(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された分岐チャンバによれば、各吹出し口に接続された複数の分岐ダクトへ送られる空気量を均一化できるが、給気量を多くしたり少なくしたりすることができない。すなわち、給気量を調整できない。このため、給気する必要がない空間にも空気を送る必要がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して、複数の分岐ダクトへ送られる空気量を調整できる分岐チャンバー及び建物の換気システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様の分岐チャンバーは、内部が空洞とされている筐体と、前記筐体の上板に形成され、前記筐体の内部へ空気を導入する吸気ダクトが接続される吸気口と、前記筐体の側板に形成され、吸気ダクトから吸気された空気を前記筐体の内部から分岐して排出する分岐ダクトが接続される複数の分岐口と、前記分岐ダクトへ排出される空気量を調整可能な流量調整機構と、を備えている。
【0007】
第1態様の分岐チャンバーは、流量調整機構を備えているので、筐体から分岐ダクトへ排出される空気量を調整できる。
【0008】
第2態様の分岐チャンバーは、前記流量調整機構は、前記分岐口のそれぞれに設けられ前記分岐口の開口率を個別に調整可能な塞ぎ板を有する。
【0009】
第2態様の分岐チャンバーは、塞ぎ板によって分岐口の開口率を個別に調整できる。このため、筐体から各分岐ダクトへ排出される空気量を個別に制御できる。これにより例えば分岐ダクトが開口する気積の大きい部屋への給気量を気積の小さい部屋への給気量よりも少なくできる。また、部屋の空気圧が正圧を維持できるように給気量を調整することで空調効率を高くできる。
【0010】
第3態様の分岐チャンバーは、前記側板において前記分岐口が形成される部分は円周に沿う形状とされ、前記流量調整機構は、前記円周の中心部分で前記筐体に固定された軸体と、前記円周の径方向に沿って複数配置され、前記軸体に対し回動可能に連結された仕切り板と、を有し、前記塞ぎ板は前記仕切り板の先端に固定されている。
【0011】
第3態様の分岐チャンバーは、仕切り板及び仕切り板に固定された塞ぎ板が軸体を中心に回動することで分岐口の開口率を調整できる。このため、塞ぎ板を動かすための機構を軸体周りに集約できる。
【0012】
第4態様の建物の換気システムは、第3態様の分岐チャンバーと、前記分岐チャンバーに接続された分岐ダクトから空気が給気される各空間にそれぞれ設置され、前記空間の温度を測定する測定器と、前記測定器で測定された温度に基づいて前記分岐チャンバーにおける前記仕切り板の回動を自動制御する制御装置と、を備えている。
【0013】
第4態様の建物の換気システムは、測定器と制御装置により、建物の各空間への給気量が、空間の温度に基づいて自動制御される。例えば冬季の暖房により特定の空間の温度が高くなり過ぎた場合、この特定の空間のみに対して、冷たい外気の供給量を増やすことができる。そして適切な温度になった時点で、外気の供給を休止できる。
【発明の効果】
【0014】
第1態様の分岐チャンバーによると、分岐ダクトへ送られる空気量を調整できる。
【0015】
第2態様の分岐チャンバーによると、各分岐ダクトによって空気が送られる空間毎の気積や用途等に応じた給気管理ができる。
【0016】
第3態様の分岐チャンバーによると、塞ぎ板を動かすための機構が塞ぎ板毎に設けられている場合と比較して、分岐チャンバーの構成を簡略化できる。
【0017】
第4態様の建物の換気システムによると、建物の換気を自動制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(建物)
図1には、建物10の小屋裏空間が模式的に示されている。この小屋裏空間には、換気設備20、分岐チャンバー30及び複数の通気グリル22(通気グリル22A、22B、22C、22E)が設置されている。換気設備20と分岐チャンバー30は吸気ダクト20Dで接続され、分岐チャンバー30と複数の通気グリル22は分岐ダクト22Dで接続されている。
【0020】
(換気設備)
換気設備20は、建物10の外部から内部へ空気を給気し、また建物10の内部から外部へ空気を排出するための機械式空気調和設備である。換気設備20には、建物10の外部の空気(外気)を分岐チャンバー30へ送風するための吸気ダクト20Dが接続されている。また、建物10の内部の空気を屋外へ排出するための排気ダクト20Eが接続されている。
【0021】
(分岐チャンバー)
分岐チャンバー30は、換気設備20が取り入れた外気を建物10の内部空間における部屋10A、10B、10C、10E)へ分配給気するための設備であり、ステンレス板を用いて形成された円筒状の筐体31と、筐体31の内部に設けられた流量調整機構40(
図2、3参照)と、を備えている。なお、筐体31はステンレス以外の金属や樹脂等を用いて形成してもよい。
【0022】
(筐体)
図3に示すように、筐体31は、円筒状の側板34と、側板34の上下端を塞ぐ上板32及び下板36と、を備えている。上板32には円筒状の吸気口32Aが突設され、吸気口32Aには吸気ダクト20Dが図示しない締結具等を用いて接続されている。また
図2に示すように、側板34には円筒状の分岐口34Bが4つ突設され、分岐口34Bにはそれぞれ分岐ダクト22Dが図示しない締結具等を用いて接続されている。
【0023】
吸気ダクト20D、分岐ダクト22Dはそれぞれ不燃性のフレキシブルダクトを用いて形成されており、伸縮及び屈曲させることができる。
【0024】
図2には、側板34によって形成される円筒の中心点を点Oとして示されている。吸気口32Aは点Oを中心として円形状に形成されている。そして、各分岐口34Bは側板34の周方向に沿って等間隔に設けられている。このため、吸気ダクト20Dから分岐チャンバー30へ導入された空気は、何れかの分岐口34Bに偏らず、各分岐口34Bへ均一に流れる。
【0025】
(流量調整機構)
図3に示すように、筐体31の内部には流量調整機構40が設けられている。流量調整機構40は、筐体31の下板36に溶接された略円柱状の軸体42と、軸体42に連結された仕切部材50と、を備えている。
【0026】
軸体42は点Oを通る上下方向の軸線CLに沿って配置されており、軸体42には仕切部材50(仕切部材50A、50B、50C、50D)が軸体42の周囲を回動できるように連結されている。
【0027】
また、仕切部材50は
図2に示すように、軸体42の周囲を取り囲む筒状部52と、筒状部52の外周面から点Oを中心とする円の径方向に沿って立設された平板状の板状部54と、板状部54の先端に固定され筐体31の側板34に沿う円弧形状とされた塞ぎ板56と、を供えている。なお、板状部54は塞ぎ板56の周方向に沿った端部に接合されているが、
図2に一点鎖線で示す板状部55のように、塞ぎ板の56の周方向中央部に接合してもよい。
【0028】
図4(A)、(B)には、軸体42と仕切部材50の連結部、すなわち軸体42と仕切部材50における筒状部52との連結部の一例が示されている。
【0029】
軸体42は、筒状のモーター保持部材44を連結部材46を用いて上下に連結して構成されている。モーター保持部材44の上下端部の外周面には係合突起44Aが形成されており、連結部材46の内周面に形成された係合溝46Aと係合することで、モーター保持部材44と連結部材46とが連結される。
【0030】
なお、モーター保持部材44同士の連結方法は連結部材46を用いる実施形態に限らない。例えばモーター保持部材44の上下端にそれぞれ雄ねじと雌ねじを形成し、この雄ねじと雌ねじを羅合して接合してもよい。
【0031】
モーター保持部材44の内周面には係止片44Bが突設されており、この係止片44Bに、モーター48が固定されている。モーター48の先端部には回転ギア48Gが取付けられており、回転ギア48Gはモーター48に動力が伝えられると軸体42の軸線CLを中心に軸回転する。
【0032】
また、モーター保持部材44においてモーター48と対向する壁面には開口部44Cが設けられている。この開口部44Cは、回転ギア48Gの回転に伴い仕切部材50における筒状部52の内周に取付けられたセクターギア52Gが回動する範囲に設けられている。
【0033】
仕切部材50における筒状部52は、水平方向においてモーター保持部材44の周囲に配置され、鉛直方向において連結部材46の間に配置される。筒状部52とモーター保持部材44又は連結部材46との間には適宜ベアリングなどが設けられ、筒状部52がモーター保持部材44の周囲をスムーズに回転できるようになっている。
【0034】
筒状部52の内周面には係止片52Bが突設されており、この係止片52Bに、セクターギア52Gが固定されている。セクターギア52Gの溝部と、回転ギア48Gの歯が噛み合うことで、モーター48の回転力がセクターギア52G及び筒状部52へ伝達される。これにより、
図4(B)に矢印N1で示すように回転ギア48Gが回転するとセクターギア52Gが矢印N2で示すように、回転ギア48Gの回転方向と同方向へ回動する。これにより、セクターギア52Gが固定された筒状部52、筒状部52に固定された板状部54、板状部54に固定された塞ぎ板56(
図2参照)が軸線CLを中心に回動する。
【0035】
なお、モーター48は、右回り及び左回りの何れの方向にも回転できる。このため
図2に示すように、仕切部材50は、点O(
図3では軸線CL)を中心に右回り及び左回りの何れの方向にも回転できる。
【0036】
なお、
図4(A)、(B)に示した仕切部材50は、
図2に示す仕切部材50Bであるが、仕切部材50A、50C、50Dについても同様の構成とされており、各モーターは後述する制御装置Cにより個別に制御され、これらの仕切部材は相互に独立して動くことができる。
【0037】
(通気グリル)
図1に示すように、通気グリル22は、分岐チャンバー30から分岐ダクト22Dへ排出された空気を、建物10の内部に形成された各部屋(部屋10A、10B、10C、10E)へ給気するための給気口であり、それぞれの部屋の天井面に開口している。なお、部屋10A、10B、10C、10Eの気積の大小関係を比較すると、部屋10A>部屋10C=部屋10E>部屋10Bとなっている。
【0038】
(換気システム)
本実施形態に係る分岐チャンバー30を用いた建物の換気システムは、
図1に示すように、分岐チャンバー30に接続された各分岐ダクト22Dから空気が給気される各空間(部屋10A、10B、10C、10E)にそれぞれ設置され、空間の温度を測定する測定器Pと、測定器Pで測定された温度に基づいてモーター48(
図4参照)を運転し、分岐チャンバー30における筒状部52(
図2参照)の回動を自動制御する制御装置Cと、を備えている。
【0039】
制御装置Cは、建物10と電気信号を送受信可能な場所に設けられており、測定器Pから送られる電気信号を受信し、
図4に示すモーター48へ電気信号を送信できる。
図1において制御装置Cと測定器P、制御装置Cと分岐チャンバー30はそれぞれ2点鎖線で連結されているが、この2点鎖線は、サーバー、ネットワークコントローラー、LANケーブル、無線LANなど広範な通信手段を示すものである。
【0040】
(作用・効果)
本実施形態における分岐チャンバー30は、
図2に示す流量調整機構40を備えているので、筐体31から分岐ダクト22Dへ排出される空気量を調整できる。
【0041】
具体的には、
図1に示す制御装置Cから
図4に示すモーター48へ電気信号が送られることにより、
図2に示す流量調整機構40における仕切部材50が、制御装置Cがし定位する回動角度ぶん、点Oを中心に回動する。これにより、塞ぎ板56が筐体31の側板34に沿って回動し、分岐口34Bの開口率を調整する。
【0042】
なお、開口率とは分岐口34Bの断面積に対して空気が流動可能な部分の面積のことであり、例えば
図2に矢印W1で示した部分のように塞ぎ板56が分岐口34Bを覆う部分がない状態での開口率は1.0である。また、矢印W2、W3で示した部分のように塞ぎ板56が分岐口34Bの半分を覆う状態での開口率は0.5である。また、矢印W4で示した部分のように塞ぎ板56が分岐口34Bを完全に覆う状態での開口率はゼロである。
【0043】
この開口率は、仕切部材50の回動角度によって任意の値に制御できる。これにより、吸気ダクト20Dから筐体31へ送られた空気は、各分岐口34Bの開口率に応じて各分岐ダクト22Dへ配分される。
【0044】
また、本実施形態において仕切部材50は制御装置C(
図1参照)によって個別に制御されている。このため、例えば気積の大きい部屋への給気量を気積の小さい部屋への給気量よりも大きくできる。
【0045】
具体的には、本実施形態において各部屋の気積は、部屋10A>部屋10C=部屋10E>部屋10Bとされているため、部屋10Aに開口する分岐ダクト22Dが接続された分岐口34Bの開口率を大きく、部屋10Bに開口する分岐ダクト22Dが接続された分岐口34Bの開口率を小さくすることで、各部屋に取り込む外気量のバランスをとることができる。
【0046】
また、制御装置Cは、測定器Pで測定された温度に基づいて仕切部材50の回動を自動制御する。このため、例えば冬季の暖房により特定の空間の温度が高くなり過ぎた場合、この特定の空間のみに対して、分岐口34Bの開口率を大きくして、冷たい外気の供給量を増やすことができる。そして適切な温度になった時点で、分岐口34Bの開口率を小さくして、外気の供給を少なくできる。
【0047】
また、本実施形態においては、仕切部材50の回動機構を、軸体42及び筒状部52との連結部分に集約させている。このため、流量調整機構40及び筐体31の内部の構造をシンプルにできる。これに対して、例えば
図2に二点鎖線で示したような筒状部52及び板状部54と連結されない塞ぎ板560を用いる場合、塞ぎ板560を側板34に沿って動かすためのレール、駆動機構、電源などが塞ぎ板560を設ける箇所毎に必要になる。
【0048】
なお、本実施形態において分岐チャンバー30に接続された分岐ダクト22Dは4本とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば3本以下でもよいし、5本以上としてもよい。これらの場合は、分岐チャンバー30の側板34に形成する分岐口34Bの数を適宜増減すればよい。あるいは、複数設けられた分岐口34Bのうち何れかを任意の封止部材を用いて塞ぐことにより分岐ダクト22Dの数を調整してもよい。
【0049】
また、本実施形態において、仕切部材50A、50B、50C、50Dはそれぞれ個別に制御されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば仕切部材50A、50B、50C、50Dを一体化し、全ての塞ぎ板56を一体的に動かして全ての分岐口34Bの開口率が同じ値となるようにしてもよい。あるいはそれぞれの分岐口34Bの開口率の比が一定となるようにしてもよい。このようにしても、筐体31から分岐ダクト22Dへ排出される空気量を調整できる効果を得ることができる。また、流量調整機構40の構造を簡略化できる。
【0050】
また、本実施形態において仕切部材50における塞ぎ板56と筒状部52は平板状の板状部54によって連結されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図5に示すように棒状の連結部材59を用いて連結してもよい。このように棒状の連結部材59を用いる場合、板状部54によって筐体31の内部空間が仕切られる場合と比較して、筐体31の内部空間の空気の流動性が高くなる。
【0051】
また、本実施形態において筐体31における側板34は円筒状に形成されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば
図2に2点鎖線で示した側板340のように矩形の箱状に形成し、分岐口34Bが配置されている部分のみ円周に沿う形状としてもよい。あるいは、分岐口34Bと塞ぎ板56との間のクリアランスを大きくすれば、円周に沿う形状を備えない箱状に形成することもできる。
【0052】
また、本実施形態において測定器Pは各部屋の温度のみを測定するものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば温度に加えて、湿度、臭気、粉塵量、一酸化炭素濃度などの値を測定し、その測定結果に応じて仕切部材50を制御してもよい。このようにすれば、各部屋の居住性を向上することができる。このように、本実施形態における分岐チャンバー30及び建物の換気システムは、様々な態様で実施することができる。