(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670679
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】外部制御機能付ブレーカ及び感震遮断機能付分電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
H02B1/40 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-105442(P2016-105442)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-212824(P2017-212824A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智晴
(72)【発明者】
【氏名】柴田 徹郎
(72)【発明者】
【氏名】三谷 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 亮介
【審査官】
北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/192131(WO,A1)
【文献】
特開2015−190887(JP,A)
【文献】
特開平09−233623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00− 1/44
H01H 69/00−69/01
H01H 71/00−83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路に過電流或いは短絡電流が流れたら遮断機構部が動作して前記電路を遮断する過電流遮断機能に加えて、
外部からの遮断操作信号を受ける信号入力部と、遮断操作信号の入力を受けて新たな遮断操作信号を出力する信号出力部と、前記外部からの遮断操作信号を受けて前記遮断機構部を遮断動作させると共に、前記信号出力部から出力する信号を生成するブレーカ制御部とを備えていることを特徴とする外部制御機能付ブレーカ。
【請求項2】
電路の引き込み線が一次側に接続された主幹漏電ブレーカと、前記主幹漏電ブレーカの二次側電路に接続されて、前記電路の分岐電路を開閉するための複数の分岐ブレーカと、特定の震度以上の地震を感知したらその後の所定のタイミングで前記主幹漏電ブレーカを遮断動作させる感震リレーとを備えた感震遮断機能付分電盤であって、
前記感震リレーは、地震感知後の所定のタイミングで前記主幹漏電ブレーカを遅延遮断させる擬似漏電出力部に加えて、前記特定の震度以上の地震を感知したら即時に地震発生信号を出力する警報出力部を有し、
前記分岐ブレーカのうち少なくとも2つが、請求項1に記載の外部制御機能付ブレーカであると共に、前記遮断操作信号が前記地震発生信号であって、
前記警報出力部と任意の1つの前記外部制御機能付ブレーカの前記信号入力部とが接続されると共に、当該外部制御機能付ブレーカの前記信号出力部と他の外部制御機能付ブレーカの信号入力部とが接続され、
前記地震発生信号の伝送経路が、前記外部制御機能付ブレーカ間で直列に形成されて成ることを特徴とする感震遮断機能付分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部からの信号で遮断動作する外部制御機能付ブレーカ、及び地震を感知したら擬似漏電を発生させる感震リレーを備えて、地震が発生したら主幹漏電ブレーカが遮断動作する感震遮断機能付分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より感震遮断機能を備えた分電盤がある。例えば特許文献1では、主幹漏電ブレーカの電路にコントロールユニット(感震リレー)を接続して、感震リレーに内蔵されている感震センサが地震を感知したら、その後停電発生のタイミング或いは復電のタイミング等所定のタイミングで主幹漏電ブレーカの電路に擬似漏電電流を発生させて遅延遮断動作させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−215178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の感震遮断機能付分電盤では、感震リレーを主幹漏電ブレーカに接続することで、主幹漏電ブレーカに感震遮断機能を組み込むこと無く二次側に接続されている全ての負荷の電源を遮断した。そして、上述したように即時に遮断するのではなく、地震発生後所定のタイミングで遮断動作させることで居住者はスムーズな避難が可能であった。
しかしながら、負荷の中には地震発生を受けて即時に電源を遮断するのが望ましいものもあり、そのためには分岐ブレーカを漏電遮断機能を備えた分岐漏電ブレーカとして別途感震リレーを必要とした。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、感震リレー1台で主幹漏電ブレーカの遅延遮断と一部の分岐ブレーカの即時遮断の双方を実現する感震遮断機能付分電盤を提供すること、更にこの分電盤に好適な外部制御機能付ブレーカを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1の発明に係る外部制御機能付ブレーカは、電路に過電流或いは短絡電流が流れたら遮断機構部が動作して電路を遮断する過電流遮断機能に加えて、外部からの遮断操作信号を受ける信号入力部と、遮断操作信号の入力を受けて新たな遮断操作信号を出力する信号出力部と、外部からの遮断操作信号を受けて遮断機構部を遮断動作させると共に、信号出力部から出力する信号を生成するブレーカ制御部とを備えていることを特徴とする。
この構成によれば、遮断操作信号を入力する信号入力部に加えて、遮断操作信号を出力する信号出力部を備えることで、外部の遮断操作信号で強制遮断するブレーカが複数設置されても、信号出力部を他のブレーカの信号入力部に接続して、ブレーカ間の遮断操作信号の経路が直列になるよう接続すれば、外部からの遮断操作信号を1つの外部制御機能付ブレーカの信号入力部に接続するだけで、強制遮断させたい全てのブレーカを遮断動作させることができる。よって、遮断操作信号を生成する機器は1つで良く省スペースで組み付けできるし、結線作業を簡略化できる。
【0007】
請求項2の発明は、電路の引き込み線が一次側に接続された主幹漏電ブレーカと、主幹漏電ブレーカの二次側電路に接続されて、電路の分岐電路を開閉するための複数の分岐ブレーカと、特定の震度以上の地震を感知したらその後の所定のタイミングで主幹漏電ブレーカを遮断動作させる感震リレーとを備えた感震遮断機能付分電盤であって、感震リレーは、地震感知後の所定のタイミングで主幹漏電ブレーカを遅延遮断させる擬似漏電出力部に加えて、特定の震度以上の地震を感知したら即時に地震発生信号を出力する警報出力部を有し、分岐ブレーカのうち少なくとも2つが、請求項1に記載の外部制御機能付ブレーカであると共に、遮断操作信号が地震発生信号であって、警報出力部と任意の1つの外部制御機能付ブレーカの信号入力部とが接続されると共に、当該外部制御機能付ブレーカの信号出力部と他の外部制御機能付ブレーカの信号入力部とが接続され、地震発生信号の伝送経路が、外部制御機能付ブレーカ間で直列に形成されて成ることを特徴とする。
この構成によれば、1台の感震リレーを設置するだけで、主幹漏電ブレーカの遅延遮断と複数の分岐ブレーカの即時遮断の双方を実施でき、分電盤を大型化することなく感震遮断機能を設けることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る外部制御機能付ブレーカによれば、遮断操作信号を入力する信号入力部に加えて、遮断操作信号を出力する信号出力部を備えることで、外部の遮断操作信号で強制遮断するブレーカが複数設置されても、信号出力部を他のブレーカの信号入力部に接続して、ブレーカ間の遮断操作信号の経路が直列になるよう接続すれば、外部からの遮断操作信号を1つの外部制御機能付ブレーカの信号入力部に接続するだけで、強制遮断させたい全てのブレーカを遮断動作させることができる。よって、遮断操作信号を生成する機器は1つで良く省スペースで組み付けできるし、結線作業を簡略化できる。
また、本発明に係る感震遮断機能付分電盤によれば、1台の感震リレーを設置するだけで、主幹漏電ブレーカの遅延遮断と複数の分岐ブレーカの即時遮断の双方を実施でき、分電盤を大型化することなく感震遮断機能を設けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る感震遮断機能付分電盤の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る感震遮断機能付分電盤の一例を示す構成図であり、2本の電圧相L1,L2と中性相Nの3本から成る単相3線式電路(以下、単に「電路」とする。)Aから複数の分岐電路を形成する分電盤10を示している。
図1において、1は漏電遮断機能を備えた主幹漏電ブレーカ(主幹ELB)、2,3は分岐ブレーカ、4は感震リレーである。但し、分岐ブレーカ2,3のうち、2(2a〜2n)は従来の分岐ブレーカ(以下、「第1分岐ブレーカ」とする。)、3(3a〜3n)は後述する外部制御機能付ブレーカ(以下、「第2分岐ブレーカ」とする。)である。
【0011】
主幹ELB1の一次側には電路Aの引き込み線(一次側電路A1)が接続され、二次側の電路A(二次側電路A2)からは第1分岐ブレーカ2を介して分岐電路B1(B1a〜B1n)が形成され、第2分岐ブレーカ3を介して分岐電路B2(B2a〜B2n)が形成されている。
そして、主幹ELB1を挟んだ電路Aに感震リレー4が接続され、特定の震度以上の地震が発生したら、主幹ELB1を挟んだ電路Aに擬似漏電を発生させて主幹ELB1を遮断動作させるよう構成されている。
【0012】
図2は感震リレー4の回路ブロック図を示している。
図2に示すように、地震を感知して揺れに応じた信号を出力する感震センサ41、擬似漏電を出力する擬似漏電出力部42、地震発生を発報報知すると共に外部に地震発生信号を出力するための警報出力部43、感震センサ41からの揺れ情報を受けて震度を判定する感震リレーCPU44等を備えている。
感震リレーCPU44は、感震センサ41の計測データから、感知した地震が震度5等の予め設定された震度或いはそれより大きい震度である場合に、警報出力部43から地震発生信号を出力させる。また、タイマ44aを有して予め設定した一定時間後に擬似漏電出力部42から接続先の電路Aに擬似漏電電流を流す。即ち、擬似漏電を発生させる。
【0013】
図3は第2分岐ブレーカ3の回路ブロック図を示している。第2分岐ブレーカ3は、分岐電路を形成するために二次側電路A2に接続される一対の端子からなる一次側端子、分岐電路B2を接続する二次側端子(図示せず)に加えて、
図3に示すように入力端子(信号入力部)31、出力端子(信号出力部)32、入力した信号が感震リレー4が出力する地震発生信号であればそれを受信する信号受信部33、電路を遮断させる遮断機構部34、第2分岐ブレーカ3を制御するブレーカ制御部36等を備えている。
そして、入力端子31に地震発生信号が入力されると、ブレーカ制御部36の制御により、例えば遮断機構部34に設けられているプランジャを備えたマグネットコイルを通電してプランジャをトリップ動作させる。更に、ブレーカ制御部36が新たな地震発生信号を生成して出力端子32から出力する。
【0014】
尚、第2分岐ブレーカ3は、図示しないが過電流及び短絡電流の発生を受けて遮断機構部34を遮断動作させる過電流遮断機能を備えており、分岐ブレーカとしての基本機能を合わせて備えている。
【0015】
次に、感震リレー4、第2分岐ブレーカ3の接続及び動作を具体的に説明する。
図1に示すように、感震リレー4の擬似漏電出力部42は、主幹ELB1の一次側電路A1の2つの電圧相L1,L2うちの一方の電圧相L2に接続線S1により接続されている。また感震リレー4は、この擬似漏電出力部42に擬似漏電を出力させるための入力部(図示せず)を有し、入力部は接続線S2により二次側電路A2の中性線Nに接続されている。
一方、感震リレー4の警報出力部43は、第2分岐ブレーカ3のうちの1つの第2分岐ブレーカ3aの入力端子31に接続線S3により接続されている。尚、この時選択される第2分岐ブレーカ3は任意であり、感震リレー4に近いものを選択すれば良い。
【0016】
そして、この第2分岐ブレーカ3aの出力端子32が、近傍に設置されている第2分岐ブレーカ3bの入力端子31に接続線S4aにより接続され、この第2分岐ブレーカ3bの出力端子32が近傍の他の第2分岐ブレーカ3cの入力端子31に接続線S4bにより接続され、更に第2分岐ブレーカ3間の出力端子32と入力端子31とが順次接続される。こうして、全ての第2分岐ブレーカ3の間で地震発生信号の伝送路が直列に接続されるように互いが接続される。
【0017】
尚、
図1において「in」は入力端子31、「out」は出力端子32を示している。また、感震リレー4は主幹ELB1の二次側電路A2に接続された電源部(図示せず)を有し、感震リレー4の接続線S2は中性線Nに接続された電源線を兼用している。
【0018】
このように構成された感震遮断機能付分電盤10は、感震リレー4が予め設定された特定の震度、或いはそれ以上の震度の地震を感知すると、警報出力部43の図示しない報音部から警報を発すると共に、地震発生信号が警報出力部43から出力される。また、3分等の所定時間後に擬似漏電出力部42から擬似漏電が出力される。
【0019】
一方、地震発生信号が伝送された第2分岐ブレーカ3では、信号受信部33がそれを認識してブレーカ制御部36が所定の制御を開始する。即ち、ブレーカ制御部36の制御により遮断機構部34が遮断動作し、分岐電路B2が遮断される。また、地震発生信号が生成されて出力端子32から出力される。
この結果、伝送線S4a、S4b・・により接続された他の第2分岐ブレーカ3も順次遮断動作する。
尚、第2分岐ブレーカ3が遮断動作してから一定時間後に、感震リレー4から出力される擬似漏電により主幹ELB1が遮断動作する。
【0020】
このように、1台の感震リレー4を設置するだけで、主幹漏電ブレーカ1の遅延遮断と複数の第2分岐ブレーカ3の即時遮断の双方を実施でき、分電盤10を大型化することなく感震遮断機能を設けることが可能となる。
また、即時遮断する第2分岐ブレーカ3は、地震発生信号を入力する入力端子31に加えて、地震発生信号を出力する出力端子32を備えるため、第2分岐ブレーカ3を複数設置しても、出力端子32を他の第2分岐ブレーカ3の入力端子31に接続して、第2分岐ブレーカ3間の地震発生信号の経路が直列になるよう接続すれば、感震リレー4からの地震発生信号を1つの第2分岐ブレーカ3の入力端子31に接続するだけで、強制遮断(即時遮断)させたい全ての分岐ブレーカを遮断動作させることができる。よって、地震発生信号を生成する感震リレー4は1つで良く省スペースで組み付けできるし、結線作業を簡略化できる。
【0021】
尚、感震リレー4は、地震感知後一定の時間が経過したら擬似漏電を出力するが、遅延動作のタイミングを時間で規定しなくとも良く、地震発生による停電に合わせても良いし、その後の復電に合わせても良い。
また、上記実施形態の第2分岐ブレーカ3は、入力端子31に地震発生信号が入力されたら遮断動作するが、遮断動作させる遮断操作信号は予め設定すれば良く、メーク接点信号、ブレーク接点信号の何れでも良い。但し、出力端子32からは入力信号と同一の信号が出力されるよう制御される。
更に、単相3線式電路の分電盤に適用した構成を示したが、本発明の感震遮断機能付分電盤は単相2線式電路や三相3線式電路に対しても容易に適用できるものである。
【符号の説明】
【0022】
1・・主幹漏電ブレーカ、2(2a,・・2n)・・第1分岐ブレーカ(分岐ブレーカ)、3(3a,・・3n)・・第2分岐ブレーカ(外部制御機能付ブレーカ)、4・・感震リレー、10・・分電盤、31・・入力端子(信号入力部)、32・・出力端子(信号出力部)、33・・信号受信部、34・・遮断機構部、36・・ブレーカ制御部、41・・感震センサ、42・・擬似漏電出力部、43・・警報出力部、44・・感震リレーCPU、A・・単相3線式電路、B1,B2・・分岐電路。