特許第6670574号(P6670574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670574
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】ミシン用センサアッセンブリ及びミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 69/36 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   D05B69/36
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-193139(P2015-193139)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-73626(P2016-73626A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2018年5月30日
(31)【優先権主張番号】10 2014 220 209.4
(32)【優先日】2014年10月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595143159
【氏名又は名称】デュルコップ アドラー アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100202016
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 喬
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ダイク
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ヘックナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト ラングレック
【審査官】 姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−197786(JP,A)
【文献】 特開昭52−072656(JP,A)
【文献】 実開昭62−199065(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0221601(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 69/36
D05B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン(1)のためのミスステッチ検知用センサアッセンブリ(28;28a;28b)において、
検出光線(30)を発生させるための光源と、
前記検出光線(30)を検出するためのセンサであって、
該センサに対し前記光源が次のように配向され、すなわちミシン作動時のステッチ形成段階で糸(13)が通過する、前記ミシン(1)の構成要素(32)の反射部分(31;23;40)を介して、前記検出光線(30)が誘導されるように配向されている、前記センサと、
前記センサと信号接続して、該センサによって発生する検出信号を時間分解評価するための評価ユニット(33)と、を備え
前記評価ユニット(33)は、1回のステッチ形成段階の間の1つの時間部分内に発生した少なくとも1つの検出信号の移動平均値を形成するように構成されているセンサアッセンブリ。
【請求項2】
前記センサが前記検出光線(30)の光路内にダイレクトに配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のセンサアッセンブリ。
【請求項3】
前記評価ユニット(33)は、前記検出信号がステッチ形成と位相同期して形成されるように構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のセンサアッセンブリ。
【請求項4】
前記評価ユニット(33)は、前記ステッチ形成段階の間の複数の異なる時間部分内に発生した少なくとも2つの検出信号の移動平均値を形成するように構成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一つに記載のセンサアッセンブリ。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載のセンサアッセンブリ(28;28a;28b)と、
針(10)と、下糸ボビンケース(32)のまわりを周回するルーパー(21)との形態のステッチ形成工具と、を備えたミシン(1)。
【請求項6】
前記ミシンの前記構成要素(32)の前記反射部分(31)が高反射性に構成されていることを特徴とする、請求項5に記載のミシン。
【請求項7】
前記ルーパー(21)が前記検出光線(30)の光路に対し相対的に次のように配置され、すなわち該ルーパー(21)が全回転ルーパー運動軌道内で前記検出光線(30)を遮断しないように配置されていることを特徴とする、請求項5または6に記載のミシン。
【請求項8】
前記ミシンの前記構成要素(32)の前記反射部分(31;23;40)は、糸(13)が通過する際に該糸が接触してかすめ通るように選定されていることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか一つに記載のミシン。
【請求項9】
前記評価ユニット(33)が、前記ステッチ形成工具(10,21)のうちの少なくとも1つを駆動するためのモータと信号接続していることを特徴とする、請求項5から8までのいずれか一つに記載のミシン。
【請求項10】
前記センサアッセンブリ(28;28a;28b;34)が、それぞれ1つの光源と該光源から発生する検出光線(30;36)を介して割り当てられるセンサとから成る少なくとも2対を有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一つに記載のセンサアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン用センサアッセンブリに関するものである。さらに、本発明はこの種のセンサアッセンブリを備えたミシンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミシン用センサアッセンブリは、例えば特許文献1から公知である。特許文献2は、ミシン用光学式予警告装置を記載している。特許文献3は、ボビンの糸のための糸監視器を備えたミシンを記載している。特許文献3は、ミシンのボビン上に巻回されている糸の残量を決定するための装置を記載している。特許文献5は、下糸ボビンの回転を監視するようにしたミシンを記載している。特許文献6は、糸残量を検知するようにしたミシン用下糸供給装置を記載している。特許文献7は、下糸ボビン上の糸貯留量を決定するための装置を備えた縫製機または刺繍機を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2045386A1号明細書
【特許文献2】米国特許第4569298号明細書
【特許文献3】独国特許第3707321C1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第4116638A1号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第20030221601A1号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第112005002785T5号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第1700941A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ミシン用センサアッセンブリを、ミスステッチの検知が可能であるように改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載した構成を備えたセンサアッセンブリによって解決される。
【0006】
本発明によれば、ステッチ形成の際に糸がミシンの下糸ボビンケースのまわりにめぐらされ、その際に糸がミシンの種々の構成要素を通過する状況を、ミスステッチの検知に利用できるということが明らかになった。本発明によるセンサアッセンブリでは、検出光線を反射させる部分を通過する糸は、ステッチ形成の際にこの検出光線を一時的に遮断する。この一時的な遮断はセンサによって検知され、ミスステッチを検知するための評価ユニットによって評価することができる。その際評価ユニットは、糸の通過で検出信号が変化するかどうかを測定する。もしこの変化が測定されて評価されれば、糸なしでは望ましくないので縫製を行わないことが確保される。そうでなければミスステッチが検知される。反射部分は下糸ボビンケース自体に設けられていてよい。反射部分は特に下糸ボビンケースの中央部分領域に配置されていてよい。これとは択一的に、反射部分を、ミシン作動時に糸が通過する少なくとも1つの部分を有するミシンの他の構成要素に設けられていてもよい。このようなミシン構成要素の例としては、ルーパーのルーパー先端部が挙げられる。このケースでは、反射部分として、糸が接触するルーパー先端部領域を選定するのが有利である。
【0007】
検出光線の光路内にセンサをダイレクトに配置することにより、糸がかすめ通ることで反射検出光線の反射が減少することによるシグナルリダクションの測定が可能になる。すなわちセンサは、通常のケースでは反射検出光線の基本強度を測定し、基本強度は、糸が通過して検出光線が遮断されると減少する。これとは択一的に、センサが検出光線の光路内にダイレクトに配置されずに、散乱検出光を測定するように該センサを配置することが可能である。この場合、検出光が通過する上糸によって散乱されるよりも、ミシン構成要素、特に下糸ボビンケースによって散乱されるほうが通常では少ないことが活用される。糸が検出光線を通過すると、すなわちミシン構成要素の反射部分を通過すると、これによって、センサにより測定可能な散乱光が発生する。散乱光測定の場合には、バックグラウンド信号の消失または減少を伴うゼロ測定が可能である。
【0008】
請求項に記載の評価ユニットの実施態様では、移動平均値を予設定値と比較することができる。これはたとえばドリフト測定または汚染検出に利用することができる。請求項3に記載の評価ユニットの実施態様では、信号形成は、特にステッチ形成と位相同期して行うことができる。
【0009】
請求項4に従って、ステッチ形成段階の間の異なる複数の時間部分内で複数の検出信号を形成することにより、付加的な信号比較が可能になり、これも検出の表現力を改善させる。
【0010】
請求項5に記載のミシンの利点は、センサアッセンブリに関連して前述した利点に対応している。
【0011】
請求項6に記載の高解像度に関わる実施態様は、検出の感度を向上させる。反射部分は磨かれるように実施されていてよい。反射部分は平面で実施されていてよい。反射部分は凹状に実施されていてもよく、特に光源をセンサに結像させる。
【0012】
請求項7に記載のルーパーの配置は、センサアッセンブリによる検出の、ルーパーによって生じる障害を回避させる。
【0013】
請求項8に記載の反射部分の選択は、該反射部分の汚染による検出への影響を回避させる。
【0014】
請求項9の構成は、評価時にステッチ形成時間の1段階を考慮するための簡単な可能性を表している。特に、評価精度を向上させる位相同期測定が可能である。
【0015】
これとは択一的な、または、これに加えて可能な、ミシン用センサアッセンブリは、検出光線を発生させるための光源と、検出光線を検出するためのセンサとを有している。光源はセンサに対し次のように配向されており、すなわち検出光線がミシンの1つの構成要素の反射部分を介して誘導されるように配向されている。評価ユニットはセンサと信号接続し、センサによって発生した検出信号を時間分解評価するために用いられる。評価ユニットは、ステッチ形成段階の間の1つの時間部分内で発生する少なくとも1つの検出信号の移動平均値を形成するように構成されている。この種のセンサアッセンブリを用いて、ミシンの汚染を測定することができる。
【0016】
たとえば作動時にミシン上に堆積する埃または毛屑によりミシンの汚染が増大するに伴って、検出光路内での光誘導特性は悪化する。これをセンサアッセンブリを用いて活用する。形成された移動平均値は、評価ユニット内で予設定値または参照値と比較することができる。参照値とは、反射部分を介して検出光線がセンサのほうへ最適に反射するときの検出信号の仮想値である。検出信号と予設定値との間の差が公差範囲を上回るか下回ると、障害信号、例えば「汚染」を出力することができる。公差範囲は、検出信号に対する最小許容値を予設定することによって予め設定することができる。障害信号は音であってよく、および/または、操作パネルでの表示によって行ってよい。これとは択一的に、または、これに加えて、障害信号を介してミシン作動にダイレクトに介入すること、特にミシンの作動を停止することが可能である。
【0017】
センサは検出光線の光路内にダイレクトに配置されていてよい。この種の配置構成の利点は、請求項2に関連して前述した利点に対応している。センサを検出光線の光路内にダイレクトに配置せずに、散乱した検出光を測定するようにした択一的配置構成も可能である。
【0018】
請求項10に記載の複数の光源/センサ対は、それぞれの対の移動平均値を評価ユニット内で比較することを可能にする。これは汚染検出の精度を増大させる。
これとは択一的に、または、これに加えて、ミシンのためのミスステッチ検知用センサアッセンブリが設けられていてよく、該センサアッセンブリは、検出光線を発生させるためにフレームに固定された光源と、検出光線を検出するためにフレームに固定されたセンサであって、該センサに対し光源が次のように配向され、すなわちミシンの下糸ボビンの少なくとも1つの反射部分を介して検出光線が誘導されるように配向されている前記センサと、該センサと信号接続して、該センサによって発生する検出信号を時間分解評価するための評価ユニットとを備えている。
【0019】
ここでは、下糸ボビンを備えているミシンが正常に作動していれば、下糸の消費のために下糸ボビンは回転するという状況が活用される。この回転はセンサアッセンブリにより確実に検知される。下糸ボビンが回転している間は、反射部分に検出光線が当たれば下糸ボビンは常に反射光線を反射部分で反射させる。検出信号が測定されない場合、または、検出信号の特徴的な時間変化が測定されない場合は、正確な下糸消費量で縫製が行われていない兆候であり、対応するエラー信号を出力させることができる。
【0020】
センサは、検出光線の光路内にダイレクトに配置されていてよい。この場合、このようなダイレクト配置との関連ですでに記載した利点が得られる。これとは択一的に、センサが検出光線の光路内にダイレクトに配置されずに、散乱した検出光を測定するようにセンサが配置されているような配置構成がここでも可能である。
【0021】
評価ユニットは、ステッチ形成段階の間の1つの時間部分内で発生した少なくとも1つの検出信号の移動平均値を形成するように構成されていてよい。これとは択一的に、または、これに加えて、評価ユニットは、ステッチ形成段階の間の異なる2つの時間部分内で発生した少なくとも2つの検出信号の移動平均値を形成するように構成されていてもよい。この種の評価ユニットの利点は、すでに前述した利点に対応している。
【0022】
この他のセンサアッセンブリも、針と、下糸ボビンケースのまわりを周回するルーパーとの形態のステッチ形成工具を含んでいるミシンの一部であってよい。この種のミシンの利点は、すでに前述した利点に対応している。
【0023】
ボビンの周部分には、該ボビンの側壁に、検出光線を反射させるための複数の反射部分が設けられていてよい。
【0024】
複数の反射部分はセンサアッセンブリの測定精度を向上させる。というのは、ボビンが1回転する間に、検出光線が反射部分に反射して検出信号を生じさせる状況が何度も生じるからである。複数の反射部分はボビンの周方向に不均等に配分されていてよい。たとえば、ボビンを上から見て第1象限に3つの反射部分が配置され、周方向とは逆の方向に接続している第2象限に2つの反射部分が配置され、同様に反時計方向に接続している第3象限にただ1つの反射部分が配置されていてよい。この場合、評価の際にボビンの回転方向も表示させることができる。本例の場合、シーケンス評価が「3/2/1」であれば、ボビンが時計方向に回転していることを推定できる。逆のシーケンス評価「1/2/3」であれば、ボビンが反時計方向に回転しているという結果が得られる。これとは択一的に、または、これに加えて、ボビンの回転方向に関する判定の対応する可能性は、周方向に異なるサイズの複数の反射部分を設けることによって達成できる。たとえば、3つの異なる周方向延在長さを備えた複数の反射部分を周方向に均等に配分して使用することができる。これら3つの異なる周方向延在部は、たとえばその延在長さの降順で配置される。この場合、周方向に不均等に配分することと関連して前述したことに対応して、回転方向の判定が可能になる。
【0025】
少なくとも1つの反射部分はボビン側壁に次のように実施されており、すなわち少なくとも1つの反射部分の周領域にわたってもボビンの全直径が維持されるように、特に上部ボビン接続壁または上部ボビンカバーの全直径が維持されるように実施されている。このようにして、ボビン糸がボビン領域の一部である反射部分の周方向部位に当たって望ましくないことが確実に阻止される。少なくとも1つの反射部分は次のように実施されていてよく、すなわちたとえば0.5mm以下の軸線方向高さにわたってボビンの全直径が維持されるように実施されていてよい。反射部分はファセットとしてボビンに形成されていてよい。ファセットの実施はコスト上好ましく可能である。
【0026】
少なくとも4つの反射部分を設けてよい。4つの反射部分は、確実な検出のために特に適したものとして製造されたものである。4つ以上または4つ以下の反射部分を使用してもよく、たとえば6個以上、10個以上、たとえば12個、またはそれ以上の反射部分を使用してよい。
【0027】
評価ユニットは、複数のステッチ形成工具のうちの少なくとも1つのステッチ形成工具を駆動するためのモータと信号接続している。この配置構成の利点は、評価ユニットとの関連ですでに説明した利点に対応している。評価の際、妨害信号および/または誤信号をフィルタリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
次に、本発明の実施形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1】内部を一部省略したミシンの正面図である。
図2】複数のセンサアッセンブリを備えた、特にミスステッチ検知用のセンサアッセンブリを備えたルーパーの領域でのミシンの一部分を上から見た斜視図であって、載置板を省略した拡大斜視図である。
図3】さらに下糸ボビンケースを省略して示した、図2に対応する図である。
図4図2および図3の実施形態における糸輪センサアッセンブリの代わりに使用することのできる糸輪センサアッセンブリの他の実施形態の、図2に対応する配置構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ミシン1は基板2を有し、基板2は、該基板から上方へ延在しているスタンド3と、屈曲したアーム4とを備えている。アームはヘッド5に終端を有する。アーム4内には上軸6が回転可能に支持され、上軸6は、ヘッド5内で、天秤8を備えたクランク機構7を駆動する。クランク機構7は、ヘッド5内に変位可能に支持されている針棒9と駆動結合している。針棒9はその下端に縫製針10を有している。縫製針10はクランク機構7によって上下動可能である。この場合、縫製針10は運動空間を貫通するように運動する。縫製針10は、針穴内で、糸巻12から糸調子装置と天秤8とを介して供給される縫製糸13を案内している。
【0030】
基板2上には載置板16が取り付けられ、載置板上には縫製物一部分17が載置される。載置板16は、布送り19を貫通させるために形成された布送り穴を有している。布送り19は、縫製針10を貫通させるための穿刺穴20を有している。布送り19は、基板2の下方に配置されている送り・昇降伝動装置を介して駆動される。
【0031】
載置板16の下方にはルーパー21が配置され、ルーパーは、側面側にルーパー先端部23を備えたルーパーケース22を有している。ルーパー21は縦ルーパーであり、すなわち載置板16の載置面に対し垂直な鉛直方向の回転軸線24を有している。
【0032】
縫製針10とルーパー21とはミシン1のステッチ形成工具である。
【0033】
ルーパーケース22は、回転軸線24に対し同軸に延在している軸と固定結合されている。この軸は、基板2と螺合している支持ブロック25内で回転可能に支持されている。支持ブロック25内にはさらに駆動軸26が支持され、駆動軸26は、支持ブロック25内に配置される歯車伝動装置と結合されている。駆動軸26はベルトドライブ27を介して上軸6と駆動結合されている。
【0034】
図2および図3はミシン1の複数のセンサアッセンブリの詳細を示している。センサアッセンブリはミスステッチの検知に用いられ、同時に汚染を検出することができる。
【0035】
第1のセンサアッセンブリ28は、糸輪形成コントローラの形態でミスステッチの検知のために用いられる。上糸ミスステッチセンサアッセンブリとして実施されている糸輪センサアッセンブリ28は、縫製糸13が、すなわち上糸が、ミシン1のステッチ形成プロセスに所望通りに関与して、ルーパー21の糸輪形成のためにルーパー先端部23によって正確に把持されているかどうかを検出する。
【0036】
糸輪センサアッセンブリ28は光源/検出ユニット29を有し、光源/検出ユニットはルーパーケース22の横に位置するようにフレームに固定して基板ハウジング内に取り付けられている。糸輪センサアッセンブリ28は、検出光線30を発生させるための光源を有している。光源としては赤色LEDまたは赤色レーザーダイオードを使用する。検出光線30のための他の光源を使用してもよい。さらに、光源/検出ユニット29は、検出光線30を検出するためのフォトダイオードの形態のセンサを有している。このセンサは光源の横に位置するように光源/検出ユニット29の適当なハウジング受容部内に収納されている。前記センサは単独のフォトダイオードとして実施されている。これとは択一的に、複数のフォトダイオードを備えた位置解像度センサ(例えば4分割フォトセンサ)として実施されていてよい。センサはフォトトランジスタまたは一般に受光素子として実施されていてよい。位置解像度センサとして実施する場合は、該センサはCCDセンサまたはCMOSセンサとして実施されていてよい。
【0037】
ルーパー21は、検出光線30の光路に対し相対的に次のように配置され、すなわちルーパーが完全周回ルーパー運動軌道内で検出光線30を遮断しないように配置されている。
【0038】
糸輪センサアッセンブリ28の光源は、糸輪センサアッセンブリ28のセンサに対し次のように配向されており、すなわち検出光線30がミシン1の下糸ボビンケース32の反射部分31を介して案内されるように配向されている。反射部分31は、ミシンが作動しているときに上糸13が通過する。ルーパー21は下糸ボビンケース32のまわりを周回する。
【0039】
下糸ボビンケース32の反射部分31は次のように選定され、すなわち上糸13が通過して検出光線30を遮断するときに、該反射部分31を上糸13が接触してかすめるように選定されている。このようにして上糸13は反射部分31を磨いて、該反射部分を汚染から保護する。
【0040】
下糸ボビンケース32内には、ミシン1の下糸のためのボビン33aが収納されている。
【0041】
糸輪センサアッセンブリ28は、さらに、図1に概略を示した評価ユニット33を有している。評価ユニット33は糸輪センサアッセンブリ28のセンサと信号接続している。評価ユニット33は、糸輪センサアッセンブリ28のセンサによって発生した検出信号を時間分解評価するために用いられる。評価ユニット33は、上糸13が通過したことで検出信号が変化するかどうかを測定する。もし対応する信号変化が検知されれば、ミシン1の作動時に上糸13なしで縫製されないよう保証する。もしミシン1の作動時の所定時間内に、上糸13の通過と検出光線30の遮断とによる対応する信号変化が評価ユニット33によって測定されなければ、評価ユニット33によってミスステッチ信号が出力され、ミスステッチまたは誤表示の出力のもとにミシン1の作動が自動的に停止される。
【0042】
糸輪センサアッセンブリ28のセンサは、検出光線30の光路内にダイレクトに配置されている。それ故、上糸13によるこの光路の遮断時に、下糸ボビンケース32の高反射構成の反射部分31に比べて反射検出光30の反射が減少していることに基づき、シグナルリダクションが生じていることが評価ユニット33によって測定される。
【0043】
糸輪センサアッセンブリ28の、図示していない択一的な実施形態では、センサは散乱検出光を測定するように配置され、すなわち検出光線30の光路内にダイレクトに配置されない。下糸ボビンケースによる検出光の散乱は、反射部分31を通過する上糸13による散乱とは異なり、通常はより少なく、その結果糸輪センサアッセンブリのこの択一的実施形態では、上糸13が反射部分を通過したときに、検出した検出光散乱信号の変化、特に増大が測定される。このケースでは、バックグラウンド信号が消滅している、または、非常に少ないゼロ測定が可能である。
【0044】
評価ユニット33は、ステッチ形成段階の間の少なくとも1つの時間部分で発生した検出信号の移動平均値を形成するように構成されている。この移動平均値は、例えば10ステッチまたはそれ以上のステッチにわたる平均を表すものであるが、該移動平均値を評価ユニット33内で予設定値と比較する。移動平均値が予設定値と公差範囲以上に異なっている場合には、評価ユニットは、信号「ミスステッチ 上糸なし」とは異なる信号「汚染」を出力する。信号「汚染」は、たとえば、そうでなければ緑色に発光するようにミシン1に設けた信号灯の色変化によって生じさせることができる。信号灯は、汚染が少ないときにはその色をまず黄色へ変化させ、汚染がよりひどくなると赤色へ変化させる。出力された汚染信号によっては、評価ユニット33が適当な処置を自動的に制御してもよく、たとえばミシン1を停止させてよく、或いは、特にミシン1の汚染した部品をクリーリングするためのガス洗浄装置を始動させてもよい。
【0045】
これとは択一的に、または、これに加えて、評価ユニット33は、ステッチ形成段階の間の異なる時間部分で発生した少なくとも2つの検出信号の移動平均値を形成するように構成されていてもよい。この場合評価はステッチ形成と位相同期して行われ、たとえば縫製物部分17に縫製針10を穿刺する前の1つの測定信号と、穿刺後の第2の測定信号とを検出し、これら2つの測定信号を介して、異なるステッチからそれぞれ1つの移動平均値を形成させる。このようにして発生させた複数の検出信号は、2つの検出信号の時間的推移の比較を可能にさせ、さらに汚染検出に関する妥当性を改善させる。このようにして、汚染とは別の原因を持つ検出信号の強度に対する影響を選別または抑止する確率が高くなる。
【0046】
このようにして糸輪センサアッセンブリ28を介して検出することのできる汚染作用は、特に光源側の汚れおよびセンサ側の汚れに関わり、或いは、たとえば検出光線30の光路内の他の部位に当たる毛屑に関わる。
【0047】
位相同期のため、評価ユニット33はステッチ形成工具10,21の少なくとも1つを駆動するためのモータと信号接続しており、特にミシン1の主駆動部と信号接続している。
【0048】
検出の位相同期は、縫製針13がかすめ通過したこと、従って検出光線30が遮断されたことが予想される場合に、検出信号を正確に検出するために利用することができる。さらに、上糸ミスステッチ検出以外にも、ステッチ形成が全体的に正確に進行しているかどうか、すなわち針糸が正確な時点で下糸ボビンケースの所定部分にわたって延びているかどうかを検知することもでき、このことはステッチ形成の際の糸結節部の品質に影響を与えることができる。検出の位相同期は、測定の信頼性向上にも利用することができる。これによって誤測定を回避できる。
【0049】
糸輪センサアッセンブリ28とは独立に、ミシン1は、図示していない他の汚染センサアッセンブリをも有していてよく、この他の汚染センサアッセンブリは、基本的には糸輪センサアッセンブリと同様に構成されているが、異なる点は、1つのミシン構成要素の他の部分を、下糸ボビンケース32の反射部分31に対応する反射部分として利用することである。この種の汚染センサアッセンブリは、光源と該光源から発生する検出光線を介して関連付けられるセンサとから成る少なくとも2対を有することができ、特に光源/検出ユニット29のような2つの光源/検出ユニットを有することができる。これらのユニットは、検出光線の案内部と、1つのミシン構成要素の適当な反射部分とを介して、ミシン1の種々の場所での汚染を測定することができる。評価ユニット33内で発生する、これら光源/検出ユニットの検出信号の移動平均値を比較することで、汚染度測定の信頼性および精度を改善させることができる。
【0050】
ミシン1は、さらに、ボビン33aの回転を監視するための回転監視センサアッセンブリ34を有している。
【0051】
回転監視センサアッセンブリ34は光源/検出ユニット35を有し、該光源/検出ユニットは基本的には光源/検出ユニット29と構成的に同じように実施されており、同様に糸輪センサアッセンブリ28に隣接するようにフレームに固定して取り付けられている。回転監視センサアッセンブリ34の光源/検出ユニット35も、検出光線36を発生させるための光源と、この検出光線36を検出するためのセンサとを有している。回転監視センサアッセンブリ34のセンサは、検出光線36の光路内にダイレクトに配置されている。
【0052】
回転監視センサアッセンブリ34の光源/検出ユニット35の場合、光源はセンサに対し次のように配向され、すなわち検出光線36がミシン1の下糸ボビン33aの反射部分37(図3を参照)を介して案内されるように配向されている。回転監視センサアッセンブリ34にも、このセンサによって生じた検出信号を時間分解評価するために評価ユニット33が信号接続している。
【0053】
ボビン33aは周側に複数の反射部分37を有している。これら反射部分は、ボビン33aの周部分に位置するように該ボビンの側壁38にファセットとして実施されている。図3に図示したボビン33aの実施形態の場合、全部で6つの反射部分37が設けられている。これら反射部分はボビン33aの周方向に均等に配分され、その結果ボビンが60゜回転すると、1つの反射部分37は図3において現時点で反射している部分37の位置へ進む。ボビン33aの構成によっては、2つの反射部分37、少なくとも4つの反射部分37、4つ以上の反射部分37、6つ以上、10個以上または12個の反射部分37、或いはそれ以上の反射部分37を設けてよい。反射部分37は、ボビン33aの周方向にそれぞれ同じ周方向延在距離を有している。反射部分37の択一的構成では、反射部分は、ボビン33aの周方向に不均等に配分され、および/または、ボビン33aの周方向に異なる周方向延在距離を有する。反射部分37のこの種の配置構成では、反射信号を評価する場合、ボビン33aの回転方向の判別が可能である。これは、ミシン1の特殊な作動状態を検知するために利用できる。
【0054】
図示した実施形態の場合、反射部分37は、巻き戻される下糸のための空間を上側で閉鎖している上部ボビン壁内に次のように実施されており、すなわちそれぞれの反射部分37の場所でボビン33aのボビン全直径がわずかに減少するように実施されている。これとは択一的に、反射部分37は次のように実施されていてもよく、すなわちこれら反射部分がボビン壁の軸線方向全延在距離の一部分にわたってのみ延在するように実施されていてもよく、その結果たとえば上側に細条部が残り、上部ボビン壁は、そこに複数の反射部分37が取り付けられているにもかかわらず、その全周にわたってボビン全直径を維持する。この場合、上部ボビン壁とこれに境を接しているボビンケースとの間の隙間を回避できる。
【0055】
少なくとも1つの反射部分37は、検出光線36を高反射するように形成されていてよい。反射部分37は平面または凹状に形成されていてよい。凹状に形成する場合、反射部分37の曲率半径は、反射部分37が光源を光源/検出ユニットのセンサに結像させるように選定されていてよい。
【0056】
ミシン1の作動時には、下糸が消費されるためにボビン33aが回転する。複数の反射部分37の1つが回転監視センサアッセンブリ34の検出光をそのセンサで反射したときには常に、センサ信号が発生し、該センサ信号は評価ユニット33で評価することができる。すなわち評価ユニット33は、ボビン33aが回転しているかどうかを検知し、その後信号が返ってこなければ、ボビン33aが止まって下糸が消費されないことを検出する。この場合に評価ユニット33は信号「ミスステッチ 下糸なし」を出力する。同時に評価ユニット33はミシン1の作動を自動的に停止させることができる。
【0057】
回転監視センサアッセンブリ34も、前述したように汚染検出に関連させることができる。
【0058】
評価ユニット33は検出信号の移動平均値を形成する。これとは択一的に、または、これに加えて、評価ユニット33は、ステッチ形成段階の間の1つの時間部分で発生する少なくとも1つの検出信号の移動平均値を形成してよく、すなわち特に位相同期移動平均値を形成してよい。
【0059】
適当なセンサアッセンブリの検出光は、ボビンケースの窓を通じて次のように案内されていてよく、すなわちボビン33aの中央本体の外側側壁39(図3を参照)によって反射されるように案内されていてよい。このようなセンサアッセンブリの光源から放射される検出光は、側壁39で反射した後、このセンサアッセンブリの付設のセンサによって検出される。この反射は、ボビンが完全に巻き戻されて、ボビン上に下糸がなくなった場合にのみ行われる。このようにしてこのようなセンサアッセンブリによって糸残量が検知される。糸輪センサアッセンブリ28の変形実施形態では、検出光線のための反射部分はルーパー21のルーパー先端部23に形成されている。この場合、ミシン作動時にこの反射部分を上糸が通過するかどうかが測定される。糸輪センサアッセンブリのこの変形実施形態の機能は、糸輪センサアッセンブリ28との関連ですでに説明した機能に相当している。
【0060】
図4は、図2および図3の配置構成の代わりに使用できる、糸輪センサアッセンブリの配置構成に対する2つの他の実施形態を例示したものである。糸輪センサアッセンブリのこれら2つの実施形態を、以下では参照符号28aと28bとで表す。
【0061】
糸輪センサアッセンブリ28aは、前述したようにルーパー21のルーパー先端部23に形成されている反射部分と協働して検出光線を検知するように構成されている。
【0062】
これとは択一的な糸輪センサアッセンブリ28bは、下糸ボビンケース32に設けた反射部分40と協働するように構成されている。図2および図3の糸輪センサアッセンブリ28の配置構成で利用される反射部分31と比べて、反射部分40は、ルーパー31を上から見て、反時計方向に間隔をもって配置されている。糸輪センサアッセンブリ28bを用いても、ミシン作動時に反射部分40を上糸が通過するかどうかが測定される。その他の点では、糸輪センサアッセンブリ28bの機能は、糸輪センサアッセンブリ28との関連ですでに説明した機能に対応している。
【符号の説明】
【0063】
1 ミシン
10 針
13 糸
21 ルーパー
23,31,40 反射部分
28,28a,28b 糸輪センサアッセンブリ
30,36 検出光線
32 下糸ボビンケース
33 評価ユニット
34 回転監視センサアッセンブリ
図1
図2
図3
図4