(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態の洗濯機について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、本発明をドラム式洗濯乾燥機(ドラム式洗濯機)に適用した例について説明するが、本発明が適用される洗濯機を限定する趣旨ではない。各実施形態において、同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の説明において、前後上下左右の方向は
図1に示す前後上下左右の方向を基準とする。
【0015】
まず、主に
図1および
図2を参照してドラム式洗濯乾燥機の全体構成について説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1に示すように、筐体1は、外郭を構成するものであり、左右の側板1a,1b、前面カバー1c、背面カバー1d(
図2参照)、上面カバー1e、下部前面カバー1fおよびベース1hによって構成されている。また、筐体1は、左右の側板1a,1bが、コの字型の上補強材36(
図2参照)、前補強材37(
図2参照)、後補強材(図示せず)で結合しており、ベース1hを含めて箱形状を呈している。
【0017】
前面カバー1cの略中央には、衣類を出し入れするための投入口を塞ぐドア9が設けられている。このドア9は、前補強材37(
図2参照)に設けたヒンジ9c(
図2参照)によって開閉可能に支持されている。ドア9は、ドア9に設けられた取手9dを操作することでロック機構(図示せず)が外れて開き、前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材37(
図2参照)は、後記する外槽2の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
【0018】
また、筐体1の上部中央には、電源スイッチ39と、操作スイッチ12,13と、表示器14と、を備えた操作パネル6が設けられている。この操作パネル6は、筐体1の下部に設けた制御装置38(
図2参照)と電気的に接続されている。
【0019】
図2に示すように、筐体1内の上部左側には、洗剤容器19が設けられている。この洗剤容器19は、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ7の装着が可能となっている。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ7を
図1中の2点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器19は、筐体1の上補強材36に固定されている。また、洗剤容器19の左側面のやや後方に出水口19aを有している。従って、洗剤容器19の底面は出水口19aの位置が最も低くなるようなすり鉢状に形成されている。
【0020】
洗剤容器19の後側には、給水電磁弁16(
図1参照)、風呂水吸水ポンプ17、水位センサ34等の給水関連部品が設けられている。洗剤容器19の上部開口には、給水ユニット15(給水手段)が設けられている。上面カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a(
図1参照)、風呂の残り湯の吸水ホース接続口17a(
図1参照)が設けられている。
【0021】
ドラム3は、回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽であり、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔(図示省略)を有し、前側端面には、衣類を出し入れするための開口部3aが設けられている。開口部3aの外周側には、ドラム3と一体に回転する流体バランサ3Aが設けられている。また、ドラム3の回転中心軸は、水平または開口部3a側が高くなるように傾斜している。
【0022】
外槽2は、円筒形状を呈し、ドラム3を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にはドラムモータ4が取り付けられている。ドラムモータ4の回転軸は、外槽2を貫通し、ドラム3と結合している。前面の開口部には、外槽2内への貯水を可能にする外槽カバー2dが設けられている。外槽2は、下側をベース1hに固定されたダンパ5で防振支持されている。外槽2の開口部には、ゴム製のベローズ10が設けられ、ドア9を閉じることで外槽2を水封する。
【0023】
外槽2の側面後部には、外槽2内へ水や洗剤類を供給する給水口2aが設けられている。給水口2aと洗剤容器19の出水口19aとは、ゴム製の蛇腹ホース20で接続されている。
【0024】
外槽2の底側内周面には、凹状の窪み部2fが外槽2の軸方向に延在するように設けられている。この窪み部2fの底面は、前側から後側に下がる傾斜面になっており、窪み部2fの後側には排水口21が設けられている。排水口21には継手21aを介して蛇腹ホース22が接続されている。窪み部2fの前側には底部循環水の流入口18が設けられている。
【0025】
排水ホース26は、後記する循環ポンプ24の出水ポート(不図示)にその一端が接続され、その他端側が機外に延出している。排水ホース26には、機内での延在途中に排水弁25が設けられている。
【0026】
窪み部2fを通じて外槽2の洗濯水が循環ポンプ24に吸込まれる。窪み部2fを設けることにより、外槽2における貯水量を増大している。したがって、循環ポンプ24の回転速度を高めることで、大流量の洗濯水が循環ポンプ24に吸込まれ、循環流量が増大し、結果として衣類の洗浄効率が従来よりも一段と向上している。
【0027】
外槽2の後部端面の最下部にはエアトラップ2eが設けられている。エアトラップ2eの下部には外槽2(窪み部2f)と連通する連通穴2e1が設けられており、エアトラップ2eの上部と水位センサ34とがチューブ35で接続され、外槽2内の水位が検出される。
【0028】
外槽2とベース1hとの間には、循環ポンプ24、フィルタケース23、排水弁25が設けられている。フィルタケース23は、
図3に示すように、前側に開口部を有する円筒状で、内部に着脱可能なフィルタ(図示省略)が装着されており、洗濯水中の異物や糸くずを捕集する。フィルタケース23は、
図1に示すように、下部前面カバー1fに設けた扉1gを開け、取手23dを回すことでフィルタ(図示省略)を容易に着脱できるようになっている。このフィルタケース23は、前側が高くなるように傾斜している。なお、循環ポンプ24を中心とする洗濯水の循環系に関しては後に詳しく説明する。
【0029】
図2に示すように、筐体1の背面内側には、乾燥ダクト29が配置されている。この乾燥ダクト29は、外槽2の後部に設けた吸気口にゴム製の蛇腹ホース29aで接続されている。乾燥ダクト29内には、水冷除湿機構(図示せず)が内蔵されている。
【0030】
ちなみに、乾燥運転時には、図示しないヒータ、送風ファン等によりドラム3内に温風が吹き込まれ、衣類から水分が蒸発する。高温多湿となった空気は、乾燥ダクト29に吸い込まれ、前記の水冷除湿機構で冷却除湿されて低温空気となり、図示しないヒータで加熱されてからドラム3内に吹き込まれる。なお、ヒータ、水冷除湿機構の代わりにヒートポンプを用いても良い。
【0031】
次に、循環ポンプ24を中心とする洗濯水の循環系について説明する。
【0032】
図3に示すように、循環ポンプ24は、フィルタケース23と一体に形成されるケーシング42と、循環ポンプモータ47とを備えて構成されている。ケーシング42には、吐出ポート44,45、入水ポート23a(
図2参照)、および出水ポート(不図示)が形成されている。
【0033】
吐出ポート44は、
図4(a)(b)にも示すように、蛇腹ホース41を介して外槽カバー2dの内側周壁に設けられた後記する循環流路27(
図5(a)(b)参照)に繋がっている。
【0034】
なお、この蛇腹ホース41および循環流路27は、前記の蛇腹ホース22(
図2参照)とともに、外槽2の底部から外槽2の上部へ至る循環流路を構成している。
【0035】
循環流路27は、外槽カバー2dの上方内側に設けられたノズルとなる吐出部27a(
図5(a)参照)に接続されている。
【0036】
吐出ポート45は、
図3に示すように、蛇腹ホース40を介して継手18aに接続されている。この継手18aは、外槽2の底部の窪み部2f(
図3(a)参照)に臨むように形成された流入口18に設けられている。
【0037】
排水弁25(
図2参照)を閉じた状態で循環ポンプ24の循環ポンプモータ47が正回転すると、外槽2内の洗濯水は排水口21(
図2参照)から蛇腹ホース22を通り、フィルタケース23内のフィルタ(図示省略)で異物が除去される。その後、洗濯水は、循環ポンプ24に入り、吐出ポート44から吐出され、循環流路27に送り込まれ、後記する吐出部27a(
図5(a)(b)参照)からドラム3(
図2参照)内に散水される。
【0038】
一方、循環ポンプ24の循環ポンプモータ47が逆回転すると、外槽2内の洗濯水は排水口21(
図3(a)参照)から蛇腹ホース22を通り、フィルタケース23内のフィルタ(図示省略)で異物が除去される。その後、洗濯水は、循環ポンプ24に入り、吐出ポート45から吐出され、蛇腹ホース40および継手18aを介して外槽2内に戻る。また、排水弁25(
図2参照)が開かれると、外槽2内の洗濯水は、フィルタケース23内のフィルタ(図示省略)を通り、排水ホース26から機外へ排水される。
【0039】
ちなみに、本実施形態での循環ポンプモータ47は、後記する循環流量を確保するために、2600rpm以上の回転速度で回転可能となっている。この回転速度は、後記するように制御装置38(
図2参照)で制御されることとなる。
【0040】
図4(a)(b)に示すように、循環ポンプ24の吐出ポート44にその一端が接続される蛇腹ホース41は、その他端が循環流路27の入口ポート2gに接続される。この入口ポート2gは、
図4(b)に示すように、外槽カバー2dの外周面に形成されている。
【0041】
循環流路27は、
図5(b)に示すように、樹脂製の外槽カバー2dの内側周壁に一体に成形された管状通路で構成されている。この循環流路27は、外槽カバー2dの開口に沿うように形成され、外槽カバー2dの上部に形成される吐出部27aに連通している。循環流路27は流路カバー27bで覆われている。循環流路27の断面形状は、特に制限はなく、円形、楕円形、多角形等とすることができる。循環流路27の断面積は、円形のものに換算して直径25mm以上相当のものが望ましい。
【0042】
本実施形態の循環流路27によれば、外槽カバー2dの内側周壁に設けられているので、例えば外槽カバー2dの外側周壁において塩化ビニル管等で形成されるものと異なって、破損するおそれが一段と少ない。また、万一破損したとしても外槽2の外側に洗濯水が漏れ出ることもない。また、循環流路27は、外槽カバー2dと一体成形されているので部品点数が少なくて済む。
【0043】
吐出部27aは、循環ポンプ24(
図4(a)参照)の吐出ポート44から吐出される洗濯水を外槽カバー2dの上部からドラム3(
図2参照)内に向けて噴射するものである。
【0044】
吐出部27の断面形状は、
図6(a)に示すように、洗濯水の流れ方向の上流側から下流側に向けて(図中上側から下側に向けて)幅方向(周方向、左右方向)に漸次拡がる略扇状とされている。吐出部27は、左方へ向けて傾斜する傾斜壁271と、右方へ向けて傾斜する傾斜壁272と、を備えている。
【0045】
吐出部27aの開口27a1は、
図5(a)に示すように、スリット状(円弧状)に形成されている。これにより、洗濯水を薄膜状に広げて噴射可能であり、ドラム3内の左右方向の広い範囲に散水可能である。また、循環流路27における洗濯水の循環流量が従来よりも増加するので、この開口27a1のスリット幅(隙間幅)を幅広にしても噴射の勢いが弱まることもない。これにより、例えば、スリット幅(隙間幅)は3mm以上とすることができ、糸くず等による開口27a1の閉塞がより確実に防止される。
【0046】
また、吐出部27は、
図7(a)(b)に示すように、縦壁273と、縦壁273に連続する横壁274と、を備えている。縦壁273は、循環流路27の側壁27cに連続して形成されている。縦壁273は、側壁27c側から吐出部27aの開口27a1に向けて下る傾斜状とされている。横壁274は、縦壁273の下端部に連続して形成されている。横壁274の延在端は、流路カバー27bの下端と間隔を空けて位置しており、流路カバー27bとの間に、吐出部27aの開口27a1を形成している。
【0047】
吐出部27aには、
図6(a)に示すように、散水部材50が取り付けられている。散水部材50は、吐出部27aの形状に対応して、洗濯水の流れ方向の上流側から下流側に向けて(図中上側から下側に向けて)幅方向(周方向、左右方向)に漸次拡がる略扇状とされている。散水部材50は、散水部材50は、弾性を有する材料、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)でシート状に形成されている。散水部材50には、後記するように、循環流路27を流れてきた洗濯水が当たるようになっており、洗濯水の圧力を受けて弾性変形可能となっている。散水部材50の上端部51には、吐出部27aに取り付けるための複数の挿通孔52(3つ)が形成されている。上端部51において複数の挿通孔52は、外槽カバー2dの周方向に間隔を空けて形成されている。
【0048】
散水部材50は、
図7(a)(b)に示すように、循環流路27を流れてきた洗濯水が当たるように、吐出部27aの縦壁273と、横壁274と、に亘って配置されている。縦壁273には、
図6(b)に示すように、散水部材50を取り付けるための複数のピン27e(3本、
図6(a)参照)が突設されている。複数のピン27eは、散水部材50の各挿通孔52に対応して設けられている。散水部材50は、各挿通孔52に各ピン27eを挿通することにより、吐出部27aに取り付けられる。
【0049】
なお、
図8(a)では、洗濯水の水量の少ない状態を細い白抜き矢印で示し、
図8(b)では、洗濯水の水量の多い状態を太い白抜き矢印で示している(以下の実施形態も同様)。
【0050】
循環流路27を覆う流路カバー27bには、
図6(b)に示すように、ボス部27dが設けられている。ボス部27dには、縦壁273側のピン27eが係合する係合穴27fが形成されている。このピン27eと係合穴27fとの係合によって、散水部材50の上端部51は、縦壁273とボス部27dとの間に挟持されている。なお、
図6(b)では、ピン27eと係合穴27fとの係合関係を模式的に示している。散水部材50は、このようなピン27eと係合穴27fとの係合関係を用いずに、接着剤等を用いて取り付けてもよい。
【0051】
散水部材50の下部は、
図7(a)(b)に示すように、縦壁273と横壁274との隅部275から浮いた状態、つまり、隅部275に密着せず、隅部275との間に隙間を有する状態で配置されている。つまり、散水部材50は、隅部275側に向けて弾性変形可能な空間(隙間)を有して配置されている。
【0052】
散水部材50の先端部55は、吐出部27aの開口27a1に位置している。先端部55は、横壁274に対して固定されておらず、自由端となっている。先端部55は、後記するように散水部材50が弾性変形した際に、その弾性変形に倣って開口27a1の内側方向に若干引っ込むように移動可能である。
【0053】
このような散水部材50には、循環流路27から吐出部27aに向けて流れてきた洗濯水が当たる。この際、散水部材50は、吐出部27aに流れてきた洗濯水の圧力を受けて弾性変形する。散水部材50は、洗濯水の水量が少ないとき、すなわち、循環ポンプ24の回転速度が低く流れてくる洗濯水の圧力が小さいときに(循環ポンプ24が低回転速度のときに)、
図8(a)に示すように、散水部材50の弾性が勝り、側断面形状が略ストレートに近い状態に保持される。
【0054】
この場合、散水部材50の側断面形状は、洗濯水の流れ方向上流側から下流側となる開口27a1に向けて、傾斜状に下る形態となる。これにより、散水部材50を介して開口27a1から吐出される洗濯水の吐出方向は、下向きの方向L1となる。下向きの方向L1では、
図9に示すように、吐出された洗濯水がドラム3の下端前縁部付近(流体バランサ3A付近)に向けて散水される。
【0055】
一方、洗濯水の水量が多いとき、すなわち、循環ポンプ24の回転速度が高いときには、循環ポンプ24の回転速度が低いときに比べて、散水部材50に当たる洗濯水の圧力が散水部材50の弾性を上回り、散水部材50が弾性変形する。この場合、散水部材50は、
図8(b)に示すように、側断面形状が隅部275に向けて凹状に湾曲した形態となる。散水部材50の側面(開口27a1に対向する面)は、アール状に凹み、その凹んだ形状に倣って散水部材50の先端部の傾斜角度が、循環ポンプ24の回転速度が低いときに比べて緩やかになる。これにより、散水部材50を介して開口27a1から吐出される洗濯水の吐出方向は、
図8(b)に示すように、上向きの方向L2となる。上向きの方向L2では、
図9に示すように、吐出された洗濯水がドラム3の奥側の略中心付近に向けて散水される。
【0056】
このように散水部材50は、循環流路27を通じて流れてきた水の水量に応じて形態を変更可能であり、形態の変更に応じてドラム3内への水の散水方向を上下方向に変更可能である。なお、散水部材50は、洗濯水の水量が少ないときに弾性変形量が小さく抑えられて下向きの方向L1に洗濯水を吐出し、洗濯水の水量が多いときに弾性変形量が大きくなって上向きの方向L2に洗濯水を吐出するように構成してもよい。
【0057】
なお、外槽カバー2dには、循環流路27と連通する小孔を吐出部27aに隣接するように形成してもよい。洗濯水が循環流路27を通じて吐出部27aの開口27a1から噴射される際に、この小孔からはベローズ10の裏側に向けて洗濯水が噴射される。この小孔から噴射される洗濯水は、ベローズ10の裏側を上部から下部に向かって流れる際に、ベローズ10の裏側に付着した糸くず等を洗い流すことが可能である。
【0058】
図10はドラム式洗濯乾燥機における制御ブロック図である。
【0059】
図10に示すように、制御装置38は、マイクロコンピュータ38a、駆動回路64等を備えるとともに、
図1に示す操作スイッチ12,13のオンオフ信号や各種センサ(水位センサ34,温度センサ62)からの出力信号の入力回路等も備える。また、制御装置38は、マイクロコンピュータ38aを介して、使用者の操作や、洗濯工程(洗い工程、すすぎ工程、脱水工程)、乾燥工程での各種情報信号を取得する。また、制御装置38は、マイクロコンピュータ38aが駆動回路64を介して、ドラムモータ4、給水電磁弁16、排水弁25、循環ポンプ24を制御する。また、使用者にドラム式洗濯乾燥機に関する情報を知らせるために、表示器14(
図1参照)、発光素子66やブザー67を制御する。
【0060】
洗剤給水電磁弁16bは、給水ホース接続口16a(
図1参照)からの水道水を、図示しない給水経路を通って、洗剤トレイ7(
図1参照)の洗剤投入室(図示せず)に給水する。洗剤投入室に給水された水道水は、投入された洗剤とともに、洗剤容器19(
図2参照)、蛇腹ホース20(
図2参照)を介して、外槽2(
図2参照)内に注水される。
【0061】
仕上剤給水電磁弁16cは、給水ホース接続口16aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、洗剤トレイ7(
図1参照)の仕上剤投入室(図示せず)に給水する。仕上剤投入室に注水された水道水は、投入された仕上剤(ソフナー)とともに、蛇腹ホース20を介して、外槽2内に注水される。
【0062】
外槽給水電磁弁16dは、給水ホース接続口16aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、蛇腹ホース20から外槽2内に給水する。
【0063】
冷却水給水電磁弁16eは、給水ホース接続口16aからの水道水を、図示しない給水経路を通って、乾燥ダクト29(
図2参照)の水冷除湿機構(図示せず)に給水する。
【0064】
なお、風呂水吸水ポンプ17(
図2参照)で汲み上げられた吸水ホース接続口17a(
図1参照)からの風呂水は、図示しない給水経路を通って、蛇腹ホース20から外槽2内に給水される。
【0065】
≪運転工程≫
次に、
図11を参照して、ドラム式洗濯乾燥機の運転工程について説明する。
図11は、第1実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機における洗濯運転(洗い〜すすぎ〜脱水)の運転工程を説明する工程図である。なお、以下では、洗剤給水電磁弁16bを第1電磁弁、仕上剤給水電磁弁16cを第2電磁弁、外槽給水電磁弁16dを第3電磁弁、冷却水給水電磁弁16eを第4電磁弁として説明する。
【0066】
図11に示すように、ステップS1において、制御装置38は、ドラム式洗濯乾燥機の運転工程のコース選択の入力を受け付ける(コース選択)。ここで、使用者は、ドア9を開けて、ドラム3の内部に洗濯する衣類を投入し、ドア9を閉じる。そして、使用者は、操作スイッチ12,13を操作することにより、運転工程のコースを選択し入力する。操作スイッチ12,13が操作されることにより、選択された運転工程のコースが制御装置38に入力される。制御装置38は、入力された運転工程のコースに基づいて、運転パターンデータベースから対応する運転パターンを読み込み、ステップS2に進む。なお、以下の説明において、標準コース(洗い〜すすぎ2回〜脱水)が選択されたものとして説明する。
【0067】
ステップS2において、制御装置38は、ドラム3に投入された衣類の重量(布量)を検出する工程を実行する(布量センシング)。具体的には、制御装置38は、ドラムモータ4を正方向に所定の回転速度(例えば、180rpm)で駆動してドラム3を回転させるとともに、注水前の衣類の重量(布量)を算出する。
【0068】
ステップS3において、制御装置38は、洗剤量・運転時間を算出する工程を実行する。具体的には、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第3電磁弁を開弁して)、外槽2の給水口2aに直接給水する。なお、図示していないが、制御装置38は、外槽2の内底部に配置された電気伝導度センサ(不図示)を介して、給水された水の電導度(硬度)を検出する。また、温度センサ62(
図10参照)で、給水された水の温度を検出する。その後、給水電磁弁16を制御して(例えば、第3電磁弁を閉弁して)、外槽2への給水を終了する。
【0069】
制御装置38は、ステップS2で検出した布量、水の電導度(硬度)、水の温度に基づいて、マップ検索により、投入する洗剤量と運転時間を決定する。そして、制御装置38は、決定された洗剤量・運転時間を表示器14に表示する。なお、外槽2に給水して水の電導度(硬度)および水温を検出するものとして説明したが、これに限られるものではない。例えば、前回運転時の水の電導度(硬度)および水温をマイクロコンピュータ38aの記憶部(図示せず)に記憶しておき、それを用いてもよい。
【0070】
ステップS4において、制御装置38は、洗剤投入待ち工程を実行する。例えば、制御装置38は、所定時間待機して、ステップS5に進む。使用者は、待機中に表示器14に表示された洗剤量を参考に、洗剤トレイ7内に洗剤類を入れる。なお、制御装置38は、洗剤トレイ7の開閉を検知する手段(図示せず)により、洗剤トレイ7が開けられた後に閉じられた場合、洗剤類が投入されたものとして、ステップS5に進む構成であってもよい。
【0071】
ステップS5において、制御装置38は、洗剤溶かし工程を実行する。例えば、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁を開弁して)、給水管を介して洗剤投入室に給水する。洗剤投入室の洗剤と水は、洗剤送出管、蛇腹ホース20、外槽2の後側上部にある給水口2a、外槽2の底壁内面に形成された給水経路を介して、その出口から外槽2の窪み部2fに流入する。所定水量まで給水すると、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁を閉弁して)、給水を停止させる。そして、制御装置38は、洗剤溶かし動作を実行する。
【0072】
具体的に、制御装置38は、循環ポンプ24を制御して、排水口21から蛇腹ホース22を介して吸い込んだ水と洗剤を、蛇腹ホース40(
図3参照)を介して窪み部2fの流入口18から吐出させる。流入口18から吐出された水と洗剤は、窪み部2fを流れ、排水口21へと向かい、循環するようになっている。これにより、水と洗剤が攪拌され、洗剤が水に溶かされるようになっている。所定時間(例えば、10秒)が経過すると、制御装置38は、循環ポンプ24を停止させ、ステップS6に進む。
【0073】
ステップS6において、制御装置38は、回転給水工程1を実行する。具体的には、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を開弁して)、外槽2内の洗い水の水位を上昇させるとともに、ドラムモータ4を制御してドラム3を所定の回転速度(例えば、35rpm[r/min])で正逆方向に回転させ、衣類の入れ替えを行う。また、制御装置38は、循環ポンプ24(循環ポンプモータ47)を所定の回転速度となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗剤濃度の高い洗い水を外槽2の開口部に設けられた吐出部27aの開口27a1からドラム3の内部に吐出させることにより、ドラム3の内部の衣類に染み込ませる。
【0074】
この場合、制御装置38は、循環ポンプ24の回転速度を低回転速度と高回転速度とに交互に制御する。循環ポンプ24の回転速度が低回転速度(例えば、1800rpm)に制御されると、循環流路27を流れる洗い水の水量は少なくなり、散水部材50に当たる洗い水の圧力も小さくなる。これにより、
図8(a)に示すように、散水部材50の弾性が勝り、散水部材50を介して開口27a1から吐出される洗い水の吐出方向は、下向きの方向L1となる。
【0075】
一方、循環ポンプ24の回転速度が高回転速度(例えば、3000rpm)に制御されると、循環流路27を流れる洗い水の水量が多くなり、散水部材50に当たる洗い水の圧力が散水部材50の弾性を上回る状態となる。そうすると、
図8(b)に示すように、散水部材50が弾性変形し、洗い水の吐出方向が上向きの方向L2となる。
【0076】
回転給水工程1では、前記したように、制御装置38によって循環ポンプ24の回転速度が低回転速度と高回転速度とに交互に制御される。したがって、回転給水工程では、
図9に示すように、開口27a1から吐出される洗い水が、下向きの方向L1と上向きの方向L2とに順次角度差をもって吐出される。つまり、下向きの方向L1と上向きの方向L2との2方向に角度θ差をもって洗い水が順次散水される。これにより、ドラム3の内部の衣類に洗い水を万遍なく浸透させることができる。なお、制御装置38の制御は、循環ポンプ24の回転速度を所定の間隔で低回転速度と高回転速度とに交互に制御するものでもよいし、どちらか一方の回転速度に保持される時間を他方に比べて長くなるように制御するものでもよい。
【0077】
そして、外槽2内の洗い水の水位が、所定の水位(中水位)まで上昇すると、給水を停止させる(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を閉弁する)。回転給水工程を開始して所定時間が経過すると回転給水工程を終了し、ステップS7に進む。
【0078】
ステップS7において、制御装置38は、予洗い攪拌工程を実行する。なお、予洗い攪拌工程とは、洗剤溶かし工程で生成された洗剤濃度の高い洗い水を衣類に浸み込ませる工程である。洗剤濃度の高い洗い水を衣類に浸み込ませることにより、洗浄力が向上する。
【0079】
具体的に、制御装置38は、循環ポンプ24の回転速度を低回転速度(例えば、1800rpm)と高回転速度(例えば、3000rpm)とに交互に制御して、排水口21(
図2参照)から吸い込んだ洗い水を外槽2の吐出部27aの開口27a1(
図6(a)参照)からドラム3の内部に吐出させる。この場合にも、循環ポンプ24の回転速度が低回転速度と高回転速度とに交互に制御されるので、洗い水の吐出方向が下向きの方向L1と上向きの方向L2とに角度θ差をもって吐出される。これにより、ドラム3の内部の衣類に洗剤濃度の高い洗い水を万遍なく浸透させることができる。
【0080】
また、制御装置38は、ドラムモータ4を制御してドラム3を所定の回転速度(例えば、35rpm)で正逆方向に回転させることにより、衣類がドラム3の最上点より低い位置から落下させるようにしている。つまり、予洗い撹拌工程では、衣類が上方から落下する高さを低くすることで、衣類に対してドラム3の上方から落下した時に発生する機械的な力を低減している。所定の時間(例えば、5分間)が経過すると、制御装置38は、予洗い攪拌工程を終了し、ステップS8に進む。
【0081】
ステップS8において、制御装置38は、回転給水工程2を実行する。具体的には、制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を開弁して)、外槽2内の洗い水の水位を上昇させるとともに、ドラムモータ4を制御してドラム3を所定の回転速度(例えば、35rpm[r/min])で正逆方向に回転させ、衣類の入れ替えを行う。また、制御装置38は、循環ポンプ24(循環ポンプモータ47)を所定の回転速度となるように制御して、排水口21から吸い込んだ洗剤濃度の高い洗い水を外槽2の開口部に設けられた吐出部27aの開口27a1からドラム3の内部に吐出させることにより、ドラム3の内部の衣類に染み込ませる。
【0082】
回転給水工程2では、前記したように、制御装置38によって循環ポンプ24の回転速度が低回転速度と高回転速度とに交互に制御される。
【0083】
そして、外槽2内の洗い水の水位が、所定の水位(高水位)まで上昇すると、給水を停止させる(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を閉弁する)。回転給水工程を開始して所定時間が経過すると回転給水工程を終了し、ステップS9に進む。
【0084】
ステップS9において、制御装置38は、本洗い攪拌工程を実行する。本洗い攪拌工程では、例えば、ソフトたたき洗い工程、もみ洗い工程を実行する。ソフトたたき洗い工程とは、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった衣類を持ち上げて、衣類に対する遠心力よりも重力が勝ることで、衣類をドラム3内の上方から落下させることにより、衣類に機械的な力を与える工程である。このとき、衣類がドラム3の最上点より低い位置から落下させるようにしている。つまり、衣類が上方から落下する高さを低くすることで、衣類に対してドラム3の上方から落下した時に発生する機械的な力を低減している。
【0085】
具体的に、制御装置38は、循環ポンプ24の回転速度を低回転速度(例えば、1800rpm)と高回転速度(例えば、3000rpm)とに交互に制御して、排水口21(
図2参照)から吸い込んだ洗い水を外槽2の吐出部27aの開口27a1(
図6(a)参照)からドラム3の内部に吐出させる。この場合にも、循環ポンプ24の回転速度が低回転速度と高回転速度とに交互に制御されるので、洗い水の吐出方向が下向きの方向L1と上向きの方向L2とに角度θ差をもって吐出される。これにより、ドラム3の内部の衣類に洗い水が万遍なく浸透する。
【0086】
また、制御装置38は、ドラムモータ4を制御してドラム3を所定の回転速度(例えば、35rpm)で正逆方向に回転させることにより、ドラム3の内部の衣類をソフトたたき洗いする。所定の時間(例えば、2分間)が経過すると、制御装置38は、たたき洗い工程を終了し、もみ洗い工程に進む。
【0087】
もみ洗い工程とは、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった衣類をドラム3の内周壁面3bを転がりながら(衣類を落下させることなく)、衣類にたたき洗いよりも弱い機械的な力を与える工程である。換言すると、もみ洗い工程では、衣類がドラム3内の下部においてころころと転がりながら動作するようになっている。
【0088】
具体的に、制御装置38は、循環ポンプ24の回転速度を低回転速度(例えば、1800rpm)と高回転速度(例えば、3000rpm)とに交互に制御して、排水口21(
図2参照)から吸い込んだ洗い水を外槽2の吐出部27aの開口27a1(
図6(a)参照)からドラム3の内部に吐出させる。この場合にも、循環ポンプ24の回転速度が低回転速度と高回転速度とに交互に制御されるので、洗い水の吐出方向が下向きの方向L1と上向きの方向L2とに角度θ差をもって吐出される。これにより、ドラム3の内部の衣類に洗い水が万遍なく浸透する。また、制御装置38は、ドラムモータ4を制御してドラム3を、所定の回転速度(例えば、30rpm)で正逆方向に回転(例えば、ドラム3を20〜60°の回転角度で左右反転)させることにより、ドラム3の内部の衣類をもみ洗いする。また、制御装置38は、所定の時間(例えば、1分間)が経過すると、もみ洗い工程を終了し、再びソフトたたき洗い工程を実施する。
【0089】
ステップ9が所定の時間(例えば、10分)経過すると、制御装置は、ソフトたたき洗い工程またはもみ洗い工程を終了し、すすぎ1工程(ステップS10〜ステップS13)に進む。
【0090】
ステップS10において、制御装置38は、排水工程を実行する。制御装置38は、ドラムモータ4および循環ポンプ24を停止させ、排水弁25を開弁して外槽2内の洗濯水を排水する。水位センサ34は、排水中の外槽2内の洗濯水の水位を監視し続ける。水位センサ34の検出値が所定の水位を下回ると、制御装置38は、排水工程を終了し、ステップS11に進む。
【0091】
ステップS11において、制御装置38は、脱水1工程を実行する。制御装置38は、排水弁25の開弁を維持した状態において、ドラム3を逆方向へ高速で回転させて(例えば、700rpm)、衣類に含まれる洗濯水を脱水する。所定の時間が経過すると、制御装置38は、脱水1工程を終了し、ステップ12に進む。
【0092】
ステップS12において、制御装置38は、回転シャワー工程を実行する。制御装置38は、ドラム3を逆方向へ中速で回転させつつ(例えば、100rpm)、排水弁25を閉弁し、給水電磁弁16を制御して(例えば、第3電磁弁を開弁して)、衣類に水を散水する。このときの給水電磁弁16(第3電磁弁)の制御時間は、ステップS2で検出した布量に基づいて決定される。所定の時間が経過すると、給水を停止させる(例えば、第3電磁弁を閉弁する)。
【0093】
また、制御装置38は、循環ポンプ24の回転速度を低回転速度(例えば、1800rpm)と高回転速度(例えば、3000rpm)とに交互に制御して、排水口21(
図2参照)から吸い込んだすすぎ水を外槽2の吐出部27aの開口27a1(
図6(a)参照)からドラム3の内部に吐出させる。循環ポンプ24の回転速度が低回転速度と高回転速度とに交互に制御されるので、すすぎ水の吐出方向が下向きの方向L1と上向きの方向L2とに角度θ差をもって吐出される。これにより、ドラム3の内部の衣類にすすぎ水が効率よく散水される。所定の時間が経過すると循環ポンプ24を停止させ、排水弁25を開弁して外槽2内のすすぎ水を排水する。
【0094】
ステップS13において、制御装置38は、脱水2工程を実行する。制御装置38は、排水弁25の開弁を維持した状態において、ドラム3を逆方向へ高速で回転させて(例えば、700rpm)、衣類に含まれる洗濯水を脱水する。所定の時間が経過すると、制御装置38は、脱水2工程を終了し、すすぎ2工程(ステップS14〜ステップS16)に進む。
【0095】
ステップS14において、制御装置38は、給水工程を実行する。制御装置38は、排水弁25を閉弁し、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁を開弁して)、外槽2内にすすぎ水を供給する。所定の水位まで上昇すると、給水を停止させ(例えば、第1電磁弁を閉弁して)、制御装置38は、給水工程を終了し、ステップS15に進む。
【0096】
ステップS15において、制御装置38は、仕上げ剤(ソフナー)給水工程を実行する。制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第2電磁弁を開弁して)、外槽2内に柔軟仕上剤を含んだすすぎ水を供給し、ステップS14で外槽2内に供給されたすすぎ水と柔軟仕上剤を含んだすすぎ水とを混ぜ合わせる。
【0097】
ステップS16において、制御装置38は、回転給水・補給水工程を実行する。制御装置38は、給水電磁弁16を制御して(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を開弁して)、外槽2に給水する。所定の水位まで給水すると、給水を停止させる(例えば、第1電磁弁と第3電磁弁を閉弁する)。また、制御装置38は、給水しつつドラムモータ4を制御してドラム3を正逆方向に回転させる(例えば、35rpm)。
【0098】
また、制御装置38は、循環ポンプ24の回転速度を低回転速度(例えば、1800rpm)と高回転速度(例えば、3000rpm)とに交互に制御して、排水口21(
図2参照)から吸い込んだすすぎ水を外槽2の吐出部27aの開口27a1(
図6(a)参照)からドラム3の内部に吐出させる。この場合、循環ポンプ24の回転速度が低回転速度と高回転速度とに交互に制御されるので、柔軟仕上剤を含んだすすぎ水の吐出方向が下向きの方向L1と上向きの方向L2とに角度θ差をもって吐出される。これにより、ドラム3の内部の衣類に柔軟仕上剤が万遍なく浸透する。
【0099】
ステップS17において、制御装置38は、すすぎ攪拌工程を実行する。すすぎ攪拌工程とは、ソフトたたき洗いと同様に、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった衣類を持ち上げて、衣類に対する遠心力よりも重力が勝ることで、衣類をドラム3内の上方から落下させる工程である。このとき、衣類がドラム3の最上点より低い位置から落下させるようにしている。つまり、衣類が上方から落下する高さを低くすることで、衣類に対してドラム3の上方から落下した時に発生する機械的な力を低減している。
【0100】
具体的には、制御装置38は、ドラムモータ4を制御してドラム3を回転させる(例えば、40rpm)。そして、制御装置38は、循環ポンプ24の回転速度を低回転速度(例えば、1800rpm)と高回転速度(例えば、3000rpm)とに交互に制御して、排水口21(
図2参照)から吸い込んだすすぎ水を外槽2の吐出部27aの開口27a1(
図6(a)参照)からドラム3の内部に吐出させて、衣類をすすぐ。この場合にも、洗い水の吐出方向が下向きの方向L1と上向きの方向L2とに角度θ差をもって吐出されるので衣類のすすぎが促進される。そして、所定の時間が経過すると、制御装置38は、すすぎ攪拌工程を終了し、脱水工程(ステップS18,S19)に進む。
【0101】
ステップS18において、制御装置38は、排水工程を実行する。制御装置38は、ドラムモータ4および循環ポンプ24を停止させ、排水弁25を開弁して外槽2内のすすぎ水を排水する。水位センサ34は、排水中の外槽2内の洗濯水の水位を監視し続ける。水位センサ34の検出値が所定の水位を下回ると、制御装置38は、排水工程を終了し、ステップS19に進む。
【0102】
ステップS19において、制御装置38は、脱水工程を実行する。具体的には、制御装置38は、排水弁25を開弁させるとともに、ドラムモータ4を制御してドラム3を高速で回転させ(例えば、600rpm)、衣類を遠心脱水する。そして、所定の時間が経過すると、制御装置38は、ドラムモータ4を停止させ、排水弁25を閉弁して、洗濯コース(洗い〜すすぎ〜脱水)を終了する。
【0103】
以上のように、本実施形態に係るドラム式洗濯機の運転工程によれば、ソフトたたき洗い工程ともみ洗い工程によって、衣類の傷みを抑えながら高い洗浄性能を確保することができる。
【0104】
ソフトたたき洗い工程は、ドラム3の回転速度を低速(例えば、35rpm)に設定し、衣類がドラム3の最上点より低い位置から落下させるようにしている。つまり、衣類が上方から落下する高さを低くすることで、衣類に対してドラム3の上方から落下した時に発生する機械的な力を低減している。これにより衣類が落下衝撃による受ける布傷みが低減できる。
【0105】
もみ洗い工程は、ドラム3の回転によりドラム3内の下方に溜まった衣類をドラム3の内周壁面3bを転がりながら(衣類を落下させることなく)、衣類にソフトたたき洗いよりも弱い機械的な力を与える。つまり、衣類が上方から落下する高さを低くすることで、衣類に対してドラム3の上方から落下した時に発生する機械的な力を低減している。これにより衣類が落下衝撃による受ける布傷みが低減できる。
【0106】
また、ドラム3の回転速度を低速(例えば、30rpm)に設定し、正逆方向に回転(例えば、ドラム3を20〜60°の回転角度で左右反転)させるようにしている。つまり、ドラムが同一方向に回転するのは1回以下であり、衣類同士が絡み合って引っ張りあうことを防止でき、衣類が伸縮によって受ける布傷みが軽減できる。
【0107】
また、衣類を濡らすには外槽2の開口部側より散布される洗い水やすすぎ水で形成される水膜を通過する必要があるが、水膜の面積が大きいほうが多くの衣類に接触できるため効率よく衣類を濡らすことができる。水膜の面積を増やすためには、洗い水やすすぎ水を外槽2の開口部側からドラム3の底面または円筒内周面に向けて対角状に散布させるのが良く、つまり洗い水やすすぎ水の吐出し口は外槽2の開口部側の上部であることが望ましい。従って、衣類に洗い水やすすぎ水を含水させるためには、少なくとも水膜より高い位置まで衣類を持ち上げなければならず、衣類が落下によって受ける機械力が大きくなり、衣類は傷んでしまう。また、衣類に含水させ続けるためには、連続的にタンブリング動作をする必要があり、衣類が傷んでしまう。しかし、本実施例によれば、循環ポンプ24の回転速度を低回転速度(例えば、1800rpm)と高回転速度(例えば、3000rpm)とに交互に制御して、排水口21(
図2参照)から吸い込んだ洗い水やすすぎ水を外槽2の吐出部27aの開口27a1(
図6(a)参照)からドラム3の内部の広範囲に散水している。つまり、洗い水やすすぎ水の循環流量を増やすことなく、洗い水やすすぎ水を衣類に万遍なく含ませることができる。
【0108】
これにより、ソフトたたき洗い工程やもみ洗い工程のような衣類が上方から落下する高さが低い工程でも、洗い水やすすぎ水を衣類に万遍なく含ませることができ、衣類の傷みを抑えながら高い洗浄性能を確保することができる。
【0109】
ところで、もみ洗い工程は、ドラム3の回転が1回転以下の状態で正逆反転を繰り返す。ドラム3の回転起動時にはドラムモータ4に流れる電流が大きくなるため、もみ洗い工程はドラムモータ4の温度が上昇しやすい。本実施例は、ソフトたたき洗い工程ともみ洗い工程を交互に繰り返し実行するようにしている。もみ洗い工程で上昇したドラムモータ4の温度は、ソフトたたき洗い工程で温度上昇が抑制される。これによりドラムモータ4の温度過昇を抑制することができる。
【0110】
また、ステップS6において、制御装置38は、洗いの水位が所定の水位(中水位)に設定し、ステップS7において、予洗い撹拌工程を実行する。その後、ステップS8において、制御装置38は、洗いの水位が所定の水位(高水位)に設定し追加給水する、ステップS9において、本洗い撹拌工程を実行する。つまり、予洗い撹拌工程は本洗い撹拌工程よりも水量が少なく、相対的に洗剤濃度が高くなっている。これにより予洗い撹拌工程で高い洗浄力を得ることができ、本洗い撹拌工程ではドラム3により上方に持ち上げられた衣類は高くなった水面に落下するために落下衝撃が抑制されて衣類の傷みを抑制することができる。
【0111】
以上のように、本実施形態に係るドラム式洗濯機Sの運転工程によれば、ソフトたたき洗い工程ともみ洗い工程を交互に繰り返し実行する衣類の傷みを抑えながら高い洗浄性能を確保することができる。
【0112】
また、ドラム3の内部の広範囲に散水することで、ソフトたたき洗い工程やもみ洗い工程のような衣類が上方から落下する高さが低い工程でも、洗い水やすすぎ水を衣類に万遍なく含ませることができ、衣類の傷みを抑えながら高い洗浄性能を確保することができる。
【0113】
ここで、高い洗浄性能を確保することができるのは、例えば、本洗い攪拌工程において、ドラム3の回転で持ち上げられた衣類全体に十分な洗い水が浸透した状態で、衣類が落下するため、衣類に含まれている洗い水が落下の衝撃で汚れとともに衣類から押し出されるからである(たたき洗い)。また、衣類全体に洗濯水が浸透するため、すすぎにおいても効率良く洗剤成分の希釈が行え、すすぎ性能も向上できる。
【0114】
散水部材50は、PETにより形成されているので安価であり、また、吐出部27aに容易に取り付けることができる。したがって、ドラム式洗濯乾燥機の生産性に優れる。
【0115】
散水部材50は、PETにより形成されているので、その表面を凹凸の少ない平滑な面とすることができる。したがって、散水部材50は洗い水やすすぎ水(洗濯水)の整流性に優れる。これにより、洗い水やすすぎ水をドラム3内に好適に散水することができる。このことは高い洗浄性能の確保に寄与する。
【0116】
(第2実施形態)
図12を参照して第2実施形態のドラム式洗濯乾燥機について説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、循環流路27に案内突起28を設けた点にある。
【0117】
図12(a)に示すように、案内突起28は、流路カバー27bの内面に設けられている。案内突起28は、断面略三角形状に形成されており、上流側から散水部材50の上面に向けて下る傾斜面28aを備えている。案内突起28は、循環流路27を流れてきた洗い水やすすぎ水を、
図12(a)(b)に示すように、傾斜面28aを通じて散水部材50に導く(案内する)役割をなす。案内突起28は、流路カバー27bに一体に形成してもよく、また、別体に形成して流路カバー27bに固定してもよい。
【0118】
図12(a)に示すように、散水部材50は、洗濯水の水量が少ないとき、すなわち、循環ポンプ24の回転速度が低く流れてくる洗濯水の圧力が小さいときに(循環ポンプ24が低回転速度のときに)、散水部材50の弾性が勝り、側断面形状が略ストレートに近い状態に保持される。この場合、案内突起28の傾斜面28aを通じて、散水部材50に洗濯水が好適に導かれる。
【0119】
次に、
図12(b)に示すように、洗濯水の水量が多いとき、すなわち、循環ポンプ24の回転速度が高いときには、循環ポンプ24の回転速度が低いときに比べて、散水部材50に当たる洗濯水の圧力が散水部材50の弾性を上回り、散水部材50が弾性変形する。散水部材50は、側断面形状が隅部275に向けて凹状に湾曲した形態となる。この場合、案内突起28の傾斜面28aを通じて、散水部材50に洗濯水が好適に導かれるので、散水部材50は、洗濯水の水量に応じてレスポンスよく弾性変形することとなる。
【0120】
本実施形態のドラム式洗濯乾燥機では、案内突起28を通じて洗濯水が散水部材50に導かれるので、散水部材50が弾性変形し易いという利点が得られる。これにより、洗濯水の水量に応じて下向きの方向L1および上向きの方向L2へレスポンスよく洗濯水を吐出させることができる。
【0121】
また、案内突起28により散水部材50が弾性変形し易いので、循環ポンプ24の水量を第1実施形態のものに比べて抑えることができる。したがって、循環ポンプ24の小型化やコストダウンが可能となる。
【0122】
(第3実施形態)
図13を参照して第3実施形態のドラム式洗濯乾燥機について説明する。本実施形態が前記第1,第2実施形態と異なるところは、開口27a1を通じて、ドラム3内に突出する状態に弾性を有する散水部材50Aを設けた点にある。
【0123】
図13(a)に示すように、散水部材50Aは、側断面形状が略L字形状を呈している。散水部材50Aは、吐出部27a(開口27a1の内側)に配置される上部56と、上部56に連続し、開口27a1の外側(ドラム3内)に突出する下部57とを備えている。上部56と下部57とは鈍角に折れ曲がっている。
【0124】
図13(b)に示すように、散水部材50Aは、洗濯水の水量が少ないとき、すなわち、循環ポンプ24の回転速度が低く流れてくる洗濯水の圧力が小さいときに(循環ポンプ24が低回転速度のときに)、散水部材50の弾性が勝り、側断面形状が初期の鈍角の状態に保持される。これにより、散水部材50Aに導かれてドラム3内に吐出される洗濯水は、上向きの方向L2となる。
【0125】
一方、
図13(c)に示すように、洗濯水の水量が多いとき、すなわち、循環ポンプ24の回転速度が高いときには、循環ポンプ24の回転速度が低いときに比べて、散水部材50Aに当たる洗濯水の圧力が散水部材50Aの弾性を上回り、散水部材50Aが弾性変形する。これにより、上部56と下部57との鈍角が拡がり、散水部材50Aに導かれてドラム3内に吐出される洗濯水は、下向きの方向L1となる。
【0126】
つまり、本実施形態の散水部材50Aは、洗濯水の水量に応じて弾性変形可能であり、洗濯水の水量が少ない場合に散水方向が上方向となる形態を呈し、洗濯水の水量が多い場合に散水方向が下方向となる形態に弾性変形するようになっている。つまり、水量の多い少ないと弾性変形との関係が前記第1実施形態のものと逆である。
【0127】
本実施形態のドラム式洗濯乾燥機では、第1,第2実施形態のものに比べて構成がより簡素化される。また、下部57がドラム3内に突出しているので、吐出方向(吐出角度)を容易に調整することができる。
【0128】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。例えば、前記した実施形態では、ドラム式洗濯乾燥機を用いて説明したが、乾燥機能を有しないドラム式洗濯機においても同様である。また、本発明は、循環ポンプを有する縦型の洗濯機に対しても適用可能である。
【0129】
また、
図14(a)に示すように、略扇形状の吐出部27aにおいて、略四角形状の散水部材50Bを取り付けてもよい。この場合には、散水部材50Bが配置される領域から吐出される洗濯水の吐出方向を、洗濯水の水量に応じて上下方向に変更することができる。また、洗濯水の吐出方向を変更できる領域と、変更されない領域とが備わるので、洗濯水の吐出方向に変化を持たせることができる。なお、散水部材50Bの配置を変更することによって、吐出方向にバリエーションを持たせることができる。
【0130】
また、
図14(b)に示すように、吐出部27aを略四角形状に形成して略四角形状の散水部材50Bを配置してもよい。
【0131】
このように、吐出部27aの形状や散水部材50Bの形状は種々の形状とすることができる。
【0132】
また、
図15に示すように、略扇形状の吐出部27aにおいて、散水部材50Cを分割された3つの散水部材50C1,50C2,50C3で構成してもよい。この場合にも、第1実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0133】
この場合、3つの散水部材50C1,50C2,50C3のシート厚や材質を異ならせることにより、それぞれの弾性を異ならせてもよい。弾性を異ならせることによって、洗濯水の吐出方向を周方向に異ならせることも可能である。
【0134】
また、
図16に示すように、吐出部27aの縦壁273にヒンジ58aを介して上下方向揺動可能に硬質のフラップ(散水部材)50Dを設け、フラップ50Dを散水部材58で支持してもよい。散水部材58としては、合成ゴム製のものを用いることができる。
【0135】
この場合、散水部材58は、洗濯水の水量に応じて揺動位置を変更可能であり、洗濯水の水量が少ない場合に散水方向が上方向となる位置(非揺動位置、初期位置)にある。また、散水部材58は、洗濯水の水量が多い場合に洗濯水の圧力を受け、散水部材58の弾性に抗してヒンジ58a周りに下方向に揺動する。これにより、散水方向が下方向となる。
【0136】
また、前記した散水部材50,50A〜50Cは、合成ゴム製としてもよい。
【0137】
また、散水部材50は必ずしも必要ではなく、散水部材50無しで散水方向を揺動させても構わない。