(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670598
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】変圧器鉄心
(51)【国際特許分類】
H01F 27/245 20060101AFI20200316BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
H01F27/245 157
H01F27/24 H
H01F27/24 P
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-237557(P2015-237557)
(22)【出願日】2015年12月4日
(65)【公開番号】特開2017-103417(P2017-103417A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】霜村 英二
(72)【発明者】
【氏名】塩田 広
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭史
【審査官】
右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】
特公平08−034160(JP,B2)
【文献】
特公昭50−026005(JP,B1)
【文献】
実公昭37−025639(JP,Y1)
【文献】
実公平08−000735(JP,Y2)
【文献】
特開昭59−210626(JP,A)
【文献】
実公昭35−029031(JP,Y1)
【文献】
特開昭51−058622(JP,A)
【文献】
実開平04−059925(JP,U)
【文献】
米国特許第03815067(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/245
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気素材を巻回し、絶縁用の樹脂を含浸してなる3つ以上の複数の単位鉄心を軸方向に積層することで構成されたものであって、前記単位鉄心は成形後に二つに分割された分割鉄心を組み合わせて構成され、
前記複数の単位鉄心のうち軸方向の両端部の2つを除いた残りの少なくとも1つには両端部の2つに比べて上へ突出するものであって内部に冷却部材が収納された突出部が設けられている変圧器鉄心。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施例は変圧器鉄心に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器鉄心には複数の単位鉄心を径方向に積層することで構成されたものである。この変圧器鉄心の場合には内周面の周長および外周面の周長間に大きな差があり、内周部の磁束密度が外周部の磁束密度に比べて大幅に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−251244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の変圧器鉄心の場合には内周部が外周部に比べて大幅に昇温し易いので、内周部の温度が上限値を超えることに応じて内周部で絶縁用の樹脂が破壊される虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例の変圧器鉄心は、磁気素材を巻回し、絶縁用の樹脂を含浸してなる3つ以上の複数の単位鉄心を軸方向に積層することで構成されたものであって、前記単位鉄心は成形後に二つに分割された分割鉄心を組み合わせて構成されている。
そして、複数の単位鉄心のうち軸方向の両端部の2つを除いた残りの少なくとも1つには両端部の2つに比べて上へ突出するものであって内部に冷却部材が収納された突出部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施例1を示す図(変圧器鉄心の外観を示す図)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0007】
図1の変圧器鉄心1は3つの単位鉄心2を軸方向(前後方向)に積層することで構成されたものであり、変圧器鉄心1には絶縁用の樹脂が含浸されている。これら3つの単位鉄心2のそれぞれは巻鉄心からなるものであり、電磁鋼板または鉄系アモルファスリボン等からなる帯状の磁気素材を巻枠に巻取ることで構成されている。これら3つの単位鉄心2のそれぞれは単位鉄心2の成形後に2つの分割鉄心3に切断されたものであり、変圧器鉄心1は計6つの分割鉄心3間を組合せることで構成されている。
【0008】
下記(1)式のWは変圧器鉄心1の軸方向の積厚であり、Lは変圧器鉄心1の平均周長である。この平均周長Lは「(変圧器鉄心1の内周面に沿う長さ寸法)+(変圧器鉄心1の外周面に沿う長さ寸法)/2」で定義されるものであり、変圧器鉄心1の積厚Wおよび平均周長Lのそれぞれは(1)を満たす値に設定されている。即ち、変圧器鉄心1は積厚Wが平均周長Lの10分の1以下に設定されている。
【0009】
(積厚W÷平均周長L)×100≦10・・・・・(1)
上記実施例1によれば次の効果を奏する。
複数の単位鉄心2を軸方向に積層することで変圧器鉄心1を構成した。この変圧器鉄心1は積厚Wが平均周長Lの10分の1以下に設定されたものであり、内周面および外周面間の周長の差が小さなものとなる。このため、変圧器鉄心1の内周部および外周部間で磁束密度の差が小さくなるので、温度差も小さくなる。従って、変圧器鉄心1の内周部の温度が上限値を超えることがなくなるので、内周部で絶縁用の樹脂が破壊されることを防止できる。
【実施例2】
【0010】
変圧器鉄心1には、
図2に示すように、2つのギャップ11および4つのギャップ12が形成されている。2つのギャップ11は3つの単位鉄心2のうち軸方向の中央部の1つに形成されたものであり、2つのギャップ12は軸方向の一端部の1つに形成されたものであり、残りの2つのギャップ12は軸方向の他端部の1つに形成されたものであり、変圧器鉄心1は2つのギャップ11のそれぞれの上下方向の幅寸法が4つのギャップ12のいずれの上下方向の幅寸法よりも大きくなるように6つの分割鉄心3間を組合せることで構成されている。
【0011】
上記実施例2によれば次の効果を奏する。
3つの単位鉄心2のうち中央部の1つを除く残りの2つのそれぞれに幅狭なギャップ12を形成し、中央部の1つに幅広なギャップ11を形成したので、矢印で示すように、磁束の一部が3つの単位鉄心2のうち中央部の1つを迂回して残りの2つを流れる。従って、変圧器鉄心1の軸方向の中央部で磁束密度が減少するので、変圧器鉄心1の軸方向の中央部での発熱が抑えられる。
【0012】
上記実施例2においては、3つの単位鉄心2のうち中央部の1つを除く残りの2つのそれぞれから両ギャップ12を廃止しても良い。
上記実施例2においては、M(Mは4以上の整数)の単位鉄心2を軸方向に積層しても良い。この場合にはMの単位鉄心2のうち軸方向の両端部の2つを除いた残りの少なくとも1つにギャップ11を形成し、軸方向の両端部の2つにギャップ12を形成すると良い。または、Mの単位鉄心2のうち軸方向の両端部の2つにギャップを形成せず、軸方向の両端部を除いた残りの少なくとも1つにギャップ11を形成しても良い。
【実施例3】
【0013】
3つの単位鉄心2のうち中央部の1つには、
図3に示すように、突出部21が形成されている。この突出部21は3つの単位鉄心2のうち中央部の1つが残りの2つのそれぞれに比べて上へずれるように6つの分割鉄心3間を組合せることで形成されたものであり、3つの単位鉄心2のうち軸方向の両端部の2つに比べて上へ突出している。この突出部21内には冷却管22が固定されている。この冷却管22は冷却用の液体が流通するものであり、突出部21の内周面に接触している。この冷却管22は冷却部材に相当する。
【0014】
上記実施例3によれば次の効果を奏する。
3つの単位鉄心2のうち中央部の1つに突出部21を設け、突出部21内に冷却管22を収納した。この1つの単位鉄心2内の上端部は変圧器の運転状態で熱が滞留し易いものの冷却管22によって強制的に冷却されるので、1つの単位鉄心2内の上端部が異常昇温することを防止できる。
【実施例4】
【0015】
突出部21内には、
図4に示すように、2つの放熱板31が固定されている。これら両放熱板31のそれぞれは単位鉄心2の磁気素材に比べて熱伝達率が高いアルミニウムまたは銅等を材料とするものであり、3つの単位鉄心2のうち中央部の1つに突出部21の内周面で接触し、中央部の1つを除いた残りの2つのそれぞれに上端面で接触している。これら両放熱板31のそれぞれは冷却部材に相当する。
【0016】
上記実施例4によれば次の効果を奏する。
3つの単位鉄心2のうち中央部の1つに突出部21を設け、突出部21内に放熱板31を収納したので、1つの単位鉄心2内の上端部が異常昇温することを防止できる。
【実施例5】
【0017】
3つの単位鉄心2のうち中央部の1つは、
図5に示すように、残りの2つのそれぞれに比べて上下方向の高さ寸法が大きく設定されており、下面が残りの2つのそれぞれと同一の水平面上に配置されている。
【0018】
上記実施例5によれば次の効果を奏する。
3つの単位鉄心2のうち中央部の1つの高さ寸法を残りの2つのそれぞれに比べて大きく設定したので、1つの単位鉄心2の磁束密度が残りの2つのそれぞれに比べて減少する。従って、1つの単位鉄心2での発熱量が減少するので、1つの単位鉄心2内の上端部が異常昇温することを確実に防止できる。しかも、1つの単位鉄心2の下面を残りの2つのそれぞれに対して面一とした。従って、作業者が分割鉄心3を床面に置いて分割鉄心3間の接合作業および冷却管22の設置作業等を行う場合に分割鉄心3のぐらつきが抑えられるので、作業を行い易くなる。
【0019】
上記実施例5においては、突出部21内に冷却管22に換えて放熱板31を固定しても良い。
上記実施例5においては、突出部21内から冷却管22を廃止しても良い。
【0020】
上記実施例3〜5においては、M(Mは4以上の整数)の単位鉄心2を軸方向に積層しても良い。この場合にはMの単位鉄心2のうち軸方向の両端部の2つを除いた残りの少なくとも1つに突出部21を設け、冷却管22または放熱板31を突出部21内に収納すると良い。
【0021】
以上、本発明の実施例を説明したが、この実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は発明の範囲や要旨に含まれると共に特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0022】
1は変圧器鉄心、2は単位鉄心、11はギャップ、12はギャップ、21は突出部、22は冷却管(冷却部材)、31は放熱板(冷却部材)である。