(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670647
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】面取り加工方法及び面取り金型
(51)【国際特許分類】
B21D 19/00 20060101AFI20200316BHJP
B21D 28/00 20060101ALI20200316BHJP
B21D 28/36 20060101ALI20200316BHJP
B21D 37/18 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
B21D19/00 C
B21D28/00 A
B21D28/36 Z
B21D37/18
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-55537(P2016-55537)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-170448(P2017-170448A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓也
【審査官】
豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−066651(JP,A)
【文献】
実開平01−153814(JP,U)
【文献】
特開平05−245553(JP,A)
【文献】
特開平09−029354(JP,A)
【文献】
特開2007−111753(JP,A)
【文献】
特開平10−263721(JP,A)
【文献】
特開2002−066652(JP,A)
【文献】
特開平11−147136(JP,A)
【文献】
特開2002−45929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 19/00
B21D 28/00 − 28/36
B21D 37/18
B21D 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークにおける切断縁の面取り加工方法であって、
上下の金型の少なくとも一方の、前記上下の金型の軸心位置に対する偏心位置に、前記軸心位置を含む当接面で狭圧保持した前記ワークの切断縁を面取りする面取り加工部を有する面取りチップを取り付けておき、
上下の金型が離隔した状態で、前記ワークを、前記軸心位置を含む当接面で狭圧保持されるように、かつ前記切断縁の位置が前記面取り加工部と一致するように位置決めした後、
前記上下の金型により、前記ワークを、前記軸心位置を含む当接面で狭圧保持した状態で、前記切断縁に前記面取り加工部を押圧して面取り加工を行うことを特徴とする面取り加工方法。
【請求項2】
軸心位置が同一の上金型及び下金型を備え板状のワークにおける切断縁の面取り加工を行う面取り金型であって、
前記上金型は、前記軸心位置を含み前記ワークの上面に当接自在な第1当接面を有する上下動自在のパンチボディを備え、
前記下金型は、前記軸心位置を含み前記ワークの下面に当接自在な第2当接面を有する上下動自在のエジェクタプレートと、前記エジェクタプレートにおける前記軸心位置に対する偏心位置において相対的に上端部が突出自在に設けられた面取りチップと、前記面取りチップの上端部に設けられ前記第1当接面と前記第2当接面とで狭圧保持した前記ワークの切断縁を面取り加工する面取り加工部と、を備え、
前記面取り加工において、前記パンチボディと前記エジェクタプレートとの間に前記ワークが挿入された状態から前記パンチボディが下降することで、前記第1当接面と前記第2当接面とで前記ワークを狭圧保持した状態で前記エジェクタプレートが下降し、前記面取りチップが前記エジェクタプレートに対し相対的に上昇して前記面取り加工部によって前記切断縁を面取りするよう構成されていることを特徴とする面取り金型。
【請求項3】
前記面取り加工部は、前記ワークの切断縁の下面に当接する平面部と前記切断縁に当接して前記切断縁を面取りする傾斜部とを有していることを特徴とする請求項2記載の面取り金型。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の面取り金型において、前記上金型は、前記下金型における前記面取りチップへオイルミスト噴射孔を備えていることを特徴とする面取り金型。
【請求項5】
軸心位置が同一の上金型及び下金型を備え板状のワークにおける切断縁の面取り加工を行う面取り金型であって、
前記下金型は、前記ワークの下面に当接自在な第1当接面を有するダイであって、
前記上金型は、前記軸心位置を含み前記ワークの上面に当接自在な第2当接面を有する上下動自在のパンチガイドと、前記パンチガイド内を上下動するパンチボディと、前記パンチボディの下面における前記軸心位置に対する偏心位置に設けられ、下端部が前記パンチガイドに形成された貫通孔から下方へ突出自在とされた面取りチップと、前記面取りチップの下端部に設けられ前記第1当接面と前記第2当接面とで狭圧保持された前記ワークの切断縁を面取り加工する面取り加工部と、を備え、
前記面取り加工において、前記パンチガイドと前記ダイとの間に前記ワークが挿入された状態から前記パンチガイドが下降して前記第1当接面と前記第2当接面とで前記ワークを狭圧保持し、前記ワークを狭圧保持した状態で前記パンチボディが下降することで前記面取りチップが前記貫通孔から下方へ突出して前記面取り加工部によって前記切断縁を面取りするよう構成されていることを特徴とする面取り金型。
【請求項6】
前記面取り加工部は、前記ワークの切断縁の上面に当接する平面部と前記切断縁に当接して前記切断縁を面取りする傾斜部とを有する面取り加工部を備えていることを特徴とする請求項5記載の面取り金型。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項に記載の面取り金型において、
前記面取り加工部は、前記ワークの切断縁に正規形状の面取り加工を行う正規面取り加工部と、面押し量が次第に浅くなって緩やかな形状の面取り加工を行う緩和面取り加工部とを備えていることを特徴とする面取り金型。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の面取り金型において、前記面取りチップの断面形状は矩形状であって、前記面取り加工部は、前記矩形状の部分の長辺側に備えられていることを特徴とする面取り金型。
【請求項9】
請求項8に記載の面取り金型において、第2の面取り加工部が前記矩形状の部分の短辺側に設けられていることを特徴とする面取り金型。
【請求項10】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の面取り金型において、
前記エジェクタプレートを上方向へ付勢する弾性部材を備えていることを特徴とする面取り金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークにおいて切断加工された切断面の切断縁(切断面の稜線部分)に面取り加工(バリ取り加工)を行う面取り加工方法及び面取り金型に関する。さらに詳細には、上下の金型によってワークを押圧(挟圧)固定して切断縁の面取り加工を行う際に、上下の金型においてワークを押圧固定する押圧面の面積をより大きくして、安定した面取り加工を行う面取り加工方法及び面取り金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状のワークの切断加工や大きな穴の打抜き加工(窓抜き加工)を行うとき、ワークの切断縁の面取り加工(バリ取り加工)が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−153814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の構成においては、上下の金型によってワークの切断縁付近を上下から押圧固定して切断縁の面取り加工を行うものである。前記切断縁に面取り加工を行う面取り加工部は、上下の金型における中心部付近に備えられているものである。したがって、上下の金型によってワークを押圧固定する部分の面積は、上下の金型における断面積の1/2以下であって小さなものである。よって、面取り加工時におけるワークの押圧固定が不安定になることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされた
次の1)〜10)である。
1)板状のワークにおける切断縁の面取り加工方法であって、
上下の金型の少なくとも一方の
、前記上下の金型の軸心位置に対する偏心位置に
、前記軸心位置を含む当接面で狭圧保持した前記ワークの切断縁を面取りする面取り加工部を有する面取りチップ
を取り付けておき、
上下の金型が離隔した状態で、前記ワークを、前記軸心位置を含む当接面で狭圧保持されるように、かつ前記切断縁の位置が前記面取り加工部と一致するように位置決めした後、
前記上下の金型により、前記ワークを、前記軸心位置を含む当接面で狭圧保持した状態で、前記切断縁に前記面取り加工部
を押圧して面取り加工を行うことを特徴とする
面取り加工方法である。
2) 軸心位置が同一の上金型及び下金型を備え板状のワークにおける切断縁の面取り加工を行う面取り金型であって、
前記上金型は、前記軸心位置を含み前記ワークの上面に当接自在な第1当接面を有する上下動自在のパンチボディを備え、
前記下金型は、前記軸心位置を含み前記ワークの下面に当接自在な第2当接面を有する上下動自在のエジェクタプレートと、前記エジェクタプレートにおける前記軸心位置に対する偏心位置において相対的に上端部が突出自在に設けられた面取りチップと、前記面取りチップの上端部に設けられ前記第1当接面と前記第2当接面とで狭圧保持した前記ワークの切断縁を面取り加工する面取り加工部と、を備え、
前記面取り加工において、前記パンチボディと前記エジェクタプレートとの間に前記ワークが挿入された状態から前記パンチボディが下降することで、前記第1当接面と前記第2当接面とで前記ワークを狭圧保持した状態で前記エジェクタプレートが下降し、前記面取りチップが前記エジェクタプレートに対し相対的に上昇して前記面取り加工部によって前記切断縁を面取りするよう構成されていることを特徴とする面取り金型である。
3) 前記面取り加工部は、前記ワークの切断縁の下面に当接する平面部と前記切断縁に当接して前記切断縁を面取りする傾斜部とを有していることを特徴とする2)に記載の面取り金型である。
4) 2)又は3)に記載の面取り金型において、前記上金型は、前記下金型における前記面取りチップへオイルミスト噴射孔を備えていることを特徴とする面取り金型である。
5) 軸心位置が同一の上金型及び下金型を備え板状のワークにおける切断縁の面取り加工を行う面取り金型であって、
前記下金型は、前記ワークの下面に当接自在な第1当接面を有するダイであって、
前記上金型は、前記軸心位置を含み前記ワークの上面に当接自在な第2当接面を有する上下動自在のパンチガイドと、前記パンチガイド内を上下動するパンチボディと、前記パンチボディの下面における前記軸心位置に対する偏心位置に設けられ、下端部が前記パンチガイドに形成された貫通孔から下方へ突出自在とされた面取りチップと、前記面取りチップの下端部に設けられ前記第1当接面と前記第2当接面とで狭圧保持された前記ワークの切断縁を面取り加工する面取り加工部と、を備え、
前記面取り加工において、前記パンチガイドと前記ダイとの間に前記ワークが挿入された状態から前記パンチガイドが下降して前記第1当接面と前記第2当接面とで前記ワークを狭圧保持し、前記ワークを狭圧保持した状態で前記パンチボディが下降することで前記面取りチップが前記貫通孔から下方へ突出して前記面取り加工部によって前記切断縁を面取りするよう構成されていることを特徴とする面取り金型である。
6) 前記面取り加工部は、前記ワークの切断縁の上面に当接する平面部と前記切断縁に当接して前記切断縁を面取りする傾斜部とを有する面取り加工部を備えていることを特徴とする5)に記載の面取り金型である。
7) 2)〜6)のいずれか一つに記載の面取り金型において、
前記面取り加工部は、前記ワークの切断縁に正規形状の面取り加工を行う正規面取り加工部と、面押し量が次第に浅くなって緩やかな形状の面取り加工を行う緩和面取り加工部とを備えていることを特徴とする面取り金型である。
8) 2)〜7)のいずれか一つに記載の面取り金型において、前記面取りチップの断面形状は矩形状であって、前記面取り加工部は、前記矩形状の部分の長辺側に備えられていることを特徴とする面取り金型である。
9) 8)に記載の面取り金型において、第2の面取り加工部が前記矩形状の部分の短辺側に設けられていることを特徴とする面取り金型である。
10) 2)〜4)のいずれか一つに記載の面取り金型において、
前記エジェクタプレートを上方向へ付勢する弾性部材を備えていることを特徴とする面取り金型である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上下の金型における当接面でもって板状のワークを上下方向から挟圧保持した状態においてワークの切断縁の面取り加工を行うとき、上下の金型の少なくとも一方の金型における偏心位置に備えた面取りチップによって面取り加工を行うものである。したがって、上下の金型における前記当接面は、上下の金型における中心位置を含むことができ、当接面の面積を大きくすることができるものである。よって、ワークの挟圧固定を安定的に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る面取り金型の断面説明図である。
【
図2】エジェクタプレートが弾性部材によって上方向へ付勢される構成の説明図である。
【
図4】矩形状の穴における内周の切断縁の面取り加工を行う作用説明図である。
【
図5】面取り金型の第2の実施形態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に概念的、概略的に示すように、本発明の実施形態に係る面取り金型1は、上金型3と下金型5を備えている。前記上金型3は、例えばタレットパンチプレス(図示省略)における上部タレット等の上型ホルダ7に、リフタースプリング(図示省略)等を介して上下動自在に支持されている。より詳細には、前記上金型3は、外周面が円形状のパンチボディ9を備えている。このパンチボディ9は、前記上型ホルダ7に形成した上下方向のガイド孔7H内に上下動自在に嵌合してある。そして、パンチボディ9に形成した上下方向のキー溝11に、上型ホルダ7に備えたキー(図示省略)を係合することによって、パンチボディ9の水平な回転は規制されている。
【0014】
前記パンチボディ9の上部には、パンチヘッド13が複数の固定ねじ15によって一体的に取付けてある。前記パンチヘッド13は、パンチプレスに上下動自在に備えたストライカSTによって打圧されるもので、中央部には上下方向のオイルミスト孔13Hが備えられている。このオイルミスト孔13Hは、前記ストライカSTに打圧されるときに、ストライカSTに備えたオイルミスト孔STHと連通して、オイルミストの供給を受けるものである。
【0015】
前記パンチボディ9には、前記パンチヘッド13のオイルミスト孔13Hと連通したオイルミスト孔9Hが上下方向に形成してある。そして、このオイルミスト孔9Hには、パンチボディ9の外周面に連通開口した潤滑油孔9Aが接続してある。したがって、前記パンチボディ9の外周面と上型ホルダ7におけるガイド孔7Hの内周面との間は、前記オイルミスト孔9Aから供給されるオイルミストによって潤滑されるものである。
【0016】
前記パンチボディ9の下面17は、前記下金型5上に位置決めしたワークWの上面に当接する当接面を構成するものである。この当接面(下面)17が、前記下金型5に備えた面取りチップ19に対応した位置には段差部21が形成してある。この段差部21は、前記パンチボディ9の中心位置(軸心位置)から位置ずれした偏心位置に形成してある。そして、前記段差部21は、パンチボディ9の軸心に対して直交する方向(
図1において紙面に垂直な方向、X軸方向)に長く直線状に形成してある。
【0017】
すなわち前記段差部21は、パンチボディ9における下面(当接面)17の中心位置から離れた位置において下面17を横切るように形成してある。換言すれば、前記段差部21の段差面は、XZ平面に平行に形成してある。そして、前記段差部21には、前記オイルミスト孔9Hに連通したオイルミスト噴出孔9Bが開口してある。すなわち、オイルミスト噴出孔9Bは、前記面取りチップ19へオイルミストを噴射(噴出)する作用をなすものである。
【0018】
前記下金型5は、例えば、タレットパンチプレスにおける下部タレット等の下型ホルダ23に支持されている。より詳細には、前記下金型5は、円盤状のダイブロック25を備えている。このダイブロック25は、前記下型ホルダ23に備えたダイ装着孔27内に着脱可能に装着してある。より詳細には、ダイブロック25は、ダイ装着孔27に形成した底面27Aに着座することにより、前記下型ホルダ23に支持されている。そして、ダイブロック25は、ダイ装着孔27に形成したキー溝27Gにキー29を係合することによって水平な回転が規制されている。
【0019】
前記ダイブロック25の下面中央部には、支持部材としての取付ボルト31を介して上下方向に長いガイドブッシュ33が取付けてある。そして、前記ガイドブッシュ33の下端部に取付けたスプリング座35と前記ガイドブッシュ33の外周面に上下動自在に嵌合した円板状のカラー37との間には、コイルスプリングなどのごとき弾性部材39が弾装してある。
【0020】
前記ダイブロック25の上面には、ダイブロック25とほぼ同径のエジェクタプレート41が上下動自在に備えられている。より詳細には、エジェクタプレート41の複数箇所には、前記ダイブロック25を下側から上下動自在に貫通したエジェクターピン43(
図2参照)の上端部が螺着固定してある。そして、前記エジェクターピン43における下端部の頭部は、前記カラー37の上面に当接してある。したがって、前記エジェクタプレート41は、前記弾性部材39に支持されており、弾性部材39の付勢力によって常に上方向に付勢されているものである。すなわち、常態においては、前記ダイブロック25と前記エジェクタプレート41は上下方向に離隔した状態にあるものである。
【0021】
なお、
図1,
図2に示す状態は、上金型3と下金型5によって板状のワークWを上下方向から挟圧固定した状態である。すなわち、前記弾性部材39の付勢力に抗して前記エジェクタプレート41が下降されて、ダイブロック25の上面に当接した状態を示している。
【0022】
より詳細には、ストライカSTの下降によって上金型3におけるパンチボディ9が下降され、そして、ワークWを介して前記エジェクタプレート41を、弾性部材39の付勢力に抗して下降した状態が示してある。前記エジェクタプレート41は、前記パンチボディ9と上下に対向してワークWを挟圧保持する作用をなすものであって、エジェクタプレート41の上面は、ワークWの下面に当接する当接面に構成してある。
【0023】
前記エジェクタプレート41において、当該エジェクタプレート41の中心から偏心した位置(中心位置から位置ずれした位置)であって、前記パンチボディ9における前記段差部21に対応した位置には、上下方向に貫通した貫通穴45が形成してある。上記貫通穴45は、前記段差部21と平行な長穴に形成してある。そして、この貫通穴45内には、前記面取りチップ19が相対的に上下動自在に嵌入配置してある。
【0024】
より詳細には、前記面取りチップ19は、
図3に示すように構成してある。すなわち、面取りチップ19は、全体的形状は、大略直方体状に構成してある。そして、面取りチップ19における下面に形成した複数の螺子孔47には、前記ダイブロック25を下側から貫通した取付ねじ49(
図1参照)が螺入してある。すなわち、前記面取りチップ19は、前記取付ねじ49によって前記ダイブロック25に一体的に取付けてある。
【0025】
前記ダイブロック25に対する面取りチップ19の取付位置は、前記エジェクタプレート41に備えた前記貫通穴45に対応した位置である。したがって、前記面取りチップ19の上部は、エジェクタプレート41における前記貫通穴45に相対的に上下動自在に嵌入配置してある。ところで、前記面取りチップ19の上端部は、前記エジェクタプレート41が弾性部材39の付勢力に抗して下降された状態にあるときには、前記エジェクタプレート41の上面から相対的に突出するものである。そして、前記弾性部材39の付勢力によって前記エジェクタプレート41が上昇された状態にあるときには、エジェクタプレート41の上端部は、エジェクタプレート41の上面から没入した状態、又は上面と同一高さに保持されるものである。
【0026】
前記面取りチップ19の上端面51は、
図3(A)〜
図3(C)に示すように、平面に形成してある。この上端面51におけるX軸方向(面取りチップ19の長手方向)の両端部には、傾斜面53Sを備えた切欠段部53(
図3(B)参照)が形成してある。したがって、上端面51のX軸方向の長さは、前記面取りチップ19のX軸方向の幅寸法より小さく構成してある。そして、上記上端面51の長手方向(X軸方向)に対して直交する方向(Y軸方向)の一側には、X軸方向に長い段差部55が形成してある。
【0027】
上記段差部55は、X軸方向に長い平面部57と、上端面51に対して傾斜した傾斜面59とを備えた形態に構成してある。前記平面部57の、前記切欠段部53に対応する位置付近のX軸方向の両端側は、前記上端面51から次第に離れるように傾斜した傾斜面(傾斜曲面)61(
図3(B)参照)に形成してある。前記段差部55における前記平面部57は、ワークWにおける切断面における下側の切断縁の部分(切断面における下側の稜線部分)の面取り加工を行う際に、ワークWの切断縁付近に下側から当接して、ワークWに対する面取りチップ19の相対的な上昇を規制する作用をなすものである。
【0028】
前記段差部55における前記傾斜面59は、ワークWの切断面における下側の切断縁の部分を面押しして面取り加工(バリ取り加工)を行う面取り加工部(面押し部)を構成するものである。なお、前記切欠段部53における傾斜面53Sも、前記傾斜面59と同様に、ワークWの切断面における下側の切断縁の部分を面押しして、面取り加工を行う面取り加工部を構成するものである。
【0029】
上記構成によれば、前記傾斜面59と前記傾斜面53Sは、それぞれX軸方向とY軸方向とにほぼ直角に交差する形態に備えられている。したがって、例えば正方形や長方形の窓の打抜き加工を行った後、上記窓の部分の角部の面取りを行うとき、前記傾斜面59と傾斜面53Sは、前記窓のX,Y方向に直交する部分の両側の面取り加工を同時に行うことになるものである。
【0030】
既に理解されるように、面取り加工部(傾斜面)59によってワークWの切断縁の面取り加工を行うとき、ワークWの切断縁の下面は段差部55における平面部57に当接し、切断縁は面取り加工部59に当接して、面取り加工が行われるものである。この場合、前記平面部57にワークWの下面が当接し、かつ面取り加工部59によって面取り加工が行われている部分は、予め規定された正規形状の面取り加工が行われることになる。
【0031】
しかし、前記平面部57のX軸方向の両端側の傾斜面(傾斜曲面)61に対応した部分においては、ワークWの切断縁の下面から傾斜曲面61が次第に離隔する形態となるので、前記切断縁に対する面押し量が次第に浅くなって緩やかな形状の面取り加工を行うことになる。したがって、面取り加工部59は、ワークWの切断縁に予め規定した正規形状の面取り加工を行う正規面取り加工部(平面部57が切断縁の下面に当接した状態でもって面取り加工が行われる部分)と、緩やかな形状の面取り加工を行う緩和面取り加工部(平面部57が切断縁の下面から離隔した状態でもって面取り加工が行われる部分)とを備えているものである。
【0032】
以上のごとき構成において、
図4に示すように、板状のワークWに矩形状の穴Hの打抜き加工(窓抜き加工)を行った後、前記穴Hにおける内周の切断縁HLの面取り加工(バリ取り加工)を行うには、次のように行うものである。すなわち、面取り金型1における上金型3と下金型5とを上下に離隔した状態に保持する。そして、下金型5における弾性部材39の付勢力によってエジェクタプレート41がダイブロック25から上方に離隔された状態(持上げられた状態)の初期状態に保持する。この際、ダイブロック25に一体的に備えた面取りチップ19の上端部は、前記エジェクタプレート41の上面に対して相対的に没入された状態にある。
【0033】
前述のように、面取り金型1における上金型3と下金型5とが上下に離隔した状態にあるときに、ワークWをX,Y軸方向へ移動位置決め自在なワーク移動位置決め装置(図示省略)によって前記面取り金型1の位置へワークWの移動位置決めを行う。この際、
図4に概念的、概略的に示すように、下金型5に備えた面取りチップ19の傾斜面59に、前記穴HにおけるX軸方向の切断縁HXが一致するように、かつ面取りチップ19の傾斜面53Sに、穴HのY軸方向の切断縁HYが一致するように位置決めする。
【0034】
その後、パンチプレスにおけるストライカSTを下降し、上金型3におけるパンチボディ9を下降すると、パンチボディ9はワークWに当接し、エジェクタプレート41と協働して、ワークWを上下方向から挟圧保持し、ワークWを押し下げる。ワークWが押し上げられると、下金型5における弾性部材39の付勢力に抗してエジェクタプレート41が下降される。そして、エジェクタプレート41が下降されると、面取りチップ19が相対的に上昇し、ワークWにおける穴HのX軸方向の切断縁HX及びY軸方向の切断縁HYに、前記傾斜面59,53Sでもって面取り加工を行うことになる。
【0035】
この際、パンチボディ9の下面(当接面)は、パンチボディ9の中心位置を含む広い面でもってワークWを下方向へ押圧する。また、エジェクタプレート41の上面は、エジェクタプレートの中心を含む広い面でもってワークWを上方向へ押圧する。すなわち、ワークWは、面取りチップ19がパンチボディ9及びエジェクタプレート41の中心位置に位置する場合に比較して大きな面でもって押圧固定されるものである。したがって、穴Hにおける切断縁HX,HYの面取り加工を行うとき、ワークWは安定的に固定されるものである。
【0036】
前述のごとく、面取りチップ19によって穴Hにおける切断縁HX,HYの面取り加工を行うとき、パンチボディ9に備えたオイルミスト噴射孔9Bから面取りチップ19へオイルミストが噴射される。したがって、面取りチップ19の冷却を行うことができると共に、面取りチップ19とワークWとの間の潤滑を行うことができるものである。
【0037】
前述のごとく、切断縁HX,HYの面取り加工を行った後、面取りチップ19を、
図4に示すように、ワークWに対して相対的に矢印A方向へ移動して面取り加工を繰り返すことにより、切断縁HXの全長に亘って面取り加工を行うことができるものである。上述のように面取り加工を繰り返すとき、面取りチップ19におけるX軸方向の両端部における面取り加工は、面押し量が次第に浅くなって、緩やかな形状の面取り加工が行われるものである。
【0038】
したがって、上記緩やかな形状の面取り加工部においては、ワークWにおける切断縁HXの塑性変形量は小さく、加工硬化は小さなものである。よって、前回の面取り加工部分に次回の面取り加工部分の一部を重ねて面取り加工を繰り返すと、面取り加工を行った圧痕(加工硬化を生じた痕跡)を残すことなく面取り加工を行うことができるものである。
【0039】
前述のごとく、矢印A方向に面取り加工を繰り返し、矢印B方向に面取り加工を行うには、ワークWに対して上下の金型3,5を90°回転して位置決めすればよいものである。なお、パンチプレスにおいて、上下の金型3,5を水平に回動することは、例えば特開2004−268101号公報等に記載されているように既に公知である。したがって、上下の金型3,5を回動する構成についての説明は省略する。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施形態を示す説明図である。この構成において、前述した実施形態と同一機能を奏する構成要素には同一符号を付することとして、重複した説明は省略する。この第2の実施形態においては、ワークWにおける切断面の上側の切断縁に面取り加工を行う構成である。
【0041】
第2の実施形態に係る面取り金型1Aは上金型3Aと下金型5Aとを備えている。前記上金型3Aは、上型ホルダ7に回転自在に備えた回転金型ホルダ7Aに上下動自在に支持されている。なお、上記回転金型ホルダ7Aは、前記特開2004−268101号公報等において既に公知であるから、回転金型ホルダ7Aの詳細についての説明は省略する。
【0042】
前記金型ホルダ7Aには筒状のパンチガイド71が上下動自在に支持されている。このパンチガイド71内にはパンチボディ73が上下動自在に内装されている。そして、前記パンチボディ73の上部に一体的に備えたパンチドライバ75は、前記パンチガイド71の上部に備えたリテーナカラー77を上下動自在に貫通してある。このパンチドライバ75の上端部に螺着したパンチヘッド79と前記リテーナカラー77との間には、ストリッパスプリング81が弾装してある。
【0043】
前記パンチガイド71の下面には、ワークWを押圧する押圧面71Fが備えられている。そして、この押圧面71Fの偏心位置には、上下方向に貫通した貫通穴71Hが備えられている。前記パンチボディ73の下面には、前述した面取りチップ19に相当する面取りチップ19Aが備えられている。この面取りチップ19Aは、前記面取りチップ19を上下逆にした構成と同一構成であるから、面取りチップ19Aについての詳細な説明は省略する。なお、前記面取りチップ19Aは、前記貫通穴71Hから下方向へ突出自在に備えられているものである。
【0044】
前記下金型5Aは、上面が平面であるダイである。なお、
図5に示す状態は、上金型3AがストライカSTによって下降され、上金型3Aにおけるパンチガイド71と下金型5Aの上面によってワークWを挟圧固定した状態にある。そして、パンチボディ73に備えた面取りチップ19Aが貫通穴71Hから下方向へ突出されて、ワークWの切断縁に面取り加工を行った状態が示してある。
【0045】
上記構成によれば、ワークWに切断加工された切断面における上側の切断縁(稜線)に面取り加工を行い得るものである。
【0046】
なお、本発明は、前述したごとき実施形態に限るものではなく、適宜の変更を行うことにより、その他の形態でもって実施可能なものである。すなわち、上下の金型にそれぞれ面取りチップを備えて、切断面における上下の切断縁の面取り加工を同時に行う構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
3 上金型
5 下金型
9 パンチボディ
9B オイルミスト噴射孔
9H オイルミスト孔
13 パンチヘッド
17 下面(当接面)
19 面取りチップ
21 段差部
25 ダイブロック
39 弾性部材
41 エジェクタプレート
43 エジェクターピン
53 切欠段部
53S 傾斜面
55 段差部
57 平面部
59 傾斜面(面取り加工部、面押し部)
61 傾斜面(傾斜曲面)