(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
車両に用いられるワイパ装置は、ワイパモータを備えている。ワイパモータには、ワイパリンク機構が接続されており、ワイパリンク機構には、ピボット軸が接続されている。ピボット軸は、ピボットホルダに保持されており、ピボット軸の上端には、ワイパアームが取り付けられている。ワイパリンク機構は、ワイパモータの回転をピボット軸に伝達する。ワイパモータの回転が伝達されたピボット軸は、その回転によって回動させられる。ピボット軸が回動することで、ワイパアームが揺動する。
【0003】
この種のワイパ装置において、リンク機構の連結部分への被水を防止する防水キャップが装着されたものがある(例えば、特許文献1参照)。防水キャップは、車両のカウルトップパネルに形成されたピボット孔に対向する傘部と、ピボット孔を介して流れ込む雨水などを所定箇所に導く排水孔とを備えている。また、ピボットシャフトの上部には、Oリングが設けられている。これらの防水キャップ及びOリングが設けられていることにより、ピボットシャフトにおける軸受やリンク機構の連結部分への被水を抑制して、グリス切れなどに起因する作動抵抗の増大や異音の発生を防止している。
【0004】
さらに、このワイパ装置は、ピボットホルダにおけるホルダ筒部の軸方向の上端側に設けられた移動規制部材を備えている。移動規制部材は、プッシュナット及びワッシャを備えて構成されており、ピボットシャフトのホルダ筒部に対する軸方向への移動を規制している。
【0005】
また、ピボットシャフトの抜け止め部材としてのストッパを備えるワイパピボットがある(例えば、特許文献2参照)。このワイパピボットでは、ストッパとしてプッシュナットが用いられ、ワッシャを設けることなくピボットシャフトのホルダ筒部に対する軸方向への移動を規制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に開示されたワイパ装置では、移動規制部材がプッシュナット及びワッシャで構成されている。このため、2つの部品を組み付けなければならず、作業工数の増加の原因となる恐れがあった、特に、ワッシャはフラットワッシャであるため、作業効率を向上させるためには、フラットワッシャを1枚ずつ供給する供給設備などが必要となり、その設置場所の問題や供給設備に対する部品の充てんなどの付帯工数も発生することがあった。
【0008】
この点、上記特許文献2に開示されたワイパピボットでは、ワッシャを設けることなくプッシュナットのみでピボットシャフトのホルダ筒部に対する軸方向への移動を規制する。このワイパピボットを上記特許文献1に開示されたワイパ装置に適用することで、ワッシャを設けることによる不具合の対策とはなりえる。
【0009】
ところが、上記特許文献1に開示されたワイパ装置でワッシャを設けないとすると、ピボットシャフトの上部に設けられたOリングやピボットホルダとピボット軸との間に対しての遮水性が低下する。このため、ピボットシャフトにおける軸受やリンク機構の連結部分への被水に対する懸念が大きくなりかねなかった。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、作業工数の増加を抑制しながら、ピボットシャフトに対する遮水性を高めることができるワイパ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決した本発明の一実施形態に係るワイパ装置は、ワイパアームが固定され、ワイパモータの回転によって回動して前記ワイパアームを揺動させるピボットシャフトと、前記ピボットシャフトを回動可能に保持するピボットホルダと、前記ピボットホルダの側面に取り付けられたキャップ部材と、前記ピボットシャフトの軸方向一端側に取り付けられ、前記ピボットシャフトの前記ピボットホルダに対する軸方向への移動を規制するプッシュナットと、を備え、前記キャップ部材は、前記ピボットホルダの
上端面と前記プッシュナットとの間に配設される鍔部を備えることを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、ピボットホルダの上面側にキャップ部材の鍔部が配設されており、プッシュナットは、ピボットホルダの軸方向への移動を規制している。このため、キャップ部材の鍔部がプッシュナットとピボットホルダの上面との間に配置されるので、ワッシャを設けることなく、ピボットシャフトの上部への遮水性の低下を抑制できる。鍔部は、キャップ部材の一部であることから、キャップ部材をピボットホルダに取り付けることにより、所望の位置に鍔部が配置される。したがって、ワッシャを設けるための作業工程を省きながら、つまり作業工数の増加を抑制しながら、ピボットシャフトに対する遮水性を高めることができる。
【0013】
また、上記のワイパ装置において、前記キャップ部材は、前記鍔部の上方から流れ込む液体を滞留させる滞留部を備えていてもよい。
【0014】
このように構成することで、キャップ部材は、鍔部の上方から流れ込む液体を滞留する滞留部を備えることにより、ピボットシャフトよりも下方に配設される部材、例えばワイパリンク機構に対する被水を抑制することができる。
【0015】
また、上記のワイパ装置において、前記ワイパアームの取付部が、前記ピボットシャフトの上端部に取り付けられており、前記取付部における取付端部は、前記キャップ部材の前記鍔部よりも下方に配置されていてもよい。
【0016】
このように構成することで、ワイパアームの取付部の取付端部がキャップ部材の鍔部よりも下方に配置されるので、ワイパアームを伝う雨水などの液体が、ピボットシャフトに到達しにくくなる。したがって、ピボットシャフトに対する遮水性をより高めることができる。
また、上記のワイパ装置において、前記キャップ部材は、前記側面に取り付けられた筒部を備え、前記筒部および前記側面は、前記筒部の前記軸方向略中央において段差を備え、かつ、前記鍔部に向かうにしたがって先細りとなる先細り形状部を備えていてもよい。
【0017】
また、上記のワイパ装置において、前記ピボットホルダの上端部で前記ピボットホルダと前記ピボットシャフトとの間にOリングが介在されていてもよい。
【0018】
このように構成することで、ピボットホルダの上端部でピボットホルダとピボットシャフトとの間への雨水や埃などの侵入を抑制し、また、遮水性の低下を抑制することができる。また、ピボットシャフトとピボットホルダとの間に注入されるグリスの飛散を抑制することができる。
また、上記のワイパ装置において、前記ピポットシャフトの回動時において、前記キャップ部材と前記ピボットホルダの前記側面との間の摩擦力は、前記キャップ部材と前記プッシュナットとの間の摩擦力よりも高いものでもよい。
【0019】
また、上記のワイパ装置において、前記ワイパモータの回転を前記ピボットシャフトに伝達するワイパリンク機構を備え、
前記ワイパリンク機構は、前記ピボットシャフトの下部に接続されていてもよい。
【0020】
このように構成することで、ワイパ装置は、いわゆる下振りのワイパ装置となる。このような下振りのワイパ装置において、ワイパリンク機構に対する被水を好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るワイパ装置によれば、作業工数の増加を抑制しながら、ピボットシャフトに対する遮水性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るワイパ装置について、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、ワイパ装置を備える車両の一部の斜視図、
図2は、本発明の一実施形態に係るワイパ装置の断面図、
図3は、本発明の一実施形態に係るワイパ装置の分解斜視図である。
図1に示すように、車両は、ワイパ装置10と、ワイパモータ11と、ワイパリンク機構12と、を備えている。また、
図2及び
図3にも示すように、ワイパ装置10は、ピボットシャフト13と、ピボットホルダ14と、0リング15と、本発明のキャップ部材の一例であるピボットキャップ16と、プッシュナット17と、を備えている。
【0024】
ワイパ装置10は、図示しない車両に設けられており、
図1に示すように、車両の運転席側には、運転席側ワイパ装置10Aが設けられ、助手席側には助手席側ワイパ装置10Bが設けられている。これらの運転席側ワイパ装置10A及び助手席側ワイパ装置10Bとしては、いずれも
図2及び
図3に示すワイパ装置10が用いられている。運転席側ワイパ装置10A及び助手席側ワイパ装置10Bの説明にあたっては、いずれもワイパ装置10であり、共通する部材については共通する符号を付している。ただし、説明の便宜上、運転席側ワイパ装置10A及び助手席側ワイパ装置10Bを区別する必要があるときには、運転席側ワイパ装置10A及び助手席側ワイパ装置10Bの各部材について「A」「B」等の符号を付して、これらを区別して表示することがある。
【0025】
ワイパ装置10におけるピボットシャフト13の頂部には、ワイパ部材20が取り付けられている。ワイパ部材20は、
図4に示すように、ワイパアーム21と、アームピース22と、コイルばね23と、を備えている。ワイパアーム21の基端部には、アーム取付部21Aが形成されている。アーム取付部21Aは、中空であり、天部に蓋が形成された筒状を成しており、筒状の内側部分にシャフト固定部が形成されている。また、ピボットシャフト13の頭部には、ねじ部が設けられており、ピボットシャフト13の頭部に設けられたねじ部がアーム取付部21Aの筒状の内側部分に形成されたシャフト固定部にねじ込まれている。ワイパアーム21は、こうしてピボットシャフト13の軸方向一端側(上端側)に取り付けられている。また、ワイパアーム21のアーム取付部21Aにおける本発明の取付端部の一例である下端部21A1は、
図2に示すように、ピボットキャップ16の頂部よりも下方に位置している。
【0026】
ワイパブレード(不図示)は、アームピース22の先端側に回動自在に設けられている。コイルばね23は、ワイパアーム21の内側に設けられており、ワイパアーム21の先端側を車体側に向けて付勢している。このため、ワイパブレードは、コイルばね23の付勢力によって車体に設けられた図示しないフロントウインドに押し付けられている。
【0027】
運転席側ワイパ装置10A及び助手席側ワイパ装置10Bは、いずれも車体におけるフロントウィンドシールドの前端側に装着される図示しないカウルトップパネルによって覆われている。カウルトップパネルは、ワイパ装置10が被水するのを防止するとともに、運転席側ワイパ装置10A及び助手席側ワイパ装置10Bを覆い隠して外部からの見栄えを良くしている。
【0028】
ワイパモータ11は、車室内などに設けられた図示しない操作スイッチを操作することにより、所定の回転速度で回転駆動される。ワイパモータ11は、電動モータ及びギヤケースを有しており、電動モータの内部には、先端側にウォームを有するアーマチュア軸が回転自在に設けられている。電動モータとしては、ブラシ付き電動モータやブラシレス電動モータなどを用いることができる。
【0029】
ギヤケースの内部には、アーマチュア軸のウォームと噛み合う図示しないウォームホイールが回転自在に収容されている。ウォームおよびウォームホイールによって減速機構が構成されている。減速機構は、アーマチュア軸の回転を所定の回転速度にまで減速し、減速して高トルク化された回転をウォームホイールに設けた出力軸から外部に出力する。
【0030】
ワイパリンク機構12は、ワイパモータ11の回転運動をワイパアーム21の揺動運動に変換している。ワイパリンク機構12は、ワイパモータ11と運転席側ワイパ装置10A及び助手席側ワイパ装置10Bのそれぞれのピボットシャフト13,13との間に配置されている。ワイパリンク機構12は、
図1に示すように、クランクアーム12Aと、駆動ロッド12Bと、運転席側駆動レバー12Cと、助手席側駆動レバー12Dと、連結ロッド12Eと、を備えている。
【0031】
クランクアーム12Aの一端は、ワイパモータ11の出力軸に固定され、他端はボールジョイント12Fを介して駆動ロッド12Bの一端に回動自在に連結されている。助手席側駆動レバー12Dの一端は、助手席側ピボットシャフト13Bの下部における他端側(下端側)に固定されている。助手席側駆動レバー12Dの他端は、駆動ロッド12Bの他端に回動可能に連結されている。
【0032】
運転席側駆動レバー12Cの一端は、運転席側ピボットシャフト13Aの下部における他端側に固定されている。運転席側駆動レバー12Cの他端は、連結ロッド12Eの一端に回動可能に連結されている。連結ロッド12Eの他端は、助手席側駆動レバー12Dの他端に回動可能に連結されている。このため、ワイパモータ11を回転駆動することにより運転席側ピボットシャフト13Aと助手席側ピボットシャフト13Bとが同期して同一方向に揺動駆動される。また、ワイパリンク機構のクランクアーム12A、駆動ロッド12B、運転席側駆動レバー12C、助手席側駆動レバー12D、及び連結ロッド12Eは、ピボットシャフト13の下側で回転運動を行っている。このように、ワイパ装置10は、いわゆる下振りのワイパ装置である。
【0033】
図2及び
図3に示すピボットホルダ14は、溶融したアルミ材料などを鋳造成形することにより所定形状に形成されている。
図1に示すように、運転席側ピボットホルダ14A及び助手席側ピボットホルダ14Bは、中空パイプよりなるフレーム部材50によって互いに接続されている。このため、ワイパ装置10は、所謂フレーム一体型のモジュラー型ワイパ装置となっている。
【0034】
図2及び
図3に示すように、ピボットホルダ14は、略円筒形状に形成されたホルダ筒部31を有している。ホルダ筒部31は、ピボットシャフト13を回動可能に保持している。ホルダ筒部31の内側には、ホルダ筒部31の軸方向に並ぶようにして上端側軸受部材32U及び他端側軸受部材32Lが装着されている。上端側軸受部材32U及び他端側軸受部材32Lは、ホルダ筒部31の軸方向両端側にそれぞれ配置されている。上端側軸受部材32U及び他端側軸受部材32Lが設けられていることにより、ピボットシャフト13のスムーズな相対回転が許容される。また、ピボットシャフト13とピボットホルダ14との間には隙間が形成されており、この隙間にグリスが注入されている。このグリスの注入により、ピボットシャフト13のスムーズな相対回転を促進している。
【0035】
ピボットホルダ14は、固定脚部33を備えている。固定脚部33は、図示しない固定ボルトを介してホルダ筒部31を車体に固定している。固定脚部33にはゴム製のブッシュ34が装着されている。固定脚部33は、ブッシュ34を介して車体に取り付けられている。ブッシュ34は、ワイパモータ11の振動の車体への伝達を抑制している。
【0036】
ピボットホルダ14は、さらにフレーム固定部35を備えている。フレーム固定部35は、
図3に示すように、ホルダ筒部31から固定脚部33が延びる方向とは異なる方向に延びて設けられている。フレーム固定部35は、フレーム部材50の一端側に差し込まれるようになっている。そして、フレーム固定部35に形成された複数のかしめ用凹部36に向けて、
図1に示すフレーム部材50の一端側を径方向外側からかしめ加工することで、フレーム部材50の一端側をフレーム固定部35に強固に固定できる。
【0037】
図2に示すように、Oリング15は、上端側軸受部材32Uの上側の近傍位置及び他端側軸受部材32Lの下側の近傍位置にそれぞれ配置されている。Oリング15は、ゴムなどの弾性部材によって形成されている。Oリング15は、ピボットシャフト13とホルダ筒部31との間への雨水や埃などの侵入を阻止している。また、ピボットシャフト13とピボットホルダ14との間に注入されるグリスにより、回転時のピボットシャフト13とOリング15と間の摩擦力を低減している。
【0038】
ピボットキャップ16は、ピボットホルダ14の側面に取り付けられている。ピボットキャップ16は、弾性変形可能な軟質プラスチックなどを射出成形することで、
図2及び
図3に示すように、略椀状に形成されている。ピボットキャップ16は、キャップ筒部41と、滞留部42と、鍔部43と、を備えている。
【0039】
ピボットキャップ16のキャップ筒部41は、中空の筒状を成している。キャップ筒部41の内側形状は、ピボットホルダ14のホルダ筒部31の上端側の外側形状に沿った形状とされている。このため、キャップ筒部41は、ホルダ筒部31の上端側に側面に当接して装着されている。
【0040】
ピボットキャップ16の滞留部42は、キャップ筒部41を取り囲むように形成されている。滞留部42の上部開口側は、カウルトップパネルに形成されたピボット孔と対向している。滞留部42がピボット孔と対向していることにより、カウルトップパネルを介して伝う雨水などの液体がピボットキャップ16の頂部に滴下される。ピボットキャップ16の頂部に滴下された雨水などの液体は、ピボットキャップ16の鍔部43の上方から滞留部42に流れ込む。また、ピボット孔からは枯葉などの異物が混入することもある。滞留部42は、流れ込んだ雨水などの液体や混入した枯葉などの異物を滞留させている。
【0041】
滞留部42における側壁部分には、排水孔42Hが形成されている。排水孔42Hは、平面視してピボットホルダ14における固定脚部33及びフレーム固定部35からずれた位置に形成されている。滞留部42に滞留する雨水などは、排水孔42Hから排出され、図示しない車体のカウル内を介して車体の外部に排水される。
【0042】
ピボットキャップ16の鍔部43は、円盤状をなしており、キャップ筒部41の上端側から内側方向に延びて形成されている。鍔部43の中央部には、開口部が形成されており、この開口部にピボットシャフト13が貫通している。鍔部43は、ピボットホルダ14のホルダ筒部31の上面側に配設されており、ホルダ筒部31及びOリング15を覆って配設されている。また、ピボットキャップ16の頂部よりも下方に位置しているアーム取付部21Aの下端部21A1は、ピボットキャップ16の鍔部43よりも下方に位置している。
【0043】
プッシュナット17は、ホルダ筒部31の上面側に載置されている。プッシュナット17と、ホルダ筒部31の上端面との間には、ピボットキャップ16の鍔部43が配設されている。プッシュナット17は、ピボットシャフト13に固定されるとともに、鍔部43を上方から押圧している。プッシュナット17は、鍔部43を介してホルダ筒部31の上端側を押圧することでピボットホルダ14のホルダ筒部31に対する軸方向への移動を規制している。プッシュナット17の半径寸法は、ホルダ筒部31の上端面の半径寸法と略同じ半径寸法に設定されている。
【0044】
以上の構成を有する本発明の一実施形態に係るワイパ装置は、ピボットホルダ14のホルダ筒部31の上面側にピボットキャップ16の鍔部43が配設されている。また、プッシュナット17は、鍔部43を上方から押圧し、鍔部43を介してピボットシャフト13の軸方向へのピボットホルダ14の移動を規制している。
【0045】
ここで、従来のワイパ装置と、本発明の一実施形態に係るワイパ装置とを対比する。
図5(A)は、従来のワイパ装置の断面図、(B)は、本発明の一実施形態に係るワイパ装置の断面図である。なお、従来のワイパ装置において、本発明の一実施形態に係るワイパ装置と共通する部材については、共通する符号を付して、説明を行う。
【0046】
図5(A)に示すように、従来のワイパ装置10Xでは、プッシュナット17とピボットホルダ14のホルダ筒部31との間にワッシャ18Xが配置されている。ワッシャ18Xは、ホルダ筒部31及びOリング15を覆って配置されており、プッシュナット17によって上方から押圧されている。このため、ワッシャ18Xとホルダ筒部31との間、さらにはワッシャ18XとOリング15との間には、雨水などの液体が入りにくくされている。このため、ピボットシャフト13の上部に設けられたOリング15に対しての遮水性の低下を抑制するようにしている。しかしながら、ワッシャ18Xとピボットホルダとは別部材で構成されているため、ワッシャ18Xとホルダ筒部31との間、ワッシャ18Xとピボットキャップ16の上面との間、ワッシャ18XとOリング15との間には、微小な隙間が形成されてしまう虞があるため、遮水性の低下の抑制は完全には図れない可能性がある。
【0047】
一方、
図5(B)に示すように、本発明の一実施形態に係るワイパ装置10では、プッシュナット17とピボットホルダ14のホルダ筒部31との間にピボットキャップ16の鍔部43が配置されている。鍔部43は、ホルダ筒部31及びOリング15を覆って配置されており、プッシュナット17によって上方から押圧されている。このため、鍔部43とホルダ筒部31との間、さらには鍔部43とOリング15との間には、雨水などの液体が入りにくくされている。このため、ピボットシャフト13の上部に設けられたOリング15に対しての遮水性の低下を抑制できる。
【0048】
ここで、
図5(A)に示す従来のワイパ装置10Xでは、ワッシャ18Xが設けられていることにより、ワイパ装置10Xを組み付ける際にあたって、ピボットシャフト13、ピボットホルダ14、ピボットキャップ16、プッシュナット17のほかに、ワッシャ18Xを組み付ける作業が必要となる。
【0049】
この点、本発明の一実施形態に係るワイパ装置10では、プッシュナット17とホルダ筒部31との間に介在される鍔部43は、ピボットキャップ16に設けられている。このため、ワイパ装置10を組み付ける際にあたって、ピボットシャフト13、ピボットホルダ14、ピボットキャップ16、プッシュナット17を組み付ければよく、ワッシャ18Xを組み付ける作業が不要となる。したがって、ワイパ装置10では、ワッシャを設けるための作業工程を省きながら、Oリングに対しての遮水性の低下を抑制できるので、作業工数の増加を抑制しながら、ピボットシャフトに対する遮水性を高めることができる。
【0050】
また、従来のワイパ装置10Xでは、Oリング15の上方にワッシャ18Xが配置されている。ワイパ装置10Xを作動させると、ピボットシャフト13及びプッシュナット17が回転する。このピボットシャフト13及びプッシュナット17の回転に引きずられてワッシャ18Xがピボットシャフト13周りに回転してしまうことが起こりえる。ワッシャ18Xが回転すると、ワッシャ18Xの回転力がOリング15に伝達してしまい、ピボットシャフト13に対するOリング15の位置がずれる恐れがある。Oリング15の位置のずれは、ピボットシャフト13とピボットホルダ14との間に注入されたグリスの漏れの原因となりえる。したがって、ピボットシャフト13とピボットホルダ14との間に注入されたグリスに漏れが生じると、Oリング15における遮水性が低下する。
【0051】
この点、本発明の一実施形態に係るワイパ装置10では、Oリング15の上方には、ピボットキャップ16の鍔部43が配置されている。ピボットキャップ16は、ピボットホルダ14の側面に取り付けられており、ピボットホルダ14との間には高い摩擦力が生じている。このため、ワイパ装置10Xを作動させると、ピボットシャフト13及びプッシュナット17が回転させたとしても、このピボットシャフト13及びプッシュナット17の回転に引きずられて鍔部43が回転することが抑制される。したがって、ピボットシャフト13とピボットホルダ14との間に注入されたグリスの漏れを抑制することができる。また、ピボットキャップ16は弾性変形可能な軟質プラスチックなどの樹脂で形成され、プッシュナット17との間の摩擦力は低い。このため、ピボットシャフト13及びプッシュナット17の回転に引きずられた鍔部43の回転は、さらに好適に抑制することができる。
【0052】
また、ワイパ装置10のピボットキャップ16は、キャップ筒部41を取り囲む滞留部42を備えている。滞留部42には、ピボット孔から流入した雨水などが滞留する。したがって、ピボットホルダ14の下方にあるワイパリンク機構12の連結部分に対する被水を抑制することができる。
【0053】
また、ワイパアーム21のアーム取付部21Aにおける下端部21A1は、ピボットキャップ16のキャップ筒部41および鍔部43を覆って配置されている。このため、ワイパアームを伝う雨水などの液体は、ピボットキャップ16の外側部分を通じて滞留部42に案内されるので、ピボットキャップ16が取り付けられたピボットシャフト13に到達しにくくなる。さらに、キャップ筒部41とピボットホルダ14とには、キャップ筒部41の軸方向略中央において段差部が設けられ、かつ、ピボットホルダ14およびピボットキャップ16は鍔部43方向へ向かうにしたがって先細りとなる先細り形状部が設けられている。この構成により、ピボットホルダ14およびピボットキャップ16の段差部と先細り形状部とに沿ってアーム取付部21Aおよび下端部21A1を配置することができるため、滞留部42に案内された雨水などの液体が、鍔部43付近まで跳ね返ることや這い上がることを抑制しつつ、組み付け性を向上させることができる。したがって、ピボットシャフト13に対する遮水性をより高めることができる。
【0054】
運転席側駆動レバー12Cおよび助手席側駆動レバー12Dがピボットシャフト13の上側に連結されるいわゆる上振りのワイパ装置では、各駆動レバーが、ピボットキャップ16の下方に配置できないことがある。この場合、各駆動レバーが被水する可能性が高くなることがある。この点本発明の一実施形態に係るワイパ装置10では、運転席側駆動レバー12Cおよび助手席側駆動レバー12Dがピボットシャフト13の下端部に連結されており、各駆動レバーは、いわゆる下振りのワイパ装置に設けられたものである。したがって、各駆動レバーは、ピボットキャップ16の下方に配置されるので、各駆動レバーに対する被水を好適に抑制することができる。
【0055】
なお、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、ピボットキャップ16には、滞留部42が設けられているが、滞留部42が設けられておらず、キャップ筒部41でピボットキャップ16が形成されるようにしてもよい。また、排水孔42Hの形状は、他の形状でもよい。
【0056】
また、鍔部43は、ピボットホルダ14の上面の全体を覆うとともに、上端側軸受部材32Uの上面の全体を覆っているが、上端側軸受部材32Uの上面については、全体ではなくその一部を覆うようにしてもよい。例えば、上端側軸受部材32Uの半分程度まで覆っていればよい。この場合でも、ピボットシャフトに対する遮水性を高めることができる。
【0057】
また、ピボットホルダ14の上端部でピボットホルダ14とピボットシャフト13との間にOリング15が介在されているものを示したが、これに限らず、Oリング15を備えないものであってもよい。この場合、ワイパアーム21のアーム取付部21Aにおける下端部21A1は、ピボットキャップ16のキャップ筒部41および鍔部43を覆って配置されているため、ワイパアームを伝う雨水などの液体は、ピボットキャップ16の外側部分を通じて滞留部42に案内される。そのため、雨水などの液体は、ピボットキャップ16が取り付けられたピボットシャフト13に到達しにくくなる。さらに、キャップ筒部41とピボットホルダ14とは、キャップ筒部41の軸方向略中央において段差部を設け、かつ、ピボットホルダ14およびピボットキャップ16は鍔部43方向へ向かうにしたがって先細り形状としている。この構成により、ピボットホルダ14およびピボットキャップ16の段差部と先細り形状とに沿ってアーム取付部21Aおよび下端部21A1を配置することができるため、滞留部42に案内された雨水などの液体が、鍔部43付近まで這い上がることを抑制しつつ、組み付け性を向上させている。したがって、ピボットシャフト13に対する遮水性を高めることができため、Oリング15をなくすことが可能となり、Oリンク15をなくすことで、部品点数の削減による組み付け性の向上やコスト低減を図ることができる。
【0058】
また、鍔部43がプッシュナット17によって上方から押圧されている構成を示したが、これに限らず、プッシュナット17は押圧設定されていなくてもよい。すなわち、プッシュナット17によって、ピボットホルダ14のホルダ筒部31に対する軸方向への移動が規制されていればよいため、プッシュナット17の組付け時における押圧の設定に幅を持たせることで、ピボットホルダ14やホルダ筒部31、プッシュナット17の寸法誤差を許容することができる。