特許第6670684号(P6670684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670684
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】気液分離装置及び気液分離方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 45/12 20060101AFI20200316BHJP
   B04C 3/00 20060101ALI20200316BHJP
   B04C 5/28 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B01D45/12
   B04C3/00 Z
   B04C5/28
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-113396(P2016-113396)
(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-217604(P2017-217604A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年1月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】羽上田 裕章
(72)【発明者】
【氏名】池田 朋史
(72)【発明者】
【氏名】林 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】金子 宇内
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−190156(JP,A)
【文献】 特開昭54−082773(JP,A)
【文献】 特開昭55−152514(JP,A)
【文献】 特開昭60−060441(JP,A)
【文献】 特開2011−129287(JP,A)
【文献】 特公昭46−036312(JP,B1)
【文献】 特開平07−003270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 45/00−45/18
B01D 50/00
B04C 5/00− 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体と液体との混合流体が供給される供給口を備え、前記混合流体を気体と液体とに分離する分離器と、
前記分離器の下方に設けられ、分離された前記液体を排水する排水管と、
前記分離器の上方に設けられ、分離された前記気体を排気する排気管と、を備える気液分離装置であって、
前記分離器が内部に収容される収容室と、外部からの前記混合流体が滞留される滞留室と、を備えた本体容器を有し、
前記滞留室と前記収容室との間の隔壁には、前記滞留室内に滞留した前記混合流体を、前記収容室内に散布する複数の散布孔が形成され
前記分離器は、前記収容室内に複数配設され、
複数の前記分離器うちの少なくとも2つは、それぞれの前記供給口の上下方向の位置を異ならせて配設されていることを特徴とする気液分離装置。
【請求項2】
前記本体容器は、上下方向に延びる筒状に形成され、
前記滞留室は、前記本体容器内における外周縁部に全周にわたって設けられ、
前記散布孔は、前記隔壁のうち、径方向を向き、かつ径方向の内側に位置する内周壁、及び上下方向を向き、かつ下方に位置する底壁の少なくとも一方に、周方向に間隔をあけて複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の気液分離装置。
【請求項3】
複数の前記分離器のうち、前記供給口の上下方向の位置が互いに同等の前記分離器同士は、前記本体容器の中心軸線から同等の距離に位置するように配設され、複数の前記分離器のうち、前記供給口の上下方向の位置が互いに異なる前記分離器同士は、前記本体容器の中心軸線から異なる距離に位置するように配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の気液分離装置。
【請求項4】
気体と液体との混合流体を、分離器内で気体と液体とに分離する気液分離方法であって、
請求項1からのいずれか1項に記載の気液分離装置を用いて、
外部から前記本体容器内に流入した前記混合流体を、前記滞留室にて一時的に滞留させる滞留工程と、
前記散布孔を通して、前記滞留室内の混合流体を、前記収容室内に散布する散布工程と、
前記供給口を通して、前記収容室内の混合流体を、前記分離器内に供給する供給工程と、を備えることを特徴とする気液分離方法。
【請求項5】
前記散布工程において、前記収容室内に貯留した液体の液面に、前記液体よりも比重の小さい緩衝材を浮遊させた状態で、前記滞留室内の混合流体を、前記収容室内に散布することを特徴とする請求項に記載の気液分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液分離装置及び気液分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガス田開発等の資源開発では、生産対象流体としてのメタンガス等の他に、水分を含むものが生産井から産出される。
このような気体及び液体が混合された混合流体を分離する気液分離装置として、例えば下記特許文献1に示すような、混合流体が供給される供給口を備え、混合流体を気体と液体とに分離する分離器と、分離器の下方に設けられ、分離された液体を排水する排水管と、分離器の上方に設けられ、分離された気体を排気する排気管と、を備える気液分離装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−209276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の気液分離装置では、分離器がサイクロンセパレータであり、混合流体を分離器の内周面に沿って流動させて旋回流を起こすことにより、混合流体に遠心力を作用させ、気体と液体との比重の差を利用して、これらを分離している。この分離器は、供給される混合流体において想定される気体と液体との質量比等に基づいて設計され、液滴除去を目的として設計された分離器においては、流入する混合流体の流動様式は、霧状の水分を含む気体の流れである噴霧流であることが求められる。
しかしながら、生産井からの混合流体のように、気体と液体との流量の比率が大きく変動するような場合には、分離器内に供給される混合流体の気体と液体との質量比を想定することが難しく、流入される混合流体の流動様式が安定しないといった問題があった。
【0005】
本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、外部から気液分離装置に供給される混合流体中に含まれる気体と液体との流量の比率が大きく変動するような場合であっても、液滴除去の目的のために設計された分離器内に供給される混合流体の流動様式を、分離器により分離可能な噴霧流状態とすることができる気液分離装置及び気液分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る気液分離装置は、気体と液体との混合流体が供給される供給口を備え、前記混合流体を気体と液体とに分離する分離器と、前記分離器の下方に設けられ、分離された前記液体を排水する排水管と、前記分離器の上方に設けられ、分離された前記気体を排気する排気管と、を備える気液分離装置であって、前記分離器が内部に収容される収容室と、外部からの前記混合流体が滞留される滞留室と、を備えた本体容器を有し、前記滞留室と前記収容室との間の隔壁には、前記滞留室内に滞留した前記混合流体を、前記収容室内に散布する複数の散布孔が形成され、前記分離器は、前記収容室内に複数配設され、複数の前記分離器うちの少なくとも2つは、それぞれの前記供給口の上下方向の位置を異ならせて配設されていることを特徴とする。
【0007】
また、前記課題を解決するために、本発明に係る気液分離方法は、気体と液体との混合流体を、分離器内で気体と液体とに分離する気液分離方法であって、前記気液分離装置を用いて、外部から前記本体容器内に流入した前記混合流体を、前記滞留室にて一時的に滞留させる滞留工程と、前記散布孔を通して、前記滞留室内の混合流体を、前記収容室内に散布する散布工程と、前記供給口を通して、前記収容室内の混合流体を、前記分離器内に供給する供給工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
これらの発明によれば、本体容器内に流入された混合流体が、滞留室に一時的に滞留した後に、滞留室と収容室との間の隔壁に形成された散布孔から収容室内に散布され、供給口を通して分離器に供給される。このため、本体容器内に流入した混合流体の流動様式が、噴霧流や気泡流等いかなる流動様式であったとしても、混合流体が滞留室内に流入し、散布孔から収容室内に散布されることで、分離器内に流入する混合流体の流動様式を常に噴霧流状態とすることができる。
【0009】
また、外部からの混合流体を直接、分離器内に供給するのではなく、滞留室において一時的に滞留させることで、混合流体の流速を抑えることができるとともに、滞留室内に滞留させた混合流体のうちの液体分に、続けて滞留室内に流入した混合流体を衝突させることができる。これにより、後続の混合流体が本体容器内の内面と衝突して飛沫が生じるのを抑えることができ、前記液体分が、微細な霧状となって空気中に漂うことで、分離器の分離負荷が増大するのを抑えることができる。
また、複数の散布孔を通して収容室内に混合流体を散布することで、本体容器内に流入された混合流体がいかなる流動様式であっても、収容室内に散布される混合流体の気体と液体との流量比の偏りを抑え、収容室内に漂う噴霧濃度を均一化することができる。
【0010】
これらにより、外部から気液分離装置に供給される混合流体中に含まれる気体と液体との流量の比率が大きく変動するような場合であっても、分離器内に供給される混合流体の流動様式を、分離器により分離可能な噴霧流状態とすることができる。
また、滞留室内における複数の箇所から収容室内に混合流体を散布するので、散布孔の内径や数を調整することで、収容室内の位置ごとにおける混合流体の散布量を調整できる。その上で、散布孔の位置により、混合流体が収容室内に流入される方向を分散できる効果も相俟って、収容室内の位置ごとで混合流体が偏在するのを抑制することができる。
また、収容室内に分離器が複数配設されているので、散布孔が形成された滞留室を本体容器が備えることで収容室内に偏り少なく散布された混合流体を、それぞれの分離器に供給して分離することができる。これにより、混合流体を効率よく気体と液体とに分離することができる。
さらに、収容室内の液面の高さを調整し、収容室内に配設された分離器の供給口のうちのいくつかを水没させることで、機能する分離器の数量を調整し、収容室内から流入する混合流体の前記供給口での流速を調整することができる。これにより、混合流体の流速を、分離器が、混合流体を気体と液体とに分離する能力を発揮可能な流速範囲に調整することができる。
【0011】
また、前記本体容器は、上下方向に延びる筒状に形成され、前記滞留室は、前記本体容器内における外周縁部に全周にわたって設けられ、前記散布孔は、前記隔壁のうち、径方向を向き、かつ径方向の内側に位置する内周壁、及び上下方向を向き、かつ下方に位置する底壁の少なくとも一方に、周方向に間隔をあけて複数形成されていてもよい。
この場合には、本体容器内に流入された混合流体を、本体容器内における外周縁部に全周にわたって設けられた滞留室に滞留させるとともに、この滞留室と収容室との間の隔壁のうち、内周壁、及び底壁の少なくとも一方に、周方向に間隔をあけて複数形成された散布孔から収容室内に散布することができる。これにより、混合流体が収容室内に流入される方向を分散させることができ、収容室内における混合流体の偏在をより確実に抑制することができる。
【0014】
複数の前記分離器のうち、前記供給口の上下方向の位置が互いに同等の前記分離器同士は、前記本体容器の中心軸線から同等の距離に位置するように配設され、複数の前記分離器のうち、前記供給口の上下方向の位置が互いに異なる前記分離器同士は、前記本体容器の中心軸線から異なる距離に位置するように配設されていてもよい。
この場合には、収容室内の空間に効率的に複数の分離器を配設することができ、分離効率を上げられるとともに、同一の形状の分離器を用いて、それぞれの供給口の上下方向の位置を異ならせて配設することができる。
【0015】
また、前記散布工程において、前記収容室内に貯留した液体の液面に、前記液体よりも比重の小さい緩衝材を浮遊させた状態で、前記滞留室内の混合流体を、前記収容室内に散布してもよい。
この場合には、収容室内の液面に緩衝材が浮遊しているため、散布孔から散布された液体により液面が叩かれることで、飛沫が生じるのを防ぐことができる。これにより、収容室内の液体が微細な霧状の水分として空気中に漂うことを抑え、分離器内に供給される霧状の液体の増加を抑え、分離器の分離負荷の増大を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本願の請求項1、6に係る発明によれば、液滴除去の目的のために設計された分離器内に供給される混合流体の流動様式を、分離器により分離可能な噴霧流状態とすることができる。
【0017】
本願の請求項2に係る発明によれば、収容室内における混合流体の偏在をより確実に抑制することができる。
【0018】
本願の請求項3に係る発明によれば、混合流体を効率よく気体と液体とに分離することができる。
【0019】
本願の請求項4に係る発明によれば、混合流体の流速を、分離器が、混合流体を気体と液体とに分離する能力を発揮可能な流速範囲に調整することができる。
【0020】
本願の請求項5に係る発明によれば、分離効率を上げられるとともに、同一の形状の分離器を用いて、それぞれの供給口の上下方向の位置を異ならせて配設することができる。
【0021】
本願の請求項7に係る発明によれば、分離器内に供給される霧状の液体量の増加を抑え、分離器の分離負荷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第一実施形態に係る気液分離装置の正面視における概念図である。
図2図1に示す気液分離装置の上下方向から見た平面視における概念図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る気液分離装置の正面視における概念図である。
図4図3に示す気液分離装置の上下方向から見た平面視における概念図である。
図5図3に示す気液分離装置の異なる構成例の正面視における概念図である。
図6図5に示す気液分離装置の上下方向から見た平面視における概念図である。
図7】本発明の第三実施形態に係る気液分離装置の正面視における概念図である。
図8図7に示す気液分離装置のA−A矢視における概念図である。
図9図7に示す気液分離装置のB−B矢視における概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第一実施形態)
以下、図1及び図2を参照し、本発明の第一実施形態に係る気液分離装置について説明する。本実施形態に係る気液分離装置1は、気体Aと液体Lとの混合流体Fが供給される供給口2aを備え、混合流体Fを気体Aと液体Lに分離するサイクロンセパレータ(分離器)2と、サイクロンセパレータ2の下方に設けられ、分離された液体Lを排水する排水管3aと、サイクロンセパレータ2の上方に設けられ、分離された気体Aを排気する排気管3bと、を備えている。
【0024】
また、気液分離装置1は、サイクロンセパレータ2が内部に収容される収容室5を備え、上下方向に延びる筒状に形成された本体容器6を有している。以下の説明では、上下方向から見た平面視において、本体容器6の中心軸線Oに直交する方向を径方向といい、中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0025】
図1に示すように、サイクロンセパレータ2は、周壁に供給口2aが形成された本体筒部2bと、本体筒部2bの下方に接続された排出筒部2cと、を備えている。排出筒部2cの下端部は、後述する液層部Sの液面Uの下方まで延び、水封状態となっている。本体筒部2bは、排出筒部2cよりも大径に形成されており、本体筒部2b及び排出筒部2cは、互いに同軸に配置されている。図示の例では、排出筒部2cは、本体筒部2bよりも上下方向に長く形成されている。なお、排出筒部2cは、本体筒部2bよりも上下方向に短く形成されていてもよいし、大径に形成されていてもよい。また、本体筒部2bと排出筒部2cとの間に、上方から下方に向けて縮径するテーパ筒部が形成されていてもよい。また、本体筒部2b及び排出筒部2cは同軸に形成されていなくてもよい。
【0026】
図1及び図2に示すように、本体容器6内には、複数のサイクロンセパレータ2が周方向に等間隔に収容されている。図示の例では、4つのサイクロンセパレータ2が収容されている。複数のサイクロンセパレータ2それぞれの上端開口縁は、径方向に沿って延在する仕切り壁6aと接続されている。仕切り壁6aは、複数のサイクロンセパレータ2それぞれの内部と外部とを仕切っており、径方向の外端部において、本体容器6の内周面と接続されている。また、仕切り壁6aの下方には、収容室5が形成されている。すなわち、複数のサイクロンセパレータ2は、本体容器6内における収容室5内に収容されている。
なお、収容室5内に、サイクロンセパレータ2を径方向に等間隔に収容してもよいし、収容室5内に収容されるサイクロンセパレータ2の数量については、4つに限られず、任意に変更することが可能である。
【0027】
図1に示すように、本体容器6には、2つの流入管4が接続されている。このうち、本体容器6の径方向の一方側に接続された一次流入管4aは、生産井と接続されており、生産井から産出された混合流体Fを流入させるための管路となっている。また、本体容器6の径方向の他方側に接続された二次流入管4bは、モータ9を備えたポンプ8を通して、排水管3aと接続されており、主に、排水管3aより排水された混合流体Fのうちの液体Lを再度流入させるための管路となっている。なお、二次流入管4bは、モータ9を備えたポンプ8を通すことなく、直接排水管3aと接続されていてもよい。
これらの流入管4それぞれに、流量を調整するための弁装置11と、流量や圧力等を測定するための計器12と、が取付けられている。また、二次流入管4bには、主に、混合流体Fのうちの液体Lの逆流を防止する逆止弁13が取付けられている。
【0028】
本体容器6の上端部には、排気管3bが接続されている。排気管3bは本体容器6と同軸に配置されている。このため、後述する気液分離方法により、混合流体Fから分離されることで仕切り壁6aの上方に上昇してきた気体Aは、本体容器6内の上部に気層部Rを形成するとともに、排気管3bより排気され、後工程に送られる。排気管3bには弁装置11及び計器12が取付けられている。なお、排気管3b及び本体容器6は同軸に配置されていなくてもよい。
本体容器6内の底部には、上方から下方に向けて縮径する筒状のドレン壁6bが設けられている。ドレン壁6bは、本体容器6と同軸に配置されている。径方向の中央部に位置するドレン壁6bの下端開口縁が、排水管3aの上端開口部と接続されている。このため、混合流体Fに混入して気液分離装置1内に流入した砂等の液体Lより比重の大きい固定物は、ドレン壁6bにより排水管3aへの流下を促され、ポンプ8に排出される。
また、後述する気液分離方法により、混合流体Fから分離されることで収容室5内に貯留された液体Lは、収容室5内に液層部Sを形成するとともに、ドレン壁6bにより径方向の中央部に集められ、排水管3aを通して排水される。
【0029】
本体容器6の周壁には、収容室5内に液体を流入するためのバイパス管7が接続されている。バイパス管7には、弁装置11が設けられており、例えば気液分離装置1の使用開始時等に、必要に応じて弁装置11が開閉されることで、収容室5内の液層部Sに外部から液体を流入することが可能となっている。
また、本体容器6の周壁には、計測管14が接続されている。計測管14の一方の端部は本体容器6の上端部に、他方の端部は本体容器6の下端部に、それぞれ接続されている。
また計測管14には、本体容器6内の液層部Sの貯留量を、液層部Sの液面Uの位置により測定する液面計15が設けられている。
【0030】
排水管3aは、本体容器6とポンプ8とを連通する一次排水管3aと、ポンプ8から外部に排水をする二次排水管3aと、を備えている。一次排水管3aには、計器12が取付けられている。二次排水管3aには、弁装置11、計器12、及び逆止弁13が取付けられ、弁装置11を操作することで、排水管3aの排水量を調整することができる。また、二次流入管4bに設けられた弁装置11と連携して操作することで、二次排水管3aからの排水を、再び本体容器6内に流入することができる。これらの弁装置11による調整は、各計器12により計測された気液分離装置1の内部の状態から、リモートコントロールにより制御することが可能となっている。
【0031】
そして本実施形態では、本体容器6は、外部からの混合流体Fが滞留される滞留室18を備えており、滞留室18と収容室5との間の隔壁18aには、滞留室18内に滞留した混合流体Fを、収容室5内に散布する複数の散布孔19が形成されている。
滞留室18は本体容器6の内部に設けられており、一次流入管4a及び二次流入管4bそれぞれから流入される混合流体Fを滞留する空間を形成している。また、滞留室18は仕切り壁6aの下方に位置しており、滞留室18の頂壁は、仕切り壁6aの一部により形成されている。図示の例では、滞留室18と、サイクロンセパレータ2の本体筒部2bと、の上下方向の位置(以下、高さという)が互いにほぼ同等となっている。
【0032】
また本実施形態では、図2に示すように、滞留室18は、本体容器6内における外周縁部に全周にわたって設けられ、散布孔19は、隔壁18aのうち、上下方向を向き、かつ下方に位置する底壁の全周にわたって、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
滞留室18は中心軸線Oに沿う断面視において矩形状をなし、中心軸線Oと直交する横断面視において環状に形成されている。滞留室18の外周面は、本体容器6の内周面と一体に形成されている。
【0033】
複数の散布孔19は、それぞれ互いに同径をなしており、かつ周方向に等間隔をあけて配置されている。図示の例では散布孔19は、周方向に8つ並んで形成されている。なお、散布孔19は、滞留室18の内周壁及び底壁のうち、少なくとも一方に形成されていればよく、散布孔19の数量については、8つに限られず任意に変更可能である。
【0034】
また本実施形態では、図2に示すように、サイクロンセパレータ2は、収容室5内に、周方向に等間隔をあけて複数配設されている。複数のサイクロンセパレータ2は、それぞれの供給口2aが径方向の外側に位置するように配設され、それぞれの供給口2aは、互いに異なる方向を向いて開口している。図示の例では、サイクロンセパレータ2は4つ配設されている。なお、サイクロンセパレータ2の数量については、4つに限られず任意に変更可能である。また、複数のサイクロンセパレータ2それぞれの供給口2aは、同じ方向を向いて開口していてもよい。
【0035】
次に、以上のように構成された気液分離装置1を用いて、混合流体Fを気体Aと液体Lとに分離する気液分離方法について説明する。
本実施形態における気液分離方法は、外部から本体容器6内に流入した混合流体Fを、滞留室18にて一時的に滞留させる滞留工程と、散布孔19を通して、滞留室18内の混合流体Fを、収容室5内に散布する散布工程と、供給口2aを通して、収容室5内の混合流体Fを、サイクロンセパレータ2内に供給する供給工程と、を備えている。
【0036】
滞留工程では、例えば産出井等から一定の流速で本体容器6内に流入される混合流体Fを、滞留室18内の空間で受け止め、混合流体Fを滞留室18の内部に滞留させる。これにより、混合流体Fの流速が低減するとともに、滞留させた混合流体Fのうちの液体Lに、後続の混合流体Fが衝突するようになる。これにより、混合流体Fと、隔壁18aとの衝突を緩和し、滞留室18内に混合流体Fの飛沫が生じるのを抑えることができる。
【0037】
また、滞留室18は本体容器6内における外周縁部に全周にわたって設けられているため、滞留室18に滞留した混合流体Fは、隔壁18aに沿って滞留室18内の全域に行き渡る。ここで、例えば滞留室18を上下方向に大きく設けるとともに、散布孔19を上下2箇所に形成すると、混合流体Fのうち、比重の大きい液体Lは滞留室18の下方に滞留し、比重の小さい気体Aは滞留室18の上方に滞留する。これにより、滞留室18内において、気体Aと液体Lとの分離を促すことができる。
【0038】
散布工程では、滞留室18に滞留した混合流体Fを、隔壁18aのうち、底壁に形成された散布孔19より本体容器6内に散布する。この際、複数の散布孔19が、それぞれ同径をなしており、かつ周方向に間隔をあけて配置されているため、収容室5内に散布する流量を、周方向の位置ごとに平準化することができる。なお、散布する流量を周方向の位置ごとに平準化するために、最適化設計により、複数の散布孔19それぞれの内径や位置を調整してもよい。
また、複数の散布孔19より散布されることで、混合流体Fのうちの液体Lが、散布孔19を通過することにより液体Lの表面積を増やすことができ、これにより、気体Aと液体Lの分離を促すことができる。
【0039】
供給工程では、収容室5内に散布された混合流体Fのうち、気体Aと、ここまでの工程において微細な霧状となった液体Lと、が、収容室5内の混合流体Fの流れに従って、いずれかのサイクロンセパレータ2の供給口2aに至ることで、サイクロンセパレータ2内に供給される。また、ここまでの工程において微細な霧状を除く状態を保持した液体Lについては、収容室5内を下降し、サイクロンセパレータ2内に供給されることなく、収容室5内の液層部Sに貯留される。
【0040】
そして、サイクロンセパレータ2内に供給された混合流体Fは、本体筒部2bの内周面に沿って流動し、旋回流を起こす。その結果、混合流体Fに遠心力が加えられる。これにより、比重の大きい液体Lが、次第に本体筒部2bの径方向の外側に移動することで、比重の小さい気体Aが、次第に本体筒部2bの径方向の内側に移動し、気体Aと液体Lとが分離される。
その後、液体Lは本体筒部2bの内周面に沿って流下してゆき、排出筒部2cを通して、収容室5内の液層部Sに貯留される。また、気体Aは、本体筒部2bの上端開口縁から上方に排気され、仕切り壁6aの上方に気層部Rを形成するとともに、排気管3bより排気され、後工程に送られる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態における気液分離装置1及び気液分離方法によれば、本体容器6内に流入された混合流体Fが、滞留室18に一時的に滞留した後に、滞留室18と収容室5との間の隔壁18aに形成された散布孔19から収容室5内に散布され、供給口2aを通してサイクロンセパレータ2に供給される。このため、本体容器6内に流入した混合流体Fの流動様式が、噴霧流や気泡流等いかなる流動様式であったとしても、混合流体Fが滞留室18内に流入し、散布孔19から収容室5内に散布されることで、サイクロンセパレータ2内に流入する混合流体Fの流動様式を常に噴霧流状態とすることができる。
【0042】
また、外部からの混合流体Fを直接、サイクロンセパレータ2内に供給するのではなく、滞留室18において一時的に滞留させることで、混合流体Fの流速を抑えることができるとともに、滞留室18内に滞留させた混合流体Fのうちの液体分Lに、続けて滞留室18内に流入した混合流体Fを衝突させることができる。これにより、後続の混合流体Fが本体容器6内の内面と衝突して飛沫が生じるのを抑えることができ、液体分Lが、微細な霧状となって空気中に漂うことで、サイクロンセパレータ2の分離負荷が増大するのを抑えることができる。
また、複数の散布孔19を通して収容室5内に混合流体Fを散布することで、本体容器6内に流入された混合流体Fがいかなる流動様式であっても、収容室5内に散布される混合流体Fの気体Aと液体Lとの流量比の偏りを抑え、収容室5内に漂う噴霧濃度を均一化することができる。
【0043】
これらにより、外部から気液分離装置1に供給される混合流体F中に含まれる気体Aと液体Lとの流量の比率が大きく変動するような場合であっても、サイクロンセパレータ2内に供給される混合流体Fの流動様式を、サイクロンセパレータ2により分離可能な噴霧流状態とすることができる。
また、滞留室18内における複数の箇所から収容室5内に散布するので、散布孔19の内径や数を調整することで、収容室5内の位置ごとにおける混合流体Fの散布量を調整できる。その上で、散布孔19の位置により、混合流体Fが収容室5内に流入される方向を分散できる効果も相俟って、収容室5内の位置ごとで混合流体Fが偏在するのを抑制することができる。
【0044】
また、滞留室18が、本体容器6内における外周縁部に全周にわたって設けられ、散布孔19が、隔壁18aの底壁に、全周にわたって、周方向に間隔をあけて複数形成されている。このため、本体容器6内に流入された混合流体Fを、本体容器6内における外周縁部に全周にわたって設けられた滞留室18に滞留させるとともに、この滞留室18と収容室5との間の隔壁18aに全周にわたって周方向に間隔をあけ、複数形成された散布孔19から収容室5内に散布することができる。これにより、混合流体Fが収容室5内に流入される方向を分散させることができ、収容室5内における混合流体Fの偏在をより確実に抑制することができる。
【0045】
また、収容室5内にサイクロンセパレータ2が複数配設されているので、散布孔19が形成された滞留室18を本体容器6が備えることで、収容室5内に偏り少なく散布された混合流体Fを、それぞれのサイクロンセパレータ2に供給して分離することができる。
さらに、収容室5内にサイクロンセパレータ2が周方向に等間隔に複数配設されているため、収容室5内に散布された混合流体Fを、それぞれのサイクロンセパレータ2に偏り少なく供給することができる。これにより、混合流体Fを効率よく気体Aと液体Lとに分離することができる。
【0046】
(第二実施形態)
次に、図3及び図4を参照し、本発明の第二実施形態に係る気液分離装置について説明する。なお、本実施形態においては、第一実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0047】
図3及び図4に示すように、本実施形態における気液分離装置10では、複数のサイクロンセパレータ2が、収容室5内に、少なくとも2つは、それぞれの供給口2aの高さを異ならせて配設されている。また、サイクロンセパレータ2は、互いに径方向の位置を異ならせて複数配設されるとともに、径方向の内側に位置するものほど下方に位置している。
また、気液分離装置10では、滞留室18は複数のサイクロンセパレータ2よりも径方向の外側に位置し、滞留室18の高さは、複数のサイクロンセパレータ2のうちの最も径方向の外側に位置するものとほぼ同等となっている。
【0048】
複数のサイクロンセパレータ2は、供給口2aの高さを互いに異ならせて、複数ずつ配置されている。複数のサイクロンセパレータ2のうち、供給口2aの高さが互いに同等のサイクロンセパレータ2同士は、本体容器6の中心軸線Oから同等の距離に位置するように配設され、複数のサイクロンセパレータ2のうち、供給口2aの高さが互いに異なるサイクロンセパレータ2同士は、本体容器6の中心軸線Oから異なる距離に位置するように配設されている。
図示の例では、複数のサイクロンセパレータ2は、径方向の外側に位置するものが上方に位置するように、上下方向に沿って3段に、周方向に沿って4列に配設されることにより、合計12基が収容されている。これら複数のサイクロンセパレータ2のうち、中心軸線Oからの径方向の距離が同等のものは、それぞれ互いに同等の高さに配設されている。
【0049】
なお、複数のサイクロンセパレータ2は、少なくとも一部が、互いにそれぞれの供給口2aの高さを異ならせて配設されていればよく、径方向の内側に位置するものが上方に位置していてもよい。また、収容室5内に収容されるサイクロンセパレータ2の数量については、12基に限られず任意に変更することが可能である。さらにまた、滞留室18の高さは、複数のサイクロンセパレータ2よりも低くてもよい。
【0050】
また、サイクロンセパレータ2は、仕切り壁26aに接続されている。仕切り壁26aは、上下方向の中間部分で下部が縮径する有底筒状に形成されており、その上端縁から径方向の外側に向けて延びるフランジ部26bを備えている。仕切り壁26aには、前記中間部分に、径方向に沿って延在する平坦面26cが形成されている。複数のサイクロンセパレータ2のうち、最上段に配設された各サイクロンセパレータ2の上端開口縁と、仕切り壁26aのフランジ部26bと、がそれぞれ接続されている。また、中段に配設された各サイクロンセパレータ2の上下方向の中間部分と、仕切り壁26aの平坦面26cと、がそれぞれ接続されている。さらに、最下段に配設された各サイクロンセパレータ2の上下方向の中間部分と、仕切り壁26aの底部26dと、がそれぞれ接続されている。
【0051】
そして、本実施形態における気液分離方法では、計測管14に設けられた液面計15により液層部Sの液面の位置を計測し、これに基づいて流入管4及び排水管3aにおける流量を、それぞれの各部に設けられた弁装置11により調整することで、液層部Sの液面Uの高さを調整する。すなわち、仮に気体Aの流量が少ない場合には、液面Uを上昇させて下方に位置するサイクロンセパレータ2を水没させることで、気体Aと霧状の液体Lとからなる混合流体Fが通過するサイクロンセパレータ2の個数を減少させる。
【0052】
これにより、気体Aの流入量が少ない場合でも、サイクロンセパレータ2に入る混合流体Fの流速を一定範囲内に設定することができる。一方、気体Aの流量が多くなった場合には、液面を下げて、気体Aと霧状の液体Lとからなる混合流体Fが通過するサイクロンセパレータ2の個数を増やす。これにより、サイクロンセパレータ2に入る混合流体Fの速度を一定範囲内に設定することができる。このようにサイクロンセパレータ2に入る混合流体Fの速度を一定範囲内に設定することで、精度よく混合流体Fを気体Aと液体Lとに分離することができる。
【0053】
また、本実施形態における散布工程では、収容室5内に貯留した液体の液面Uに、前記液体よりも比重の小さい緩衝材16を浮遊させた状態で、滞留室18内の混合流体Fを収容室5内に散布する。緩衝材16としては、例えば綿花や発泡性樹脂等が挙げられる。収容室5内に貯留された液体としては、混合流体Fから分離された液体Lのみであってもよいし、バイパス管7から流入された他の液体であってもよく、これらの混合液であってもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態における気液分離装置10及び気液分離方法によれば、サイクロンセパレータ2が、収容室5内に、少なくとも2つが、互いにそれぞれの供給口2aの高さを異ならせて複数配設されている。このため、収容室5内に貯留された液面Uの高さを調整し、収容室5内に配設されたサイクロンセパレータ2の供給口2aのうちのいくつかを水没させることで、機能するサイクロンセパレータ2の数量を調整し、収容室5内から流入する混合流体Fの供給口2aでの流速を調整することができる。これにより、混合流体Fの流速を、サイクロンセパレータ2が、混合流体Fを気体Aと液体Lとに分離する能力を発揮可能な流速範囲に調整することができる。
【0055】
また、サイクロンセパレータ2が、供給口2aの高さが互いに同等のサイクロンセパレータ2同士が、本体容器6の中心軸線Oから同等の距離に位置するように配設され、供給口2aの高さが互いに異なるサイクロンセパレータ2同士が、本体容器6の中心軸線Oから異なる距離に位置するように配設されているので、収容室5内の空間に効率的に複数のサイクロンセパレータ2を配設することができ、分離効率を上げられるとともに、同一の形状のサイクロンセパレータ2を用いて、それぞれの供給口2aの高さを異ならせて配設することができる。
【0056】
また、散布工程において、収容室5内に貯留した液体の液面Uに、液体よりも比重の小さい緩衝材16を浮遊させた状態で、滞留室18内の混合流体を、収容室5内に散布しているので、散布孔19から散布された液体Lにより液面Uが叩かれることで、飛沫が生じるのを防ぐことができる。これにより、収容室5内の液体が微細な霧状の水分として空気中に漂うことを抑え、サイクロンセパレータ2内に供給される霧状の液体の増加を抑え、サイクロンセパレータ2の分離負荷の増大を抑えることができる。
【0057】
なお、図3及び図4に示す気液分離装置10は、図5及び図6に示すように、複数のサイクロンセパレータ2に代えて、デミスタ(分離器)22を採用した気液分離装置20としてもよい。気液分離装置20では、デミスタ22は、円筒形状に形成された濾過材であり、高さの異なる位置に複数配設されている。複数のデミスタ22は、それぞれの径方向の大きさが異なっている。すなわち、最上段に配設されたデミスタ22が大径となっており、下方に位置するに従い小径となることで、図6に示すように、上下方向から見た平面視において、径方向に連なって配設されている。また、最上段に位置するデミスタ22は、隔壁18aと径方向に当接している。
【0058】
ここで、最上段に配設されたデミスタ22の上面と、仕切り壁26aのフランジ部26bの上面と、がほぼ面一になっている。また、中段に配設されたデミスタ22の底面と、仕切り壁26aの平坦面26cと、がほぼ面一になっている。さらに、最下段に配設されたデミスタ22の底面と、仕切り壁26aの底部26dの上面と、がほぼ面一になっている。
デミスタ22としては、例えば金属線材等により形成されたものを採用することができる。このような構成とすることで、気液分離装置20の構造を簡易なものにすることができる。なお、デミスタ22は上記構成の他、第一実施形態におけるサイクロンセパレータ2のように周方向に同等の間隔をあけて遊星状に配置してもよいし、デミスタ22が滞留室18よりも上方に位置していてもよい。
【0059】
(第三実施形態)
次に、図7から図9を参照し、本発明の第三実施形態に係る気液分離装置について説明する。なお、本実施形態においては、第一実施形態及び第二実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0060】
図7に示すように、本実施形態における気液分離装置30では、滞留室38は、本体容器6の径方向の中央部に設けられ、一次流入管4a及び二次流入管4bは、収容室5内を通過して、滞留室38内に接続されている。滞留室38内の上下方向の大きさは、サイクロンセパレータ32の上下方向の大きさの半分程度となっている。なお、この大きさに限られず、例えば滞留室38の底面が収容室5内の液面U以下の高さまで延びていてもよい。
滞留室38は、上部に位置する一次滞留室38aと、下部に位置する二次滞留室38bと、を備えており、これらの間には、区画板60が配設されている。また、二次滞留室38bは、一次滞留室38aよりも上下方向に大きくなっている。
【0061】
図8に示すように、区画板60には複数の通過孔61が形成されており、一次滞留室38a内に滞留した混合流体Fは、通過孔61を通して二次滞留室内38bに流下する。図示の例では、中心軸線Oから見た横断面視において、一次流入管4a、二次流入管4b、及び通過孔61のうちの2つは、同一直線上に配設されている。通過孔61は、区画板60に8つ形成されている。なお、通過孔61の数量及び位置については任意に変更可能である。また、隔壁68には、複数の散布孔69が形成されている。
【0062】
図7から図9に示すように、散布孔69は、隔壁68のうち径方向を向く周面に形成された第一散布孔69aと、上下方向を向く底面に形成された第二散布孔69bと、を備えている。図示の例では、散布孔69は全て同径とされ、第一散布孔69aは、隔壁68における流入管4を回避した位置に、間隔をあけて周方向に6つ形成され、第二散布孔69bは、20個形成されている。なお、散布孔69の数量及び位置は任意に変更可能であり、それぞれの内径を異ならせてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、収容室5内に形状の異なるサイクロンセパレータ32が、複数配設されている。すなわち、収容室5内に配設された複数のサイクロンセパレータ32のうち、本体筒部33が上下方向に大きい第一サイクロンセパレータ32aが、その他の第二サイクロンセパレータ32bとともに配設されている。また、複数のサイクロンセパレータ32それぞれの上下方向の大きさは同等となっており、第一サイクロンセパレータ32aの排出筒部34は、第二サイクロンセパレータ32bの排出筒部34よりも上下方向の長さが短くなっている。
【0064】
第一サイクロンセパレータ32aにおける本体筒部33の上下方向の長さは、第二サイクロンセパレータ32bにおける本体筒部33の上下方向の長さの2倍程度となっている。第一サイクロンセパレータ32aの供給口31は、第二サイクロンセパレータ32bの供給口31よりも下方に位置している。第一サイクロンセパレータ32aの本体筒部33の下部に、供給口31が備えられている。
【0065】
そして、本実施形態における気液分離方法では、本体容器6内に流入する混合流体Fは、滞留室38内のうち、上部に位置する一次滞留室38a内に滞留された後に、区画板60に形成された通過孔61を通して二次滞留室38b内に滞留される。二次滞留室38b内において、二次滞留室38b内に滞留された混合流体Fのうち、比重の大きい液体Lは二次滞留室38bの下方に滞留し、比重の小さい気体Aは二次滞留室38bの上方に滞留する。
【0066】
その後、二次滞留室38bの上方に滞留した気体Aは、第一散布孔69aから収容室5内に散布され、二次滞留室38bの下方に滞留していた液体Lは、第二散布孔69bから収容室5内に散布される。そして収容室5内に散布された気体Aは、複数のサイクロンセパレータ32それぞれに供給され、液体Lは液層部Sに貯留される。
【0067】
以上説明したように、本実施形態における気液分離装置30及び気液分離方法によれば、滞留室38の上下方向の大きさが十分大きく設けられているため、二次滞留室38b内において、気体Aと液体Lとの分離を促すことができる。この際、滞留室38が、一次滞留室38aと二次滞留室38bとを備えているため、本体容器6内に流入してきた混合流体Fの勢いを止める役割を一次滞留室38aが担うことにより、二次滞留室38b内で混合流体Fのうちの液体Lから飛沫が発生するのを抑え、収容室5内に散布される混合流体Fの流動様式を安定させた状態にすることができる。これにより、サイクロンセパレータ32の分離負荷を増大することなく、効率的に混合流体Fを分離することができる。
【0068】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0069】
例えば、上記第一実施形態及び第二実施形態においては、滞留室18は、本体容器6内における外周縁部に全周にわたって設けられ、散布孔19は、隔壁18aの底壁に、周方向に間隔をあけて複数形成されている構成を示したが、このような態様に限られない。滞留室は例えば本体容器の外部に設けられる等、本体容器の内周面に沿わずに形成されていてもよいし、周方向に断続的に複数の滞留室が設けられていてもよい。また、散布孔は、周方向の同じ位置に複数形成されていてもよい。
【0070】
また、上記第一実施形態及び第二実施形態においては、収容室5内には、複数のサイクロンセパレータ2が収容され、複数のサイクロンセパレータ2が、周方向又は径方向に等間隔に配設されている構成を示したが、このような態様に限られない。サイクロンセパレータは、収容室内に1つ収容されていてもよいし、複数のサイクロンセパレータが、周方向又は径方向に等間隔でなく配設されていてもよい。
【0071】
また、上記第二実施形態では、複数のサイクロンセパレータ2のうち、供給口2aの高さが互いに同等のサイクロンセパレータ2同士が、本体容器6の中心軸線Oから同等の距離に位置するように配設され、複数のサイクロンセパレータ2のうち、供給口2aの高さが互いに異なるサイクロンセパレータ2同士が、本体容器6の中心軸線Oから異なる距離に位置するように配設されている構成を示したが、このような態様に限られない。
複数のサイクロンセパレータは、収容室内において、供給口の高さにかかわらず、中心軸線Oからの距離を任意に選択した位置に、それぞれ配置することができる。
【0072】
また、上記第二実施形態では、散布工程として、収容室5内に貯留した液体の液面Uに、前記液体よりも比重の小さい緩衝材16を浮遊させた状態で散布する構成を示したが、このような態様に限られない。緩衝材16は、液面Uに浮遊することなく、例えば収容室5内の内壁に固定されていてもよいし、無くてもよい。
【0073】
また、上記第一実施形態及び第二実施形態においては、例えばメタンハイドレート開発等において用いられる気液分離装置1として、主に海底への設置を想定しているが、陸上に設置して用いることもできる。
【0074】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1、10、20、30 気液分離装置
2、32 サイクロンセパレータ(分離器)
2a 供給口
3a 排水管
3b 排気管
5 収容室
6 本体容器
16 緩衝材
18、38 滞留室
18a、68 隔壁
19、69 散布孔
22 デミスタ(分離器)
A 気体
F 混合流体
L 液体
U 液面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9