(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
図1には液状化試験システム10が示されている。液状化試験システム10は、地盤から採取された供試体に対し、載荷と除荷とを含む繰返し載荷を供試体のひずみを検出しながら1回以上ずつ行う載荷試験を実行可能な液状化試験装置12と、載荷試験の試験結果から液状化強度曲線を生成する液状化強度曲線生成装置14を含んでいる。
【0016】
図2に示すように、液状化試験装置12は、三軸圧力室30、セル圧供給部32、背圧供給部34、軸荷重載荷部36、軸変位センサ38、荷重センサ40、間隙水圧センサ42及び制御部44を含んでいる。三軸圧力室30は、載荷台46に固定されており、被覆部材によって表面が覆われた供試体48が内部にセットされると共に、内部に所定の液面高さまで水が注入される。なお、供試体48は例えば円柱状とされ、円柱状の軸線が鉛直方向に沿うように三軸圧力室30内にセットされる。以下、三軸のうち円柱状の軸線の方向を「軸方向」、残りの二軸の方向を「側方向」という。
【0017】
セル圧供給部32は、三軸圧力室30内に空気によって圧力(セル圧)を供給する。セル圧供給部32によって供給されたセル圧は、三軸圧力室30内の供試体48に三軸方向から各々加わる。セル圧供給部32は制御部44に接続されており、セル圧供給部32によって三軸圧力室30内に供給されるセル圧の大きさは制御部44によって制御される。なお、セル圧供給部32によって供給されるセル圧は、供試体48の側方向に作用する応力(側方向応力)σ
rに等しい。
【0018】
背圧供給部34は、内部が水で満たされた管路50を介して、三軸圧力室30内にセットされた供試体48と連通されており、空気によって供試体48に間隙水圧(背圧)を加える。背圧供給部34は制御部44に接続されており、背圧供給部34によって供試体48内に加わる背圧の大きさは制御部44によって制御される。
【0019】
軸荷重載荷部36は、載荷枠52に取り付けられており、空気圧又は油圧によって圧力伝達部材54を上下動させることで、三軸圧力室30内の供試体48に軸方向に、振動的に変化する軸荷重を加える。軸荷重載荷部36は制御部44に接続されており、軸荷重載荷部36によって供試体48内に加わる軸荷重の周期(周波数)及び振幅の大きさは制御部44によって制御される。具体的には、制御部44による制御に応じて、軸荷重載荷部36は、せん断応力τ及び初期有効拘束圧σ’
cによって表される繰返し応力比τ/σ’
cに対応する振幅で変化する軸荷重を、供試体48に作用させる。本実施形態では、供試体48に作用する繰返し応力比を一定とする場合を例に説明する。
【0020】
軸変位センサ38は、圧力伝達部材54に取り付けられた従動部材56の軸方向の変位を検出することで、供試体48の軸方向の高さHの変化量ΔH(以下、軸変位ΔHという)を検出する。軸変位センサ38は制御部44に接続されており、軸変位センサ38によって検出された供試体48の軸変位ΔHは制御部44へ出力される。
【0021】
荷重センサ40は、軸荷重載荷部36から圧力伝達部材54を介して供試体48に加わる軸荷重、すなわち軸差応力q=σ
a−σ
r(但し、σ
aは供試体48の軸方向に作用する応力(軸方向応力)である)を検出する。荷重センサ40は制御部44に接続されており、荷重センサ40によって検出された供試体48の軸差応力qは制御部44へ出力される。
【0022】
間隙水圧センサ42は、管路50と連通されており、管路50内の水圧(間隙水圧)を検出する。間隙水圧センサ42は制御部44に接続されており、間隙水圧センサ42によって検出された間隙水圧は制御部44へ出力される。なお、間隙水圧u=背圧u
0+供試体48の過剰間隙水圧Δuであり、制御部44は、間隙水圧センサ42より入力された間隙水圧uから、背圧供給部34が供給している背圧u
0を減算することで、供試体48の過剰間隙水圧Δuを求める。
【0023】
また、制御部44は、以下の式(1)に示すように、供試体48の側方向に作用する側方向応力σ
rから、背圧供給部34が供給している背圧u
0を減算することで、供試体48の初期有効拘束圧σ’
c(=
0σ
c)を求める。
【0025】
また、制御部44は、以下の式(2)に示すように、供試体48の側方向に作用する側方向応力σ
rから間隙水圧uを減算することで、nサイクル目の繰返し載荷における供試体48の有効拘束圧
nσ’
cを求める。なお、有効拘束圧
nσ’
cは、nサイクル目の繰返し載荷において、軸差応力q=0のときに算出される。
【0027】
また、制御部44は、以下の式(2A)に示すように、nサイクル目の繰返し載荷における過剰間隙水圧Δu
nを初期有効拘束圧σ'
cで除算することで、nサイクル目の繰返し載荷における過剰間隙水圧比を求める。
【0029】
本実施形態では、上述のように、制御部44によって供試体48の過剰間隙水圧、過剰間隙水圧比、初期有効拘束圧、及び有効拘束圧が求められる場合を例に説明する。
【0030】
制御部44はコンピュータを含み、液状化強度曲線生成装置14(
図1参照)と通信回線を介して接続されている。制御部44は、液状化試験装置12で載荷試験を行う際に、後述する載荷試験処理を行う。
【0031】
一方、
図1に示すように、液状化強度曲線生成装置14は、通知部16、取得部18、第1演算部20、第2演算部22、及び出力部24を含んでいる。
【0032】
通知部16は、液状化試験装置12で載荷試験が実行される際に、載荷試験の試験条件を液状化試験装置12へ通知する。
【0033】
取得部18は、供試体に対して載荷試験を行うことで得られた試験結果を液状化試験装置12から取得する。取得部18で取得された試験結果には、初期有効拘束圧σ’
cと、各回の繰返し載荷での繰返し応力比τ/σ’
cと、各回の繰返し載荷での供試体の軸変位ΔH及び軸差応力qの推移と、各回の繰返し載荷での供試体の過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
c及び有効拘束圧
nσ’
cとが含まれている。
【0034】
第1演算部20は、取得部18で取得された試験結果に基づき、載荷試験の各回の繰返し載荷での供試体の応力ひずみ関係から、供試体48の消費エネルギーを算出する。
【0035】
具体的には、第1演算部20は、液状化試験装置12で行われた載荷試験のうち、各回の繰返し載荷における軸変位ΔH、軸差応力qの推移を取得する。そして、第1演算部20は、軸変位ΔHからせん断ひずみγを算出すると共に、軸差応力qからせん断応力τを算出することで、各回の繰返し載荷におけるせん断ひずみγとせん断応力τの推移を求める。なお、せん断ひずみγは以下の(3)式、せん断応力τは以下の(4)式から算出される。
【0037】
次に、第1演算部20は、各回の繰返し載荷におけるせん断ひずみγ及びせん断応力τの推移から、供試体48の消費エネルギーΔUを演算する。例えば、i回目の繰返し載荷における供試体48の消費エネルギーΔU
iは、以下の(5)式から算出できる。
【0039】
次に、第1演算部20は、取得部18で取得された試験結果と、各回の繰返し載荷における消費エネルギーとに基づいて、正規化された供試体48の累積消費エネルギーの増分と繰返し載荷の繰返し応力比との関係を生成する。また、第1演算部20は、取得部18で取得された試験結果と各回の繰返し載荷における消費エネルギーとに基づいて、正規化された累積消費エネルギーと過剰間隙水圧比との関係を生成する。
【0040】
まず、正規化された供試体48の累積消費エネルギーの増分と繰返し載荷の繰返し応力比との関係の生成方法について説明する。
【0041】
第1演算部20は、取得部18で取得された試験結果のうち、初期有効拘束圧σ’
c、各回の繰返し載荷での供試体の過剰間隙水圧Δu
n、及び各回の繰返し載荷での供試体の有効拘束圧
nσ’
cを取得する。また、第1演算部20は、各回の繰返し載荷におけるせん断応力τ
nを取得する。なお、せん断応力τ
nは、各回の繰返し載荷毎に同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0042】
次に、第1演算部20は、複数回の繰返し載荷の各々について、n回目の繰返し載荷までの消費エネルギー(ΔU
1,ΔU
2,…,ΔU
n)から、供試体48の累積消費エネルギーを算出する。n回目の繰返し載荷までの累積消費エネルギーU
nは、以下の(6)式から算出できる。
【0044】
次に、第1演算部20は、複数回の繰返し載荷の各々について、累積消費エネルギーU
nを、n回目の繰返し載荷の開始における供試体48の有効拘束圧
nσ’
cによって除算し、正規化された供試体48の累積消費エネルギー(U
n/
nσ’
c)の増分Δ(U
n/
nσ’
c)を得る。
【0045】
具体的には、第1演算部20は、まず、n回目の繰返し載荷での正規化された累積消費エネルギー(U
n/
nσ’
c)を算出する。そして、第1演算部20は、正規化された累積消費エネルギー(U
n/
nσ’
c)から、前回の繰返し載荷において算出された、正規化された累積消費エネルギーを(U
n−1/
n−1σ’
c)減算して、正規化された累積消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)を得る。なお、n回目の繰返し載荷の開始における供試体48の有効拘束圧
nσ’
cは、取得部18で取得された試験結果に含まれている。
【0046】
次に、第1演算部20は、複数回の繰返し載荷の各々について、取得部18で取得された試験結果から、n回目の繰返し載荷の繰返し応力比τ
n/
nσ’
cを取得する。n回目の繰返し載荷の繰返し応力比τ
n/
nσ’
cは、n回目の繰返し載荷のせん断応力τ
nを、n回目の有効拘束圧
nσ’
cによって除算することにより得られる。
【0047】
そして、第1演算部20は、複数回の繰返し載荷の各々について、正規化された供試体48の累積消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)と、繰返し応力比τ
n/
nσ’
cとの関係を生成する。本実施の形態では、正規化された累積消費エネルギーの増分と繰返し応力比との関係は、グラフによって表される。
【0048】
次に、正規化された累積消費エネルギーと過剰間隙水圧比との関係の生成方法について説明する。
【0049】
具体的には、第1演算部20は、複数回の繰返し載荷の各々について、取得部18で取得された試験結果から、n回目の繰返し載荷の過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cを得る。n回目の繰返し載荷の過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cは、n回目の繰返し載荷の過剰間隙水圧Δu
nを供試体48の初期有効拘束圧σ’
cによって除算することにより得られる。
【0050】
そして、第1演算部20は、複数回の繰返し載荷の各々について、既に算出された、正規化された累積消費エネルギー(U
n/
nσ’
c)と、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cとの関係を生成する。本実施の形態では、正規化された累積消費エネルギーと過剰間隙水圧比との関係は、グラフによって表される。
【0051】
また、第1演算部20は、複数回の繰返し載荷の各々について、正規化された累積消費エネルギー(U
n/
nσ’
c)と、n+1サイクル時の過剰間隙水圧比(1−
n+1σ’
c/σ’
c)との関係を生成する。n+1サイクル時の過剰間隙水圧比は、以下の式(7)に示すように、n+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cと初期有効拘束圧σ’
cとに応じて算出される。
【0053】
図3、
図4、及び
図5に、第1演算部20によって得られる関係の一例を示す。
図3は、正規化された供試体48の累積消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)と、繰返し応力比τ
n/
nσ’
cとの関係を表すグラフの一例である。また、
図4は、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cと、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cとの関係を表すグラフの一例である。また、
図5は、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cと、n+1サイクル時の過剰間隙水圧比(1−
n+1σ’
c/σ’
c)との関係を表すグラフの一例である。
【0054】
図3、
図4、及び
図5に示す例は、No.1〜No.4の4つの供試体に対する液状化試験の試験結果から得られたグラフである。4つの供試体の液状化試験の試験条件を以下に示す。
【0055】
【表1】
γ
t:湿潤単位体積重量
e :間隙比
D
r:相対密度
τ/σ'
c:繰返し応力比
N
u=95%:過剰間隙水圧比0.95以上となる繰返し回数
【0056】
上記表1に示すように、No.1〜No.4の供試体は、性状が揃っているといえる。
【0057】
繰返し応力比が大きくなると、やや密な供試体ではサイクリックモビリティーが起こることで過剰間隙水圧比の上昇に寄与しないどころか、抑制する方向に働く消費エネルギーが発生する。このため、繰返し応力比が大きくなると累積消費エネルギーU
n及び各サイクルの過剰間隙水圧比の関係における相関が低下する。これに対して、累積消費エネルギーU
nをnサイクル開始時の有効拘束圧
nσ’
cで正規化した値及び過剰間隙水圧比の関係では、繰返し応力比が大きくなっても、累積消費エネルギーU
nを各サイクルでの有効拘束圧
nσ’
cで正規化した方が過剰間隙水圧比との相関性が高い状態で保持される。そのため、本実施形態では、累積消費エネルギーU
nを各サイクルでの有効拘束圧
nσ’
cで正規化し、上記
図4に示したような関係を生成する。
【0058】
また、上記
図3に示すように、繰返し応力比については、初期有効拘束圧σ’
cではなくnサイクル開始時の有効拘束圧
nσ’
cを用いる。これにより、初期繰返し応力比の値によらず、nサイクル目の繰返し応力比τ
n/
nσ’
cと正規化した累積消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)には一意的な関係があることが分かる。
【0059】
図3及び
図4に示すように、第1演算部20によって得られる各関係は、曲線上にプロットできることを示している。したがって、1つの供試体を用いて、上記
図3及び上記
図4の曲線を求めれば、任意の繰返し応力比における液状化に至るまでの繰返し回数を算定することが可能となる。
【0060】
第2演算部22は、第1演算部20によって得られた、正規化された累積消費エネルギーの増分と繰返し載荷の繰返し応力比との関係、及び正規化された累積消費エネルギーと過剰間隙水圧比との関係に基づいて、所定の繰返し応力比に対応する、供試体の土が液状化に至るまでの繰返し載荷の回数を算出する。
【0061】
具体的には、第2演算部22は、第1演算部20によって得られた3つのグラフに基づいて、供試体の土が液状化に至るまでの繰返し載荷の回数を算出する。なお、以下では、正規化された累積消費エネルギーの増分と繰返し載荷の繰返し応力比との関係を表すグラフを第1のグラフと称し、正規化された累積消費エネルギーと過剰間隙水圧比との関係を表すグラフを第2のグラフと称する。また、正規化された累積消費エネルギーとn+1サイクル時の過剰間隙水圧比との関係を表すグラフを第3のグラフと称する。
【0062】
まず、第2演算部22は、任意の繰返しせん断応力τと初期有効拘束圧σ’
cとの組み合わせ(τ,σ’
c)を設定する。
【0063】
次に、第2演算部22は、設定された繰返しせん断応力τと、初期有効拘束圧σ’
c又は前回のサイクルで算出された有効拘束圧
nσ’
cとに基づいて、繰返し応力比τ/
nσ’
c(又はτ/σ’
c)を算出する。
【0064】
そして、第2演算部22は、以下の式(8)に示すように、第1演算部20によって得られた第1のグラフに基づいて、算出された繰返し応力比τ/
nσ’
c(又はτ/σ’
c)に応じて、正規化された消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)を取得する。なお、以下の式における「→」は、第1〜第3のグラフ上のプロット点に基づいて、対応する値を求めることを表している。
【0066】
次に、第2演算部22は、前回のサイクルで算出された、正規化された累積消費エネルギーU
n−1/
n−1σ’
cと正規化された消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)とに基づいて、以下の式(9)に従って、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cを算出する。また、第2演算部22は、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cと前回のサイクルで算出された有効拘束圧
nσ’
cとに基づいて、以下の式(10)に従って、累積消費エネルギーU
nを算出する。
【0068】
次に、第2演算部22は、第1演算部20によって得られた第2のグラフに基づいて、上記算出された、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cに応じて、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cを取得する。そして、第2演算部22は、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cと初期有効拘束圧σ’
cとに基づいて、過剰間隙水圧Δu
nを算出する。従って、以下の式(11)に示されるように、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cから過剰間隙水圧Δu
nが求められる。
【0069】
また、第2演算部22は、第1演算部20によって得られた第3のグラフに基づいて、上記算出された、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cに応じて、n+1サイクル時の過剰間隙水圧比(1−
n+1σ’
c/σ’
c)を取得する。そして、第2演算部22は、過剰間隙水圧比(1−
n+1σ’
c/σ’
c)と初期有効拘束圧σ’
cとに基づいて、n+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cを算出する。従って、以下の式(12)に示されるように、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cからn+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cが求められる。nサイクル時の過剰間隙水圧比と、(n+1)サイクル開始時の過剰間隙水圧比は異なることがあるため、本実施の形態では、第3のグラフから得られる関係を用いて、次サイクルの有効拘束圧を求める。
【0070】
なお、第2演算部22は、第3のグラフを用いずにn+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cを求めてもよい。例えば、第2演算部22は、初期有効拘束圧σ’
cと算出された過剰間隙水圧Δu
nとに基づいて、以下の式(13)に従って、n+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cを求めてもよい。
【0072】
そして、第2演算部22は、供試体の土が液状化に至ったか否かを表す判定条件が満たされたか否かを判定する。本実施形態では、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cが0.95以上であるか否かを判定条件として用いる。従って、第2演算部22は、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cが0.95以上であるか否かを判定し、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cが0.95以上である場合には、その時点での繰返し回数Nと繰返し応力比とを記憶部(図示省略)に記憶させる。一方、第2演算部22は、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cが0.95未満である場合には、次のサイクルへ進む。
【0073】
そして、第2演算部22は、記憶部(図示省略)に記憶された、設定された繰返し応力比各々についての繰返し回数に基づいて、液状化強度曲線を生成する。
【0074】
出力部24は、第2演算部22によって各回の繰返し載荷での応力の大きさ毎に各々演算された繰返し回数に基づいて、繰返し回数と繰返し載荷での応力比とを座標軸とする2次元座標上に供試体の液状化強度曲線を描画・生成し、生成した液状化強度曲線を出力する。
【0075】
上記
図3及び上記
図4に示した一意的な関係を用いると、任意の繰返し応力比に対して実験の挙動をシミュレーションすることができる。すなわち、一つの供試体で液状化強度曲線を算定することが可能となる。
【0076】
図6に、液状化強度曲線の一例を示す。
図6に示す例は、上記表1の実験結果を用いてNo.1〜No.4の供試体から液状化強度曲線を生成した結果である。
図6において、黒丸の凡例が実験結果であり、4本の実線がシミュレーション結果である。
図6に示すように、1つの供試体から1つの液状化強度曲線が生成される。
図6から、それぞれの液状化強度曲線が良く一致していることが分かり、消費エネルギーによる液状化評価と従来の液状化強度には密接な関係があることを示唆している。
【0077】
また、上記表1に示した実験での繰返し応力比は0.202〜0.293の範囲であるが、シミュレーションでは0.08〜0.6の範囲とした。このように実験での範囲外まで推定できるのは、上記
図3に示すようにnサイクル目の有効拘束圧で繰返し応力比を算定しているため、大きな繰返し応力比に対しても繰返し回数を求められるためである。
【0078】
なお、上記
図3〜
図5に示す例では、原点から最初のプロット点までの値が存在しないため、本実施形態では、上記
図6の液状化強度曲線を生成する際に上記
図3〜
図5の各グラフに対し原点からの補間を行った。上記
図6の液状化強度曲線は、
図3〜
図5の各グラフの原点から最初のプロット点までの空白部分を対数補間によって補間し、補間された
図4〜
図6の各グラフから生成されたものである。なお、線形補間によって原点から最初のプロット点までの補間を行い、補間された第1〜第3のグラフから液状化強度曲線を生成することもできる。
【0079】
図7には、液状化強度曲線生成装置14として機能することが可能なコンピュータ60を示す。コンピュータ60は、CPU62、メモリ64、記憶部66、入力部68、表示部70、通信インタフェース(I/F)部72を備えている。CPU62、メモリ64、記憶部66、入力部68、表示部70及び通信I/F部72はバス74を介して互いに接続されている。また、通信I/F部72は通信回線を介して液状化試験装置12に接続されている。なお、コンピュータ60としては、例えばPC(Personal Computer)を適用できる。コンピュータ60としてPCが適用される場合、入力部68はキーボード及びマウスを含む。
【0080】
記憶部66はHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等によって実現できる。記憶部66には液状化強度曲線生成プログラム76が記憶されている。CPU62は、液状化強度曲線生成プログラム76を記憶部66から読み出してメモリ64に展開し、液状化強度曲線生成プログラム76が有するプロセスを順次実行する。
【0081】
液状化強度曲線生成プログラム76は、通知プロセス77、取得プロセス78、第1演算プロセス80、第2演算プロセス82、及び出力プロセス84を含んでいる。CPU62は、通知プロセス77を実行することで、通知部16として機能する。またCPU62は、取得プロセス78を実行することで取得部18として機能する。またCPU62は、第1演算プロセス80を実行することで第1演算部20として機能する。またCPU62は、第2演算プロセス82を実行することで第2演算部22として機能する。またCPU62は、出力プロセス84を実行することで出力部24として機能する。これにより、液状化強度曲線生成プログラム76を実行したコンピュータ60が、液状化強度曲線生成装置14として機能する。なお、液状化強度曲線生成プログラム76は本発明に係る液状化強度曲線生成プログラムの一例である。
【0082】
次に本実施形態の作用を説明する。或る地盤について、地震時の液状化挙動を評価又は解析したい場合、作業者は、まず液状化挙動を評価又は解析したい地盤のうち、液状化が懸念される地層から、液状化試験装置12で載荷試験を行うための供試体48の採取を行う。なお、供試体の採取等については、公益社団法人 地盤工学会,” 土の三軸試験の供試体作製・設置方法”,[online],[平成27年2月12日検索],インターネット<URL:http://www.jiban.or.jp/organi/bu/kijyunbu/kouji/200807/JGS_0520_080411.pdf>に記載されているので、詳細な説明は省略する。
【0083】
詳細は後述するが、本実施形態では、単一の供試体48から地盤の液状化強度曲線を得ることができるので、採取する供試体48の数は最少で1個に抑えることができる。また、予備的に供試体48を複数採取する場合であっても、複数採取した供試体48の性状のばらつきが液状化強度曲線の精度に影響しないので、採取した複数の供試体48の性状が揃っていることは要求されない。従って、非特許文献1に記載の規準化された手法を適用して液状化強度曲線を得る場合と比較して、供試体48の採取に要する手間は大幅に削減される。
【0084】
続いて作業者は、液状化試験システム10の電源を投入し、液状化強度曲線生成装置14に対して試験条件設定処理の実行を指示する。これにより、液状化強度曲線生成装置14において、
図8に示す試験条件設定処理が行われる。
【0086】
試験条件設定処理のステップS100において、液状化強度曲線生成装置14の通知部16は、液状化試験装置12で行われる繰返し載荷試験の試験条件を取得する。載荷試験の試験条件には、n回目の繰返し載荷で供試体48に作用させる繰返し応力比、繰返し載荷回数、圧密時に供試体48に加えるセル圧及び背圧が含まれる。なお、本実施形態では、せん断応力τを一定とし、nサイクル開始時の有効拘束圧
nσ’
cで除した繰返しせん断応力比の推移は、繰返し載荷の回数の増加に伴って応力比が単調増加するように、載荷試験の試験条件が定められた態様について説明する。
【0087】
載荷試験の試験条件の取得は、例えば、作業者により入力部68を介して試験条件を入力させることで取得するようにしてもよいし、作業者により予め入力されて記憶部66に記憶した試験条件を記憶部66から読み出すようにしてもよい。また、例えば、載荷試験を行う土の強さ又は固さを複数のレベルに分け、レベル毎に試験条件を予め設定して記憶しておき、作業者により入力部68を介して土の強さ又は固さを表す指標(例えば標準貫入試験で得られるN値)を入力させ、複数の試験条件のうち入力された指標の値に対応する試験条件を選択的に読み出すようにしてもよい。
【0088】
載荷試験の試験条件を取得すると、次のステップS102において、液状化強度曲線生成装置14の通知部16は、取得した試験条件を液状化試験装置12へ通知して、試験条件設定処理を終了する。
【0089】
一方、液状化試験装置12では、液状化強度曲線生成装置14から繰返し載荷試験の試験条件が通知されると、
図9に示す載荷試験処理を行う。
【0091】
載荷試験処理のステップS200において、液状化試験装置12の制御部44は、液状化強度曲線生成装置14から通知された載荷試験の試験条件を記憶部等に記憶する。液状化試験装置12による載荷試験には、圧密工程と載荷工程とがあり、次のステップS202において、液状化試験装置12の制御部44は、圧密工程の開始が指示されたか否か判定する。判定が否定された場合はステップS202を繰り返し、圧密工程の開始が指示される迄待機する。
【0092】
作業者は、液状化試験装置12の三軸圧力室30内に供試体48をセットした後に、圧密工程の開始を液状化試験装置12に指示する。これにより、ステップS202の判定が肯定されてステップS204へ移行する。
【0093】
ステップS204において、液状化試験装置12の制御部44は、液状化強度曲線生成装置14から通知された試験条件で規定された大きさのセル圧を、セル圧供給部32によって三軸圧力室30内に加えると共に、液状化強度曲線生成装置14から通知された試験条件で規定された大きさの背圧を、背圧供給部34によって供試体48に加えることで、地層の深さに応じた等方圧力を供試体48に連続的に加える圧密工程を開始する。
【0094】
次のステップS206において、液状化試験装置12の制御部44は、載荷工程の開始が指示されたか否か判定する。判定が否定された場合はステップS206を繰り返し、載荷工程の開始が指示される迄待機する。圧密工程で供試体48が所定の圧密応力σ'
C(=初期有効応力)まで圧密されると、続いて作業者は載荷工程の開始を液状化試験装置12に指示する。これにより、ステップS206の判定が肯定されてステップS208へ移行する。
【0095】
ステップS208において、液状化試験装置12の制御部44は、繰返し回数を表す変数nに1を設定する。
【0096】
ステップS210において、液状化試験装置12の制御部44は、上記式(1)に従って、供試体48の側方向に作用する側方向応力σ
rから背圧供給部34が供給している背圧u
0を減算することで、供試体48の初期有効拘束圧σ’
cを求め、記憶部等に記憶させる。
【0097】
ステップS212において、液状化試験装置12の制御部44は、載荷試験の試験条件に規定されたn回目の繰返し載荷で供試体48に作用させる繰返し応力比を読み出す。そして、液状化試験装置12の制御部44は、液状化試験装置12の軸荷重載荷部36により、所定周期かつ繰返し応力比に対応する振幅で変化する軸荷重を供試体48に一周期分加える繰返し載荷を実行させる。
【0098】
次のステップS214において、液状化試験装置12の制御部44は、ステップS212で軸荷重載荷部36によって供試体48に軸荷重を一周期分加えている間に、軸変位センサ38によって検出された軸変位ΔHの推移、荷重センサ40によって検出された軸差応力qの推移を記憶部等に記憶させる。
【0099】
ステップS216において、液状化試験装置12の制御部44は、ステップS212で軸荷重載荷部36によって供試体48に軸荷重を一周期分加えられ、荷重センサ40によって検出された軸差応力が0(q=0)のときに、上記式(2)に従って、n+1サイクル目の繰返し載荷における供試体48の有効拘束圧
n+1σ’
cを求め、n+1サイクル目の有効拘束圧
n+1σ’
cを記憶部等に記憶させる。
【0100】
ステップS218において、液状化試験装置12の制御部44は、間隙水圧センサ42より入力された間隙水圧uから、背圧供給部34が供給している背圧u
0を減算することで、nサイクル目の繰返し載荷における供試体48の過剰間隙水圧Δu
nを求める。そして、制御部44は、上記ステップS210で得られた初期有効拘束圧σ’
cと過剰間隙水圧Δu
nとに基づいて、上記式(2A)に従って、軸荷重載荷部36によって供試体48に軸荷重を一周期分加えている間の過剰間隙水圧比を求め、記憶部等に記憶させる。
【0101】
次のステップS220において、液状化試験装置12の制御部44は、ステップS218で演算した過剰間隙水圧比に基づいて、供試体48が液状化に至ったか否か判定する。供試体48の液状化判定は、一般に複数種の条件、例えば「両振幅軸ひずみDA(Double Amplitude)が3%に達した時点」「両振幅軸ひずみDAが5%に達した時点」「両振幅軸ひずみDAが10%に達した時点」及び「過剰間隙水圧比が95%に達した時点」のうちの何れかの条件が選択的に用いられる。
【0102】
ステップS220では、予め選択された条件として「過剰間隙水圧比が95%に達した時点」であるか否かを判定することで、供試体48が液状化に至ったか否かを判定する。なお、ステップS220において、上記の複数種の条件の幾つかを満たした場合に、供試体48が液状化に至ったと判定するようにしてもよい。
【0103】
ステップS220の判定が否定された場合はステップS221へ移行し、ステップS221において、液状化試験装置12の制御部44は、繰返し回数を表す変数nを1だけインクリメントしてステップS212に戻り、ステップS220の判定が肯定される迄、ステップS212〜ステップS218を繰り返す。
【0104】
また、ステップS220の判定が肯定された場合はステップS222へ移行する。ステップS222において、液状化試験装置12の制御部44は、初期有効拘束圧σ’
cと、各回の繰返し載荷での繰返し応力比τ/σ’
cと、各回の繰返し載荷での供試体の軸変位ΔH及び軸差応力qの推移と、各回の繰返し載荷での供試体の過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
c及び有効拘束圧
nσ’
cとを記憶部等から読み出し、繰返し載荷試験の試験結果として液状化強度曲線生成装置14へ通知し、繰返し載荷試験処理を終了する。
【0105】
液状化強度曲線生成装置14は、液状化試験装置12から繰返し載荷試験の試験結果が通知されると、
図10に示すグラフ生成処理を実行する。
【0106】
<グラフ生成処理ルーチン>
グラフ生成処理のステップS300において、液状化強度曲線生成装置14の取得部18は、液状化試験装置12から通知された載荷試験の試験結果を記憶部66に記憶させる。
【0107】
ステップS302において、第1演算部20は、繰返し回数を表す変数nを1に設定する。
【0108】
ステップS304において、第1演算部20は、記憶部66に記憶された試験結果のうちのn回目の繰返し載荷におけるせん断ひずみγ
n及びせん断応力τ
nの推移に基づいて、上記式(5)に従って、n回目の繰返し載荷における供試体48の消費エネルギーΔU
nを算出する。
【0109】
ステップS306において、前回までの上記ステップS304で算出されたn回目の繰返し載荷までの消費エネルギー(ΔU
1,…,ΔU
n−1)と、今回の上記ステップS304で算出されたn回目の繰返し載荷の消費エネルギーΔU
nとに基づいて、上記式(6)に従って、n回目のサイクルまでの累積消費エネルギーU
nを算出する。
【0110】
ステップS308において、第1演算部20は、記憶部66に記憶された試験結果に基づいて、上記ステップS306で算出された累積消費エネルギーU
nをn回目の繰返し載荷の開始における供試体48の有効拘束圧
nσ’
cによって除算し、正規化された供試体48の累積消費エネルギー(U
n/
nσ’
c)を算出する。そして、第1演算部20は、正規化された累積消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)を得る。
【0111】
ステップS310において、第1演算部20は、記憶部66に記憶された試験結果から、n回目の繰返し載荷の繰返し応力比τ
n/
nσ’
cを取得する。
【0112】
ステップS312において、上記ステップS308で得られた累積消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)と、上記ステップS310で得られた繰返し応力比τ
n/
nσ’
cとの関係を、第1のグラフ上のデータ点としてプロットする。
【0113】
ステップS314において、第1演算部20は、記憶部66に記憶された試験結果から、n回目の繰返し載荷における過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cを取得する。
【0114】
ステップS316において、上記ステップS308で得られた正規化された累積消費エネルギー(U
n/
nσ’
c)と、上記ステップS314で得られた過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cとの関係を、第2のグラフ上のデータ点としてプロットする。
【0115】
ステップS318において、第1演算部20は、記憶部66に記憶された試験結果に基づいて、上記ステップS308で得られた正規化された累積消費エネルギー(U
n/
nσ’
c)と、n+1サイクル時の過剰間隙水圧比(1−
n+1σ’
c/σ’
c)との関係を生成する。
【0116】
ステップS320において、変数nが予め設定された繰返し回数であるN回と一致するか否かを判定する。変数nが繰返し回数Nと一致する場合には、ステップS324へ進む。一方、変数nが繰返し回数Nと一致しない場合には、ステップS322において変数nを1だけインクリメントしてステップS304に戻り、ステップS320の判定が肯定される迄、ステップS304〜ステップS318を繰り返す。
【0117】
ステップS324において、第1演算部20は、上記ステップS312で得られた第1のグラフ、上記ステップS316で得られた第2のグラフ、及び上記ステップS318で得られた第3のグラフを記憶部に記憶させて、グラフ生成処理ルーチンを終了する。
【0118】
液状化強度曲線生成装置14は、グラフ生成処理によって第1〜第3のグラフが生成されると、
図11に示す液状化強度曲線生成処理を実行する。
【0119】
<液状化強度曲線生成処理ルーチン>
ステップS400において、第2演算部22は、任意の繰返しせん断応力τと初期有効拘束圧σ’
cとの組み合わせ(τ,σ’
c)を設定する。
【0120】
ステップS402において、第2演算部22は、繰返し回数を表す変数nを1に設定する。
【0121】
ステップS404において、第2演算部22は、上記ステップS400で設定された繰返しせん断応力τと、初期有効拘束圧σ’
c又は前回のサイクルのステップS408で算出された有効拘束圧
nσ’
cとに基づいて、繰返し応力比τ/
nσ’
c(又はτ/σ’
c)を算出する。そして、第2演算部22は、上記式(8)に示すように、グラフ生成処理によって得られた第1のグラフに基づいて、算出された繰返し応力比
nσ’
c(又はτ/σ’
c)に応じて、正規化された消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)を取得する。
【0122】
ステップS406において、第2演算部22は、前回のサイクルのステップS406で算出された、正規化された累積消費エネルギーU
n−1/
n−1σ’
cと、上記ステップS404で算出された正規化された消費エネルギーの増分Δ(U
n/
nσ’
c)とに基づいて、上記式(9)に従って、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cを算出する。また、第2演算部22は、正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cと、前回のサイクルのステップS408で算出された有効拘束圧
nσ’
cとに基づいて、上記式(10)に従って、累積消費エネルギーU
nを算出する。
【0123】
ステップS408において、第2演算部22は、グラフ生成処理によって得られた第2のグラフに基づいて、上記ステップS406で算出された正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cに応じて、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cを取得する。そして、第2演算部22は、取得した過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cと初期有効拘束圧σ’
cとに基づいて、過剰間隙水圧Δu
nを算出する。
【0124】
また、ステップS408において、第2演算部22は、グラフ生成処理によって得られた第3のグラフに基づいて、上記ステップS406で算出された正規化された累積消費エネルギーU
n/
nσ’
cに応じて、n+1サイクル時の過剰間隙水圧比(1−
n+1σ’
c/σ’
c)を取得する。そして、第2演算部22は、取得した過剰間隙水圧比(1−
n+1σ’
c/σ’
c)と初期有効拘束圧σ’
cとに基づいて、n+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cを算出する。n+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cは、次回のサイクルにおいて用いられる。
【0125】
ステップS410において、第2演算部22は、上記ステップS408で算出された過剰間隙水圧Δu
nと初期有効拘束圧σ’
cとから求められる過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cが0.95以上であるか否かを判定する。過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cが0.95以上である場合には、ステップS412へ進む。一方、過剰間隙水圧比Δu
n/σ’
cが0.95未満である場合には、ステップS411において繰返し回数を表す変数nを1だけインクリメントしてステップS404に戻り、ステップS410の判定が肯定される迄、ステップS404〜ステップS408を繰り返す。
【0126】
ステップS412において、第2演算部22は、繰返し回数を表す変数nと、上記ステップS400で設定された組み合わせ(τ,σ’
c)から求められる繰返し応力比τ/σ’
cを記憶部に記憶する。
【0127】
ステップS414において、第2演算部22は、任意の繰返し応力比の全てについて、上記ステップS400〜ステップS412の処理を実行したか否かを判定する。任意の繰返し応力比の全てについて、上記ステップS400〜ステップS412の処理を実行した場合には、ステップS416へ進む。一方、上記ステップS400〜ステップS412の処理を実行していない任意の繰返し応力比が存在する場合には、ステップS400へ戻り、ステップS400〜ステップS412の処理を繰り返す。
【0128】
ステップS416において、第2演算部22は、上記ステップS412で記憶部に記憶された、繰返し回数を表す変数nと繰返し応力比τ/σ’
cとの複数の組み合わせに基づいて、液状化強度曲線を生成する。
【0129】
ステップS418において、第2演算部22は、上記ステップS416で生成された液状化強度曲線を結果として出力して、液状化強度曲線生成処理を終了する。
【0130】
以上説明したように、本実施形態では、供試体の累積消費エネルギーをn回目の繰返し載荷の開始における供試体の有効拘束圧によって除することにより得られる正規化された累積消費エネルギーの増分と、繰返し載荷のせん断応力をn回目の有効拘束圧によって除することにより得られる繰返し載荷の繰返し応力比との関係を生成し、累積消費エネルギーをn回目の有効拘束圧によって除することにより得られる正規化された累積消費エネルギーと、過剰間隙水圧を初期有効拘束圧によって除することにより得られる過剰間隙水圧比との関係を生成し、正規化された累積消費エネルギーの増分と繰返し応力比との関係、及び正規化された累積消費エネルギーと過剰間隙水圧比との関係に基づいて、所定の繰返し応力比に対応する供試体の土が液状化に至るまでの繰返し載荷の回数を算出することにより、供試体の数が少数であっても、液状化強度曲線を精度良く生成することができる。
【0131】
また、本実施形態では、1個の供試体48から供試体48の液状化強度曲線を得ることができる。そのため、供試体48を複数採取する必要がなく、採取した複数の供試体48の性状のばらつきの影響を受けて液状化強度曲線の精度が低下することもない。また、性状が揃っている複数の供試体48を用いて非特許文献1に記載の規準化された手法により液状化強度曲線を求めた場合と同程度の高精度な液状化強度曲線が得られる。従って、供試体48の高精度な液状化強度曲線を得るための手間及び試験時間を大幅に削減することができる。また、地盤の性質のばらつきが大きい土層においても、液状化強度曲線を簡単に生成することが可能であり、従来コスト・期間に対して例えば1/3〜1/4で実施が可能である。
【0132】
また、本実施形態で説明した液状化強度曲線生成処理によれば、高精度な液状化強度曲線が得られるので、当該液状化強度曲線は、地震中の間隙水の水圧の変化も考慮した地震応答解析に利用可能であり、透水性の高い砂礫層を含む互層地盤についても高精度な地震応答解析を実現することができる。
【0133】
また、本実施の形態に係る手法を用いれば、供試体間のばらつきの影響を評価することができ、同一性が保証されない原位置試料の供試体においても液状化強度曲線を精度よく算定できることから数値解析への利用が期待される。
【0134】
なお、上記では液状化試験装置12による載荷試験の載荷工程において、供試体48に作用する繰返し応力比が一定である態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、供試体48に作用する繰返し応力の大きさが互いに異なる載荷を行えば目的を達成できるので、例えば、供試体48に作用する繰返し応力比の振幅を段階的に増加又は減少させるようにしてもよいし、供試体48に作用する繰返し応力比の振幅が上記以外の変化を示すように載荷を行ってもよい。また、供試体48に作用する繰返し応力の大きさを相違させることは、供試体48に作用する繰返し応力比の周期を相違させることで実現してもよいし、供試体48に作用する繰返し応力比の振幅及び周期を各々相違させることで実現してもよい。
【0135】
また、本実施形態では、液状化試験装置12の制御部44が、供試体48の過剰間隙水圧、過剰間隙水圧比、初期有効拘束圧、及び有効拘束圧を求める場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、液状化強度曲線生成装置14の取得部18が、軸差応力q=σ
a−σ
r、間隙水圧センサ42より入力された間隙水圧u、及び背圧供給部34が供給している背圧u
0等を含む試験結果を取得し、第1演算部20は、試験結果に基づいて、供試体48の過剰間隙水圧、過剰間隙水圧比、初期有効拘束圧、及び有効拘束圧を求めてもよい。
【0136】
また、本実施形態では、正規化された累積消費エネルギーとn+1サイクル時の過剰間隙水圧比との関係を表す第3のグラフを生成し、生成された第3のグラフに基づいてn+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cを算出する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、初期有効拘束圧σ’
cと算出された過剰間隙水圧Δu
nとに基づいて、上記式(13)に従って、n+1サイクル時の有効拘束圧
n+1σ’
cを求めてもよい。
【0137】
また、本実施形態では、1つの供試体から1つの液状化曲線を生成する場合を例に説明したが、複数の供試体から1つの液状化曲線を生成してもよい。例えば、複数の供試体の各々に対し液状化強度曲線を生成し、供試体毎に生成された液状化強度曲線を統合することで、1つの液状化強度曲線を生成してもよい。
【0138】
また、上記では本発明に係る液状化強度曲線生成プログラム76が記憶部66に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、本発明に係る液状化強度曲線生成プログラムは、CD−ROM、DVD−ROM及びマイクロSDカード等の記録媒体の何れかに記録されている形態で提供することも可能である。