(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670501
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】締結部材、締結部材製造方法、締結部材取り扱い方法、及び締結方法
(51)【国際特許分類】
F16B 39/286 20060101AFI20200316BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20200316BHJP
B23G 9/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
F16B39/286 Z
F16B5/02 U
F16B5/02 P
B23G9/00 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-195306(P2016-195306)
(22)【出願日】2016年10月1日
(65)【公開番号】特開2018-59538(P2018-59538A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2018年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】397007066
【氏名又は名称】協和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】清水 勝也
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−031992(JP,A)
【文献】
特開2006−071063(JP,A)
【文献】
特開2002−039143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
F16B 5/00− 5/12
B23G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌ねじ部材と差し込み部材とを有する締結部材であって、
前記雌ねじ部材は、
少なくとも雌ねじ部材本体の一端面に開口した雌ねじ部と、
前記雌ねじ部材本体の外側面から前記雌ねじ部まで少なくとも達するスリットと、
前記スリットと前記一端面間の部分である可撓部と、
前記スリットより前記一端面の反対側の部分である固定部と、
を有しており、
前記可撓部は、前記スリットに前記差し込み部材が差し込まれると、前記雌ねじ部が前記スリットの両側の部分で軸心の方向が一致する向きに押されて撓み、前記スリットから前記差し込み部材が抜き取られると、前記雌ねじ部が前記スリットの両側の部分で軸心が傾く向きに弾性復元力が働くことを特徴とする締結部材。
【請求項2】
請求項1に記載の締結部材において、
前記差し込み部材は、前記スリットに差し込んだときに、前記雌ねじ部を避けるように、先端部の中央部に凹部が形成されていることを特徴とする締結部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の締結部材において、
前記スリットは、前記雌ねじ部の一部まで達するか或いは前記雌ねじ部の全部を横断していることを特徴とする締結部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記締結部材の前記雌ねじ部材を製造する締結部材製造方法であって、
前記雌ねじ部材の前記雌ねじ部材本体の外側面に前記スリットを形成し、
前記スリットに前記差し込み部材を差し込んで前記可撓部を撓ませ、
前記可撓部と前記固定部を連続してねじ切り加工して前記雌ねじ部を形成することを特徴とする締結部材製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記締結部材は、請求項4に記載の締結部材製造方法の前記雌ねじ部を形成するときに差し込まれた前記差し込み部材が差し込まれた状態で、保管され、被締結部材を締結する締結作業に用いられることを特徴とする締結部材取り扱い方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記締結部材と雄ねじ部材とを用いて被締結部材を締結する締結方法であって、
前記雌ねじ部材に前記被締結部材を重ね、前記雄ねじ部材の雄ねじ部を前記雌ねじ部にねじ込み、その後、前記差し込み部材を前記スリットから抜き出すことを特徴とする締結方法。
【請求項7】
請求項6に記載の締結方法において、
前記差し込み部材を前記スリットから抜き出すことで、前記雄ねじ部材の頭部が、前記雌ねじ部材と該頭部との間で前記被締結部材が可動なように、前記雌ねじ部材から離間して位置固定されていることを特徴とする締結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄ねじ部材と雌ねじ部材の緩み止め対策を行った締結部材、締結部材製造方法、締結部材取り扱い方法、及び締結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナットのように雌ねじ部が形成された雌ねじ部材にボルトのように雄ねじ部が形成された雄ねじ部材をねじ込んで被締結部材を締結する締結構造体においては、従来より、雄ねじ部材と雌ねじ部材が経時により緩んで来るのを防止するための様々な緩み止め対策が知られている。その中で、雌ねじ部材の外側面から雌ねじ部まで達するスリット(切欠部)を形成し、固く締め込んだときに、雌ねじ部の一部の軸心を雄ねじ部の軸心に対して傾かせることによって、雄ねじ部材と雌ねじ部材を強固に結合させて緩み止め対策を行う締結構造体が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、被締結部材側の端面においてスリットが形成された側が先ず被締結部材に接触するように、被締結部材側の端面が傾斜した雌ねじ部材を用い、締結作業が進むにつれて、被締結部材側の端面とスリットの間の雌ねじ部の一部の軸心を雄ねじ部の軸心に対して徐々に傾かせることが開示されている。また、特許文献2には、いずれかの端面とスリットの間を撓ませ、スリットの外側面側の幅が内部側よりも短くなるようにして雌ねじ部の一部の軸心を予め傾かせた雌ねじ部材を用いることが開示されている。また、特許文献3には、スリットに垂直に可動ピンを設け、締結作業が進むにつれて、被締結部材側の端面から少し飛び出た可動ピンの端部が被締結部材に押されて、被締結部材側の反対側の端面とスリットの間を撓ませて、その間の雌ねじ部の一部の軸心を雄ねじ部の軸心に対して徐々に傾かせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−8514号公報
【特許文献2】特開2002−39143号公報
【特許文献3】特開2007−315524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜3に示すような締結構造体では、固く締め込んだときに雄ねじ部材と雌ねじ部材が強固に結合するものであって、雄ねじ部材が任意の位置、例えば、雄ねじ部材の頭部を雌ねじ部材から任意に離間させた位置、で強固に結合することができるものではない。
【0006】
また、特許文献1及び3に示すような締結構造体では、雄ねじ部材を雌ねじ部材にねじ込むにつれて、雌ねじ部の一部の軸心の傾きの変化により、抵抗が過度に大きくなる可能性もある。特許文献2に示すような締結構造体では、雄ねじ部材を雌ねじ部材にねじ込もうとするときに、雌ねじ部の一部の軸心の傾きにより、抵抗が過度に大きくなる可能性もある。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、外側面から雌ねじ部まで達するスリットを有する雌ねじ部材にねじ込む雄ねじ部材が任意の位置で強固に結合することが可能であり、また、ねじ込むときに抵抗が過度に大きくなることのない締結部材、締結部材製造方法、締結部材取り扱い方法、及び締結方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の締結部材は、雌ねじ部材と差し込み部材とを有する締結部材であって、前記雌ねじ部材は、少なくとも雌ねじ部材本体の一端面に開口した雌ねじ部と、前記雌ねじ部材本体の外側面から前記雌ねじ部まで少なくとも達するスリットと、前記スリットと前記一端面間の部分である可撓部と、前記スリットより前記一端面の反対側の部分である固定部と、を有しており、前記可撓部は、前記スリットに前記差し込み部材が差し込まれると、前記雌ねじ部が前記スリットの両側の部分で軸心の方向が一致する向きに押されて撓み、前記スリットから前記差し込み部材が抜き取られると、
前記雌ねじ部が前記スリットの両側の部分で軸心が傾く向きに弾性復元力が働くことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の締結部材は、請求項1に記載の締結部材において、前記差し込み部材は、前記スリットに差し込んだときに、前記雌ねじ部を避けるように、先端部の中央部に凹部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の締結部材は、請求項1又は2に記載の締結部材において、前記スリットは、前記雌ねじ部の一部まで達するか或いは前記雌ねじ部の全部を横断していることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の締結部材製造方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記締結部材の前記雌ねじ部材を製造する締結部材製造方法であって、前記雌ねじ部材の前記雌ねじ部材本体の外側面に前記スリットを形成し、前記スリットに前記差し込み部材を差し込んで前記可撓部を撓ませ、前記可撓部と前記固定部を連続してねじ切り加工して前記雌ねじ部を形成することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の締結部材取り扱い方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記締結部材は、請求項4に記載の締結部材製造方法の前記雌ねじ部を形成するときに差し込まれた前記差し込み部材が差し込まれた状態で、保管され、被締結部材を締結する締結作業に用いられることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の締結方法は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の前記締結部材と雄ねじ部材とを用いて被締結部材を締結する締結方法であって、前記雌ねじ部材に前記被締結部材を重ね、前記雄ねじ部材の雄ねじ部を前記雌ねじ部にねじ込み、その後、前記差し込み部材を前記スリットから抜き出すことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の締結方法は、請求項6に記載の締結方法において、前記差し込み部材を前記スリットから抜き出すことで、前記雄ねじ部材の頭部が、前記雌ねじ部材と該頭部との間で前記被締結部材が可動なように、前記雌ねじ部材から離間して位置固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の締結部材、締結部材製造方法、締結部材取り扱い方法、及び締結方法によれば、雌ねじ部材にねじ込む雄ねじ部材が任意の位置で強固に結合することが可能であり、また、ねじ込むときに抵抗が過度に大きくなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る締結部材を示す側面視断面図であって、(a)が差し込み部材を差し込んだ状態、(b)が差し込み部材を抜き出した状態である。
【
図2】同上の締結部材を示す平面視断面図(A−Aで示す位置で切断したもの)である。
【
図3A】同上の締結部材を用いた締結構造体を示す側面視断面図であって、差し込み部材をスリットに差し込んだ状態である。
【
図3B】同上の締結部材を用いた締結構造体を示す側面視断面図であって、差し込み部材をスリットから抜き出した状態である。
【
図4A】同上の締結部材を用いた締結構造体の全体を示す側面視断面図であって、被締結部材が雌ねじ部材に接している状態である。
【
図4B】同上の締結部材を用いた締結構造体の全体を示す側面視断面図であって、被締結部材が雌ねじ部材から離間している状態である。
【
図5】同上の締結部材の変形例を示すものであって、(a)が側面視断面図、(b)がB−Bで示す位置で切断した平面視断面図である。
【
図6A】同上の締結部材の変形例を用いた締結構造体を示す側面視断面図であって、差し込み部材をスリットに差し込んだ状態である。
【
図6B】同上の締結部材の変形例を用いた締結構造体を示す側面視断面図であって、差し込み部材をスリットから抜き出した状態である。
【
図7】同上の締結部材の変形例を用いたダブルナット構成の締結構造体を示す側面視断面図であって、差し込み部材をスリットに差し込んだ状態である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る締結部材1は、
図1(a)、(b)及び
図2に示すように、雌ねじ部材2と差し込み部材3とを有してなるものである。
【0018】
雌ねじ部材2は、少なくとも雌ねじ部材本体20の一端面2aに開口した雌ねじ部21を有している。雌ねじ部材本体20は、例えば、金属製或いはプラスチック製などである。また、雌ねじ部材2は、雌ねじ部材本体20の外側面2bから雌ねじ部21まで少なくとも達するスリット(切欠部)22を有している。スリット22は、通常、外側面2b側と雌ねじ部21側が同じ幅か、或いは外側面2b側が雌ねじ部21側よりも少し幅が大きいものである。スリット22は、雌ねじ部21の一部まで達するか或いは雌ねじ部21(雌ねじ部21の全部)を通過(横断)している。従って、雌ねじ部材2の雌ねじ部材本体20は、スリット22によって、スリット22と一端面2aの間の部分である可撓部20aと、スリット22より一端面2aの反対側(他端面2c(
図1(a)、(b)及び
図2では示さず。)側)の部分である固定部20bと、に分かれる。
【0019】
スリット22には、後に詳述する差し込み部材3が差し込まれる。差し込み部材3が差し込まれることにより、スリット22は、その外側面2b側が拡げられ、可撓部20aは、押され(
図1(a)においては上方に押され)て、弾性復元力を有しつつ撓むことになる。可撓部20aは、弾性復元力を有する撓み動作が可能なように、通常、雌ねじ部材本体20の一端面2a側に寄った位置に形成され、また、材質などによるところもあるが、雌ねじ部21のねじ山が1個〜6個(更に好ましくは2個〜3個)作成できる厚さであるのが好ましい。また、スリット22が雌ねじ部21の全部を横断している方が、可撓部20aの撓み動作の面では、好ましい。
【0020】
差し込み部材3は、形状が限定されるものではないが、その厚さが、先端部3aではスリット22の幅と同じかそれより小さく、先端部3aからスリット22の深さに対応する距離までにスリット22の幅よりも大きくなるものを用いればよい。例えば、その厚さが、先端部3aから基端部3bに近づくに従って徐々に大きくなるものを用いることができる(
図1(a)参照)。そうすると、雌ねじ部材2の外側面2bの位置までに、差し込まれた差し込み部材3の厚さはスリット22の幅よりも大きいので、スリット22が押し広げられ可撓部20aが撓む(傾斜する)ようになる。なお、差し込み部材3は、その厚さが先端部3aからスリット22の深さに対応する距離までにスリット22の幅よりも大きくなるものならば、それから基端部3bまではどのような形状であってもよく、例えば、厚さが同じであっても徐々に大きくなっても構わない。また、
図1(a)に示すように差し込み部材3が差し込まれるべき深さを示す段差3c或いは目印(線の彫り込み、印、インク、シールなど)を設けると作業性の効率が図れる。
【0021】
また、差し込み部材3は、スリット22に差し込まれたときに、雌ねじ部21を避けるように(横断しないように)、先端部3aの中央部(平面視中央部)に凹部3aaを形成することができる(
図2)参照)。
【0022】
可撓部20aは、スリット22に差し込み部材3が差し込まれていないと、雌ねじ部21がスリット22の両側の部分で、つまり可撓部20aにおける部分(可撓部雌ねじ)21aと固定部20bにおける部分(固定部雌ねじ)21bとで、軸心(可撓部雌ねじ21aの軸心Caと固定部雌ねじ21bの軸心Cb)が傾いている(
図1(b)参照)。そして、可撓部20aは、スリット22に差し込み部材3が差し込まれると、可撓部雌ねじ21aと固定部雌ねじ21bとで、軸心(軸心Caと軸心Cb)の方向が一致する(一直線上に位置する)向きに押されて撓み(、
図1(a)参照)、また、スリット22から差し込み部材3が抜き取られると、撓む前の状態(軸心Caと軸心Cbが傾いている状態)に戻る向きに弾性復元力が働く。
【0023】
雌ねじ部材2は、以下のようにして製造するのが好ましい。すなわち、雌ねじ部材2は、雌ねじ部材本体20の外側面にスリット22を形成した後、スリット22に差し込み部材3を差し込み、可撓部20aが撓んだ状態で可撓部20aと固定部20bを連続してねじ切り加工して雌ねじ部21を形成する、つまり、ねじ切り用工具により可撓部雌ねじ21aと固定部雌ねじ21bを連続して形成する。そうすると、可撓部雌ねじ21aの軸心Caと固定部雌ねじ21bの軸心Cbの方向が、差し込み部材3がスリット22に差し込まれたときに一致するような雌ねじ部21を極めて簡単に形成することができる。
【0024】
なお、スリット22は、それを有する雌ねじ部材本体20を金型で製作することで形成したり、切削により形成したりしてもよいし、或いは、可撓部20aを含むものと固定部20bを含むものを別々に製作し、それらをスリット22の箇所に間隙を持たせて接合することにより、形成してもよい。
【0025】
また、締結部材1は、雌ねじ部21の形成時に雌ねじ部材2のスリット22に差し込まれた差し込み部材3がそのまま差し込まれた状態で、保管され、流通過程を経て、被締結部材5を締結する締結作業に用いられるように取り扱うことができる。このような締結部材1の取り扱い方法では、差し込み部材3の差し込みを行うことなく、可撓部雌ねじ21aの軸心Caと固定部雌ねじ21bの軸心Cbが完全に一致した状態で締結作業を開始できる。また、その一方、締結部材1は、雌ねじ部21(可撓部雌ねじ21aと固定部雌ねじ21b)を形成した後、差し込み部材3をスリット22から抜き出して、雌ねじ部材2と差し込み部材3を別々に保管して流通させ、締結作業前に、再度、雌ねじ部材2のスリット22に差し込み部材3を差し込むことも可能である。
【0026】
次に、締結部材1と雄ねじ部材4とを用いて被締結部材5を締結する締結方法について説明する。先ず、差し込み部材3が差し込まれた雌ねじ部材2に被締結部材5を重ねる。このとき、雌ねじ部材2の雌ねじ部21に対して、被締結部材5の雄ねじ部挿通孔51の位置を合わせる。そして、雄ねじ部材4の雄ねじ部41を、雄ねじ部挿通孔51に挿通し、
図3Aに示すように、雌ねじ部材2の雌ねじ部21(可撓部雌ねじ21aと固定部雌ねじ21b)にねじ込む。ここで、差し込み部材3が差し込まれて可撓部雌ねじ21aの軸心Caと固定部雌ねじ21bの軸心Cbの方向が一致している雌ねじ部材2は、可撓部雌ねじ21aと固定部雌ねじ21bとに続けて、抵抗の変化なく、雄ねじ部材4の雄ねじ部41をねじ込むことができる。ねじ込みが完了した後、差し込み部材3をスリット22から抜き出す。
【0027】
そうすると、雌ねじ部材2の可撓部20aは、弾性復元力により、
図3Bに示すように、撓む前の状態に戻る向きに、つまり可撓部20aの撓み(傾斜)が緩くなる向きに動く。すなわち、雌ねじ部21においては、可撓部雌ねじ21aの軸心Caが固定部雌ねじ21bの軸心Cbに対して傾く(
図1(b)参照)。それにより、可撓部雌ねじ21aの軸心Caは、雄ねじ部材4の雄ねじ部41の軸心に対して傾き、可撓部雌ねじ21aのねじ山は雄ねじ部41のねじ山に局所的に強く押し付けられ、緩みが防止されることになる。
【0028】
このように、雄ねじ部材4の雄ねじ部41を雌ねじ部21にねじ込む際に、抵抗変化がなく、抵抗が過度に大きくなることがない。また、ねじ込みが完了した後に差し込み部材3をスリット22から抜き出すことで、雌ねじ部材2と雄ねじ部材4の間の緩み止めを実現し、強固な結合を実現することができる。
【0029】
また、雄ねじ部材4は、雌ねじ部材2に対し任意の位置で、差し込み部材3をスリット22から抜き出すことで、雌ねじ部材2に強固に結合させることができる。雄ねじ部材4の頭部42を、雌ねじ部材2から任意に離間させて位置固定すると、雌ねじ部材2と頭部42との間で被締結部材5を可動にすることができ、この場合、雄ねじ部材4の頭部42が離間距離制限に用いられる。
【0030】
なお、
図3Bで示した締結構造体は、例えば、上水道の設備における空気弁において、特開平9−324866号公報に開示されているような、小型化を図るために、フロート本体の上側にレバー弁体を可動に取り付けたフロート弁体に用いることができる。空気弁の中に水が一杯に溜まると、フロート本体である雌ねじ部材2は、
図4Aに示すように、レバー弁体である被締結部材5とともに浮上し、被締結部材5の上面が、その上に位置する弁体(遊動弁体)(図示せず)の小空気孔(図示せず)を塞ぐ。空気が空気弁の上方に溜まって水が押し下げられると、
図4Bに示すように、最初に雌ねじ部材2が下降し、雄ねじ部材4の頭部42が被締結部材5に接触すると、その後は、雌ねじ部材2(及び雄ねじ部材4)とともに被締結部材5が下降し弁体の小空気孔が開放される。
【0031】
上述したように、雄ねじ部材4は、雌ねじ部材2に対し任意の位置で雌ねじ部材2に強固に結合させることができるが、雄ねじ部材4の頭部42を被締結部材5に密着させて雄ねじ部材4と雌ねじ部材2とを固く締め込む場合に用いられる締結部材1の変形例について以下説明する。この場合、
図5(a)、(b)に示すように、雌ねじ部材2は、通常のナットにスリット22を形成したものとすることができる。なお、
図5(a)、(b)(及び後述する
図6A、
図6B、
図7)では、雌ねじ部材2は、雌ねじ部材本体20の可撓部20aが下側、固定部20bが上側になっている。雌ねじ部21は、一端面2aと他端面2cに開口している。被締結部材5は、例えば、2個の水道管のフランジである(
図6A、
図6B参照)。ここでは、雌ねじ部材2の他端面2cに被締結部材5が接するように配置される(
図6A参照)。そして、
図6Aに示すように、雄ねじ部材4の雄ねじ部41を雌ねじ部21の雌ねじ部21にねじ込み、固く締め込むことでねじ込みが完了する。ねじ込みが完了した後、
図6Bに示すように、差し込み部材3をスリット22から抜き出すことで、雌ねじ部材2と雄ねじ部材4の間の緩み止めを実現し、強固な結合を実現することができる。2個の水道管が地下で締結される場合であっても、それらの締結作業は容易である。
【0032】
また、
図7に示すように、被締結部材5と雌ねじ部材2の間に通常のナット6を介在させ、ナット6と雌ねじ部材2をダブルナットとして用いることも可能である。この場合、雄ねじ部材4の雄ねじ部41をナット6の雌ねじ部にねじ込んで所定のトルクで締め込み、続けて、雌ねじ部材2の雌ねじ部21を雄ねじ部材4の雄ねじ部41にねじ込んで固く締め込むことでねじ込みが完了する。ねじ込みが完了した後、差し込み部材3をスリット22から抜き出すことで、ダブルナットの機能とともに、雌ねじ部材2と雄ねじ部材4の間の緩み止めを実現し、強固な結合を実現することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態に係る締結部材及び締結方法について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 締結部材
2 雌ねじ部材
2a 一端面
2b 外側面
2c 他端面
20 雌ねじ部材本体
20a 可撓部
20b 固定部
21 雌ねじ部
21a 可撓部雌ねじ
21b 固定部雌ねじ
22 スリット(切欠部)
3 差し込み部材
3a 差し込み部材の先端部
3aa 差し込み部材の凹部
3b 差し込み部材の基端部
4 雄ねじ部材
41 雄ねじ部
42 頭部
5 被締結部材
Ca 可撓部雌ねじの軸心
Cb 固定部雌ねじの軸心