特許第6670983号(P6670983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6670983
(24)【登録日】2020年3月4日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】切削加工機及び切削加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20200316BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20200316BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20200316BHJP
   B23K 26/08 20140101ALI20200316BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20200316BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B23K26/00 M
   B23K26/082
   B23K26/36
   B23K26/08 Z
   B23Q15/00 301K
   G05B19/4093 F
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-554701(P2019-554701)
(86)(22)【出願日】2019年6月4日
(86)【国際出願番号】JP2019022104
【審査請求日】2019年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2018-128919(P2018-128919)
(32)【優先日】2018年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】永山 岳大
(72)【発明者】
【氏名】菅野 和宏
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 実開平7−15179(JP,U)
【文献】 特開平3−155484(JP,A)
【文献】 カナダ国特許出願公開第2725277(CA,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103869748(CN,A)
【文献】 特開平6−269973(JP,A)
【文献】 特開平7−236987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/08
B23K 26/082
B23K 26/36
B23Q 15/00
G05B 19/4093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームを生成して射出するレーザ発振器と、
前記レーザ発振器より射出されたレーザビームを加工対象物に照射して前記加工対象物を切削加工する加工機本体と、
前記レーザ発振器及び前記加工機本体を制御するNC装置と、
を備え、
前記NC装置は、
前記加工対象物を切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて設定された加工プログラムと加工条件とに基づいて、前記加工対象物を切削加工する切削工具の工具径を補正するための工具径補正情報を生成する工具径補正量演算部と、
前記加工プログラムと前記加工条件と前記工具径補正情報とに基づいて、切削加工補正条件を含む工具径補正制御信号を生成する加工軌跡演算部と、
前記工具径補正制御信号に基づいて、前記加工機本体を制御する駆動制御信号を生成する駆動制御部と、
を有し、
前記加工機本体は、
先端部にノズルが取り付けられ、前記ノズルに形成された開口部よりレーザビームを前記加工対象物に照射し、前記加工対象物とレーザビームのビームスポットとの相対位置を変化させることにより、前記加工対象物を切削加工する加工ユニットと、
前記加工ユニットに収容され、前記開口部から射出されるレーザビームを前記駆動制御信号に基づいて非円形状の振動パターンで振動させることにより、前記切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する工具軌跡である前記ビームスポットの軌跡を制御する工具軌跡制御部と、
を有し、
前記工具径補正量演算部は、前記加工条件に含まれる工具軌跡を認識し、前記工具軌跡に複数の加工面形成位置が存在するか否かを判定し、複数の加工面形成位置が存在すると判定された場合に、前記複数の加工面形成位置から任意の加工面形成位置を選択し、前記加工プログラムと前記加工条件と選択された加工面形成位置とに基づいて、前記工具軌跡の工具径を補正するための前記工具径補正情報を生成し、
前記加工面形成位置は、前記工具軌跡において工具径が最大となる位置である
切削加工機。
【請求項2】
前記工具径補正情報は、前記ノズルの軌跡と、切削加工の進行方向と、前記工具軌跡と、前記工具径補正量演算部により選択された加工面形成位置とを含む請求項に記載の切削加工機。
【請求項3】
前記工具軌跡制御部は、
入射したレーザビームを反射する第1及び第2のスキャンミラーと、
前記第1のスキャンミラーを所定の方向に所定の角度範囲で往復駆動させる第1の駆動部と、
前記第2のスキャンミラーを前記第1のスキャンミラーの駆動方向とは異なる方向に所定の角度範囲で往復駆動させる第2の駆動部と、
を有する請求項またはに記載の切削加工機。
【請求項4】
加工対象物を切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて、加工プログラムと加工条件とを設定し、
前記加工条件に含まれ、加工対象物を切削加工する切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する工具軌跡を認識し、
前記工具軌跡に複数の加工面形成位置が存在するか否かを判定し、
複数の加工面形成位置が存在すると判定された場合に、前記複数の加工面形成位置から任意の加工面形成位置を選択し、
前記加工プログラムと前記加工条件と選択された加工面形成位置とに基づいて、前記工具軌跡の工具径を補正するための工具径補正情報を生成し、
前記加工プログラムと前記加工条件と前記工具径補正情報とに基づいて、切削加工補正条件を含む工具径補正制御信号を生成し、
前記工具径補正制御信号に基づいて、加工機本体を制御する駆動制御信号を生成し、
前記加工プログラムと前記加工条件とに基づいて、開口部を有するノズルを目的の位置へ移動させ、
前記加工プログラムと前記加工条件とに基づいて、前記開口部からレーザビームを加工対象物に照射し、
前記開口部から射出されるレーザビームを前記駆動制御信号に基づいて非円形状の振動パターンで振動させることにより、前記工具軌跡に相当する、前記加工対象物に照射されるレーザビームのビームスポットの軌跡を制御し、
前記加工面形成位置は、前記工具軌跡において工具径が最大となる位置である
切削加工方法。
【請求項5】
前記工具径補正情報は、前記ノズルの軌跡と、前記ノズルの進行方向と、前記工具軌跡と、前記任意の加工面形成位置とを含む請求項に記載の切削加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザビームを照射して加工対象物を加工するレーザ加工機等の切削加工機及び切削加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削加工機として、レーザビームを照射して加工対象物を加工し、所定の形状を有する製品を製作するレーザ加工機が普及している。レーザ加工機は、製品が所定の形状を有して製作されるように、レーザビームによる切削量を考慮した工具径補正により加工対象物を切削加工する。特許文献1には、工具径補正により加工対象物を切削加工するレーザ加工機の一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6087483号公報
【発明の概要】
【0004】
レーザ加工機において、レーザビームを射出するノズルと加工対象物を載せる加工テーブルとの相対位置が固定されている状態では、レーザビームは通常、円形状を有するため、切削加工跡も円形状を有する。複数の種類の回転工具を備えたマシニングセンタにおいても、回転工具の位置座標が固定されている状態では、切削加工跡は通常、円形状を有する。ウォータジェット加工機においても、高圧水が射出される位置座標が固定されている状態では、切削加工跡は通常、円形状を有する。従って、工具径補正は、ノズル、回転工具、高圧水等の切削工具の位置座標が固定されている状態における切削加工跡が円形状であることを前提としている。
【0005】
そのため、レーザ加工機等の切削加工機は、切削工具による切削加工跡の半径分または切削加工跡の半幅分を工具径補正量に設定し、工具径補正量分だけシフトさせて加工対象物を切削加工するときの軌跡を制御する。一般的に、従来の切削加工機では、工具径補正は切削加工跡が非円形状の場合に対応していない。
【0006】
1またはそれ以上の実施形態は、切削工具の位置座標が固定されている状態における切削加工跡が非円形状であっても、切削工具の工具径を精度よく補正することができる切削加工機及び切削加工方法を提供することを目的とする。
【0007】
1またはそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、レーザビームを生成して射出するレーザ発振器と、前記レーザ発振器より射出されたレーザビームを加工対象物に照射して前記加工対象物を切削加工する加工機本体と、前記レーザ発振器及び前記加工機本体を制御するNC装置とを備え、前記NC装置は、前記加工対象物を切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて設定された加工プログラムと加工条件とに基づいて、前記加工対象物を切削加工する切削工具の工具径を補正するための工具径補正情報を生成する工具径補正量演算部と、前記加工プログラムと前記加工条件と前記工具径補正情報とに基づいて、切削加工補正条件を含む工具径補正制御信号を生成する加工軌跡演算部と、前記工具径補正制御信号に基づいて、前記加工機本体を制御する駆動制御信号を生成する駆動制御部とを有し、前記加工機本体は、先端部にノズルが取り付けられ、前記ノズルに形成された開口部よりレーザビームを前記加工対象物に照射し、前記加工対象物とレーザビームのビームスポットとの相対位置を変化させることにより、前記加工対象物を切削加工する加工ユニットと、前記加工ユニットに収容され、前記開口部から射出されるレーザビームを前記駆動制御信号に基づいて非円形状の振動パターンで振動させることにより、前記切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する工具軌跡である前記ビームスポットの軌跡を制御する工具軌跡制御部とを有し、前記工具径補正量演算部は、前記加工条件に含まれる工具軌跡を認識し、前記工具軌跡に複数の加工面形成位置が存在するか否かを判定し、複数の加工面形成位置が存在すると判定された場合に、前記複数の加工面形成位置から任意の加工面形成位置を選択し、前記加工プログラムと前記加工条件と選択された加工面形成位置とに基づいて、前記工具軌跡の工具径を補正するための前記工具径補正情報を生成し、前記加工面形成位置は、前記工具軌跡において工具径が最大となる位置である切削加工機が提供される。
【0008】
1またはそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、加工対象物を切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて、加工プログラムと加工条件とを設定し、前記加工条件に含まれ、加工対象物を切削加工する切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する工具軌跡を認識し、前記工具軌跡に複数の加工面形成位置が存在するか否かを判定し、複数の加工面形成位置が存在すると判定された場合に、前記複数の加工面形成位置から任意の加工面形成位置を選択し、前記加工プログラムと前記加工条件と選択された加工面形成位置とに基づいて、前記工具軌跡の工具径を補正するための工具径補正情報を生成し、前記加工プログラムと前記加工条件と前記工具径補正情報とに基づいて、切削加工補正条件を含む工具径補正制御信号を生成し、前記工具径補正制御信号に基づいて、加工機本体を制御する駆動制御信号を生成し、前記加工プログラムと前記加工条件とに基づいて、開口部を有するノズルを目的の位置へ移動させ、前記加工プログラムと前記加工条件とに基づいて、前記開口部からレーザビームを加工対象物に照射し、前記開口部から射出されるレーザビームを前記駆動制御信号に基づいて非円形状の振動パターンで振動させることにより、前記工具軌跡に相当する、前記加工対象物に照射されるレーザビームのビームスポットの軌跡を制御し、前記加工面形成位置は、前記工具軌跡において工具径が最大となる位置である切削加工方法が提供される。
【0009】
1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法によれば、切削工具の位置座標が固定されている状態における切削加工跡が非円形状であっても、切削工具の工具径を精度よく補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機の全体的な構成例を示す図である。
図2図2は、ノズルと工具軌跡との関係を示す図である。
図3図3は、工具軌跡制御部の構成例を示す図である。
図4図4は、ノズルと工具軌跡との関係を示す図である。
図5図5は、ノズルと工具軌跡との関係を示す図である。
図6図6は、ノズルと工具軌跡との関係を示す図である。
図7図7は、ノズル軌跡と工具軌跡との関係を示す図である。
図8図8は、ノズル軌跡と工具軌跡との関係を示す図である。
図9図9は、1またはそれ以上の実施形態の切削加工方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法について、添付図面を参照して説明する。切削加工機及び切削加工方法の一例として、レーザ加工機及びレーザ加工方法について説明する。
【0012】
図1に示すように、切削加工機1は、レーザ発振器10と、加工機本体100と、NC装置(数値制御装置)200とを備える。NC装置200は、レーザ発振器10と加工機本体100とを制御する。レーザ発振器10はレーザビームを生成して射出する。レーザ発振器10から射出されたレーザビームは、プロセスファイバ11を介して加工機本体100へ伝送される。加工機本体100は、レーザビームを加工対象物Wに照射し、かつ、加工対象物Wとレーザビームのビームスポットとの相対位置を変化させることにより、加工対象物Wを切削加工する。
【0013】
レーザ発振器10としては、レーザダイオードより発せられる励起光を増幅して所定の波長のレーザビームを射出するレーザ発振器、または、レーザダイオードより発せられるレーザビームを直接利用するレーザ発振器が好適である。レーザ発振器10は、例えば、固体レーザ発振器、ファイバレーザ発振器、ディスクレーザ発振器、または、ダイレクトダイオードレーザ発振器(DDL発振器)である。
【0014】
レーザ発振器10は、波長900nm〜1100nmの1μm帯のレーザビームを射出する。ファイバレーザ発振器及びDDL発振器を例とすると、ファイバレーザ発振器は、波長1060nm〜1080nmのレーザビームを射出し、DDL発振器は、波長910nm〜950nmのレーザビームを射出する。
【0015】
加工機本体100は、加工対象物Wを載せる加工テーブル101と、門型のX軸キャリッジ102と、Y軸キャリッジ103と、加工ユニット104と、工具軌跡制御部300とを有する。加工対象物Wは例えばステンレス鋼よりなる板金である。加工対象物はステンレス鋼以外の鉄系の板金であっても構わないし、アルミニウム、アルミニウム合金、銅鋼などの板金であっても構わない。
【0016】
レーザ発振器10から射出されたレーザビームは、プロセスファイバ11を介して加工機本体100の加工ユニット104へ伝送される。工具軌跡制御部300は加工ユニット104の内部に収容されている。
【0017】
X軸キャリッジ102は、加工テーブル101上でX軸方向に移動自在に構成されている。Y軸キャリッジ103は、X軸キャリッジ102上でX軸と直交するY軸方向に移動自在に構成されている。X軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103は、加工ユニット104を加工対象物Wの面に沿って、X軸方向、Y軸方向、または、X軸とY軸との任意の合成方向に移動させる移動機構として機能する。
【0018】
加工機本体100は、加工ユニット104を加工対象物Wの面に沿って移動させる代わりに、加工ユニット104は位置が固定されていて、加工対象物Wが移動するように構成されていてもよい。加工機本体100は、加工対象物Wの面に対して加工ユニット104を相対的に移動させる移動機構を備えていればよい。
【0019】
加工ユニット104にはノズル106が取り付けられている。ノズル106の先端部には円形の開口部105が形成されている。加工ユニット104に伝送されたレーザビームは、ノズル106の開口部105から射出され、加工対象物Wに照射される。
【0020】
加工ユニット104には、窒素または空気等のアシストガスが供給される。アシストガスは酸素であってもよく、その目的が酸化抑制なのか、酸化反応熱を利用するのかによって、窒素と酸素との混合比を任意に設定できる。レーザビームが開口部105から加工対象物Wに照射され、かつ、アシストガスが開口部105から加工対象物Wへと吹き付けられる。アシストガスは、加工対象物Wが溶融したカーフ幅内の溶融物を排出する。
【0021】
工具軌跡制御部300は、加工ユニット104内を進行して開口部105から射出されるレーザビームを、非円形状の振動パターンで振動させるビーム振動機構として機能する。工具軌跡制御部300がレーザビームを非円形状の振動パターンで振動させることにより、加工ユニット104は非円形状の工具軌跡により加工対象物Wを切削加工する。工具軌跡制御部300の具体的な構成例、及び、工具軌跡制御部300がレーザビームのビームスポットを非円形状の振動パターンで振動させる方法については後述する。
ここで、工具軌跡とは、一定時間内に非円形状の振動パターンで振動させたビーム振動によってなされたビームの軌跡が描いた図形であって、振動工具形状を指す。つまり、通常は、ノズル106から射出される円形のレーザビームそのものが切削工具であり、そのビーム半径分が工具径補正となるが、ここでは、振動パターンで描いた図形の工具軌跡を切削工具とする。ノズル106と加工テーブル101との相対位置が固定されている状態における切削加工跡は、工具軌跡に対応する。
【0022】
CAD(Computer Aided Design)装置20は、加工対象物Wを切削加工することによって得られる最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて製品形状データ(CADデータ)SDを生成し、CAM(Computer Aided Manufacturing)装置21へ出力する。CAM装置21は、製品形状データSDに基づいて、切削加工機1が加工対象物Wを切削加工するための加工プログラム(NCデータ)PPを生成し、加工条件CPを指定する。即ち、加工プログラムPPと加工条件CPとは、最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて設定される。
【0023】
加工プログラムPPには、切削加工の進行方向の左側に工具径補正量分だけシフトさせて切削工具の軌跡を制御するG41(左工具径補正)、または、切削加工の進行方向の右側に工具径補正量分だけシフトさせて切削工具の軌跡を制御するG42(右工具径補正)で示されるGコードが含まれている。
【0024】
CAM装置21は、加工条件CPとして、切削工具に相当する工具軌跡を指定する。工具軌跡は例えば非円形状を有する。CAM装置21は、形状または工具径が異なる複数の工具軌跡を指定することができる。加工条件CPには、加工対象物Wの材質及び厚さ等の材料パラメータが指定された加工対象情報が含まれている。加工条件CPには、レーザビームの出力、加工速度、及び、ノズル106の開口部105の直径(ノズル径)等の加工パラメータ、及び、アシストガス条件等の切削加工情報が含まれている。即ち、加工条件CPには、工具軌跡等の切削工具情報と加工対象情報と切削加工情報とが含まれている。
【0025】
CAM装置21は、加工プログラムPPと加工条件CPとを切削加工機1のNC装置200へ出力する。NC装置200は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいてレーザ発振器10を制御する。NC装置200は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、加工機本体100を制御してX軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103を駆動させることにより、ノズル106を目的の位置へ移動させる。
【0026】
NC装置200は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、工具軌跡制御部300を制御することにより、ノズル106の開口部105より射出されるレーザビームのビームスポットの軌跡を制御する。ビームスポットの軌跡は工具軌跡に相当する。
【0027】
NC装置200は、工具径補正量演算部201と、加工軌跡演算部202と、駆動制御部203とを有する。工具径補正量演算部201及び加工軌跡演算部202には、CAM装置21から加工プログラムPPと加工条件CPとが入力される。工具径補正量演算部201は、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、加工対象物Wを切削加工するための切削工具の工具径を補正するための工具径補正情報TCを生成する。
【0028】
図2を用いて、工具径補正情報TCについて説明する。図2は、ノズル106の内部から開口部105を介して加工対象物Wに照射されるレーザビームのビームスポットの軌跡(工具軌跡)を示している。
【0029】
工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡TPを認識する。工具径補正量演算部201は、認識された工具軌跡TPとノズル106の軌跡NP(以下、ノズル軌跡NPとする)と切削加工の進行方向DTとに基づいて、工具径補正情報TCを生成する。工具軌跡TPは加工対象物Wを切削加工するための切削工具に相当する。工具軌跡TPの形状は切削工具の形状に相当する。工具軌跡TPは例えば非円形状を有する。
【0030】
工具径補正情報TCは、工具軌跡TPにおける制御中心点CLと、加工面形成位置MPL及びMPRと、工具径補正値MVLL及びMVLRと、オフセット値SVLL及びSVLRとを含む。また、工具径補正情報TCは、ノズル軌跡NPにおけるノズル106の中心点CN(以下、ノズル中心点CNとする)と、工具径補正値MVNL及びMVNRと、オフセット値SVNL及びSVNRとを含む。なお、制御中心点CLとは、一般的なレーザ加工の工具径補正の場合のレーザビームの中心に相当する。1またはそれ以上の実施形態においては、工具軌跡を非円形状の切削工具としているので、切断ラインを切削工具と製品の境界とするときの切断ライン(切断位置)に対して切削工具を制御する中心の位置である。ノズル軌跡NPとは、具体的にはノズル中心点CNの軌跡である。ノズル106の中心点CNと開口部105の中心点とは一致している。
【0031】
図2に示すCCNa及びCCNbは、ノズル106の中心線を示している。中心線CCNaは進行方向DTに対して平行であり、中心線CCNbは進行方向DTに対して垂直である。図2に示すBSは、工具軌跡TP上を移動するレーザビームのビームスポットを示している。図2には、非円形状の一例として、ビームスポットBSがアルファベットのCを描くようにビームスポットBSを振動させる振動パターンの工具軌跡TPを示している。なお、工具軌跡TPの振動パターンは非円形状を含む自由形状であればよい。
【0032】
レーザ加工機の場合、工具軌跡TPはレーザビームのビームスポットBSの軌跡に相当する。ビームスポットBSは工具軌跡TP上を往復移動する。または、ビームスポットBSは非円形状であれば周期移動してもよい。加工面形成位置MPL及びMPRは、工具軌跡TPにおいて制御中心点CLを通り進行方向DTと平行な中心線CCLaからビームスポットBSまでの距離が最大となる位置に相当する。
【0033】
加工面形成位置MPL及びMPRは、工具軌跡TPが切削加工の進行方向DTに移動したときに、加工対象物Wに加工面が形成される位置である。即ち、加工面形成位置MPL及びMPRは、工具軌跡TPにおいて工具径が最大となる位置である。
【0034】
加工面形成位置MPL及びMPRは、ノズル軌跡NPにおいてノズル中心点CNを通り進行方向DTと平行な中心線CCNaからの距離が最大となる位置に相当する。即ち、加工面形成位置MPL及びMPRは、ノズル軌跡NPにおいて工具径が最大となる位置である。加工面形成位置MPLは左工具径補正におけるパラメータであり、加工面形成位置MPRは右工具径補正におけるパラメータである。
【0035】
工具軌跡TPにおける工具径補正値MVLL及びMVLRは、中心線CCLaから加工面形成位置MPL及びMPRまでの距離に相当する。工具軌跡TPにおける工具径補正値MVLL及びMVLRは、工具軌跡TPにおける工具径に相当する。
【0036】
ノズル軌跡NPにおける工具径補正値MVNL及びMVNRは、中心線CCNaから加工面形成位置MPL及びMPRまでの距離に相当する。ノズル軌跡NPにおける工具径補正値MVNL及びMVNRは、ノズル軌跡NPにおける工具径に相当する。工具径補正値MVLL及びMVNLは左工具径補正におけるパラメータであり、工具径補正値MVLR及びMVNRは右工具径補正におけるパラメータである。
【0037】
工具軌跡TPにおけるオフセット値SVLL及びSVLRは、制御中心点CLを通り進行方向DTと垂直な中心線CCLbから加工面形成位置MPL及びMPRまでの距離に相当する。ノズル軌跡NPにおけるオフセット値SVNL及びSVNRは、ノズル中心点CNを通り進行方向DTと垂直な中心線CCNbから加工面形成位置MPL及びMPRまでの距離に相当する。オフセット値SVLL及びSVNLは左工具径補正におけるパラメータであり、オフセット値SVLR及びSVNRは右工具径補正におけるパラメータである。
【0038】
従って、工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡Tを認識し、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、工具軌跡TPに基づく補正情報とノズル軌跡NPに基づく補正情報とを含む工具径補正情報TCを生成する。工具径補正量演算部201は工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。また、工具径補正量演算部201は、左工具径補正と右工具径補正の両方の補正情報を含む工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。
【0039】
加工軌跡演算部202には、CAM装置21から加工プログラムPPと加工条件CPとが入力され、工具径補正量演算部201から工具径補正情報TCが入力される。加工軌跡演算部202は、加工プログラムPPに含まれているGコードを翻訳する。なお、加工プログラムPPはGコードの代わりにロボット言語等を含んでいてもよい。
【0040】
加工軌跡演算部202は、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCとに基づいて、ノズル軌跡NPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、ノズル軌跡NPを用いて右工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて右工具径補正にて切削加工するかのいずれかの切削加工補正条件を決定する。
【0041】
加工軌跡演算部202は、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCと決定された切削加工補正条件とに基づいて工具径補正制御信号TSを生成する。加工軌跡演算部202は、工具径補正制御信号TSを駆動制御部203へ出力する。駆動制御部203は、工具径補正制御信号TSに基づいて、加工機本体100を制御する駆動制御信号CSを生成する。駆動制御部203は駆動制御信号CSを加工機本体100へ出力する。
【0042】
工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工する場合、駆動制御部203は、工具軌跡TPと工具軌跡TPにおける制御中心点CLと工具径補正値MVLLとオフセット値SVLLとに基づいて駆動制御信号CSを生成する。工具軌跡TPを用いて右工具径補正にて切削加工する場合、駆動制御部203は、工具軌跡TPと工具軌跡TPにおける制御中心点CLと工具径補正値MVLRとオフセット値SVLRとに基づいて駆動制御信号CSを生成する。
【0043】
ノズル軌跡NPを用いて左工具径補正にて切削加工する場合、駆動制御部203は、ノズル軌跡NPとノズル軌跡NPにおけるノズル中心点CNと工具径補正値MVNLとオフセット値SVNLとに基づいて駆動制御信号CSを生成する。ノズル軌跡NPを用いて右工具径補正にて切削加工する場合、駆動制御部203は、ノズル軌跡NPとノズル軌跡NPにおけるノズル中心点CNと工具径補正値MVNRとオフセット値SVNRとに基づいて駆動制御信号CSを生成する。
【0044】
駆動制御部203は、駆動制御信号CSにより、加工機本体100の工具軌跡制御部300を制御する。工具軌跡制御部300は、駆動制御信号CSに基づいて、ノズル106の開口部105より射出されるレーザビームのビームスポットBSの軌跡を制御する。
【0045】
図3を用いて、工具軌跡制御部300の具体的な構成例、及び、工具軌跡制御部300がレーザビームのビームスポットBSを非円形状の振動パターンで振動させる方法の一例を説明する。
【0046】
図3に示すように、工具軌跡制御部300は加工ユニット104の内部に収容されている。工具軌跡制御部300は、コリメータレンズ331と、ガルバノスキャナユニット340と、ベンドミラー334と、集束レンズ335とを有する。コリメータレンズ331は、プロセスファイバ11より射出されたレーザビームを平行光(コリメート光)に変換する。
【0047】
ガルバノスキャナユニット340は、スキャンミラー341(第1のスキャンミラー)と、スキャンミラー341を回転駆動させる駆動部342(第1の駆動部)と、スキャンミラー343(第2のスキャンミラー)と、スキャンミラー343を回転駆動させる駆動部344(第2の駆動部)とを有する。
【0048】
駆動部342は、駆動制御部203の制御により、スキャンミラー341を所定の方向(例えばX方向)に所定の角度範囲で往復駆動させることができる。スキャンミラー341は、コリメータレンズ321により平行光に変換されたレーザビームをスキャンミラー343に向けて反射する。
【0049】
駆動部344は、駆動制御部203の制御により、スキャンミラー343を、スキャンミラー341の駆動方向とは異なる方向(例えばY方向)に所定の角度範囲で往復駆動させることができる。スキャンミラー343は、スキャンミラー341により反射されたレーザビームをベンドミラー334に向けて反射する。
【0050】
ベンドミラー334は、スキャンミラー343により反射されたレーザビームをX軸及びY軸に垂直なZ軸方向下方に向けて反射させる。集束レンズ335はベンドミラー334により反射したレーザビームを集束して、加工対象物Wに照射する。
【0051】
ガルバノスキャナユニット340は、スキャンミラー341とスキャンミラー343とのいずれか一方または双方を高速で例えば1000Hz以上で往復振動させることにより、切削加工跡を多種の非円形状にすることができる。即ち、一定の光強度以上のレーザビームを単位時間当たりに複数個所へ集束させることにより、加工対象物Wに接して実質的に加工に寄与する工具形状を、多種の非円形状にすることが任意にできる。
【0052】
図4は、非円形状の一例として、ビームスポットBSが数字の8を描くようにビームスポットBSを振動させる振動パターンの工具軌跡TPを示している。図4に示す工具軌跡TPは、ノズル中心点CNと制御中心点CLとが一致している。図4に示すような工具軌跡TPの場合、複数の加工面形成位置MPLa及びMPLb、または、MPRa及びMPRbが存在する。工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡Tを認識し、工具軌跡TPに複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在するか否かを判定する。
【0053】
左工具径補正にて複数の加工面形成位置MPLa及びMPLbが存在すると判定された場合、工具径補正量演算部201は、どちらか一方の加工面形成位置MPLaまたはMPLbを選択する。右工具径補正にて複数の加工面形成位置MPRa及びMPRbが存在すると判定された場合、工具径補正量演算部201は、どちらか一方の加工面形成位置MPRaまたはMPRbを選択する。
【0054】
加工面形成位置MPLaまたはMPRaが選択された場合、工具径補正量演算部201は、ノズル軌跡NPと、切削加工の進行方向DTと、工具軌跡TPと、工具軌跡TPにおける制御中心点CLと、加工面形成位置MPLaまたはMPRaと、工具径補正値MVLLまたはMVLRと、オフセット値SVLLaまたはSVLRaとを含む工具径補正情報TCを生成する。工具径補正量演算部201は、工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。
【0055】
加工面形成位置MPLbまたはMPRbが選択された場合、工具径補正量演算部201は、ノズル軌跡NPと、切削加工の進行方向DTと、工具軌跡TPと、工具軌跡TPにおける制御中心点CLと、加工面形成位置MPLbまたはMPRbと、工具径補正値MVLLまたはMVLRと、オフセット値SVLLbまたはSVLRbとを含む工具径補正情報TCを生成する。工具径補正量演算部201は、工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。
【0056】
図5は、非円形状の一例として、ビームスポットBSが矩形を描くようにビームスポットBSを振動させる振動パターンの工具軌跡TPを示している。図5に示すような工具軌跡TPの場合、複数の加工面形成位置MPLc〜MPLf、または、MPRc〜MPRfが存在する。具体的には、中心線CCLaに平行で、かつ、加工面形成位置MPLcから加工面形成位置MPLfまでの範囲における全ての位置が左工具径補正における加工面形成位置となる。
【0057】
同様に、中心線CCLaに平行で、かつ、加工面形成位置MPRcから加工面形成位置MPRfまでの範囲における全ての位置が右工具径補正における加工面形成位置となる。工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡Tを認識し、工具軌跡TPに複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在するか否かを判定する。
【0058】
左工具径補正にて複数の加工面形成位置MPLが存在すると判定された場合、工具径補正量演算部201は、加工面形成位置MPLcから加工面形成位置MPLfまでの範囲における任意の加工面形成位置MPLeを選択する。右工具径補正にて複数の加工面形成位置MPRが存在すると判定された場合、工具径補正量演算部201は、加工面形成位置MPRcから加工面形成位置MPRfまでの範囲における任意の加工面形成位置MPReを選択する。
【0059】
工具径補正量演算部201は、ノズル軌跡NPと、切削加工の進行方向DTと、工具軌跡TPと、工具軌跡TPにおける制御中心点CLと、加工面形成位置MPLeまたはMPReと、工具径補正値MVLLまたはMVLRと、オフセット値SVLLeまたはSVLReとを含む工具径補正情報TCを生成する。工具径補正量演算部201は、工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。
【0060】
図6は、非円形状の一例として、ビームスポットBSが三角形、具体的には一辺が中心線CCLaと平行な三角形を描くようにビームスポットBSを振動させる振動パターンの工具軌跡TPを示している。図6に示すような工具軌跡TPの場合、左工具径補正においては複数の加工面形成位置MPLg〜MPLjが存在する。具体的には、中心線CCLaに平行で、かつ、加工面形成位置MPLgから加工面形成位置MPLjまでの範囲における全ての位置が左工具径補正における加工面形成位置となる。
【0061】
右工具径補正においては加工面形成位置MPRiは1箇所のみである。工具径補正量演算部201は、加工条件CPに含まれる工具軌跡Tを認識し、工具軌跡TPに複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在するか否かを判定する。
【0062】
左工具径補正にて複数の加工面形成位置MPLが存在すると判定された場合、工具径補正量演算部201は、加工面形成位置MPLgから加工面形成位置MPLjまでの範囲における任意の加工面形成位置MPLiを選択する。右工具径補正にて複数の加工面形成位置MPRが存在しないと判定された場合、工具径補正量演算部201は、加工面形成位置MPRiを選択する。
【0063】
工具径補正量演算部201は、ノズル軌跡NPと、切削加工の進行方向DTと、工具軌跡TPと、工具軌跡TPにおける制御中心点CLと、加工面形成位置MPLiまたはMPRiと、工具径補正値MVLLまたはMVLRと、オフセット値SVLLiまたはSVLRiとを含む工具径補正情報TCを生成する。工具径補正量演算部201は、工具径補正情報TCを加工軌跡演算部202へ出力する。
【0064】
加工軌跡演算部202は、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCと切削加工補正条件とに基づいて工具径補正制御信号TSを生成し、駆動制御部203へ出力する。駆動制御部203は、工具径補正制御信号TSに基づいて、加工機本体100を制御する駆動制御信号CSを生成する。
【0065】
駆動制御部203は、駆動制御信号CSにより、加工機本体100を制御する。加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、X軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103を駆動させてノズル軌跡NPを制御する。また、加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、工具軌跡制御部300を駆動させて工具軌跡TPを制御する。
【0066】
図7は、加工機本体100が加工対象物Wを、図4に示す工具軌跡TPを用いて加工面形成位置MPLaを加工面基準とする左工具径補正にて切削加工する場合を示している。工具軌跡TPにおける制御中心点CLとノズル中心点CNとが一致している場合、工具軌跡TPにおける工具径補正値MVLLまたはMVLRとノズル軌跡NPにおける工具径補正値MVNLまたはMVNRとは同じ値となる。
【0067】
加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、X軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103と工具軌跡制御部300とをそれぞれ制御する。加工機本体100は、制御中心点CLとノズル中心点CNとを一致させた状態にて、工具軌跡TPをノズル軌跡NPに沿ってTP11とTP12との順に移動させる。
【0068】
さらに、加工機本体100は、制御中心点CLとノズル中心点CNとを一致させ、かつ、加工面形成位置MPLaを一致させた状態にて、工具軌跡TPをノズル軌跡NPに沿ってTP12とTP13とTP14とTP15との順に移動させる。さらに、加工機本体100は、制御中心点CLとノズル中心点CNとを一致させた状態にて、工具軌跡TPをノズル軌跡NPに沿ってTP15とTP16との順に移動させる。
【0069】
図8は、加工機本体100が加工対象物Wを、図4に示す工具軌跡TPを用いて加工面形成位置MPLbを加工面基準とする左工具径補正にて切削加工する場合を示している。工具軌跡TPにおける制御中心点CLとノズル中心点CNとが一致している場合、工具軌跡TPにおける工具径補正値MVLLまたはMVLRとノズル軌跡NPにおける工具径補正値MVNLまたはMVNRとは同じ値となる。
【0070】
加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、X軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103と工具軌跡制御部300とをそれぞれ制御する。加工機本体100は、制御中心点CLとノズル中心点CNとを一致させた状態にて、工具軌跡TPをノズル軌跡NPに沿ってTP21とTP22との順に移動させる。
【0071】
さらに、加工機本体100は、制御中心点CLとノズル中心点CNとを一致させ、かつ、加工面形成位置MPLbを一致させた状態にて、工具軌跡TPをノズル軌跡NPに沿ってTP22とTP23とTP24とTP25との順に移動させる。さらに、加工機本体100は、制御中心点CLとノズル中心点CNとを一致させた状態にて、工具軌跡TPをノズル軌跡NPに沿ってTP25とTP26との順に移動させる。
【0072】
図7及び図8に示すように、工具径補正量演算部201は、加工面基準を加工面形成位置MPLaまたはMPLbによって、異なるノズル軌跡NPを設定する。
【0073】
図9に示すフローチャートを用いて、切削加工方法の一例を説明する。CAD装置20は、ステップS1にて、最終加工製品の寸法及び形状を含む製品形状情報に基づいて製品形状データSDを生成する。さらに、CAD装置20は、製品形状データSDをCAM装置21へ出力する。
【0074】
CAM装置21は、ステップS2にて、製品形状データSDに基づいて、切削加工機1の加工プログラムPP(Gコードを含む)を生成し、加工条件CPを指定する。さらに、CAM装置21は加工プログラムPP、及び、加工条件CPを切削加工機1のNC装置200へ出力する。
【0075】
NC装置200は、ステップS3にて、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、加工機本体100を制御してX軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103を駆動させることにより、ノズル106を目的の位置へ移動させる。また、NC装置200は、ステップS4にて、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいてレーザ発振器10を制御することにより、レーザビームをノズル106の開口部105から射出し、加工対象物Wに照射する。ステップS3とステップS4とのタイミングは加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて制御される。
【0076】
NC装置200の工具径補正量演算部201、及び、加工軌跡演算部202には、ステップS2にてCAM装置21から加工プログラムPPと加工条件CPとが入力される。工具径補正量演算部201は、ステップS5にて、加工条件CPに含まれる工具軌跡Tを認識し、工具軌跡TPに複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在するか否かを判定する。
【0077】
ステップS5にて複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在する(YES)と判定された場合、工具径補正量演算部201は、ステップS6にて、複数の加工面形成位置MPLまたはMPRから任意の加工面形成位置MPLまたはMPRを選択する。ステップS5にて複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在しない(NO)と判定された場合、工具径補正量演算部201は、ステップS7へ処理を進める。
【0078】
工具径補正量演算部201は、ステップS7にて、加工プログラムPPと加工条件CPとに基づいて、ノズル軌跡NPと、切削加工の進行方向DTと、工具軌跡TPと、工具軌跡TPにおける制御中心点CLと、選択された加工面形成位置MPLまたはMPRと、工具径補正値MVLLまたはMVLRと、選択された加工面形成位置MPLまたはMPRに対するオフセット値SVLLまたはSVLRとを含む工具径補正情報TCを生成し、加工軌跡演算部202へ出力する。
【0079】
加工軌跡演算部202は、ステップS8にて、加工プログラムPPに含まれているGコードを翻訳する。加工軌跡演算部202は、ステップS9にて、翻訳結果と加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCとに基づいて、ノズル軌跡NPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、ノズル軌跡NPを用いて右工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて左工具径補正にて切削加工するか、工具軌跡TPを用いて右工具径補正にて切削加工するかを含む切削加工補正条件を決定する。加工軌跡演算部202は、加工プログラムPPと加工条件CPと工具径補正情報TCと決定された切削加工補正条件とに基づいて工具径補正制御信号TSを生成し、駆動制御部203へ出力する。
【0080】
駆動制御部203は、ステップS10にて、工具径補正制御信号TSに基づいて、加工機本体100を制御する駆動制御信号CSを生成し、加工機本体100へ出力する。加工機本体100は、ステップS11にて、駆動制御信号CSに基づいて、加工ユニット(具体的にはX軸キャリッジ102及びY軸キャリッジ103)を駆動させてノズル軌跡NPを制御する。また、加工機本体100は、駆動制御信号CSに基づいて、工具軌跡制御部300を駆動させて工具軌跡TPを制御する。
【0081】
1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、工具軌跡TPに基づく補正情報とノズル軌跡NPに基づく補正情報とを含む工具径補正情報TCを生成する。1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、工具径補正情報TCに基づいて加工ユニット104の駆動と工具軌跡制御部300の駆動とを制御することにより、ノズル軌跡NPと工具軌跡TPとを制御する。従って、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法によれば、切削工具に相当する工具軌跡、または、ノズル106と加工テーブル101との相対位置が固定されている状態における切削加工跡が非円形状であっても、切削工具の工具径を精度よく補正することができる。
【0082】
また、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、工具軌跡TPには複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在するか否かを判定する。複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在すると判定された場合、1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、複数の加工面形成位置MPLまたはMPRから任意の加工面形成位置MPLまたはMPRを選択する。1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法によれば、複数の加工面形成位置MPLまたはMPRが存在する工具軌跡TPにおいても切削工具の工具径を精度よく補正することができる。
【0083】
本発明は以上説明した1またはそれ以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。1またはそれ以上の実施形態の切削加工機及び切削加工方法では、レーザ加工機及びレーザ加工方法を例に挙げて説明したが、本発明は例えばウォータジェット加工機に対しても適用可能である。
【0084】
本願の開示は、2018年7月6日に出願された特願2018−128919号に記載の主題と関連しており、それらの全ての開示内容は引用によりここに援用される。
【要約】
切削加工機(1)は加工機本体(100)とNC装置(200)とを備える。NC装置(200)は工具径補正量演算部(201)と加工軌跡演算部(202)と駆動制御部(203)とを有する。工具径補正量演算部(201)は加工条件(CP)に含まれる工具軌跡(TP)を認識し、工具軌跡(TP)に複数の加工面形成位置(MPLまたはMPR)が存在するか否かを判定し、複数の加工面形成位置(MPLまたはMPR)が存在すると判定された場合に任意の加工面形成位置(MPLまたはMPR)を選択する。工具軌跡(TP)は加工対象物(W)を切削加工する切削工具に相当し、かつ、非円形状を有する。加工面形成位置(MPLまたはMPR)は工具軌跡(TP)において工具径が最大となる位置である。加工軌跡演算部(202)は工具径補正制御信号(TS)を生成する。駆動制御部(203)は加工機本体(100)を制御する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9