特許第6670800号(P6670800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6670800-真空濾過装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670800
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】真空濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 33/048 20060101AFI20200316BHJP
   B01D 33/58 20060101ALI20200316BHJP
   B01D 33/80 20060101ALI20200316BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20200316BHJP
   B01D 33/44 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B01D33/14
   B01D33/34
   B01D33/36
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-116588(P2017-116588)
(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-782(P2019-782A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2019年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】島田 純
(72)【発明者】
【氏名】陳 貴吉
(72)【発明者】
【氏名】栗田 新平
(72)【発明者】
【氏名】古川 智浩
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0200248(US,A1)
【文献】 特開2007−330862(JP,A)
【文献】 特開2003−275514(JP,A)
【文献】 特許第3657550(JP,B2)
【文献】 特公昭44−022877(JP,B1)
【文献】 特開2015−155082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00−35/05
B01D 35/10−37/04
C02F 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段によって水平方向に走行可能とされた濾布が真空トレイの上に配設され、上記濾布上に供給されたスラリーを、上記真空トレイによって上記濾布を介して吸引して濾過する真空濾過装置であって、
複数の上記真空トレイが上下方向に少なくとも部分的に重なり合うように並んで水平方向に延びるように配設されるとともに、互いに連結されて1つの進退手段により水平方向に進退可能とされており、
これらの真空トレイ同士の間において1枚の上記濾布が1つの上記駆動手段によって走行可能に配設されていることを特徴とする真空濾過装置。
【請求項2】
上記濾布は、複数の上記真空トレイ同士の間で1つの濾布緊張手段によって緊張させられていることを特徴とする請求項1に記載の真空濾過装置。
【請求項3】
複数の上記真空トレイ上を走行する上記濾布の上には、上記スラリーが濾過された濾過ケーキを洗浄する洗浄手段がそれぞれ備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空濾過装置。
【請求項4】
上記濾布は、複数の上記真空トレイの走行方向側と走行方向とは反対側とでローラーに巻き掛けられており、
このうち走行方向側のローラーは、複数の真空トレイのうち上側の真空トレイほど水平方向に突出した位置に配設されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の真空濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動手段によって水平方向に走行可能とされた濾布が真空トレイの上に配設され、この濾布上に供給されたスラリーを、上記真空トレイによって濾布を介して吸引して濾過する水平ベルトフィルター式の真空濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような水平ベルトフィルター式の真空濾過装置および真空濾過方法として、例えば特許文献1には、装置本体上に略水平に走行可能に設けられた濾布の下に、真空トレイが濾布の走行方向に沿って進退可能に設けられ、この濾布上に供給されたスラリーを、濾布の走行に合わせて前進する真空トレイによって濾布を介して真空吸引することにより濾過する真空濾過装置および真空濾過方法が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、真空トレイが装置本体に固定されていて、濾布の走行と真空吸引とを間欠的に行い、スラリーが真空吸引されている間は濾布の走行を停止し、真空吸引を停止したときに濾布を走行させてスラリーを濾過する水平ベルトフィルター式の真空濾過装置および真空濾過方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3657550号公報
【特許文献2】特許第3657551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような水平ベルトフィルター式の真空濾過装置は、ケーキ洗浄性に特化した高い洗浄性能を有するが、その一方で濾過面が水平面であるために他の濾過装置に比べて設置面積が大きく、スラリーの処理量を増加させるには大きな設置面積が必要となるという問題がある。また、スラリー処理量を増加させるために複数の水平ベルトフィルター式の真空濾過装置を設置する場合には、設置面積の増加の他に濾布の数や濾布を走行させる駆動手段の数も増加してしまって管理やメンテナンスが煩雑化することになる。
【0006】
さらに、水平ベルトフィルター式の真空濾過装置では、濾過ケーキの置換洗浄を行うことができるが、多孔構造を持つ粒子(多孔質粒子)などの洗浄性が悪い物質を洗浄処理する場合には、置換洗浄では十分に洗浄できないことがある。このような場合には、濾過ケーキのリスラリー洗浄(リパルプ洗浄)を行うことが多いが、リスラリー洗浄を行うにはやはり複数の水平ベルトフィルター式の真空濾過装置を設置する必要があったり、水平ベルトフィルター式の真空濾過装置とは別に他の種の濾過機や分離機が必要となったりしてしまい、同様に設置面積の増加や濾布、駆動手段の数の増加を招くことになる。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、スラリーの処理量を増加させたり、リスラリー洗浄を行ったりする場合でも、設置面積の増加を抑えるとともに濾布、駆動手段の数の増加を防ぐことが可能な水平ベルトフィルター式の真空濾過装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の真空濾過装置は、駆動手段によって水平方向に走行可能とされた濾布が真空トレイの上に配設され、上記濾布上に供給されたスラリーを、上記真空トレイによって上記濾布を介して吸引して濾過する真空濾過装置であって、複数の上記真空トレイが上下方向に少なくとも部分的に重なり合うように並んで水平方向に延びるように配設されるとともに、互いに連結されて1つの進退手段により水平方向に進退可能とされており、これらの真空トレイ同士の間において1枚の上記濾布が1つの上記駆動手段によって走行可能に配設されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成された真空濾過装置においては、複数の真空トレイが上下方向に少なくとも部分的に重なり合うようにして並んで水平方向に延びるように配設されるとともに、これらの真空トレイ同士の間で1枚の濾布が1つの駆動手段によって走行可能に配設されているので、装置の設置面積が大きくなるのは抑制しつつ濾過面積は大きく確保することができ、スラリーの処理量を増加させることができる。
【0011】
一方、スラリーの処理量が同じであれば、濾布の走行速度を小さくして、スラリーを供給してから排出するまでの濾過時間を長くすることができ、濾過効率の向上を図ることができる。さらに、こうして複数の真空トレイを用いていても、濾布や駆動手段は1つで済むので、複数の真空濾過装置を用いる場合などに比べて、これら濾布や駆動手段の管理やメンテナンスの簡略化を図ることが可能となる。
【0012】
また、複数の真空トレイが上下方向に少なくとも部分的に重なり合うようにして並んで配設されているので、これらの真空トレイの間で濾過ケーキをリスラリーしたものを再び濾過することも1つの真空濾過装置で行うことができる。すなわち、本発明の真空濾過装置を用いた真空濾過方法では、複数の上記真空トレイのうち少なくとも1つの真空トレイによって濾過された濾過ケーキをリスラリーして、他の少なくとも1つの真空トレイによって濾過することができるので、他の水平ベルトフィルター式の真空濾過装置や他の種の濾過機、分離機等を要することがない。ここで、リスラリーとは、濾過ケーキにリスラリー液を供給して撹拌等を行うことにより再スラリー化することであり、リスラリー洗浄とは、こうして再スラリー化されたスラリーを再度濾過することをいう。
【0013】
なお、この場合には、上記少なくとも1つの真空トレイによって濾過された濾過ケーキをリスラリーして、この少なくとも1つの真空トレイの濾布の走行方向側の他の少なくとも1つの真空トレイによって濾過することにより、濾布の走行方向に向けて順次効率的にリスラリーおよび濾過を行うことができる。
【0014】
また、上記少なくとも1つの真空トレイによって濾過された上記濾過ケーキを、この少なくとも1つの真空トレイの上記濾布の走行方向側の真空トレイにおいて吸引された濾液によってリスラリーすることにより、濾過ケーキが濾過された真空トレイよりも後段の真空トレイで吸引された比較的清澄な濾液によってリスラリーすることが可能となり、リスラリーに用いる洗浄液(リスラリー液)の消費量を抑えることができる。
【0015】
さらに、本発明の真空濾過装置を用いた真空濾過方法においては、複数の上記真空トレイのうち少なくとも1つの真空トレイによって濾過された濾過ケーキを、この少なくとも1つの真空トレイの上記濾布の走行方向側の真空トレイにおいて吸引された濾液によって置換洗浄することによっても、やはり濾過ケーキに対して比較的清澄な濾液によって濾過ケーキの置換洗浄を行うことが可能となる。
【0016】
一方、本発明の真空濾過装置では、濾布が1枚であるので、この濾布を、複数の上記真空トレイ同士の間で1つの濾布緊張手段によって緊張させることより、濾布全体の緊張状態を維持することができる。また、上述のように濾過ケーキの置換洗浄を行う場合には、複数の上記真空トレイ上を走行する上記濾布の上に、上記スラリーが濾過された濾過ケーキを置換洗浄する洗浄手段をそれぞれ備えればよい。
【0017】
さらに、上記濾布が、複数の上記真空トレイの走行方向側と走行方向とは反対側とでローラーに巻き掛けられている場合に、このうち走行方向側のローラーを、複数の真空トレイのうち上側の真空トレイほど水平方向に突出した位置に配設されるようにすることにより、装置の高さを必要以上に高くすることなく、この突出した走行方向側のローラーの下方に、排出される濾過ケーキの搬送用のコンベア等を配設するスペースを容易に確保することが可能となる。
【0018】
なお、このような真空濾過装置では、上述の特許文献1に記載されたように真空トレイが進退可能とされていて、濾布上に供給されたスラリーを、濾布の走行に合わせて前進する真空トレイによって濾布を介して真空吸引するものと、特許文献2に記載されたように真空トレイが装置本体に固定されていて、濾布の走行と真空吸引とを間欠的に行うものとがあるが、本発明の真空濾過装置は前者の場合である。そして、本発明では、複数の上記真空トレイを、互いに連結して1つの進退手段により水平方向に進退可能としているので、この進退手段も1つで済ませることができて効率的である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、大きな設置面積を要したり、濾布の枚数や駆動手段の数を増加させたりすることなく、スラリー処理量の増加を図ることができるとともに、1つの水平ベルトフィルター式の真空濾過装置で濾過ケーキのリスラリー洗浄を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の真空濾過装置の第1の実施形態を示す概略の側面図である。
図2】本発明の真空濾過装置の参考例を示す概略の側面図である。
図3図1に示す実施形態の変形例を示す概略の側面図である。
図4図2に示す参考例の変形例を示す概略の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の真空濾過装置の第1の実施形態を示すものである。本実施形態の真空濾過装置においては、水平方向(図1における左右方向)に複数の真空吸引室が並んで形成された複数(3段)の略同形同大の長方形箱型の真空トレイ1A〜1Cが、その長手方向である水平方向の両端部を揃えて全体的に上下方向に重なり合うように並んで水平方向に延びるように配設されている。真空トレイ1A〜1Cの真空吸引室の上面には図示されない多数の吸引孔が形成されている。
【0022】
これらの真空トレイ1A〜1Cは、本実施形態では水平方向の少なくとも一端部(図1では両端部)側の側面がトレイ連結部材2によって互いに連結されるとともに、図示されないフレームに取り付けられた車輪3によってそれぞれ支持されて水平方向に進退自在とされている。また、本実施形態では最も下段の真空トレイ1Cに、本実施形態における1つの進退手段としてのシリンダー装置4が連結されており、このシリンダー装置4によって複数の真空トレイ1A〜1Cは一体に所定のストロークで水平方向に往復して進退可能とされる。
【0023】
さらに、各真空トレイ1A〜1Cの水平方向のそれぞれ外側には、入側ローラー5Aと出側ローラー5Bとが配設されるとともに、入側ローラー5A側の真空トレイ1A〜1C上には押さえローラー5Cが配設されている。本実施形態では、複数の真空トレイ1A〜1C同士においては入側ローラー5A、出側ローラー5B、および押さえローラー5Cの水平方向の位置は互いに揃えられている。
【0024】
また、最も下段の真空トレイ1Cの下方には、この真空トレイ1Cの出側ローラー5B側に、本実施形態における1つの濾布緊張手段6としての一対の緊張ローラー6A、6Bが配設されるとともに、中段と下段の真空トレイ1B、1Cの入側ローラー5Aよりも水平方向において外側には戻りローラー7が配設されている。なお、濾布緊張手段6は、上記緊張ローラー6A、6Bが段違いに配設されたものであって、これらの緊張ローラー6A、6Bの水平方向の間隔を調整することによって、入側ローラー5A、出側ローラー5B、押さえローラー5C、および戻りローラー7に巻き掛けられた濾布8の張りが調整される。
【0025】
これらの入側ローラー5A、出側ローラー5B、押さえローラー5C、緊張ローラー6A、6Bおよび戻りローラー7は、真空トレイ1A〜1Cの長手方向に垂直で水平に延びる回転軸回りに回転自在に上記フレームに取り付けられたものであって、各真空トレイ1A〜1Cの入側ローラー5A、出側ローラー5B、および押さえローラー5Cと、緊張ローラー6A、6B、および戻りローラー7とに1枚の長尺無端ベルト状の濾布8が巻き掛けられて図中に符号Fで示す走行方向に走行可能とされる。
【0026】
ここで、入側ローラー5Aと押さえローラー5Cとは、その回転軸が各真空トレイ1A〜1Cの上面よりも上方に位置するとともに、出側ローラー5Bの回転軸は各真空トレイ1A〜1Cの上面よりも下方に位置している。濾布8は、各真空トレイ1A〜1Cの上面側においては、入側ローラー5Aの上縁部から押さえローラー5Cの下縁部に巻き掛けられて、走行方向F側に向けて真空トレイ1A〜1Cの上面に沿って延び、出側ローラー5Bに巻き掛けられている。
【0027】
また、上段と中段の真空トレイ1A、1Bの出側ローラー5Bに巻き掛けられた濾布8は、各真空トレイ1A、1Bの下方を通って上面側とは逆向きとなる真空トレイ1A、1Bの下側の走行方向Fに延び、それぞれ中段と下段の真空トレイ1B、1Cの入側ローラー5Aに巻き掛けられる。さらに、下段の真空トレイ1Cの出側ローラー5Bに巻き掛けられた濾布8は、この真空トレイ1Cの下方を通って延び、濾布緊張手段6の緊張ローラー6A、6Bを経た後に戻りローラー7に巻き掛けられ、上段の真空トレイ1Aの入側ローラー5Aに戻される。従って、本実施形態では、濾布8は上段の真空トレイ1Aから下段の真空トレイ1Cに向けて走行しつつ濾過を行い、再び上段の真空トレイ1Aに戻されるように周回する。
【0028】
さらに、これら各真空トレイ1A〜1Cの入側ローラー5A、出側ローラー5B、押さえローラー5C、および戻りローラー7のうちの1つには、本実施形態における1つの駆動手段としての図示されない電動モータが減速機を介して連結されており、この駆動手段によって濾布8が走行させられる。ここで、本実施形態においては、最も下段の真空トレイ1Cの出側ローラー5Bに、この1つの駆動手段が連結されている。
【0029】
また、各真空トレイ1A〜1C上を走行する濾布8の上方には、この濾布8の走行方向Fとは反対側にあって上記押さえローラー5Cよりも走行方向F側に、この押さえローラー5C寄りの位置において濾布8上にスラリーSA〜SCを真空トレイ1A〜1C毎に供給する供給手段9A〜9Cがそれぞれ配設されている。さらに、同じく各真空トレイ1A〜1C上を走行する濾布8の上方には、真空トレイ1A〜1Cの長手方向略中央部に、濾布8上に供給されたスラリーSA〜SCがある程度濾過されて生成された濾過ケーキCA〜CCに洗浄液WA〜WCを真空トレイ1A〜1C毎に供給して置換洗浄を行う洗浄手段10A〜10Cがそれぞれ備えられている。
【0030】
さらにまた、真空トレイ1A〜1Cの各真空吸引室には、濾布8上に供給されたスラリーを濾布8を介して濾過して濾液を吸引する真空ポンプ等の図示されない吸引手段に接続された真空吸引管11A〜11Cが、本実施形態では真空トレイ1A〜1Cの進退に追従するフレキシブルチューブ等を介してそれぞれ接続されている。さらに、各真空トレイ1A〜1Cの出側ローラー5Bの下縁部には、濾布8に付着した濾過ケーキCA〜CCを剥離するスクレーパー12が設けられるとともに、このスクレーパー12の下方には、剥離した濾過ケーキCA〜CCを搬送する搬送コンベア13がそれぞれ配設されている。さらにまた、各真空トレイ1A〜1Cの下方のスクレーパー12よりも濾布8の走行方向F側には、濾過ケーキCA〜CCが剥離された濾布8に洗浄水を吹きかけて洗浄する洗浄装置14が設けられている。
【0031】
このように真空トレイ1A〜1Cによって濾過されてスクレーパー12により濾布8から剥離され、搬送コンベア13によって搬送された濾過ケーキCA〜CCは、まとめて集合されて乾燥等の処理が施されてもよいが、本実施形態ではこのうち上段の真空トレイ1Aと中段の真空トレイ1Bによって濾過された濾過ケーキCA、CBは、それぞれリスラリー槽15A、15Bに搬送されてリスラリー液LB、LCが供給されるとともに撹拌されることにより、リスラリーされる。
【0032】
また、本実施形態の真空濾過装置を用いた真空濾過方法では、こうしてリスラリーされた濾過ケーキCA、CBは、複数の真空トレイ1A〜1Cのうち少なくとも1つの真空トレイによって濾過された濾過ケーキをリスラリーしたものが、他の少なくとも1つの真空トレイによって濾過される。具体的に、上段の真空トレイ1Aによって濾過された濾過ケーキCAをリスラリー槽15Aによりリスラリーしたものは、この上段の真空トレイ1Aの走行方向F側の中段の真空トレイ1B上の濾布8にスラリーSBとして供給手段9Bから供給されて濾過され、中段の真空トレイ1Bによって濾過された濾過ケーキCBをリスラリー槽15Bによりリスラリーしたものは、この中段の真空トレイ1Bの走行方向F側の下段の真空トレイ1C上の濾布8にスラリーSCとして供給手段9Cから供給されて濾過される。
【0033】
さらにまた、本実施形態では、複数の真空トレイ1A〜1Cのうち少なくとも1つの真空トレイによって濾過された濾過ケーキが、この少なくとも1つの真空トレイの濾布8の走行方向F側の真空トレイによって吸引された濾液によってリスラリーされる。具体的には、上段の真空トレイ1Aによって濾過された濾過ケーキCAは、その走行方向F側に位置する中段の真空トレイ1BによってスラリーSBから吸引された濾液の一部がリスラリーを行うリスラリー槽15Aにリスラリー液LBとして供給されることによりリスラリーされ、この中段の真空トレイ1Bによって濾過された濾過ケーキCBは、その走行方向F側に位置する下段の真空トレイ1CによってスラリーSCから吸引された濾液の一部がリスラリーを行うリスラリー槽15Bにリスラリー液LCとして供給されることによりリスラリーされる。
【0034】
さらに、本実施形態では、複数の真空トレイ1A〜1Cのうち少なくとも1つの真空トレイによって濾過された濾過ケーキは、この少なくとも1つの真空トレイの濾布8の走行方向F側の真空トレイによって吸引された濾液によって置換洗浄される。具体的には、上段の真空トレイ1Aによって濾過された濾過ケーキCAは、その走行方向F側に位置する中段の真空トレイ1BによってスラリーSBから吸引された濾液の残りが洗浄液WAとして洗浄手段10Aから供給されて置換洗浄され、この中段の真空トレイ1Bによって濾過された濾過ケーキCBは、その走行方向F側に位置する下段の真空トレイ1CによってスラリーSCから吸引された濾液の残りが洗浄液WBとして洗浄手段10Bから供給されて置換洗浄される。
【0035】
なお、上段の真空トレイ1AによってスラリーSAから吸引された濾液LAは、本実施形態ではリスラリーや置換洗浄に用いられることなく処理される。また、下段の真空トレイ1Cによって濾過された濾過ケーキCCに洗浄手段10Cから供給される洗浄液WCとしては、濾液よりも清澄な水等が用いられる。さらに、下段の真空トレイ1Cによって濾過された濾過ケーキCCは、そのまま搬送されて処理される。
【0036】
このように構成された本実施形態の真空濾過装置においては、濾布8は駆動手段によって連続的に走行方向Fに走行させられて上述のように周回するとともに、真空トレイ1A〜1Cは、供給手段9A〜9Cから真空トレイ1A〜1C上の濾布8の走行方向Fとは反対側に供給されたスラリーSA〜SCを、この濾布8を介して吸引手段によって吸引して濾過しつつ、濾布8と走行方向Fに同期して前進する。なお、真空トレイ1A〜1Cは、シリンダー装置4によって濾布8と同期して前進させてもよい。
【0037】
さらに、真空トレイ1A〜1Cは、その前進のストロークエンドに達したところで吸引手段による吸引が解かれると同時にシリンダー装置4によって上記走行方向Fとは反対側の後退のストロークエンドまで引き戻された後、再び吸引によってスラリーSA〜SCを濾過しながら濾布8と同期して前進する。また、濾布8上に供給されたスラリーSA〜SCが濾過された濾過ケーキCA〜CCは、濾布8の走行に伴いその走行方向F側からスクレーパー12によって剥離されて搬送コンベア13に排出される。
【0038】
そして、上記構成の真空濾過装置および真空濾過方法では、こうしてスラリーSA〜SCを濾過する複数の真空トレイ1A〜1Cが上下方向に少なくとも部分的に重なり合うように並んで水平方向に延びるように配設されているので、装置の設置面積が大きくなるのは抑えつつ、濾過面積は大きく確保することができる。このため、設置面積に制限があってもスラリーSA〜SCの処理量を増加させることが可能となる。
【0039】
一方、このように濾過面積が大きくなることにより、処理量が同じであれば、濾布8の走行速度を遅くして濾過時間を長くすることができるので、効率的な濾過を行うことが可能となる。さらに、こうして複数の真空トレイ1A〜1Cを用いていても、上記構成の真空濾過装置および真空濾過方法では濾布8やその駆動手段は1つでよいので、例えば複数台の真空濾過装置を用いて同じ濾過面積を確保する場合に比べ、濾布8や駆動手段の管理やメンテナンスを簡略化することもできる。
【0040】
また、本実施形態の真空濾過装置では、このように濾布8が1枚であるので、この濾布8を緊張させて張りを調整する濾布緊張手段6も1つでよい。さらに、本実施形態では、上述のように真空トレイ1A〜1Cがシリンダー装置4のような進退手段によって水平方向に進退可能とされているが、これらの真空トレイ1A〜1Cがトレイ連結部材2によって互いに連結されているので、この進退手段も1つでよい。このため、これら濾布緊張手段6や進退手段についても管理やメンテナンスの簡略化を図ることができる。
【0041】
しかも、本実施形態では、上記駆動手段は最も下段の真空トレイ1C上を走行する濾布8が巻き掛けられる出側ローラー5Bに連結されるとともに、濾布緊張手段6はこの最も下段の真空トレイ1Cの下方に配設され、さらに進退手段(シリンダー装置4)もこの最も下段の真空トレイ1Cに連結されている。このため、複数の真空トレイ1A〜1Cが上下方向に重なり合って並んで配設されていても、これら駆動手段や濾布緊張手段6、進退手段の管理やメンテナンスが高所の作業となることはなく、一層の簡略化を図ることができる。さらに、こうして最も下段の真空トレイ1C以外の真空トレイには駆動手段や濾布緊張手段6等の各手段が設けられていないことで、この最も下段の真空トレイ1C以外の真空トレイを各段毎にユニット化することができ、段数を増やしたり減らしたりすることが容易となる。
【0042】
一方、このような真空濾過装置を用いることにより、上記実施形態の真空濾過装置を用いた真空濾過方法においては、上述のように複数の真空トレイ1A〜1Cのうち、上段の真空トレイ1Aによって濾過された濾過ケーキCAをリスラリーして中段の真空トレイ1Bによって濾過し、またこの中段の真空トレイ1Bによって濾過された濾過ケーキCBをリスラリーして下段の真空トレイ1Cによって濾過することができる。
【0043】
すなわち、1つの真空濾過装置における複数の真空トレイ1A〜1Cの間で、少なくとも1つの真空トレイによって濾過された濾過ケーキをリスラリーして他の少なくとも1つの真空トレイによって濾過することができるので、洗浄性が悪い多孔構造を有する粒子(多孔質粒子)を含んだスラリーでも十分に洗浄することができるとともに、このように濾過ケーキをリスラリーしたスラリーを濾過するのに他の水平ベルトフィルター式の真空濾過装置を必要としたり、他の種の濾過機、分離機等を必要としたりすることがない。
【0044】
また、本実施形態では、このように濾過ケーキをリスラリーするのに、上段の1つの真空トレイ1Aによって濾過された濾過ケーキCAをリスラリーして、この上段の真空トレイ1Aに対する濾布8の走行方向F側に位置する中段の他の1つの真空トレイ1Bによって濾過し、さらにこの中段の1つの真空トレイ1Bによって濾過された濾過ケーキCBをリスラリーして、この中段の真空トレイ1Bに対する濾布8の走行方向F側に位置する下段の他の1つの真空トレイ1Cによって濾過している。従って、スラリーSA〜SCは、濾布8の走行方向Fに向けて順次濾過およびリスラリーされて効率的に処理され、最終的に濾過された濾過ケーキCCは、本実施形態では下段の真空トレイ1Cから排出される。
【0045】
さらに、本実施形態では、このように濾過ケーキをリスラリーするのに、上段の真空トレイ1Aによって濾過された濾過ケーキCAは、この上段の真空トレイ1Aに対する濾布8の走行方向F側に位置する中段の真空トレイ1Bによって吸引された濾液の一部がリスラリー液LBとして用いられてリスラリーされ、また中段の真空トレイ1Bによって濾過された濾過ケーキCBは、この中段の真空トレイ1Bに対する濾布8の走行方向F側に位置する下段の真空トレイ1Cによって吸引された濾液の一部がリスラリー液LCとして用いられてリスラリーされる。
【0046】
従って、濾過ケーキは、濾過された真空トレイ1A、1Bの走行方向F側にそれぞれ位置する後段の真空トレイ1B、1Cによって吸引された濾過ケーキに対して比較的清澄な濾液によってリスラリーされることになるので、リスラリーのために真空濾過装置に新たにリスラリー液を供給することなく、効率的なリスラリーを行うことが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、複数の真空トレイ1A〜1C上において濾過ケーキCA〜CCは置換洗浄もされるが、この置換洗浄においても、上段の真空トレイ1Aにおいて濾過された濾過ケーキCAは、この上段の真空トレイ1Aの走行方向F側に位置する中段の真空トレイ1Bによって吸引された濾液のうち、リスラリー液LBとして用いられた一部の濾液を除く残りの濾液が洗浄液WAとして用いられ、また中段の真空トレイ1Bによって濾過された濾過ケーキCBも、この中段の真空トレイ1Bの走行方向F側に位置する下段の真空トレイ1Cによって吸引された濾液のうち、リスラリー液LCとして用いられた一部の濾液を除く残りの濾液が洗浄液WBとして用いられる。
【0048】
従って、この置換洗浄でも、濾過ケーキは、濾過された真空トレイ1A、1Bの走行方向F側にそれぞれ位置する後段の真空トレイ1B、1Cによって吸引された濾過ケーキに対して比較的清澄な残りの濾液によって洗浄されることになり、置換洗浄のために真空濾過装置に新たに供給するのは下段の真空トレイ1Cによって濾過された濾過ケーキCCを洗浄する洗浄液WCだけでよいので、洗浄液の消費量を抑えることができ、置換洗浄も効率的に行うことができる。なお、このような置換洗浄を行うには、本実施形態の真空濾過装置のように、真空トレイ1A〜1Cの長手方向略中央部に洗浄液WA〜WCを供給する例えばスプレーノズルのような洗浄手段10A〜10Cをそれぞれ設ければよい。また、図1では、各段の真空トレイ1A〜1Cに1つずつの洗浄手段10A〜10Cが設けられているが、複数の洗浄手段10A〜10Cを真空トレイ1A〜1Cに設けてもよく、これにより一層高い洗浄効果を得ることができる。
【0049】
次に、図2は、本発明の真空濾過装置の参考例を示すものであり、図1に示した第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を配してある。第1の実施形態では、複数の真空トレイ1A〜1Cが進退手段としてのシリンダー装置4によって水平方向に進退可能であったのに対し、この参考例では、複数の真空トレイ1A〜1Cは上記フレームに固定されており、また進退手段も備えられていない。この場合には、複数の真空トレイ1A〜1Cはトレイ連結部材2によって連結されていなくてもよく、また真空トレイ1A〜1Cと真空吸引管11A〜11Cとはフレキシブルチューブ等を介さずに、通常の剛体のパイプで接続されていてもよい。
【0050】
このような参考例の真空濾過装置では、複数の真空トレイ1A〜1C上に配されてスラリーSA〜SCが供給された濾布8は、駆動手段によって所定のピッチ(例えば真空吸引室1つ分の走行方向Fの幅)で間欠的に走行と停止を繰り返し、吸引手段は濾布8が走行している間は吸引を停止して、濾布8が停止している間に濾布8を介してスラリーSA〜SCから濾液を吸引して濾過を行う。
【0051】
そして、この参考例の真空濾過装置においても、複数の真空トレイ1A〜1Cが水平方向に少なくとも部分的に重なり合うように上下に並んで配設されるとともに、これらの真空トレイ1A〜1C同士の間で1枚の濾布8が1つの駆動手段によって走行可能に配設されているので、第1の実施形態と同様に装置の設置面積が大きくなるのは抑えつつ、濾過面積は大きく確保することができるという効果を得ることができる。
【0052】
さらに、図3および図4は、それぞれ第1の実施形態と上記参考例の変形例を示すものであり、これら第1の実施形態および参考例と共通する部分には同一の符号を配してある。第1の実施形態および参考例では、複数の真空トレイ1A〜1Cの入側ローラー5A、出側ローラー5B、および押さえローラー5Cの水平方向の位置が互いに揃えられていたのに対して、これらの変形例では真空トレイ1A〜1C上の濾布8の走行方向F側に位置する出側ローラー5Bが、複数の真空トレイ1A〜1Cのうち上側の真空トレイほど水平方向に突出した位置に配設されている。
【0053】
すなわち、図3および図4に示すように、中段の真空トレイ1Bの走行方向F側に位置する出側ローラー5Bは、下段の真空トレイ1Cの走行方向F側に位置する出側ローラー5Bよりも水平方向に走行方向F側に突出した位置に配設され、上段の真空トレイ1Aの走行方向F側に位置する出側ローラー5Bは、中段の真空トレイ1Bの走行方向F側に位置する出側ローラー5Bよりも水平方向にさらに走行方向F側に突出した位置に配設されている。
【0054】
このように構成された変形例の真空濾過装置では、第1の実施形態および参考例と同様の効果を得ることができるのは勿論、上側の真空トレイほど濾過ケーキが排出される出側ローラー5Bが水平方向に突出した位置にあるので、この出側ローラー5Bの下方に大きなスペースを確保することができる。このため、複数の真空トレイ1A〜1Cが上下方向に重なり合うように並んで水平方向に延びるように配設されていても、真空濾過装置の高さを必要以上に高くすることなく、出側ローラー5Bの下方に搬送コンベア13を配設し易くなり、高さ方向においても真空濾過装置の設置スペースを低く抑えることが可能となる。また、これら第1の実施形態および参考例の変形例において、濾過ケーキCA、CBをリスラリー洗浄する必要がない場合には、上段と中段の真空トレイ1A、1Bの出側ローラー5Bの下に搬送コンベア13を設けずに、最も下段の真空トレイ1Cの出側ローラー5Bの下に、水平方向において上段の真空トレイ1Aの出側ローラー5Bの下方にまで延びる搬送コンベア13やケーキシュートを配設して、各段の真空トレイ1A〜1Cから排出される濾過ケーキCA〜CCを一括して排出するようにしてもよい。
【0055】
なお、こうして上側の真空トレイほど出側ローラー5Bが水平方向に突出した位置に配設されるようにした場合には、この上側の真空トレイとその出側ローラー5Bとの間には間隔があくので、この間隔部分に真空吸引室を延長するようにして上側の真空トレイほど長手方向に長くなるようにしてもよい。この場合には、複数の真空トレイは上下方向に部分的に重なり合うことになる。
【0056】
また、上記第1の実施形態および参考例やその変形例のように複数の真空トレイ1A〜1Cや入側ローラー5A、出側ローラー5B、および押さえローラー5Cをフレームによって支持する場合には、このフレームは、上段、中段、下段の各真空トレイ1A〜1Cとその入側ローラー5A、出側ローラー5B、および押さえローラー5C毎に別体として、独立して自立可能な強度を有するものとし、これらを真空濾過装置の設置現場において組み立てて一体化するのが、装置の輸送等を考慮すると望ましい。
【0057】
さらに、上記第1の実施形態や参考例およびその変形例では、スラリーSAを上段の真空トレイ1Aによって濾過した濾過ケーキCAをリスラリーしたスラリーSBを中段の真空トレイ1Bによって濾過し、この中段の真空トレイ1Bによって濾過した濾過ケーキCBをリスラリーしたスラリーSCを下段の真空トレイ1Cによって濾過しているが、各段の真空トレイ1A〜1C上の濾布8には、リスラリーされていない同種の、また場合によっては異なる種類のスラリーが供給されてもよい。また、これら第1の実施形態や参考例およびその変形例では、真空トレイ1A〜1Cが3段であるが、2段でもよく、また4段以上であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1A〜1C 真空トレイ
2 トレイ連結部材
4 シリンダー装置(進退手段)
5A 入側ローラー
5B 出側ローラー
5C 押さえローラー
6 濾布緊張手段
7 戻りローラー
8 濾布
9A〜9C 供給手段
10A〜10C 洗浄手段
11A〜11C 真空吸引管
13 搬送コンベア
15A、15B リスラリー槽
F 濾布8の走行方向
SA〜SC スラリー
CA〜CC 濾過ケーキ
WA〜WC 洗浄液
LA 濾液
LB、LC リスラリー液
図1
図2
図3
図4