【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
なお、実験は、弘前大学大学院医学研究科倫理委員会承認を経て、インフォームドコンセントを得た被験者に対して行った。
【0065】
実施例1:卵巣がん患者の洗浄腹水細胞の蛍光標識L−グルコース誘導体を用いたイメージング
(実験方法)
(1)腹水の調整
卵巣がん(漿液性腺がん)の開腹手術開始直後、腹水採取の目的で腹腔内を生理食塩水で洗浄して得られた洗浄腹水の余剰分を50mLの遠沈管に採取した。次いで1500G,2min室温にて遠心後、上清をデカンテーションで除去した後、Krebs Ringer Buffer(KRB溶液、下記参照)を2mL加えてペレットを分散させ、腹水細胞浮遊液とした。
(1−1)KRB溶液
NaCl 129.0mM,KCl 4.75mM,KH
2PO
4 1.19mM,MgSO
4・7H
2O 1.19mM,CaCl
2・2H
2O 1.0mM,NaHCO
3 5.02mM,D−Glucose 5.6mM,HEPES 10.0mM(1M NaOHを適量加えpH7.35に調整)。gap junction/hemichannelを経由する蛍光標識グルコースの出入りを阻害する目的で0.1mM Carbenoxolone(Sigma,#C4790)を加えた。なおKRB溶液は、蛍光標識L−グルコース誘導体(以下、「fLG」と略す場合がある。)溶液を作成するための溶液として使用した。
【0066】
(2)卵巣がん手術時に得られた腹水細胞への蛍光標識L−グルコース誘導体の適用
上記した腹水細胞浮遊液を50mL遠沈管に1mLとり、下記のx2 fLG溶液を1mL加えて混和し、37℃ウォーターバス中で5min間fLGを細胞に接触させた。その後、0℃の冷KRB溶液38mLを加えることで、細胞へのfLGの取り込みを停止させ、0℃にて1500G 2min間の遠心を行い、上清をデカンテーションで除去することで溶液中のfLG濃度を低下させた。ペレットに再度上記冷KRB溶液 40mLを加えて細胞を分散させ、0℃にて1500G 1min間、遠心を行った後、上清を取り除いて、冷KRB溶液 5mLに細胞を分散させた。
(2−1)x2 fLG溶液の調製
2−NBDLGと2−TRLGの混合溶液(fLG溶液)は、それぞれ2−NBDLGが200μM、2−TRLGが40μMとなるように、KRB溶液に特許文献WO2012/133688に記載した方法で溶解して作製した。
【0067】
(3)遠心操作によるガラスプレートへの腹水細胞の付着ならびに細胞の生存維持
市販の自動細胞収集装置CF−12D(サクラファインテックジャパン株式会社製)を用い、本装置専用の6mLチャンバーセット(サクラファインテックジャパン株式会社製、プラスチック製チャンバー、金属製チャンバーホルダー、専用ペーパーフィルターから成る)に、スライドガラスのサイズにカットされたガラスプレート(
図1C)をあらかじめセットしておいた。次いで、(2)で作製したfLG適用後の腹水細胞浮遊液 5mLを上記CF−12D専用プラスチック製チャンバーに移し、室温にて1400rpm 1min間の遠心を行った。
遠心終了後、すばやくガラスプレートを取り出し、直ちに細胞付着領域に0.2mLのKRB溶液を加えることで乾燥を防いだ。次いで、細胞付着領域に相当する部分に開口部を設けたシリコーン樹脂製マスク(
図1D参照)をガラスプレート上に密着させ、KRB溶液を更に1mL程度細胞付着領域に加えることで、ライブセルイメージング中の細胞維持に十分な量の緩衝液を確保できるようにした。
【0068】
(3−1)ライブセルイメージング用特殊カバーガラス(以後「ガラスプレート」と呼ぶ)
ガラスプレートには、松浪硝子工業株式会社製のNo.1S(厚み0.16−0.19mm)を
図1Aおよび1Cに示すように26mmX76mmのサイズに切断したものを用いた。また、表裏上下左右の判別を容易にする目的で、ガラスプレートの左上の角を斜めにカットした。このガラスプレートの斜めの切欠きは、顕微鏡ステージ上にセットして用いるキーエンス社製スライドガラスホルダーに、スライドガラスの代わりに薄く割れやすい本ガラスプレートを装着する際、ホルダー側の爪でガラスプレートを破損せず、かつホルダー上にガラスプレートをセットする際の位置の誤差によって細胞の同定が困難にならない程度のサイズとした。また、本ガラスプレート上の細胞付着領域の周囲を取り囲むように、あらかじめ市販の免疫組織化学用パップペン(大道産業製スーパーパップペンリキッドブロッカー等)を用いて四角い撥水性領域を設け、自動細胞収集装置を用いた腹水浮遊細胞の遠心操作終了後、細胞を乾燥させないように少量(0.2mL)のKRB溶液を加えて貯留できる構造とした(
図1C)。このパップペンで描いた領域は、蛍光観察後に封入する際に封入剤に含まれるキシレンで洗い流され、パパニコロウ観察の邪魔にならない。
【0069】
(3−2)緩衝液保持用シリコーンマスク(緩衝液保持構造体)
緩衝液保持の目的でガラスプレート上に密着させて用いるマスク(緩衝液保持構造体)は、厚さ2mmのシリコーン製で、配向が容易にわかるよう上下左右非対称でかつガラスプレート上に表記したサンプル名等を隠さない大きさとし、ガラスプレート上に気泡を生じずに容易に密着させることが可能で、また細胞に影響を与えずに容易に取り外すことが可能な構造とした(
図1Aおよび1D)。マスクの装着および取り外し操作は、上部に設けた4mmほどの突出部を手で持って行う。シリコーンマスクの開口部は、細胞付着領域周囲にパップペンで施した囲みよりわずかに大きいサイズとしている。1mL程度のKRB溶液を滴下するためのものである。マスクは厚く、疎水性であるため、顕微鏡観察中の電動ステージ等による俊敏なXYZの動きによってもKRB溶液がこぼれない。また顕微鏡観察が長時間にわたる場合は、必要に応じてKRB溶液を随時補充することが可能な構造としており、細胞状態を良好に保ちながら観察することが可能である。マスク右端には段差が設けられている。この段差は、顕微鏡ステージ上にセットして用いるキーエンス社製スライドガラスホルダーに、スライドガラスの代わりにシリコーンマスクを密着させたガラスプレートを装着する際に、ホルダー側の突出部と厚いシリコーンマスクとが干渉しない構造としている。
【0070】
(4)画像取得
蛍光観察にはオールインワン蛍光顕微鏡BZ−X700(キーエンス株式会社)を用いて専用スライドガラスホルダーにガラスプレートをセットして次のような手順で観察撮影を行った。まずガラスプレート上の細胞付着領域の全域をX20レンズ(下記)を用いて明視野下に検鏡した。本標本中にごく少数みられたがん細胞の可能性のある細胞を撮影した。対象細胞は、X40ないしはX100の高倍で明視野画像ならびに蛍光画像を取得した。蛍光検出には、BZ−X700用の市販フィルタを用い、2−NBDLG蛍光観察用にBZ−X用GFPフィルタ(緑チャネル、OP−87763、Ex 470/40 nm、Em 525/50 nm、DM 495 nm)を、また2−TRLG蛍光観察用にBZ−X TRITCフィルタ(赤チャネル、OP−87764、Ex 545/25 nm、Em 605/70 nm、DM 545 nm)を用いた。
このため、本実施例の2−NBDLG蛍光観察に用いたGFPフィルタは2−TRLGによる蛍光をほとんど透過せず2−NBDLGの取り込みを反映した評価が可能であるが、2−TRLG蛍光観察用に用いたTRITCフィルタは、励起光が2−TRLGのみならず2−NBDLGをもわずかに励起する。このため、2−NBDLG蛍光が強い場合には、赤チャネルに2−TRLGに起因する蛍光に加えて、2−NBDLGに起因する蛍光もわずかにみられ、結果の解釈においては注意が必要である。この問題は、2−TRLG専用に設計された565nm付近の励起光を用いる蛍光フィルタを利用することで大きく軽減することが可能である。なお実施例で用いた撮影条件は下記の通りである。
x20レンズ (CFI Plan Apo λ20X、#972032、NA 0.75、WD 1.00 mm)
明視野画像:モノクロ、高感度、透過照明光量25、開口絞り20%、露光時間1/2500 sec
x40レンズ(CFI Plan Apo λ40x、#972033、NA 0.95、WD 0.25−0.16mm)
明視野画像:高感度、透過照明光量25、開口絞り20%、露光時間1/300s
緑色蛍光画像:高感度、励起光量100%、露光時間1/1.5s
赤色蛍光画像:高感度、励起光量10%、露光時間1/4s
x100レンズ(CFI Plan Apo λ100x, #972037、NA 1.45、WD 0.13mm、油浸) 使用時
明視野画像:高感度、透過照明光量25、開口絞り20%、露光時間1/50s
緑色蛍光画像:高感度、励起光量100%、露光時間1/10s
赤色蛍光画像:高感度、励起光量10%、露光時間1/10s
【0071】
(実験結果)
得られたイメージング画像を
図2に示す。
図2Aは、卵巣がん(漿液性腺がん)患者の手術時に得られた腹水細胞を生かした状態で顕微鏡観察した明視野像(対物レンズの倍率は100倍)である。形態観察から、がん細胞の疑いのある細胞(画面中央の実線で囲まれた細胞)ならびに正常な腹膜中皮細胞とみられる細胞(画面右上にある破線で囲まれた細胞)を認める。
図2Bは、100μMの2−NBDLGと20μMの2−TRLGを含有するKRB溶液適用後の緑色波長域における蛍光顕微鏡画像である。形態的にがん細胞の疑いのある画面中央の細胞(実線)は、2−NBDLGに由来する強い蛍光を発しているのに対し、画面右上の腹膜中皮細胞とみられる細胞(破線)は2−NBDLGの蛍光を発していない。
図2Cは、上記したBと同様の画像である。ただし、赤色波長域における蛍光顕微鏡画像である。画面左側にある細胞の破片(Debris)が2−TRLGに由来する強い赤色蛍光を発しているのに対して、形態的にがん細胞の疑いのある画面中央の細胞(実線)も、画面右上の腹膜中皮細胞とみられる細胞(破線)もこのような赤色蛍光を発していないことから、Bでがん細胞の疑いのある細胞に認められた2−NBDLG蛍光が細胞膜損傷に起因する取り込みによってもたらされたものであるとは考えにくい。なお、がん細胞の疑いのある画面中央の細胞の示すわずかな赤色蛍光は、強い2−NBDLG蛍光の長波長側の裾野(非特許文献1参照)が、使用した市販オールインワン型蛍光顕微鏡の蛍光フィルタを通過した成分を反映したと考えられる。
図2Dは、明視野像と蛍光像の重ね書き画像である。緑色蛍光を発する2−NBDLGががん細胞の疑いのある細胞に選択的に取り込まれ、正常細胞である腹膜中皮細胞には取り込まれていない様子、ならびに左側の細胞破片が赤色蛍光を発する2−TRLGで染色されている様子が明瞭である。
【0072】
実施例2:子宮体がん患者の腹水細胞に蛍光標識L−グルコース誘導体を適用したライブセル蛍光イメージングと、固定後に行ったパパニコロウ染色結果の対応
子宮体がん患者の手術時に得られた腹水細胞に蛍光標識L−グルコース誘導体を適用し、ライブセル蛍光イメージングを行い、次いで、同じ試料を用いて、細胞を固定後にパパニコロウ染色を行った。そして、両者の結果の対応を行った。
【0073】
(実験方法)
(1)腹水の調整
子宮体がん(類内膜腺がん)の開腹手術開始直後、実施例1と同様の方法で腹腔内を生理食塩水で洗浄して得られた洗浄腹水を、あらかじめHanks溶液5mLを入れておいた50mL遠沈管に加えた。得られた腹水浮遊液を1500G,2min室温で遠心後、上清をデカンテーションで除去した。次いで、溶血用市販塩化アンモニウム溶液30mLを加え、2分間静置した後、1500G,2min室温で遠心後、上清をデカンテーションで除去した。このペレットのうち、病院病理部で細胞診検査に使用する部分をとった余剰分を更に2分割して、それぞれKRB溶液40mLの入った50mL遠沈管に分散させ、翌日のfLGの適用まで暗所で室温保管した。
翌日(腹水細胞入手の約20時間後)、細胞浮遊液40mLの入った50mL遠沈管を600G,1min,室温で遠心後、上清をデカンテーションで廃棄し、ペレットにKRB溶液を1mL加えて再分散させた。
【0074】
(2)蛍光標識L−グルコース誘導体の子宮体がん腹水細胞への適用
実施例1(2−1)と同様にして調整した x2 fLG溶液を1mL加えて混和し、37℃ウォーターバス中で5min間fLGを細胞に接触させた。その後、0℃の冷KRB溶液38mLを加えることで、細胞へのfLGの取り込みを停止させ、0℃にて600G,1min間の遠心を行い、上清をデカンテーションで除去することで溶液中のfLG濃度を低下させた。さらに冷KRB溶液40mLに細胞を再分散させ、再度600G,1min間遠心を行った後上清を除き、冷KRB溶液10mLに腹水細胞を分散させた。
【0075】
(3)遠心操作によるガラスプレートへの腹水細胞の付着ならびに生存維持方法
実施例1と同様にして行った。ただしガラスプレート上での細胞位置同定をより容易にするため、細胞付着領域の裏面にあらかじめ耐水性のペンで印を3点つけたガラスプレートを用いた。なお、細胞位置をより簡単に知る目的で、ガラスプレートの細胞付着領域の裏面に、あらかじめ細胞位置同定用の印字を2mm間隔で施しておくことも可能である。これにより、細胞位置の同定ははるかに容易になる。
【0076】
(4)画像取得条件
腹水細胞入手の約22時間後、実施例1と同一機器を用いて観察および撮影を行った。ガラスプレート上の細胞付着領域の全域を明視野下にX10レンズ(下記)を用いて検鏡し、目的細胞は、ガラスプレートの裏面につけたマーカーと同一視野で撮影しておき、パパニコロウ染色後の細胞位置の同定に利用できるようにした。次いで目的細胞の高倍レンズを用いた明視野画像ならびに蛍光画像を取得し、BZ−X700用専用ソフトウェアでステージ上での位置情報登録を行った。用いた撮影条件は下記の通りである。
x10レンズ(CFI Plan Apo λ10x、#972031、NA 0.45、WD 4.00 mm)
明視野画像:モノクロ、高感度、透過照明光25、開口絞り20%、露光時間1/4500s
x40レンズ使用時
明視野画像:高感度、透過照明光量25、開口絞り20%、露光時間1/300s
緑色蛍光画像:高感度、励起光量100%、露光時間1/4s
赤色蛍光画像:高感度、励起光量10%、露光時間1/10s
x100レンズ使用時
明視野画像:高感度、透過照明光量25、開口絞り20%、露光時間1/50s
緑色蛍光画像:高感度、励起光量100%、露光時間1/4s
赤色蛍光画像:高感度、励起光量10%、露光時間1/10s
【0077】
(5)パパニコロウ染色ならびに観察
蛍光観察後、99.5%エタノールを満たした容器中にガラスプレートを浸漬し、5min静置した後にシリコーンマスクを外した。エタノール固定後、常法によりパパニコロウ染色を行い、通常とは上下逆に、ガラスプレート上にスライドガラスを貼り合わせて封入し、永久標本とした。蛍光観察時に撮影した目的細胞を、ステージ上での登録位置情報を基に同一視野で明視野観察するため、ガラスプレートとスライドガラスを貼り合わせる際、両者の端を正確に揃えて封入した。染色後の観察は、通常の正立顕微鏡を用いてマーカーを目印に大まかに視野を調べた後、BZ−X700オールインワン蛍光顕微鏡に登録させた位置情報をもとに再度視野の同定を行い、x40レンズで観察し、撮影した。用いた撮影条件は、明視野カラー、高解像度、透過照明光量25、開口絞り20%、露光時間1/1.5sである。
【0078】
(実験結果)
子宮体がん(類内膜腺がん)患者の手術時に得られた腹水細胞のライブセルイメージング結果をその後のパパニコロウ染色結果と対応させた結果を
図3及び
図4に示す。
図3Aは、形態観察からがん細胞の疑いのある二つの生きた細胞塊の明視野像(対物レンズの倍率は40倍)を示している。腹水入手翌日(約20時間後)にfLGを適用し、約22時間後に撮影したものである。画面右上の黒い部分は、ガラスプレート裏面に記された位置判別用の印の一部である。
図3Bは、100μMの2−NBDLGと20μMの2−TRLGを含有するKRB溶液適用後の緑色波長域における蛍光顕微鏡画像である。画面左と右の二つのがん細胞塊のいずれも、2−NBDLGに由来する蛍光を発していることが判る。
図3Cは、Bと同様であるが、赤色波長域における蛍光顕微鏡画像である。画面左側の細胞塊が2−TRLGに由来する赤色蛍光を発しており、Bでがん細胞の疑いのある細胞に認められた2−NBDG蛍光には細胞膜損傷に起因する取り込みによってもたらされたものが含まれることを示唆しているのに対して、画面右側の細胞塊(Cluster1)は2−TRLGに由来する赤色蛍光を発しておらず、2−NBDLG蛍光が細胞膜損傷に起因する取り込みによってもたらされたものであるとは考えられない。
図3Dは、Cにおける画面右側の細胞塊(Cluster1)の明視野拡大像(対物レンズの倍率は100倍)である。
図4Aは、
図3Bにおける画面右側の細胞塊(Cluster1)の緑色波長域における拡大蛍光顕微鏡画像である。核を除いた細胞質部分に2−NBDLGが取り込まれている様子がわかる。
図4Bは、
図3Cにおける画面右側の細胞塊(Cluster1)の赤色波長域における拡大蛍光顕微鏡画像である。2−TRLGに由来する赤色蛍光は認められない。
図4Cは、
図3D,
図4A,
図4Bの細胞塊(Cluster1)の明視野像と蛍光像の重ね書き画像である。
図4Dは、
図3D,
図4A,
図4Bで示した細胞塊(Cluster1)、すなわち2−NBDLG陽性で2−TRLG陰性の細胞塊を、パパニコロウ染色した後の明視野像である。これは、細胞診断学上の分類では典型的な腺がん細胞の核様態ならびに細胞集合様態の特徴を示している細胞塊であると認められる。
【0079】
実施例3:子宮体がん患者の腹水細胞に蛍光標識L−グルコース誘導体を適用したライブセル蛍光イメージングと、固定後に行ったパパニコロウ染色結果の対応
子宮体がん患者の手術時に得られた腹水細胞に蛍光標識L−グルコース誘導体を適用したライブセル蛍光イメージングを行い、次いで、同じ試料を用いて、細胞を固定後にパパニコロウ染色を行った。そして、両者の結果の対応を行った。そこで、反応性中皮細胞と判定された細胞を認めた例である。
【0080】
(実験方法)
(1)腹水の調整
子宮体がんの開腹手術開始直後、実施例1と同様の方法で腹腔内を生理食塩水で洗浄して得られた洗浄腹水を、あらかじめHanks溶液5mLをいれておいた50mL遠沈管に加えた。得られた腹水浮遊液を1500G,2min室温で遠心後、上清をスポイトを用いて除去した。このペレットのうち、病院病理部で細胞診検査に使用する部分をとった余剰分をKRB溶液15mLの入った15mL遠沈管に分散させ、再度1500G,2min室温で遠心した後、上清をスポイトを用いて除去した。ペレットの大部分は赤血球であったが、多量の赤血球が目的細胞を覆い隠すため検鏡の妨げとなる。遠沈管の底には比重の大きい赤血球が沈殿し、その上に目的細胞や白血球、血小板などの成分を含む層(バフィーコート)を形成するため、赤血球量を抑える目的でバフィーコートを含むペレットの上部1/3程度をスポイトで採取し、KRB溶液15mLの入った50mL遠沈管に分散させ、fLGの適用まで暗所で室温保管した。
細胞浮遊液15mLの入った50mL遠沈管を600G,1min室温で遠心後、上清をデカンテーションで廃棄し、ペレットにKRB溶液を1mL加えて再分散させた。
【0081】
(2)蛍光標識L−グルコース誘導体の子宮体がん腹水細胞への適用
実施例1(2−1)と同様にして調整した x2 fLG溶液を1mL加えて混和し、37℃ウォーターバス中で5min間fLGを細胞に接触させた。その後、0℃の冷KRB溶液38mLを加えることで、細胞へのfLGの取り込みを停止させ、0℃にて650G,1min間の遠心を行い、上清をデカンテーションで除去することで溶液中のfLG濃度を低下させた。さらに冷KRB溶液40mLに細胞を再分散させ、再度650G,1min間遠心を行った後上清を除き、冷KRB溶液10mLに腹水細胞を分散させた。
なお、遠心操作によるガラスプレートへの腹水細胞の付着ならびに生存維持方法、パパニコロウ染色ならびに観察は、実施例2と同様の方法で行った。
画像取得条件は、x40レンズを使用し、下記の通りとした。
明視野画像:高感度、透過照明光量25、開口絞り20%、露光時間1/500s
緑色蛍光画像:高感度、励起光量100%、露光時間1/4s
赤色蛍光画像:高感度、励起光量10%、露光時間1/10s
【0082】
(実験結果)
図5は、ライブセル蛍光イメージングとパパニコロウ染色の結果確認された反応性中皮細胞を含む領域を拡大して示したものである。
図5Aは、100μMの2−NBDLGと20μMの2−TRLGを含有するKRB溶液適用後の緑色波長域における蛍光顕微鏡画像(対物レンズの倍率は40倍)である。白線で囲まれた関心領域に存在する細胞群が2−NBDLGに由来する蛍光を発している。関心領域の右にある強い蛍光は、緑色蛍光を持つ不溶性物体である。
図5Bは、Aと同様であるが、赤色波長域における蛍光顕微鏡画像である。関心領域の細胞群は2−TRLGに由来する赤色蛍光を発しておらず、2−NBDLG蛍光が細胞膜損傷に起因する取り込みによってもたらされたものであるとは考えられない。
図5Cは、AとBの蛍光像を明視野像に重ね合わせた画像である。
図5Dは、蛍光染色後に実施したパパニコロウ染色の結果である。A−Cにおいて白線で囲まれた関心領域に存在する細胞群は、反応性中皮細胞と思われる核様態ならびに細胞集合様態の特徴を示している細胞群であると認められる。本例のような腹水由来の細胞診検体に、N/C比が大きい細胞群が認められた場合には、核の大小不同の有無や極性、核小体やクロマチンの様態、細胞自体の大きさ、あるいは細胞の集合形態等を総合して、反応性中皮細胞と判断するか、あるいはがんに移行する可能性が疑われる異常を呈している細胞と判断するか、あるいは判断が難しいケースとするか、診断に主観的要素が強く含まれる。言い換えると、どこまでが反応性中皮で、どこからががんに移行する可能性が疑われる異常を呈している細胞かの線引きが、検査士や細胞診専門医により幅があると言ってよい。本発明により、専ら細胞の形態的な異常情報のみに基づいて判定していた従来の細胞判定とは質的に異なる情報が得られ、がんの経過や予後を調べることで、このような細胞の良悪鑑別に役立つ情報を与えることができる。
【0083】
(実施例4)
実施例4:卵巣がん患者の原液腹水細胞に潅流法により蛍光標識L−グルコース誘導体を適用したライブセル蛍光イメージングと、固定後に行ったパパニコロウ染色結果の対応
卵巣がん患者の手術時に得られた腹水細胞に蛍光標識L−グルコース誘導体を適用し、ライブセル蛍光イメージングを行い、次いで、同じ試料を用いて、細胞を固定後にパパニコロウ染色を行った。そして、両者の結果の対応を行った。
(実験方法)
(1)腹水の調整
卵巣がん(漿液性腺がん)の開腹手術開始直後、腹腔内より採取された腹水原液の余剰分を、あらかじめHanks溶液5mLをいれておいた50mL遠沈管に加えた。得られた腹水浮遊液について竹串でフィブリンの有無を確認した後、メッシュに通して脂肪、不純物を取り除いた。次いで50mL遠沈管2本に半量ずつ分注し、1500G,2min室温で遠心後、2本の遠沈管それぞれの上清を、電動ピペットを用いて液面側から静かに7.5mLまで取り除き、さらにスポイトを用いて1mLを残して除去した。遠沈管底部には赤血球等を含む沈殿層が存在するが、その上表面から1mL分を沈殿層の赤血球を吸わないようにスポイトとマイクロピペットを用いて採取し、腹水細胞浮遊液とした。
(2)遠心操作によるガラスプレートへの腹水細胞の付着ならびに生存維持方法
市販の自動細胞収集装置CF−12D(サクラファインテックジャパン株式会社製)を用い、ガラスプレートへの腹水細胞の付着を行った。具体的には、本装置専用の1mLチャンバーセット(サクラファインテックジャパン株式会社製、プラスチック製チャンバー)に、25.7x75.0mmのサイズにカットされたガラスプレート(
図14)に、潅流用シリコーンマスク(
図15、アウターマスクとインナーマスクから構成される)を密着させたものを予めセットしておいた。次いで、(1)で調整した腹水細胞浮遊液1mLを上記CF−12D専用プラスチック製チャンバーに移し、室温にて1400rpm 1min間の遠心を行った。
遠心終了後、すばやくガラスプレートを取り出し、直ちに細胞付着領域にKRB溶液を加えることで乾燥を防いだ。次いで、細胞付着領域に相当する部分に開口部を設けたインナーマスクを取り除き、更にKRB溶液をアウターマスクの魚型開口部に加えることでライブセルイメージング中の細胞維持に十分な量の緩衝液を確保できるようにした。かん流をスムーズに行うため、魚型開口部を完全にふさがない程度の大きさのカバーガラス(MATSUNAMI MICRO COVER GLASS:22x22mm)を密着させた後、かん還流ステージへの装着までの間、湿潤箱に入れて保管した。
(2−1)かん流用ライブセルイメージング用特殊カバーガラス(ガラスプレート)
ガラスプレートには、松浪硝子工業株式会社製のNo.1S(厚み0.16−0.19mm)を
図1A(要変更)および1C(要変更)に示すように25.7mmx75.0mmのサイズに切断したものを用いた。また、表裏上下左右の判別を容易にする目的で、ガラスプレートの左上の角を斜めにカットした。このガラスプレートの斜めの切欠きは、顕微鏡ステージ上にセットして用いるシステムインスツルメンツ社製の特注かん流ステージへ、薄く割れやすい本ガラスプレートを装着する際、位置の誤差によって細胞の同定が困難にならない程度のサイズとした。
【0084】
(2−2)かん流用シリコーンマスク(緩衝液保持構造体)
緩衝液保持の目的でガラスプレート上に密着させて用いるマスクは、厚さ0.5mmのシリコーン製で、配向が容易にわかるよう上下左右非対称でかつガラスプレート上に表記したサンプル名等を隠さない大きさとし、ガラスプレート上に気泡を生じずに容易に密着させることが可能で、また細胞に影響を与えずに容易に取り外すことが可能な構造とした(
図14および
図15)。本シリコーンマスクは、細胞付着領域と同サイズの開口を持つインナーマスクと、インナーマスクを填め込むことが可能な魚型の開口を持つアウターマスクの、入れ子構造となっている。インナーマスクの開口部は細胞付着領域を囲む枠線と同じサイズとしており、遠心操作による細胞付着の際に、細胞付着領域以外への細胞の流出を防ぐものである。アウターマスクの魚型開口は、細胞付着後に開口を塞がないサイズのカバーガラスを貼りつけることで、魚の頭側をInlet、尾側をOutletとした時に、Inletから流入する溶液が自然とOutlet側に溢れ出し、Inlet側には溢れ出ない様な過不足のないかん流を可能とするものである。
【0085】
(3)ガラスプレートの潅流ステージへの装着と潅流
腹水細胞浮遊液の調整が済むまでに、顕微鏡用培養装置(東海ヒットINUG2−KIW)をBZ−X700にセットした後、潅流ステージ(
図16、
図17)を装着したうえで、潅流ポンプ(ISMATEC)と潅流ラインを接続した。かん流にはKRB溶液を用い、供給元の溶液瓶を40℃のウォーターバス内で予め加温することで、溶液に溶け込んだ気泡がかん流ライン内に入らない様にした。また、ラインの始まりにタコ管トラップを設けることで、さらに気泡の流入を防いだ。潅流ステージの上にはダミーのガラスプレートを載せてKRB溶液の潅流を行い、流速が0.7mL/minにおいて細胞付着部分の温度が37.0±0.5℃になるように設定した。具体的には、顕微鏡用培養装置のトップヒータ、バスヒータの温度を設定することで装置内の温度を一定とし、さらに培養装置内の水路に40mL程度の水を注いで同時に加温し、この中に細いステンレスの管を這わせてKRB溶液を通すことで、予め細胞に到達する前のKRB溶液を温めた。
細胞の付着したガラスプレートを、かん流用シリコーンマスクの魚型開口部の頭にあたる部分が潅流装置のInlet側に、開口部の尾にあたる部分をOutlet側になるよう潅流ステージにセットし、潅流スタート時にはかん流の様子を明視野下に検鏡しながら、細胞の付着具合を確認しながら流速0.3mL/minで潅流を開始した。その後1分おきに流速を0.1mL/minずつ上げながら、0.7mL/minまで速度を上げ、潅流が安定していることを確認した。
【0086】
(4)腹水細胞への蛍光標識L−グルコース誘導体の適用と画像取得
画像取得は、数か所を手動で撮影する方法ではなく、視野を横にずらしながら指定した範囲内を順に撮影するタイリングの手法を用いた。具体的には、まず細胞観察用カバーガラスの細胞付着領域の全視野をx10レンズで取得した後、x40レンズに切り替え、3点を指定することで撮影範囲と焦点を設定した。具体的には、細胞付着領域を囲む枠線の左上をAとし、枠が画面上の左端に位置するよう配置した。さらに細胞付着ガラス面から6.3ミクロン上部を撮影面として定めた。視野を右にずらし、隣の枠角をBとして、さらにAの対角をCとして同様に設定し、A、Cの2点で撮影領域を、A、B、Cの3点において細胞付着ガラス面から6.3ミクロン上部を撮影面とした。細胞付着ガラス面から6.3ミクロン上部を撮影面とした理由は、がん細胞が概ね高さを持った一個あるいは複数個の立体構造をとっているため、ガラス面に焦点を合わせても、その核や細胞質を観察するために最適な高さではないためである(要検討)。以上の操作によって、撮影時にはx40レンズの視野で1036枚(28x37)の画像を取得することになり、撮影時間にして約3分30秒で細胞付着領域の全視野を撮影可能となる。画像解析の際、専用アプリケーションを用いて画像を貼り合わせ(イメージジョイント)、一枚の大きな画像として表現が可能である。蛍光標識L−グルコース誘導体の投与前の画像は緑色蛍光画像、次いで明視野画像を次の条件で撮影した。
緑色蛍光画像:高感度(Gain 6db,Binning 3x3)、励起光量100%、露光時間1/80s
明視野画像:高感度(Gain 6db,Binning 3x3)、透過照明光量25%、開口絞り20%、露光時間1/500s
【0087】
蛍光標識L−グルコース誘導体の投与
(4−1)蛍光標識L−グルコース誘導体溶液の調製
2−NBDLGと2−TRLGの混合溶液(fLG溶液)は、それぞれ2−NBDLGが100μM、2−TRLGが20μMとなるように、KRB溶液に特許文献WO2012/133688に記載した方法で溶解して作製した。
fLG溶液は、KRB溶液とは枝分かれした異なるラインから供給し、KRB溶液と同様に予めウォーターバスで40℃に加温して液中の空気を軽く除去した後に、タコ管トラップを経、かん流ポンプ手前でKRB溶液のラインと合流させた。5分間投与した後、画像取得直前には(4)と同様の方法で撮影面の再設定を行い、KRB溶液に切り替えて10分後に投与後の画像を緑、赤、明視野の順で、次の条件で撮影した。
緑色蛍光画像:高感度、励起光量100%、露光時間1/80s
赤色蛍光画像:高感度、励起光量5%、露光時間1/120s
明視野画像:高感度、透過照明光量25%、開口絞り20%、露光時間1/500s
【0088】
(5)パパニコロウ染色ならびに観察
蛍光観察後、99.5%エタノールを満たした容器中に細胞観察用カバーガラスを浸漬し、5min静置した後に潅流用シリコーンマスクを外した。エタノール固定後、常法によりパパニコロウ染色を行い、スライドガラス上に細胞観察用カバーガラスを貼り合わせて封入し、永久標本とした。蛍光観察時に撮影取得した画像と、パパニコロウ染色後の撮影取得した画像を合わせるために、細胞観察用カバーガラスとスライドガラスを貼り合わせる際、両者の端を正確に揃えて封入した。染色後の観察は、潅流ステージに封入した細胞観察用カバーガラスをセットして、かん流中の画像取得時と同様の撮影範囲、撮影面の設定を行った。撮影条件は、明視野カラー、高解像度(Gain 6db, Binning 1x1)、透過照明光量100%、開口絞り20%、露光時間1/7.5sである。
【0089】
(実験結果)
卵巣がん(漿液性腺がん)患者の手術時に得られた腹水細胞のライブセルイメージング結果をその後のパパニコロウ染色結果と対応させた結果を
図6、
図7、
図8及び
図9に示す。
図6AはfLG適用前の細胞付着領域全体の緑色波長域の蛍光画像、赤色波長域の蛍光画像図、明視野画像の重ね合わせ画像であり、
図6BはfLG適用後の緑色波長域の蛍光画像、赤色波長域の蛍光画像図、明視野画像の重ね合わせ画像である。
図8Dとその拡大図である
図9のパパニコロウ染色画像の形態観察から、がん細胞の細胞塊の特徴を示していることがわかる。すなわち、1個の細胞体が大きい、核が大きく細胞質に対する割合N/Cが大きい、クロマチンも濃縮している等の特徴を有している。
図7Aは
図8Dで示された細胞塊のfLG適用前の緑色波長域における蛍光顕微鏡画像で、対して
図7BはfLG適用後の緑色波長域における蛍光顕微鏡画像である。
この2つの画像を比較するとがん細胞塊が2−NBDLGに由来する蛍光を発していることが判る。
図8Bは同様の細胞塊のfLG適用後の赤色波長域における蛍光顕微鏡画像であるが、2−TRLGに由来する赤色蛍光を発しておらず、この細胞塊の2−NBDLG蛍光が細胞膜損傷に起因する取り込みによってもたらされたものであるとは考えられない。すなわちパパニコロウ染色した後の細胞診断学でがん細胞の核様態ならびに細胞集合様態の特徴を示していると認められる細胞塊が、2−NBDLG陽性で2−TRLG陰性を示しており、本発明による生理的に見たがん細胞の検出法が形態学的な診断法と一致していることを示している。
【0090】
実施例5:子宮体がん患者の洗浄腹水細胞に潅流法により蛍光標識L−グルコース誘導体を適用したライブセル蛍光イメージングと、固定後に行ったパパニコロウ染色結果の対応
子宮体がん患者の手術時に得られた洗浄腹水細胞に蛍光標識L−グルコース誘導体を適用し、ライブセル蛍光イメージングを行い、次いで、同じ試料を用いて、細胞を固定後にパパニコロウ染色を行った。そして、両者の結果の対応を行った。
(実験方法)
(1)洗浄腹水の調整
子宮体がん(子宮内膜類内膜腺がん)の開腹手術開始直後、実施例1と同様の方法で得られた洗浄腹水を、あらかじめHanks溶液5mLをいれておいた50mL遠沈管に加えた。腹水浮遊液を実施例4と同様の方法でフィブリン、脂肪、不純物を取り除いた。次いで50mL遠沈管に半量を分注し、1500G,2min室温で遠心後した。
上清を実施例4と同様の方法で処理し、腹水細胞浮遊液1mLを採取した。
【0091】
(2)遠心操作によるガラスプレートへの洗浄腹水細胞の付着ならびに生存維持方法
(1)で採取した腹水細胞浮遊液1mLを実施例4と同様に、CF−12D専用プラスチック製チャンバーに移し、室温にて1400rpm 1min間の遠心を行うことで腹水細胞をガラスプレートに付着させ、実施例4と同様の処置をし、かん還流ステージへの装着までの間、湿潤箱に入れて保管した。
【0092】
(3)ガラスプレートの潅流ステージへの装着と潅流
実施例4と同様にして行った。
【0093】
(4)洗浄腹水細胞への蛍光標識L−グルコース誘導体の適用と画像取得
実施例4と同様にして行った。蛍光標識L−グルコース誘導体の投与前の画像は緑色蛍光画像のみを撮影した。また、fLG溶液を5分間投与した後、KRB溶液に切り替えて10分後に投与後の画像を緑、赤、明視野の順で撮影した。エタノール固定後のパパニコロウ染色についても同様である。
【0094】
(実験結果)
子宮体がん(子宮内膜類内膜腺がん)患者の手術時に得られた洗浄腹水細胞のライブセルイメージング結果とその後のパパニコロウ染色結果と対応させた結果を
図10、
図11、
図12及び
図13に示す。
図10AはfLG適用前の細胞付着領域全体の緑色波長域の蛍光画像、赤色波長域の蛍光画像図、明視野画像の重ね合わせ画像であり、
図10BはfLG適用後の緑色波長域の蛍光画像、赤色波長域の蛍光画像図、明視野画像の重ね合わせ画像である。
図11C、
図11D及び
図12D、
図13a,bの形態観察から、中皮細胞とマクロファージ細胞とみられる細胞(画面のa及びbの細胞塊)を認める。
図11Bは、100μMの2−NBDLGと20μMの2−TRLGを含有するKRB溶液適用後の緑色波長域における蛍光顕微鏡画像である。a、bどちらの細胞塊とも適用前の
図11Aの画像と比較して、2−NBDLGに由来する蛍光を発していない。さらに
図12Bの赤色波長域における蛍光画像においてもa、bどちらも赤色蛍光を発していない。このことから細胞膜損傷を来たしていない正常な中皮細胞およびマクロファージ細胞には2−NBDLGが取りこまれない様子がわかる。
図12Dとその拡大
図13a,bは蛍光染色後に実施したパパニコロウ染色の結果である。1個の細胞体の大きさが小さく、核は大きさが一様でN/Cも小さい特徴がわかる。また核の変性や凝集による細胞へのダメージが少なく、検査士や細胞診専門医による形態判定に何ら支障を来たさない染色結果であり、潅流法による有効性が示されている。
【0095】
上記の詳細な記載は、本発明の目的および対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更および置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。