特許第6670689号(P6670689)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670689
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】止水装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20200316BHJP
   E02B 3/16 20060101ALI20200316BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   E02B3/06 301
   E02B3/16 A
   E06B5/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-119911(P2016-119911)
(22)【出願日】2016年6月16日
(65)【公開番号】特開2017-223061(P2017-223061A)
(43)【公開日】2017年12月21日
【審査請求日】2019年1月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230940
【氏名又は名称】日本原子力発電株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100154760
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 正男
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】000172868
【氏名又は名称】佐藤鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(74)【代理人】
【識別番号】100154760
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 正男
(72)【発明者】
【氏名】椎名 正樹
(72)【発明者】
【氏名】明田 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】平岡 良彦
(72)【発明者】
【氏名】関 愼吾
(72)【発明者】
【氏名】室井 勇二
(72)【発明者】
【氏名】和山 朗丈
(72)【発明者】
【氏名】森 幸仁
(72)【発明者】
【氏名】前田 博司
(72)【発明者】
【氏名】小野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】羽野 聡志
【審査官】 佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−200524(JP,A)
【文献】 実開昭58−016222(JP,U)
【文献】 特開2003−155878(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2006−0078725(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04−3/16
E02B 7/20
E06B 5/00
E06B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に構築された第1構造物と第2構造物との間に形成される隙間部分であって、前記第1構造物と前記第2構造物との対向方向に垂直な方向の両端に互いに平行な端面を有する隙間部分を止水する止水装置であって、
矩形状であり、4辺のうち第1辺側が前記第1構造物に固定され、前記第1辺と平行な第2辺側が折り返された状態で前記第2構造物に固定され、前記第1辺及び前記第2辺とは異なる第3辺が前記隙間部分の一方の前記端面に接触し、第4辺が前記隙間部分の他方の前記端面に接触することで前記隙間部分を閉塞し、振動による前記第1構造物と前記第2構造物との間の相対位置の変動に追従して前記隙間部分を閉塞した状態で前記折り返し部分が前記第3辺及び前記第4辺に平行な方向に移動するように変形可能な膜部材と、
前記膜部材と前記第1構造物との間、及び前記膜部材と前記第2構造物との間をそれぞれ固定して密着させる固定部とを備え
前記第2構造物は、前記第2構造物を挟んで配置された一対の基礎構造と、当該一対の基礎構造の間に架設され前記第1構造物に対して鉛直方向の上方に前記隙間部分を空けて配置された梁部とを有し、
前記膜部材は、前記第1構造物と前記第2構造物の梁部との前記隙間部分を閉塞する止水装置。
【請求項2】
地盤に構築された第1構造物と第2構造物との間に形成される隙間部分であって、前記第1構造物と前記第2構造物との対向方向に垂直な方向の両端に互いに平行な端面を有する隙間部分を止水する止水装置であって、
矩形状であり、4辺のうち第1辺側が前記第1構造物に固定され、前記第1辺と平行な第2辺側が折り返された状態で前記第2構造物に固定され、前記第1辺及び前記第2辺とは異なる第3辺が前記隙間部分の一方の前記端面に接触し、第4辺が前記隙間部分の他方の前記端面に接触することで前記隙間部分を閉塞し、振動による前記第1構造物と前記第2構造物との間の相対位置の変動に追従して前記隙間部分を閉塞した状態で前記折り返し部分が前記第3辺及び前記第4辺に平行な方向に移動するように変形可能な膜部材と、
前記膜部材と前記第1構造物との間、及び前記膜部材と前記第2構造物との間をそれぞれ固定して密着させる固定部とを備え
前記第1構造物は、沿岸部に設けられた取水部であり、
前記第2構造物は、前記取水部の鉛直方向の上方に設けられた防護壁を含む請求項1に記載の止水装置。
【請求項3】
前記膜部材は、前記第3辺及び前記第4辺に平行な方向に延びた状態であり、前記第1辺及び前記第2辺に平行な方向に所定の間隔を空けて複数配置されたテンションベルトを有する請求項1又は請求項2に記載の止水装置。
【請求項4】
前記固定部は、前記膜部材及び前記テンションベルトを前記第1構造物及び前記第2構造物に固定する固定部材と、前記膜部材のうち隣り合う前記テンションベルトとの間の部分を前記第1構造物及び前記第2構造物に固定する固定部材とを有する請求項に記載の止水装置。
【請求項5】
前記膜部材は、前記第1辺及び前記第2辺に平行な方向に配置された補強ベルトを有する請求項1から請求項のいずれか一項に記載の止水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、沿岸部の発電施設等では地震や津波等の災害対策の拡充が求められており、例えば海岸に沿って防潮堤を構築することが検討されている。このような発電施設等には、構内に海水を引き入れるための取水部が設けられている場合がある。取水部は、例えばコンクリート等を用いて構築された暗渠構造であり、構内から海側に向けて突出した複数の取水口を有している。
【0003】
防潮堤は海岸に沿って構築されるため、取水部が設けられる場合には、当該取水部を横切ることになる。取水部の構造上、当該取水部の上面に防潮堤を直接載置することは困難である。このため、取水部の両側に基礎構造を構築し、当該基礎構造の間に防護壁を架設する構成が提案されている。
【0004】
このような防護壁を設ける場合、地震発生時に生じる振動で取水部と防護壁とが互いに干渉しないようにするため、取水部の上面と防護壁との間に隙間部分を設ける必要がある。一方、隙間部分を設ける場合、当該隙間部分から海水が構内に入り込まないように止水する必要がある。止水を行う構成としては、例えば隙間部分に水密ゴムを配置させる構成や、2本の柱の間に止水膜を配置する構成(例えば、特許文献1参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−226411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成においては、地震発生時の振動等により、取水部と防護壁とが相対的に移動する場合がある。このため、取水部と防護壁との間の相対位置の変動を許容しつつ隙間部分の止水が可能な構成が求められている。また、取水部及び防護壁に限られず、2つの構造物の間の相対位置の変動を許容しつつ隙間部分の止水が可能な構成が求められている。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、2つの構造物の間の相対位置の変動を許容しつつ隙間部分の止水が可能な止水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る止水装置は、地盤に構築された第1構造物と第2構造物との間に形成される隙間部分であって、前記第1構造物と前記第2構造物との対向方向に垂直な方向の両端に互いに平行な端面を有する隙間部分を止水する止水装置であって、矩形状であり、4辺のうち第1辺側が前記第1構造物に固定され、前記第1辺と平行な第2辺側が折り返された状態で前記第2構造物に固定され、前記第1辺及び前記第2辺とは異なる第3辺が前記隙間部分の一方の前記端面に接触し、第4辺が前記隙間部分の他方の前記端面に接触することで前記隙間部分を閉塞し、振動による前記第1構造物と前記第2構造物との間の相対位置の変動に追従して前記隙間部分を閉塞した状態で前記折り返し部分が前記第3辺及び前記第4辺に平行な方向に移動するように変形可能な膜部材と、前記膜部材と前記第1構造物との間、及び前記膜部材と前記第2構造物との間をそれぞれ固定して密着させる固定部とを備える。
【0009】
本発明によれば、例えば地震等が発生した場合の振動によって第1構造物と第2構造物との間の相対位置が変動する場合であっても、膜部材が隙間部分を閉塞した状態で当該相対位置の変動に追従して折り返し部分が第3辺及び第4辺に平行な方向に移動するように変形する。これにより、第1構造物と第2構造物との間の相対位置の変動を許容しつつ隙間部分の止水が可能となる。
【0010】
また、前記第2構造物は、前記第2構造物を挟んで配置された対の基礎構造と、当該一対の基礎構造の間に架設され前記第1構造物に対して鉛直方向の上方に矩形状の前記隙間部分を空けて配置された梁部とを有し、前記膜部材は、前記第1構造物と前記第2構造物の梁部との前記隙間部分を閉塞してもよい。
【0011】
本発明によれば、門型構造である第2構造物の梁部の振動が第1構造物よりも大きくなる場合であっても、膜部材が第2構造物の変動に追従して変形可能である。よって、隙間部分の止水を確実に行うことができる。
【0012】
また、前記第1構造物は、沿岸部に設けられた取水部であり、前記第2構造物は、前記取水部の鉛直方向の上方に設けられた防護壁を含んでもよい。
【0013】
本発明によれば、防護壁に水圧等が加わって振動する場合であっても、当該振動による防護壁と取水部との間の相対位置の変動を許容しつつ、隙間部分の止水が可能となる。
【0014】
また、前記膜部材は、前記第3辺及び前記第4辺に平行な方向に延びた状態であり、前記第1辺及び前記第2辺に平行な方向に所定の間隔を空けて複数配置されたテンションベルトを有してもよい。
【0015】
本発明によれば、膜部材にテンションが加えられた状態となるため、例えば膜部材を湾曲させた状態で配置した場合、当該湾曲状態を維持することができる。
【0016】
また、前記固定部は、前記膜部材及び前記テンションベルトを前記第1構造物及び前記第2構造物に固定する固定部材と、前記膜部材のうち隣り合う前記テンションベルトとの間の部分を前記第1構造物及び前記第2構造物に固定する固定部材とを有してもよい。
【0017】
本発明によれば、膜部材と第1構造物の間、及び膜部材と第2構造物との間の密着性が高められるため、テンションベルトの段差部分に隙間が形成されることを抑制でき、隙間部分からの水の侵入を確実に抑制できる。
【0018】
また、前記膜部材は、前記第1辺及び前記第2辺に平行な方向に配置された補強ベルトを有してもよい。
【0019】
本発明によれば、膜部材の強度を維持することが可能となるため、耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2つの構造物の間の相対位置の変動を許容しつつ隙間部分の止水が可能な止水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本実施形態に係る止水装置の一例を示す図である。
図2図2は、図1におけるA−A断面に沿った構成を示す斜視図である。
図3図3は、A−A断面の一部を拡大して示す図である。
図4図4は、膜部材の一例を示す図である。
図5図5は、固定部によって固定された膜部材の一部を示す平面図である。
図6図6は、固定部によって固定された膜部材の一部を示す断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る止水装置の使用形態の一例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係る止水装置の使用形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る止水装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
図1は、本実施形態に係る止水装置100の一例を示す図である。図2は、図1におけるA−A断面に沿った構成を示す斜視図である。図3は、A−A断面の一部を拡大して示す図である。図1から図3に示すように、止水装置100は、第1構造物である取水部101と、第2構造物である防護壁102との間に形成される隙間部分Gに配置される。
【0024】
ここで、止水装置100が設けられる取水部101及び防護壁102の構成を説明する。取水部101は、沿岸部の発電施設等に設けられており、例えば施設の構内(陸側)から海側に向けて突出して配置される。取水部101は、構内に海水を引き入れるために設けられる。取水部101は、例えば沿岸部の海底B上に配置される。取水部101は、例えばコンクリートなどによって構築され、複数の取水口101aを有する暗渠構造である。取水部101の鉛直方向の上面は、水平面に平行な平面である。
【0025】
防護壁102は、取水部101の鉛直方向の上方に配置される。防護壁102は、複数の函状構造物を有している。当該複数の函状構造物は、例えば鋼製である。防護壁102は、このような複数の函状構造物が取水部101を跨ぐ方向に直線状に並べて配置され、さらに鉛直方向に複数段に積層されている。防護壁102は、第2構造物である鋼製基礎104の間に架設された梁部である。防護壁102の鉛直方向の下面は、水平面に平行な平面である。防護壁102の下面は、取水部101の上面に対して鉛直方向に対向している。したがって、本実施形態において、取水部101と防護壁102との対向方向は、鉛直方向である。
【0026】
鋼製基礎104は、基礎構造103上に構築されている。基礎構造103は、例えば海中の地盤Bに構築されている。基礎構造103は、海岸に沿って配置され、取水部101を跨ぐように構築されている。鋼製基礎104は、地盤Bに構築された基礎構造103上に配置されている。したがって、本実施形態において、第2構造物は、基礎構造103を含む。取水部101の両側に配置される各基礎構造103の上部には、防潮堤105が構築されている。鋼製基礎104は、各防潮堤105に連結されており、取水部101を挟む位置に配置されている。
【0027】
このように、第2構造物は、取水部101を挟んで配置された対の基礎構造103及び鋼製基礎104と、当該対の基礎構造103及び鋼製基礎104の間に架設された防護壁102とを有する門型構造である。
【0028】
隙間部分Gは、鉛直方向に直交する方向、本実施形態では、防護壁102が架設される方向の両端に端面Ga及びGbを有している。端面Ga及びGbは、互いに平行である。端面Ga及びGbは、水平面に垂直である。端面Ga及びGbは、例えば目地部等の一部であってもよい。隙間部分Gは、例えば取水口101aの開口方向から見た場合において矩形状である。また、取水部101の上面と防護壁102の下面との間は、鉛直方向の距離dを空けて配置されている。距離dは、例えば100mm程度に設定される。
【0029】
次に、止水装置100の構成を説明する。止水装置100は、膜部材10と、固定部20とを備えている。図4は、膜部材10の一例を示す図である。図4では、伸ばした状態の膜部材10を示している。図4に示すように、膜部材10は、矩形状である。膜部材10は、4つの辺、すなわち、第1辺10aと、第2辺10bと、第3辺10cと、第4辺10dとを有している。第1辺10aと第2辺10bとは平行である。第3辺10cと第4辺10dとは平行である。
【0030】
膜部材10は、第1辺10aが取水部101の上面に固定されている。なお、取水部101の上面に隙間部分Gの距離dを調整するための調整板106が設けられる場合、第1辺10aは調整板106の上面に固定される。膜部材10は、第2辺10bが防護壁102に固定されている。膜部材10は、第1辺10a及び第2辺10bが海側に向けて配置されており、第1辺10aと第2辺10bとの間の部分が湾曲した状態となっている。つまり膜部材10は、第1辺10aと第2辺10bとの間の部分で折り返した形状である。膜部材10は、同一の面が取水部101の上面と防護壁102の下面とに接する構成であってもよい。
【0031】
膜部材10は、第3辺10cが隙間部分Gの端面Gaに接触している(図1参照)。また、膜部材10は、第4辺10dが隙間部分Gの端面Gbに接触している(図1参照)。この構成により、膜部材10は、隙間部分Gをほぼ隙間ない状態で閉塞している。よって、海水Wの水位が隙間部分Gよりも高くなった場合であっても、隙間部分Gにおいて海水を止水することができるため、隙間部分Gからの海水の侵入が抑制される。
【0032】
また、膜部材10は、地震等により取水部101及び防護壁102が振動し、取水部101と防護壁102との間の相対位置が変動した場合、当該相対位置の変動に追従して第3辺10c及び第4辺10dに平行な方向に変形可能である。膜部材10が第3辺10c及び第4辺10dに平行な方向に変形する場合、第3辺10c及び第4辺10dは、隙間部分Gの長手方向の両端に当接したまま摺動することになる。よって、膜部材10は、隙間部分Gを閉塞した状態のまま変形可能である。
【0033】
膜部材10は、例えば図3に示すように、防護壁102のうち海側の端面に対して陸側に所定距離だけ奥側に配置されている。このため、空洞になっている防護壁102の内部から作業者が膜部材10の海側の部分に入り込み、膜部材10に対して海側からメンテナンスを行うことが可能となっている。
【0034】
また、膜部材10は、シート材11と、補強ベルト12及び13と、テンションベルト14と、水密ゴム板15とを有している。シート材11は、例えばポリアリレート繊維等の樹脂材料を用いて矩形状に形成され、可撓性を有している。補強ベルト12及び13、テンションベルト14、水密ゴム板15は、例えばシート材11の一方の面に取り付けられている。
【0035】
補強ベルト12及び13は、シート材11を補強する。補強ベルト12及び13は、第1辺10a及び第2辺10bに平行に配置されている。補強ベルト12は、第1辺10a及び第2辺10bに設けられている。補強ベルト12は、膜部材10の短手方向(第3辺10c及び第4辺10dに平行な方向)の両端の強度を確保する。補強ベルト13は、シート材11の短手方向の中央部分に配置される。補強ベルト13は、膜部材10のうち湾曲される部分の強度を確保する。補強ベルト13は、例えばポリエステル等の樹脂材料を用いて形成されている。
【0036】
テンションベルト14は、第3辺10c及び第4辺10dに平行に配置されている。テンションベルト14は、第1辺10a及び第2辺10bに平行な方向に所定の間隔を空けて複数並んで配置されている。テンションベルト14は、例えばポリエステル等の樹脂材料を用いて形成されている。テンションベルト14は、シート材11にテンションを加えることにより、膜部材10の湾曲した形状を維持する。
【0037】
補強ベルト12及びテンションベルト14は、固定部20のボルトを挿入するための挿入孔12a及び14aを有している。挿入孔12aは、補強ベルト12のうち隣り合うテンションベルト14の間の部分に配置されている。挿入孔12aは、第1辺10a及び第2辺10bに平行な方向に間隔を空けて複数、例えば3つ配置されているが、これに限定するものではなく、2つ以下又は4つ以上であってもよい。挿入孔14aは、テンションベルト14のうち第3辺10c及び第4辺10dに平行な方向の両端に配置されている。挿入孔14aは、例えば6つ設けられているが、これに限定するものではなく、5つ以下又は7つ以上であってもよい。
【0038】
水密ゴム板15は、第3辺10c及び第4辺10dに設けられている。水密ゴム板15は、隙間部分Gの長手方向の両端部に接触する。水密ゴム板15は、膜部材10の長手方向の両端部(第3辺10c及び第4辺10d)を保護する。
【0039】
また、膜部材10は、隙間部分Gに湾曲して配置された状態において、長手方向(第1辺10a及び第2辺10bに平行な方向)の両端部にカバーシート16を有している(図3の一点鎖線部分)。カバーシート16は、膜部材10の第3辺10c及び第4辺10dに取り付けられており、具体的には、各水密ゴム板15に固定されている。カバーシート16は、膜部材10の長手方向の両端部から水が漏れることを抑制する。カバーシート16は、図3に示すように、撓んだ状態で配置されている。
【0040】
固定部20は、第1固定部21及び第2固定部22を有している。第1固定部21は、膜部材10と取水部101の上面との間を固定し、膜部材10を取水部101の上面に密着させる。また、第2固定部22は、膜部材10と防護壁102との間を固定し、膜部材10を防護壁102に密着させる。
【0041】
図5は、第1固定部21によって固定された膜部材10の一部を示す平面図である。図5に示すように、膜部材10の第1辺10aは、第1固定部21により取水部101の上面に固定される。第1固定部21は、テンションベルト14を固定する押さえ板23及びボルト25と、補強ベルト12を固定する押さえ板27及びボルト29とを有している。膜部材10の第1辺10aは、例えば第1固定部21により、シート材11側の面が取水部101の上面に密着する。このため、膜部材10の平坦な面が取水部101の上面に密着するため、膜部材10と取水部101の上面との間に隙間が形成されにくくなる。
【0042】
図6は、第2固定部22によって固定された膜部材10の一部を示す断面図である。図6に示すように、膜部材10の第2辺10bは、第2固定部22により防護壁102の固定用部材102aに固定される。第2固定部22は、テンションベルト14を固定する押さえ板24及びボルト26と、補強ベルト12を固定する押さえ板28及びボルト30とを有している。膜部材10の第2辺10bは、例えば第2固定部22により、テンションベルト14側の面が固定用部材102aの上面に当接する。この場合、テンションベルト14の段差により、補強ベルト12と、テンションベルト14と、固定用部材102aの上面とで囲まれる部分に隙間が形成される。本実施形態では、当該補強ベルト12と、テンションベルト14と、固定用部材102aの上面とで囲まれる部分に樹脂部材32が配置されている。このため、膜部材10は、樹脂部材32によって固定用部材102aの上面との間に隙間が塞がれた状態で密着する。なお、膜部材10の第2辺10bではなく、膜部材10の第1辺10aにおいて、テンションベルト14側の面が取水部101の上面に当接された構成であってもよい。この場合、膜部材10の第1辺10aと取水部101の上面との間に樹脂部材が配置される。
【0043】
次に、上記のように構成された止水装置100の使用形態を説明する。図7及び図8は、本実施形態に係る止水装置100の使用形態の一例を示す図である。地震等により取水部101と防護壁102とが振動し、互いの相対位置が変動する場合がある。例えば、図7に示すように、防護壁102が取水部101に対して海側に相対的に移動した場合、膜部材10は防護壁102の移動に追従して変形する。具体的には、膜部材10がテンションベルト14によって湾曲した状態を維持しつつ、第2辺10b側が海側に引っ張られて移動する。この場合、膜部材10の折り返し部分が第3辺10c及び第4辺10dに平行な方向の海側に移動する。また、膜部材10の第3辺10cは、隙間部分Gの端面Gaに接触した状態で摺動する。同様に、膜部材10の第4辺10dは、隙間部分Gの端面Gbに接触した状態で摺動する。このため、膜部材10と隙間部分Gの端面Ga、Gbとの間の接触状態が保持される。この場合、膜部材10の長手方向の両端に配置されたカバーシート16は、第2辺10bが引っ張られることによって延びた状態となる。このため、海水Wの水位が上昇した場合であっても、カバーシート16により膜部材10の長手方向の両端が覆われ、両端からの隙間部分からの水の侵入が抑制される。
【0044】
また、例えば図8に示すように、防護壁102が取水部101に対して相対的に陸側に移動した場合においても、膜部材10は防護壁102の移動に追従して変形する。具体的には、第2辺10b側が陸側に押されて移動し、これに伴って膜部材10の湾曲部分が第3辺10c及び第4辺10dに平行な方向の陸側に移動し、膜部材10と取水部101の上面との間の接触面積が大きくなる。また、膜部材10の第3辺10cは、隙間部分Gの端面Gaに接触した状態で摺動する。同様に、膜部材10の第4辺10dは、隙間部分Gの端面Gbに接触した状態で摺動する。このため、膜部材10と隙間部分Gの端面Ga、Gbとの間の接触状態が保持される。また、膜部材10の長手方向の両端に配置されたカバーシート16は、第2辺10bが陸側に押されることによって若干引き伸ばされた状態となる。このため、海水Wの水位が上昇した場合であっても、カバーシート16により膜部材10の長手方向の両端が覆われるため、両端からの隙間部分からの水の侵入が抑制される。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、止水装置100は、取水部101と防護壁102との間の水平方向視で矩形状の隙間部分Gを閉塞し、振動による取水部101と防護壁102との間の相対位置の変動に追従して隙間部分Gを閉塞した状態で折り返し部分が第3辺10c及び第4辺10dに平行な方向に移動するように変形可能な膜部材10と、当該膜部材10と取水部101の間、及び膜部材10と防護壁102との間をそれぞれ固定して密着させる固定部20とを備える。このため、地震等によって取水部101と防護壁102との間の相対位置が変動する場合であっても、膜部材10が隙間部分Gを閉塞した状態で当該相対位置の変動に追従して第1辺10a及び第2辺10bに平行な方向に変形する。これにより、取水部101と防護壁102との間の相対位置の変動を許容しつつ隙間部分Gの止水が可能となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、第2構造物である基礎構造103及び鋼製基礎104と防護壁102とが門型構造である。このため、第1構造物である取水部101に対して防護壁102の振動が大きい場合であっても、止水装置100は、防護壁102の変動に追従して変形することが可能である。これにより、隙間部分Gの止水を確実に行うことができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、第1構造物が取水部101であり、第2構造物が防護壁102を含む構造であるため、止水装置100は、取水部101と防護壁102との間の隙間部分Gを確実に閉塞することができる。これにより、地震発生時において隙間部分Gから構内への海水の侵入を抑制することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態によれば、膜部材10がテンションベルト14を有し、テンションベルト14が、第3辺10c及び第4辺10dに平行な方向に延びた状態であり、第1辺10a及び第2辺10bに平行な方向に所定の間隔を空けて複数配置されるため、膜部材10にテンションが加えられた状態となる。このため、例えば膜部材10を湾曲させた状態で配置した場合、当該湾曲状態を維持することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、固定部20は、シート材11及びテンションベルト14を取水部101及び防護壁102に固定する固定部材である取り付け板23、24及びボルト25、26と、膜部材10のうち隣り合うテンションベルト14との間の部分を取水部101及び防護壁102に固定する固定部材である取り付け板27、28及びボルト29、30と有するため、膜部材と第1構造物の間、及び膜部材と第2構造物との間の密着性が高められるため、テンションベルトの段差部分に隙間が形成されることを抑制でき、隙間部分からの水の侵入を確実に抑制できる。
【0050】
また、本実施形態によれば、膜部材10は、第1辺10a及び第2辺10bに平行な方向に配置された補強ベルト12、13を有するため、膜部材10の強度を維持することが可能となる。これにより、耐久性を向上させることができる。
【0051】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、第1構造物が取水部101であり、第2構造物が防護壁102である構成を例に挙げて説明したが、これに限定するものではなく、他の構造物であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 膜部材
11 シート材
12,13 補強ベルト
12a,14a 挿入孔
14 テンションベルト
15 水密ゴム板
16 カバーシート
20 固定部
21 第1固定部
22 第2固定部
23,24,27,28 押さえ板
25,26,29,30 ボルト
32 樹脂部材
100 止水装置
101 取水部
101a 取水口
102 防護壁
102a 固定用部材
103 基礎構造
104 鋼製基礎
105 防潮堤
106 調整板
B 海底
G 隙間部分
Ga,Gb 端面
W 海水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8