特許第6670582号(P6670582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670582
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/30 20200101AFI20200316BHJP
   D06F 39/08 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   D06F33/02 T
   D06F39/08 311E
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-208015(P2015-208015)
(22)【出願日】2015年10月22日
(65)【公開番号】特開2017-77437(P2017-77437A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小倉 範史
(72)【発明者】
【氏名】西脇 智
(72)【発明者】
【氏名】榊原 基也
(72)【発明者】
【氏名】秋田 真吾
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−300211(JP,A)
【文献】 特開平04−008396(JP,A)
【文献】 特開平10−300210(JP,A)
【文献】 特開2008−151240(JP,A)
【文献】 特開2004−222969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30
D06F 39/08
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯水する水槽と、
前記水槽内の水を排水する排水経路に設けられ、閉方向に付勢された排水弁と、
前記排水弁を開閉するギヤドモータと、
前記ギヤドモータの回転動作により回転する回転部と、
前記回転部に連結され、前記回転部の回転を前記排水弁の開閉方向の動きに変換する連結部材と、
前記回転部の回転角に応じて、前記排水弁の開位置又は閉位置を検知する回転角スイッチと、
前記回転角スイッチから、前記排水弁の開位置又は閉位置の信号の入力を受けて前記ギヤドモータのオン、オフ制御を行う制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記回転角スイッチが前記排水弁が開位置又は閉位置となったことを検知してから、所定時間前記ギヤドモータを駆動して前記回転部を回転動作させることで、前記排水弁の開動作又は閉動作制御を行う洗濯機において、
前記制御装置は、前記排水弁の開動作又は閉動作完了後の状態において、前記回転角スイッチの状態が、開動作の場合には閉位置となった場合に、再度開動作を行い、閉動作の場合には開位置となった場合に、再度閉動作を行うリトライ動作制御を実行し、
前記リトライ動作制御時は、前記所定時間を変化させる制御を行う洗濯機。
【請求項2】
さらに、記憶手段を備えており、
前回の運転時における前記所定時間が変化された場合は、当該変化後の所定時間を前記記憶手段に記憶し、前記記憶手段から読み出した前記変化後の所定時間を、今回の運転時における所定時間として動作させる制御を行う請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御装置が、前記回転部が前記排水弁の開位置又は閉位置となってから所定時間、前記ギヤドモータを駆動して前記回転部を回転動作させる制御を行った後、次に前記ギヤドモータを動作させる場合に、
前記制御装置は、前記回転部の回転動作開始から、前記回転角スイッチが前記排水弁の開位置または閉位置の切り替わりを検知するまでの時間の変化に応じて、前記所定時間を変化させる制御を行う請求項1又は2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機においては、排水弁を開閉するためにギヤドモータが用いられている。このギヤドモータの内部には、粘性を有したグリス等が設けられている。このグリスの粘性による制動力を利用し、ギヤドモータが所望の位置で停止するように制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−24375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、温度や洗濯機の運転回数、ギヤドモータの動作回数、動作時間等により、ギヤドモータの制動力に変化が生じるため、狙い通りの位置にギヤドモータを停止させることが困難となり、排水弁の開閉のリトライ動作を繰り返して最終的に異常報知となってしまうことがあった。
【0005】
そこで、温度や洗濯機の運転回数、ギヤドモータの動作回数、動作時間等により、ギヤドモータの制動力に変化が生じても、狙いの位置にギヤドモータを停止させることができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る洗濯機は、水を貯水する水槽と、前記水槽内の水を排水する排水経路に設けられ、閉方向に付勢された排水弁と、前記排水弁を開閉するギヤドモータと、前記ギヤドモータの回転動作により回転する回転部と、前記回転部に連結され、前記回転部の回転を前記排水弁の開閉方向の動きに変換する連結部材と、前記回転部の回転角に応じて、前記排水弁の開位置又は閉位置を検知する回転角スイッチと、前記回転角スイッチから、前記排水弁の開位置又は閉位置の信号の入力を受けて前記ギヤドモータのオン、オフ制御を行う制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記回転角スイッチが前記排水弁が開位置又は閉位置となったことを検知してから、所定時間前記ギヤドモータを駆動して前記回転部を回転動作させることで、前記排水弁の開動作又は閉動作制御を行う。前記制御装置は、前記排水弁の開動作又は閉動作完了後の状態において、前記回転角スイッチの状態が、開動作の場合には閉位置となった場合に、再度開動作を行い、閉動作の場合には開位置となった場合に、再度閉動作を行うリトライ動作制御を実行し、前記リトライ動作制御時は、前記所定時間を変化させる制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態による洗濯機の全体構成を概略的に示す縦断側面図
図2】電気的構成を概略的に示す図
図3】(a)は排水弁とこれを開閉する排水弁用ギヤドモータの構成を模式的に示した図、(b)は回転角スイッチの回転角とオン/オフの関係を示す図
図4】排水弁用ギヤドモータの回転角と回転角スイッチのオン/オフの関係を模式的に示すタイミングチャート
図5】所定時間(A)、及び所定時間(B)の一例
図6】リトライ動作制御時において、温度に応じて所定時間(B)を変化させた例
図7】リトライ動作制御時において、洗濯機の運転回数に応じて所定時間(B)を変化させた例
図8】リトライ動作制御時において、排水弁用ギヤドモータの動作回数に応じて所定時間(B)を変化させた例
図9】リトライ動作制御時において、排水弁用ギヤドモータの動作時間に応じて所定時間(B)を変化させた例
図10】リトライ動作制御時において、排水弁用ギヤドモータの角度ずれ量に応じて所定時間(B)を変化させた例
図11】リトライ動作制御時において、リトライ回数に応じて所定時間(B)を変化させた例
図12】排水弁を開く動作の手順を示すフローチャート
図13】排水弁を閉じる動作の手順を示すフローチャート
図14】温度により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャート
図15】洗濯機の運転回数により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャート
図16】排水弁用ギヤドモータの動作回数により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャート
図17】排水弁用ギヤドモータの動作時間により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャート
図18】排水弁用ギヤドモータの角度ずれ量により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャート
図19】リトライ回数により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態による洗濯機を、図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
実施形態について図1から図19を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態による洗濯機の全体構成を概略的に示す縦断側面図であり、図2はその電気的構成を概略的に示す図である。図3(a)は排水弁10とこれを開閉する排水弁用ギヤドモータ12の構成を模式的に示した図、図3(b)は回転角スイッチ50の回転角とオン/オフの関係を示す図である。
【0010】
図1に示すように、洗濯機1は、ほぼ矩形箱状をなす外箱2を有している。外箱2内には、脱水時などに水を受ける水槽3が弾性吊持機構4を介して設けられている。水槽3内には、回転槽5が回転可能に設けられている。回転槽5は、内部に洗濯物が収容される洗い槽兼脱水槽として機能する。回転槽5内の底部には、水流生成用の撹拌体6が設けられている。
【0011】
水槽3の外底部には、インバータ駆動方式のアウタロータ形のモータ7、およびそのモータ7の回転駆動力を回転槽5及び撹拌体6へ伝達する回転伝達機構8が設けられている。これらモータ7及び回転伝達機構8により、洗い行程時などにおいては、撹拌体6が正逆回転されて回転槽5内に撹拌による水流が生成され、脱水行程時などにおいては、回転槽5が撹拌体6と一体的に高速回転されるように構成されている。
【0012】
水槽3の底部には、回転槽5からの排水を行う排水経路たる排水路9が設けられている。排水路9には、排水弁10を介して排水ホース11が接続されている。排水弁10は、排水弁用ギヤドモータ12(図3参照)により開閉される。さらに、水槽3の底部には、水槽3からの排水を行う排水口13(排水経路)が設けられている。排水口13は、排水ホース11に接続されている。排水路9には、エアトラップ14が設けられている。
【0013】
回転槽5の上端部には、円環状のバランスリング15が設けられている。また、回転槽5の上端部の壁面には、脱水孔16が複数形成されている。これにより、脱水時において、回転槽5内の水は、回転槽5とバランスリング15との間、および脱水孔16を通って回転槽5の外側に移動するようになる。また、水槽3の上端部には、略円環状をなす桶カバー17が設けられている。桶カバー17の開口部は、回転槽5の上面開口部に連通している。
【0014】
外箱2の上端部には、プラスチック製のトップカバー18が設けられている。トップカバー18は、中央にほぼ円形の洗濯物出入口を有する矩形枠状をなすと共に、薄形の中空箱状をなしている。トップカバー18の上面部には、洗濯物出入口を開閉するための二つ折りタイプの蓋19が設けられている。
【0015】
トップカバー18の後辺部には、回転槽5内に水道水を供給するための給水機構部20が設けられている。給水機構部20は、給水弁22を途中に有する第1給水管21と、注水ケース23と、第2給水管24とを有している。第1給水管21は、一端部が水道の蛇口に接続されている図示しないホースと連結し、他端部が注水ケース23と連結している。注水ケース23は、箱状をなし、内部に洗剤や柔軟剤が適宜収容されるものである。第2給水管24は、蛇腹状をなし、一端部が注水ケース23と連結し、他端部が回転槽5の上端部まで延びている。これにより、給水弁22が開放すると、水道水が図示しないホース、第1給水管21、給水弁22、注水ケース23および第2給水管24を通って回転槽5内に供給される。また、水道水が注水ケース23内を通ることにより、注水ケース23内に収容されている洗剤なども、水道水とともに回転槽5内に供給される。
【0016】
前記給水弁22は図示しない給水弁用駆動装置例えば電磁ソレノイドを備えていて、この電磁ソレノイドのオンオフによって開閉される。
トップカバー18の前部の内部には、制御手段を構成する制御装置32が設けられ、トップカバー18の前部には、操作パネル31が設けられている。この操作パネル31には、図示しないが、電源スイッチ、スタート/一時停止スイッチ、洗濯のコースを選択するコース選択スイッチ、洗濯の各行程の行程時間や実行回数などを設定するマニュアル設定スイッチ、水位設定スイッチなどが設けられている。エアトラップ14内の圧力は、図示しないエアチューブを介して設けられた水位センサ40(図2参照)によって検出される。さらに、蓋19には、蓋19の開閉を検知するための図示しない蓋スイッチが設けられている。
【0017】
図2に示すように、制御装置32は、マイクロコンピュータを主体に構成されたもので、洗濯機1の作動全般を制御する制御手段として機能する。制御装置32には、操作パネル31に設けられた各スイッチから各種信号が、水槽3内の水位を検知する水位センサ40からは水位検知信号が、外気温度を検知する温度センサ41、および水槽3内の温度を検知する水槽温度センサ42からは温度検知信号が、モータ7の回転速度を検知する回転センサ46からは回転速度検知信号が入力されるように構成されている。制御装置32には、記憶手段としての不揮発性メモリ44が接続されている。また、制御装置32には、排水弁用ギヤドモータ12に設けられた回転角スイッチ50からオン/オフ信号が入力されるように構成されている。また、制御装置32には、チェックタイマ49が接続されており、チェックタイマ49を制御するとともにチェックタイマ49から時刻情報が入力される。
【0018】
制御装置32は、各入力信号及び予め記憶された制御プログラムに基づいて、操作パネル31の表示部48、モータ47、水槽3内へ給水するための給水弁22、排水弁用ギヤドモータ12を、それぞれ駆動回路34を介して制御するように構成されている。
【0019】
図3(a)に示すように、排水弁10には、連結部材12bの一端が接続されている。排水弁用ギヤドモータ12は回転部12aを有している。排水弁用ギヤドモータ12は内部に図示しないモータとギアを有しており、モータの回転はギアを介して回転部12aに伝えられる。排水弁10内には連結部材12bに連結された図示しないバネ等の弾性体が設けられている。これにより、連結部材12bは、排水弁10方向に引っ張り力が与えられており、連結部材12bは排水弁10の方向すなわち排水弁10の閉方向に付勢されている。回転部12aは図に示す矢印の方向、すなわち反時計回りの方向に回転する。
【0020】
連結部材12bの他端には、連結穴12dが設けられており、回転部12aの中心軸から偏心した位置に設けられた軸受部12cに枢設されている。上記構成により、排水弁用ギヤドモータ12、回転部12a、連結部材12b、軸受部12cはクランク機構を構成する。これにより、排水弁用ギヤドモータ12の回転運動は、連結部材12bの直線的な往復運動に変換され、この連結部材12bの往復運動により、排水弁10の開閉が制御される。
【0021】
また、排水弁用ギヤドモータ12の内部には、所定の粘性を有したグリス等が設けられている。このグリスの粘性による制動力を利用することにより排水弁用ギヤドモータ12の回転を抑制し、連結部材12bの排水弁10方向への引っ張り力に対して、回転部12aの回転をストップさせる対抗力を生成している。
【0022】
排水弁10は、連結部材12bが排水弁10側に移動した場合、すなわち連結部材12bが図における右側に位置した場合に閉鎖され、排水がストップする。逆に、排水弁10は、連結部材12bが排水弁10とは反対側、すなわち排水弁用ギヤドモータ12側に移動した位置において、言い換えると、連結部材12bが図において左側に位置した場合に開放され、水槽3内の水が排水される。
【0023】
図3(b)は排水弁用ギヤドモータ12の回転角に応じて作用する回転角スイッチ50のオン/オフの位置、すなわち開位置及び閉位置を模式的に示したものである。基準線Sは、排水弁10と排水弁用ギヤドモータ12を結ぶ線を示している。回転角は軸受部12cの位置に応じて決められる。軸受部12cの位置が、基準線Sに一致する位置を基準すなわち0度とする。そして、回転部12aを反時計回り方向に回転させる場合の軸受部12cが、−θから+θの角度範囲では回転角スイッチ50はオフとなり、+θから360−θまでの角度範囲では回転角スイッチ50はオンとなるように設定されている。θは例えば35度に設定される。θが35度の場合は、−35度から+35度の範囲でオフとなり、+35度から+325度までの範囲でオンとなる。このように、回転角スイッチ50は排水弁用ギヤドモータ12の回転角、又は回転角の範囲を検知する。回転角スイッチ50は回転角を検知することにより、排水弁10の開位置、閉位置を検知し、排水弁用ギヤドモータ12のオン/オフが切り替わる。
【0024】
図4は、排水弁用ギヤドモータ12の回転角と回転角スイッチ50のオン/オフの関係を模式的に示すタイミングチャートであり、θ=35度とした場合のタイミングチャートを示している。排水弁用ギヤドモータ12の回転角が35度(+θ)で回転角スイッチ50がオンとなり、325度(−θ)でオフとなる。
【0025】
洗濯機1の排水弁10は、閉じる状態への復元力が常に働いている状態となっている。排水弁10は、この復元力に逆らう形で回転角スイッチ50などの回転力を利用して連結部材12bを開方向へ引っ張ることで排水弁10を開くように構成されている。
【0026】
回転角スイッチ50を利用する場合は、排水弁10を確実に開状態、閉状態とするために正確な位置でモータを停止させる必要がある。排水弁用ギヤドモータ12の回転によってオンオフが切り替わる回転角スイッチ50が排水弁用ギヤドモータ12内に設けられている。制御装置32は、回転角スイッチ50のオンオフの切り替わり、すなわち排水弁10の閉位置及び開位置を検知し、そこから所定時間、回転部12aを駆動した後に、排水弁用ギヤドモータ12を停止するように制御している。
【0027】
このオンオフの切り替わりタイミングにおいて、排水弁用ギヤドモータ12の回転角が狙い通りの位置にあれば、排水弁用ギヤドモータ12を停止する狙いの位置までの動作時間を設定すれば、正確な位置で排水弁用ギヤドモータ12を停止できる。図5に排水弁用ギヤドモータ12が正常に動作した場合の所定期間(A)、及び所定期間(B)の一例を示す。
【0028】
排水弁10は、閉じる状態への復元力が常に働いているため、閉動作の際は排水弁用ギヤドモータ12の動作方向が排水弁の閉方向と一致する。復元力と排水弁用ギヤドモータ12の回転力の作用する方向が一致し、復元力と回転力が重畳して働く。これによって排水弁用ギヤドモータ12を回転させつつ排水弁を閉じるように動作する。排水弁用ギヤドモータ12自体にはグリス等による制動力が存在するため、排水弁10は一瞬で閉状態になることもなく、狙い通りの位置に排水弁用ギヤドモータ12を停止させることができる。しかし、温度や経年劣化により排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下してしまう場合がある。排水弁用ギヤドモータ12の制動力の低下は、例えば、内部に塗布されているグリスの粘性が変化することにより生ずる。この場合、排水弁10の閉方向への復元力で一瞬にして排水弁10が閉状態となり、排水弁用ギヤドモータ12が狙いの位置から行き過ぎた位置まで回転してしまう。その行き過ぎた位置で回転角スイッチ50の切り替わりを検知し、そこから所定時間(B)だけ動作した後に停止することになる。このため、狙いの位置とは異なる位置すなわち、行き過ぎた位置で排水弁用ギヤドモータ12が停止することになる。排水弁用ギヤドモータ12が動作しすぎると、回転角スイッチ50の切り替わり位置を超えるようになってしまい、その場合、排水弁10から水漏れすなわち排水が発生する可能性が生ずる。水漏れが発生すると、再度閉動作を実行する必要があり、動作が停滞してしまう。さらにはそれが繰り返される場合は、制御装置32は排水弁用ギヤドモータ12の故障と判定し、異常報知がなされる。
【0029】
そこで、本実施形態では、排水弁用ギヤドモータ12の切り替わりを検知してからの所定動作時間を状況に応じて変えるようにする。例えば温度や洗濯機の運転回数、排水弁用ギヤドモータ12の動作回数、排水弁用ギヤドモータ12の動作時間等に応じて時間を変える。排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下したとしても、それを想定した動作をすることで、停止位置がずれないようにできる。または、停止位置から回転角スイッチ50の切り替わり位置までの動作時間から、予め想定していた停止位置からのずれを把握して所定の動作時間を変化させる。排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下したとしても、それによる停止位置のずれを把握することでそのずれを補正した動作を行うことができる。
【0030】
次に、排水弁10を開く動作について説明する。図12は排水弁10を開く動作の手順を示すフローチャートである。図12に示すように、制御装置32は排水弁10の開動作を開始すると、チェックタイマ49による時刻カウントをスタートする(S1)。制御装置32は、排水弁用ギヤドモータ12を動作させ(S2)、回転角スイッチ50がオフ状態(閉状態)からオン状態すなわち開状態に切り替わったことを検知したか否かを判定する(S3)。回転角スイッチ50がオン状態に切り替わったことを検知しない場合は(S3:NO)、あらかじめ定められたリミット時間が経過したか否かを判定する(S8)。リミット時間としては、例えば、50Hz動作では60秒、60Hz動作では50秒である。リミット時間が経過していない場合は(S8:NO)、排水弁用ギヤドモータ12の動作を継続する。リミット時間が経過した場合は(S8:YES)、チェックタイマ49をクリアし(S9)、排水弁用ギヤドモータ12を停止し(S10)、異常報知を行う。
【0031】
S3において、回転角スイッチ50がオン状態すなわち開位置に切り替わったことを検知した場合は(S3:YES)、所定時間(A)をセットし(S4)、所定時間(A)の期間、排水弁用ギヤドモータ12を動作させる(S5)。回転角スイッチ50がオン状態に切り替わったことを検知した時、排水弁用ギヤドモータ12は、図4の回転角35度の位置となっている。次に、制御装置32は、所定時間(A)が経過したか否かを判定し(S6)、所定時間(A)が経過していない場合は(S6:NO)、排水弁用ギヤドモータ12の動作を継続する。所定時間(A)が経過した場合は(S6:YES)、排水弁用ギヤドモータ12を停止させ(S7)、動作を終了する。所定時間(A)が経過した時、排水弁用ギヤドモータ12は、例えば図4の回転角165度から180度近傍の位置、すなわち排水弁10が全開となる位置となっている。
【0032】
次に、排水弁10を閉じる動作について説明する。図13は排水弁10を閉じる動作の手順を示すフローチャートである。図13に示すように、制御装置32が排水弁10の閉動作を開始すると、チェックタイマ49による時刻カウントをスタートする(S11)。次に制御装置32は、排水弁用ギヤドモータ12を動作させ(S12)、回転角スイッチ50がオン状態すなわち開状態からオフ状態すなわち閉状態に切り替わったか否かを判定する(S13)。回転角スイッチ50がオフ状態に切り替わったことを検知しない場合は(S13:NO)、あらかじめ定められたリミット時間が経過したか否かを判定する(S18)。リミット時間としては、例えば、50Hz動作では60秒、60Hz動作では50秒である。リミット時間が経過していない場合は(S18:NO)、制御装置32は排水弁用ギヤドモータ12の動作を継続する。リミット時間が経過した場合は(S18:YES)、制御装置32はチェックタイマ49をクリアし(S19)、排水弁用ギヤドモータ12を停止し(S20)、異常報知を行う。
【0033】
回転角スイッチ50がオフ状態(閉位置)に切り替わったことを検知した場合は(S13:YES)、所定時間(B)をセットする(S14)。この時、排水弁用ギヤドモータ12は図4の回転角325度近傍の位置となっている。次いで、所定時間(B)の期間、排水弁用ギヤドモータ12を動作させる(S15)。次に、制御装置32は、所定時間(B)が経過したか否かを判定する(S16)。所定時間が経過していない場合は(S16:NO)、排水弁用ギヤドモータ12の動作を継続する。所定時間(B)が経過した場合には(S16:YES)、排水弁用ギヤドモータ12を停止させ(S17)、動作を終了する。この時、排水弁用ギヤドモータ12は、例えば図4の回転角360度近傍の位置、すなわち排水弁10が全閉となる位置となっている。
【0034】
所定時間(A)は排水弁10が全開となる位置となるように設定されており、所定時間(B)は排水弁10が全閉となる位置となるように設定されている。排水弁10を閉じる場合の所定時間(B)は、以下に説明するように、状況によって変化される。
【0035】
排水弁10を開く場合は、排水弁10を閉じる復元力に逆らって排水弁用ギヤドモータ12が回転する。回転角スイッチ50がオン状態すなわち開位置に切り替わる位置は略正確であり、オン状態を検知してから、所定時間(A)だけ排水弁用ギヤドモータ12を動作させれば排水弁10が全開となる位置に正確に回転角スイッチ50を停止させることができる。すなわち、排水弁用ギヤドモータ12は過剰に回転してしまうことは生じにくい。
【0036】
一方、排水弁10を閉じる場合は、排水弁10を閉じる復元力と同方向に排水弁用ギヤドモータ12が回転するため、復元力の影響を受けやすい。すなわち、排水弁用ギヤドモータ12は、回転部12aによる回転力に重畳して排水弁10の復元力が加算される状態で動作する。排水弁用ギヤドモータ12の制動力が劣化していないうちは、制動力によって、排水弁用ギヤドモータ12が過剰に回転することが抑制される。従って、復元力により排水弁用ギヤドモータ12が動作したとしても、回転角スイッチ50がオフ状態になる手前(図4の回転角度325度の位置の手前付近)で復元力の効果がなくなるため、排水弁用ギヤドモータ12がオフ状態すなわち閉位置に切り替わったのを検知した後、排水弁用ギヤドモータ12は予定された位置、すなわち図4の回転角360度付近で停止する。従って、次に、排水弁10を開状態にする場合、あらかじめ定められた時間、すなわち図5に示す所定時間(A)をもって排水弁用ギヤドモータ12を駆動すれば、排水弁10が全開する位置すなわち図4の回転角180度付近で排水弁用ギヤドモータ12を停止させることができる。
【0037】
しかし、排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下すると、復元力により回転角スイッチ50がオフ状態になる位置を超える位置すなわち図4の回転角325度を超える位置、又は、更に過剰に行き過ぎてしまい、排水弁10が全閉する位置(図4の回転角360度付近)まで排水弁用ギヤドモータ12が動作してしまう。制御装置32は、その行き過ぎた位置で回転角スイッチ50がオフ状態に切り替わったと検知して、そこから所定時間(B)だけ排水弁用ギヤドモータ12を動作させた後に停止する。そうすると、排水弁10が全閉状態でない位置、例えば図4の回転角が+35度付近の位置になる。例えば、図4の回転角が+35度を超える位置まで排水弁用ギヤドモータ12が回転してしまい、本来回転角スイッチ50がオフとなる位置で停止する予定のところが、回転角スイッチ50がオン状態に切り替わってしまう位置で停止する可能性がある。回転角スイッチ50がオン状態になると、排水弁10が閉まっておらず水漏れする状態すなわち排水される状態になるため、再度排水弁10を閉じる動作、すなわちリトライ動作制御を行うことになる。
【0038】
しかし、何らかの補正等を行わない限り、結局排水弁用ギヤドモータ12の停止位置は前回と変わらない。従って、同じように閉動作リトライ動作を複数回繰り返した後、最終的に異常報知となってしまう。
【0039】
実施形態では、排水弁10を閉じる際に所定時間(B)を排水弁用ギヤドモータ12の制動力の低下状況に応じて変化させるようにする。すなわち補正することで、排水弁用ギヤドモータ12の停止位置を排水弁10が全閉となる位置に調整することができる。図6から図11に、排水弁用ギヤドモータ12の制動力の変化に応じて変化させられる所定期間(B)の一例を示す。図6から図11に示すように、リトライ動作制御時において、温度、洗濯機1の運転回数、排水弁用ギヤドモータ12の動作回数、排水弁用ギヤドモータ12の動作時間、排水弁用ギヤドモータ12の角度ずれ、リトライ回数等に応じて、所定時間(B)を変化させる。具体的には、温度、洗濯機1の運転回数、排水弁用ギヤドモータ12の動作回数、排水弁用ギヤドモータ12の動作時間、排水弁用ギヤドモータ12の角度ずれ、リトライ回数が大きくなるに従い、所定時間(B)を小さく変化させる。すなわち、排水弁用ギヤドモータ12がオフ領域に到達したことを検知してから、排水弁用ギヤドモータ12を駆動する所定時間を短くしていくことにより、排水弁用ギヤドモータ12の回転の行き過ぎを抑制して排水弁用ギヤドモータ12の停止位置すなわち回転部12aの停止位置を補正する。これによって、次に排水弁用ギヤドモータ12を回転させ他場合に、排水弁10の開動作を正確に全開となるように制御可能となる。
【0040】
次に、所定時間(B)の算出処理について説明する。図14は、温度により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。まず、制御装置32は、洗濯機1の電源入り時の温度値Tiを入力する(S21)。温度値Tiは温度センサ41から制御装置32に入力される。次に、制御装置32は温度値Tiが10℃未満であるか否かを判定する(S22)。温度値Tiが10℃未満である場合は(S22:YES)、10℃未満に対応した所定時間(B)をセットする(S23)。例えば、50Hz動作の場合、図6の10℃未満に対応する「1.2秒」がセットされ、所定時間(B)の算出処理が終了する。
【0041】
S22で、温度値Tiが10℃以上の場合は(S22:NO)、制御装置32は温度値Tiが30℃未満であるか否かを判定する(S24)。温度値Tiが30℃未満であれば(S24:YES)、10℃以上30℃未満に対応した所定時間(B)をセットする(S25)。例えば、50Hz動作の場合、図6の10℃以上30℃未満に対応する「1.0秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0042】
S24で、温度値Tiが30℃以上である場合は(S24:NO)、30℃以上に対応した所定時間(B)をセットする(S26)。例えば、50Hz動作の場合、図6の30℃以上に対応する「0.7秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0043】
上記のように、洗濯機1は、外気温を測定する温度センサ41を備え、電源入り時に温度センサによって温度値Tiを測定する。制御装置32は、温度値Tiに応じて排水弁10を閉じる場合の所定時間(B)を変化させる。例えば、温度値Tiが高くなるにつれて、所定時間(B)の時間を短くしていく。
【0044】
温度値Tiが高くなると、排水弁用ギヤドモータ12内に塗布されているグリスの粘度が低下し、排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下する。温度値Tiによって所定時間(B)を変化させることで、ギヤドモータの停止位置を排水弁10が全閉となる位置に調整することができる。
【0045】
次に、コース運転回数により所定時間(B)を変化させる処理について説明する。図15は、コース運転回数により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。図15に示すように、制御装置32は所定時間(B)の算出処理を開始すると、不揮発性メモリ44からコース運転回数Ncを読み出す(S31)。不揮発性メモリ44は、洗濯機1がコース運転を終了する度に、コース運転回数Ncを「1」だけインクリメントして記憶している。次に、制御装置32は、コース運転回数Ncが300回未満であるか否かを判定する(S32)。コース運転回数Ncが300回未満である場合は(S32:YES)、コース運転回数Ncが300回未満に対応した所定時間(B)をセットする(S33)。例えば、50Hz動作の場合、図7のコース運転回数Ncが300回未満に対応する「1.2秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0046】
S32において、コース運転回数Ncが300回以上である場合は(S32:NO)、コース運転回数Ncが600回未満であるか否かを判定する(S34)。コース運転回数Ncが600回未満である場合は(S34:YES)制御装置32は、コース運転回数Ncが300回以上600回未満に対応した所定時間(B)をセットする(S35)。例えば、50Hz動作の場合、図7の300回以上600回未満に対応する「0.6秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0047】
S34において、コース運転回数Ncが600回以上である場合は(S34:NO)、制御装置32は、コース運転回数Ncが600回以上に対応した所定時間(B)をセットする(S36)。例えば、50Hz動作の場合、図7の600回以上に対応した「0秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0048】
上記のように、制御装置32は、不揮発性メモリ44からコース運転回数Ncを読み出し、その運転回数に応じて排水弁10を閉じる場合の所定時間(B)を変化させる。コース運転回数Ncが多くなるにつれて、所定時間(B)を短くしていく。
【0049】
コース運転回数Ncが多いほど、排水弁用ギヤドモータ12が長い間動作していることになる。長い間動作していると、排水弁用ギヤドモータ12内に塗布されていたグリスが減少していくため、ギヤドモータの制動力が低下する。上記のように、コース運転回数Ncに応じて所定時間(B)を変化させて補正することで、ギヤドモータの停止位置を排水弁10が全閉となる位置に調整することができる。
【0050】
次に、排水弁用ギヤドモータ12の動作回数により所定時間(B)を変化させる処理について説明する。図16は、排水弁用ギヤドモータ12の動作回数により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。図16に示すように、制御装置32は、不揮発性メモリ44から排水弁用ギヤドモータ12の動作回数Nmを読み出す(S41)。制御装置32は、排水弁用ギヤドモータ12が排水弁10を開動作及び閉動作を1セット行う毎に、動作回数Nmを「1」だけインクリメントして不揮発性メモリ44に記憶している。次に、制御装置32は動作回数Nmが600回未満であるか否かを判定する(S42)。動作回数Nmが600回未満である場合は(S42:YES)、動作回数Nmが600回未満に対応した所定時間(B)をセットする(S43)。例えば、50Hz動作の場合、図8の動作回数Nmが600回未満に対応する「1.2秒」をセットする。その後、処理を終了する。
【0051】
S42において、動作回数Nmが600回以上である場合は(S42:NO)、動作回数Nmが1200回未満であるか否かを判定する(S44)。動作回数Nmが1200回未満である場合は(S44:YES)、制御装置32は、動作回数Nmが600回以上1200回未満に対応した所定時間(B)をセットする(S45)。例えば、50Hz動作の場合、図8の600回以上1200回未満に対応する「0.6秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0052】
S44において、動作回数Nmが1200回以上である場合は(S44:NO)、制御装置32は、動作回数Nmが1200回以上に対応した所定時間(B)をセットする(S46)。例えば、50Hz動作の場合、図8の1200回以上に対応した「0秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0053】
上述のように、制御装置32は、洗濯機1の電源入り時に不揮発性メモリ44から排水弁用ギヤドモータ12の動作回数Nmを読み出し、その動作回数Nmに応じて排水弁10を閉じる場合の所定時間(B)を変化させる。動作回数Nmが多くなるにつれて、所定時間(B)を短くしていく。排水弁用ギヤドモータ12の動作回数Nmが多いほど、排水弁用ギヤドモータ12が長い間動作していることになる。長い間動作していると、排水弁用ギヤドモータ12内に塗布されていたグリスが減少していくため、排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下する。排水弁用ギヤドモータ12の動作回数Nmに応じて所定時間(B)を変化させて補正することで、排水弁用ギヤドモータ12の停止位置を排水弁10が全閉となる位置に調整することができる。
【0054】
次に、排水弁用ギヤドモータ12の動作時間により所定時間(B)を変化させる処理について説明する。図17は、排水弁用ギヤドモータ12の動作時間により所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。図17に示すように、制御装置32は、不揮発性メモリ44から排水弁用ギヤドモータ12の動作時間Tmを読み出す(S51)。制御装置32は、排水弁用ギヤドモータ12の動作時間を1秒単位でカウントして不揮発性メモリ44に記憶している。次に、制御装置32は動作時間Tmが120時間未満であるか否かを判定する(S52)。動作時間Tmが120時間未満である場合は(S52:YES)、動作時間Tmが120時間未満に対応した所定時間(B)をセットする(S53)。例えば、50Hz動作の場合、図9の動作時間Tmが120時間未満に対応する「1.2秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0055】
S52において、動作時間Tmが120時間以上である場合は(S52:NO)、動作時間Tmが240時間未満であるか否かを判定する(S54)。動作時間Tmが240時間未満である場合は(S54:YES)、制御装置32は、動作時間Tmが120時間以上240時間未満に対応した所定時間(B)をセットする(S55)。例えば、50Hz動作の場合、図9の120時間以上240時間未満に対応する「0.6秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0056】
S54において、動作時間Tmが240時間以上である場合は(S54:NO)、制御装置32は、動作時間Tmが240時間以上に対応した所定時間(B)をセットする(S56)。例えば、50Hz動作の場合、図9の240時間以上に対応した「0秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0057】
上述したように、制御装置32は、洗濯機1の電源入り時に不揮発性メモリから排水弁用ギヤドモータ12の動作時間Tmを読み出し、その動作時間Tmに応じて排水弁10を閉じる場合の所定時間(B)を変化させる。動作時間Tmが長くなるにつれて、所定時間(B)を短くしていく。排水弁用ギヤドモータ12が長い間動作していると、排水弁用ギヤドモータ12内に塗布されていたグリスが減少していくため、排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下する。排水弁用ギヤドモータ12の動作時間Tmに応じて所定時間(B)を変化させて補正することで、排水弁用ギヤドモータ12の停止位置を排水弁10が全閉となる位置に調整することができる。
【0058】
次に、排水弁用ギヤドモータ12の角度ずれ量により所定時間(B)を変化させる処理について説明する。図18は、排水弁用ギヤドモータ12の角度ずれにより所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。図18に示すように、制御装置32に、排水弁用ギヤドモータ12の角度ずれθmが入力される(S51)。角度ずれθmは、排水弁用ギヤドモータ12の動作開始から回転角スイッチ50がオン状態(開位置)になるまでの時間を測定し、そこから角度を算出することにより求められる。次に、制御装置32は、角度ずれθmが5度未満であるか否かを判定する(S62)。角度ずれθmが5度未満である場合は(S62:YES)、角度ずれθmが5度未満に対応した所定時間(B)をセットする(S63)。例えば、50Hz動作の場合、図10の角度ずれθmが5度未満に対応する「1.2秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0059】
S62において、角度ずれθmが5度以上である場合は(S62:NO)、角度ずれθmが10度未満であるか否かを判定する(S64)。角度ずれθmが10度未満である場合は(S64:YES)、制御装置32は、角度ずれθmが5度以上10度未満に対応した所定時間(B)をセットする(S65)。例えば、50Hz動作の場合、図10の5度以上10度未満に対応する「0.9秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0060】
S64において、角度ずれθmが10度以上である場合は(S64:NO)、角度ずれθmが15度未満であるか否かを判定する(S66)。角度ずれθmが15度未満である場合は(S66:YES)、制御装置32は、角度ずれθmが10度以上15度未満に対応した所定時間(B)をセットする(S67)。例えば、50Hz動作の場合、図10の10度以上15度未満に対応する「0.6秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0061】
S66において、角度ずれθmが15度以上である場合は(S66:NO)、角度ずれθmが20度未満であるか否かを判定する(S68)。角度ずれθmが20度未満である場合は(S68:YES)、制御装置32は、角度ずれθmが15度以上20度未満に対応した所定時間(B)をセットする(S69)。例えば、50Hz動作の場合、図10の15度以上20度未満に対応する「0.3秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0062】
S68において、角度ずれθmが20度以上である場合は(S68:NO)、制御装置32は、角度ずれθmが20度以上に対応した所定時間(B)をセットする(S70)。例えば、50Hz動作の場合、図10の20度以上に対応した「0秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0063】
上述のように、排水弁用ギヤドモータ12の回転角スイッチ50のオン/オフが切り替わる位置は、例えばθ=35度とした場合には、±35度の位置(開位置、閉位置)にある。例えば、排水弁10を閉じる場合の排水弁用ギヤドモータ12の停止位置を−5度とした場合、排水弁10を開く場合には排水弁用ギヤドモータ12の動作開始時から40度分、反時計回りに回転動作すると回転角スイッチ50がオン状態(開位置)に切り替わる。
【0064】
排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下して、排水弁10を閉じる場合の排水弁用ギヤドモータ12の停止位置が変化した場合、排水弁10を開く場合の回転角スイッチ50がオン状態に切り替わるまでの角度が変化する。排水弁用ギヤドモータ12の回転速度は一定、例えば50Hzで20度/秒であるため、排水弁用ギヤドモータ12の動作開始から回転角スイッチ50がオン状態になるまでの時間を測定し、そこから角度を算出し、基準である40度に対してのずれ量を計算することができる。その角度ずれ量に応じて排水弁10を閉じる場合の所定時間(B)を変化させる。角度ずれ量が大きくなるほど、−5度の位置に対してプラスの方向にずれているといえるので、所定時間(B)を短く変化させれば、排水弁用ギヤドモータ12の停止位置を排水弁10が全閉となる位置例えば−5度付近の位置となるように調整することができる。
【0065】
次に、リトライ動作の回数により所定時間(B)を変化させる処理について説明する。図19は、リトライ動作の回数Nrにより所定時間(B)を変化させる場合の処理手順を示すフローチャートである。図19に示すように、制御装置32は、リトライ動作の回数Nrを不揮発性メモリ44から取り出す(S71)。リトライ動作の回数Nrは、不揮発性メモリ44に記憶されている。次に、制御装置32は、リトライ動作の回数Nrが0回か否かを判定する(S72)。リトライ動作の回数Nrが0回である場合は(S72:YES)、リトライ動作の回数Nrが0回に対応した所定時間(B)をセットする(S73)。例えば、50Hz動作の場合、図11のリトライ動作の回数Nrが0回に対応する「1.2秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0066】
S72において、リトライ動作の回数Nrが0回でない場合は(S72:NO)、リトライ動作の回数Nrが1回であるか否かを判定する(S74)。リトライ動作の回数Nrが1回である場合は(S74:YES)、制御装置32は、リトライ動作の回数Nrが1回に対応した所定時間(B)をセットする(S75)。例えば、50Hz動作の場合、図11のリトライ動作の回数Nrが1回に対応する「0.9秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0067】
S74において、リトライ動作の回数Nrが1回でない場合は(S74:NO)、リトライ動作の回数Nrが2回であるか否かを判定する(S76)。リトライ動作の回数Nrが2回である場合は(S76:YES)、制御装置32は、リトライ動作の回数Nrが2回に対応した所定時間(B)をセットする(S77)。例えば、50Hz動作の場合、図11のリトライ動作の回数Nrが2回に対応する「0.6秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0068】
S76において、リトライ動作の回数Nrが2回でない場合は(S76:NO)、リトライ動作の回数Nrが3回であるか否かを判定する(S78)。リトライ動作の回数Nrが3回である場合は(S78:YES)、制御装置32は、リトライ動作の回数Nrが3回に対応した所定時間(B)をセットする(S79)。例えば、50Hz動作の場合、図11のリトライ動作の回数Nrが3回に対応する「0.3秒」をセットする。その後、所定時間(B)の算出処理を終了する。
【0069】
S78において、リトライ動作の回数Nrが3回でない場合は(S78:NO)、制御装置32は、リトライ動作の回数Nrが4回に対応した所定時間(B)をセットする(S80)。例えば、50Hz動作の場合、図11のリトライ動作の回数Nrが4回に対応した「0秒」をセットする。その後、処理を終了する。
【0070】
リトライ動作について説明する。排水弁10の開動作完了後、正常な状態では回転角スイッチ50はオン状態になっている。この時、回転角スイッチ50がオフ状態すなわち閉位置を検知すると、制御装置32は、排水弁用ギヤドモータ12の位置が移動したと判断し、再度排水弁10の開動作を行う。また排水弁10の閉動作完了後は、正常な状態では回転角スイッチ50はオフ状態になっている。この時、回転角スイッチ50がオン状態を検知すると、制御装置32は、排水弁用ギヤドモータ12の位置が移動したと判断し、再度排水弁10の閉動作を行う。4回のリトライ動作を実行した後、さらに回転角スイッチ50の状態が変わるのを検知した場合、制御装置32は、洗濯機1の異常と判断し異常報知を行う。本実施形態では、上述のように、リトライ閉動作を行っている場合の所定時間(B)をリトライ動作の回数に応じて変化させる。リトライ回数が増すにつれて、時間を短くしていく。
【0071】
排水弁10の閉動作において、排水弁用ギヤドモータ12の制動力が低下すると、排水弁10を閉じる復元力により排水弁10は全閉状態になり、その後、所定時間動作して排水弁用ギヤドモータ12が停止する。このため、場合によっては回転角スイッチ50の状態がオフではなくオンの状態になることがある。そうなると前述のリトライ動作制御により再度排水弁10の閉動作を行う。何らの補正を加えないと、リトライ動作を繰り返して最終的に異常報知となってしまう。本実施形態では、リトライ回数に応じて所定時間(B)を変えるようにすることで、ギヤドモータの停止位置を排水弁10全閉となる位置に調整することができる。
【0072】
上述のように、温度や洗濯機1の運転回数、排水弁用ギヤドモータ12の動作回数、排水弁用ギヤドモータ12の動作時間、リトライ回数等に応じて所定時間(B)の時間を変更した場合、その時間変更情報を不揮発性メモリ44に記憶する。前回の運転時に所定時間(B)が変更されている場合は、洗濯機1の電源入り時に不揮発性メモリから所定時間(B)の変更情報を読み出し、前回運転時の変更後の所定時間(B)を、今回の運転における排水弁10の閉動作の所定時間(B)として排水弁用ギヤドモータ12を動作させるようにしてもよい。その運転において所定時間(B)がさらに変更となった場合は、その情報を不揮発性メモリに記憶し、この所定時間(B)を次回の運転時の所定時間(B)として排水弁用ギヤドモータ12を動作させる。
【0073】
排水弁用ギヤドモータ12を動作させて制動力の低下を判断する場合、最初の動作はギヤドモータの停止位置が本来の狙い位置とはずれた位置になる可能性がある。前回の運転時に所定時間(B)を変えた場合、その情報を不揮発性メモリ44に記憶しておくことで、最初の動作でも狙いの位置に排水弁用ギヤドモータ12を停止させることができる。このため、リトライ動作を回避することができる。
【0074】
また、運転回数や動作時間を元に所定時間(B)を変える場合、不揮発性メモリの初期化や交換が生じた場合、製品の状態と記憶の状態にずれが生じる。その場合は、リトライ動作を行って所定時間(B)を変えるかどうかを判断し、所定時間(B)を変更した情報を不揮発性メモリ44に記憶し、次回以降の動作時にこの所定時間(B)を使用することで排水弁用ギヤドモータ12を狙いの位置に停止させることができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 洗濯機
9 排水路(排水経路)
10 排水弁
13 排水口(排水経路)
12 排水弁用ギヤドモータ
32 制御装置
44 不揮発性メモリ(記憶手段)
50 回転角スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19