特許第6670769号(P6670769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670769
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】検査装置及び巻回装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20200316BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20200316BHJP
   H01M 2/16 20060101ALN20200316BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   !H01M10/0587
   !H01M2/16 Z
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-3850(P2017-3850)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-113198(P2018-113198A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2018年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】二村 伊久雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 智弘
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 侑也
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−058179(JP,A)
【文献】 特開2002−289251(JP,A)
【文献】 特開2010−102901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00−10/39
H01M 6/02
H01G11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁素材よりなる帯状のセパレータシートを介して、活物質の塗布された帯状の正電極シートと負電極シートとを交互に重ね合わせた状態で回転可能な巻芯により巻取ることによって製造される巻回素子の製造過程において用いられる検査装置であって、
前記巻芯に巻き付けられた前記各シートを検査対象として、当該検査対象に対し所定の光を照射する照射手段と、
前記照射手段により光の照射された前記検査対象を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による撮像のタイミングを制御する撮像タイミング制御手段と、
前記撮像手段により得られた画像に基づき、前記検査対象の良否を判定する良否判定手段とを備え、
前記巻芯における前記各シートが巻き取られる外周面は、断面非円形状をなしており、前記巻芯の回転に伴い前記巻芯の外周面から前記撮像手段までの距離が変動するように構成されており、
前記撮像タイミング制御手段は、前記検査対象に対する前記撮像手段のピントが合うときに撮像が行われるように、前記巻芯の回転角度、及び、前記巻芯に巻回された前記各シートの厚さに応じて、前記撮像手段による撮像のタイミングを制御することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記撮像手段による撮像のタイミングを予め取得するための教示モードにて動作可能に構成されており、
前記教示モードにおいては、前記巻芯により前記各シートを巻取っている状態で前記撮像手段により前記検査対象を連続撮像するとともに、連続撮像により得られた複数の前記画像のうち前記検査対象に対する前記撮像手段のピントが合っているものを検出し、かつ、当該ピントが合っている前記画像を得たときの前記巻芯の回転角度を取得し、
前記撮像タイミング制御手段は、前記教示モードにて予め取得された前記巻芯の回転角度に基づき、前記撮像手段による撮像のタイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
絶縁素材よりなる帯状のセパレータシートを介して、活物質の塗布された帯状の正電極シートと負電極シートとを交互に重ね合わせた状態で回転可能な巻芯により巻取ることによって製造される巻回素子の製造過程において用いられる検査装置であって、
前記巻芯に巻き付けられた前記各シートを検査対象として、当該検査対象に対し所定の光を照射する照射手段と、
前記照射手段により光の照射された前記検査対象を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による撮像のタイミングを制御する撮像タイミング制御手段と、
前記撮像手段により得られた画像に基づき、前記検査対象の良否を判定する良否判定手段とを備え、
前記巻芯における前記各シートが巻き取られる外周面は、断面非円形状をなしており、前記巻芯の回転に伴い前記巻芯の外周面から前記撮像手段までの距離が変動するように構成されており、
前記撮像タイミング制御手段は、前記検査対象に対する前記撮像手段のピントが合うときに撮像が行われるように、前記巻芯の回転角度に応じて、前記撮像手段による撮像のタイミングを制御するものであり、
前記撮像手段による撮像のタイミングを予め取得するための教示モードにて動作可能に構成されており、
前記教示モードにおいては、前記巻芯により前記各シートを巻取っている状態で前記撮像手段により前記検査対象を連続撮像するとともに、連続撮像により得られた複数の前記画像のうち前記検査対象に対する前記撮像手段のピントが合っているものを検出し、かつ、当該ピントが合っている前記画像を得たときの前記巻芯の回転角度を取得し、
前記撮像タイミング制御手段は、前記教示モードにて予め取得された前記巻芯の回転角度に基づき、前記撮像手段による撮像のタイミングを制御することを特徴とする検査装置。
【請求項4】
前記教示モードにおいては、前記画像の輝度に基づき、複数の前記画像のうち前記検査対象に対する前記撮像手段のピントが合っているものを検出するように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、所定のレンズを有するとともに、当該レンズの光軸方向に沿って前記巻芯に対し相対移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記セパレータシートは、透明又は半透明であり、
前記撮像手段は、前記両電極シートのうちの少なくとも一方を前記セパレータシートを透過して撮像することで、前記両電極シート及び前記セパレータシートを一度に撮像するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか1項に記載の検査装置を備えることを特徴とする巻回装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池等に用いられる巻回素子を検査するための検査装置、及び、当該検査装置を備えた巻回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
巻回素子としては、リチウムイオン電池等の二次電池に用いられるものが知られている。この種の巻回素子は、正極活物質の塗布された正電極シートと負極活物質の塗布された負電極シートとが、両電極シートを絶縁するためのセパレータシートを介した状態で、回転可能な巻芯により巻取られることによって製造される。
【0003】
ところで、各シートの巻回中にシートに巻きずれ(シート幅方向への位置ずれ)が起きてしまったり、活物質の塗布位置にずれがあったりすることなど、巻回素子の構成部においてシート幅方向に沿った位置ずれが生じてしまうおそれがある。このような位置ずれは、例えば短絡等の原因となってしまい、製回素子における品質の低下を招いてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、巻きずれの有無を検知する検査装置として、巻芯(回転軸)よりも上流におけるシートの搬送経路に対応して配設された撮像手段(撮影装置)によって、セパレータシートと当該セパレータシートを透かして電極シートとを撮像し、得られた画像データに基づき巻きずれに関する検査を行うものが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【0005】
しかしながら、この検査装置は、巻芯により巻取られる前におけるシートの位置ずれを検知するものに過ぎない。従って、この検査装置による良否判定の結果と、各シートを巻取ることで得られた実際の巻回素子における良否とが必ずしも一致しない可能性がある。そのため、巻回素子の品質に関する良否を正確に判定することができないおそれがある。
【0006】
これに対し、巻芯に巻き付けられた各シートを撮像し、得られた画像に基づき巻回素子における巻きずれの有無を判定する検査装置が提案されている(例えば、特許文献2,3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−170136号公報
【特許文献2】特開2006−145298号公報
【特許文献3】特開2016−58179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような検査装置において、検査に係る信頼性を高めるという観点では、計測分解能(画像の解像度)を極力高くすることが好ましい。
【0009】
しかしながら、計測分解能を高めると、結果的に、撮像手段における被写界深度が浅くなってしまう。そのため、各シートの巻取りが進むに伴い巻芯に巻回された各シートが厚くなっていき、撮像手段に対し撮像対象となる各シートが接近した状態になると、各シートにピントを合わせることができず、画像がぼけてしまうおそれがある。
【0010】
一方、各シートの巻取りが進んだときに、各シートにピントが合うように構成することが考えられるが、この場合には、各シートの巻回を開始した直後に、すなわち、撮像手段から撮像対象となる各シートが離れているときに、各シートにピントを合わせることができず、画像がぼけてしまうおそれがある。
【0011】
このように、計測分解能を高めるべく被写界深度を浅いものとすれば、巻回に伴う各シート及び撮像手段間の距離の変動に十分に対応することができず、結果的に、検査に係る信頼性を十分に高めることができないおそれがある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、巻回素子の品質に関する良否をより正確に判定することができるとともに、検査に係る信頼性を十分に高めることができる検査装置及び巻回装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0014】
手段1.絶縁素材よりなる帯状のセパレータシートを介して、活物質の塗布された帯状の正電極シートと負電極シートとを交互に重ね合わせた状態で回転可能な巻芯により巻取ることによって製造される巻回素子の製造過程において用いられる検査装置であって、
前記巻芯に巻き付けられた前記各シートを検査対象として、当該検査対象に対し所定の光を照射する照射手段と、
前記照射手段により光の照射された前記検査対象を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による撮像のタイミングを制御する撮像タイミング制御手段と、
前記撮像手段により得られた画像に基づき、前記検査対象の良否を判定する良否判定手段とを備え、
前記巻芯における前記各シートが巻き取られる外周面は、断面非円形状をなしており、前記巻芯の回転に伴い前記巻芯の外周面から前記撮像手段までの距離が変動するように構成されており、
前記撮像タイミング制御手段は、前記検査対象に対する前記撮像手段のピントが合うときに撮像が行われるように、前記巻芯の回転角度に応じて、前記撮像手段による撮像のタイミングを制御することを特徴とする検査装置。
【0015】
尚、「巻芯に巻き付けられた」とあるのは、自身の下層に位置する巻芯の外周面やシートに対し浮き上がることなく、密着していることを意味する。
【0016】
上記手段1によれば、巻芯に巻き付けられた電極シートやセパレータシートを検査対象として、当該検査対象を撮像手段によって撮像し、この撮像により得られた画像に基づき、良否判定手段が検査対象の良否を判定する。すなわち、良否判定手段は、実際に巻き取られた状態の検査対象に対し、良否の判定を行う。良否判定は、例えば、シートの巻きずれの有無に関して行ってもよいし、電極シートにおける活物質の塗布された部位(活物質塗工部)の位置や電極シートに設けられたタブの位置など、その他の項目に関して行ってもよい。実際に巻き取られた状態の検査対象に対し良否判定を行うことで、巻回素子の品質に関する良否をより正確に判定することができる。
【0017】
また、上記手段1によれば、巻芯における各シートの巻き取られる外周面は、断面非円形状をなしており、巻芯の外周面から撮像手段までの距離(以下、「両者間距離」と称することがある)は、巻芯の回転角度に応じて変動する。この点を利用して、撮像タイミング制御手段は、検査対象に対する撮像手段のピントが合うときに撮像が行われるように、巻芯の回転角度に応じて、撮像手段による撮像のタイミングを制御する。例えば、各シートの巻取りが進むにつれて、巻芯に巻回された各シートが厚くなった(各シートの巻取量が多くなった)場合、撮像タイミング制御手段は、巻芯の回転角度が所定角度となり、両者間距離が比較的大きなものとなったときに、撮像を実行させる。また、例えば、各シートの巻取開始直後であり、巻芯に巻回された各シートが薄い場合、撮像タイミング制御手段は、巻芯の回転角度が所定角度となり、両者間距離が比較的小さなものとなったときに、撮像を実行させる。これにより、被写界深度を浅くして計測分解能を高めつつ、検査対象に対しより確実にピントを合わせることができる。すなわち、いわばトレードオフの関係にある、計測分解能を高めること、及び、被写界深度を深くすること(ピントの合う範囲を広げること)の双方を同時に実現した場合と同様の効果を得ることができる。その結果、検査に係る信頼性を十分に高めることができる。
【0018】
手段2.前記撮像手段は、所定のレンズを有するとともに、当該レンズの光軸方向に沿って前記巻芯に対し相対移動可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の検査装置。
【0019】
上記手段2によれば、巻回素子が大型なものである場合など、巻回開始から巻回終了までの間に、巻取中における各シートの径の変動が比較的大きくなるような場合であっても、巻芯に対し撮像手段が相対移動することで、検査対象となる各シートに対しより確実にピントを合わせることができる。従って、様々なサイズの巻回素子を精度よく検査することができる。
【0020】
手段3.前記セパレータシートは、透明又は半透明であり、
前記撮像手段は、前記両電極シートのうちの少なくとも一方を前記セパレータシートを透過して撮像することで、前記両電極シート及び前記セパレータシートを一度に撮像するように構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の検査装置。
【0021】
上記手段3によれば、両電極シート及びセパレータシートを一度に撮像することができる。従って、少ない撮像回数で検査に必要な画像を得ることができ、検査効率を向上させることができる。
【0022】
手段4.前記撮像手段による撮像のタイミングを予め取得するための教示モードにて動作可能に構成されており、
前記教示モードにおいては、前記巻芯により前記各シートを巻取っている状態で前記撮像手段により前記検査対象を連続撮像するとともに、連続撮像により得られた複数の前記画像のうち前記検査対象に対する前記撮像手段のピントが合っているものを検出し、かつ、当該ピントが合っている前記画像を得たときの前記巻芯の回転角度を取得し、
前記撮像タイミング制御手段は、前記教示モードにて予め取得された前記巻芯の回転角度に基づき、前記撮像手段による撮像のタイミングを制御することを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の検査装置。
【0023】
上記手段4によれば、実際にシートを巻回することで得た、ピントが合うときの巻芯の回転角度に基づき、撮像のタイミングが制御される。そのため、シートが巻回される部位の経時的な形状変化やシートの硬さ、厚さなどの要素を踏まえたより適切なタイミングで撮像を行うことができる。これにより、ピントの合った画像をより確実に得ることができ、検査に係る信頼性をさらに高めることができる。
【0024】
手段5.前記教示モードにおいては、前記画像の輝度に基づき、複数の前記画像のうち前記検査対象に対する前記撮像手段のピントが合っているものを検出するように構成されていることを特徴とする手段4に記載の検査装置。
【0025】
撮像手段のピントが合っている場合における画像と、ピントが合っていない場合における画像とを比較すると、輝度の面で両者には差がある。例えば、ピントが合っている場合における画像は、輝度がより高かったり、輝度の変化がより急峻になったりする。
【0026】
この点を利用して、上記手段5によれば、画像の輝度に基づき、ピントが合っている画像を検出する。従って、ピントが合っている画像をより容易に検出することができる。その結果、適切な撮像タイミングをより容易に、かつ、より確実に取得することができる。
【0027】
手段6.手段1乃至5のいずれかに記載の検査装置を備えることを特徴とする巻回装置。
【0028】
上記手段6によれば、基本的には上記手段1等と同様の作用効果が奏されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】電池素子の構成を示す斜視模式図である。
図2】電池素子の構成を示す平面模式図である。
図3】巻回装置の概略構成図である。
図4】巻回部の概略構成図である。
図5】カメラなどの電気的構成を示すブロック図である。
図6】巻回工程のフローチャートである。
図7】教示モード時処理のフローチャートである。
図8】検査処理のフローチャートである。
図9】巻回モード時処理のフローチャートである。
図10】各種シートの巻回を開始した直後において、ピントの合った画像が得られるときにおける巻芯の角度などを示す模式図である。
図11】各種シートの巻回が終了する直前において、ピントの合った画像が得られるときにおける巻芯の角度などを示す模式図である。
図12】カメラによって得られる画像の模式図である。
図13】巻回が開始される際の巻回部の概略構成図である。
図14】セパレータシートが切断される際の巻回部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、巻回装置によって得られる巻回素子としてのリチウムイオン電池素子の構成について説明する。
【0031】
図1及び図2に示すように、リチウムイオン電池素子1(以下、単に「電池素子1」という)は、2枚のセパレータシート2,3を介して、正電極シート4及び負電極シート5が重ね合わされた状態で巻回されることにより製造される。尚、以下においては、セパレータシート2,3及び電極シート4,5を総称する場合、「各種シート2〜5」ということがある。
【0032】
セパレータシート2,3は、それぞれ同一の幅を有する帯状をなしており、異なる電極シート4,5同士が互いに接触して短絡を起こしてしまうのを防止すべく、ポリプロピレン(PP)等の絶縁素材により構成されている。セパレータシート2,3は、透明又は半透明である。従って、セパレータシート2,3を通して、正電極シート4や負電極シート5を視認することができるようになっている。
【0033】
電極シート4,5は、薄板状の金属シートよりなり、その表裏両面には活物質が塗布されている。正電極シート4には例えばアルミニウム箔シートが用いられ、その表裏両面に正極活物質(例えば、マンガン酸リチウム粒子等)が塗布されている。負電極シート5には例えば銅箔シートが用いられ、その表裏両面に負極活物質(例えば、活性炭等)が塗布されている。
【0034】
電極シート4,5は、連続塗工形態の電極シートであり、シート幅方向における所定部分が活物質塗工部4a,5a(図2中、散点模様を付した部位)となり、残りの部分が活物質不塗工部4b,5bとなっている。そして、活物質塗工部4a,5aを介して、正電極シート4及び負電極シート5間におけるイオン交換ができるようになっている。より詳しくは、充電時には、正電極シート4側から負電極シート5側へとイオンが移動し、放電時には、負電極シート5側から正電極シート4側へとイオンが移動する。
【0035】
また、負電極シート5は、セパレータシート2,3よりも幅狭とされ、正電極シート4は、負電極シート5よりも幅狭とされている。そして、電池素子1においては、負電極シート5で正電極シート4が覆われた状態になっている。これにより、正電極シート4が負電極シート5で覆われないことに伴う不具合(例えば、正電極シート4に針状の析出物が形成され、セパレータシート2,3に傷がついてしまうこと等)が抑制され、電池素子1の品質向上が図られている。
【0036】
さらに、正電極シート4の幅方向一端縁からは図示しない複数の正極リードが延出するとともに、負電極シート5の幅方向他端縁からは図示しない複数の負極リードが延出している。
【0037】
リチウムイオン電池を得るに際しては、電池素子1が金属製で筒状をなす図示しない電池容器(ケース)内に配設されるとともに、前記正極リード及び負極リードがそれぞれまとめられる。そして、まとめられた正極リードを正極端子部品(図示せず)に接続するとともに、同じくまとめられた負極リードを負極端子部品(図示せず)に接続し、両端子部品が前記電池容器の両端開口に塞ぐように設けられることで、リチウムイオン電池を得ることができる。
【0038】
次に、電池素子1を製造するための巻回装置10について説明する。図3に示すように、巻回装置10は、各種シート2〜5を巻回するための巻回部11と、正電極シート4を巻回部11へ供給するための正電極シート供給機構31と、負電極シート5を巻回部11へ供給するための負電極シート供給機構41と、セパレータシート2,3をそれぞれ巻回部11へ供給するためのセパレータ供給機構51,61と、良否判定手段及び撮像タイミング制御手段としての制御装置81とを備えている。尚、上記巻回部11や各供給機構31,41,51,61など、巻回装置10内の各種装置は、制御装置81により動作制御される構成となっている。
【0039】
正電極シート供給機構31は、正電極シート4がロール状に巻回されてなる正電極シート原反32を備えている。正電極シート原反32は、図示しない駆動手段によって回転可能な支持軸33により支持されている。支持軸33の回転に伴い、正電極シート原反32から正電極シート4が引き出される。
【0040】
また、正電極シート供給機構31は、シート挿入機構71と、シート切断カッタ72と、テンション付与機構73と、バッファ機構75とを備えている。
【0041】
シート挿入機構71は、正電極シート4を巻回部11へ供給するものであり、正電極シート4の搬送経路に沿って、巻回部11に接近する接近位置と、巻回部11から離間する離間位置との間を移動可能に構成されている。シート挿入機構71は、正電極シート4を把持可能な一対のチャック71a,71bを備えている。チャック71a,71bは、図示しない駆動手段により開閉動作可能に構成されている。そして、正電極シート4を巻回部11へ供給する際には、チャック71a,71bにより正電極シート4を把持した上で、シート挿入機構71が巻回部11側に接近するようになっている。
【0042】
シート切断カッタ72は、正電極シート4を切断するためのものであり、正電極シート4の表裏両側にそれぞれ位置する一対の刃部72a,72bを備えている。シート切断カッタ72は、その一対の刃部72a,72bが正電極シート4を挟むように位置するシート切断位置と、正電極シート4の搬送経路外へ退避する退避位置との間を移動可能に構成されている。
【0043】
尚、正電極シート4の切断は、前記チャック71a,71bにより正電極シート4が把持された状態で行われるようになっている。また、巻回部11へと正電極シート4を供給すべく、シート挿入機構71が巻回部11側へ接近移動する際には、一対の刃部72a,72bがそれぞれ正電極シート4の搬送経路から離間することで、シート挿入機構71の移動を阻害しないようになっている。
【0044】
テンション付与機構73は、一対のローラ73a,73bと、両ローラ73a,73b間において揺動自在に設けられたダンサローラ73cとを有している。ダンサローラ73cは、所定の定トルクモータ(図示せず)により動作し、正電極シート4に対し常に一定の張力を付与するように構成されている。正電極シート4に張力が付与されることで、正電極シート4の弛み防止が図られている。
【0045】
バッファ機構75は、正電極シート原反32から送り出された正電極シート4を一旦貯留するものである。バッファ機構75は、一対の従動ローラ75a,75bと、両ローラ75a,75b間において上下方向に変位可能に設けられた昇降ローラ75cとを有している。昇降ローラ75cは、正電極シート4の貯留量に基づき上下位置が変位する。
【0046】
負電極シート供給機構41は、その最上流側において、負電極シート5がロール状に巻回されてなる負電極シート原反42を備えている。負電極シート原反42は、図示しない駆動手段によって回転可能な支持軸43により支持されている。支持軸43の回転に伴い、負電極シート原反42から負電極シート5が引き出される。
【0047】
また、負電極シート供給機構41は、正電極シート供給機構31と同様に、シート挿入機構71、シート切断カッタ72、テンション付与機構73及びバッファ機構75を備えている。これらは、負電極シート5を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。従って、これらについての詳細な説明は省略する。
【0048】
一方、セパレータ供給機構51,61は、それぞれセパレータシート2,3がロール状に巻回されてなるセパレータ原反52,62を備えている。セパレータ原反52,62は、自由回転可能な状態で支持されており、ここから適宜セパレータシート2,3が引き出される。
【0049】
さらに、セパレータ供給機構51,61は、電極シート供給機構31,41と同様に、テンション付与機構73を備えている。当該テンション付与機構73は、セパレータシート2,3を対象として機能する点を除き、正電極シート供給機構31に設けられたものと同様である。従って、これについての詳細な説明は省略する。
【0050】
また、各種シート2〜5の搬送経路の途中には、一対のニップローラ78a,78bが設けられている。ニップローラ78a,78bは、各種シート2〜5が同一の搬送経路に沿って搬送されるように各種シート2〜5を重ねた状態とするものである。巻回部11に対しては、ニップローラ78a,78bにより重ねられた状態の各種シート2〜5が供給される。
【0051】
加えて、ニップローラ78a,78bの回転量(本実施形態では、ニップローラ78bの回転量)は、図示しないニップローラ用エンコーダにより把握可能となっている。そして、当該ニップローラ用エンコーダからニップローラ78bの回転量に関する情報が制御装置81へと入力されるようになっている。尚、ニップローラ78bの回転量は、各種シート2〜5の送り量に対応したものとなる。
【0052】
次に、巻回部11の構成について説明する。図4に示すように、巻回部11は、図示しない駆動機構により回転可能に設けられた相対向する2枚の円盤状のテーブルからなるターレット12と、当該ターレット12の回転方向に180°間隔で設けられた2つの巻芯13,14と、チャック部15a,15bと、セパレータカッタ16と、巻回後の各種シート2〜5がばらけるのを抑えるための押えローラ17と、所定の固定用テープを貼付するためのテープ貼付機構18とを備えている。
【0053】
巻芯13,14は、それぞれ自身の外周側において各種シート2〜5を巻取るためのものであり、図示しない駆動機構により自身の中心軸を回転軸として回転可能に構成されている。巻芯13,14の回転量は、図示しない巻芯用エンコーダにより検出可能となっており、当該巻芯用エンコーダから巻芯13,14の回転量に関する情報が制御装置81へと入力されるようになっている。
【0054】
また、巻芯13,14は、ターレット12の軸線方向(図4等の紙面奥行方向)に沿って、ターレット12を構成する一方のテーブルに対し出没可能に設けられている。尚、巻芯13,14は、前記一方のテーブルから突出した状態となったときに、その先端部が他方のテーブルに形成された受け用の穴に挿通され、両テーブルによって回転可能な状態で支持されるようになっている。
【0055】
加えて、巻芯13,14は、それぞれ回転軸と直交する断面において外形線が非円形状をなすように構成されている。本実施形態において、巻芯13,14は、自身の回転軸と直交する断面において、楕円形状をなしている。そのため、本実施形態では、巻芯13,14の回転に伴い、巻芯13,14の外周面から後述するカメラ20までの距離が変動する。従って、巻芯13,14の回転に伴い、巻芯13,14に巻き付けられた各種シート2〜5からカメラ20までの距離も変動する。
【0056】
さらに、巻芯13(14)は、それぞれ自身の軸線方向(図4の紙面奥行方向)に沿って延びる一対の芯片13a,13b(14a,14b)を備えている。芯片13a,13b(14a,14b)間には隙間13c(14c)が形成されている。
【0057】
また、巻芯13,14は、ターレット12が回転することにより、巻回ポジションP1と、取外しポジションP2との間を旋回移動可能に構成されている。
【0058】
巻回ポジションP1は、巻芯13,14により各種シート2〜5を巻回するポジションである。巻回ポジションP1に対し上記各供給機構31,41,51,61から各種シート2〜5が供給される。
【0059】
取外しポジションP2は、巻回後の各種シート2〜5、すなわち電池素子1の取外しを行うためのポジションである。取外しポジションP2の周辺部には、巻芯13,14から電池素子1の取外しを行うための取外装置(不図示)等が設けられている。
【0060】
チャック部15a,15bは、巻回ポジションP1及び取外しポジションP2間においてセパレータシート2,3を挟持するためのものである。チャック部15a,15bは、図示しない駆動手段によって、ターレット12や巻芯13,14の回転軸と平行な回動軸を中心として旋回移動可能に構成されている。そして、チャック部15a,15bは、それぞれ挟持位置及び退避位置の間で移動可能とされている。チャック部15a,15bがそれぞれ挟持位置に移動すると、チャック部15a,15bによってニップローラ78a,78bから取外しポジションP2にかけて配されたセパレータシート2,3を挟持することが可能となる(図13参照)。一方、チャック部15a,15bは、それぞれ退避位置に移動すると、巻芯13,14やセパレータシート2,3等の移動を妨げない位置に配置される(図3参照)。
【0061】
セパレータカッタ16は、巻回ポジションP1及び取外しポジションP2間に配置され、チャック部15a,15bよりも取外しポジションP2側に設けられている。セパレータカッタ16は、所定の上方位置と下方位置との間で上下方向に沿って往復移動可能となっており、上方位置から下方位置へと移動することでセパレータシート2,3を切断する。
【0062】
押えローラ17は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、ターレット12に接近し各種シート2〜5を押さえる近接位置と、ターレット12から離間し巻芯13,14の移動を妨げない退避位置との間で移動可能に構成されている。
【0063】
テープ貼付機構18は、取外しポジションP2の近傍に配置されており、巻回終了時にセパレータシート2,3の終端部に前記固定用テープを貼付する。前記固定用テープの貼付により、電池素子1の巻止めがなされる。
【0064】
さらに、巻回部11は、照射手段としての照明装置19a,19b及び撮像手段としてのカメラ20を備えている。照明装置19a,19b及びカメラ20は、それぞれ巻回ポジションP1に対応して配設されている。
【0065】
照明装置19a,19bは、巻回ポジションP1に位置する巻芯13,14に巻回された、検査対象としての各種シート2〜5における少なくとも幅方向端縁を含む部位に対し所定の光(例えば、可視光や近赤外光など)を照射する。照明装置19a,19bは、少なくとも巻芯13,14の回転軸から巻芯13,14の短径未満だけずれた位置に光を照射する。これにより、巻芯13,14による各種シート2〜5の巻取中に、常に各種シート2〜5を照らすことができるようになっている。
【0066】
カメラ20は、照明装置19a,19bから照射される光の波長領域に感度を有するものであり、少なくとも照明装置19a,19bにより光の照らされた各種シート2〜5(検査対象)を撮像するものである。
【0067】
本実施形態において、照明装置19a,19b及びカメラ20は、二組設けられており、一組は、各種シート2〜5の幅方向一端縁に対応して設けられ、その他の一組は、各種シート2〜5の幅方向他端縁に対応して設けられている。
【0068】
さらに、カメラ20による撮像範囲では、最外周に正電極シート4が位置し、その下にセパレータシート3が位置し、その下に負電極シート5が位置し、その下にセパレータシート2が位置した状態となっている。従って、カメラ20によって、少なくとも正電極シート4と、セパレータシート3と、セパレータシート3を透過して視認可能な負電極シート5と、セパレータシート2とが一度に撮像される。
【0069】
カメラ20は、図5に示すように、レンズ21、撮像素子22、トリガ信号出力部23、画像メモリ24、フォーカスサーチ部25、演算部26及び出力部27を備えている。
【0070】
レンズ21は、照明装置19a,19bから照射される光のうち、各種シート2〜5などを反射した光を集め、撮像素子22に対し像を結ぶものである。レンズ21は、一般レンズであってもよいし、テレセントリックレンズであってもよい。
【0071】
撮像素子22は、レンズ21を通った光を電気信号に変換するものであり、例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサにより構成されている。
【0072】
トリガ信号出力部23は、撮像素子22に対しトリガ信号を出力する。トリガ信号が出力される度に、撮像素子22が露光されるとともに、撮像素子22から各種シート2〜5に係る画像(画像データ)が画像メモリ24へと出力される。得られる画像には、少なくとも正電極シート4と、セパレータシート3と、セパレータシート3を透過して撮像された負電極シート5と、セパレータシート2とが含まれる(図12参照)。但し、セパレータシート2,3の各エッジ部2E,3E(幅方向端縁)は通常重なるため、画像中においてセパレータシート2を判別できないことがある。尚、本実施形態において、カメラ20における被写界深度は比較的浅くなるように構成されており、得られる画像は解像度の比較的高いもの、つまり、計測分解能が比較的高いものとなっている。
【0073】
また、カメラ20には、制御装置81から後述する教示モード信号又は撮像実行信号が入力されるが、教示モード信号が入力されると、トリガ信号出力部23は、後述する教示モード終了信号が入力されるまでの間、一定の短時間ごとにトリガ信号を繰り返し出力する。これにより、連続撮像が実行され、撮像素子22から複数の画像が画像メモリ24へと出力される。一方、カメラ20に対し撮像実行信号が入力されると、トリガ信号出力部23は、1のトリガ信号を出力する。これにより、撮像が一度のみ実行され、撮像素子22から1の画像が画像メモリ24へと出力される。
【0074】
画像メモリ24は、撮像素子22から入力された画像を記憶する。また、画像メモリ24には、撮像順を示す番号が各画像に関連付けられた上で記憶される。撮像順を示す番号に関する処理は、演算部26によって実行される。
【0075】
フォーカスサーチ部25は、制御装置81から教示モード信号が入力された場合にのみ動作する。フォーカスサーチ部25は、連続撮像により得られた複数の画像のうち各種シート2〜5に対するピントが合っているものを検出する。詳述すると、フォーカスサーチ部25は、各種シート2〜5の巻回時において、巻芯13,14が1回転する間に得られた複数の画像に基づき、画像ごとに輝度値に基づく値をそれぞれ算出する。そして、算出した値が最も大きなものとなる画像を、ピントが合っている画像として検出する。これは、ピントの合っている画像は、基本的に各画素の輝度値が高くなる点による。
【0076】
尚、仮に算出した値が最も大きなものとなる画像が複数ある場合には、そのうちの1つをピントの合っている画像として検出する。結果的に、フォーカスサーチ部25は、巻芯13,14の各回転に対し、ピントの合った画像を1つずつ検出する。尚、輝度値に基づく値とあるのは、例えば、画像を構成する複数の画素における輝度値の平均値や、隣接する所定の画素間における輝度値の差などを挙げることができる。
【0077】
演算部26は、制御装置81から教示モード信号が入力された場合、画像メモリ24に対し画像を記憶する際に、当該画像に対し、当該画像の撮像順を示す番号を関連付ける処理を実行する。演算部26には、撮像順を把握するためのカウンタが設けられており、トリガ信号出力部23からトリガ信号が出力される度に、前記カウンタの値を1つだけ増大させる処理を行う。尚、教示モード終了信号が入力されると、カウンタの値は初期値にリセットされる。
【0078】
また、演算部26は、制御装置81から教示モード信号が入力された場合、フォーカスサーチ部25により検出されたピントの合っている画像と当該画像の撮像順を示す番号とを画像メモリ24から出力部27へと送る。一方、演算部26は、制御装置81から撮像実行信号が入力された場合、画像メモリ24に記憶された画像を出力部27へと送る。
【0079】
出力部27は、画像及び当該画像の撮像順を示す番号、又は、画像のみを制御装置81へと送信するものである。本実施形態において、出力部27から制御装置81へと送られる画像の数は、各種シート2〜5を巻取る際における巻芯13,14の回転数以下となる。そのため、出力部27や出力部27及び制御装置81を結ぶ伝送路として、処理能力や通信能力などの優れた特別なものを用いる必要はない。従って、一般的な伝送系の技術(例えば、一般的な画像伝送技術)を利用して、出力部27から制御装置81へと画像を送ることができる。
【0080】
次いで、制御装置81について説明する。制御装置81は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、演算データ等を長期記憶するハードディスクなどを備えている。制御装置81は、上記の通り、巻回部11や各供給機構31,41,51,61など巻回装置10内の各種装置の動作を制御する。
【0081】
また、制御装置81は、巻回装置10の動作モードを教示モード又は巻回モードに切換えることができるように構成されている。教示モードは、電池素子1を製造しつつ、巻回モードにおけるカメラ20の撮像タイミングを取得することを目的とした動作方式である。巻回モードは、教示モードにて取得された撮像タイミングを利用して、電池素子1を製造するときに用いられる動作方式である。制御装置81は、巻回装置10を両モードのいずれかで動作させる場合であっても、カメラ20から送られた画像に基づき各種シート2〜5の位置ずれなどに関する検査を行う。尚、検査の具体的な手法については後述する。
【0082】
巻回装置10の動作モードを教示モードとするか巻回モードとするかについては、図示しない所定の入力装置から制御装置81に対する入力によって決定される。入力内容は、制御装置81のハードディスクなどに記憶される。
【0083】
制御装置81は、巻回装置10を教示モードで動作させる場合に、次のように動作する。すなわち、制御装置81は、各種シート2〜5の巻回工程を開始するとともに、カメラ20に対し教示モード信号を出力する。
【0084】
教示モード信号の出力に伴い、制御装置81には、カメラ20から画像及び当該画像の撮像順を示す番号が順次入力される。入力される画像はピントの合った画像である。制御装置81は、入力された画像に基づき各種シート2〜5の位置ずれなどの検査を行う。また、入力された撮像順を示す番号に基づき、この番号に係る画像の撮像を行ったときの巻芯13,14の回転角度の累計を取得する。これは、例えば、予め設定された、撮像順を示す番号と回転角度の累計との関係を示すテーブルに基づき行われる。そして、制御装置81は、取得した回転角度の累計を、撮像実行角度としてハードディスクなどに記憶する。結果的に、入力された画像と同数の撮像実行角度が記憶されることとなる。
【0085】
また、制御装置81は、巻回装置10を巻回モードで動作させる場合、次のように動作する。すなわち、制御装置81は、各種シート2〜5の巻回工程を開始するととともに、巻回工程の開始からの巻芯13,14の回転角度の累計が教示モードにて得られた撮像実行角度と等しくなる度に、撮像実行信号を出力する。これにより、カメラ20によって、ピントが合う範囲に位置する各種シート2〜5が撮像される。そして、制御装置81には、カメラ20からピントの合った画像が順次入力される。制御装置81は、入力された画像に基づき各種シート2〜5の位置ずれなどの検査を行う。
【0086】
本実施形態では、カメラ20及び制御装置81によって、電池素子1の検査を行うための検査装置100が構成されている。
【0087】
次に、上記の巻回装置10による各種シート2〜5の巻回工程について説明する。尚、巻回工程に先立って、一方の巻芯13(14)における隙間13c(14c)に、セパレータシート2,3が予め配置され、また、当該セパレータシート2,3は、チャック部15a,15bにより保持された状態となっている(図13参照)。
【0088】
巻回工程では、図6に示すように、まず、ステップS11において、一方の巻芯13(14)を所定数だけ回転させることで、一方の巻芯13(14)に対しセパレータシート2,3が所定量だけ巻き取られた状態とする。その後、チャック部15a,15bをそれぞれ退避位置に移動させる。
【0089】
次いで、ステップS12において、負電極シート供給機構41のシート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し負電極シート5が供給される。具体的には、負電極シート5を把持するシート挿入機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に負電極シート5が挿入されることで、負電極シート5が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による負電極シート5の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
【0090】
続くステップS13では、負電極シート5の供給後、一方の巻芯13(14)が所定数回転(例えば、1回転)した段階で、シート挿入機構71により一方の巻芯13(14)側に対し、正電極シート4が供給される。具体的には、正電極シート4を把持するシート挿入機構71が巻回部11側に接近し、セパレータシート2,3間に正電極シート4が挿入されることで、正電極シート4が供給される。尚、挿入後、シート挿入機構71による正電極シート4の把持が解除されるとともに、シート挿入機構71が元の位置に戻る。
【0091】
次に、ステップS14において、制御装置81に対する入力内容に基づき、選択されている動作モードが教示モードであるか否かを判定する。選択されている動作モードが教示モードである場合(ステップS14:YES)、ステップS15へと移行し、巻回装置10を教示モードで動作させるべく、教示モード時処理を実行する。
【0092】
教示モード時処理では、図7に示すように、まず、ステップS31において、一方の巻芯13(14)を一定速で回転するように制御し、各種シート2〜5を巻回していく。各種シート2〜5を巻回する際における巻芯13,14の回転速度は、教示モード及び巻回モードで同一とされている。
【0093】
次に、ステップS32において、カメラ20に対し教示モード信号を出力する。これにより、カメラ20によって巻回中の各種シート2〜5が連続撮像される。そして、カメラ20から制御装置81に対し、フォーカスサーチ部25によってピントが合っているものと検出された画像と当該画像の撮像順を示す番号とが入力されるようになる。
【0094】
次いで、ステップS33にて、正電極シート4の送り量が予め設定された所定量に到達したか否かを判定する。すなわち、教示モード処理の終了条件を満たしたか否かを判定する。正電極シート4の送り量としては、前記ニップローラ用エンコーダにより取得された、巻回開始からの各種シート2〜5の送り量が用いられる。また、この所定量は、電池素子1ひとつ分を構成する正電極シート4の長さに対応するものとされる。正電極シート4が前記所定量だけ巻芯13,14へと送られることで、一素子分の正電極シート4の終端部がシート切断カッタ72に対応して配置された状態となる。
【0095】
ステップS33にて否定判定された場合には、ステップS34に移行する。ステップS34では、カメラ20から画像等が入力されたか否かの判定が実行される。ステップS34で否定判定されると、ステップS33に戻る。一方、ステップS34にて肯定判定されると、ステップS35に移行し、検査処理を実行する。
【0096】
検査処理では、図8に示すように、まず、ステップS101において、入力された画像に基づき、セパレータシート3のエッジ部3E(幅方向端縁部)、セパレータシート2のエッジ部2E、正電極シート4のエッジ部4E、及び、負電極シート5のエッジ部5Eの抽出を行う(図12参照)。尚、エッジ部2E,3Eが重なりエッジ部2Eを抽出できない場合には、エッジ部3Eをエッジ部2Eとして扱う。
【0097】
続くステップS102では、入力された画像を基に、正電極シート4における活物質塗工部4a及び活物質不塗工部4bの境界部4Tと、負電極シート5における活物質塗工部5a及び活物質不塗工部5bの境界部5Tとを抽出する(図12参照)。
【0098】
次に、ステップS103において、上記ステップS101,102で抽出したエッジ部2E,3E,4E,5Eや境界部4T,5Tを基に各種距離の演算が行われる。つまり、一方の巻芯13(14)に巻き付けられた各種シート2〜5の位置ずれ量が演算される。
【0099】
具体的には、エッジ部3Eを基準として、シート幅方向における境界部4Tまでの距離L1と、シート幅方向におけるエッジ部4Eまでの距離L2と、シート幅方向における境界部5Tまでの距離L3と、シート幅方向におけるエッジ部5Eまでの距離L4と、シート幅方向におけるエッジ部2Eまでの距離(不図示)を算出する(図12参照)。
【0100】
その後、ステップS104において、上記ステップS103で算出した各距離を基に、各距離が予め設定された許容範囲にあるか否かを判定する。
【0101】
ここで各距離のうちのいずれかが許容範囲にないと判定された場合、すなわち、各種シート2〜5における巻きずれや活物質塗工部4a,5aの塗布位置ずれが発生していると考えられる場合には、ステップS105において、不良と判定し、検査処理を終了する。
【0102】
一方、ステップS104において、各距離のいずれもが許容範囲にあると判定された場合には、ステップS106において、良と判定し、検査処理を終了する。
【0103】
図7に戻り、検査処理の実行後、ステップS36に移行し、直前の検査処理において良判定されたか否かを判定する。ステップS36にて否定判定された場合、すなわち、検査処理にて不良判定された場合には、ステップS37に移行し、巻芯13,14の回転を停止することで、各種シート2〜5の巻回を途中で中止する。また、後述するステップS39の処理を既に実行しており、撮像実行角度をハードディスクなどに記憶している場合には、記憶された撮像実行角度を破棄する。その上で、ステップS38において、この巻回途中の電池素子1を不良品と判定し、ステップS42へと移行する。
【0104】
一方、ステップS36にて肯定判定された場合、すなわち、検査処理にて良判定された場合には、ステップS39に移行し、入力された撮像順を示す番号に基づき、この番号に係る画像の撮像を行ったときの巻芯13,14の回転角度の累計を取得する。そして、取得した回転角度の累計を、撮像実行角度としてハードディスクなどに記憶する。
【0105】
ステップS39の後、ステップS33へと戻る。このように教示モード処理では、正電極シート4の送り量が所定量となるまでの間、カメラ20から画像等が入力される度に、検査処理にて不良判定がなされない限り、ステップS35,S39の処理が繰り返し行われる。その結果、複数の撮像実行角度が取得されるとともに、取得された複数の撮像実行角度がハードディスクなどに記憶される。また、複数のピントの合った画像に対し検査処理がそれぞれ実行される。
【0106】
撮像実行角度の記憶や検査処理が順調に行われ、正電極シート4の送り量が所定量になると(ステップS33:YES)、ステップS40にて、一方の巻芯13,14の回転を停止する。次いで、ステップS41にて、巻回途中の各種シート2〜5からなる電池素子1を良品と判定し、ステップS42へと移行する。
【0107】
そして、ステップS42において教示モード終了信号をカメラ20へと出力し、教示モード時処理を終了する。ステップS42の処理により、トリガ信号出力部23からのトリガ信号の出力が停止される。
【0108】
図6に戻り、ステップS14にて否定判定された場合には、ステップS16へと移行し、制御装置81に対する入力内容に基づき、選択されている動作モードが巻回モードであるか否かを判定する。ステップS16にて否定判定された場合、すなわち、動作モードが選択されていない場合には、ステップS19にて異常時処理を実行し、巻回工程を終了する。異常時処理では、例えば、動作モードが選択されていない旨や撮像実行角度が記憶されていない旨を作業者等に報知するための処理などが実行される。
【0109】
一方、ステップS16にて肯定判定された場合には、ステップS17へと移行し、撮像実行角度が既に記憶されているか否か、つまり、巻回モードにて撮像を行うタイミングに関する情報が既に記憶されているか否かを判定する。ステップS17で否定判定された場合には、ステップS19にて異常時処理を実行し、巻回工程を終了する。
【0110】
これに対し、ステップS17で肯定判定された場合には、ステップS18に移行し、巻回装置10を巻回モードで動作させるべく、巻回モード時処理を実行する。
【0111】
巻回モード時処理では、図9に示すように、まず、ステップS51において、一方の巻芯13(14)を一定速で回転するように制御し、各種シート2〜5を巻回していく。
【0112】
次いで、ステップS52において、正電極シート4の送り量が予め設定された所定量に到達したか否かを判定する。すなわち、巻回モード時処理の終了条件を満たしたか否かを判定する。
【0113】
ステップS52にて否定判定された場合には、ステップS53において、各種シート2〜5の巻回開始からの一方の巻芯13(14)の累計回転角度が、予め記憶された複数の撮像実行角度のいずれかに到達したか否かを判定する。尚、後の処理におけるタイムラグなどを考慮して、一方の巻芯13(14)の累計回転角度が、撮像実行角度から所定値を減算したものに到達したか否かを判定してもよい。
【0114】
ステップS53にて否定判定されると、ステップS52へと戻る。一方、ステップS53にて肯定判定されると、ステップS54にて、撮像実行信号をカメラ20へと出力する。これにより、図10及び図11に示すように、カメラ20によってピントの合う範囲Rに位置する各種シート2〜5が撮像される。例えば、図10に示すように、各種シート2〜5の巻回を開始した直後では、一方の巻芯13(14)の外周面からカメラ20までの距離が比較的小さいときに、カメラ20のピントが合う範囲Rに各種シート2〜5が位置する。そのため、このときを撮像タイミングとして、カメラ20による撮像が実行される。一方、例えば、図11に示すように、各種シート2〜5の巻回が終了する直前では、一方の巻芯13(14)の外周面からカメラ20までの距離が比較的大きいときに、カメラ20のピントが合う範囲Rに各種シート2〜5が位置する。そのため、このときを撮像タイミングとして、カメラ20による撮像が実行される。
【0115】
図9に戻り、ステップS54に続くステップS55にて、正電極シート4の送り量が予め設定された所定量に到達したか否かを判定する。この判定は、カメラ20から画像が送られる前に、正電極シート4が一定量だけ巻回されたときに、巻回モード時処理を終了するために行われる。ステップS55にて肯定判定された場合には、ステップS61へと移行する。
【0116】
一方、ステップS55にて否定判定された場合には、ステップS56にてカメラ20から画像が入力されたか否かの判定が実行される。ステップS56にて否定判定されると、ステップS55へと戻る。これに対し、ステップS56にて肯定判定されると、ステップS57に移行し、上述した検査処理を実行する。
【0117】
検査処理の実行後、ステップS58に移行し、直前の検査処理において良判定されたか否かを判定する。ステップS58にて否定判定された場合、すなわち、検査処理にて不良判定された場合には、ステップS59に移行し、巻芯13,14の回転を停止することで、各種シート2〜5の巻回を途中で中止する。その上で、ステップS60において、この巻回途中の各種シート2〜5からなる電池素子1を不良品と判定し、巻回モード時処理を終了する。
【0118】
一方、ステップS58にて肯定判定された場合には、ステップS52へと戻る。結果として、巻回モード時処理においては、正電極シート4の送り量が所定量となるまでの間、検査処理にて不良判定がなされない限り、ステップS57の処理が繰り返し行われる。その結果、複数のピントの合った画像のそれぞれに対し検査処理が実行される。
【0119】
検査処理が順調に行われ、ステップS52又はステップS55にて肯定判定された場合には、ステップS61にて、一方の巻芯13,14の回転を停止する。次いで、ステップS62において、巻回途中の各種シート2〜5からなる電池素子1を良品と判定し、巻回モード時処理を終了する。
【0120】
図6に戻り、教示モード時処理、又は、巻回モード時処理を行った後、ステップS20にて、シート挿入機構71により正電極シート4が把持された上で、シート切断カッタ72により正電極シート4が切断される。尚、教示モード時処理又は巻回モード時処理にて、巻回途中の電池素子1が良品と判定されていれば、一素子分の正電極シート4の終端部にて切断される。一方、教示モード時処理又は巻回モード時処理にて、巻回途中の電池素子1が不良品と判定されていれば、前記終端部よりも手前の位置で正電極シート4が切断される。
【0121】
続くステップS21では、教示モード時処理又は巻回モード時処理にて良品判定が行われたか否かを判定する。ステップS21にて肯定判定された場合には、一方の巻芯13(14)の回転を再開させた上で、ステップS22へと移行する。
【0122】
一方、ステップS21にて否定判定された場合には、一方の巻芯13(14)の回転を再開させることなく、ステップS23へと移行する。すなわち、巻回途中の電池素子1が不良品と判定されている場合には、負電極シート5がこれ以上供給されないようにする。
【0123】
ステップS22では、供給開始からの負電極シート5の送り量が所定量に到達したか否かの判定が、当該条件を満たすまで繰り返し行われる。この所定量は、電池素子1ひとつ分を構成する負電極シート5の長さに対応するものとされる。負電極シート5の送り量は、前記ニップローラ用エンコーダにより取得された各種シート2〜5の送り量に基づき導出される。ステップS22で肯定判定された場合、すなわち、現在巻回されている一素子分の負電極シート5の終端部がシート切断カッタ72に到達した場合には、一方の巻芯13(14)の回転を一時停止させた上で、ステップS23へと移行する。
【0124】
ステップS23では、シート挿入機構71により負電極シート5が把持された上で、シート切断カッタ72により負電極シート5が切断される。
【0125】
次いで、ステップS24において、一方の巻芯13(14)の回転を再開させることにより、電極シート4,5の終端部分(巻き残し部分)が巻き取られる。
【0126】
ステップS24に続くステップS25では、セパレータシート2,3が切断されることなく、ターレット12が反時計回りに回転させられる。これにより、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)がセパレータ供給機構51,61からセパレータシート2,3を引き出しつつ、取外しポジションP2側へと移動していく。一方、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が、ターレット12の一方のテーブルに没した状態で、巻回ポジションP1側へと移動していく。
【0127】
続いて、ステップS26において、ターレット12の回転に併せて、各種シート2〜5の巻回されている一方の巻芯13(14)を回転させる。
【0128】
そして、次のステップS27において、巻終わり処理を実行することで、巻回工程を終了する。
【0129】
巻終わり処理では、まず、前記巻芯用エンコーダにより把握される、負電極シート5の切断時からの一方の巻芯13(14)の回転量が所定量に到達した時点で、一方の巻芯13(14)の回転を停止させる。尚、一方の巻芯13(14)の回転が停止する前、停止すると同時、又は、停止した後に、ターレット12の回転が停止されることとなる。
【0130】
一方の巻芯13(14)及びターレット12の回転が停止されると、巻回ポジションP1にあった一方の巻芯13(14)が取外しポジションP2に位置し、取外しポジションP2にあった他方の巻芯14(13)が巻回ポジションP1に位置した状態となる。
【0131】
この状態で、押えローラ17を一方の巻芯13(14)に接近させ、押えローラ17により各種シート2〜5を押さえる。また、チャック部15a,15bを退避位置から挟持位置へと移動させることで、両ポジションP1,P2間にてセパレータシート2,3を保持する。その上で、セパレータカッタ16がセパレータシート2,3に接近することにより、セパレータシート2,3が切断される(図14参照)。
【0132】
また、他方の巻芯14(13)がターレット12の一方のテーブルから突出することで、他方の巻芯14(13)の隙間14c(13c)にセパレータシート2,3が配置される。次回の巻回工程では、他方の巻芯14(13)が所定量だけ回転することにより、その外周にセパレータシート2,3が所定量だけ巻き付けられた状態となる。そして、このセパレータシート2,3が巻き付けられた他方の巻芯14(13)へと電極シート4,5が供給される。
【0133】
セパレータシート2,3の切断後、押えローラ17により各種シート2〜5を押えた状態のまま、一方の巻芯13(14)を回転させる。これにより、セパレータシート2,3及び電極シート4,5の終端部分がばらけることなく完全に巻取られる。その後、テープ貼付機構18により、セパレータシート2,3の終端部が前記固定用テープにより巻止めされ、巻終わり処理が終了される。巻止めされた電池素子1は、前記取外装置によって一方の巻芯13(14)から取外される。そして、良品と判定された電池素子1は、正規のラインへと送り出される。一方、不良品と判定された電池素子1は、所定の不良品排出機構へと送り出される。
【0134】
以上詳述したように、本実施形態によれば、巻芯13,14に巻き付けられた電極シート4,5やセパレータシート2,3を検査対象として、当該検査対象をカメラ20によって撮像し、この撮像により得られた画像に基づき、制御装置81が検査対象の良否を判定する。すなわち、制御装置81は、実際に巻き取られた状態の検査対象に対し、良否の判定を行う。このように実際に巻き取られた状態の検査対象に対し良否判定を行うことで、電池素子1の品質に関する良否をより正確に判定することができる。
【0135】
また、巻芯13,14における各種シート2〜5の巻き取られる外周面は、断面非円形状をなしており、巻芯13,14の外周面からカメラ20までの距離は、巻芯13,14の回転角度に応じて変動する。この点を利用して、制御装置81は、検査対象に対するカメラ20のピントが合うときに撮像が行われるように、巻芯13,14の回転角度に応じて、カメラ20による撮像のタイミングを制御する。本実施形態において、制御装置81は、巻芯13,14の累計回転角度が撮像実行角度に到達したときに、カメラ20による撮像を実行すべく、カメラ20に対し撮像実行信号を出力する。これにより、被写界深度を浅くして計測分解能を高めつつ、検査対象に対しより確実にピントを合わせることができる。すなわち、いわばトレードオフの関係にある、計測分解能を高めること、及び、被写界深度を深くすること(ピントの合う範囲を広げること)の双方を同時に実現した場合と同様の効果を得ることができる。その結果、検査に係る信頼性を十分に高めることができる。
【0136】
さらに、カメラ20によって、電極シート4,5及びセパレータシート2,3を一度に撮像することができる。従って、少ない撮像回数で検査に必要な画像を得ることができ、検査効率を向上させることができる。
【0137】
また、実際に各種シート2〜5を巻回することで得た撮像実行角度に基づき、撮像のタイミングが制御される。そのため、各種シート2〜5が巻回される部位の経時的な形状変化や各種シート2〜5の硬さ、厚さなどの要素を踏まえたより適切なタイミングで撮像を行うことができる。これにより、ピントの合った画像をより確実に得ることができ、検査に係る信頼性をさらに高めることができる。
【0138】
さらに、撮像実行角度を得るにあたっては、画像の輝度に基づき、ピントが合っている画像を検出する。従って、ピントが合っている画像をより容易に検出することができる。その結果、適切な撮像タイミングをより容易に、かつ、より確実に取得することができる。
【0139】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0140】
(a)上記実施形態では、教示モードにて巻回装置10を動作させ、実際に各種シート2〜5を巻回することで、撮像実行角度を取得するように構成されている。これに対し、巻芯13,14の形状や各種シート2〜5の厚さなどを踏まえて、計算などにより撮像実行角度を取得してもよい。すなわち、実際に各種シート2〜5を巻回することなく、撮像のタイミングを取得してもよい。そして、取得した撮像のタイミングに関する情報を制御装置81へと予め入力しておき、この情報に基づき、撮像のタイミングを制御してもよい。
【0141】
(b)上記実施形態では、得られた画像に基づき、各種シート2〜5の巻きずれや活物質塗工部4a,5aの塗布位置ずれに関し検査を行っているが、検査項目はこれらに限定されるものではない。従って、例えば、電極シート4,5に対しタブを設ける場合、得られた画像に基づき、電極シート4〜5の幅方向に沿ったタブの位置に関する検査を行ってもよい。タブとしては、電極シート4,5における活物質不塗工部4b,5bに溶接された溶接タブや、電極シート4,5の幅方向一端部に間欠的に切込みを設けることで形成された切込みタブなどがある。勿論、得られた画像に基づき、その他の項目に関する検査を行ってもよい。どのような検査項目であっても、ピントの合った画像に基づき検査を行うため、検査に係る信頼性を十分に高めることができる。
【0142】
(c)上記実施形態では特に記載していないが、カメラ20を、レンズ21の光軸方向に沿って巻芯13,14に対し相対移動可能に構成してもよい。このように構成することで、電池素子1が大型なものである場合など、巻回開始から巻回終了までの間に、巻取中における各種シート2〜5の径の変動が比較的大きくなるような場合であっても、巻芯13,14に対しカメラ20が相対移動することで、検査対象となる各種シート2〜5に対しより確実にピントを合わせることができる。従って、様々なサイズの電池素子1を精度よく検査することができる。
【0143】
尚、カメラ20は、各種シート2〜5の巻回に合わせて徐々に移動するものであってもよいし、各種シート2〜5の巻回量が所定量に達した段階で所定位置へと移動するものであってもよい。
【0144】
(d)上記実施形態では、カメラ20から制御装置81へと画像が出力され、制御装置81が画像に基づき各種シート2〜5の良否を判定している。これに対し、カメラ20(例えば、演算部26)が、画像に基づき各種シート2〜5の良否を判定するとともに、判定結果を制御装置81へと出力するように構成してもよい。この場合には、カメラ20から制御装置81に伝送されるデータ量をより小さなものとすることができ、処理負担の軽減を図ることができる。
【0145】
(e)上記実施形態では、各種シート2〜5における相対位置に基づき良否判定が行われているが、各種シート2〜5の絶対位置に基づき良否判定を行うこととしてもよい。この場合には、例えば、巻芯13,14に付された目印を用い、各種シート2〜5の絶対位置を得てもよい。
【0146】
また、複数のピントの合った画像同士を比較することで、良否判定を行うように構成してもよい。例えば、各種シート2〜5の巻回開始直後に得られた画像と、各種シート2〜5の巻回終了直前に得られた画像とを比較した場合に、各種シート2〜5の幅方向に沿った各種シート2〜5の位置の変動量が大きいときには、各種シート2〜5が巻芯13,14の回転軸に対し斜めに巻取られているものとして、不良と判定してもよい。このように構成することで、各種シート2〜5における全体的な位置変動の程度を把握することができ、電池素子1の良否をより正確に判定することができる。
【0147】
(f)上記実施形態では、セパレータシート2,3及び両電極シート4,5がそれぞれ同一の搬送経路を通って巻芯13,14へと供給されるように構成されている。そして、セパレータシート2,3及び両電極シート4,5を一度に撮像するように構成されている。これに対し、両セパレータシート2,3の一方及び両電極シート4,5の一方と、両セパレータシート2,3の他方及び両電極シート4,5の他方とがそれぞれ別々の搬送経路を通って巻芯へと供給されるように構成してもよい。また、この場合には、巻芯へと巻き付けられた両セパレータシート2,3の一方及び両電極シート4,5の一方と、巻芯へと巻き付けられた両セパレータシート2,3の他方及び両電極シート4,5の他方とを別々に撮像するように構成してもよい。すなわち、上記実施形態では、4枚のシートが一度に撮像されているが、2枚のシートを別々に撮像するように構成してもよい。
【0148】
(g)上記実施形態では、巻芯13,14として、各種シート2〜5の巻回される外周形状が楕円形状に構成されたものを採用しているが、巻芯13,14の形状はこれに限定されるものではない。従って、例えば外周形状が長方形状(扁平状)、多角形状、長円形状等となる巻芯を採用してもよい。
【0149】
(h)セパレータシート2,3や電極シート4,5の材質は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、セパレータシート2,3をPPにより形成することとしているが、他の絶縁性材料によってセパレータシート2,3を形成することとしてもよい。また、例えば、電極シート4,5に塗布される活物質を適宜変更してもよい。
【0150】
(i)上記実施形態において、巻回部11は、2つの巻芯13,14を備えた構成となっているが、巻芯の数はこれに限定されるものではなく、3つ以上の巻芯を備えた構成としてもよい。尚、巻芯が1つの場合、ターレット12等は省略可能である。
【0151】
(j)上記実施形態では、回転可能な巻芯13,14の外周に対し各種シート2〜5が直接巻回されるように構成されているが、回転可能な軸部及び当該軸部の外周に配置された筒状の巻芯コアにより巻芯を構成し、巻芯コアの外周面に対し各種シート2〜5が巻回されるようにしてもよい。この場合、巻芯コアの外周面が断面非円形状であればよい。
【符号の説明】
【0152】
1…電池素子(巻回素子)、2,3…セパレータシート、4…正電極シート、5…負電極シート、10…巻回装置、13,14…巻芯、19a,19b…照明装置(照射手段)、20…カメラ(撮像手段)、21…レンズ、81…制御装置(撮像タイミング制御手段、良否判定手段)、100…検査装置。
図1
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