特許第6670745号(P6670745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670745
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】センサ信号から測定結果を取得する方法
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/04 20060101AFI20200316BHJP
   G01G 23/00 20060101ALI20200316BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   G01G19/04 A
   G01G23/00 Z
   G05B23/02 301U
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-523281(P2016-523281)
(86)(22)【出願日】2014年9月2日
(65)【公表番号】特表2016-540964(P2016-540964A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】EP2014068609
(87)【国際公開番号】WO2015055347
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2016年4月14日
【審判番号】不服2018-10577(P2018-10577/J1)
【審判請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】13188754.9
(32)【優先日】2013年10月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515278950
【氏名又は名称】バイエルン エンジニアリング ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】エリック クエバドナー
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ヴァルツァ
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 梶田 真也
【審判官】 小林 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−151524(JP,A)
【文献】 特開2005−156298(JP,A)
【文献】 特開2008−293155(JP,A)
【文献】 特開平8−127343(JP,A)
【文献】 特開2002−145066(JP,A)
【文献】 特開2000−258259(JP,A)
【文献】 特開平11−30554(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G19/04, G01L1/12, G01B7/24, B61L1/06,25/02,27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の個別のセンサによって生成されたセンサ信号に基づいて測定結果を得る方法であって、
前記センサ信号のそれぞれは、時系列をなす2またはそれ以上のデータ点であって、各センサ信号のデータ点は、同じ事象に基づくものであり、当該事象が列車の事象、車両の事象、及び/又は車輪の事象であるデータ点を含み、
各センサは車両の運行に用いられるレールに取付けられ、
当該センサは、前記レールの物理的特性を測定し、各センサは、遠隔にあるデータ管理装置へ、生成した、2またはそれ以上のデータ点であるセンサ信号を送信する送信器を備え、任意のセンサと前記データ管理装置との間の距離は10km以上であり、
前記データ管理装置が、前記1つ以上の個別のセンサからセンサ信号を受信する受信器と、
センサ信号を評価するプロセッサと、
メモリとを有してなり、
前記データ管理装置は、受信した、2またはそれ以上のデータ点であるセンサ信号をメモリに記録し、評価においては、1または複数の記録されたセンサ信号のうち少なくとも2つのデータ点を互いに組み合せ、及び/または比較するステップを含む方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、
前記データ管理装置における前記センサ信号評価においては、互いに異なる時刻において生成されたセンサ信号のうち2またはそれ以上のデータ点を互いに組み合せ、及び/または比較するステップを含む方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
前記記録され、互いに組み合せられ及び/または比較されるセンサ信号の少なくとも一つは、校正されたセンサにより生成されたセンサ信号である方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法であって、
前記データ管理装置は、センサ信号をプライマリ・データとして受信する方法
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法であって、
前記データ管理装置は、センサ信号に関連付けられたメタデータを記録する方法
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法であって、
少なくとも一つのセンサでは、前記送信器は、生成したセンサ信号を、他のセンサまたはハブを介してデータ管理装置へ送信する方法
【請求項7】
センサ信号に基づき、測定結果を生成するデータ取得管理システムであって、
前記センサ信号を生成する1つ以上の個別のセンサと、データ管理装置と、を有し、各センサ信号は、時系列をなす2またはそれ以上のデータ点であって、各センサ信号のデータ点は、同じ事象に基づくものであり、当該事象が列車の事象、車両の事象、及び/又は車輪の事象であるデータ点を含み、
各センサは、それぞれ、車両の運行に用いられるレールに配され、
当該センサは、前記レールの物理的特性を測定し、各センサは、遠隔にあるデータ管理装置へ、生成した、2またはそれ以上のデータ点であるセンサ信号を送信する送信器を備え、任意のセンサと前記データ管理装置との間の距離は10km以上であり、
前記データ管理装置が、前記1つ以上の個別のセンサからセンサ信号を受信する受信器と、
センサ信号を評価するプロセッサと、
メモリとを有してなり、
前記データ管理装置は、受信した、2またはそれ以上のデータ点であるセンサ信号をメモリに記録し、1または複数の記録されたセンサ信号のうち少なくとも2つのデータ点を互いに組み合せ、及び/または比較して、センサ信号を評価するデータ取得管理システム。
【請求項8】
請求項7記載のデータ取得管理システムであって、
少なくとも一つの前記センサがレール上の車両により生じるレールの磁気的特性の変化を測定するデータ取得管理システム
【請求項9】
請求項7または8に記載のデータ取得管理システムであって、
前記データ管理装置のメモリは、前記測定結果を記録するデータ取得管理システム
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載のデータ取得管理システムであって、
前記データ管理装置は、外部の受信装置に対して測定結果を送信する送信部を有するデータ取得管理システム
【請求項11】
請求項7から10のいずれか一項に記載のデータ取得管理システムであって、
少なくとも一つのセンサが、ローカルにセンサ信号を読出し可能なローカルインタフェースを備えるデータ取得管理システム
【請求項12】
請求項7から11のいずれか一項に記載のデータ取得管理システムであって、
少なくとも一つのセンサが、センサ信号を増幅し及び/またはアナログからディジタル信号へ変換する信号処理部を備えるデータ取得管理システム
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項に記載のデータ取得管理システムであって、
前記センサ間の距離は10m以上であるデータ取得管理システム
【請求項14】
請求項7から13のいずれか一項に記載のデータ取得管理システムであって、
少なくとも一つのセンサがセンサ信号をローカルに記録するローカルメモリを有するデータ取得管理システム
【請求項15】
請求項7から14のいずれか一項に記載のデータ取得管理システムであって、
少なくとも一つのセンサが前記データ管理装置に対してリアルタイムにセンサ信号を送信するデータ取得管理システム
【請求項16】
請求項7から15のいずれか一項に記載のデータ取得管理システムであって、
少なくとも一つのセンサが他のセンサからセンサ信号を受信して、前記データ管理装置に対して当該センサ信号を送信するデータ取得管理システム
【請求項17】
請求項7から16のいずれか一項に記載のデータ取得管理システムであって、
少なくとも一つのセンサの前記送信器は、生成したセンサ信号を、他のセンサまたはハブを介してデータ管理装置へ送信するデータ取得管理システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1または複数の個別のセンサによって生成されたセンサ信号から、測定結果を取得する方法に関する。当該センサ信号は、一つの事象に基づく2つまたはそれ以上のデータ点を含み、センサはそれぞれレール車両を運搬するためのレールに配される。これらのセンサは、レールの物理的特性を測定するよう構成されており、各センサは送信器を備えて、センサから物理的に離れた場所にあるデータ管理手段に、センサ信号を送信する。このデータ管理手段は、受信器を備えてセンサ信号を受信するよう構成され、また、センサ信号を評価するプロセッサ、及びメモリを有する。測定結果を取得する本方法は、センサ信号を受信するステップと、センサ信号を評価するステップと、生成された測定結果を記録するステップとを含む。
【0002】
本発明は、また、データの取得及び管理を行い、1または複数の個別のセンサで生成されたセンサ信号から得られた測定結果を生成するシステムに関する。ここでセンサはそれぞれレール車両を運搬するためのレールに配され、レールの物理的特性を測定するよう構成されており、各センサは送信器を備えて、データ管理手段に、センサ信号を送信する。このデータ管理手段は、センサから物理的に離れた場所にあり、センサ信号を受信する受信器と、センサ信号を評価し、測定結果を生成するプロセッサを有する。
【背景技術】
【0003】
重量センサ及び歪み(strain)センサを組み合せた例が、例えば実用新案 DE 21 2006 000 003 U1 等で知られている。この文献では、線路の下部に取付けた一対のプレート状のセンサを複数対接続し、力センサをイーサネット・ネットワークで共有するように構成したイーサネット・ネットワーク・レール荷重測定装置が開示されている。この例では測定データは制御室のコンピュータに送信されている。
【0004】
また、日本国の特開2009-184450号公報には、車両に設けた重量センサにより車両重量を検出し、サーバに当該重量の情報を送信して、車両を利用している乗客の数の情報に関連付け、バスや列車等、公共交通機関の状況を利用者に通知するものが開示されている。この例で、交通の状況は、利用者の携帯電話等、携帯端末に送信される。
【0005】
CN1831496には、動的な線路のスケール(dynamic railroad track scale)から重量情報を無線にて監視センタへ送信し、炭坑の産出量を遠隔監視する構成が開示されている。この例ではセンサデータは、監視センタへ送信される前にCPUによって処理される。
【0006】
日本国の特開2005-156298号公報には、半導体センサ、データ処理ユニット、及び無線通信器を備え、輪重や横圧を測定するデバイスが開示されている。センサユニット内のデータ処理部が輪重や横圧を演算するので、受信側のデータ処理負荷は軽減されている。
【0007】
EP1239268A1は、重量測定手段と、重量情報を蓄積する情報ネットワークへ重量情報を送信する送信手段とを含み、有線または無線ネットワークを介してユーザに通知され、また管理される重量測定構成を備えたネットワーク利用重量測定システムを開示している。この例の情報は、携帯端末で表示される。重量測定構成とネットワーク通信は双方向になされる。重量情報がネットワークへ送出されると、ネットワークは受領通知を応答し、または重量測定構成の第2の機能を制御できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の一つは、センサ信号から得られる測定結果の、改善された生成方法を提供することである。例えば、当該方法は、1つのセンサまたは2以上の互いに異なるセンサによって過去に測定された1または複数のセンサ信号を用いて、センサ信号を再評価または再キャリブレーションすることを許容するものであり得る。
【0009】
また本発明のもう一つの目的は、改善されたデータ取得及び管理システムを提供することである。本発明のさらなる目的は、センサ内またはセンサ近傍でのデータ処理を広範囲でなくすことであり、それによって小型化を図り、センサ側でのエネルギー消費を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来例の問題点を解決する請求項1記載の本発明は、データ管理装置(DMA)において、受信したセンサ信号をメモリに記録し、評価工程が、1または複数の記録されたセンサ信号の少なくとも2つのデータ点を互いに組み合せ、及び/または比較するステップを含む。受信されたセンサ信号がデータ管理装置内に記録されることで、時間的に後の時点で評価の実行、及び/または繰返しが可能となる。データ管理装置内でのセンサ信号の評価のステップでは、1または複数の記録されたセンサ信号の少なくとも2つのデータ点を比較し、及び/または組み合せる。これにより、センサ信号の生成と、測定結果の生成とが別工程となる。本方法では従って、センサ信号に基づく測定結果の生成をより柔軟に行うことが可能となる。例えば、1または複数のセンサから得られたセンサ信号の履歴及び/または統計的発展の情報を得ることが可能となる。
【0011】
ここでのレール車両は、少なくとも一つのレールを含む線路上を移動し、レールによって運搬される、いかなる種類の車両であってもよい。このようなレール車両(以下、単に「車両」と呼ぶ)は、鉄道車両、機関車、トロッコ、トロリー、トラム、地下鉄、歯軌条式鉄道(rack railway, cog railway)、または複数の鉄道車両や機関車を含む列車、あるいは少なくとも一つの自己推進車両を含む多単位列車等である。レール車両は、乗客及び/または貨物を輸送するものであってよい。本発明は、屋外、及び/または、レールを用いた工場輸送システムのように屋内で利用されるものを対象とする。レール車両は線路を形成するレールによって支持され、また誘導される。レール車両は、線路に吊り下るものであってもよいし、線路上を移動するものであってもよい。線路は、1本,2本,3本,またはさらに多くのレールを含んで構成される。すなわち本発明は、車両を運搬する少なくとも一つのレールがあれば、モノレールシステムだけでなく、山岳地帯で利用される歯軌条式鉄道(rack railway, cog railway)等の第三のレールを備えたレールシステム、さらに、列車に電力を供給する第三軌条を備えた地下鉄システム等も対象とする。一般的な線路は平行に配された2本のレールを含んで構成されたものである。レールは一般的には金属で形成される。最も一般的な線路は鉄で形成される。本発明はしかしながら、特定の種類のレールに限定されるものではない。
【0012】
本発明によると、センサはレールの物理的特性を測定するものである。具体的には、センサは、ある事象の間、レールによって支持されるレール車両によって惹起されるレールの物理的特性の変化を測定するものである。センサは、レールの、1以上の物理的特性を測定するものであってもよい。例えば、レール車両によるレールの変形や、レールに取付けられたセンサの加速度を測定するものであってもよい。レールの物理的特性を測定することは、例えば、物理的特性の時間発展を表す、時間依存する電圧や電流信号等、時間に依存する電気的信号を生成することを意味する。発明の目的から、「センサ信号」は、測定された物理的特性に基づいて得ることのできる、時間に依存する電気的信号である。このことは、変換されたセンサ信号もまた、センサ信号であることを意味している。この変換としては、センサ信号の増幅、アナログからディジタルへの変換、データ圧縮、及び/またはセンサ信号のパラメータ表現(parametrization)の生成を含む。センサ信号の変換は、センサにおいてローカルに行われてもよく、及び/またはデータ管理装置において行われてもよい。この目的のため、好適なセンサは、増幅器、A/Dコンバータ、及び/またはプロセッサ等の信号変換手段を備える。より好適には、この変換は独立したデバイス及び/または受信したデータ管理装置でも行われてもよい。特に、「記録されたセンサ信号」は、「受信されたセンサ信号」を変換したものであり得る。また、「受信されたセンサ信号」は、変換された、「生成されたセンサ信号」であり得る。
【0013】
各センサ信号は、一つの事象から得られた少なくとも2つのデータ点を含む。データ点は、特定の、そして知られている(少なくとも他との関係が知られている)時点で測定された値や、ある発振の振幅または周波数などといった関数のパラメータであり、そこから測定されるべき物理的特性または時間依存する電気的信号が得られ或いは近似されて得られる。
【0014】
事象は、列車の事象(train-event)、車両の事象、または車輪の事象等である。列車の事象は、センサ近傍を列車が通過するときに発生し、車両の事象は、レール車両、機関車が、単体であるいは列車の一部として、センサ近傍を通過するときに生じる。また、車輪の事象は、レール車両の1つの車軸に取付けられた1または複数の車輪がセンサ近傍を通過するときに発生する。つまり、列車の事象は、少なくとも2つの車両の事象のシリーズを含み、当該車両の事象は典型的には少なくとも2つの車輪の事象のシリーズを含むこととなる。事象の発生している間、センサはセンサ信号を生成する。列車の事象が生じている間に生成されるセンサ信号は、少なくとも2つの車両の事象に係るセンサ信号に変換され得る。同じように、車両の事象のそれぞれに係るセンサ信号は、少なくとも2つの車輪の事象のセンサ信号に変換され得る。逆に、少なくとも2つの車輪の事象のセンサ信号から車両の事象に係るセンサ信号を生成でき、少なくとも2つの車両の事象のセンサ信号から列車の事象のセンサ信号を生成できる。センサ信号のそれぞれが、少なくとも2つのデータ点を含んでいるので、車両の事象から生成されたセンサ信号は、少なくとも4つのデータ点を含み、列車の事象によって生成されたセンサ信号は少なくとも8つのデータ点を含む。各データ点が時間軸上の既知の点で生成されたものであるため、事象はデータ点の時系列(time series)として表現される。好ましくは、センサ信号は、10以上のデータ点を含み、より好ましくは100以上、さらに好ましくは1000以上のデータ点を含む。
【0015】
測定が行われる位置は、レールに配された1または複数のセンサの位置であり、例えばレールの側面またはレールの底部、及び/またはレールを支持する構造や線路等である。センサは、レール上で運行されるレール車両の荷重によって生じる、レールの機械的変形を測定するものなどであり得る。荷重は例えばレール車両の重量によって生じる重力など静的な力であってもよいし、及び/またはレールに沿ってレール車両が移動することで生じ、レールの振動も引き起す動的な力であってもよい。本発明では1または複数の個別のセンサが用いられる。1以上のセンサが用いられる場合、各センサはレールに配されてもよい。ここでレールとは、同じレール上で、地理的な意味で互いに近接し、或いは互いに離れている、互いに異なる部分を意味する場合もあり、互いに連結されていないか、同じレールネットワークの一部を構成しない、互いに異なるレールを意味する場合もある。
【0016】
センサは、例えばレール車両の重量、つまりレール車両に対して働く重力による力であって、レール車両の質量に比例する力を測定するものであってもよい。レール車両はレールによって支持されるので、上記の力はレールにも作用するが、レール車両の動き、及び/または、必ずしも常に重力の方向に垂直に延伸されていないレールそのものの方向にも影響される。一対のレールは、多くの場合、レール車両を中央に配するために互いの方向にやや傾けられている。さらに、重量は、レール車両のいくつかの車輪に分散されている。こうした追加的な効果は、レール車両の質量を決定するために考慮される。レール車両の重量の測定は従って、レール上で運行されるレール車両の力を測定することを含む。しかしながら、求められる物理的特定はレール車両の質量である。ここでは、重量の語は、質量によって生じる重力を意味する。重量の測定から質量を決定するには、複雑な演算が要求される。こうした演算は、強力なコンピュータプロセッサを必要とし、また、キャリブレーションアルゴリズムの実行に必要なパラメータを保持し、測定データを記録する1または複数のデータバンクを要する。
【0017】
送信器は、信号を送出するデバイスであり、受信器は信号を受信するデバイスである。媒体は、送信器と受信器との間にあって、送信器と受信器との間での信号の伝播を可能とする。本発明では、この媒体は例えば有線接続され、あるいは無線接続されたネットワークである。ネットワークの一例は、インターネット、携帯電話通信システム、その他の無線ネットワーク等である。送信器と受信器との間の通信は、銅線や光ファイバを介して行われてもよい。
【0018】
本発明では、メモリは情報の保持、また読み出しを可能とする物理的なデバイスである。情報には、センサ信号や、コンピュータプログラムやアルゴリズムを含む。メモリは、揮発性のもの、不揮発性のもの(永続性のあるもの)、あるいはそれらの組み合せを含んでもよい。このメモリは例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ、RAM、CPUキャッシュその他の種々の組み合せを含み得る。本発明のプロセッサは例えばコンピュータのCPU等のマイクロプロセッサ等である。
【0019】
データ管理装置(Data Management Arrangement;DMA)は、センサ信号を受信し、受信したセンサ信号をメモリに記録し、記録したセンサ信号を評価、及び/または分析して、測定結果を生成するサーバとして機能し得る。センサ信号の評価、及び/または分析は、プロセッサによって実行される。本発明のデータ管理装置は、センサから物理的に離れた位置に配される。「物理的に離れた」とは、データ管理装置が、ワイヤやケーブル等、信号をセンサからデータ管理装置に伝送する手段を介する以外、センサとの間で物理的に直接接続されていないことを意味する。特に、センサとデータ管理装置とは、同一のプリント基板上に実装されているものではなく、何らかの方法で互いに固定されるようにはなっていない。センサとデータ管理装置は、それぞれ互いに異なる経路で電源供給を受け、互いに異なる建物内に収容されることが好ましい。データ管理装置は、少なくともセンサから2,30メートル離れていることが好ましい。典型的には、データ管理装置は、センサから2,30キロメートル離れて配され、センサから有線接続によって信号を受信する。情報は、センサ信号に関連するメタデータを含み得る、センサ信号の形態で、センサとデータ管理装置との間で授受される。具体的に、センサはデータ管理装置の存在には関わりなく、独立して測定を行い、信号を伝送する。センサは、レール車両があるか否かに関わらず、継続的にセンサ信号を生成して送出するよう構成されてもよく、閾値を超える信号を検知してセンサ信号の伝送をトリガーする電子回路を含んでもよい。さらに、他の手段によってレール車両の接近を検出し、センサ信号の測定と伝送とをトリガーするようにしてもよい。好ましくは、センサとデータ管理装置との間は無線にて接続される。また、これの代わりに、あるいはこれに加えて有線ネットワークの形態で、物理的な接続が、センサとデータ管理装置との間に設けられていてもよい。好適なデータ管理装置は、インターネットに接続されたコンピュータシステムであり、インターネット接続を介してセンサ信号を受信することが好適である。
【0020】
本発明によると、測定結果の生成は複数のステップを含む。第1に、1または複数のセンサからセンサ信号を受信することで、データ管理装置にデータが集積される。次に、メモリにセンサ信号が記録された後、センサ信号は評価され、及び/または分析されて、さらに解釈(interpret)されてもよい。本発明では、量的、及び/または質的評価、及び/または分析、及び/または解釈が、測定結果の出力となり得る、センサ信号の「評価」に相当する。データ管理装置は、例えば数学的処理やデータテーブルのルックアップ含むコンピュータコードの形態の、コンピュータプログラム、アルゴリズム、処理、及び/または他の命令によってセンサ信号を評価する。測定結果はセンサで検出された、もとの物理的な性質であってもよいし、なんらかの導出された量であってもよい。例えば、センサにより生成されたセンサ信号を評価した測定結果は、レール車両によって引き起されるレールの変形であってもよいし、それから導出される、レール車両そのものの質量であってもよい。同一のセンサ信号及び/またはセンサ信号やデータ点の集合から、互いに異なる種々の物理的性質が導出され得る。例えば、信号の周波数スペクトルがフーリエ変換を実行して得られ、レール車両によって引き起されるレールの振動に関する情報が得られ、従って、貨物に関する情報及び/またはレール車両の貨物の分布、つまり、レール車両の車輪の不均衡の情報も得ることができるようになる。さらに、センサ信号の評価により、センサのキャリブレーション関数を生成できる。センサ信号の評価には、データ信号のデータ点のグループ化や再編成及び/またはデータ点及び/またはセンサ信号の統計的分析を含んでもよい。
【0021】
本発明によると、1または複数のセンサ信号から得られる2またはそれ以上のデータ点を互いに比較及び/または合成することは、1または複数の処理の実行を意味し、各処理では2またはそれ以上のデータ点が、入力とされ、1または複数の測定結果が生成される。処理は、数学的または論理的処理であり、少なくとも2またはそれ以上のデータ点を入力として用い、データ管理装置のプロセッサにおいて実行される。データ点を例えばテーブルとしてまたはコンピュータの画面に、ディスプレイ、あるいはプロットすることは、本発明の意味の処理ではない。好ましくは、1または複数の処理が、例えば解析的関数をデータ点にフィットさせるアルゴリズムや、当該関数フィッティングのパラメータを出力として生成するアルゴリズム…等、コンピュータアルゴリズムまたはプログラムとして実装される。2またはそれ以上のデータ点が、同じセンサまたは2もしくはそれ以上の互いに異なるセンサにより生成される。具体的に、2つのデータ点が、2つの互いに異なるセンサから生成され得る。これは一つのセンサから得られた一つのデータ点が、もう一つのセンサから得られた一つのデータ点と比較及び/または組み合せられることを意味する。センサ信号は、ある一つのレール車両または2もしくはそれ以上のレール車両と相互作用するレールの物理的特性の測定により得られる。データ点は量的または質的に比較及び/または組み合せられる。
【0022】
データ点の比較には、2またはそれ以上のデータ点の間の比または差を演算することを含む。またデータ点の組み合せには、2またはそれ以上のデータ点の積または和を演算することを含む。具体的に、データ管理装置は、2つのデータ点の算術平均を演算してもよい。このステップで使用されるデータは、データ管理装置に記録された2またはそれ以上の任意のデータ点であり得る。例えば、すべてのセンサ信号が一つのセンサにより生成されているときに、新たに得られたセンサ信号からのデータ点を、過去のセンサ信号による1またはそれ以上のデータ点と比較してもよい。或いは、2またはそれ以上のセンサが生成したセンサ信号からのデータ点が、互いに比較されてもよい。この方法では、測定の精度を向上でき、またはシステム上のエラーを除去することが可能となる。
【0023】
センサ信号が、データ管理装置のメモリに記録されているので、評価は事後的に実行され得る。もっとも、センサ信号は、データ管理装置に受信されたそのままの形態で記録されている必要はない。受信した信号は、記録される前に変換されることとするのも好適である。例えば、受信したセンサ信号は、センサ信号のサイズを低減するために圧縮されてもよいし、信号を記録する前に、メタデータが付加されてもよい。このことは、後の時点で評価が繰り返されてもよいことを意味する。測定結果を記録する必要はない。しかしながら、データ管理装置が、センサ信号とともに測定結果を記録することとするのも好適である。測定結果は、必要なときに直接アクセスされ、センサ信号から再度算出される必要がなくなる。これによると、2またはそれ以上の測定結果を互いに組み合せ及び/または比較することが簡略化される。このような測定結果の評価により、メモリにさらに記録され得る新たな測定結果が生成される。
【0024】
一例として、データ管理装置は、センサ信号から得られた前回の測定結果(例えばレール車両の車体重量(tare weight))を検索し、当該前回の測定結果と、同じ(または異なる)センサからのセンサ信号に基づいて演算した新たな測定結果とを比較して、新たに導出された測定結果(例えばレール車両のネット重量)を、記録された測定結果やセンサ信号の組み合せ及び/または比較により演算できる。
【0025】
本発明の効果は、センサとデータ管理装置との間で役割を分担したことで得られている。センサの役割は、センサ信号を生成し、データ管理装置へ送信することである。データ管理装置の役割は、センサ信号を受信し、センサ信号を記録し、事後的にデータの分析を行ってセンサ信号に基づく測定結果を演算することである。この役割分担によって、センサはシンプルかつ安価なデバイスとすることができ、維持管理の負荷も少なく、簡便に設置可能となる。こうしたセンサを用いることでコストも軽減できる。一方、データ管理装置は、センサから離れた、データ処理に適した場所に設置できる。この適した場所は、熱及び/または地震の影響から保護できる場所等である。信号評価を一つの場所で集中して行うことで、センサを変えることなく、例えば最新の最も強力なプロセッサ等へと、システムをアップグレードすることが可能になる。また、データ処理アルゴリズムを含む、データ管理装置によって実行されるソフトウエアを一ヶ所でアップグレードすればよいこととなり得る。これにより、センサ信号が生成された時点では知られていなかった新しいアルゴリズムを適用して記録したセンサ信号から新たな測定結果を得ることが可能となる。さらに、本発明はセンサ信号や測定結果をシンプルに中央に集中して記録する。これにより、測定結果及び/またはセンサ信号がシステムのユーザに容易にアクセス可能なものとなる。
【0026】
上記従来例の課題は、さらに、請求項2に記載された測定結果の生成方法により解決される。この発明によると、データ管理装置におけるセンサ信号の評価は、互いに異なる位置で同時期に生成されたセンサ信号から得られた2またはそれ以上のデータ点が互いに組み合せられ、及び/または比較されるステップを含む。
【0027】
上記従来例の課題は、さらに、請求項6に記載されたデータ取得管理システム(Data Acquisition and Management System; DAMS)により解決される。この発明によると、受信したセンサ信号を記録し、記録された1またはそれ以上のセンサ信号の、少なくとも2つのデータ点が互いに組み合せられ、及び/または比較されることで、記録されたセンサ信号が評価される。
【0028】
上記従来例の課題は、さらに、請求項7に記載されたデータ取得管理システム(DAMS)により解決される。この発明によると、センサとデータ管理装置との間の最低距離が1km以上とされる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の実施形態は、概略図を用いてより詳しく説明される。
図1】本発明の実施の形態に係るセンサ信号の評価方法の詳細を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る、輸送レールシステムで用いるデータ取得管理システムの例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一つの実施形態においては、時間的に異なる複数の時点で生成された2つのセンサ信号が2つの互いに異なる事象に対応する。この事象は、好適には2つの車輪の事象、より好適には2つの車両の事象、さらに好適には2つの列車の事象である。また本発明の別の実施形態では、2つのセンサ信号は、同じ事象であるが2つの互いに異なるセンサにより生成されたものである。好適には、2つのセンサ信号が2つの互いに異なるセンサにより生成される場合、この2つのセンサはレールに沿って運行されるレール車両の移動方向に、互いに離れて配され、これによって一つの事象により、同時期に互いに異なる場所でセンサに信号を生成させることとなる。互いに異なる時点は、一つのセンサまたは両センサのサンプリングレートの逆数だけ少なくとも離れていることで、識別可能であることが好適である。例えば、2つのセンサのサンプリングレートが1kHzであれば、2つの互いに異なる時点は、少なくとも1ms(1ミリ秒)だけ離しておく。より好適には、サンプリングレートが1Hzであり、2つの互いに異なる時点を、少なくとも1s(1秒)だけ離しておく。
【0031】
好適な実施形態では、事象、信号に含まれる2またはそれ以上のデータ点が、列車の事象であり、より好適には車両の事象であり、さらに好適には車輪の事象である。事象が、予め定めた長さの時間に亘り、また、近接するレール車両によってトリガーされるものであることが好適である。好適な事象は、最低で1秒の長さを有し、より好適には10秒であり、さらに好適には1分の長さを有する。好適には、事象は予め定めたしきい値より大きいセンサの信号によりトリガーされる。このため、好適なセンサは、生成した信号または個々のデータ点と予め定めたしきい値とを比較する電子回路を備える。より好適には、事象は、2つの予め定められたしきい値の間に、またはしきい値より大きい信号をセンサが生成している間の、不定の時間(variable length in time)に亘る。好適な実施の形態の一例では、事象は、センサまたは測定箇所をレール車両が通過し、または接近することを検出する光電子的バリア(photoelectric barrier)によってトリガーされる。好適には、この測定箇所は、一つの事象について例えば第1のバリアを列車が通過したときにスタート信号を生成し、例えば列車の最後のレール車両が第2のバリアから離れたときにストップ信号を生成する2つの光電子的バリアの間である。好ましい方法の一つでは、各事象の間、センサは10以上の、好ましくは100以上の、さらに好ましくは1000以上のデータ点を含む信号を生成する。好適には、センサは、少なくとも1秒間に10の、より好ましくは1秒間に100の、さらに好ましくは1秒間に1000のデータ点を得られるサンプリングレートで、事象の測定を行う。
【0032】
好適な実施形態の一例に係る方法は、互いに比較され及び/または組み合せられる1またはそれ以上の記録されたセンサ信号の少なくとも2つのデータ点のうち、少なくとも一方が校正(calibrate)されたセンサにより生成されるステップを含む。この評価は、メモリ及びプロセッサを備えたデータ管理装置(DMA)により実行される。校正されたセンサの信号もまた、データ管理装置のメモリに記録されることが好ましい。このステップの処理結果は、校正されたセンサの信号と比較された、記録されているセンサ信号を生成したセンサの校正関数(calibration function)であり得る。記録されたセンサと、校正されたセンサからの信号とが等しい質量のレール車両を測定することで得られたものであることが好ましい。より好ましくは、同じレール車両を測定して得る。2つの測定は、互いに大きく離れた場所及び/または時間において行われたものであってよい。好ましい実施形態の一例では、処理の結果として得られた校正関数は、センサ信号の将来の評価のために、データ管理装置のメモリに格納されてもよい。データ管理装置は、過去の測定結果や特定のセンサの校正関数を、新たに得られたセンサ信号からの測定結果と比較し、要求された誤差範囲にセンサが校正されているか否かを確認してもよい。この方法の利点は、センサの変動(drift)を検出して、センサの新たに必要になった校正を開始することができるようになることである。
【0033】
データ管理装置は、センサ信号をプライマリ・データ(primary data)として受信することが好適である。本発明の実施形態によると、プライマリ・データはセンサ信号であり、そのデータ点は、他のセンサ信号からのデータ点と比較されていない。本発明の好適な実施形態の一例では、センサ信号は送信器によって処理可能な態様(mode)に変換される。センサ信号をプライマリ・データとして受信することで、センサが信号プロセッサを備えなくてもよくなるという利点がある。従って、センサは上記プライマリ・データをデータ管理装置に送信する送信器を備えさえすれば、シンプルで安価なものになり得る。もう一つの利点は、後の時点での再評価のために、プライマリ・データがデータ管理装置のメモリに記録してもよいことである。例えば、過去のセンサ信号からのデータ点と、新たに得られたセンサ信号からのデータ点とを比較することで、センサの変動が検出できる。センサ信号が生成された時点では知られていなかった評価方法でセンサ信号を評価できる利点もあり得る。例えば、過去の時点で得られていたセンサ信号が表すレール車両やその負荷の特性、具体的には負荷の種類(液体または個体)、レール車両の長さ方向に亘る負荷の分散、車輪のアンバランスさ、振動、及び/または、レール間の距離など、を抽出または演算できる可能性がある。従って、プライマリ・データを送信する利点は、処理され、評価された、例えば一つの値とされたセンサ信号に比べ、情報のロスがないことである。本実施の形態の別の例では、センサ信号は、送信前に増幅される。これにより、センサ信号のS/N比を改善できる。さらに別の好適な方法では、センサ信号はセンサ側でアナログからディジタルへと変換される。
【0034】
好適な実施形態では、データ管理装置は、センサ信号に関連付けられたメタデータを記録する。メタデータは、センサ及び/またはセンサに付加された電子回路及び/またはデータ管理装置により生成された種々の付加的な情報である。メタデータは例えばセンサによりセンサ信号が生成された時刻を記録するタイムスタンプや、センサ信号がデータ管理装置に受信された時刻を記録するタイムスタンプを含む。好適なメタデータは、ジオタグを含んでもよい。このジオタグは、センサの地理的位置の情報を含む。また別の好適なメタデータは、レール車両を識別する情報、レール車両の貨物を識別する情報、レール車両の映像または音声情報、温度や気圧その他の気象情報または任意のセンサ周囲の情報等を含む。センサ信号に関連付けてメタデータを記録しておくことで、センサ信号からより詳細な測定結果や他の測定結果を生成できる。例えばジオタグとタイムスタンプとを組み合せて、レール車両の平均速度を演算できる。メタデータは、データ管理装置に信号を供給する任意の種類のセンサにより生成され得る。メタデータは、センサデータと同期していてもしていなくてもよい。好適には、メタデータは、受信されるセンサ信号と同様の方法で、データ管理装置によって受信される。また、メタデータはデータ管理装置のメモリに記録されることも好適である。
【0035】
好適な実施形態では、データ記録装置のメモリは、測定結果を記録することに用いられる。このように測定結果が記録されることで、ユーザに測定結果を表示することを可能にする。またセンサ信号の評価に測定結果を利用することが可能となる。好適な実施形態では、2またはそれ以上の測定結果が互いに組み合せられ、及び/または比較されて測定結果の評価が行われる。データ管理装置は、測定結果を少なくとも2週間に亘って、より好ましくは1月以上に亘って、さらに好ましくは1年以上に亘って記録する。またセンサ信号も2週間以上、より好適には1月以上、さらに好適には1年以上に亘って記録される。センサ信号及び/または測定結果を記録しておくことで、これら信号及び/または測定結果をさらなる評価及び/または解析に利用することが可能となる。
【0036】
好適な実施形態では、データ管理装置は、外部の受信側に測定結果を送信する送信部を備える。好適な送信部は、ネットワークを介して結果を送出する。このネットワークは好適にはインターネット、携帯電話回線網、その他データの伝送に適した種々のネットワークである。
【0037】
好適な実施形態では、測定結果は、レール車両の利用者及び/または操作者に対して送信され得る。例えば、レール車両の重量がレール上の2つの測定位置で測定され、データ管理装置が各測定位置でのレール車両の重量を評価する。ここで、レール車両の重量差が予め定めたしきい値より大きいことが検出されると、データ管理装置は、列車の運行管理者に対して警告信号を送出し、運行管理者に上記2ヶ所の測定位置の間で、列車の貨物が喪失したことを知らせる。
【0038】
データ取得管理システム(DAMS)の好適な実施形態の一つでは、少なくとも一つのセンサがローカルのセンサ信号を読み出す装置に接続されたローカルインタフェースを備える。このローカル読み出しは、USBやRS232等のシリアルバスまたはGPIB等のパラレルバスインタフェースとして実装される。また別の好適な例では、データはBluetoothや無線LAN等の無線接続手段によってデータの読み出しが行われる。このようにしておくと、センサ信号がローカルに読み出し可能となっていることで、データ管理装置へのセンサ信号の送信に障害が発生したときに対応が可能となる。
【0039】
本発明の実施形態の好適な一例では、少なくとも一つのセンサが、センサ信号を増幅及び/またはセンサ信号をアナログからディジタルへ変換する信号処理部を有する。センサ信号がデータ管理装置へ送信される前に増幅されることは好適である。当初微弱であった信号を送信する際にも効果がある。好適な増幅による別の効果は、信号のS/N比を改善することである。さらにもう一つの好適な実施形態では、データ管理装置へ送信される前に、アナログのセンサ信号がディジタルに変換される(A/D変換)。ある別の実施例では、データ管理装置が、データがデータ管理装置へ到来した後に、増幅及び/または変換を行う。
【0040】
好適なデータ処理は、信号の特性を変えない。増幅され及び/またはA/D変換されたプライマリ・データも、プライマリ・データとして扱うことができる。好ましい本発明の実施形態の一例では、センサがセンサ信号に正弦関数(sinus function)や指数関数(exponential function)等の解析的関数をフィットさせる手段を有する。送信されるデータ点の集合は、フィット結果のパラメータを含む。こうした解析関数も、もともとの測定された物理的特性の時系列を表しており、その周波数、振幅、振幅の減衰、周波数スペクトル及び/またはその他のパラメータから事後的に測定結果を抽出できるので、かかる解析関数もまた、プライマリ・データとして扱うことができる。
【0041】
好適な発明の実施形態の一例では、任意のセンサと、データ管理装置との距離は10km以上である。このセンサとデータ管理装置との間の距離は、センサとデータ管理装置との間の最短の道のりとして定義される。好ましくは、この距離は100km以上であり、さらに好ましくは1000km以上である。好適なDAMSは、全国のレールネットワークに分散するセンサからのデータを管理するよう構成される。より好適には、DAMSは、大陸全体のレールネットワーク、さらに好適には世界的なレールネットワークに分散するセンサからのデータを管理する。センサとデータ管理装置との距離が大きくとれることで、センサとデータ管理装置との距離が大きくなる大規模なレールネットワークのDAMSの運用が可能となる利点がある。実施形態の別の例のDAMSは、さらに、システムのバックアップとして動作可能な、あるいはセンサ信号の評価を行う処理能力を向上させる1以上のデータ管理装置を有する。もう一つの実施形態の例では、任意のセンサとデータ管理装置との間の距離を10km以下とする。より好適には1km以下とする。データ管理装置は、処理中は動かないで静的であることが好ましい。別の例に係るデータ管理装置は、ラップトップをデータ管理装置として用いる場合の例のように、位置が変化するという意味で、可搬型であってもよい。
【0042】
本発明の好ましい実施形態の一例では、2つのセンサ間の最短距離は、10m以上である。本発明の実施形態の例では、2つのセンサ間の距離は、2つのセンサ間の最短の道のりである。2またはそれ以上のセンサ間の距離は互いに10m以上であることが好ましい。より好ましくは、任意の一対のセンサ間の距離を10m以上とする。もう一つの好ましい実施形態では、2つのセンサ間の最短距離が50m以上である。より好ましくは、この距離は100m以上である。個々のレール車両及び/または列車の各レール車両の重量を、信頼性を維持しつつ測定するため、センサは、レール車両の2つの車輪セット間の最短距離より大きい距離だけ離して配されてもよい。上記の距離では、レール車両の重量を精度よく測定できる。2つのセンサを上記の距離とするもう一つの利点は、センサ間でのクロストークの低減である。レール車両の重量の測定の独立性を高めることが可能となる。本発明の実施形態の別の例では、2つのセンサ間の最短距離を10m以下とする。
【0043】
本発明の好適な実施の形態の一例では、少なくとも一つのセンサがレール上にあるレール車両によって生じるレールの磁気的特性の変化を測定する。センサの動作原理が、ビラリ効果としても知られる逆磁歪効果に基づくものであることが好適である。強磁性レールとの組み合せでこの効果をよりよく利用することが好適である。このようなセンサは、永久磁石及び/または電磁石によって、レールの側面に直接取付けられるか、レールの支持構造に取付けられることが好適である。ここでレールの支持構造は、強磁性材料を用いたものであることが好適である。本実施の形態の別の例では、少なくとも一つのセンサは、歪みゲージセンサである。好適な歪みゲージセンサは、レールの側面やレールの底部に取付けられる。この種のセンサは、レール車両の重量または負荷によって生じる、レールの撓みや伸びを測定する。もう一つの好適な例では、少なくとも一つのセンサが、レールに係る圧力を測定する。この例では、センサは枕木やレールの底部に設置される。もう一つの好適な実施形態の例では、少なくとも一つのセンサが線路上で自由に取付け位置を移動できる、レール車両の重量を決定するためにトラックの垂直方向の変位が測定される。好適な例に係る歪みセンサは、1または複数のファイバブラッググレーティングを含む光ファイバである。この例では、送信器を組み合せることが容易になり、センサとデータ接続手段とが小型なモジュールとして構成できる。本発明のもう一つの好適な実施形態の例では、少なくとも一つのセンサがレール上にあるレール車両の荷重や、気温の変化に伴うレールの熱膨張または熱による収縮といったレールの変形を測定する。好適なセンサは、レール車両の移動によりレールに加わるトルクを測定する。もう一つの好適な例ではセンサは、レール上のレール車両の重量によるレールの圧縮を測定する。ここで重量は、レール車両の重量及び/または慣性質量によりレールに係る静的及び/または動的な力である。もう一つの例に係る好適なセンサはレールの加速度を測定する。このようなセンサは、例えば加速度センサであり、レール車両や地震によって生じるレールの振動を検出できる。
【0044】
本発明の実施形態の好適な例では、少なくとも一つのセンサがセンサ信号をローカルに記録する、ローカルメモリを有する。これにより、送信されたセンサ信号が、例えば送信器の故障やデータ管理装置までのデータ接続に障害が生じることで消失してしまう場合に備えたバックアップメモリが提供される。好適な実施形態の例では、このようなメモリは、センサ信号を記録するキャッシュとして用いられる。センサ信号がタイムスタンプとともにメモリ内にキャッシュされることとしてもよい。キャッシュされたセンサ信号は、エネルギー消費を制限するため、または盗聴を防止するため、後からバースト伝送されてもよい。ある好適な例では、センサ信号は、所定の時間間隔をおいて、または所定の時刻にのみ送信される。好適には例えば一時間おきであり、より好適には一日に一度及び/または例えば昼の12時のみに送信されるようにする。これによりエネルギー消費が抑えられ、センサがバッテリ駆動されている場合は、バッテリの交換周期を延ばすことができる。もう一つの好適な実施形態の例では、データ管理装置は、データ管理装置がセンサのメモリから、センサ信号をポーリング及び/またはプル(pull)する。これによるとデータ管理装置が信号の伝送の開始を制御でき、センサ信号の受信がデータ管理装置により直ちに検証できる。好適な実施形態の一例では、センサからデータ管理装置への信号の伝送は、シーケンシャルに行われる。例えば多数のセンサがデータ管理装置へ信号を伝送するときに、すべての信号を同時に受信されることがない。好適なメモリは、不揮発性のメモリ、具体的にはフラッシュメモリ、コンピュータハードドライブ、テープレコーダー及び/またはセンサ信号を記録する種々の手段であり、さらなる処理及び/または伝送及び/またはユーザにセンサ信号をアクセス可能にする。さらに、すべてのセンサ信号がどのセンサがセンサ信号を生成したかを識別可能とする固有のコードとともにデータ管理装置に伝送されることも好適である。
【0045】
好適な実施形態の例では、少なくとも一つのセンサがデータ管理装置へセンサ信号をリアルタイムに送信する。このようにすると、互いに異なるセンサ間を列車が通過する状況をリアルタイムにモニタできる。タイムスタンプがデータ受信後、データ管理装置によりセンサ信号に付与されるようにすることも好ましい。顕著な伝送遅延は生じないので、データ管理装置のタイムスタンプは、センサ信号が送信されてから短時間のうちに生成される。実施形態の別の例では、センサ信号へのタイプスタンプの付与は、センサ自身によって行われる。この例では、データをリアルタイムに送信する必要はない。この例によると、センサ信号の伝送プロトコルを簡略にできる。また、センサ信号をデータ管理装置にバースト伝送し、あるいはデータ管理装置によるポーリングやプルするといった、上述の信号伝送方法を用いることが可能となる。本実施の形態の好適な実施形態の例では、センサ信号の時間変化の全体がリアルタイムに記録される。これは信号の各データ点がセンサによってリアルタイムに送信されることを意味する。好適には、各データ点は、リアルタイムにデータ管理装置によって受信される。
【0046】
本発明の好適な実施形態の一例では、少なくとも一つのセンサが他のセンサからセンサ信号を受信して、当該センサ信号をデータ管理装置へ送信する。この方法によると、センサからデータ管理装置へと、中間のセンサをリレーしてセンサ信号を送信できるようになる。この方法では、例えばセンサが遠隔にあることで直接接続ができない場合でも、センサとデータ管理装置との間の接続を確立し得る。センサ信号をリレーする好適なセンサは、ローカルメモリと、好適には送信器に加えデータの受信器を備える。測定位置において構成される2またはそれ以上のセンサのグループにおいて、当該測定位置におけるすべてのセンサのセンサ信号を、一つのセンサが送信するように構成してもよい。もう一つの好適な例では、以下、「ハブ」と呼ぶ専用のデバイスが、測定位置に配されて、センサからセンサ信号を受信して、データ管理装置にセンサ信号を送信する。この例によると、各センサは、信号をハブへ送信するだけでよい。センサから信号を受信し、当該受信した信号をデータ管理装置へ送出するハブは、当該目的のために最適化され、好ましくはより強力かつ/または信頼性のあるセンサ信号の伝送手段を備える。好適なハブは、さらに、メモリを有し、データ管理装置へ送信する前に、センサ信号をキャッシュ及び/または記録する。
【0047】
少なくとも一つの重量が不知であるレール車両と、重量が知られており、列車を押しまたは引く機関車とを含む、移動している列車の重量を測定する好適な方法では、一つの重量センサが、列車を運行するのに用いるレールに配され、重量が不知である上記レール車両に起因するセンサ信号と、重量が知られている機関車に起因するセンサ信号とを比較することでレール車両の重量を演算するステップを含む。この方法では、既知の質量に起因するセンサ信号が不知の質量に起因するセンサ信号と比較されるので、機関車に起因するセンサ信号がセンサの校正に効果的に用いられる。
【0048】
本発明の好適な実施形態の一例では、センサはデータ管理装置と、ネットワークを介して通信する。好適なネットワークは、次のリストに含まれる1または複数の要素を含む:インターネットを利用した情報ネットワーク、パラレルまたはシリアルバス、セルラ無線システム(cellular radio system)を利用した情報ネットワーク。ネットワークは好適には、上記要素の組み合せにより実装される。ある好適な実施形態の例では、パラレルバスはGPIBインタフェースである。また別の例では、USBまたはRS232などのシリアルバスが用いられる。
【0049】
好適な実施形態の例に係るネットワークは、GSM、UMTSまたはLTE(第2、第3または第4世代携帯通信網)等のセルラ無線ネットワークを用いる。より好適なネットワークの例は、インターネットである。インターネットは、好適には、光ファイバ及び/または銅線ケーブルを用いて構成される。携帯電話回線網やインターネットは、商業的に利用可能であり、DAMSのために特に用意する必要がない利点がある。
【0050】
センサ信号の評価方法の好適な例では、1またはそれ以上の記録されたセンサ信号の少なくともデータ点を組み合せ及び/または比較して得られる測定結果は、以下の1または複数を含む:レール車両の車軸の数、レール車両における負荷分布のアンバランスさ、レール車両の車輪の機械的摩耗、列車に含まれるレール車両の台数、レール車両の重量の情報、レール車両に関する速度情報、レール車両に関する重量の変化の情報、レール車両がセンサの位置に到達した時刻、校正関数(calibration function)。データ管理装置により、より複雑な演算が行われてもよい。センサの校正は多大な時間を要し、かつ、規則的な間隔で校正を繰返す必要があり得る。プライマリ・データを中央で評価することで、同じレール車両に対する、互いに異なるセンサから得られた結果及び/またはデータ点を比較することが可能になる。この方法では、システム的誤差は除去される。例えば特定のセンサが他のセンサからの信号に比べ、常に低い値を表す信号を生成していることなどが検出できる。
【0051】
1またはそれ以上のセンサが組み合せられて測定装置が構成されることが好適である。好適な測定装置は、1またはそれ以上の例えば、信号増幅器及び/またはアナログからディジタル信号への変換器及び送信器等の電子回路を含む。典型的には、ある測定器の複数のセンサは、同じ、例えばレール車両が所定の時刻に通過するといった事象に反応する。同じレール車両が、ある測定装置の近傍を、2つの互いに異なる時点において通過すると、2つの互いに異なる事象が生じ得る。測定装置の典型的な例では、2つの個別の筐体に収納した4つのセンサを含む。好適には、2つの筐体は線路に配され、各筐体が線路の各レールに配される。好適には、筐体は、線路のレールに垂直な仮想線分(thought line)に添って配される。
【0052】
[発明の実施形態の詳細な説明]
図1は、センサ信号の評価方法の例を表す図である。レール上のレール車両の荷重により引き起されるレールの変形を測定する4つのセンサS1,S2,S3,S4と、データ管理装置(DMA)4とが図示されている。センサS1はより詳しく示されている。センサはデータ管理装置4へセンサ信号を送信する送信器2を備える。4つのセンサはデータ管理装置4に対してセンサ信号を、有線5,6または無線データ接続7,8を介して伝送する。データ管理装置4は、4つのセンサからセンサ信号を受信する受信器11と、受信したセンサ信号を記録するメモリ12と、記録したセンサ信号を評価するプロセッサ13とを含む。測定結果もまた、このメモリ12に記録される。
【0053】
センサS1は、輸送レールシステムの一部であるレール(不図示)に取付けられる。センサS1は、レールに対し加えられる負荷によって生じるレールの変形に依存する磁気的特性の変化を測定する。一連の貨車を引く機関車が線路上を移動しているとする。重量が知られている機関車がセンサS1を通過するときの事象で、信号が生成され、データ管理装置4に対して伝送される。データ管理装置4は、信号を受信してメモリ12に記録する。センサ信号は、レールの変形に比例しており、事象が発生している間に生成された複数のデータ点によって表される。サンプリングレートは1kHzであるとする。これは1秒の間に1000個のデータ点が生成されることを意味する。プライマリ・データに加え、信号は、測定の時刻、センサの位置、列車の識別情報に関するメタデータを含む。機関車に続いて、貨車がセンサを通過し、それぞれプライマリ・データとメタデータとを含んだ同様の一連の信号が生成される。データ管理装置4のプロセッサ13は、各車両の重量、車軸の数、レールの振動、その他必要な測定結果をセンサ信号から演算して、信号を評価する。センサS1を重量センサとして用いる際の校正は、既知の機関車の重量と、機関車の重量の測定結果とを比較して行われる。この校正がさらに各貨車についても用いられる。
【0054】
100キロメートル離れて、もう一つのセンサS2がセンサS1と同様の方法で線路に取付けられている。そしてセンサS1と同様の測定手順が繰返される。測定が終了すると、データ管理装置4はS2の結果をS1の結果と比較する。2つのセンサの校正が2つのセンサによる機関車に関する2つの測定結果を比較することでまず行われる。そして、貨車の重量により生成された信号が比較される。貨車の重量の差は、貨物の喪失を表す。このような場合、データ管理装置4はSMS等の形態で、列車の運行管理者にメッセージを送信し、運行管理者に対して貨物が喪失したことを警告する。メタデータにより、データ管理装置4は、S1とS2とにおける機関車のセンサ信号に関連付けられたタイムスタンプを比較して、列車の移動時間を演算する。2つのセンサS1,S2間の距離が既知であるので、平均速度も演算可能である。演算の結果は、当初のセンサ信号とともにメモリ12に記録される。当初のセンサ信号は、将来のセンサ信号と比較され、センサの変動や故障の検出に用いることができる。
【0055】
図2は、本発明の実施の形態に係る、輸送レールシステムで用いるデータ取得管理システム(DAMS)1の例を表す図である。この図は概略の図であり、縮尺は現実のものではない。図示されたDAMS1は、レール上を移動するレール車両の荷重によって引き起されるレールの変形を測定する。生成された信号は、レール車両の異なる物理的特性に関する情報を含んでもよい。この物理的特性は、例えばレール車両の質量や、車輪のアンバランスさ、レールや車両に生じる振動等である。この目的のため、6つのセンサS1からS6がレール3に測定のため、特にレール車両の重量の測定のために配される。ここでレール3は基本的に円形状の強磁性レールである。この例ではレール車両は、石炭を運搬するホッパー車両を含む列車(不図示)であるとする。石炭は、Cの符号を付した炭坑で産出され、円形の線路を介して石炭の精製場A,Bへ運搬される。3つの測定位置A,B,Cが円形の線路の分岐点に配される。中間測定位置Xについては後に述べる。各測定位置において、それぞれ1または複数のセンサS1からS6がレール車両の重量測定のために設置される。この例では、センサS1からS5が測定位置A,B,Cに設置され、レールに係る荷重によって強磁性体のレールが歪むことで生じる磁気的特性の変化を測定する。この変化の背景にある物理的効果は逆磁歪効果と呼ばれる。測定位置XにあるセンサS6は歪みゲージと呼ばれる種類のセンサであり、レール3の機械的変形を直接的に測定する。さらに、センサS1からS6のそれぞれは、レールに係る荷重に応じた電流を供給し、電流を後に説明する中央のデータ管理装置(DMA)へ送信可能な信号に変換することで、プライマリ・データの形でセンサ信号を生成する。
【0056】
測定位置A,B,Cの線路に沿った距離は、それぞれ約80キロメートルであり、直線で結んだときの距離は約50キロメートルである。測定位置AにあるセンサS1,S2の間の距離は15メートルである。当該場所では道床がやや硬く形成されている。従ってレール3に沿って比較的長めの部分をとることで、荷重によって生じるレール3の歪みが精度よく測定可能である。測定位置Bではやや柔軟な泥のような面に線路が配されているものとする。従って、レール3に沿って、比較的短めの部分ですでに十分歪むので、そのため、センサS3,S4の間の距離は2メートルに設定される。
【0057】
DAMS1は、中央のデータ管理装置(DMA)4を含んで構成される。データ管理装置4は、各測定位置A,B,C,そしてXからそれぞれ10キロメートル以上の距離をおいて配されている。4つのセンサS2,S3,S4,S6がレール3に設置され、データを、データ伝送接続を通じてセンサからデータ管理装置4へ送信する送信器を有する。データ伝送接続は、センサからデータ管理装置4へセンサ信号を送出することを可能にする。本実施の形態では、測定位置AのセンサS2とデータ管理装置4との間のデータ伝送接続は、第1の有線接続5によって確立される。データ管理装置4は、本実施の形態では、ネットワークサーバとして動作する。測定位置XのセンサS6も、データ管理措置4に第2の有線接続6によって有線にて接続される。これらのセンサS2,S6は有線が接続される有線端子を備える。データ管理装置4は、対応する有線端子を備え、2つのセンサS2,S6とデータ管理装置4とを接続することは比較的容易に達成される。
【0058】
測定位置Bの2つのセンサS3,S4は、データ管理装置4へのデータ転送接続を確立するために、無線接続を設定する手段を備える。本実施の形態では、これはピア・ツー・ピア無線接続インタフェースを用いて達成される。これらの接続は、第1の無線接続7及び第2の無線接続8として図示されている。
【0059】
本実施の形態の4つのセンサS1,S2,S4,S5は、他のセンサとの間でデータ伝送接続を確立する手段を含んで構成される。本実施の形態では、測定位置AのセンサS1,S2が互いにデータ転送接続を確立するための第3の無線接続9を設定する手段を含む。この例では、802.11g規格に従った無線LAN接続が用いられる。第3の無線接続9は、プライマリ・データをセンサS1から、第1の有線接続5を介してデータ管理装置4に接続されているセンサS2へリレーすることに用いられる。従って、このデータ通信のための接続は、測定位置Aに2つのセンサS1,S2があっても、測定位置Aと、データ管理装置4との間は、単一のデータ伝送接続にて実現されている。このことは、測定位置にあるセンサの数が増えても、データ管理装置4への接続の数は小さく押えられることを示す。測定位置AにあるセンサS2は、データ管理装置4に接続され、また測定位置Aにおいてデータを記録するためのローカルメモリを有する。この例では、ローカルメモリは、ハードディスクである。このローカルメモリは、測定位置AにおけるセンサS1,S2の双方のプライマリ・データをキャッシュすることに用いられる。データは、データ管理装置4に対して日に一度、第1の有線接続5を介してセンサS2とデータ管理装置4との間のダイヤルアップ回線が確立した後に伝送される。またセンサS2は、例えばデータ管理装置4への第1の有線接続5に障害が生じたときのために、データをローカルに読み出すためのローカルインタフェースを備える。この例では、RS232シリアルコネクタが用いられ、データ、特に記録された測定データが、センサS2のハードディスクからラップトップ等のデバイスにコピー可能になる。
【0060】
炭坑Cでは、重量センサS5が比較的到達困難な場所に位置している。山岳地帯であることから、センサS5とデータ管理装置4との間で直接的に有線接続をすることも、無線にて接続することも困難である。さらに、特に冬季等では当該地域では豪雪のため、メンテナンスチームを派遣することも難しい。このことは、ローカルメンテナンス及び/またはデータ管理装置4へのデータ伝送接続を確立することにコストがかかり、また時間もかかってしまうことを意味する。こうした問題に対処するため、場所CにおけるセンサS5は、他のセンサとのデータ伝送接続を確立する手段を備える。ここでの例では、当該他のセンサは、測定位置BのセンサS4である。本実施の形態の例では、測定位置CのセンサS5は、測定位置BのセンサS4との間で、この例では光ファイバによる第3の有線接続10を介した接続を確立する。データ管理装置4との接続のほか、センサS4は場所CのセンサS5との間で接続を確立するために、光ファイバインタフェースを備える。場所CのセンサS5は、プライマリ・データを記録する手段は備えないので、センサS5はプライマリ・データを測定位置BのセンサS4に対してリアルタイムに伝送する。こうした測定をトラッキングするため、このプライマリ・データには、データ伝送接続10を介して受渡される前に、タイムスタンプが付される。さらに、各センサは、データ管理装置4にて受信された信号が、どのセンサによって生成されたものかを個別に識別することを可能にするため、固有のコードを伝送する信号に付与する。センサS4は、センサS3からデータを受信してローカルフラッシュメモリとしてのキャッシュに記録する。そしてタイムスタンプを含む当該プライマリ・データを、第2の無線接続8を介してデータ管理装置4へ送出する。従って、センサS5がデータ管理装置4への直接接続を確立することも、ローカルにデータを読み出すインタフェースをセンサS5に設けることも必要なくなる。このことで、メンテナンスコストを低く抑えることが可能となる。
【0061】
本実施の形態のデータ管理装置4は、例えばネットワークサーバであり、センサS2,S3,S4,S6から受信したデータを記録する。センサS1とS5からのデータは間接的に受信される。センサS2,S3,S4,S6は、データ管理装置4に対して直接接続され、データ管理装置4とともに、スター型のネットワークを形成する。データ管理装置4のメモリは、冗長アレイ(RAID1)としてもよい。これによりデータ損失に対する備えができる。こうしてデータ管理装置4は、DAMS1のすべてのセンサのすべてのプライマリ・データを一ヶ所に集積して記録することが可能となる。さらに、データ管理装置4はプライマリ・データを評価する。プライマリ・データは、データ管理装置4のプロセッサがソフトウエアとして実装されたアルゴリズムを実行することで評価される。この例では、データ管理装置4は、受信したセンサ信号を分析するためのアプリケーションソフトウエアを実行する。各信号は、典型的にはいくつかの極大値及び極小値を有する、振動する信号である。アプリケーションソフトウエアの実行により、データ管理装置4は、最大振幅や信号の減衰率等のパラメータを抽出する。またフーリエ変換処理を実行することで、信号のスペクトルが得られる。この方法では、レール車両に関する、質量や荷重の分布、速度等、種々の物理的特性が演算できる。
【0062】
例えば質量の情報を用いることで、データ管理装置4のソフトウエアは、輸送レールシステム上を運行している、固有の質量を持つ互いに異なる列車を識別できる。場所を表すロケーションスタンプやタイムスタンプの情報、及びそこから演算できる場所A,B,C,Xへの列車あるいはレール車両の到達時刻を、既知の場所間の距離に組み合せることで、移動時間が演算でき、さらに知られている線路の長さからこれらの列車の平均速度が演算できる。演算された測定結果の情報はデータ管理装置4にて記録され、利用者等のユーザにアクセス可能な状態となる。このような演算の結果は、ブラウザ等のユーザインタフェースを介して利用者からアクセス可能にされる。本実施の形態の例では、炭坑Cや処理の場所A,Bの所有者が、基本的なサービスパッケージに契約して、センサS1からS6の重量情報のみにブラウザ等のユーザインタフェースを介してアクセス可能となる。さらにコストをかけてサービス契約をアップグレードすれば、利用者はさらに列車の移動時間や平均速度等の測定結果にアクセス可能となる。このように、DAMS1等の提供者の顧客に対し、利用者の必要な情報に合わせて、柔軟で段階的な価格設定が可能となる。
【0063】
データ管理装置4のプロバイダによるもう一つのサービス例は、輸送レールシステムに新規に付加されたセンサの校正である。つまり、データ管理装置4は、輸送レールシステムのセンサの校正を実行する。この例では、データ伝送接続機能を有した機械的歪みゲージセンサである測定位置XのセンサS6が、測定位置A及びBの間で運行される列車に関する測定を中間で行うため、システムに新たに付加されたとする。これにより、測定位置A及びBの間で運行される列車の平均速度がより高い精度でモニタできるようになる。測定位置XのセンサS6は、データ管理装置4に対して第2の有線接続6を介して直接接続される。センサS6がデータ管理装置4に測定位置Xにて設置されると、校正の必要がある。レール3にかかるどの程度の荷重が、どの程度のレール3の機械的変形に関係するのかを設定する。従来の輸送レールシステムでは、サービスチームがローカルにセンサS6の校正を実行しており、時間がかかり、メンテナンスコストも大きくなっていた。本実施の形態のデータ管理装置4を用いると、遠隔で校正を実行できるようになる。例えば、炭坑Cを出発した列車が場所Cに配されたセンサS5を通過する。プライマリ・データは測定位置BにおけるセンサS4に対して第3の有線接続10を介して送信され、第2の無線接続8データを介して管理装置4に対して送信される。データ管理装置4は、そして列車の質量を例えば2000トンと演算する。後に同じ列車が測定位置Xを通過し、校正前のセンサS6がデータ管理装置4へプライマリ・データを伝送する。これより、先に演算された列車の質量を用いて、センサS6のための校正関数が、中央のデータ管理装置4にて生成できる。従って、新たに付加されたセンサの校正が、ローカル校正チームを測定位置に派遣することなく、可能となる。もう一つの校正の方法は、既知の質量のレール車両を用いる方法である。これは概ね定まっている質量を有する機関車や、搭載している燃料の量が知られているディーゼル機関車を用いる例が考えられる。例えば、電気機関車といくつかの石炭ホッパー車とを連結した列車がある測定位置のセンサを通過すると、機関車の通過時にセンサが第1のセンサ信号のセットを生成する。データ管理装置4は、この信号を受信して、基準信号として記録しておく。そして各石炭ホッパー車について生成されたセンサ信号がデータ管理装置4に伝送されると、データ管理装置4は当該信号も記録する。ここで、第1のセンサ信号のセットは当該センサの校正関数の生成に用いることができる。なぜならば、機関車の質量は既知であるからである。データ管理装置4は、次に、石炭ホッパー車の測定で得られた信号を、機関車のセンサ信号と、対応するセンサ信号とを比較して評価する。この方法で、石炭ホッパー車の質量が演算できる。これらの測定結果は、データ管理装置4のメモリに記録される。
【0064】
典型的には、センサの校正時に校正関数における傾きとオフセットとを決定するため、1回以上の測定が必要である。DAMS1を用いると、すべてのセンサ信号がセカンダリ・データや、列車またはレール車両を識別するメタデータとともに記録されているので、過去のデータを用いることで複数回の測定結果を利用できる。互いに異なるセンサによる測定結果を比較して、校正の精度をより向上し、測定結果間の大きな相違が検出されたとき、センサの故障と判断できる。例えば、4つの測定位置のうち3つの測定位置でそれぞれ2000トンの質量が測定されているときに、第4の測定位置において2700トンと測定されている場合等が相当する。
【0065】
図1に示され、ここまでに説明された実施の形態によると、輸送レールシステムのDAMS1を実装することで、レール車両のいくつかの互いに異なる物理的特性を検出可能となる効果がある。例えば、互いに異なるセンサS1,S2,S4,S5及び/またはセンサS2,S3,S4,S6と、データ管理装置4とのデータ伝送接続を介して測定データが伝送または交換される。さらに、集積されたセンサ信号に基づいて、中央のデータ管理装置4にて集中して演算が実行される。さらに、センサS1ないしS6の校正が簡単に実行できるようになり、メンテナンスのコストが低減される効果がある。これにより、高度に相互接続され、各測定位置のセンサの技術的複雑さを低減し、測定位置でのコスト上昇を抑制しつつ、種々の場面で商業的に活用可能な測定システムが提供できる。
【0066】
上記の説明、請求の範囲の記載、及び図面は、本発明のいかなる組み合せにも関係する。請求の範囲における参照符号は、単に可読性を高めるために用いられたもので、限定することを意図したものではない。
【符号の説明】
【0067】
1 データ取得管理システム(DAMS)
S1,2,3,4,5,6 センサ
A, B, C, X 測定位置
2 送信器
3 レール
4 データ管理装置(DMA)
5 第1の有線接続
6 第2の有線接続
7 第1の無線接続
8 第2の無線接続
9 第3の無線接続
10 第3の優先接続
11 受信器
12 メモリ
13 プロセッサ

図1
図2