【実施例】
【0083】
実施例1.ROS、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)によるrhCC10の化学修飾
NaOCl(9.2μL、水中の0.05%溶液、62.1nmol、5当量)を、10mMリン酸緩衝液、pH7.4または純粋な水中のタンパク質(0.2mg、12.42nmol)の溶液に加えること、少しの間混合すること、および氷上で15分間、暗所でインキュベーションすることにより、それぞれの反応を約4℃(氷上)で開始した(全容積0.2mL)。L−メチオニン(9.3μL、水中の10mM、93.15nmol)を加えることにより、反応をクエンチし、次に、20分間インキュベーションし、室温まで温めた。
【0084】
1〜100の範囲の酸化剤の当量数(「酸化剤当量」)を用いて、いくつかの反応を行った。rhCC10の酸化をHPLCを用いてモニターし、ここで、
図2に示す通り、新規の修飾したアイソフォームは、新規HPLCピークとして出現し、修飾していないrhCC10より早く溶出した。反応物をSpeedvacにより濃縮し、次に、水に再懸濁した。それぞれの試料約25μgを、Agilent 1100システムのHPLCカラム(VYDAC Polymeric C18カラム300Å、5μm、2.1mm×250mm、カタログ番号218TP52)に、以下の通りの移動層、A、水、B、95%アセトニトリルおよび5%水(共に、0.1%TFAを含有する)を用いて、流速0.3mL/分で注入した。214nmでのUV吸収により、出力をモニターした。
【0085】
NaOClの酸化剤当量数が増加するにつれ、rhCC10アイソフォームの数並びにピークの高さが増大し、これは、反応が進行するにつれ、それぞれのアイソフォームの量が増大することを示した。酸化剤20当量で、HPLCは、修飾していないrhCC10の本質的に全てが消失し、修飾したアイソフォームのみが残ることを示す。
図3に示す通り、還元条件下でのこれらの調製物のSDS−PAGEは、予測したモノマータンパク質(6kDa)を示したが、ダイマー(約12kDa)、テトラマー(約24kDa)、ヘキサマー(約32kDa)、およびより多量のマルチマーのバンドが残っていることも示した。これは、CC10により形成したテトラマーの第1の報告であり、トランスグルタミナーゼ活性の不存下での還元SDS−PAGE条件に安定である。モノマーの存在および優勢は、rhCC10のアミノ酸配列が大部分未変化であることを示す。100の酸化剤当量でさえ、SDS−PAGE上のかすかなCC10モノマー、ダイマー、テトラマー、およびより多量のマルチマーバンドが存在するが、高い酸化剤当量ではタンパク質の大部分が消失し、破壊されるようである。
【0086】
修飾rhCC10および非修飾rhCC10のC−18カラムとの相互作用は、タンパク質とクロマトグラフィー樹脂の間の疎水性相互作用を反映する。修飾アイソフォームは、非修飾rhCC10より早く溶出し、これは、修飾タンパク質の表面のアミノ酸残基が、非修飾タンパク質より疎水性でないことを示している。表面疎水性パターンの変化は、表面電荷の変化と恐らく対応し、そしてこれを等電点により測定し得る。
図4に示す通り、pH3〜7の等電点電気泳動ゲルを用いた等電点電気泳動により、試料を分析した。4.5未満のより酸性のアイソフォームへのpIの進行性のシフトが存在する。2当量および5当量との反応においてpI約5.5のバンドも存在し、これは、20当量で見えなくなり、反応中間体を表し得る。
図5に示す通り、IEFゲルのウエスタンブロットによるこれらの反応物の分析は、4.5未満の全ての酸性NaOClアイソフォームが、ウサギポリクローナル抗rhCC10抗体により認識されるが、テトラマーは、ポリクローナル抗rhCC10抗体により認識されないことを示す。
【0087】
反応性のカルボニル基の検出により、rhCC10の化学反応および修飾の程度を推定し得る。
図6に示す通り、カルボニル基を、ジニトロフェニルヒドラゾン基(DNP)を加える2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)で標識すること、次に、反応産物を抗DNP抗体を用いたウエスタンブロットにより分析することにより、ROSと反応したrhCC10試料におけるカルボニル基の存在を検出し得る。修飾していないCC10中のモノマーおよびテトラマーのベースラインシグナル(レーン8)が存在し、そしてこれは、反応に用いたROSの種類に関わらず、全ての他の試料で超過する。それ故、全てのROS反応は、カルボニル基を含有するいくつかの種を生じた。修飾していないダイマー、およびMPOおよびmCPBAで修飾した調製物中のダイマーは、反応性を示さず、バックグラウンドを阻害さえした(レーン2、3、および8におけるダイマー位置の「ゴーストバンド」を参照)。NaOCl反応においてrhCC10濃度と緩衝液の組合せ作用であるように思われる。レーン4におけるシグナル強度は、レーン5より10倍を超えて高く、現在のタンパク質において2倍の差により予測したもの以上である。これは、反応を水中で行うとき、より高いrhCC10濃度が、低い濃度より広範な反応をもたらすことを示唆する。レーン4および7におけるシグナル強度は、レーン7が半分のタンパク質を含有するにも関わらず、同等であり、これは、反応が、水中より10mMリン酸緩衝液、pH7.4中でより効率的であることを示している。同量のタンパク質が存在するにも関わらず、レーン6におけるシグナル強度は、レーン7におけるものよりずっと低い。これらの知見は、緩衝液の存在下で、rhCC10濃度がより低いとき、NaOCl反応がより効率的であることを示している。それ故、反応効率に対するrhCC10濃度の作用は、水中対緩衝液中で反対である。これらの差は、NaOClでのrhCC10の化学修飾のプロセスをどのように最適化するかを説明する。例えば、CC10のNaOClにより媒介される化学修飾の最適化プロセスは、低い強度のリン酸緩衝液の存在下、中性pHでのより低濃度のrhCC10の使用に関係するだろう。
【0088】
実施例2:ROS、mCPBAによるrhCC10の化学修飾
メタクロロ過安息香酸(mCPBA)(6.21μL、水中の2mM、12.42nmol、2当量)を一度で水中のタンパク質(0.1mg、6.21nmol)の溶液に24℃で加えること、および15分間、暗所で、時々撹拌しながらインキュベーションすることにより、それぞれの反応を約24℃(室温)で開始した(全容積0.2mL)。L−メチオニン(1.8μL、水中の10mM、18.6nmol)の添加により、反応を停止させ、24℃で20分間インキュベーションした。2〜100の範囲にあるmCPBAの酸化剤当量を用いて、いくつかの反応を行った。
【0089】
HPLCを用いて、rhCC10の酸化をモニターした。反応物をSpeedvacにて濃縮し、次に、水に再懸濁した。NaOCl反応と同様に、それぞれの試料約25μgをHPLCに注入した。
図7に示す通り、新規の修飾したアイソフォームが新規HPLCピークとして出現し、修飾していないrhCC10より早く溶出した。
図8に示す、mCPBA反応物の等電点電気泳動により、pI4.5〜5.2の範囲(4.6、4.7、4.9、5.1、5.2)の新規アイソフォーム、5.3(約5.5、約5.8)より上の2つのアイソフォーム、および4.5未満(約4.3)の1つのアイソフォームの集団を含む、複数の新規アイソフォームを生成したことが明らかになった。これらの更なる8つのバンドは、pI4.8の多数のバンド、および約4.65での少数のバンドを有する元々の修飾していないrhCC10と異なった。反応の最適化における重要なパラメーターは温度である。反応温度、4℃対21℃は、生成物、またはそれぞれの生成物の見かけの割合に影響しなかった。
図9に示す、IEFゲルのウエスタンブロットは、これらのアイソフォームの大部分は、rhCC10に対して生じたウサギポリクローナル抗体により認識されることを示した。しかしながら、NaOCl反応により生成したテトラマー形態と同様に、pI4.3のバンドは、抗rhCC10抗体により認識されず、これは、mCPBA10当量を用いたとき、タンパク質の構造が劇的に変化することを示唆している。4.8の主要な免疫反応性のバンド下のアイソフォームも、IEFゲルにおける染色強度に基づき予測されるものより、小さいシグナルを示した。反応条件の更なる分析は、CaCl
2の存在が、mCPBAによるrhCC10の修飾を防ぎ得ること(
図10、レーン2)、mCPBA100当量が、より酸性のアイソフォーム(pI4.0、4.3、4.5、レーン4)のみを残して、元々の修飾していないタンパク質の全てを完全に除去すること、および反応をあまりに長く実行した場合、rhCC10を壊すこと(レーン3)を示した。
【0090】
図11に示す通り、mCPBA反応で生成したCC10アイソフォームを更に特徴付けるために、8つの別々の主要なHPLCピーク(1〜8と番号を付けられた)のそれぞれのタンパク質試料を回収し、Speedvacを用いて濃縮し、1つのピーク、例えば、ピーク3を表すための繰返しHPLCにより検証した。次に、試料を、それぞれのアイソフォームの分子量を得るためのエレクトロスプレー質量分析(ESI-MS)により分析した。表2は、個々のHPLCピークに含有されるアイソフォームのMS分析の結果を示す。全てのCC10アイソフォームは、修飾していない形態より大きな分子量(MW)を有し、MW16,110ダルトン(Da)を有する。酸素の添加により16Daが加わった。mCPBA反応は、他のアミノ酸を修飾する前に、メチオニン残基を酸化した。8つのうち5つのピークの平均質量を、16の倍数により増大させる(例えば、ピーク2、4、5、6、および8)ので、これは明らかである。ピーク3は、16の倍数でさえ増大せず、このピークは、酸素の平均数が5.25であるか、または酸素の単純な添加より複雑な修飾を表し得るダイマーを含む。ピーク1および7は、使用可能な質量スペクトルを生じなかった。
【0091】
【表2】
【0092】
実施例3:ROS、ミエロペルオキシダーゼ酵素(MPO)および過酸化水素(H
2O
2)によるrhCC10の化学修飾
HPLCを用いて、MPOおよびH
2O
2によるrhCC10の修飾をモニターした。任意のCC10修飾が観察される前に、rhCC10のMPO−H
2O
2との反応は、広範な最適化を必要とした。リン酸緩衝食塩水(PBS)、pH7.4中、塩化カルシウム(CaCl
2)の不存下で行った最初の反応は不成功であった。新規HPLCピークの数および高さの非常にわずかな増大が、リン酸緩衝液中、中性pH、増加量のMPOおよびH
2O
2で達成された。しかしながら、
図12に示す通り、クエン酸緩衝液を用いてpHを5まで下げること、およびCaCl
2の添加は、新規HPLCピークとして検出可能なCC10反応産物を劇的に増大した。カルシウムを加え、pHを最適化したら、MPOおよびH
2O
2酸化剤当量の量を再度最適化し、純粋なMPO濃度およびH
2O
2濃度を示す再生成可能なHPLCピークパターン、および時間依存性のピーク発達を観察した。簡単に言うと、2mM CaCl
2中のタンパク質(0.1mg、6.21nmol)の溶液、および10mM クエン酸緩衝液(pH5)を、37℃で30分間インキュベーションした。MPO(2.5μL、水中の10μg/mL、25ng)およびH
2O
2(1.55μL、水中の100mM、155.25nmol、25当量)を加えることにより、反応を37℃で開始し、37℃で30分間、暗所で時々撹拌しながらインキュベーションした。MPO(25ng)およびH
2O
2(1.55μL)溶液の別のアリコートを加え、同じ温度で更に30分間、撹拌しながらインキュベーションした(全容積0.2mL)。L−メチオニン(4.66μL、水中の0.1M、0.466μmol)の添加により、反応を停止させ、37℃で30分間インキュベーションした。NaOClおよびmCPBA反応と同様に、反応物をSpeedvacにて典型的に濃縮し、次に、水に再懸濁し、それぞれの試料約25μgをHPLCに注入した。
図13に示す通り、修飾したアイソフォームは、新規HPLCピークとして出現し、修飾していないrhCC10より早く溶出する。
【0093】
図14に示す、MPOおよびH
2O
2反応物の等電点電気泳動は、5.5のアイソフォームおよび4.7未満の1つ以上のアイソフォームを含む、変化した等電点を有する2つのアイソフォームのみを生成したことを明らかにした。修飾していないCC10は、IEFゲルにおいて4.8の多数のバンドおよび4.7の少数のバンドとして時に出現する(それぞれ、恐らくダイマーおよびモノマー)。少数のバンドを失わないように、ゲルに、それぞれの調製物25mcgを添加した。それ故、HPLCにより観察した複数のピーク(n=8)は、IEF上の新規バンド数(n≧2)と一致しない。これは、HPLCにより疎水性相互作用に基づき分離した、顕著には、少なくとも6つのアイソフォームが、修飾していないCC10と同一の表面電荷を保持することを示す。
図15に示す、同一のIEFゲルのウエスタンブロットは、これらのpI4.8のアイソフォームが、修飾していないrhCC10に対して生じたウサギポリクローナル抗体により認識されることを示した。
【0094】
図16に示す通り、MPO−H
2O
2反応で生成したCC10アイソフォームを更に特徴付けるために、8つの主要な分離可能なHPLCピーク(9〜17の番号を付けられた)のそれぞれのタンパク質試料を回収し、Speedvacを用いて濃縮し、1つのピーク、例えば、ピーク10を表すための繰返しHPLCにより検証した。次に、試料をエレクトロスプレー質量分析(ESI-MS)により分析して、それぞれのアイソフォームについての分子量を得た。表3は、MS分析の結果を示す。全てのCC10アイソフォームは、MW16,110ダルトン(Da)を有する、修飾していない形態より大きい分子量(MW)を有していた。mCPBAアイソフォームとは対照的に、MPO−H
2O
2アイソフォームはいずれも、16の倍数である分子量の増大(例えば、酸素の簡単な添加)を示さなかった。試験した条件下での修飾は、酸素、塩素、または他の付加物の添加、並びにカルボニル基の形成のいくつかの組合せを含み得る。
【0095】
【表3】
【0096】
実施例4:RNS、ペルオキシ亜硝酸によるrhCC10の化学修飾
HPLCを用いて、ペルオキシ亜硝酸によるrhCC10の修飾をモニターした。市販ペルオキシ亜硝酸試薬(10〜100当量)をタンパク質0.1mgに加えること(全反応容積0.2mL)、簡単に撹拌すること、および1時間、暗所でインキュベーションすることにより、それぞれの反応を約23℃(室温)で開始した。反応物をSpeedvacにて典型的に濃縮し、次に、水に再懸濁し、他の反応と同様に、それぞれの試料約25μgをHPLCに注入した。
図17に示す通り、修飾したアイソフォームは、新規HPLCピークとして出現し、修飾していないrhCC10より早く、および遅くの両方で溶出した。修飾していないCC10と同一の保持時間で溶出するピークに加えて、10当量を用いて4つの新たな主要なピークが明らかである。20当量を超える使用は、ピークの喪失を生じ、修飾していないCC10より若干早く溶出するポイントで中心にある、長い隆起に広がる。この広範な隆起パターンは、膨大な数の修飾およびアイソフォームが生成されることを示す。HPLCピークの分解の喪失を仮定すると、10当量が更なる実験で用いる最大値であった。
図18に示す通り、3〜6の範囲のpH(10mMクエン酸緩衝液)で、2mM CaCl
2あり、およびなしで、更なる最適化を行った。MPO−H
2O
2およびmCPBAと対照的に、カルシウムおよびpHが、反応に対して有意な作用を有する場合、ペルオキシ亜硝酸反応産物への明らかな影響はなかった。
【0097】
それぞれのCC10モノマーは1つのチロシンを含有し、これらの結果が示すものは、RNSの存在下でのニトロ化の影響を受けやすい。ペルオキシ亜硝酸との反応が進むにつれ、分子間の結合は、ジチロシン複合体を異なるモノマー中に形成し得る。
図19のSDS−PAGEのウエスタンブロットにより示される通り、ペルオキシ亜硝酸反応により生成されたアイソフォームは、より巨大な共有結合した複合体を有する大部分未変化のCC10であった。CC10ペルオキシ亜硝酸反応を、非還元条件下、1〜10%SDS−PAGEトリシンゲルにて実行し、PVDFメンブレンにブロットし、4%無脂肪乳でブロッキングし、ウサギポリクローナル抗ニトロチロシン抗体でプローブした。ブロットは、免疫反応性のCC10ダイマー、テトラマー、およびより大きい分子量の複合体の「スメア」を示し、これは、CC10モノマー中のチロシン残基が、修飾の影響を受けやすいことを証明している。チロシンのニトロ化は、ダイマーまたはテトラマー安定性を壊さない。このパターンは、チロシンニトロ化が、ジチロシンとジスルフィド結合の両方により一緒に恐らく結合した、巨大な複合体の形成を好むが、ジ−チロシン形成の不存下では簡単なジスルフィド結合の転位(rearrangement)により達成される、熱力学的に好ましいマルチマーの異なるセットは生成しないことを更に示す。
【0098】
実施例5:トランスグルタミナーゼによるCC10の修飾
CC10は、組織トランスグルタミナーゼ(別名: TG2)のin vitro基質であることが示され(Manjunath, 1984)、それ自体、および他のタンパク質にグルタミン残基およびリシン残基を介して架橋結合する。アシル供与体/アミン受容体としてのウテログロビン中のグルタミンの有効性の決定を、2つの異なるモノアミン基に結合したビオチンを用いて行った。精製したモルモット肝臓トランスグルタミナーゼおよびモノアミン−ビオチン試薬、5−(ビオチンアミド)ペンチルアミンおよび(+)−ビオチニル−3,6−ジオキサオクタンジアミンを、販売元から購入した。25mM Tris/150mM NaCl、pH8.0中、1.5mM DTTで反応を行った。適応可能な場合、CaCl
2を終濃度4.5mMで用いた。カルシウムは、グルタミン残基とリシン残基との架橋結合に必要なTG補助因子である。カルシウムおよび還元剤の不存下で、TG2は、還元剤で還元され得るマルチマーの「ラダー」の形成をもたらす、CC10中のジスルフィド結合の転位を媒介する(示していない)。対象のタンパク質およびアミンを、緩衝液中、カルシウムありまたはなしで、アッセイ容積0.1mLに合わせた。試料を、37℃で30分間プレインキュベーションし、その後、トランスグルタミナーゼを添加した。終濃度50mMのEDTAを、試料にカルシウムなしで加え、これは陰性対照の役割を果たす。プレインキュベーション後、トランスグルタミナーゼ5μUをそれぞれの試験管に加え、反応を37℃で60分間進めた。60分後、EDTA(50mM)を、カルシウムを含有する試験管に加えて、反応を止めた。SDS試料緩衝液100μLおよび還元剤(1mM DTT)をそれぞれの反応に加え、次に、95℃で10分間加熱し、その後、SDS−PAGEゲルにて分離させた。ゲルを、PVDFメンブレンにブロットした。5% BSA(2マイクロンのメンブレンを通して濾過した)を用いて、室温で1時間、ブロッキングを行った。インキュベーション間に、PBS−Tween(0.4%)で洗浄を行った。ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ結合体とインキュベーションすることにより、標識したタンパク質のビオチン基を検出した。
図21に示す通り、比色分析試薬(NBT/BCIP)で可視化を行った。結果は、CC10中のグルタミンおよびリシンが、TG2反応のアシル供与体とアシル受容体の両方であることを示す。反応はカルシウム依存性であり、キレート剤でのカルシウムの除去により無効にされる。高分子量のバンドは、1つの複合体当たり少なくとも1つのグルタミン−アミンビオチンアミンと架橋結合したCC10を表す(1つのモノマーをビオチンタグで標識し、かつ少なくとも1つの他のモノマーに架橋結合させるように)ので、還元可能でない高分子量のバンドは、CC10が少なくとも2つの反応性のグルタミンとリシン対を含有することを示す。これは、1級アミン基を含有する部分、例えば、標識、化学物質、脂質、およびペプチドをrhCC10にTG2を用いてカルシウムおよび還元剤の存在下で加え得る一方、スルフィドリル基を含有する他の部分をrhCC10にTGを用いて還元剤の不存下で加え得ることも説明する。
【0099】
実施例6:修飾していないrhCC10と比較した、修飾したrhCC10によるin vitroでのインフルエンザの複製の増強された阻害
rhCC10の活性に対する修飾の作用を決定するために、rhCC10反応物の等しいアリコートをNaOCl、mCPBA、MPOおよびH
2O
2、およびペルオキシ亜硝酸と合わせることにより、修飾したrhCC10の1つの統合を作製した。それぞれの反応物由来の全てのHPLCピークを統合で表す。修飾したrhCC10調製物および修飾していないrhCC10調製物を、利用可能な試料で可能な最高濃度で、MEM溶液中8つの半対数希釈液に希釈した。それぞれの希釈液を、80〜100%コンフルエントなMDCK細胞を有する96ウェルプレートの5ウェルに加えた。それぞれの希釈液の3つのウェルをウイルス(H1H1またはH5N1)で感染させ、2つのウェルを毒性対照として未感染のまま残した。それぞれのウイルスについての感染効率(MOI)は、0.1〜1.0の間である。培地は、10U/mLトリプシンを有するMEM溶液であった。処理していないウイルス対照ウェルが最大細胞変性効果(CPE)に達した後、次に、プレートをニュートラルレッド染料で約2時間染色し、次に、上清の染料をウェルから取り除き、取り込まれた染料を、50:50のSorensenクエン酸緩衝液/エタノールに抽出し、次に、540nmでの光学濃度を分光光度計で読み取った。ニュートラルレッド染料を生細胞に取り込ませ、ウイルス感染後に残る細胞の測定値として用いた。結果を
図22に示す。驚くべきことに、修飾したrhCC10調製物は、通常、酸化タンパク質修飾の結果である機能の喪失よりむしろ、2つの株のインフルエンザに対して増強された抗ウイルス活性を示した。
【0100】
実施例7:修飾していないrhCC10と比較して、修飾したrhCC10によるin vitroでの好中球走化性の増強された阻害
ヒトPLB−985細胞は、本質的に成熟ヒト好中球にin vitroで分化し得る未成熟の骨髄性白血病細胞株である(Pedruzzi, 2002)。次に、分化したPLB−985細胞を、好中球機能アッセイ、例えば、fMLPを含む、様々な刺激に応答した走化性において、抹消血液から単離した実際のヒト好中球の代替として用い得る。fMLPは、細菌のみにより産生されるホルミル化ペプチド(Met、Leu、Pro)であり、fMLPの供給源に対する濃度勾配に沿って、好中球の遊走を含む、強力な抗炎症反応を誘発する、身体に対する細菌の過剰成長のシグナルである。修飾していないrhCC10と修飾したrhCC10の両方を、このモデルにおいて分化したPLB−985(dPLB-985)の阻害剤として評価した。
【0101】
10%FBS、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含有するRPMI1640培地で、37℃、加湿雰囲気、5%CO
2にて、細胞を成長させた。それぞれの実験の前に、成熟好中球表現型への分化を誘導するために、300μΜジブチリル環状AMPを添加した培地にて3日間、PLB−985細胞を培養した。10%FBSを含有するRPMI−1640(RPMI/FBS)(フェノールレッドを含まない)に10
7細胞/mlで、分化したPLB−985細胞を再懸濁した。5μg/mlカルセイン−アセトキシメチルエステルと、37℃で30分間、暗所で、一定に撹拌しながら、細胞をプレインキュベーションした。次に、細胞を洗浄し、RPMI/FBSに2×10
6細胞/mlに再懸濁した。dPLB−985細胞を、100mcg/ml rhCC10調製物と、37℃で60分間、またはPBS(50%)とインキュベーションした。96ウェルのChemoTX使い捨て走化性システム(Neuro Probe)を用いて、細胞遊走をモニターした。10
-8MのfMLP32μlで、下のチャンバーのプレートのウェルを充填した。ポリカーボネートフィルター(3μΜ)をプレート上につけ、dPLB−985細胞(30μl、60,000細胞/ウェル)をフィルター上に置き、37℃で120分間、5%CO
2の存在下、暗所で遊走させた。フィルターをティッシュで優しく拭うことにより、遊走しなかった細胞を取り除いた。
【0102】
それぞれ、485および530nmの励起波長および放出波長を用いて、マイクロプレート蛍光リーダーでフィルター中の細胞の蛍光を測定した。ボトムチャンバーに置くことにより、既知の数のdPLB−985からの蛍光を得て、標準曲線を作成した(
図23、パネルB)。
図23は、修飾していないrhCC10(CC10-A)は、fMLPに応答して好中球遊走をわずかに阻害する一方、NaOClにより修飾したrhCC10(CC10-B)とmCPBAにより修飾したrhCC10(CC10-C)は共に、好中球遊走を有意に高い程度まで阻害することを示す。これらの反応が、より頻繁には酸化修飾の結果である、機能のより典型的な喪失を引き起こすよりむしろ、rhCC10活性を増強することを発見したことは、驚くべきことであった。
【0103】
定義
セクレトグロビン。保存された4つのヘリックス束モチーフを有し、大きさが約50〜100のアミノ酸長の範囲にある、CC10ファミリーにおけるヒトおよび非ヒトタンパク質を含む、一種のタンパク質。ヒトセクレトグロビンは
図1に示される。
【0104】
合成セクレトグロビン。化学的プロセスまたは組換えプロセスにより作製され、天然の供給源から単離されない、セクレトグロビン。
【0105】
非修飾セクレトグロビンタンパク質。ホモダイマーおよびヘテロダイマーにおいてシステイン残基間の自然発生するジスルフィド結合以外に化学的または酵素的に修飾アミノ酸残基を含有しない、セクレトグロビンモノマー、ダイマー、または他のマルチマー。
【0106】
非修飾CC10タンパク質。システイン残基間のジスルフィド結合以外に、化学的または酵素的に修飾アミノ酸残基を含有しない、CC10モノマー、ダイマー、または他のマルチマー。
【0107】
修飾されたセクレトグロビン(又は修飾セクレトグロビン)。1つ以上の化学的または酵素的に修飾アミノ酸残基を含有する、セクレトグロビンモノマー、ダイマー、または他のマルチマー。
【0108】
修飾された合成セクレトグロビン(又は修飾合成セクレトグロビン)。1つ以上の化学的または酵素的に修飾アミノ酸残基を含有する、合成セクレトグロビンモノマー、ダイマー、または他のマルチマー。
【0109】
修飾されたCC10(又は修飾CC10)。1つ以上の化学的または酵素的に修飾アミノ酸残基を含有する、CC10モノマー、ダイマー、または他のマルチマー。
【0110】
修飾された組換えヒトCC10(又は修飾組換えヒトCC10)。組換えDNA方法により作製され、1つ以上の化学的または酵素的に修飾アミノ酸残基を含有する、CC10モノマー。
【0111】
修飾された合成CC10(又は修飾合成CC10)。1つ以上の化学的または酵素的に修飾アミノ酸残基を含有する、組換えDNA的または化学的ペプチド合成方法のいずれかにより作製された、CC10モノマー。
【0112】
修飾アミノ酸残基。側鎖が、タンパク質の翻訳完了の際に本来存在する形態から修飾されている、タンパク質中のアミノ酸。タンパク質において見られる20種の天然の非修飾アミノ酸の化学構造は、任意の生化学の教科書で見られ得る。
【0113】
カルボニル基。アミノ酸側鎖のアルデヒド基またはケトン基。
【0114】
略語
CC10。クララ細胞10kDaタンパク質;CC16、CCSP、ウテログロビン、尿タンパク質1とも呼ばれる。
SCGB。セクレトグロビン。
RNS。活性窒素種。
ROS。活性酸素種。
MPO。ミエロペルオキシダーゼ酵素。
iNOS。細胞内一酸化窒素合成酵素。
mCPBA。メタクロロ過安息香酸。
DNP。2,4−ジニトロフェニルヒドラゾン。
DNPH。2,4−ジニトロフェニルヒドラジン。
HNE。4−ヒドロキシ−2−trans−ノネナール(HNE)、脂質過酸化産物。
MDA。マロンジアルデヒド。
【0115】
本発明は、最も実際的かつ好ましい実施態様であると現在考えられるものに関連して記載される一方、本発明は、開示された実施態様に制限されないことではなく、対照的に、添付の請求項の精神および範囲内に含まれる、種々の改変および均等なアレンジメントをカバーすることが意図されていると理解されよう。