(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スロット干渉確認部は、前記リンク済みの前記中継機との間で割り当てられた端末スロットが時間的に重複するかを、前記リンク済みの前記中継機間毎に検出すること、
を特徴とする請求項22又は23記載の通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態]
[1.概略構成]
図1は、本実施形態に係る通信システムの全体構成を示す図である。本通信システムは、複数の端末装置1と中継機2とを有する。但し、通信システムは、サーバ3を有していても良く、中継機2は、1台でも複数台有していても良い。本実施形態の通信システムは、複数の中継機2を有しているものとして説明する。
【0012】
サーバ3と各中継機2とは有線又は無線のネットワークNにより接続されている。端末装置1は中継機2に端末情報を送信し、中継機2が当該情報をサーバ3に送信することで、各端末装置1の端末情報をサーバ3に集約する。
【0013】
例えば、本通信システムは、位置把握システムとして用いることができる。すなわち、スタジアムやショッピングモール、大型倉庫などの大規模な人数や物を収容可能な設置対象に、通信可能範囲Rが重複するように中継機2をメッシュ状に配置する。つまり、設置対象の範囲は、各中継機2の通信可能範囲Rによってカバーされる。中継機2の通信可能範囲Rは、半径数十m〜数kmの範囲であり、例えば半径30mの範囲である。
【0014】
端末装置1は、設置対象内の人や物に保持されて移動可能である。例えば、端末装置1は、リストバンドやタグであり、中継機2との通信可能範囲は半径数m〜数kmであり、例えば半径数m〜数十mである。
【0015】
中継機2は、例えばアクセスポイント(AP)であり、隣接する中継機2とは異なるチャネルが割り当てられている。中継機2は、通信可能範囲R内に位置する端末装置1と通信し端末装置1を特定することで、端末装置1の情報を把握し、当該情報を上位のサーバ3に送信する。これにより、各端末装置1がどの中継機2の位置にいるかを把握することができる。中継機2による端末装置1の特定は、例えば、端末装置1が自身に個別に付された識別番号を中継機2に送信し、当該識別番号を自身の識別番号と共にサーバ3に送信することで特定する。中継機2の設置対象は、例えば10万人を収容できる規模の施設等であり、端末装置1の数は例えば10万台である。中継機2の数は特に限定されないが、例えば200台である。この場合、1台の中継機2に約500台の端末装置1が通信により接続される。なお、端末装置1と中継機2の台数は特に限定されない。
【0016】
本通信システムにおいて、中継機2同士は、直接通信することはなく、また、上位のサーバ3を介して通信することもない。サーバ3をマスターとして中継機2間が同期することもない。また、端末装置1同士も直接通信することはない。つまり、通信システムにおいて通信するのは、中継機2、端末装置1間と、中継機2、サーバ3間である。
【0017】
また、端末装置1と中継機2との通信において、伝搬遅延は無視できるものとする。
【0018】
[2.基本構成]
図2は、端末装置1、中継機2の機能ブロック図である。端末装置1及び中継機2は、コンピュータを含み構成されて、プログラムをHDDやSSD等の記録媒体に記憶しており、CPUで処理することにより、後述する各演算処理を行う。
【0019】
図2に示すように、端末装置1及び中継機2は、通信部30、発振部35、時計36、記憶部37、外部インターフェイス38、制御部40、60を含み構成される。各構成30、35〜38は、制御部40、60を除き、基本構成は同じである。
【0020】
通信部30は、他の装置との間で情報を送受信する。すなわち、端末装置1の通信部30は、中継機2との間で情報を送受信し、中継機2の通信部30は、端末装置1との間で情報を送受信する。通信部30は、送信器31、受信器32、送信タイミング検出部33、及び受信タイミング検出部34を有する。
【0021】
送信器31は、入力された情報を送信する機器である。具体的には、送信器31は、情報を最小構成要素に時系列に分解の上、当該情報を外部へ送信する。受信器32は、外部から情報を受信する機器である。具体的には、受信器32は、装置外部から受信した、最小構成要素に時系列に分解された情報を再構成し、装置1,2内の他の構成へ出力する。
【0022】
なお、
図2に示すように、送信器31及び受信器32にそれぞれアンテナを設けても良いし、1本のアンテナを、切り替えスイッチを介して設けても良い。送信器31と受信器32は、何れか一方が動作している間は他方は動作させないようにしても良いし、双方を同時に動作させても良い。
【0023】
送信タイミング検出部33は、送信器31により送信される情報の所定情報要素位置の送信タイミングを検出する。また、送信タイミング検出部33は、その検出結果を装置内の他の構成へ出力する。ここにいう情報とは、例えばパケットであり、この場合、所定情報要素位置とは、ビット位置である。
【0024】
受信タイミング検出部34は、受信器32により受信される情報の所定情報要素位置の受信タイミングを検出する。また、受信タイミング検出部34は、その検出結果を装置内の他の構成へ出力する。
【0025】
なお、上記の送信タイミング及び受信タイミングの例では、何れも同じ最小構成要素の位置を検出することとしたが、例えば、送信機となる装置1,2の送信タイミング検出部33は5番目の要素を検出し、受信機となる装置1,2の受信タイミング検出部34は8番目の要素を検出するなど、送受信する装置間において各タイミング検出で所定関係(例えば間隔(ここでは3つ))を保つのであれば、必ずしも同じ位置を検出しなくても良い。
【0026】
発振部35は、固有の周波数を有するクロック信号を出力し、装置1、2の各部の動作タイミングを与える発振回路又は発振器である。この発振部35により、装置1,2内の各部が同期して動作する。発振部35は、例えば、水晶振動子などの周波数固定の発振器を用いることができる。
【0027】
発振部35は、固有の有限な周波数偏差を有している。すなわち、工場出荷時等で決まる公称周波数fに対して周波数偏差eを有している。そのため、各端末装置1、各中継機2は、それぞれクロック信号の周波数が異なり、それぞれ固有の時間を有している。
【0028】
時計36は、発振部35のクロック信号を源振として刻時する。装置1、2のクロック信号がそれぞれ異なる周波数であるため、各装置1,2は時間の進み方が違う。例えば、ある端末装置1において1秒の時間は、他の端末装置1では1.01秒であったり、ある中継機2では、1.02秒であったりする。時計36は、外部からの参照要求により時刻を出力する。
【0029】
記憶部37は、HDD、SSD、メモリ、レジスタなどの記録媒体であり、HDD、SSD、メモリ、レジスタの少なくとも何れか1種を含み構成することができる。記憶部37には、制御部での各演算を行うのに必要な情報、プログラムが記憶されている。例えば、端末装置1の記憶部37には、自身の端末識別番号が予め記憶されている。中継機2の記憶部37には、自身の識別番号、後述の管理情報、隣接中継機リスト、端末スロットベース番号が予め記憶されている。
【0030】
記憶部37は、任意の情報を入出力し、当該情報を指定された記憶領域へ記憶する。情報の記憶は、外部からの記憶要求により行われるが、その際に記憶する情報と記憶領域が入力される。情報の参照は、外部からの参照要求により行われるが、その際に参照情報の記憶領域が入力され、その入力により指定された記憶領域の情報を出力する。情報の記憶の保持は、本装置の動作中のみであっても、動作停止時も含めて永続的であっても良い。
【0031】
端末装置1の記憶部37は、例えば、中継機2から受信した、管理情報、隣接中継機リスト、端末スロットベース番号、非干渉グループを記憶する。中継機2の記憶部37は、例えば、端末装置1から受信した後述のブラックリスト、ホワイトリストを記憶する。
【0032】
外部インターフェイス38(以下、外部I/F38ともいう。)は、本装置内部と外部を接続し、任意の情報を入出力する。外部I/F38としては、例えば、他の機器と接続する端子、コネクタ、ボタン、タッチパネル、表示装置、などが挙げられる。
【0033】
制御部40、60は、装置1,2各部の動作全般を制御する。制御部40、60については、後に詳述する。
【0034】
[3.詳細構成]
(通信方式)
まず、本通信システムの通信方式について説明する。本実施形態では、端末装置1と中継機2とは、時分割多元接続方式(TDMA方式:Time Division Multiple Access)で通信する。
【0035】
TDMA通信とは、時分割多元接続通信ともいい、同一の通信路を複数の通信主体で混信することなく共用するための多元接続技術であり、時間的に通信路を分割して複数の通信主体で同時に通信する方式をいう。例えば、共通する通信装置に対し、複数の他の通信装置が通信する上で、通信路である1つのチャネル(周波数帯域)を時間的に分割しておき、この区切られた各単位時間に1つの通信装置をそれぞれ割り当て、当該単位時間に特定の通信装置のみが通信することで、混信を回避し、複数の通信装置が同時に同一のチャネル(周波数帯域)を用いて通信することができる。
【0036】
TDMA通信としては、例えば、2.4GHz帯通信や5GHz帯通信、920MHz帯通信(特定省電力無線)等の免許不要なISMバンド通信(Industry Science Medical,産業科学医療用バンド)を用いることができる。
【0037】
(タイムフレーム構造)
次に、TDMA通信でのタイムフレームの構造を、
図3を用いて説明する。
図3は、タイムフレームFの構造を示す図である。タイムフレームFとは、TDMA通信の通信単位であり、時間方向に連続して配置される。タイムフレームFは、1又は複数のタイムスロットSを有する。
【0038】
タイムスロットSは、中継機2と端末装置1との間で情報を伝送するための特定の期間であり、
図3の符号Sで示される。タイムスロットSの長さは、タイムフレーム長で規定できる。例えば、タイムフレーム長を1(s)とし、このタイムフレームFが512のタイムスロットSで構成されるとすると、タイムスロット長は、1/512(s)となる。タイムスロットSは、タイムスロット番号により識別される。当該番号は、数値でも良いし、アルファベットなどの文字列でも良い。ここでは数値とする。タイムスロット番号は、例えば、0〜511の整数とすることができる。
【0039】
タイムスロットSは、管理スロットKSと端末スロットMSに大別される。管理スロットKSは、中継機2が中継機2の情報である管理情報を端末装置1に送信する際に使用されるタイムスロットSである。管理スロットKSは、1タイムフレームFにおいて所定の間隔毎に配置される。管理スロットKSでは、中継機2が管理情報を端末装置1に同報配信する。端末装置1は、管理情報を受信することで通信可能な中継機2を認識できる。
【0040】
端末スロットMSは、端末装置1が中継機2に端末装置1の情報である端末情報を送信する際に使用されるタイムスロットSである。端末スロットMSは、1タイムフレームFにおいて、管理スロットKSを除いたタイムスロットSである。端末スロットMSは、リンクスロットLSと空きスロットESとに大別される。
【0041】
リンクスロットLSは、中継機2とのリンクが確立した端末装置1のための端末スロットMSである。リンクとは、端末装置1が中継機2に対して他の端末装置1との干渉なく自身の端末装置1の情報である端末情報を送信可能な状態をいう。
【0042】
空きスロットESは、中継機2とのリンクが確立していない端末スロットMSである。リンクを確立したい中継機2に対し端末装置1がリンクを要求し、中継機2により空きスロットESが割り当てられることで中継機2に対して、他の端末装置1との干渉なく、端末情報を送信可能となる。また、中継機2は、割り当てた端末スロットMSで、当該スロットMSが割り当てられた端末装置1から受信が可能となる。
【0043】
端末スロットMSは、複数のサブスロットSSを有する。サブスロットSSは、例えば、端末スロットMSが時間的に複数分割されてなる。サブスロットSSは、端末スロットMSが空きスロットESかリンクスロットLSか否かで使用目的が異なる。
【0044】
すなわち、空きスロットESは、リンク要求スロットS1とリンク応答スロットS2とを有する。リンク要求スロットS1は、端末装置1が中継機2にリンク要求を送信するためのサブスロットSSである。リンク要求スロットS1は、複数有していても良く、ここでは3つのリンク要求スロットS1を有する。リンク応答スロットS2は、中継機2がリンク要求を送信した端末装置1に対して応答するためのサブスロットSSである。
【0045】
また、リンクスロットLSは、リンク応答スロットS3を有する。このリンク応答スロットS3は、中継機2がリンクしている端末装置1に対してリンク状態が継続していることの確認情報を送信するためのサブスロットSSである。リンク応答スロットS3以外のサブスロットSSは、リンクされた中継機2に対して端末装置1が端末情報を送信するために使用することができる。なお、リンクスロットLSは、リンク要求スロットS1を有しても良い。但し、既にリンク確立済みであるので使用されない。
【0046】
言い換えると、端末スロットMSは、全て同じ構造を有する。リンクが確立していない場合には、前半の複数のサブスロットSSをリンク要求スロットS1、リンク応答スロットS2として使用し、リンク要求が失敗したときは、後半の複数のサブスロットSSを、リンクを確立するために使用する。リンク要求が成功したときは、リンクされた中継機2に対して端末装置1が端末情報を送信するために使用することができる。リンクが確立している場合は、前半のサブスロットSSをリンク応答スロットS3として使用し、後半のサブスロットSSをリンクされた中継機2に対して端末装置1が端末情報を送信するために使用することができる。なお、
図3の「リンク要求1」のリンク要求スロットS1は、後述するリンク試行Iを実行するためのリンク要求用のサブスロットであり、同図の「リンク要求2」のリンク要求スロットS1は、後述するリンク試行IIを実行するためのリンク要求用のサブスロットである。「リンク要求1」で、ある端末装置1がリンク試行Iを実行し、「リンク要求2」で他の端末装置1がリンク試行IIを実行し、これらのリンク要求に対するリンク応答は、直後のリンク応答スロットS2で中継機2から各端末装置1に配信される。
【0047】
以上のように、管理スロットKSが1タイムフレームFにおいて所定の間隔毎に配置され、端末スロットMSの構造を全て同じにすることで、どのタイミングからでもリンクを確立することができる。例えば、管理スロットKSが1タイムフレームF内で1つしか配置されていないとすると、そのタイムフレームFで管理情報を受信できなければ、次のタイムフレームFで管理情報を受信することになり、リンクの確立に遅延が生じるが、そのような事態を回避することができる。
【0048】
(端末装置1)
図4は、端末装置1の制御部40の機能ブロック図である。
図4に示すように、端末装置1の制御部40は、中継機スキャン制御部41、リンク要求制御部42、リンク確認情報送信制御部43、ロスト要求送信制御部44を有する。
【0049】
中継機スキャン制御部41は、例えばCPUを含み構成され、中継機2が配信した管理情報を受信する制御を行う。管理情報については後述する。中継スキャン制御部41は、受信器32に管理情報を受信させることで中継機受信部として機能する。中継機スキャン制御部41は、中継機2に割り当てられたチャネル毎に専用の受信窓を切り替えて当該中継機2の管理情報を受信する。受信窓とは、規定のチャネルを受信するための時間間隔である。例えば、
図5に示すように、受信窓を0〜86のタイムスロット幅とし、管理スロットの配置間隔よりも長く設定することで、該当の中継機2が管理情報を配信している場合に、当該管理情報を受信することができる。なお、中継機スキャン制御部41は、中継機2とのリンク後も当該中継機2から管理情報をタイムフレーム毎に受信する。
【0050】
また、後述するように、中継機スキャン制御部41は、受信した管理情報に含まれる隣接中継機リストに基づいて、当該管理情報を送信した中継機2に隣接配設された中継機2から配信された管理情報を受信器32に受信させるようにしても良い。この場合、中継機スキャン制御部41は、隣接中継機リスト受信部として機能する。
【0051】
リンク要求制御部42は、CPUを含み構成され、中継機2とリンクを要求するリンク要求を中継機2に送信制御する。すなわち、リンク要求制御部42は、送信器31にリンク要求情報を送信させることでリンク要求部として機能する。リンク要求情報には、中継機2にタイムスロットMSの割り当てを行わせるトリガーとなる情報が含まれる。
【0052】
リンク要求制御部42のリンク要求の送信先となる中継機2の決定は、例えば次のように行うことができる。すなわち、リンク要求制御部42は、端末装置1が管理情報を受信した中継機2の中から1つの中継機2をリンク要求の送信先として選択する。その選択方法は、例えば電波強度が高い中継機2を優先して選択する。但し、これに限定されない。例えば、端末装置1が管理情報を先に受信した中継機2をリンク要求の送信先として選択しても良い。また、端末装置1が既に何れかの中継機2とリンクしている場合には、当該中継機2と隣接する中継機2の中から任意又は電波強度を基に選択するようにしても良い。隣接する中継機2の情報は、リンク済みの中継機2から受信した管理情報に含まれていても良い。
【0053】
リンク要求制御部42は、記憶部37に記憶された自身に個別に割り当てられた端末識別番号を読み出し、端末識別番号の一部に対応する番号のタイムスロットSを、リンク要求を送信するためのタイムスロットSとする。この端末識別番号の一部に対応する番号の抽出は、関数又はフィルタを用いることができる。端末識別番号の一部に対応する番号とは、例えば、通信システムにおける端末装置1の数が2
17台であるとし、端末識別番号を2進法で表現すると、この17ビットの端末識別番号の下位9ビットの数値である。但し、端末識別番号の一部であれば、下位9ビットに限定されず、上位又は下位のNビットでも良い(N=1,2,…16)。ここでは、この下位9ビットで取り得る値がタイムスロット番号(より詳細には端末スロット番号)と1:1に対応する。この1:1の対応は数値として同一であっても良いし、両者が関数で対応付けられていても良い。
【0054】
リンク要求制御部42は、1つのタイムスロットS内で複数のサブスロットSSにより、複数回リンク要求情報を送信しても良い。例えば、中継機2がリンク要求の受信に失敗した場合に、端末識別番号の、上記の抽出をしなかった残りの番号に対応する番号のタイムスロットSを、リンク要求を送信するためのタイムスロットSとし、送信器31にリンク要求情報を送信させる。当該残りの番号に対応する番号とは、上記例で言えば、上位8ビットに対応する数値であり、上位8ビットそのものの値でも良いし、当該値から一意に定まる値としても良い。この残りの番号に対応する番号は、端末スロット番号の何れかと対応している。例えば、端末識別番号の一部の番号Mに対応する番号を関数gを用いてg(M)とし、端末識別番号の残りの番号Nに対応する番号を関数fを用いてf(N)とすると、g(M)及びf(N)は端末スロット番号(例えば0〜511)の何れかに該当しており、迅速にリンクを確立することができる。すなわち、g(M)<f(N)の関係であれば、端末スロット番号Mでのリンク要求の受信に失敗しても、同一のタイムフレーム内でリンク要求(後述のリンク試行II)を送信でき、g(M)>f(N)であっても、次のタイムフレームの端末スロット番号Mまでにリンク要求(リンク試行II)を送信することができるので、次のタイムフレームの番号g(M)まで待つ必要がない。また、リンク要求制御部42は、中継機2がリンク要求の受信に失敗した場合に、リンク要求を送信するためのタイムスロットSの番号をランダムで選択するようにしても良い。
【0055】
リンク要求制御部42は、中継機2がリンク要求の受信に失敗したか否かを、中継機2から受信した後述のリンク応答情報の解析により判定する。すなわち、リンク応答情報には、自身の端末識別番号と紐付けられてリンク要求に失敗した旨の情報が含まれており、当該情報と自身の端末識別番号とを照合し、リンク要求の成否を判定する。
【0056】
また、リンク要求制御部42は、リンクした中継機2から割り当てられたタイムスロット番号に対応する番号を、未リンクの中継機2へリンク要求を送信するためのタイムスロット番号として、未リンクの中継機2へリンク要求を送信させるようにしても良い。リンクした中継機2から割り当てられたタイムスロット番号に対応する番号とは、当該番号そのもの、後述する番号変換部50又は番号補正部51により変換又は補正後の番号を含む。
【0057】
さらに、リンク要求制御部42は、未リンクの中継機2から受信した隣接中継機2のチャネル識別番号と端末スロットベース番号との線形結合に対応するタイムスロットSを求め、当該タイムスロットSを、未リンクの中継機2にリンク要求するためのタイムスロットSとして選択するようにしても良い。上記線形結合の各番号に乗算される係数は例えば実数であり、適宜設計変更可能である。例えば、各係数を1として線形結合を和とすることができる。
【0058】
リンク確認情報送信制御部43は、CPUを含み構成され、リンクした中継機2に対してリンク確認情報を定期的に送信する制御を行う。すなわち、リンク確認情報送信制御部43は、送信器31にリンク確認情報を定期的に送信させることでリンク確認情報送信部として機能する。リンク確認情報とは、リンクした中継機2に対してリンク状態が維持されていることを確認するための情報である。
【0059】
ロスト要求送信制御部44は、CPUを含み構成され、リンクした中継機2に対してリンク解除を要求するロスト要求を送信制御する。すなわち、ロスト要求送信制御部44は、送信器31にロスト要求情報を送信させることでロスト要求送信部として機能する。ロスト要求情報には、中継機2に割り当てられたタイムスロットSの解放を行わせるトリガーとなる情報が含まれる。
【0060】
また、制御部40は、ブラックリスト生成部45、ホワイトリスト生成部46、ブラックリスト送信制御部47、ホワイトリスト送信制御部48、位相差検出部49、番号変換部50、番号補正部51、スロット干渉確認部52、位相差速度検出部53、非干渉グループ作成部54、非干渉グループ更新部55を有している。
【0061】
ブラックリスト生成部45は、CPUを含み構成され、ブラックリストを生成する。ブラックリストとは、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットに対応する番号を含むリストである。リストに含まれる番号の数は、一つでも複数でも良い。例えば、
図6に示すように、端末装置1が1台の中継機2aとリンク済みであり、中継機2aから、番号100(a=100)の端末スロットが割り当てられているとすると、ブラックリストBLは、100を含むリストとなる。つまり、ブラックリスト生成部45は、記憶部37に記憶されたリンク済みの各中継機2から割り当てられた端末スロット番号をそれぞれ読み出してリスト化する。ブラックリストは、例えばリンク要求情報に含められ、送信器31を介してリンクを希望する中継機2に送信される。
【0062】
また、ブラックリスト生成部45は、ブラックリストに含まれるべき番号を連続して有する複数の番号群が一部重複又は連続している場合に、当該複数の番号群に含まれる番号のうち、最小の番号から最大の番号までの連続した番号列を範囲とするブラックリストを生成しても良い。ブラックリストに含まれるべき番号とは、中継機2から割り当てられた端末スロット番号である。番号群は、中継機2から割り当てられた端末スロット番号と、その前後のマージンの番号とからなる。
【0063】
例えば、2台のリンク済みの中継機2から番号300、303が割り当てられ、前後のマージンとする端末スロット数を2とすると、番号群は、298〜302の番号群と、301〜305の番号群となる。番号301、302が重複しており、ブラックリストは、298〜305の1つのリストとなる。また、前後のマージンとする端末スロット数を1とすると、番号群は、299〜301の番号群と、302〜304の番号群となる。番号301、302が連続しており、ブラックリストは、299〜304の1つのリストとなる。
【0064】
また、ブラックリスト生成部45は、番号変換部50による変換後の番号に基づいて、ブラックリストを生成しても良い。
【0065】
ホワイトリスト生成部46は、CPUを含み構成され、ホワイトリストを生成する。ホワイトリストとは、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSに対応する番号以外の番号を含むリストである。リストに含まれる番号の数は、一つでも複数でも良い。例えば、ホワイトリスト生成部46は、記憶部37から、番号100以外の割り当てられていない端末スロットの番号をそれぞれ読み出してリスト化する(
図6中a=100)。ホワイトリストWLは、例えば、
図3の例で示すと、2〜85、88〜99、101〜171、174〜255、258〜341、344〜427、430〜511を含むリストである。ホワイトリストは、例えばリンク要求情報に含められ、送信器31を介してリンクを希望する中継機2に送信される。このように、ブラックリストとホワイトリストとは相補的な関係にある。
【0066】
また、ホワイトリスト生成部46は、番号変換部50による変換後の番号に基づいて、ホワイトリストを生成しても良い。
【0067】
ブラックリスト送信制御部47は、生成したブラックリストを未リンクの中継機2に送信する制御を行う。すなわち、ブラックリスト送信制御部47は、送信器31にブラックリストをリンク要求する中継機2に対して送信させることで、ブラックリスト送信部として機能する。
【0068】
ホワイトリスト送信制御部48は、生成したホワイトリストを未リンクの中継機2に送信する制御を行う。すなわち、ホワイトリスト送信制御部48は、送信器31にホワイトリストをリンク要求する中継機2に対して送信させることで、ホワイトリスト送信部として機能する。
【0069】
位相差検出部49は、CPUを含み構成され、中継機2間のタイムフレームFの位相差を算出する。位相差検出部49は、
図7に示すように、中継機2aからの情報の受信タイミングと当該タイミングが含まれる受信タイムスロットをta、saとし、中継機2bからの情報の受信タイミングと当該タイミングが含まれる受信タイムスロットをtb、sbとし、タイムスロット幅をそれぞれwa、wbとすると、タイムフレーム位相差d
Fは、式(1)の通り、求めることができる。なお、受信タイミングta、tbは、中継機2a、2bの時計36の時刻である。受信タイミングの検出は、受信タイミング検出部34により検出可能である。
d
F=(tb−sbwb)−(ta−sawa) …(1)
【0070】
なお、タイムフレーム位相差d
Fは、−(タイムフレーム長/2)≦d
F<(タイムフレーム長/2)を満たす。タイムフレーム位相差d
Fが受信タイミングta、tbの組み合わせにより上記範囲を超える場合は、位相差検出部49は、計測したタイミングの組み合わせを範囲内に収まるように変更するか、タイムフレームの周期性を利用してタイムフレーム長の整数倍を加減算することにより範囲内に収まるように修正する。
【0071】
番号変換部50は、CPUを含み構成され、リンク済みの中継機2と未リンクの中継機2との間のタイムフレーム位相差d
Fに基づいて、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSの番号を、未リンクの中継機2における端末スロットMSの番号に変換する。例えば、番号変換部50は、
図8に示すように、リンク済みの中継機2aのリンクスロットLaに対応する未リンクの中継機2bの端末スロットxbを、下記の式(2)に基づいて求める。番号変換部50は、ブラックリスト、ホワイトリストの生成に利用することができる。
xb=(La×wa−d
F)/wb …(2)
【0072】
番号補正部51は、CPUを含み構成され、番号変換部50による変換後の番号とその変換前の番号とが同一であるとき、当該番号を当該番号以外の番号に補正する。番号補正部51は、例えば、判定式「|La−Lb|<規定値」により、変換後の番号Lbと変換前の番号Laが等しくないかを判断する。この規定値は、予め設定した値であり、番号LaとLbの差分の大きさがこの規定値より小さい場合には、両番号が等しいと判定し、当該差分の大きさがこの規定値以上である場合には、両番号が等しくないと判定する。
図9に示すように、この補正は、例えばオフセットであり、オフセット量は適宜設定、変更可能である。番号補正部51は、例えば、変換前の番号La=Lb=300にΔ=50を加算する。番号xb=350のタイムスロットMSが、未リンクの中継機2に対してリンク要求を送信するためのタイムスロットMSとなる。なお、変換後の番号Lbと変換前の番号Laが等しくないかの判断は、番号補正部51でなく、番号変換部50が行っても良い。
【0073】
スロット干渉確認部52は、CPUを含み構成され、端末装置1が複数の中継機2とリンクしている場合に、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSの何れか同士の干渉の有無を定期的に確認する。この干渉は、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSが時間的に重複するかを、リンク済みの中継機2間毎に検出する。当該端末スロットMSが時間的に重複する場合、干渉し、割り当てられた端末スロットMSで情報を送信できないことでも検出可能である。また、リンク応答情報に含まれる干渉有無の情報と自身の端末識別番号とを照合し、干渉の有無を確認しても良いし、送受信が同時に可能な端末装置1の場合、その受信動作により他の端末装置1とのスロット干渉を検出しても良い。或いは、位相差速度検出部53により予測することが可能である。
【0074】
位相差速度検出部53は、CPUを含み構成され、異なる時刻のリンク済みの中継機2間の位相差d
Fと、当該時刻間隔とから、位相差の速度を算出する。
図10に示すように、ある時刻でのタイムフレーム位相差をdF1とし、p(s)後のタイムフレーム位相差をdF2とすると、位相差速度vFは、式(3)で求めることができる。
vF=(dF2−dF1)/p …(3)
【0075】
非干渉グループ作成部54は、CPUを含み構成され、スロット干渉確認部52により干渉が確認される場合に、干渉が生じる中継機2との通信を、異なるタイムフレームFで行うよう仕分けて非干渉グループを作成する。例えば、
図11に示すように、中継機2a、2bが干渉する場合、中継機2a、2bと通信する端末スロット番号が中継機2bの端末スロット番号50で共通する。すなわち、中継機2aのLaを中継機2bの端末スロット番号に変換したLa’が、中継機2bの端末スロット番号Lbと重複する(La’=Lb=50)。そこで、端末装置1は、奇数番のタイムフレームFの端末スロット番号50に対応する番号で中継機2aと通信を行い、偶数番のタイムフレームの端末スロット番号50で中継機2bと通信を行うことで、干渉が回避される。非干渉グループとは、1つのタイムフレームF内で干渉を生じることなく通信できる中継機2のグループであり、例えば、奇数番のタイムフレームFで通信する中継機2のグループG1、偶数番のタイムフレームFで通信する中継機2のグループG2が挙げられる。
【0076】
非干渉グループ更新部55は、CPUを含み構成され、非干渉グループ作成部により非干渉グループが作成された後、前記スロット干渉確認部により干渉の発生又は解消が確認された場合に、前記非干渉グループの新規作成、前記非干渉グループの何れかへの仕分け、又は、前記非干渉グループの何れかの削除により、非干渉グループを更新する。例えば、中継機2a、2bとリンク済みであり、新たに中継機2cとリンクしたい場合、
図12に示すように、中継機2cから割り当てられた端末スロット番号MSが、中継機2a、2bから割り当てられた端末スロット番号MSのいずれとも重複しないとき、何れかの非干渉グループG1,G2或いは両方の非干渉グループG1,G2に仕分ける。
図13に示すように、中継機2a、2bから割り当てられた端末スロット番号MSのいずれとも重複するときは、新たに非干渉グループG3を作成する。また、中継機2bとのリンクが解除された場合、中継機2b用の非干渉グループG2を削除する。さらに、端末装置1とのリンク済みの中継機2の数に変動がなくても、周波数偏差により、スロット干渉が発生又は解消する場合があり、そのような場合でも、非干渉グループの新規作成、前記非干渉グループの何れかへの仕分け、又は、前記非干渉グループの何れかの削除により、非干渉グループを更新する。
【0077】
(中継機2)
図14は、中継機2の制御部60の機能ブロック図である。
図14に示すように、制御部60は、管理情報送信制御部61、リンク応答制御部62、割り当て部63、ロスト要求実行部64、リンク解除部65、空きリスト更新部66、隣接中継機リスト送信制御部67、リングバッファ抽出部68、リングバッファ更新部69を有する。
【0078】
管理情報送信制御部61は、自身が保有する固有の管理情報を送信する制御を行う。すなわち、管理情報送信制御部61は、送信器31に管理情報を端末装置1へ定期的に同報配信させることで管理情報送信部として機能する。
【0079】
この管理情報は、TDMA通信の仕様であり、タイムフレーム長、タイムフレームF内のタイムスロットS数、タイムスロット幅、各タイムスロット位置、タイムスロットSの役割、タイムスロットS内の相対的な送受信タイミング、送受信マージンが含まれる。
【0080】
タイムフレーム長とは、タイムフレームFの時間的な長さである。タイムスロット幅とは、タイムスロットSの時間的な長さである。タイムスロット位置とは、タイムフレームF内の各タイムスロットSの時間的位置を規定するものである。
【0081】
タイムスロットSの役割とは、タイムフレームF内に配列された各タイムスロットSでいかなる装置が情報を送信し、いかなる装置が送信された情報を受信するかを規定するものであり、上記のように管理スロットKS、端末スロットMSが挙げられる。
【0082】
タイムスロットS内の相対的な送受信タイミングとは、各タイムスロットSの開始端点から起算した情報の送受信タイミングであり、情報の送信装置となる端末装置1、中継機2は規定されたタイミングで送信タイミングが検出されるよう送信制御し、情報の受信装置となる端末装置1、中継機2は規定されたタイミングで受信タイミングが検出されるものとして受信窓を設定し、受信待機する目的で使用される。
【0083】
送受信マージンとは、送受信タイミングのばらつきを吸収する期間である。すなわち、送受信タイミングは、タイミング制御の精度は装置1,2間のクロック周波数偏差により、事前に計画したタイミングから実際の送受信タイミングがばらついてしまうため、このばらつきを送受信マージンで吸収する。送受信マージンは、受信窓幅の設定などに使用することができる。
【0084】
リンク応答制御部62は、CPUを含み構成され、リンク要求に対して応答する制御を行う。すなわち、リンク応答制御部62は、送信器31にリンク応答情報を配信させることでリンク応答部として機能する。リンク応答情報としては、例えば、リンク要求した端末装置1に対して割り当てた端末スロットMSの番号、リンク要求が失敗した旨の情報が挙げられる。リンク応答制御部62による配信とは、送信先を特定しない送信であるブロードキャストをいい、リンク応答情報と端末識別番号とをそれぞれ紐付けて配信することで、リンク要求に成功した端末装置1、リンク要求に失敗した端末装置1が自身に関するリンク応答の内容を知ることができる。リンク応答制御部62は、リンク要求の成否を、例えば受信信号強度(RSSI)を計測することにより判定する。すなわち、リンク要求の受信待ち時間の際に、受信信号強度が規定値以上でノイズ、妨害波の受信、又は端末装置1間の送信干渉がない場合、リンク要求の受信に成功したと判定し、この場合に該当しない場合、リンク要求の受信に失敗したと判定する。同様に、リンク応答制御部62は、受信信号強度の計測により、複数の端末装置1間でスロット干渉が生じているかを判定し、端末識別番号と紐付けて干渉有無の情報をリンク応答情報に含めて配信する。
【0085】
リンク応答制御部62は、1つのタイムスロットS内で複数のサブスロットSSによって、複数回リンク応答情報を配信させるようにしても良い。また、リンク応答制御部62は、リンク確認情報を受信し、リンクが継続される旨の情報をリンク応答情報に含めて、リンク確認情報を送信した端末装置1に送信する制御を行う。また、リンク応答制御部62は、送信器31に、後述する端末スロットベース番号を含めてリンク応答情報を端末装置1へ送信させる。
【0086】
割り当て部63は、CPUを含み構成され、空きリストの中からリンク要求を送信した端末装置1に対して未割り当ての端末スロットMSを割り当てる。すなわち、空きリストは、端末装置1が未割り当ての端末スロットMS(すなわち、空きスロットES)の番号のリストであり、記憶部37に記憶されている。割り当て部63は、記憶部37から空きリストを読み出し、その番号の中からリンク要求を送信した端末装置1に対して未割り当ての端末スロットMSを割り当てる。この割り当て方法としては、大きい番号から順に割り当てる方法、小さい番号から順に割り当てる方法が挙げられるが、何れか1つを選択するのであれば種々の方法を採用することができる。
【0087】
ロスト要求実行部64は、CPUを含み構成され、ロスト要求を受信した場合、当該ロスト要求を送信した端末装置1とのリンクを解除する。具体的には、ロスト要求を送信した端末装置1に割り当てた端末スロットMS(すなわち、リンクスロットLS)を解放し、空きスロットESとする。
【0088】
リンク解除部65は、CPUを含み構成され、リンク確認情報を所定期間に所定回数受信しない場合に、端末装置1とのリンクを解除する。すなわち、当該端末装置1に割り当てた端末スロットMS(すなわち、リンクスロットLS)を解放し、空きスロットESとする。所定期間、所定回数は適宜設定、変更可能である。リンク解除部65は、非干渉グループが作成又は更新されると、端末装置1とのリンクを解除する条件を緩和するようにしても良い。この条件としては、例えば、上記所定期間を長くしたり、上記所定回数を増やしたりすることが挙げられる。なお、非干渉グループが作成又は更新されたことは、当該作成又は更新された際にその旨の情報を中継機2が端末装置1から受信することで認識ことができる。
【0089】
空きリスト更新部66は、CPUを含み構成され、リンク要求により割り当てられた端末スロットMSの番号を空きリストから除外する。また、空きリスト更新部66は、リンクが解除された端末装置1に割り当てられた端末スロットMSの番号を、空きリストに追加しても良い。
【0090】
隣接中継機リスト送信制御部67は、隣接中継機リスト(以下、隣接APリストともいう。)を端末装置1に送信制御する。すなわち、記憶部37には、隣接APリストが予め記憶されており、隣接中継機リスト送信制御部67は、記憶部37から隣接APリストを読み出し、送信器31に端末装置1へ同報配信させることで隣接中継機リスト送信部として機能する。隣接APリストとは、自身に隣接配設された中継機2のリストである。隣接APリストには、隣接する中継機2に割り当てられた固有の中継機識別番号が含まれる。ある中継機2とこれに隣接する中継機2にはそれぞれ異なるチャネルが割り当てられているため、チャネル識別番号によって隣接中継機2を識別可能である。すなわち、このチャネル識別番号は、隣接する中継機2を識別する中継機識別番号の一態様である。
【0091】
リングバッファ抽出部68は、リングバッファから1つのバッファ番号を抽出する。すなわち、中継機2には、リングバッファが設けられている。リングバッファは、端末スロットMSの番号に対応するバッファ番号を複数連続してリング状に有するバッファである。このリングバッファは、例えば、記憶部37に設けられた記憶領域である。リングバッファ抽出部68により抽出されたバッファ番号を、端末スロットベース番号と称する。端末スロットベース番号は、リンク応答制御部62により、リンク応答情報に含められて端末装置1に送信される。
【0092】
リングバッファ更新部69は、リングバッファ抽出部68によって抽出されるバッファ番号を、抽出したバッファ番号以外のバッファ番号に更新する。例えば、リングバッファをインクリメントし、抽出されるバッファ番号を次のバッファ番号とする。
【0093】
[4.作用]
本通信システムの作用について説明する。以下では、(4−1)1台の中継機2に複数の端末装置1がリンクする場合、(4−2)1台の端末装置1が複数の中継機2とリンクする場合について分けて説明する。なお、以下で示すフローチャートは、動作の一例を示したものであり、動作順序はフローチャートで示した順序に限定されるものではない。
【0094】
(4−1)1つの中継機2に複数の端末装置1がリンクする場合
(a)迅速な非同期端末の同期化、及び(b)動的タイムスロットの割り当てについて説明する。
【0095】
(a)[迅速な非同期端末の同期化]
中継機2と端末装置1間でのTDMA通信を実現するに当たり、未だ中継機2のTDMA通信仕様を共有していない非同期な端末装置1を中継機2と同期化し、TDMA通信に参加、すなわちリンクさせる必要がある。
【0096】
しかし、複数の非同期な端末装置1が同時にTDMA通信へ参加するための情報通信を行う場合、端末装置1間の送信タイミングが重なり合い、送信干渉が発生し、中継機2が正常に受信できない可能性が生ずる。つまり、中継機2が同じタイミングで受信可能なのは1台の端末装置1だけであり、2台以上の端末装置1からの情報を同時に受信することはできない。したがって、この参加したい非同期な端末装置1が多いほど送信干渉が顕著に発生し、複数回のリトライを余儀なくされ、リンクの確立が遅延する虞がある。
【0097】
この同期化遅延を回避し、迅速な非同期な端末装置1の同期化を実現するため、複数の同期化原理を実施する。これらの同期化原理を説明するに当たり、非同期な端末装置1がTDMA通信に参加するための通信をリンク試行と称する。なお、後述するように、リンク試行I〜IIIは、リンク要求の際の端末スロットMSの決定の仕方がそれぞれ異なっている。
【0098】
リンク試行について、
図15〜
図17を用いて説明する。
図15に示すように、まず、中継機2は、管理情報を同報配信し(ステップS01)、端末装置1は、中継機スキャン部41により、中継機2から同報配信された管理情報を受信する(ステップS02)。これにより、端末装置1は、自身と通信可能な中継機2を識別し、リンク先とする中継機2を決定する(ステップS03)。
【0099】
(リンク試行I)
端末装置1は、リンク要求制御部42により、記憶部37から自身の端末識別番号を読み出し、その一部に対応する番号を関数又はフィルタを用いて抽出する(ステップS04)。そして、当該番号のタイムスロットSを、リンク要求を送信するためのタイムスロットSとし、当該タイムスロットS内のリンク要求専用のサブスロットであるリンク要求スロットS1で、送信器31を介してリンク先とする中継機2にリンク要求を送信する(ステップS05)。このリンク要求には、端末装置1の端末識別番号が含まれる。
【0100】
中継機2がリンク要求を受信した場合(ステップS06のYES)、中継機2は、割り当て部63により記憶部37から空きリストを読み出し、空きリストの中から空きスロットESがあるかを判定し(ステップS07)、空きスロットESがある場合には(ステップS07のYES)、リンク要求を送信した端末装置1に対して、空きスロットESの番号を割り当てる(ステップS08)。
【0101】
次に、リンク応答制御部62により、リンク要求に含まれる端末識別番号から識別される端末装置1に対し、割り当てた番号を含むリンク応答情報を送信し(ステップS09)、端末装置1がリンク応答情報を受信することでリンクが確立する(ステップS10)。すなわち、TDMA通信が開始可能な状態となる。
【0102】
一方、空きスロットESがない場合には(ステップS07のNO)、リンク応答制御部62により、リンク要求が失敗した旨の情報を含むリンク応答情報を、端末装置1に送信する(ステップS11)。この端末装置1は、ステップS02に戻り、他の中継機2からの管理情報を受信し、リンク試行Iを試行する。
【0103】
以上のように、どの端末装置1がいかなるタイミングで中継機2にリンク試行するかは、確率的事象である。このため、リンク要求するタイムスロットSの番号を、ランダムな値のみによって選択するよりも、一意に識別可能な端末識別番号を用いた方が、複数の端末装置1が同時に同一のタイムスロットSを選択する確率は低くなる。これにより、迅速なリンクの確立が可能となる。例えば、2
17台の端末装置1が1台の中継機2に対してリンク要求を送信する場合、最大で2
17台分の送信干渉が生じ得る。これに対し、リンク要求制御部42により、例えば端末識別番号の下位9ビットを抽出した場合、送信干渉は512通りで済むため、殆どの場合は送信干渉することなくリンクを確立することができる。
【0104】
他方、中継機2が複数の端末装置1からのリンク要求の受信に失敗した場合(ステップS06のNO)、
図16に示すように、中継機2は、リンク応答制御部62により、リンク要求の受信に失敗した旨の情報を含むリンク応答情報を、送信干渉を起こした端末装置1を含めて配信し(ステップS12)、端末装置1は、このリンク応答情報を受信し(ステップS13)、リンク試行IIに移行する。
【0105】
(リンク試行II)
送信干渉によりリンク試行Iが失敗した要因は、リンク要求スロットS1の選択の根拠となった端末識別番号の一部が、リンク要求送信元の端末装置1間で同一であったためと考えられる。端末識別番号は、各端末装置1に一意に付与されているため、リンク試行Iで抽出された端末識別番号の一部が同一であったとしても、残りの部分は必ず異なる。
【0106】
そこで、端末装置1は、リンク要求制御部42により、端末識別番号の抽出されなかった残りの部分に対応する番号のタイムスロットSを、リンク要求を送信するタイムスロットSに選択し(ステップS14)、リンク要求情報を中継機2に送信する(ステップS15)。そして、中継機2は、ステップS16に進み、リンク要求の受信ができた場合は(ステップS16のYES)、リンク試行IのステップS07〜S10と同様の処理を行うことで、送信干渉が生じた中継機2ともリンクを確立することができる。
【0107】
(リンク試行III)
リンク試行IIによってもリンクが確立できない場合、すなわちリンク要求の受信ができない場合(ステップS16のNO)は、
図17に示すように、リンク試行I、IIと同様にリンク応答の送信(ステップS12)及び受信(ステップS13)を行い、リンク要求制御部42により、ランダム値によってリンク要求を送信するためのタイムスロットSの番号を選択する(ステップS17)。そして、当該番号に基づきリンク要求の送信(ステップS15)及び受信(ステップS18)を行う。リンク要求の受信ができた場合は(ステップS18のYES)、リンク試行IのステップS07〜S10と同様の処理を行うことで、送信干渉が生じた中継機2ともリンクを確立することができる。一方、リンク要求の受信ができない場合は(ステップS18のNO)、ステップS02に戻る。
【0108】
(変形例)
リンク試行I〜IIIは、主に、リンク要求制御部42によるリンク要求スロットS1の番号の選択方法が異なり、空きスロットESの割り当てやリンク応答についての処理は同様である。リンク試行I〜IIIのシーケンス配列は任意とすることができる。すなわち、シーケンス配列は、リンク試行I→リンク試行II→リンク試行IIIとしても良いし、リンク試行I→リンク試行III→リンク試行IIとしても良いし、少なくとも6通りの組み合わせが考えられる。また、再度リンク試行I〜IIIを実行しても良いし、リンク試行後に、ステップS02の管理情報の受信待ちに戻り、他の未リンクの中継機2に対してリンク試行を実行しても良い。
【0109】
(b)[動的タイムスロットの割り当て]
図18を用いて、動的タイムスロットの割り当てについて説明する。
【0110】
図18に示すように、ステップS07のタイムスロットSの割り当てに際し、中継機2は、ロスト要求実行部64により、当該割り当てるまでの間に、リンク済みの端末装置1からロスト要求を受信したかを確認する(ステップS21)。
【0111】
ロスト要求を受信した場合(ステップS21のYES)、ロスト要求実行部64により、ロスト要求を送信した端末装置1とのリンクを解除する(ステップS22)。すなわち、当該端末装置1に割り当てたリンクスロットLSを空きスロットESとする。そして、空きリスト更新部66により、リンクが解除された端末装置1に割り当てられた端末スロットMSの番号を、空きリストに追加し(ステップS23)、ステップS07に戻る。
【0112】
ロスト要求を受信していない場合(ステップS21のNO)、リンク解除部65より、リンク済みの端末装置1から、所定期間に所定回数のリンク確認情報を受信したかを確認する(ステップS24)。所定期間に所定回数リンク確認情報を受信した場合は(ステップS24のYES)、リンクを継続するものとして判断し、ステップS07に戻る。
【0113】
一方、所定期間に所定回数リンク確認情報を受信しない場合は(ステップS24のNO)、そのリンク確認情報が受信されない端末装置1とのリンクを解除する(ステップS25)。すなわち、当該端末装置1に割り当てたリンクスロットLSを空きスロットESとする。そして、空きリスト更新部66により、リンクが解除された端末装置1に割り当てられた端末スロットMSの番号を、空きリストに追加し(ステップS26)、ステップS07に戻る。
【0114】
上記のように、リンクの継続を希望しない端末装置1からロスト要求を受信した場合や、通信可能範囲外に端末装置1が移動した場合、何らかの要因で通信障害が生じた場合など、所定期間に所定回数のリンク確認情報が受信されない場合には、リンクを解除し、タイムスロットを動的に解放することとした。これにより、端末装置1の数がタイムスロット数を上回る場合でも、空きリストに空きスロットESを1つ以上設けることができ、端末装置1に動的に端末スロットSを割り当てることができる。
【0115】
(4−2)1台の端末装置1が複数の中継機2とリンクする場合
次に、(c)ブラックリスト、ホワイトリストの利用、(d)タイムフレーム位相差の検出と利用、(e)スロット干渉の検出と利用、及び、(f)隣接APリストの利用について説明する。
【0116】
(c)[ブラックリストの利用]
端末装置1が何れかの中継機2とリンクされ、当該中継機2以外の未リンクの中継機2とリンクを確立したい場合を考える。端末装置1は、中継機スキャン部41により、リンク済みの中継機2以外にも未リンクの中継機2の管理情報を受信しているものとする。
【0117】
図19は、ブラックリストの利用について説明するための動作フローチャートである。
図19に示すように、端末装置1は、ステップS05の前に、ブラックリスト生成部45により、ブラックリストを生成する(ステップS31)。例えば、端末装置1が2台の中継機2とリンク済みであり、これらの中継機2から、番号100、200の端末スロットが割り当てられているとすると、ブラックリスト生成部45は、記憶部37に記憶されたリンク済みの各中継機2から割り当てられた端末スロット番号100、200をそれぞれ読み出してリスト化し、100、200が配列されたブラックリストを生成する。ブラックリストには、各100、200の前後の番号のマージンを含んだリストであっても良い。
【0118】
そして、リンク要求制御部42により、例えば、リンク済みの中継機2から割り当てられた端末スロットMSの番号を、未リンクの中継機2にリンク要求を送信するためのタイムスロットSの番号とし、当該中継機2にブラックリストとともにリンク要求情報を送信する(ステップS32)。この場合、ブラックリスト生成部45によりリンク要求情報にブラックリストを含め、リンク要求制御部42がブラックリスト送信制御部47も兼ねる。なお、ブラックリストの送信とリンク要求情報の送信は別々に行っても良い。
【0119】
未リンクの中継機2がリンク要求情報とブラックリストを受信すると(ステップS33)、未リンクの中継機2は、割り当て部63により、空きリストの中から、ブラックリストに含まれる番号100、200を除いて、未割り当ての端末スロットMSを端末装置1に割り当て(ステップS34)、ステップS09へ戻ってリンク応答情報を送信することでリンクを確立することができる。
【0120】
このように、リンク済みの中継機2のリンクスロット番号からブラックリストを生成し、利用することで、端末装置1は、リンク済みの中継機2とは異なる端末スロットMSで他の中継機2とリンクを確立することができる。すなわち、端末装置1は、送信器31が1つしか実装されていない場合、同じタイミングでは1台の中継機2に対してしか情報を送信することができない。そのため、既にリンクが確立している中継機2と送信タイミングが同じにならないように、既に使用されている端末スロット番号をリスト化したブラックリストを利用することで、新たにリンクを希望する中継機2に対してブラックリストの番号を割り当て対象から除外するよう要望を出すことができ、また、中継機2も端末スロットMSの割り当てのやり直しをする必要がなくなり、迅速なリンクの拡張を行うことができる。
【0121】
[ホワイトリストの利用]
端末装置1が何れかの中継機2とリンクされ、当該中継機2以外の未リンクの中継機2とリンクを確立したい場合を考える。端末装置1は、中継機スキャン部41により、リンク済みの中継機2以外にも未リンクの中継機2の管理情報を受信しているものとする。
【0122】
図20は、ホワイトリストの利用について説明するための動作フローチャートである。
図20に示すように、端末装置1は、ホワイトリスト生成部46により、ホワイトリストを生成する(ステップS41)。例えば、端末装置1が2台の中継機2とリンク済みであり、これらの中継機2から、番号100、200の端末スロットが割り当てられているとすると、ホワイトリスト生成部46は、記憶部37から番号100、200以外の端末スロット番号をそれぞれ読み出してリスト化し、100、200以外の端末スロット番号が配列されたホワイトリストを生成する。ホワイトリストには、各100、200の前後の番号のマージンも除いたリストであっても良い。
【0123】
そして、リンク要求制御部42により、例えば、リンク済みの中継機2から割り当てられた端末スロットMSの番号に対応する番号を、未リンクの中継機2にリンク要求を送信するためのタイムスロットSの番号とし、当該中継機2にホワイトリストとともにリンク要求情報を送信する(ステップS42)。この場合、ホワイトリスト生成部46によりリンク要求情報にホワイトリストを含め、リンク要求制御部42がホワイトリスト送信制御部48も兼ねる。なお、ホワイトリストの送信とリンク要求情報の送信は別々に行っても良い。
【0124】
未リンクの中継機2がリンク要求情報とホワイトリストを受信すると(ステップS43)、未リンクの中継機2は、割り当て部63により、空きリストとホワイトリストと重複する番号の中から、未割り当ての端末スロットMSを端末装置1に割り当て(ステップS44)、ステップS09へ戻ってリンク応答情報を送信することでリンクを確立することができる。
【0125】
このように、リンク済みの中継機2のリンクスロット番号からホワイトリストを生成し、利用することで、端末装置1は、リンク済みの中継機2とは異なる端末スロットMSで他の中継機2とリンクを確立することができる。すなわち、端末装置1は、同じタイミングでは1台の中継機2に対してしか情報を送信することができない。そのため、既にリンクが確立している中継機2と送信タイミングが同じにならないように、通信可能な番号が配列されたホワイトリストを利用することで、新たにリンクを希望する中継機2に対してホワイトリストの番号の中から端末スロットを割り当てるように要望することでき、また、中継機2も端末スロットMSの割り当てのやり直しをする必要がなくなり、迅速なリンクの拡張を行うことができる。
【0126】
(d)[タイムフレーム位相差の検出と利用]
1台の端末装置1が複数の中継機2とリンクする場合、中継機2間のタイムフレーム位相差を知る必要がある。すなわち、中継機2間は、通信しないことを前提としているので非同期状態となり、また、中継機2はそれぞれ固有の周波数偏差を有することから、各中継機2の時間の流れ方が異なり得る。そのため、ある瞬間にタイムフレーム位相差が存在する場合、一方の中継機2でのタイムスロットSから他方の中継機2のタイムスロットSまでの時間差を求めるにはタイムフレーム位相差が必要となる。
【0127】
図21は、タイムフレーム位相差を検出する動作フローチャートである。
図21に示すように、端末装置1は、まず、中継機スキャン部41により、例えば2台の中継機2a、2bから同報配信された管理情報をそれぞれ受信し(ステップS51)、受信タイミング検出部34により、これらの管理情報の受信タイミングta、tbを検出する(ステップS52)。これらの管理情報は、受信タイミングta、tbとセットにして、例えば記憶部37に記憶される。これらの管理情報には、各中継機2a、2bのTDMA通信仕様であるタイムフレーム長、タイムスロット数、タイムスロット幅wa、wb、受信タイミングta、tbの受信タイムスロット番号sa、sb等が含まれている。
【0128】
次に、位相差検出部49は、記憶部37から各管理情報と受信タイミングta、tbとを読み出し、上記式(1)に基づき、タイムフレーム位相差d
Fを求める(ステップS53)。
【0129】
求めたタイムフレーム位相差の利用態様について説明する。その利用態様としては、(i)リンク要求スロットの決定、(ii)ブラックリスト、ホワイトリストの生成が挙げられる。求めたタイムフレーム位相差は、リンク済みの中継機2と、未リンクの中継機2との位相差であるものとする。
【0130】
(i)リンク要求スロットの決定
図22は、リンク要求スロットの決定を示す動作フローチャートである。
【0131】
端末装置1が未リンクの中継機2にリンク要求を送信する際、上記の通り、リンク要求制御部42は、リンク済みの中継機2から割り当てられたリンクスロットLSの番号Laに対応する番号を、リンク要求を送信する端末スロット番号Lbとする。これにより、リンク要求の送信干渉が発生する確率を低減できるからである。すなわち、ある中継機2aとリンクした端末装置1aが他の未リンクの中継機2bとリンクを希望する場合、リンク済みの中継機2aとリンクした他の端末装置1bも同様に当該他の未リンクの中継機2bとリンクを希望する場合が考えられる。リンク済みの中継機2aにより各端末装置1a、1bに割り当てられたリンクスロットLSの番号は、それぞれ異なっているので、中継機2aにリンクされている関係をそのまま中継機2bにも適用することで、干渉発生確率を下げられ、迅速にリンクを拡張しようという考えに基づく(
図25参照)。
【0132】
ここで、番号Laと番号Lbは対応関係にあるが、中継機2間が非同期であり、また中継機2間に周波数偏差があるため、一般には、番号Lbは番号Laと一致しない。すなわち、
図22に示すように、番号変換部50により、求められたタイムフレーム位相差d
Fに基づいて、番号Laを、番号Lbに変換する(ステップS61)。例えば、タイムフレームFa、FbにタイムスロットSが隙間なく敷き詰められているとすると、番号変換部50は、上記の式(2)に基づき、番号の変換を行うことができる。
Lb=(La×wa−d
F)/wb …(2’)
【0133】
次に、番号変換部50により、番号Lbと番号Laが等しくないかを判断する(ステップS62)。例えば、番号変換部50は、判定式「|La−Lb|<規定値」により、番号Lbと番号Laが等しくないかを判断する。この規定値は、予め設定した値であり、番号LaとLbの差分の大きさがこの規定値より小さい場合には、両番号が等しいと判定し、当該差分の大きさがこの規定値以上である場合には、両番号が等しくないと判定する。一般には、番号Lbは番号Laと一致しないため(ステップS62のYES)、リンク要求制御部42は、リンク済みの中継機2と干渉することなく、未リンクの中継機2に対してリンク要求を送信することができる。
【0134】
一方、タイムフレームFa、Fbの開始端点が同じタイミングで位相差がd
F=0、かつ、タイムスロット幅wa、wbが同じであるとき、上記式(2’)から明らかなように、番号Lbが番号Laと一致する(ステップS62のNO)。この場合、送信干渉を起こしてしまい、番号Lbの端末スロットで未リンクの中継機2にリンク要求ができない。
【0135】
そこで、このような場合には、番号補正部51により、番号La(=Lb)を補正する(ステップS63)。ここでは、所定量オフセットする。例えば、番号補正部51は、番号Laにオフセット量50を加算し、リンク要求制御部42は、La+50の番号のタイムスロットSを、リンク要求用の端末スロットとしてリンク要求をする。これにより、リンク済みの中継機2との送信干渉を回避することができ、迅速なリンクの拡張に繋げることができる。
【0136】
(ii)ブラックリスト、ホワイトリストの生成
上記の通りブラックリストを生成する際、リンク済みの中継機2から割り当てられたリンクスロット番号を利用するが、中継機2間が非同期であり、また中継機2間に周波数偏差があるため、当該リンクスロット番号を、未リンクの中継機2による割り当ての際に除外されていても、通信干渉が生じる可能性がある。つまり、リンク済み中継機2のリンクスロット番号と、未リンクの中継機2で割り当ての際に除外されるべき番号とは必ずしも一致しない。そのため、リンク済み中継機2のリンクスロット番号は、未リンクの中継機2では何番に対応するかを求める必要がある。
【0137】
すなわち、端末装置1は、ステップS31として、番号変換部50により、求められたタイムフレーム位相差d
Fに基づいて、リンク済みの中継機2との間で割り当てられたリンクスロットLSの番号Laを、未リンクの中継機2における端末スロットMSの番号xbに変換する。例えば、タイムフレームFa、FbにタイムスロットSが隙間なく敷き詰められているとすると、番号変換部50は、下記の式(2)に基づき、番号の変換を行うことができる。
xb=(La×wa−d
F)/wb …(2)
【0138】
このxbが、リンク済みの中継機2のリンクスロット番号Laに対応する未リンクの中継機2の端末スロットMSの番号であり、ブラックリストに含められるべき番号である。この変換後の番号を含めて端末装置1は、ブラックリスト生成部45によりブラックリストを生成する。
【0139】
これにより、未リンクの中継機2が、より正確な端末スロットMSの割り当てが可能となり、端末装置1が同一タイミングで2以上の中継機2と通信不可となる事態を回避することができる。
【0140】
なお、変形例として、ブラックリスト生成部45によって、番号xbの前後のマージンを含む番号列を含むブラックリストを生成しても良い。周波数偏差によりタイムフレーム位相差が時々刻々変化する。そのため、番号xbがリンクスロット番号Laとの対応から外れる可能性があるが、その前後にマージンを設けているので、未リンクの中継機2が、より正確な端末スロットMSの割り当てが可能となり、端末装置1が同一タイミングで2以上の中継機2と通信不可となる事態を回避することができる。タイムフレーム位相差の変化には、定期的、例えばタイムフレーム毎に求め直すことで対応することができる。また、中継機2間が非同期であるが故に、上記式(2)の右辺が割り切れず、番号xbが小数点以下の値を含み得るが、ブラックリスト生成部45により番号xbの整数部分の前後のマージンを含むブラックリストを生成することで、未リンクの中継機2が、より正確な端末スロットMSの割り当てが可能となり、端末装置1が同一タイミングで2以上の中継機2と通信不可となる事態を回避することができる。
【0141】
また、ホワイトリストの生成の際にも、上記の番号変換と同様である。すなわち、端末装置1は、ステップS41として、番号変換部50により、例えば式(2)に基づいて番号xbを求める。端末スロットMSに付された番号(例えば、0〜511から管理スロット番号を除いた番号)のうち、番号xb以外の番号がホワイトリストに含められるべき番号である。この変換後の番号を除くようにホワイトリストを作成することで、端末装置1が同一タイミングで2以上の中継機2と通信不可となる事態を回避することができる。
【0142】
なお、変形例として、上記と同様に、ホワイトリスト生成部46によって、端末スロットMSに付された番号から、番号xbの前後のマージンを含む番号列を除いた番号を含むホワイトリストを生成するようにしても良い。
【0143】
(e)[スロット干渉の検出と利用]
端末装置1が複数の中継機2a、2bとリンクしている場合について考える。あるタイミングでリンクが重なりなく成立していたとしても、周波数偏差により、端末装置1が、中継機2aと通信するタイミング、中継機2bと通信するタイミングが重なる可能性がある。つまり、各中継機2a、2bから割り当てられたリンクスロット番号をLa、Lbとすると、あるタイミングでは一致していなくても、時間の経過に伴ってタイムフレーム位相差d
Fが変化(例えば、拡大又は縮小)するため、別のあるタイミングでは一致する可能性がある。この割り当てられたリンクスロット番号のタイミングの一致をスロット干渉という。
【0144】
そこで、端末装置1は、スロット干渉が生じているかを確認し、必要に応じて非干渉グループを作成し、スロット干渉を回避する。
図23は、スロット干渉の検出と利用についての動作フローチャートである。
【0145】
図23に示すように、端末装置1は、スロット干渉確認部52により、スロット干渉の有無を定期的に確認する(ステップS71)。すなわち、リンク済みの中継機2a、2bから割り当てられたリンクスロット番号をLa、Lbとした場合、番号変換によりLaを中継機2bに対応するLa’へ変換したとき、La’=Lbとなってスロット干渉が生じたかを定期的に確認する。或いは、スロット干渉は、位相差検出部49によって、異なる時刻で位相差dF1、dF2を求め、位相差速度検出部53により、当該時間間隔pと位相差dF1、dF2とから、上記式(2)に基づき、位相差速度vFを求めて予測しても良い。
【0146】
スロット干渉が確認されない場合は(ステップS71のNO)、ステップS73に進む。一方、スロット干渉が確認される場合は(ステップS71のYES)、非干渉グループ作成部54により、非干渉グループを作成する(ステップS72)。非干渉グループは排他的に作成する。例えば、非干渉グループ作成部54は、奇数番のタイムフレームFで通信する中継機2aのグループG1と、偶数番のタイムフレームFで通信する中継機2bのグループG2とを作成する。これにより、グループによってタイムフレームFが異なるので、リンクスロット番号が一致しても、スロット干渉を回避することができる。
【0147】
次に、非干渉グループ更新部55により、リンク済みの中継機2の数に変化があったかを確認する(ステップS73)。その数に変化がある場合は(ステップS73のYES)、非干渉グループ更新部55は、非干渉グループを更新する(ステップS74)。
【0148】
例えば、数が増大した場合は、新たにリンクが確立された中継機2cがいずれの中継機2a、2bのリンクスロットLSと干渉するかをスロット干渉確認部52により確認し、いずれとも干渉しない場合、グループG1、G2の何れか又は両方の非干渉グループに仕分け、非干渉グループG1,G2を更新する。何れかに干渉する場合は、干渉しない方のグループG1,G2に仕分ける。また、いずれとも干渉する場合は、新たに非干渉グループG3を作成し、端末装置1は、3n番のタイムフレームFで中継機2aと通信し、(3n+1)番のタイムフレームFで中継機2bと通信し、(3n+2)番のタイムフレームFで中継機2cと通信する。これにより、干渉を回避することができる。
【0149】
一方、数が減少した場合、中継機2a、2bの何れかがリンクを解除されたことを意味する。そのため、非干渉グループ更新部55は、リンクが解除された中継機2が属するグループを削除する。
【0150】
非干渉グループの更新後、通信システムの停止があれば(ステップS75のYES)、終了し、なければ(ステップS75のNO)、ステップS71へ戻る。
【0151】
一方、リンク済みの中継機2の数に変化がない場合は(ステップS73のNO)、スロット干渉確認部52は、非干渉グループを解消して元に戻した場合にスロット干渉が生じるかを確認する(ステップS76)。スロット干渉が生じる場合は(ステップS76のYES)、スロット干渉が解消されていないと判断し、ステップS73に戻る。スロット干渉が生じない場合は(ステップS76のNO)、スロット干渉が解消されると判断し、ステップS74に進み、非干渉グループ更新部55により、非干渉グループを統廃合する更新を行う。非干渉グループの統廃合とは、スロット干渉が生じなくなった中継機2が属する非干渉グループを削除するとともに、当該中継機2を何れかの非干渉グループに追加することをいう。
【0152】
なお、ステップS72、S74の後に、中継機2は、非干渉グループが作成又は更新されると、端末装置1とのリンクを解除する条件を緩和するようにしても良い。この条件の緩和は、リンク解除部65によって行う。すなわち、端末装置1が非干渉グループを作成又は更新した時点でその旨の情報を中継機2に送信し、中継機2は当該情報を受けてリンク解除部65により、所定期間を延ばしたり、所定回数を増やしたりしても良い。
【0153】
このように条件を緩和するのは、非干渉グループが作成されると、タイムフレームに分けて通信順序を交番にするため、所定期間内に通信する回数が減ることとなる。つまり、通信できないタイムフレームがあっても、誤ってリンクが解除されるのを防止し、リンクをなるべく維持することができる。これにより、端末装置1は少なくとも何れかの中継機2とリンクされた状態を保つことができる。本システムを位置把握システムとして利用する場合、常時の位置の把握が可能になる。
【0154】
(f)[隣接APリストの利用]
端末装置1が、少なくとも1台の中継機2aとリンクしており、当該中継機2aと隣接する中継機2bと新たにリンクを確立したい場合について考える。隣接APリストは、この中継機2bに当該端末装置1とは別の他の端末装置1bからのリンク要求と、当該端末装置1からのリンク要求が干渉する場合に利用される。なお、端末装置1bは、他の中継機2cとリンクしているものとする。
【0155】
図24は、隣接APリストの利用について説明する動作フローチャートである。
図24に示すように、端末装置1は、中継機スキャン部41により、中継機2aに隣接する隣接中継機2をスキャンし、未リンクの中継機2bから管理情報を受信する(ステップS81)。そして、中継機2aのリンクスロット番号Laを、中継機2bに対するリンク要求を送信する端末スロット番号として、中継機2bにリンク要求情報を送信する(ステップS82)。
【0156】
中継機2bがリンク要求情報を受信できる場合は(ステップS83のYES)、ステップS07以降と同様であるので、説明を省略する。
【0157】
中継機2bがリンク要求情報を受信できない場合は(ステップS83のNO)、妨害波などの他システムからの干渉が生じたことに原因とも考えられ、また、当該端末装置1以外の他の端末装置1bからのリンク要求と干渉したことが原因とも考えられる。そこで、後者を想定して、中継機2bは、リングバッファ抽出部68により、リングバッファから1つのバッファ番号を抽出し(ステップS84)、リンク応答制御部62により、端末装置1、1bに対し、リンク応答として、端末スロットベース番号を含めたリンク応答情報を送信する(ステップS85)。
【0158】
このリンク応答情報を受信した端末装置1は、リンク要求制御部42により、既に受信している中継機2bの管理情報に含まれる隣接APリストから、リンク済み中継機2aに割り当てられたチャネル識別番号を取得する(ステップS86)。そして、リンク要求制御部42は、このチャネル識別番号と端末スロットベース番号との線形結合を求め、当該線形結合に対応する番号のタイムスロットSを、リンク要求を送信するためのタイムスロットSとして選択し(ステップS87)、中継機2bにリンク要求を送信する(ステップS88)。
【0159】
端末装置1bについても同様に、ステップS86〜S88が実行される。ここで、端末装置1bと端末スロットベース番号は共通であるが、端末装置1、1bはリンクしている中継機2a、2cと異なることから、チャネル識別番号が異なっている。そのため、中継機2bにリンク要求するタイムスロット番号を異ならせることができ、送信干渉を回避して、新たな中継機2bと迅速にリンクを確立することができる。
【0160】
なお、中継機2bは、リンク要求を受信すると(ステップS89)、リングバッファ更新部69により、リングバッファ抽出部68によって抽出されるバッファ番号を、抽出したバッファ番号以外の番号を更新し(ステップS90)、ステップ07以降の端末スロット番号の割り当て、リンク応答に進み、リンクを確立する。なお、ステップS90の抽出バッファ番号の更新は、ステップS89の後でなくとも、ステップS84より後であって、ステップS89までに実行しても良い。
【0161】
[5.効果]
(1)本実施形態の通信システムは、中継機2と複数の端末装置1を有し、中継機2と端末装置1とがリンクして時分割多元接続方式で通信する通信システムであって、通信の単位であるタイムフレームFが、番号により識別される複数のタイムスロットSに分割され、端末装置1は、個別に割り当てられた端末識別番号と、中継機2とのリンクを要求するリンク要求を中継機2に送信するリンク要求部と、を有し、リンク要求部は、端末識別番号の一部に対応する番号のタイムスロットSを、リンク要求を送信するためのタイムスロットSとするようにした。
【0162】
これにより、端末装置1が、一意に識別可能な端末識別番号の一部に対応する番号を用いてリンク要求を送信しているので、複数の端末装置1が同時に同一のタイムスロットSでリンク要求を送信し、干渉が生じる可能性を低くすることができる。その結果、迅速なリンクの確立が可能となる。
【0163】
(2)リンク要求部は、中継機2がリンク要求の受信に失敗した場合に、端末識別番号の一部以外の端末識別番号の残りの番号に対応する番号のタイムスロットSを、リンク要求を送信するためのタイムスロットとするようにした。
【0164】
これにより、迅速なリンクの確立が可能となる。すなわち、中継機2がリンク要求の受信に失敗するのは、複数の端末装置1から同じ番号のタイムスロットSでリンク要求が送信され、干渉が生じたためと考えられる。つまり、抽出した端末識別番号の一部に対応する番号が同じであったためと考えられる。端末識別番号が端末装置1を一意に識別可能に個別に割り当てられた番号であるため、端末識別番号を抽出した残りの部分は、干渉が生じた複数の端末装置1間で必ず異なる。この端末識別番号の残りの番号に対応する番号のタイムスロットSでリンク要求を送信するので、送信干渉が回避され、迅速にリンクを確立することができる。特に、中継機2に対してリンク済みの端末装置1がなく、未リンクの端末装置1が一斉にリンクを確立したい場合は、このリンク要求(リンク試行II)を実行することで、リンクを確立することができる。
【0165】
(3)中継機2は、リンク要求に対して応答するリンク応答部を有するようにした。これにより、端末装置1がリンク要求に成功したか、失敗したかを認知することができる。
【0166】
(4)リンク応答部は、リンク要求の受信に失敗した場合に、その旨の情報を、リンク要求を送信した端末装置1を含めて配信するようにした。これにより、端末装置1がリンク要求に失敗したことを認知することができ、次のアクションを取ることができる。
【0167】
(5)タイムフレームFは、端末装置1の情報を端末装置1が中継機2に送信するためのタイムスロットSとして端末スロットMSを複数有し、中継機2は、端末装置1が未割り当ての端末スロットMSの番号のリストである空きリストと、空きリストの中からリンク要求を送信した端末装置1に対して未割り当ての端末スロットMSを割り当てる割り当て部63と、を有し、リンク応答部は、割り当て部63により割り当てられた端末スロットMSの番号を、リンク要求を送信した端末装置1に送信するようにした。
【0168】
これにより、端末装置1と中継機2とのリンクが確立し、他の端末装置1との干渉なくTDMA通信をすることができる。
【0169】
(6)中継機2は、リンクが解除された端末装置1に割り当てられた端末スロットMSの番号を空きリストに追加する空きリスト更新部66を有するようにした。これにより、迅速にリンクを確立することができる。特に、端末スロット数が端末装置1の数より少ない場合に有効である。すなわち、この場合、全ての端末スロットMSがリンクスロットLSとなっているとき、リンク要求を送信した端末装置1は当該中継機2とリンクできず、リンク要求をやり直すことになり、リンクの確立が遅延する。これに対し、リンクが解除された端末スロット番号を追加するよう空きリストを更新することで、リンク要求に対する空きスロットESの割り当てが可能となり、迅速なリンクを確立することができる。
【0170】
(7)端末装置1は、リンクした中継機2に対してリンク解除を要求するロスト要求を送信するロスト要求送信部を有し、中継機2は、ロスト要求を受信すると、当該ロスト要求を送信した端末装置1とのリンクを解除するロスト要求実行部64を有するようにした。これにより、空きスロットESを確保することができ、迅速なリンクを確立することができる。
【0171】
(8)端末装置1は、リンクした中継機2に対してリンク確認情報を定期的に送信するリンク確認情報送信部を有し、中継機2は、リンク確認情報を所定期間に所定回数受信しない場合に、端末装置とのリンクを解除するリンク解除部65を有するようにした。これにより、空きスロットESを確保することができ、迅速なリンクを確立することができる。
【0172】
(9)タイムスロットSは、複数のサブスロットSSを有し、1つのタイムスロットS内において、リンク要求部が1つのサブスロットSSでリンク要求を送信し、リンク応答部が1つのサブスロットでリンク応答を送信するようにした。これにより、1つのタイムスロットS(端末スロットMS)内でリンクが確立するので、迅速なリンクを確立することができる。
【0173】
(10)端末識別番号の一部Mに対応する番号g(M)が、端末スロット番号の何れかと対応し、残りの番号Nに対応する番号f(N)が、端末スロットの番号の何れかと対応し、リンク要求部は、残りの番号に対応する番号f(N)の前記端末スロットを、リンク要求を送信するための端末スロットとして、次のタイムフレームの上記一部に対応する端末スロットの番号g(M)までに、リンク要求を送信するようにしたので、迅速にリンクを確立することができる。すなわち、g(M)<f(N)の関係であれば、端末スロット番号Mでのリンク要求の受信に失敗しても、同一のタイムフレーム内でリンク要求(リンク試行II)を送信でき、g(M)>f(N)であっても、次のタイムフレームの端末スロット番号g(M)までにリンク要求(リンク試行II)を送信することができるので、次のタイムフレームの番号g(M)まで待つ必要がない。
【0174】
(11)中継機を複数有し、リンク要求部は、リンク要求を送信した中継機2以外の未リンクの中継機2にリンク要求を送信するようにした。これにより、端末装置1がある中継機2へのリンク要求が失敗しても、別の中継機2にリンク要求を送信するので、迅速なリンクの確立が可能となる。また、何れかの中継機2とのリンクが確立した後も、端末装置1は別の中継機2とリンクを確立することができ、仮に何れかの中継機2とのリンクが解除等により切れたとしても、システムとの繋がりを維持することができる。
【0175】
(12)端末装置1が、いずれかの中継機2とリンクされ、当該中継機2以外の未リンクの中継機2とリンクする場合において、リンク要求部は、未リンクの中継機2にリンク要求を送信するためのタイムスロットSの番号を、リンク済みの中継機2との間で割り当てられたタイムスロットSの番号に対応する番号として、未リンクの中継機2にリンク要求を送信するようにした。
【0176】
これにより、リンク要求の送信干渉が発生する確率を低減し、迅速なリンクを確立することができる。すなわち、
図25に示すように、リンク済みの中継機2aには、他の端末装置1b、1cも複数リンクされていると考えられ、中継機2aにリンクしている端末装置1a、1b、1cが未リンクの中継機2bに対してリンクを拡張したい場合、リンク要求するタイムスロットSの番号を、中継機2aからそれぞれの端末装置1a、1bに割り当てられているリンクスロット番号La、Lb、Lcに対応する番号として、未リンクの中継機2bにリンク要求を送信する。リンクスロット番号La、Lb、Lc自体がそれぞれ異なっているので、干渉の可能性を低減することができる。換言すれば、中継機2aにリンクされている関係をそのまま中継機2bにも適用することで、干渉発生確率を下げられ、迅速にリンクを拡張することができる。
【0177】
(13)端末装置1が、いずれかの中継機2とリンクされ、当該中継機2以外の未リンクの中継機2とリンクする場合において、端末装置1は、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSに対応する番号を含むブラックリストを、未リンクの中継機に送信するブラックリスト送信部を有し、中継機2は、割り当て部63が、空きリストの中からブラックリストに含まれる番号を除いて、未割り当ての端末スロットを割り当てるようにした。これにより、リンク済みの中継機2と重複することなく端末スロットMSを割り当てることができるので、迅速にリンクを確立することができる。
【0178】
(14)端末装置1が、いずれかの中継機2とリンクされ、当該中継機2以外の未リンクの中継機2とリンクする場合において、端末装置1は、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSに対応する番号以外の番号を含むホワイトリストを、未リンクの中継機2に送信するホワイトリスト送信部を有し、中継機2は、割り当て部63が、空きリストとホワイトリストの両方に含まれる番号の中から、未割り当ての端末スロットMSを割り当てるようにした。
【0179】
これにより、リンク済みの中継機2と重複することなく端末スロットMSを割り当てることができるので、迅速にリンクを確立することができる。また、複数のブラックリストが重複する場合もある。そうすると、複数のブラックリストを送信するより、予め割り当て除外する区間を求めておき、その区間を外した区間で割り当ててもらうようにホワイトリストを生成すれば、当該ホワイトリスト1つ送信するだけで済むので情報量を削減することができる。送信できる情報量に上限があって、全てのブラックリストが送信できない場合でも、効率的なタイムスロットの割り当てが可能となる。
【0180】
(15)端末装置1は、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSの番号と、その前後の所定数の端末スロットMSの番号を含むブラックリストを生成するブラックリスト生成部45を有するようにした。これにより、リンク済みの中継機2と未リンクの中継機2との間にタイムフレーム位相差があっても、ブラックリスト作成の際に、マージンを含んでいるので、リンク済みの中継機2と重複することなく端末スロットMSを割り当てることができ、迅速にリンクを確立することができる。
【0181】
(16)ブラックリスト生成部45は、ブラックリストに含まれるべき番号を連続して有する複数の番号群が一部重複又は連続している場合に、複数の番号群に含まれる番号のうち、最小の番号から最大の番号までの連続した番号列を範囲とするブラックリストを生成するようにした。これにより、中継機2に送信する情報量を削減することができる。つまり、複数の番号群を別々のブラックリストにして送信すると、データ量が多くなるが、予め端末装置1が1つのブラックリストに纏めるので、データ量を減らすことができる。また、多くの端末装置1と通信する中継機2の負担を減らすことができる。
【0182】
(17)端末装置1は、端末スロットMSの番号列から、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSの番号と、その前後の所定数の端末スロットMSの番号を除いた番号列を範囲とするホワイトリストを生成するホワイトリスト生成部46を有するようにした。これにより、リンク済みの中継機2と未リンクの中継機2との間にタイムフレーム位相差があっても、ホワイトリスト作成の際に、マージンを含んでいるので、リンク済みの中継機2と重複することなく端末スロットMSを割り当てることができ、迅速にリンクを確立することができる。
【0183】
(18)端末装置1は、中継機2間のタイムフレームFの位相差を算出する位相差算出部49と、リンク済みの中継機2と未リンクの中継機2との間の位相差に基づいて、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSの番号を、未リンクの中継機における端末スロットMSの番号に変換する番号変換部50と、を有し、ブラックリストは、番号変換部50により変換した後の番号を含むようにした。これにより、中継機2間が同期していなくても、リンク済みの中継機2と重複することなく端末スロットMSを割り当てることができ、迅速にリンクを確立することができる。
【0184】
(19)端末装置1は、中継機2間のタイムフレームFの位相差を算出する位相差算出部49と、リンク済みの中継機2と未リンクの中継機2との間の位相差に基づいて、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSの番号を、未リンクの中継機2における端末スロットMSの番号に変換する番号変換部50と、を有し、ホワイトリストは、番号変換部50により変換した後の番号以外の番号を含むようにした。これにより、中継機2間が同期していなくても、リンク済みの中継機2と重複することなく端末スロットMSを割り当てることができ、迅速にリンクを確立することができる。
【0185】
(20)端末装置1は、変換後の番号とその変換前の番号とが同一であるとき、当該番号を当該番号以外の番号に補正する番号補正部51を有し、リンク要求部は、補正した番号に対応する端末スロットMSを、未リンクの中継機2にリンク要求を送信するためのタイムスロットSとするようにした。これにより、リンク済みの中継機2と重複することなく端末スロットMSを割り当てることができ、迅速にリンクを確立することができる。
【0186】
(21)番号補正部51による補正は、オフセットとした。これにより、複雑な補正をせずとも、簡便に送信干渉を回避することができる。
【0187】
(22)番号補正部51によるオフセット量は、中継機2毎に異なるようにした。これにより、リンク済みの中継機2と重複することなく端末スロットMSを割り当てることができ、迅速にリンクを確立することができる。なお、オフセット量が中継機2毎に異ならせなくても、例えば非干渉グループを作成し、リンク済みの中継機2との通信と、未リンクの中継機2との通信(例えば、リンク試行)とを時間的に分けるようにしても良い。
【0188】
(23)端末装置1が複数の中継機2とリンクしている場合において、端末装置1は、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSの何れか同士の干渉の有無を定期的に確認するスロット干渉確認部52と、スロット干渉確認部52により干渉が確認される場合に、干渉が生じる中継機2との通信を、異なるタイムフレームFで行うよう仕分けて非干渉グループを作成する非干渉グループ作成部54と、を有するようにした。これにより、スロット干渉が生じる場合でも、非干渉グループを作成することで干渉を回避することができる。
【0189】
(24)端末装置1は、非干渉グループ作成部54により非干渉グループが作成された後、スロット干渉確認部52により干渉の発生又は解消が確認された場合に、非干渉グループの新規作成、非干渉グループの何れかへの仕分け、又は、非干渉グループの何れかの削除により、非干渉グループを更新する非干渉グループ更新部55を有するようにした。これにより、端末装置1が新たに中継機2とリンクする場合でも、状況に合わせてスロット干渉を回避することができ、柔軟なシステム運営が可能となる。また、中継機2とのリンク数に変動がなくても発生又は解消するスロット干渉にも対応することができる。
【0190】
(25)スロット干渉確認部52は、リンク済みの中継機2との間で割り当てられた端末スロットMSが時間的に重複するかを、リンク済みの中継機2間毎に検出するようにした。これにより、中継機2のリセットなどによって中継機2のタイムフレームのタイミングが不連続に変化するような予測不能な事態に対応することができる。
【0191】
(26)端末装置1は、異なる時刻のリンク済みの中継機2間のタイムフレームFの位相差と、当該時刻間隔とから、位相差の速度を算出する位相差速度算出部53を有するようにした。これにより、実際にスロット干渉が生じる前にスロット干渉を予測することができ、スロット干渉が起きる前にスロット干渉を回避する措置を取ることができる。
【0192】
(27)中継機2は、非干渉グループが作成又は更新されると、端末装置1とのリンクを解除する条件を緩和するようにした。これにより、端末装置1と中継機2とのリンクをできるだけ長く継続することができる。すなわち、非干渉グループが作成又は更新されると、端末装置1はタイムフレームFに分けて通信順序を交番にするため、各中継機2との通信する間隔が延びるので、それによってリンク解除部65がリンクを解除するという誤作動を防止することができる。その結果、確立したリンクを長く維持できるので、端末装置1が通信システムと未接続となる事態を防止できる。
【0193】
(28)端末装置1が、いずれかの中継機2とリンクされ、当該中継機2以外の未リンクの中継機2とリンクする場合において、端末装置1は、リンク済みの中継機2に隣接する隣接中継機2のチャネル識別番号を有する隣接中継機リストに基づいて、隣接中継機をスキャンして検知する中継機スキャン部を有し、リンク要求部は、検知した隣接中継機2に対してリンク要求を送信するようにした。これにより、隣接する中継機2のみをスキャンすることになり、通信システムが有する全ての中継機2をスキャンする必要がないので、中継機2からの管理情報の受信を早くすることができる。例えば、中継機2に割り当てられたチャネル数が40とし、ある中継機2に隣接する中継機数が6とすると、40のチャネルをスキャンする必要がなくなり、6つのチャネルをスキャンすれば済む。
【0194】
(29)中継機2には、隣接する全ての中継機2と異なるチャネルがそれぞれ割り当てられ、中継機2は、隣接中継機リストと、隣接中継機リストを端末装置1に送信する隣接中継機リスト送信部と、を有し、端末装置1は、隣接中継機リストを中継機2から受信する隣接中継機リスト受信部を有するようにした。隣接中継機リストは、中継機2が設置される時点で決まるものであるため、予め中継機2が有している。一方、端末装置1は、中継機2間を自由に移動可能であり、どの中継機2とリンクするかは流動性がある。そのため、中継機2が隣接中継機リストを送信し、端末装置1が隣接中継機リストを受信することで、予め端末装置1が全ての中継機リストを有することなく、必要なときに必要な中継機リストを得ることができる。
【0195】
(30)端末装置1が、いずれかの中継機2とリンクされ、当該中継機2以外の未リンクの中継機2とリンクする場合に、未リンクの中継機2が他の端末装置1からもリンク要求が成されている場合において、中継機2は、隣接中継機の中継機識別番号と、端末スロットMSの番号に対応した端末スロットベース番号と、を端末装置1に送信し、端末装置1は、リンク要求部が、中継機識別番号と端末スロットベース番号との線形結合に対応する番号のタイムスロットSを、リンク要求を送信するためのタイムスロットSとして、未リンクの中継機2にリンク要求を送信するようにした。これにより、ある中継機2にリンク要求が干渉したとしても、中継機識別番号と端末スロットベース番号との和に対応する番号は、端末装置1間で異なるので、次のリンク要求を干渉することなく送信することができ、迅速にリンクを確立することができる。
【0196】
(31)中継機2は、端末スロットMSの番号に対応するバッファ番号を複数連続して有するリングバッファを有し、リングバッファの何れかのバッファ番号を抽出し、当該バッファ番号を端末スロットベース番号として端末装置1に送信し、次に抽出するバッファ番号を抽出したバッファ番号以外のバッファ番号に更新するようにした。これにより、リンク応答毎に、異なるバッファ番号から生成される端末スロットベース番号を端末装置1に配信することにより、各端末装置1からの次回のリンク要求送信の干渉を回避することができる。また、現在のリンク要求スロット直後に端末スロットベース番号が割り当てられる可能性が高くなるため、迅速にリンクを確立することができる。
【0197】
[5.他の実施形態]
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0198】
例えば、通信システムは、ブラックリスト生成部45、ホワイトリスト生成部46の何れか一方のみ有していても良い。また、ロスト要求送信制御部及びロスト要求実行部64を含むロスト要求部、リンク解除部65の何れか一方のみ有していても良い。
【0199】
また、上記の実施形態では、タイムフレームFを複数のタイムスロットSで分割し、タイムフレームFにタイムスロットSを隙間なく敷き詰めて構成することを前提としたが、隣接タイムスロットS間に隙間を設けても良い。この場合、タイムスロット位置は、タイムスロット開始端点などを各タイムスロットSの位置として規定する。また、タイムフレームFの前半又は後半が空であっても良い。すなわち、タイムフレーム長と、タイムスロット数とタイムスロット幅の積とが、一致する必要はない。