152】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は59.06Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は57.65Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は57.43Ωであった(表1参照)。
【0153】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−9.19%(=(59.06Ω−65.04Ω)/65.04Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−11.36%(=(57.65Ω−65.04Ω)/65.04Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−11.70%(=(57.43Ω−65.04Ω)/65.04Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例7】
【0154】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Hの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)368.40g、NMP125.83gおよびCNF25.77gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Hを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Hの固形分に対して、CNFが22.36体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0155】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Hを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが397μm(うち基層75μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、周長が150mmであり、長さが350mmであり、電極間距離が300mmあった。
【0156】
(3)シート状抵抗発熱体
上述の抵抗発熱シームレス管状物を長手方向に沿って切断して、長さ350mm、幅150mmのシート状抵抗発熱体を得た。
【0157】
(4)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、上述のシート状抵抗発熱体の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は15.03Ωであった(表1参照)。
【0158】
(5)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様にシート状抵抗発熱体を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、シート状抵抗発熱体の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後のシート状抵抗発熱体の抵抗値は13.97Ωであり、100時間暴露後のシート状抵抗発熱体の抵抗値は13.64Ωであり、125時間暴露後のシート状抵抗発熱体の抵抗値は13.52Ωであった(表1参照)。
【0159】
(6)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各シート状抵抗発熱体の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後のシート状抵抗発熱体の抵抗値変動率は−7.05%(=(13.97Ω−15.03Ω)/15.03Ω×100)であり、100時間暴露後のシート状抵抗発熱体の抵抗値変動率は−9.25%(=(13.64Ω−15.03Ω)/15.03Ω×100)であり、125時間暴露後のシート状抵抗発熱体の抵抗値変動率は−10.05%(=(13.52Ω−15.03Ω)/15.03Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例8】
【0160】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Iの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)151.15g、NMP306.15gおよびCNF62.70gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Iを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Iの固形分に対して、CNFが63.08体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0161】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Iを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが342μm(うち基層20μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が3.18mmであり、長さが400mmであり、電極間距離が350mmあった。
【0162】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は10.02Ωであった(表1参照)。
【0163】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は9.35Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は8.87Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は8.65Ωであった(表1参照)。
【0164】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−6.69%(=(9.35Ω−10.02Ω)/10.02Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−11.48%(=(8.87Ω−10.02Ω)/10.02Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−13.67%(=(8.65Ω−10.02Ω)/10.02Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例9】
【0165】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Jの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)481.30g、NMP32.12gおよびCNF6.58gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Jを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Jの固形分に対して、CNFが5.33体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0166】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Jを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが367μm(うち基層45μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が79.62mmであり、長さが270mmであり、電極間距離が220mmあった。
【0167】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は75.05Ωであった(表1参照)。
【0168】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は67.84Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は65.68Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は65.20Ωであった(表1参照)。
【0169】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−9.61%(=(67.84Ω−75.05Ω)/75.05Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−12.49%(=(65.68Ω−75.05Ω)/75.05Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−13.12%(=(65.20Ω−75.05Ω)/75.05Ω×100)であった(表1参照)。
【実施例10】
【0170】
(1)CNF含有ポリイミド前駆体溶液Kの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)322.30g、NMP164.09gおよびCNF33.61gを混合してCNF含有ポリイミド前駆体溶液Kを調製した。なお、このとき、CNF含有ポリイミド前駆体溶液Kの固形分に対して、CNFが30.04体積%を占めるように、CNFの添加量が計算されている(表1参照)。
【0171】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNF含有ポリイミド前駆体溶液Kを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが422μm(うち基層100μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が14.65mmであり、長さが400mmであり、電極間距離が350mmあった。
【0172】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は18.01Ωであった(表1参照)。
【0173】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間、100時間、125時間放置した後、実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は16.71Ωであり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は16.44Ωであり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値は16.37Ωであった(表1参照)。
【0174】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により上述の各抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を求めたところ、48時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−7.22%(=(16.71Ω−18.01Ω)/18.01Ω×100)であり、100時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−8.72%(=(16.44Ω−18.01Ω)/18.01Ω×100)であり、125時間暴露後の抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−9.11%(=(16.37Ω−18.01Ω)/18.01Ω×100)であった(表1参照)。
【0175】
(比較例1)
(1)CNFニッケル粉含有ポリイミド前駆体溶液Lの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)195.01g、NMP260.23g、CNF12.80gおよびニッケル粉末40.00gを混合してCNFニッケル粉ポリイミド前駆体溶液Lを調製した。なお、このとき、CNFニッケル粉ポリイミド前駆体溶液Lの固形分に対して、CNFが13.00体積%を占めると共にニッケル粉末が18.40体積%を占めるように、CNFおよびニッケル粉末の添加量が計算されている(表1参照)。
【0176】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えてCNFニッケル粉含有ポリイミド前駆体溶液Lを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが392μm(うち基層70μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が30.01mmであり、長さが390mmであり、電極間距離が340mmであった。
【0177】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は34.00Ωであった(表1参照)。
【0178】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間放置した後、実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、その抵抗値は66.60Ωであった(表1参照)。
【0179】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により抵抗値変動率を求めたところ、この抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は+95.88%(=(66.60Ω−34.00Ω)/34.00Ω×100)であった(表1参照)。
【0180】
(比較例2)
(1)黒鉛粉末含有ポリイミド前駆体溶液Mの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)328.00g、NMP150.65gおよび黒鉛粉末29.96gを混合して黒鉛粉末含有ポリイミド前駆体溶液Mを調製した。なお、このとき、黒鉛粉末含有ポリイミド前駆体溶液Mの固形分に対して、黒鉛粉末が25.00体積%を占めるように、黒鉛粉末の添加量が計算されている(表1参照)。
【0181】
(2)抵抗発熱シームレス管状物の作製
CNF含有ポリイミド前駆体溶液Aに代えて黒鉛粉末含有ポリイミド前駆体溶液Mを用いた以外は実施例1と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製した。なお、この抵抗発熱シームレス管状物は、厚みが392μm(うち基層70μm、弾性層300μm、離型層20μm)であり、内径が30.01mmであり、長さが390mmであり、電極間距離が340mmであった。
【0182】
(3)初期抵抗値の測定
実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は1208.56Ωであった(表1参照)。
【0183】
(4)300℃暴露後の抵抗値の測定
実施例1と同様に抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に48時間放置した後、実施例1と同様の方法により、その抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を測定したところ、その抵抗値は837.05Ωであった(表1参照)。
【0184】
(5)抵抗値変動率の算出
実施例1と同一の計算方法により抵抗値変動率を求めたところ、この抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−30.74%(=(837.05Ω−1208.56Ω)/1208.56Ω×100)であった(表1参照)。
【0185】
【表1】
【実施例11】
【0186】
(1)導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)35g、Nーメチルピロリドン(以下「NMP」と略する。)1.70g、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)16.57g、トリチオシアヌル酸(以下「TTCA」と略する。)(和光純薬製)0.0510gおよび硼酸(ナカライテスク製)0.1980gを混合し、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nを調製した。なお、このとき、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、TTCAおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0187】
(2)銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oの調製
ポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA、固形分15.4質量%)150g、銀粉(AgC―A、福田金属箔粉工業製、平均粒子径3.1μm、密度14g/cm)26.57g、NMP37.5gおよび2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−1,3,5−トリアジン(以下「DBDMT」と略する。)0.018gを混合して銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを調製した。
【0188】
(3)抵抗発熱シームレス管状物の作製
先ず、表面が離型処理された円筒金型の表面にポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、120℃で20分間加熱し、厚みが50μmの管状の基層を得た。
【0189】
次に、基層の表面に導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、150℃で20分間、250℃で30分間、400℃で15分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Bを作製した。円筒金型からこのポリイミド管状物Bを抜き取って、厚み、内径および長さを測定したところ、厚みは70μmであり、内径は18mmであり、長さは265mmであった。
【0190】
次に、ポリイミド管状物Bの両端25mmの表面に、銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Bの両端に厚み20μmの電極を形成した。
【0191】
次いで、「電極が形成されていないポリイミド管状物Bの中央部分の外表面」および「電極の中央部分側の端から5mmの部分の外表面」に、ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行って絶縁層を形成した。その結果、厚み120μm、内径18mm、長さ265mmの抵抗発熱シームレス管状物を得た。なお、この抵抗発熱シームレス管状物の電極間距離は215mmであった。
【0192】
(4)初期抵抗値の測定
デジタルマルチメーターModel7562(横河電気株式会社製)を用いた四端子法により、抵抗発熱シームレス管状物の電極間の初期抵抗値を測定した。その初期抵抗値は17.6Ωであった(表2参照)。
【0193】
(5)300℃×100時間暴露後の抵抗値の測定
抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後、その抵抗発熱シームレス管状物を常温まで冷やした。そして、その抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値を、上述と同様にして求めた。その抵抗値は17.5Ωであった(表2参照)。
【0194】
(6)抵抗値変動率の算出
抵抗値変動率は、((300℃×100時間暴露後の抵抗値)−(初期抵抗値))/(初期抵抗値)×100で算出される。すなわち、この抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率は−0.6%(=(17.5Ω−17.6Ω)/17.6Ω×100)であった(表2参照)。
【0195】
(7)電極劣化の観察
この抵抗発熱シームレス管状物を300℃の温度で100時間暴露した後にその電極を観察したが、電極は強固に密着しており、電極には剥離、ブリスタ等の劣化は見られなかった(表2参照)。
【実施例12】
【0196】
TTCA0.0510gを2−メルカプトベンズイミダゾール(以下「MBI」と略する。)0.0440gに代えた以外は、実施例11と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、MBIが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、MBIおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0197】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は21.3Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は17.5Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−17.9%(=(17.5Ω−21.3Ω)/21.3Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化は観察されなかった(表2参照)。
【実施例13】
【0198】
TTCA0.0510gを4,6−ジメチル−2−ピリミジンチオール(以下「DMP」と略する。)0.0370gに代えた以外は、実施例11と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、DMPが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、DMPおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0199】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は14.5Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は12.2Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−15.9%(=(12.2Ω−14.5Ω)/14.5Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化は観察されなかった(表2参照)。
【実施例14】
【0200】
TTCA0.0510gを6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール(以下「DBTDT」と略する。)0.0380gに代えた以外は、実施例11と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、DBTDTが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、DBTDTおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0201】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は13.9Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は13.2Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−4.7%(=(13.2Ω−13.9Ω)/13.9Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化は観察されなかった(表2参照)。
【実施例15】
【0202】
TTCA0.0510gを2−ベンゾチアゾールチオール(以下「BTT」と略する。)0.0440gに代えた以外は、実施例11と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、BTTが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、BTTおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0203】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は15.8Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は15.1Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−4.5%(=(15.1Ω−15.8Ω)/15.8Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極部を被覆している絶縁層ポリイミドにブリスタが認められると共に電極の剥落が認められ、電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例16】
【0204】
TTCA0.0510gを2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール(以下「MMI」と略する。)0.0410gに代えた以外は、実施例11と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Nの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、MMIが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、MMIおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0205】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は19.6Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は14.3Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−27.1%(=(14.3Ω−19.6Ω)/19.6Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例17】
【0206】
(1)導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)45g、NMP6.71g、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)26.53g、カーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)2.981g、トリチオシアヌル酸トリナトリウム塩15重量%水溶液(以下「TTCA−3Na」と略する。)(Fluka製)2.41gおよび硼酸(ナカライテスク製)3.594gを混合し、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pを調製した。なお、このとき、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が26.4体積%を占め、カーボンナノファイバーが13.2体積%を占め、TTCA−3Naが2.0体積%を占め、硼酸が10.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Naおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0207】
(2)銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oの調製
実施例11と同様にして銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを調製した。
【0208】
(3)抵抗発熱シームレス管状物の作製
先ず、表面が離型処理された円筒金型の表面にポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、120℃で20分間加熱し、厚みが50μmの管状の基層を得た。
【0209】
次に、基層の表面に導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、150℃で20分間、250℃で30分間、400℃で15分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Cを作製した。円筒金型からこのポリイミド管状物Cを抜き取って、厚み、内径および長さを測定したところ、厚みは70μmであり、内径は18mmであり、長さは265mmであった。
【0210】
次に、ポリイミド管状物Cの両端25mmの表面に、銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Cの両端に厚み20μmの電極を形成した。
【0211】
次いで、「電極が形成されていないポリイミド管状物Cの中央部分の外表面」および「電極の中央部分側の端から5mmの部分の外表面」に、ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行って絶縁層を形成した。その結果、厚み120μm、内径18mm、長さ265mmの抵抗発熱シームレス管状物を得た。なお、この抵抗発熱シームレス管状物の電極間距離は215mmであった。
【0212】
(4)初期抵抗値の測定
実施例11と同様にして、抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は41.7Ωであった(表2参照)。
【0213】
(5)300℃×100時間暴露後の抵抗値の測定
実施例11と同様にして、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値を測定したところ、その抵抗値は46.0Ωであった(表2参照)。
【0214】
(6)抵抗値変動率の算出
実施例11と同様にして、この抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を算出したところ、その値は+10.2%(=(46.0Ω−41.7Ω)/41.7Ω×100)であった(表2参照)。
【0215】
(7)電極劣化の観察
実施例11と同様にして電極劣化を観察したところ、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例18】
【0216】
NMPの添加量を6.30gに代え、TTCA−3Naの添加量を0.550gに代え、硼酸の添加量を0.8152gに代えた以外は、実施例17と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が29.1体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.6体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.5体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Naおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0217】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は34.9Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は37.0Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+5.9%(=(37.0Ω−34.9Ω)/34.9Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例19】
【0218】
フィラメント状ニッケル微粒子の添加量を22.11gに代え、カーボンナノファイバーの添加量を3.974gに代え、TTCA−3Na2.41gをTTCA0.0849gに代え、硼酸の添加量を0.8152gに代えた以外は、実施例17と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が24.3体積%を占め、カーボンナノファイバーが19.4体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が2.5体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCAおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0219】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は62.0Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は67.2Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+8.4%(=(67.2Ω−62.0Ω)/62.0Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例20】
【0220】
フィラメント状ニッケル微粒子の添加量を30.95gに代え、カーボンナノファイバーの添加量を1.987gに代え、TTCA−3Na2.41gをTTCA0.0849gに代え、硼酸の添加量を0.8152gに代えた以外は、実施例17と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が34.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが9.7体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が2.5体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCAおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0221】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は17.1Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は17.2Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+0.7%(=(17.2Ω−17.1Ω)/17.1Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例21】
【0222】
フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代えた以外は、実施例17と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が26.4体積%を占め、カーボンナノファイバーが13.2体積%を占め、TTCA−3Naが2.0体積%を占め、硼酸が10.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Naおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0223】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は24.2Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は26.2Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+8.3%(=(26.2Ω−24.2Ω)/24.2Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例22】
【0224】
NMPの添加量を6.30gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、TTCA−3Naの添加量を0.550gに代え、硼酸の添加量を0.8152gに代えた以外は、実施例17と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.1体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.6体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.5体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Naおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0225】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は24.6Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は26.7Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+8.7%(=(26.7Ω−24.6Ω)/24.6Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例23】
【0226】
NMPの添加量を6.30gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)26.53gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)22.11gに代え、カーボンナノファイバーの添加量を3.974gに代え、TTCA−3Na2.41gをTTCA0.0894gに代え、硼酸の添加量を0.8152gに代えた以外は、実施例17と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が24.3体積%を占め、カーボンナノファイバーが19.4体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が2.5体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCAおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0227】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は48.1Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は54.9Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+14.1%(=(54.9Ω−48.1Ω)/48.1Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化が観察された(表2参照)。
【実施例24】
【0228】
NMPの添加量を6.30gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)26.53gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)30.95gに代え、カーボンナノファイバーの添加量を1.987gに代え、TTCA−3Na2.41gをTTCA0.0849gに代え、硼酸の添加量を0.8152gに代えた以外は、実施例17と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Pの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が34.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが9.7体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が2.5体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCAおよび硼酸の添加量が計算されている(表2参照)。
【0229】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は13.5Ωであった(表2参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は14.0Ωであった(表2参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+3.7%(=(14.0Ω−13.5Ω)/13.5Ω×100)であった(表2参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では、電極劣化が観察された(表2参照)。
【0230】
【表2】
【実施例25】
【0231】
(1)導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Qの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)35g、NMP2.18g、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)16.81g、TTCA0.0520g、硼酸0.2000gおよびリンモリブデン酸(以下「PMoA」と略する。)(ナカライテスク製)0.195gを混合し、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Qを調製した。なお、このとき、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Qの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、TTCA、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0232】
(2)銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oの調製
実施例11と同様にして銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを調製した。
【0233】
(3)抵抗発熱シームレス管状物の作製
先ず、表面が離型処理された円筒金型の表面にポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、120℃で20分間加熱し、厚みが50μmの管状の基層を得た。
【0234】
次に、基層の表面に導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Qを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、150℃で20分間、250℃で30分間、400℃で15分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Dを作製した。円筒金型からこのポリイミド管状物Dを抜き取って、厚み、内径および長さを測定したところ、厚みは70μmであり、内径は18mmであり、長さは265mmであった。
【0235】
次に、ポリイミド管状物Dの両端25mmの表面に、銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Dの両端に厚み20μmの電極を形成した。
【0236】
次いで、「電極が形成されていないポリイミド管状物Dの中央部分の外表面」および「電極の中央部分側の端から5mmの部分の外表面」に、ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行って絶縁層を形成した。その結果、厚み120μm、内径18mm、長さ265mmの抵抗発熱シームレス管状物を得た。なお、この抵抗発熱シームレス管状物の電極間距離は215mmであった。
【0237】
(4)初期抵抗値の測定
実施例11と同様にして、抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は21.3Ωであった(表3参照)。
【0238】
(5)300℃×100時間暴露後の抵抗値の測定
実施例11と同様にして、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値を測定したところ、その抵抗値は19.1Ωであった(表3参照)。
【0239】
(6)抵抗値変動率の算出
実施例11と同様にして、この抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を算出したところ、その値は−10.3%(=(19.1Ω−21.3Ω)/21.3Ω×100)であった(表3参照)。
【0240】
(7)電極劣化の観察
実施例11と同様にして電極劣化を観察したところ、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例26】
【0241】
PMoAをリンタングステン酸(以下「PWA」と略する。)に代えた以外は、実施例25と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Qの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占め、PWAが1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、TTCA、硼酸およびPWAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0242】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は17.1Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は17.9Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+4.8%(=(17.9Ω−17.1Ω)/17.1Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例27】
【0243】
PMoAをケイタングステン酸(以下「SiWA」と略する。)に代えた以外は、実施例25と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Qの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占め、SiWAが1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、TTCA、硼酸およびSiWAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0244】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は19.0Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は19.5Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+2.7%(=(19.5Ω−19.0Ω)/19.0Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例28】
【0245】
導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Qの調製においてポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代え、NMPの添加量を1.09gに代え、TTCAの添加量を0.0470gに代え、硼酸の添加量を0.1820gに代え、PMoAの添加量を0.177gに代えた以外は、実施例25と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Qの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占め、TTCAが0.5体積%を占め、硼酸が1.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、TTCA、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0246】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は17.9Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は18.5Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+3.4%(=(18.5Ω−17.9Ω)/17.9Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例29】
【0247】
(1)導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)45g、NMP6.59g、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)26.53g、カーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)2.981g、TTCA0.549g、硼酸0.6560gおよびPMoA0.319gを混合し、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rを調製した。なお、このとき、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.5体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0248】
(2)銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oの調製
実施例11と同様にして銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを調製した。
【0249】
(3)抵抗発熱シームレス管状物の作製
先ず、表面が離型処理された円筒金型の表面にポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、120℃で20分間加熱し、厚みが50μmの管状の基層を得た。
【0250】
次に、基層の表面に導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、150℃で20分間、250℃で30分間、400℃で15分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Eを作製した。円筒金型からこのポリイミド管状物Eを抜き取って、厚み、内径および長さを測定したところ、厚みは70μmであり、内径は18mmであり、長さは265mmであった。
【0251】
次に、ポリイミド管状物Eの両端25mmの表面に、銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Eの両端に厚み20μmの電極を形成した。
【0252】
次いで、「電極が形成されていないポリイミド管状物Eの中央部分の外表面」および「電極の中央部分側の端から5mmの部分の外表面」に、ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行って絶縁層を形成した。その結果、厚み120μm、内径18mm、長さ265mmの抵抗発熱シームレス管状物を得た。なお、この抵抗発熱シームレス管状物の電極間距離は215mmであった。
【0253】
(4)初期抵抗値の測定
実施例11と同様にして、抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は31.3Ωであった(表3参照)。
【0254】
(5)300℃×100時間暴露後の抵抗値の測定
実施例11と同様にして、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値を測定したところ、その値は29.5Ωであった(表3参照)。
【0255】
(6)抵抗値変動率の算出
実施例11と同様にして、この抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を算出したところ、その値は−5.7%(=(29.5Ω−31.3Ω)/31.3Ω×100)であった(表3参照)。
【0256】
(7)電極劣化の観察
実施例11と同様にして電極劣化を観察したところ、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例30】
【0257】
NMPの添加量を7.45gに代え、TTCA−3Naの添加量を1.14gに代え、硼酸の添加量を1.700gに代え、PMoAの添加量を0.331gに代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が27.9体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.0体積%を占め、TTCA−3Naが1.0体積%を占め、硼酸が5.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0258】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は51.1Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は64.6Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+26.5%(=(64.6Ω−51.1Ω)/51.1Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例31】
【0259】
NMPの添加量を7.45gに代え、TTCA−3Naの添加量を1.14gに代え、硼酸の添加量を1.700gに代え、PMoAの添加量を0.331gに代え、さらに抵抗発熱シームレス管状物の作製において絶縁層形成用ポリアミック酸溶液をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が27.9体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.0体積%を占め、TTCA−3Naが1.0体積%を占め、硼酸が5.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0260】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は65.7Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は65.7Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+0.0%(=(65.7Ω−65.7Ω)/65.7Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例32】
【0261】
NMPの添加量を7.45gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子の添加量を19.90gに代え、カーボンナノファイバーの添加量を4.471gに代え、TTCA−3Naの添加量を1.14gに代え、硼酸の添加量を1.700gに代え、PMoAの添加量を0.331gに代え、さらに、抵抗発熱シームレス管状物の作製において絶縁層形成用ポリアミック酸溶液をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が20.9体積%を占め、カーボンナノファイバーが20.9体積%を占め、TTCA−3Naが1.0体積%を占め、硼酸が5.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0262】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は202.9Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は248.1Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+22.3%(=(248.1Ω−202.9Ω)/202.9Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例33】
【0263】
NMPの添加量を7.45gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、TTCA−3Naの添加量を1.14gに代え、硼酸の添加量を1.700gに代え、PMoAの添加量を0.331gに代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が27.9体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.0体積%を占め、TTCA−3Naが1.0体積%を占め、硼酸が5.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0264】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は27.4Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は28.9Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+5.5%(=(28.9Ω−27.4Ω)/27.4Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例34】
【0265】
NMPの添加量を7.45gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、TTCA−3Naの添加量を1.14gに代え、硼酸の添加量を1.700gに代え、PMoAの添加量を0.331gに代え、さらに、得られた抵抗発熱シームレス管状物を400℃温度下で2時間アニール処理した以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が27.9体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.0体積%を占め、TTCA−3Naが1.0体積%を占め、硼酸が5.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0266】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は27.0Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は27.4Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+1.5%(=(27.4Ω−27.0Ω)/27.0Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例35】
【0267】
NMPの添加量を7.45gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、TTCA−3Naの添加量を1.14gに代え、硼酸の添加量を1.700gに代え、PMoAの添加量を0.331gに代え、さらに、抵抗発熱シームレス管状物の作製において絶縁層形成用ポリアミック酸溶液をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が27.9体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.0体積%を占め、TTCA−3Naが1.0体積%を占め、硼酸が5.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0268】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は22.5Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は21.4Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−4.9%(=(21.4Ω−22.5Ω)/22.5Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例36】
【0269】
NMPの添加量を7.45gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、TTCA−3Naの添加量を1.14gに代え、硼酸の添加量を1.700gに代え、PMoAの添加量を0.331gに代え、さらに、抵抗発熱シームレス管状物の作製において絶縁層形成用ポリアミック酸溶液をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代え、得られた抵抗発熱シームレス管状物を400℃温度下で2時間アニール処理した以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が27.9体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.0体積%を占め、TTCA−3Naが1.0体積%を占め、硼酸が5.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0270】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は24.0Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は22.5Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−6.3%(=(22.5Ω−24.0Ω)/24.0Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例37】
【0271】
フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.5体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0272】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は22.9Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は20.1Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−12.4%(=(20.1Ω−22.9Ω)/22.9Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例38】
【0273】
フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、さらに、抵抗発熱シームレス管状物の作製において絶縁層形成用ポリアミック酸溶液をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.5体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0274】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は22.2Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は18.6Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−16.3%(=(18.6Ω−22.2Ω)/22.2Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例39】
【0275】
NMPの添加量を9.96gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)26.53gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)17.68gに代え、カーボンナノファイバーの添加量を4.968gに代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が19.3体積%を占め、カーボンナノファイバーが24.1体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0276】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は153.2Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は172.2Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+12.4%(=(172.2Ω−153.2Ω)/153.2Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例40】
【0277】
NMPの添加量を9.96gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)26.53gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)17.68gに代え、カーボンナノファイバーの添加量を4.968gに代え、さらに、抵抗発熱シームレス管状物の作製において絶縁層形成用ポリアミック酸溶液をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が19.3体積%を占め、カーボンナノファイバーが24.1体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPMoAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0278】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は141.3Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は140.0Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−0.9%(=(140.0Ω−141.3Ω)/141.3Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例41】
【0279】
フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)26.53gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)36.47gに代え、NMPの添加量を9.61gに代え、カーボンナノファイバーの添加量を4.098gに代え、TTCA−3Naの添加量を0.755gに代え、硼酸の添加量を0.9010gに代え、PMoAの添加量を0.439gに代え、さらに、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rに丸み状アルミナ(昭和電工株式会社製AS−50)8.11gを追加した以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.5体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占め、アルミナが14.5体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸、PMoAおよびアルミナの添加量が計算されている(表3参照)。
【0280】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は15.3Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は14.9Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−2.4%(=(14.9Ω−15.3Ω)/15.3Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例42】
【0281】
フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、PMoAをSiWAに代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.5体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、SiWAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびSiWAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0282】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は27.6Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は30.2Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+9.4%(=(30.2Ω−27.6Ω)/27.6Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例43】
【0283】
フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、PMoAをSiWAに代え、さらに、抵抗発熱シームレス管状物の作製において絶縁層形成用ポリアミック酸溶液をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.5体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、SiWAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびSiWAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0284】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は21.5Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は22.4Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+4.3%(=(22.4Ω−21.5Ω)/21.5Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例44】
【0285】
フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、PMoAをPWAに代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.5体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、PWAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPWAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0286】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は20.7Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は23.9Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+15.5%(=(23.9Ω−20.7Ω)/20.7Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【実施例45】
【0287】
フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)を鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)に代え、PMoAをPWAに代え、さらに、抵抗発熱シームレス管状物の作製において絶縁層形成用ポリアミック酸溶液をポリアミック酸溶液(組成PMDA/ODA,固形分15.4質量%)に代えた以外は、実施例29と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本実施例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Rの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.5体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、硼酸が2.0体積%を占め、PWAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Na、硼酸およびPWAの添加量が計算されている(表3参照)。
【0288】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は21.5Ωであった(表3参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は20.4Ωであった(表3参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は−5.1%(=(20.4Ω−21.5Ω)/21.5Ω×100)であった(表3参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表3参照)。
【0289】
【表3】
【0290】
(比較例3)
(1)導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの調製
ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)45g、NMP1.40gおよびフィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを混合し、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sを調製した。なお、このとき、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が30.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子の添加量が計算されている(表4参照)。
【0291】
(2)銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oの調製
実施例11と同様にして銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを調製した。
【0292】
(3)抵抗発熱シームレス管状物の作製
先ず、表面が離型処理された円筒金型の表面にポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD、固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、120℃で20分間加熱し、厚みが50μmの管状の基層を得た。
【0293】
次に、基層の表面に導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で10分間、150℃で20分間、250℃で30分間、400℃で15分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Fを作製した。円筒金型からこのポリイミド管状物Fを抜き取って、厚み、内径および長さを測定したところ、厚みは70μmであり、内径は18mmであり、長さは265mmであった。
【0294】
次に、ポリイミド管状物Fの両端25mmの表面に、銀粉含有ポリイミド前駆体溶液Oを均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行ってポリイミド管状物Fの両端に厚み20μmの電極を形成した。
【0295】
次いで、「電極が形成されていないポリイミド管状物Fの中央部分の外表面」および「電極の中央部分側の端から5mmの部分の外表面」に、ポリアミック酸溶液(組成BPDA/PPD,固形分17.0質量%)を均一に塗布した後、その塗膜を100℃で30分間、150℃で60分間、200℃で60分間、300℃で60分間、350℃で30分間の条件で順に加熱して、溶媒の除去およびイミド化処理を行って絶縁層を形成した。その結果、厚み120μm、内径18mm、長さ265mmの抵抗発熱シームレス管状物を得た。なお、この抵抗発熱シームレス管状物の電極間距離は215mmであった。
【0296】
(4)初期抵抗値の測定
実施例11と同様にして、抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値を測定したところ、その初期抵抗値は23.8Ωであった(表4参照)。
【0297】
(5)300℃×100時間暴露後の抵抗値の測定
実施例11と同様にして、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値を測定したところ、その値は47.6Ωであった(表4参照)。
【0298】
(6)抵抗値変動率の算出
実施例11と同様にして、この抵抗発熱シームレス管状物の抵抗値変動率を算出したところ、その値は+100%(=(47.6Ω−23.8Ω)/23.8Ω×100)であった(表4参照)。
【0299】
(7)電極劣化の観察
実施例11と同様にして電極劣化を観察したところ、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表4参照)。
【0300】
(比較例4)
NMPを添加せず、フィラメント状ニッケル微粒子の添加量を41.88gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sに硼酸(ナカライテスク製)0.9160gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が45.0体積%を占め、硼酸が2.8体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子および硼酸の添加量が計算されている(表4参照)。
【0301】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は25.5Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は89.3Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+250%(=(89.3Ω−25.5Ω)/25.5Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表4参照)。
【0302】
(比較例5)
NMPを添加せず、フィラメント状ニッケル微粒子の添加量を38.16gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)0.8370gおよび硼酸(ナカライテスク製)0.9160gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が41.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが4.0体積%を占め、硼酸が2.8体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバーおよび硼酸の添加量が計算されている(表4参照)。
【0303】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は38.1Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は171.8Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+351%(=(171.8Ω−38.1Ω)/38.1Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表4参照)。
【0304】
(比較例6)
NMPの添加量を6.35gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子の添加量を26.53gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)2.981g、TTCA−3Na0.544gおよびPMoA0.632gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、フィラメント状ニッケル微粒子が29.3体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.6体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、PMoAが2.0体積%を占めるように、フィラメント状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3NaおよびPMoAの添加量が計算されている(表4参照)。
【0305】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は29.9Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は46.3Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+55%(=(46.3Ω−29.9Ω)/29.9Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表4参照)。
【0306】
(比較例7)
NMPを添加せず、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)35.37gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)0.9910gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が40.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが5.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子およびカーボンナノファイバーの添加量が計算されている(表4参照)。
【0307】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は14.3Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は46.3Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+224%(=(46.3Ω−14.3Ω)/14.3Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表4参照)。
【0308】
(比較例8)
NMPを添加せず、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)25.64gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)3.180gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが16.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子およびカーボンナノファイバーの添加量が計算されている(表4参照)。
【0309】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は59.3Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は226.5Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+282%(=(226.5Ω−59.3Ω)/59.3Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表4参照)。
【0310】
(比較例9)
NMPを添加せず、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)41.88gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sに硼酸(ナカライテスク製)0.9160gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が45.0体積%を占め、硼酸が2.8体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子および硼酸の添加量が計算されている(表4参照)。
【0311】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は43.3Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は570.3Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+1217%(=(570.3Ω−43.3Ω)/43.3Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表4参照)。
【0312】
(比較例10)
NMPを添加せず、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)26.99gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)3.347gおよび硼酸(ナカライテスク製)0.9160gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが16.0体積%を占め、硼酸が2.8体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバーおよび硼酸の添加量が計算されている(表4参照)。
【0313】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は157.2Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は479.5Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+205%(=(479.5Ω−157.2Ω)/157.2Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表4参照)。
【0314】
(比較例11)
NMPを添加せず、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)38.16gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)0.8370gおよび硼酸(ナカライテスク製)0.9160gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が41.0体積%を占め、カーボンナノファイバーが4.0体積%を占め、硼酸が2.8体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバーおよび硼酸の添加量が計算されている(表4参照)。
【0315】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は62.5Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は879.4Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+1307%(=(879.4Ω−62.5Ω)/62.5Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化が観察された(表4参照)。
【0316】
(比較例12)
NMPの添加量を6.35gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)26.53gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)2.981g、TTCA−3Na0.544gおよびPMoA0.632gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.3体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.6体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、PMoAが2.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3NaおよびPMoAの添加量が計算されている(表4参照)。
【0317】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は20.2Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は32.5Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+61%(=(32.5Ω−20.2Ω)/20.2Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表4参照)。
【0318】
(比較例13)
NMPの添加量を5.56gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)26.53gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)2.981g、TTCA−3Na0.534gおよび85重量%リン酸水溶液(ナカライテスク製)0.06516gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.8体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.9体積%を占め、TTCA−3Naが0.5体積%を占め、リン酸が0.3体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバー、TTCA−3Naおよびリン酸の添加量が計算されている(表4参照)。
【0319】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は38.4Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は201.2Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+424%(=(201.2Ω−38.4Ω)/38.4Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表4参照)。
【0320】
(比較例14)
NMPの添加量を6.27gに代え、フィラメント状ニッケル微粒子(NOVAMET製TYPE525)20.84gを鱗片状ニッケル微粒子(NOVAMET製HCA−1)26.53gに代え、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sにカーボンナノファイバー(昭和電工株式会社製VGCF−H)2.981g、85重量%リン酸水溶液(ナカライテスク製)0.06483gおよびPMoA0.312gを追加した以外は、比較例3と同様にして抵抗発熱シームレス管状物を作製し、実施例11と同様にしてその抵抗発熱シームレス管状物の抵抗特性を測定すると共に電極劣化を観察した。なお、本比較例では、導電性微粒子含有ポリイミド前駆体溶液Sの固形分に対して、鱗片状ニッケル微粒子が29.6体積%を占め、カーボンナノファイバーが14.8体積%を占め、リン酸が0.3体積%を占め、PMoAが1.0体積%を占めるように、鱗片状ニッケル微粒子、カーボンナノファイバーおよびリン酸の添加量が計算されている(表4参照)。
【0321】
そして、この抵抗発熱シームレス管状物の初期抵抗値は89.3Ωであった(表4参照)。また、抵抗発熱シームレス管状物を300℃環境下に100時間放置した後の抵抗値は695.6Ωであった(表4参照)。そして、抵抗値変動率を算出したところ、その値は+695.6%(=(695.6Ω−89.3Ω)/89.3Ω×100)であった(表4参照)。また、この抵抗発熱シームレス管状物では電極劣化は観察されなかった(表4参照)。
【0322】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0323】
本発明に係る面状抵抗発熱体は、使用に伴う抵抗値変動が十分に小さいという特徴を有し、複写機、レーザービームプリンター等の画像形成装置の画像定着装置並びにその画像定着装置に用いられる定着ベルトや定着チューブ等として利用することができる。また、この面状抵抗発熱体は、シート状であってもよく、複写機、レーザービームプリンター等の画像形成装置の画像定着装置並びにその画像定着装置の用途以外にも加熱手段として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0324】
100,100a,100b 抵抗発熱シームレス管状物
112 発熱樹脂層
120 電極(電極部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11