【実施例1】
【0014】
本実施例について、
図1〜4を用いて説明する。なお、本発明は図示例に限定されるものではない。
【0015】
図1は巻上機及び、天井クレーンの外観図を示す図である。
図2は巻上機の回路構成の一例を示す図である。
【0016】
まず、
図1、
図2に基づき本実施例による巻上機1の動作について説明する。
【0017】
クレーン装置は、巻上機1と、ランウェイ2と、サドル3と、ガーダ4と、ケーブル5と、操作入力装置6を備える。巻上機1は、建屋の両側の壁に設けられたランウェイ2に沿って、車輪を備えたサドル3で走行する。サドル3は、巻上機1を支持するガーダ4を支え、ガーダ4には種々用途に応じた巻上機1が設置される。巻上機1は、ケーブル5を介して押ボタンスイッチ6に接続される。押ボタンスイッチ6は、ユーザの操作入力により巻上機1を巻上下動作や走行・横行動作を行う。
つぎに、
図2に基づき本実施例による巻上機1の動作について説明する。
【0018】
押ボタンスイッチ6は、巻上機を巻上動作させるための上ボタン13(巻上入力部)と、巻上機を巻下動作させるための下ボタン14(巻下入力部)とを有する。上ボタン13及び下ボタン14は、ユーザにより押され、押ボタンスイッチ6内の接点が閉じることで電磁接触機7の励磁コイル9を励磁する。電磁接触機7の押ボタン用接点10は、励磁した励磁コイル9により閉じられる。これにより、モータ11が通電されるとともに電磁ブレーキ12が開放され、巻上機1は巻上動作および巻下動作を開始する。
【0019】
巻上動作と巻下動作の切替えについては、押ボタンスイッチ6の上ボタン13及び下ボタン14を押した場合に、それぞれ電磁接触機7の出力側の相回転が逆になるよう接続することで、巻上動作と巻下動作を可能にしている。
【0020】
後述するように、巻上機1の運転動作回数は、押ボタンスイッチ6の操作回数と、電磁接触器7の動作回数に基づき、また、巻上機1の運転時間は、押ボタンスイッチ6の通電時間と、電磁接触器7の通電時間とに基づき、押ボタンスイッチ6が有する稼働情報記憶部に取得されて保存される。
【0021】
ここで、巻上機1において、インバータ駆動方式による電子化がなされた新型機種の普及が進む一方、巻上機1の耐久性の長さなどから従来の非インバータ駆動方式である巻上機1は未だ多く市場で取引され、現場で使用されている。非インバータ駆動方式の巻上機1は、モータ11、電磁ブレーキ12、電磁接触器7、押ボタンスイッチ6、リミットスイッチ15にて電気部品を有している。本実施例では、これらの構成により、押ボタンスイッチ6内に巻上機の稼働回数および稼働時間などの稼働状況を記憶させることができる。
【0022】
このため、本構成による稼働状況確認方法は、巻上機1本体の電子化に依存することなく、押ボタンスイッチ6内接点の開閉回数及び通電時間を電気的に記憶することで可能である。従って、本実施例における押ボタンスイッチ6は、非インバータ駆動方式の巻上機に対しても、容易に後付けし、巻上機の稼働状況を記憶することができる。
【0023】
次に本実施例における押ボタンスイッチ6及び、アワーメータユニット16の構成について、
図3と、
図4を用いて説明する。
【0024】
図3は、本実施例における押ボタンスイッチ6の内部構成及び外観の一例を示す図である。
図4は、本実施例における押ボタンスイッチ6と巻上機1の回路構成の一例を示す図である。
【0025】
上ボタン13及び下ボタン14を押すと、押ボタンスイッチ6内の押ボタン用接点10が閉じる。これにより、電磁接触器7の励磁コイル9は励磁され、電磁接触器7の電磁接触器用接点8が閉じる。電磁接触器用接点8が閉じると、アワーメータユニット16内にある入力回路部が通電され、入力回路部(信号検出部)で入力信号に置き換わる。
【0026】
入力回路部は、稼働情報記憶部20に入力信号を出力し、これにより通電時間と始動回数の測定を開始する。 また、アワーメータユニット16へ電気的信号が入力される場所は、上ボタン13と下ボタン14とからの2つあり、稼働情報記憶部20は、どちらかの入力があった場合に測定を行う。
【0027】
入力回路部は、それぞれ押ボタンスイッチ6の上ボタン13用接点10と下ボタン14用接点10とに接続されている。入力回路部は、入力された電気的信号に基づき、巻上機1の稼働時間と稼働回数として、押ボタンスイッチ6の上ボタン13または下ボタン14が押されることによりアワーメータユニット16が通電されている通電時間と、それにより巻上機1が始動した始動回数を検出する。
【0028】
入力回路部は、検出した通電時間と始動回数は稼働情報記憶部20に出力する。稼働情報記憶部20は、出力されて取得した通電時間と始動回数に基づき、稼働時間と稼働回数を記憶する。稼働情報記憶部20では、通電時間と始動回数が入力され都度、前回の通電時間と始動回数に入力された通電時間と始動回数を積算し、トータルの稼働時間と稼働回数を算出していく。
【0029】
稼働情報記憶部20は、記憶している巻上機1のトータルの稼働時間と稼働回数とに基づいて、巻上機1の残存寿命値を推定する。押ボタンスイッチ6に設けられた表示部19は、稼働時間や稼働回数に加え、推定した残存寿命値を表示する。これらの表示は、全て同時に表示されるようにしてもよいし、一つ一つ表示してユーザが所望の表示に切り替えるようにしてもよい。
【0030】
これにより、ユーザは、押ボタンスイッチ6を参照するだけで、巻上機1の稼働情報やメンテナンス時期を知ることができる。
【0031】
表示部19は、押ボタン列と同一のケース面や異なる面に設けられた開口部に配置されている。また、表示部19は、保護キャップ18を有し、必要に応じて保護キャップ18を取外すことで、ユーザが通電時間や始動回数等を参照できる。保護キャップ18を設けることで、表示部19への傷を防止することができる。
【0032】
なお、保護キャップ18は、必ず必要ではなく設けなくてもよい。
【0033】
アワーメータユニット16は、USB端子やmicro USB端子に代表される外部記憶媒体が接続可能な入出力部17が設けている。入出力部17では、必要に応じて押ボタンスイッチ6に通電させた状態、例えば巻上機1に荷物を吊っていない状態にて押ボタンスイッチ6を操作することにより、外部記憶媒体に直接もしくはデータ転送ケーブルを介して間接的に、稼働情報記憶部20に記憶された稼働時間と稼働回数などの稼働情報を取り出すことが可能である。
このように、アワーメータユニット16は、入力回路部、稼働情報記憶部20、入出力部17と、を有し、それらの動作を実現するための必要最低限の電子部品により非常にコンパクトに一体構成されている。アワーメータユニット16は、押ボタンスイッチ6のケース内に設けられる。入出力部17は、押ボタンが設けられている面と同じケース面に設けられるようになっている。
【0034】
なお、入出力部17を設ける場所は、これに限定されるものではなく、押ボタンが設けられている面と異なる面に設けた開口部であってもよい。
【0035】
入出力部17は、必要に応じて開口部に設けられた保護キャップ18を取外すことで、外部記憶媒体やデータ転送ケーブルを挿入可能とする構成にしてもよい。これにより、入出力部17への粉塵の侵入を防止し、アワーメータユニット16の故障を予防することができる。
【0036】
アワーメータユニット16は、外部記憶媒体やデータ転送ケーブルの挿入を検知すると、稼働情報の転送を行い外部記憶媒体に書込みを行う。なお、稼働情報の転送の開始は、外部記憶媒体等の挿入を検知するとただちに行うようにしてもよい。また、押ボタンスイッチ6に転送を開始する転送開始入力部を設け、この転送開始入力部がユーザから入力を受けた場合に転送を開始するようにしてもよい。
【0037】
アワーメータユニット16には、入出力部17を介して情報の書き込みも可能である。書き込む情報としては、巻上機1本体情報である製造番号や特殊仕様の注記などの初期情報や、配線図番号、交換部品履歴などのメンテナンス情報などがあり、これらの情報を稼働情報記憶部20に記憶させることが可能である。
【0038】
なお、稼働情報記憶部20は、記憶している巻上機1の稼働時間と稼働情報とに加え、入力された初期情報やメンテナンス情報等に基づいて、巻上機1の残存寿命値を推定するようにするとよい。これにより、巻上機を使用するユーザの使用状況や巻上機の種類に応じて、精度よく巻上機の残存寿命値を推定することができる。
また、アワーメータユニット16は、コンパクトなサイズであるため巻上機1本体に取付け、バックアップ用として使用することができる。例えば、電磁接触器7に接続することで万が一押ボタンスイッチ6側のアワーメータユニット16が破損した場合のバックアップ用として利用可能である。
【0039】
また、巻上機1はJISB8815及びクレーン構造規格で製品等級と常態としてつる荷重に応じて総運転時間(寿命時間)が設定されている。
巻上機の等級は,本体銘板,製品仕様書,製品カタログなどに記載されており、巻上機もこの等級に対応して設計されている。
【0040】
通常は専門家が巻上機1の操作時間と常態としてつる荷重をサンプリングすることで残存寿命を推定しているが、本発明によれば比較的想定容易な負荷のみを想定するだけで巻上機1の残存寿命が推定可能である。この場合に、入出力部17を介して、予め状態としてつる荷重の値を稼働情報記憶部20に設定しておき、この情報を含めて残存寿命値を推定すればよい。これにより、荷重の値を入力しない場合に比べ、より精度良く残存寿命値を推定することができる。
【0041】
また、押ボタンスイッチ6及び、電磁接触器7の部品寿命は、始動回数により定められているため、始動回数を把握することで押ボタンスイッチ6及び、電磁接触器7の残存寿命値が推定可能である。
【0042】
このように、本実施例によれば、巻上機1本体の制御部を確認するために高所に上ることなく手元で容易に、稼働情報やメンテナンス情報などの巻上機1に関する情報を取り出したり、入力したりすることが可能である。また、すでに市場にあり、使用されている非インバータ方式の巻上機1の押ボタンスイッチを本実施例における押ボタンスイッチ6に交換することで、稼働情報の記憶や機器情報の取り出し等が可能となる。これにより、ユーザが行うメンテナンスの一助とすることができる。
【0043】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0044】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。