特許第6671008号(P6671008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671008
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】呼気成分測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/497 20060101AFI20200316BHJP
【FI】
   G01N33/497 A
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-252621(P2015-252621)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-116430(P2017-116430A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133179
【氏名又は名称】株式会社タニタ
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】佐野 あゆみ
(72)【発明者】
【氏名】児玉 美幸
(72)【発明者】
【氏名】笠原 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 好典
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 広拓
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】皆川 直隆
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05303575(US,A)
【文献】 特開2006−098058(JP,A)
【文献】 特開2011−232059(JP,A)
【文献】 米国特許第06150177(US,A)
【文献】 特開2014−117429(JP,A)
【文献】 特開2010−261940(JP,A)
【文献】 特開2015−114274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
G01N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気を通過させる流路管と、
前記流路管を通過する呼気に含まれるガスの濃度を検知するガスセンサと、
前記流路管及び前記ガスセンサを内蔵するケースと、
前記流路管と連通するように前記ケースに形成され、前記ケースの外部から呼気を入れるための流入口とを備え、
前記流路管は、人によって吹き込まれる呼気を導くための管路を有する吹き込み用アタッチメントが前記流入口に取り付けられると呼気が通る流路を形成し、前記管路の内径よりも大きな内径を有し、
前記流路管内部の呼気を前記ガスセンサへ導入するための開口部が、前記流路管の側面における内側から外側に形成されており、前記外側となる外面に案内部が形成され、
前記ガスセンサは、呼気を取り込むための取込口が所定の面に形成されており、前記流路管の側面における内側から外側に開口部を見たときに、前記取込口が露出する位置であって、前記案内部と前記所定の面とが密着するように前記流路管に取り付けられている、
ことを特徴とする呼気成分測定装置。
【請求項2】
呼気を通過させる流路管と、
前記流路管を通過する呼気に含まれるガスの濃度を検知するガスセンサと、
前記流路管及び前記ガスセンサを内蔵するケースと、
前記流路管と連通するように前記ケースに形成され、前記ケースの外部から呼気を入れるための流入口及び前記呼気を排出するための排出口とを備え、
前記流路管は、人によって吹き込まれる呼気を導くための管路を有する吹き込み用アタッチメントが前記流入口に取り付けられると呼気が通る流路を形成し、前記管路の内径よりも大きな内径を有し、
前記流路管内の圧力を検出するための圧力センサと、
前記流路管内の圧力を前記圧力センサに伝達するために前記流路管内部と前記圧力センサとを接続する圧力伝達管と、
前記圧力伝達管に圧力を伝達するために前記流路管に設けられる導入管を更に備え、
前記管路と前記流路管と前記排出口とが前記呼気が直進するように連通し、
前記導入管の流路管側端部は、前記流路管の内部において、前記管路を前記流路管の長さ方向へ延長したと仮定した領域であって、管路から流路管を通り排出口へと呼気が直進する領域となる位置に設けられている、
ことを特徴とする呼気成分測定装置。
【請求項3】
呼気を通過させる流路管と、
前記流路管を通過する呼気に含まれるガスの濃度を検知するガスセンサと、
前記流路管及び前記ガスセンサを内蔵するケースと、
前記流路管と連通するように前記ケースに形成され、前記ケースの外部から呼気を入れるための流入口とを備え、
前記流路管は、人によって吹き込まれる呼気を導くための管路を有する吹き込み用アタッチメントが前記流入口に取り付けられると呼気が通る流路を形成し、前記管路の内径よりも大きな内径を有し、
前記流路管内の圧力を検出するための圧力センサと、
前記流路管内の圧力を前記圧力センサに伝達するために前記流路管内部と前記圧力センサとを接続する圧力伝達管と、
前記圧力伝達管に圧力を伝達するために前記流路管に設けられる導入管を更に備え、
前記圧力センサによって検出された圧力センサの出力値の変化量が第1閾値を超え、かつ、前記ガスセンサよって検出されたガスセンサの出力値の変化量が第2閾値を超えることを条件に、圧力センサの出力値の変化量の開始時間から所定時間が経過した時点におけるガスセンサの出力値に対応するガスの濃度を特定する制御部を備える、
ことを特徴とする呼気成分測定装置。
【請求項4】
呼気を通過させる流路管と、
前記流路管を通過する呼気に含まれるガスの濃度を検知するガスセンサと、
前記流路管及び前記ガスセンサを内蔵するケースと、
前記流路管と連通するように前記ケースに形成され、前記ケースの外部から呼気を入れるための流入口とを備え、
前記流路管は、人によって吹き込まれる呼気を導くための管路を有する吹き込み用アタッチメントが前記流入口に取り付けられると呼気が通る流路を形成し、前記管路の内径よりも大きな内径を有し、
前記流路管内の圧力を検出するための圧力センサと、
前記流路管内の圧力を前記圧力センサに伝達するために前記流路管内部と前記圧力センサとを接続する圧力伝達管と、
前記圧力伝達管に圧力を伝達するために前記流路管に設けられる導入管を更に備え、
前記圧力センサによって検出された圧力センサの出力値における移動平均値からの変化量が前記流路管の内部に生じる圧力変化が呼気の吹き込みによるものであるか否か判定するための第1閾値を超え、かつ、前記ガスセンサよって検出されたガスセンサの出力値における移動平均値からの変化量が、前記流路管の内部に生じるガスの濃度変化が呼気の吹き込みによるものであるか否かを判定するための第2閾値を超えることを条件に、呼気の成分特定を開始する制御部を備える、
ことを特徴とする呼気成分測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項に記載の呼気成分測定装置において、
前記流路管の内径は、前記管路の内径の1.2倍以上2.5倍以下となる、
ことを特徴とする呼気成分測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の呼気成分測定装置において、
前記ケースの流入口に取付け可能であって、前記流路管の内径よりも小さい内径で、人によって吹込まれる呼気を前記流路管に導くための管路を内部に有する吹込み用アタッチメントを備える、
ことを特徴とする呼気成分測定装置。
【請求項7】
請求項6に記載の呼気成分測定装置において、
前記管路の内径は、4mmであり、
前記流路管の内径は、6mmである、
ことを特徴とする呼気成分測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のガスの濃度を測定する呼気成分測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の呼気にはアセトンやエタノールなどの有機ガスが含まれており、それら特定のガス濃度が呼気にどの程度含まれているかを測定することによって、その人がどのような状態であるかを知ることができる。そのような人の呼気の成分を測定する装置として、例えば特許文献1に呼気成分測定装置が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の呼気成分測定装置においては、人が吹込んだ呼気を通過させる呼気流路パイプと、呼気流路パイプの途中に小径の呼気導入孔及び呼気導入孔を囲むように呼気導入孔センサ収納壁が設けられ、センサ収納壁には、呼気導入孔とガスセンサの間に呼気溜まり空間ができるようにガスセンサが取付けられる。また、呼気溜まり空間の側部には外部との換気のための換気孔が設けられる。このように構成することによって、人によって吹込まれた呼気は、呼気流路パイプから小径の呼気導入孔と呼気溜まり空間を通過してガスセンサに到達する。この呼気成分測定装置においては、呼気が呼気導入孔及び呼気溜まり空間を経由することによって、吹込まれた呼気が直接ガスセンサに当ってガスセンサのセンサ素子が冷却されてしまうことを抑制し、センサ出力が不安定になることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4740263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の呼気成分測定装置では、ガスセンサが、呼気流路パイプに存在する呼気を直接測定せずに、呼気導入孔と呼気溜まり空間を経由した呼気を測定するため、ガスセンサ出力のレスポンスが遅くなってしまう。
呼気が流れる流路の内部では、流速が安定しない領域も存在する。従って、レスポンスを向上させるために、ガスセンサを流路の内部に配置しても、流速の影響を受けてガスセンサの出力が不安定になる場合がある。このため、被測定者が適当な流速の呼気を吹き込む必要があるなど使い勝手に問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、呼気を確実に捉えつつ、利便性を向上させる呼気成分測定装置を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る呼気成分測定装置の一態様は、呼気を通過させる流路管と、前記流路管を通過する呼気に含まれるガスの濃度を検知するガスセンサと、前記流路管及び前記ガスセンサを内蔵するケースと、前記流路管と連通するように前記ケースに形成され、前記ケースの外部から呼気を入れるための流入口とを備え、前記流路管は、人によって吹き込まれる呼気を導くための管路を有する吹き込み用アタッチメントが前記流入口に取り付けられると呼気が通る流路を形成し、前記管路の内径よりも大きな内径を有することを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、管路と流路管を有する流路において、管路の流路管側端部の内径よりも、流路管の内径を大きく構成したため、流路管において、管路を流路管内部に延長したと仮定した場合の領域では、それ以外の領域よりも呼気の流速が早く、それ以外の領域では、流路管において管路を流路管内部に延長したと仮定した場合の領域よりも呼気の流速が遅くすることができる。このため、その流速が遅くなる部分にガスセンサを配置することにより、呼気をガスセンサで確実に捉えることができ、しかも、被測定者が呼気吹き込みを加減することなく利用でき、利便性を向上する。
【0009】
上述した態様において、前記流路管は、前記流路管内部の呼気を前記ガスセンサへ導入するための開口部が内面に形成されており、前記流路管の外面に形成された案内部と前記所定の面とが密着するように前記流路管に取り付は、呼気を取り込むための取込口が所定の面に形成されており、前記取込口が前記開口部の内側に位置するように、前記流路管の外面に形成された案内部と前記所定の面とが密着するように前記流路管に取り付けられることが好ましい。
【0010】
開口部が形成される流路管の内面は、上述の流路管において管路を流路管内部に延長したと仮定した場合の領域以外の領域であることから、呼気の流速は遅くなる。そのため、呼気は流速が遅くなった状態でガスセンサに到達するから、確実に呼気を捉えることができる。また、流路管の外面に形成された案内部とガスセンサの所定の面とが密着するようにガスセンサが流路管に取り付けられるので、流路管の内部の呼気が、空気溜まり部等を経由することなく、素早くガスセンサに到達し、ガスセンサ出力のレスポンスをよくすることができる。
【0011】
上述の態様において、前記流路管の内径は、前記管路の内径の1.2倍以上2.5倍以下であることが好ましい。この場合、呼気を確実にガスセンサに取り込み、安定した測定が可能となる。
【0012】
上述の態様において、前記流路管内の圧力を検出するための圧力センサと、前記流路管内の圧力を前記圧力センサに伝達するために前記流路管内部と前記圧力センサとを接続する圧力伝達管と、前記圧力伝達管に圧力を伝達するために前記流路管に設けられる導入管を更に備え、前記導入管の流路管側端部は、前記流路管の内部において、前記管路を前記流路管の長さ方向へ延長したと仮定した領域に含まれることが好ましい。
【0013】
上述の流路管において管路を流路管内部に延長したと仮定した場合の領域での流速は早いことから圧力が比較的高く、それ以外の領域では流速が遅いことから圧力が比較的低くなる。導入管の流路管側端部が上記領域に含まれるように導入管を設けたので、流路管の側面よりも比較的高い圧力を導入管に伝達することができる。そのため、呼気の吹込みを検知するための圧力センサの感度を鋭敏にすることができる。
【0014】
上述の態様において、前記圧力センサによって検出された圧力の変化量が第1閾値を超え、かつ、前記ガスセンサよって検出されたガスの濃度の変化量が第2閾値を超えることを条件に、呼気の成分特定を開始する制御部を備えることが好ましい。
圧力とガスの濃度といった2つの要素を呼気成分の特定開始の条件としたので、圧力のみを呼気の成分を特定開始の条件とする場合と比較して、迅速に呼気の測定を実行できる。仮に、圧力のみを条件とすると、一つの要素で呼気の吹き込みを判定しなければならないので、第1閾値を大きくせざるを得ない。本発明は、圧力だけでなくガスの濃度も判定の条件とするため、第1閾値を低くすることができる。この結果、呼気の測定を迅速に行うことが可能となる。高齢者は、呼気を長時間吹き込むことが困難であることがある。この態様によれば呼気の吹き込み時間を短縮できるので、特に、高齢者など呼気の吹き込みが弱い被験者の利便性を向上させることができる。
【0015】
上述の態様において、前記制御部は、前記圧力の移動平均値を特定し、現在の圧力の圧力値と前記圧力の移動平均値の差分が前記第1閾値を超えたか否か判定し、前記ガスの濃度の移動平均値を特定し、現在のガスの濃度値と前記ガスの濃度の移動平均値の差分が前記第2閾値を超えたか否か判定することが好ましい。この態様によれば、変化量の基準を移動平均値とするので、相対値を用いて、呼気成分の特定開始を特定できる。従って、気圧が異なる場所やガスの環境が異なる場所で、呼気の成分を測定することができ、利便性を向上させることができる。
【0016】
上述の態様において、前記ケースの流入口に取付け可能であって、人によって吹込まれる呼気を前記流路管に導くための管路を内部に有する吹込み用アタッチメントを備えることが好ましい。吹込み用アタッチメントを用いることにより、これを外した状態の呼気成分測定装置の厚さを薄くして携帯し易くできる。この結果、呼気成分測定装置の利便性を向上させることができる。
上述の態様において、前記管路の内径は、4mmであり、前記流路管の内径は、6mmであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(A)は本発明の一実施形態の呼気成分測定装置を構成する呼気成分測定装置本体の正面図、(B)はその背面図である。
図2図1(A)の呼気成分測定装置本体のA−A断面図である。
図3図1の正面ケース及び蓋を省略した呼気成分測定装置本体を示す正面図である。
図4図2の流路の部分の拡大断面図である。
図5】(A)本実施形態の流路管の背面図、(B)は本実施形態の流路管の右側面図、(C)は本実施形態の流路管の平面図である。
図6】(A)は本実施形態のガスセンサの斜視図、(B)は本実施形態のガスセンサの断面図である。
図7】管路内径を4mmとし流路管内径を3mmとした場合のガスセンサ出力の時間変化を示すグラフである。
図8】管路内径を4mmとし流路管内径を4mmとした場合のガスセンサ出力の時間変化を示すグラフである。
図9】管路内径を4mmとし流路管内径を5mmとした場合のガスセンサ出力の時間変化を示すグラフである。
図10】管路内径を4mmとし流路管内径を6mmとした場合のガスセンサ出力の時間変化を示すグラフである。
図11】管路内径を4mmとし流路管内径を10mmの場合のガスセンサ出力の時間変化を示すグラフである。
図12】本実施形態における1ppmのアセトンガス吹込みを行った際の時間に対する圧力センサ出力値Vp[V]のグラフである。
図13】比較した形態における1ppmのアセトンガス吹込みを行った際の時間に対する圧力センサ出力値Vp[V]のグラフである。
図14】本実施形態の呼気成分測定装置本体の機能ブロック図である。
図15図15は呼気成分測定装置の動作フローである。
図16】圧力の変化とガスの濃度の変化の一例を示すグラフである。
図17】変形例1の流路の部分の拡大断面図である。
図18】変形例2の流路の部分の拡大断面図である。
図19】変形例3の流路の部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る一実施形態たる呼気成分測定装置を説明する。
<第1実施形態>
<呼気成分測定装置>
図1(A)は、本発明の一実施形態を構成する呼気成分測定装置本体1の正面図、(B)は、この呼気成分測定装置本体1の背面図、図2図1に示した呼気成分測定装置のA−A断面図である。呼気成分測定装置は、呼気成分測定装置本体1と、呼気成分測定装置本体1に取付けられる呼気吹込み用アタッチメント6を備える。
【0019】
図1(A)及び(B)において、呼気成分測定装置本体1は、正面ケース2、背面ケース3及び蓋4によって、ボックス状のケースとして構成される。背面ケース3には内部にアクセス可能なように脱着可能に蓋4が取付けられている。正面ケース2には、内部に呼気を取り入れるための流入口2aが設けられる。ケーブル5は、呼気成分測定装置本体1を外部に接続するために用いられる。
【0020】
図2のとおり、正面ケース2の流入口2aの外側に、吹込み用アタッチメント取付け穴2bが設けられる。呼気吹込み用アタッチメント取付け穴2bに呼気吹込み用アタッチメント6の円筒の突出部6cを内嵌することで、呼気吹込み用アタッチメント6が呼気成分測定装置本体1の流入口2aに取付けられる。
【0021】
<呼気成分測定装置本体1>
図3は、正面ケース2及び蓋4を省略した呼気成分測定装置本体1の正面図である。図3のとおり、呼気成分測定装置本体1は、内部に流路管8、ガスセンサ9、ガスセンサ9と一体に構成されるガスセンサユニット11、圧力センサ26、上述のガスセンサ9とは別のガスを測定するための第二ガスセンサ17、第二ガスセンサ17に呼気を導入するためのエアバレル19、エアバレル19を動かすためのソレノイド18を備える。
【0022】
<流路>
図4は、図2の流路の部分の拡大断面図である。上述のとおり、正面ケース2に呼気吹込み用アタッチメント6が取付けられる。呼気吹込み用アタッチメント6は、その内部に、人によって吹込まれた呼気を通すための管路6aと、ストロー取付け孔6bを有する。また、ストロー取付け孔6bにはストロー7が取付けられる。正面ケース2に呼気吹込み用アタッチメント6を取付けることで、ストロー7、管路6a、突出部6cの内面、流入口2a、流路管8の内面8a及び背面ケース3の排出口3aが連通して呼気を通す。
【0023】
ここで、管路6aから流路管8までの呼気が通る部分を流路と呼ぶ。即ち、本実施の形態においては、管路6a、突出部6cの内面、流入口2a及び流路管8の内面8aにより呼気を通すための流路が形成される。このとき、流路管8の内径は、管路6aの流路管側端部6dの内径よりも大きい。また、流入口2a及び突出部6cの内面の内径は、流路管8と連通し、これらの内径を同じ大きさ(断面形状を同じにする)に構成する。ストロー7の内径は、管路6aの内径と同じに構成する。ストロー取付け孔6b及びストロー7を設けることで、ストローだけを交換することができ、呼気吹込み用アタッチメント6を交換する頻度を下げることができる。
【0024】
<開口部8c及びガスセンサ取付け部8b>
図5(A)から(C)は、流路管8を三方向から見た図であり、図3の流路管8の向きを正面したとき、図5において(A)は流路管8の背面図、(B)は右側面図、(C)は平面図である。図4及び図5(C)のとおり、流路管8内の呼気をガスセンサ9へ導入するための開口部8cが流路管8の内面8aに設けられる。また、流路管8の側面(呼気を流す方向からみて垂直の方向)にガスセンサ取付け部8bが設けられる。また、図5(C)のとおり、ガスセンサ取付け部8bは、円筒状であり平面視において開口部8cを囲うように設けられ、ガスセンサ取付け部8bの内部と開口部8cとが連通するように設けられる。
流路管8の外面には、案内部8fが形成されている。一方、ガスセンサ9は図6(A)に示すように呼気を取り込むための取込口が所定の面9pに形成されている。そして、ガスセンサ9は、その取込口9bが開口部8cの内側に位置するように、流路管8の案内部8fと所定の面9pとが密着するように取り付けられる。なお、この例では、所定の面9pが平面であるため、案内部8fも平面であるが、所定の面9pが曲面である場合、案内部8fは、所定の面9pに沿った曲面となっている。
このように、流路管8の案内部8fとガスセンサ9の所定の面9pとは密着するので、
呼気溜まり空間を経由することなく、流路管8を流れる呼気をガスセンサ9で確実に捉えることができるので、ガスセンサ9の出力のレスポンスを向上させることが可能となる。
【0025】
<ガスセンサ9>
図4のとおり、ガスセンサ取付け部8bの内面には、ガスセンサ9が挿入されて取付けられる。ガスセンサ9は、ガスセンサ用基板10とともに、ガスセンサユニット11に組み込まれている。ガスセンサユニット11は、図3のとおり、下部にガスセンサ9及びメイン基板14との接続のためのコネクタ21を備えており、呼気成分測定装置本体1から脱着可能である。また、ガスセンサユニット11と正面ケース2の間には仕切り板13が設けられる。この例の仕切り板13は、背面ケース3の一部であり、一体として形成されている。
【0026】
図6(A)は、ガスセンサ9の斜視図、(B)はその断面図である。ガスセンサ9は、樹脂ベース9cにガスセンサ素子9gの抵抗値の検出及び加熱のための電気を供給する端子9d,9e,9fが取付けられるとともに、カバー9aの上部に取込口9bが設けられる。取込口9bは、小型の6つの孔の例を示したが、ガス(呼気)が取り込めればどのような形でもよく、例えばより大型の孔一つによって取込口9bを構成してもよい。
【0027】
ガスセンサ9は、取込口9bを下に向け(取込口9bを開口部8cに対向させ)ながらガスセンサ取付け部8bの中に挿入して本体に設置する。ここで、取込口9bの位置については、流路管8の内面8aから見たときに、取込口9bが露出するように、取り付ける。
【0028】
呼気の流速について説明する。人によってストローに呼気が吹込まれると、ストロー7、管路6a、突出部6cの内面、流入口2a、流路管8の内面8a、背面ケース3の排出口3aが連通しているため、これらに呼気が通る。このとき、管路6aの流路管側端部6dの内径よりも流路管8の内径の方が大きくなっている。このため、流路管8内部において、管路6aを流路管側端部6dから流路管8の長さ方向へ延長したと仮定した領域50(図4において破線によって示した)においては、管路6aから吹込まれた呼気が直進するため、領域50以外の領域よりも流速が早くなる。これに対して、領域50以外の領域即ち、流路管8の内部の外側については、呼気の流速が中心側に比較して遅くなる。そして、流路管8の内面8aに設けられた開口部8cは、領域50以外の領域であるため、管路6aの流速よりも減速された呼気が開口部8cを通過し、ガスセンサ9に到達し、ガスセンサ9は、呼気における所定のガスの濃度を測定する。
【0029】
このように、管路6aの流路管側端部6dにおける内径よりも、流路管8の内径を大きく構成したため、流路管8の内部に管路6aを流路管側端部6dから延長したと仮定した領域50以外の領域において吹込まれた呼気が遅くなる。その流速が遅くなる領域である流路管8の内面8aに、開口部8cを設け、排出口3a近傍にガスセンサ9を配置することにより、ガスセンサ9に到達する呼気が減速されるため、ガスセンサ9の出力が不安定になることを抑制することができる。また、流路管8の内部の呼気が、空気溜まり部等を経由することなく、素早くガスセンサ9に到達するので、ガスセンサ9の出力レスポンスをよくすることができる。
【0030】
また、この実施形態においては、開口部8c及びガスセンサ9を流路管8の上側に設けたため、ガスセンサ9に唾液や結露による水滴が溜まりにくく、ガスセンサ9の唾液や結露による故障を抑制することができる。
【0031】
<流路管内径についての実験データ>
図7から図11は、図4における流路管8の内径φをそれぞれ、3mm,4mm,5mm,6mm,10mmに変更したときのガスセンサ出力値Vsの時間変化を示すグラフである。いずれのグラフにおいても呼気吹込み用アタッチメント6の流路管側端部6dの内径は4mmに固定され、吹込むガスは、1ppmのアセトンであり、管路6aに吹込むガスの流量が30l/min(リットル/分)の場合を実線で示し、流速40l/minの場合を破線で示し、流速50l/minの場合を点線によって示している。実験においては、測定開始から約20秒後に呼気の吹き込みを停止している。
【0032】
ここでガス濃度が高いほどガスセンサ出力値Vsは高くなる。図7から図11のグラフにおいて、縦軸はガスセンサ出力値Vs[V]であり、横軸は吹込み開始から経過した時間sec(秒)である。なお、この実験においては、図4における流入口2a及び突出部6cの内径は、流路管8の内面8aの内径と同じにした(これらの断面形状を同じ形にして連通させた)。
【0033】
図7に示すように流路管8の内径φが3mmの場合、ガスの流量の変化に対して、ガスセンサ出力値Vsのばらつきは小さい。しかしながら、測定中のガスセンサ出力値Vsがガスの吹き込み開始から約13秒までは減少し、その後、増加する。即ち、時間の経過とともに増加するガスの吹き込み量の変化に対応してガスセンサ出力値Vsが増加しておらず、呼気成分測定装置に用いるのは適切でない。
【0034】
また、図8に示すように、流路管8の内径φが4mmの場合、ガスの流量が30l/minであれば、ガスの吹き込み量の変化に対応してガスセンサ出力値Vsが増加する。しかし、ガスの流量が40l/min及び50l/minの場合は、時間の経過とともに増加するガスの吹き込み量の変化に対応してガスセンサ出力値Vsが増加していない。即ち、流路管8の内径φが4mmの場合、ガスの吹き込み量の変化に対応したガスセンサ出力値Vsが得られるものと得られないものとが混在している。流路管8の内径φが4mmの場合、ガスの流量に応じたガスセンサ出力値Vsのばらつきが大きいので、呼気成分測定装置に用いるのは適切でない。
【0035】
一方、図9図11に示すように、流路管8の内径φが5mm〜10mmの場合、ガスの吹き込み量の変化に対応してガスセンサ出力値Vsが増加する。また、ガスの流量に応じたガスセンサ出力値Vsのばらつきも許容の範囲内である。よって、これらを呼気成分測定装置に用いることが好ましい。このように、管路6aの流路管側端部6dにおける内径よりも流路管8の内径を大きく構成することが、安定したガスセンサ出力値Vsを得る観点より、好適であることが確かめられた。
【0036】
図4に示すように、流路管8内部において、管路6aを流路管側端部6dから延長したと仮定した領域50においては、呼気の流速がその外側での流速に比べて早くなる。上述したように管路6aの内径よりも流路管8の内径が大きいと、開口部8cを領域50の外側に形成することができる。これにより、呼気が緩やかに流れる箇所にガスセンサ9を配置できるので、呼気を確実にガスセンサ9に取り込み、安定した測定が可能となる。
【0037】
また、上記実験では、管路6aの内径φが4mmの場合に、流路管8の内径φを3mm〜10mmの範囲で変化させ、流路管8の内径φが5mm〜10mmの範囲が好適である結果を得た。流路管8の内部における呼気の流速は、管路6aの内径φと流路管8の内径φとの比が一定であれば、同じように分布する。よって、管路6aの内径φに対して流路管8の内径φが約1.2倍〜約2.5倍の範囲であれば、ガスセンサ9の出力値を安定させることができ、呼気成分測定装置に用いるのに好適である。
特に、管路6aの内径φが4mmで流路管8の内径φが6mm(管路6aの内径の1.5倍)の場合、ガスの流量に応じたガスセンサ出力値Vsのばらつきが最も小さいので、呼気成分測定装置に用いるのに好適である。
【0038】
<流路の内径の範囲について>
呼気成分測定装置において、流路管8の内径は管路6aの内径よりも大きいことを前提に、呼気を通過させる流路における管路6a及び流路管8の内径は、いずれの部分でも4mm以上10mm未満であることが好ましい。
【0039】
流路における管路6a及び流路管8の内径の最大内径を10mm未満に細くしたため、人の呼気を吹込む力が弱くても流量を要さずに呼気成分測定が可能となり、ガスセンサ9に呼気が到達することができ、好適に呼気成分測定が可能である。特に女性高齢者などの呼気を吹込む力が弱い者であっても呼気成分測定が可能となる。ただし、流路の内径を4mm未満とした場合では人の呼気を吹込む力では流速が早すぎてしまうため、ガスセンサ9で呼気を捉えられない場合があり不向きである。これらのことは多くの人による呼気成分測定による実験を行うことで確かめられた。呼気吸い込み用アタッチメント6の突出部6cの内径及び流入口2aの内径については、必ずしも10mm未満でなくてもよい。
【0040】
<導入管>
図5(C)において、第一の導入管8dは、流路管8の内部の圧力を圧力センサ26に伝達し、第二の導入管8eは後述の第二ガスセンサへ流路管8内の呼気を通すためのパイプ28と接続される。第二の導入管8eは内部に孔8iを有する。図3に示すように、第一の導入管8dは、圧力伝達管27に接続され、圧力伝達管27は圧力センサ26の入力ポートに接続される。また、図5(C)のように、第一の導入管8dは、流路管8を貫通して取付けられるとともに、孔8gが流路管8の内部から外部へ通じるように設けられている。圧力伝達管27は、第一の導入管8dの圧力センサ26側端部を内嵌して接続されている。また、第一の導入管8dの流路管側端部8hは、流路管8の内側に突き出ており、図4に示す領域50に含まれる位置となるように設けられている。
【0041】
流路管8に呼気が吹込まれると、第一の導入管8dの流路管側端部8hに圧力が生じ、その圧力が第一の導入管8dの孔8gを通じて圧力伝達管27を介して圧力センサ26に伝達される。圧力センサ26は、流路管側端部8hにおいて生じた圧力を検知する。圧力センサ26の出力値の変化量が第1閾値ref1を超えた場合には、流路管8に呼気が流入したと判断して、ガスセンサ9の出力値を参照する(後述の図14のステップS3を参照)。
【0042】
上述のとおり、図4に示す流路管8内部において、管路6aを流路管側端部6dから延長したと仮定した領域50においては、呼気の流速がその外側での流速に比べて早くなる。即ち、流路管8の内部において、内面8a付近よりその内側は流速が早く、圧力変化も大きくなる。第一の導入管8dの流路管側端部8hが領域50に含まれる位置となるように内側に突出させたことから、特に圧力変化が大きな場所の圧力を圧力センサ26に伝達することができる。そのため、圧力センサ26が鋭敏に圧力変化を検知し、素早く呼気吹込みを検知することができる。
【0043】
図12は、本実施形態における第一の導入管8dの流路管側端部8hを領域50に含まれる位置となるように内側に突出させた場合の流路管8に60秒から73秒の間に40l/min(リットル/分)で1ppmのアセトンガス吹込みを行った際の時間に対する圧力センサ出力値Vp[V]のグラフである。図13は、図12のグラフとの比較のために、第一の導入管8dの流路管側端部8hを内側に突出させないで、孔8gを内面8aに設けた場合の流路管8に、同様の時間において、同様の流速で同濃度のアセトンガスの吹込みを行った際の時間に対する圧力センサ出力値Vs[V]のグラフである。なお、圧力センサ出力値Vpは、定常状態において2Vとなり、負圧が掛かると2Vよりも低い値となる。圧力センサ出力値Vpは図12の場合の方が1.2倍以上大きい。このため、図12の流路管側端部8hを内側に突出させた構成とした方が、圧力センサ26の出力値が大きくなることが確認された。
【0044】
<呼気成分測定装置の動作>
図14は、呼気成分測定装置本体1の機能ブロック図の一例である。図3と共通するものについては共通の符号を用いている。制御部40は、不図示のCPU等の演算装置及びメモリなど記憶装置その他の電子回路によるハードウエア及びプログラム等のソフトウエアで構成される演算モジュールである。また制御部40は、流路管8のガス濃度を測定するガスセンサ9、呼気が吹込まれたことを検知するために、流路管8の内部の圧力を圧力伝達管27を通じて測定する圧力センサ26、及び後述のパイプ28を通じて測定する第二ガスセンサ17と接続され、これらの動作を制御する。また、制御部40は、外部のパソコン、ディスプレイ、スピーカ又はプリンタなどへ測定結果等を出力する出力IF51(インターフェイス)を有するとともに、制御部40に対し、パソコン又は操作ボタンなどによって外部からの設定情報などを受け付ける入力IF52を備える。
【0045】
制御部40には、各素子及びモジュールを制御する動作制御部41と、圧力センサ26の出力信号をAD変換して圧力センサ26の出力値を示す圧力データを生成する圧力データ生成部42と、圧力データ生成部42の測定結果を参照して呼気が流入されたか判断する呼気吹込判断部43と、ガスセンサ9の出力信号をAD変換してガスセンサ9の出力値を示す第一ガスデータを生成する第一ガスデータ生成部44と、第一ガスデータ生成部44等の測定結果によって呼気をどのように評価するかの結果を判定する結果判定部45と、第一ガスデータ生成部44で生成された第一ガスデータに基づいてガスセンサ9の出力が安定状態にあるか判定する出力安定判断部46、ガスセンサ出力値を取り込むかを判断するガスセンサ出力値閾値判断部47と、第二ガスセンサ17の出力信号をAD変換して第二ガスセンサ17の出力値を示す第二ガスデータを生成する第二ガスデータ生成部48と、結果判定部45によって算出された判定結果をどのように表示するのかを決定する表示情報生成部49とが機能モジュールとして設けられる。
【0046】
<動作フロー>
図15は呼気成分測定装置の動作フローの一例である。この動作フローでは、圧力センサ26によって検出された圧力の変化量が第1閾値ref1を超え、かつ、ガスセンサ9よって検出されたガスの濃度の変化量が第2閾値ref2を超えることを条件に、呼気の成分の特定を開始する。また、図16に圧力センサ26によって検出された圧力の変化とガスセンサ9よって検出されたガスの濃度の変化とを例示する。
【0047】
まず、呼気成分測定装置は、ガスセンサ9の出力が安定しているか判断する(ステップS1)。即ち、出力安定判断部46が、ガスセンサ9の出力値を示す第一ガスデータに基づいてガスセンサ9の出力が安定しているか判断する。出力安定判断部46がガスセンサ9の出力が安定していると判定した場合には、出力が安定しているとの判断結果を動作制御部41に対し送る(ステップS1のYesの場合)。動作制御部41は、出力安定判断部46の出力が安定していないと判断した場合には測定準備を開始せずに、ガスセンサ9の出力が安定するのを待つ(ステップS1のNoの場合)。
【0048】
次に、ガスセンサ9の出力が安定しているとの結果を受けた動作制御部41は、呼気成分測定準備を完了させ、制御部40が圧力センサ26の出力信号を受け付ける状態にする(ステップS2)。この場合、制御部40は、圧力センサ26の出力信号を受け付ける状態になってから一定時間が経過すると、呼気を吹き込むように促す指示情報を図示せぬ表示部に出力IF51を介して出力する。あるいは、呼気成分測定装置本体1に表示部を設けて、表示してもよい。この場合、表示部は指示情報に従って所定の色のLEDを点灯させるものであってもよい。
【0049】
次に、呼気成分測定装置は、流路管8における呼気の吹込みによる圧力を圧力センサ26が検知したかを判断する(ステップS3)。呼気吹込判断部43は、圧力センサ26の出力値を示す圧力データに基づいて、常時、圧力値の移動平均値avr1を算出している。より具体的には、現在の圧力データより過去の所定数の圧力データを対象に移動平均値avr1を算出する。圧力データがDp1→Dp2→Dp3→Dp4→Dp5→Dp6の順で変化し、現在の圧力データがDp6であり、所定数が「5」であるとすれば、移動平均値avr1は、avr1=(Dp1+Dp2+Dp3+Dp4+Dp5)/5で算出される。呼気吹込判断部43は、現在の圧力データDp6と圧力データの移動平均値avr1との差分を圧力センサ26の出力値の変化量として算出し、変化量が第1閾値ref1を超えたか否かを判定する。
【0050】
呼気を吹き込むと流路管8の内部に圧力が生じ、その圧力が第一の導入管8dの孔8gを通じて圧力伝達管27を介して圧力センサ26に伝達される。第1閾値ref1は、流路管8の内部に生じる圧力変化が呼気の吹き込みによるものであるか否かを判定できるように定められている。また、圧力の絶対値と第1閾値ref1とを比較するのではなく、圧力の変化量と第1閾値ref1とを比較したので、高度の異なる場所で測定した場合にも呼気の吹き込みを確実に検出することが可能となる。
【0051】
例えば、図16に示す例では、時刻t0から呼気の吹き込みが開始される。呼気の吹き込みが開始されると圧力センサ26の出力は負圧となる。この時の変化量となる移動平均値avr1と現在の出力値との差分が、時刻t1において第1閾値ref1を超える。従って、図16に示す例では、呼気吹込判断部43は、時刻t1に至ると、呼気の吹込みによる圧力を圧力センサ26が検知したと判断する。
呼気吹込判断部43は、呼気が吹込まれたと判断したとき、その判断の結果を動作制御部41に送る(ステップS3のYesの場合)。呼気吹込判断部43が呼気の吹込みが検知しない場合には、圧力センサ26の出力値を示す圧力データの受け付けを続ける(ステップS3のNoの場合)。
【0052】
次に、呼気成分測定装置は、呼気の吹込みによって、ガスセンサ9がガスの濃度を検知しているか判断する(ステップS4)。ガスセンサ出力値閾値判断部47は、第一ガスデータ生成部44から出力される第一ガスデータを読み込む。
ガスセンサ出力値閾値判断部47は、常時、第一ガスデータの移動平均値を算出している。より具体的には、現在の第一ガスデータより過去の所定数の第一ガスデータを対象に移動平均値avr2を算出する。第一ガスデータがDg1→Dg2→Dg3→Dg4→Dg5→Dg6の順で変化し、現在の第一ガスデータがDg6であり、所定数が「5」であるとすれば、移動平均値avr2は、avr2=(Dg1+Dg2+Dg3+Dg4+Dg5)/5で算出される。呼気吹込判断部43は、現在の第一ガスデータDg6と第一ガスデータの移動平均値avr2との差分をガスセンサ9の出力値の変化量として算出し、変化量が第2閾値ref2を超えたか否かを判定する。
第2閾値ref2は、流路管8の内部に生じるガスの濃度変化が呼気の吹き込みによるものであるか否かを判定できるように定められている。また、第一ガスデータの絶対値と第2閾値ref2とを比較するのではなく、第一ガスデータの変化量と第2閾値ref2とを比較したので、様々な環境で測定した場合にも呼気の吹き込みによるガスの濃度を確実に検出することが可能となる。
例えば、図16に示す例では、ガスセンサ9の出力値の変化量となる移動平均値avr2と現在の第一ガスデータとの差分が、時刻t2において第2閾値ref2を超える。従って、図16に示す例では、呼気吹込判断部43は、時刻t2に至ると、ガスセンサ9が、呼気の吹込みによってガスの濃度が変化したことを検知したと判断する。
【0053】
ガスセンサ出力値閾値判断部47は、ガスセンサ9の出力値の変化量が第2閾値ref2を超えたと判断した場合には、動作制御部41にその判断結果を送る(ステップS4のYes)。ガスセンサ9の出力値の変化量が第2閾値ref2を超えない場合には、ガスセンサ出力値閾値判断部47は、第一ガスデータ生成部44の出力データを取り込まないと判断し、そのままの状態で第一ガスデータの変化量が第2閾値ref2を超えるのを待つ(ステップS4のNo)。
【0054】
次に、結果判定部45は、ガスセンサ9の出力値を示す第一ガスデータを取り込む(ステップS5)。次に、結果判定部45は、第一ガスデータ生成部44の出力データに基づいて、ガスの濃度値を特定する(ステップS6)。具体的には、結果判定部45は、第一ガスデータ生成部44の出力データの変化から、呼気の吹き込み開始となる時刻t0を特定する。次に、結果判定部45は、時刻t0から所定時間Txが経過した時刻t3を特定する。ガスセンサ9の出力値は、図16に示すように呼気の吹き込みの開始から緩やかに増加して、定常値Zに収束する特性を有する。算出したいのは定常値Zに対応するガスの濃度値Yである。なお、ガスセンサ9の出力値は、ガスの濃度値に対応するものであるが、ガスセンサ9の出力値は、ガスセンサ9に出力信号の電圧値であり、ガスの濃度値そのものではない。
ガスセンサ9の出力値の過渡応答特性は既知である。そこで、吹き込み開始から所定時間Txが経過した時点におけるガスセンサ9の出力値Xからガスの濃度値Y(定常値Xに対応する値)を特定する。
結果判定部45は、出力値Xを変数とする演算式を用いてガスの濃度値Yを算出する。あるいは、結果判定部45は、出力値Xとガスの濃度値Yとを対応付けて記憶したガス濃度テーブルを備え、吹き込み開始から所定時間Txが経過した時刻t3において、第一ガスデータ生成部44が出力する第一ガスデータを出力値Xとして取得し、ガス濃度テーブルを参照して、出力値Xに対応するガスの濃度値Yを読み出してもよい。
【0055】
次に、呼気成分測定装置は、ガスセンサ9の検知したガス濃度値Yを表示する(ステップS7)。即ち、ステップS6で結果判定部45が判定したガス濃度値Yなどの測定結果の内容を基礎として、表示情報生成部49が、表示情報を生成して、表示情報を出力IF51を通じてディスプレイ等の表示機器に表示する。
【0056】
このように、本実施形態では、圧力センサ26によって検出された圧力の変化量が第1閾値ref1を超え、かつ、ガスセンサ9よって検出されたガスの濃度の変化量が第2閾値ref2を超えることを条件に、呼気の成分の特定を開始した。圧力とガスの濃度といった2つの要素を呼気成分の特定開始の条件としたので、圧力のみを呼気の成分を特定開始の条件とする場合と比較して、迅速に呼気の測定を実行できる。仮に、圧力のみを条件とすると、一つの要素で呼気の吹き込みを判定しなければならないので、第1閾値ref1を大きくせざるを得ない。これに対して、本実施形態では、圧力だけでなくガスの濃度も判定の条件とするため、第1閾値ref1を低くすることができる。この結果、呼気の測定を迅速に行うことが可能となる。高齢者は、呼気を長時間吹き込むことが困難であることがある。本実施形態では、呼気の吹き込み時間を短縮できるので、特に、高齢者など呼気の吹き込みが弱い被験者の利便性を向上させることができる。
【0057】
<第二ガスセンサ>
上述のフローでは、ガスセンサ9のみによって、ガス濃度を測定する場合について説明したが、ステップS5の結果判定においは、第二ガスセンサ17の測定結果も参照して結果を導出してもよい。第二ガスセンサ17は、図3のとおり、メイン基板14に設けられた縦板15によって支持される板16に取付けられおり、第二ガスセンサ17と流路管8の内部とは、第二の導入管8e(図5(A)から(C)を参照)を介してパイプ28により接続される。第二ガスセンサ17と空気を引き込むためのエアバレル19とはパイプ30により接続される。この構成において、動作制御部41がエアバレル19を動かすためのソレノイド18を動作させる。次に、エアバレル19が、ガスを引き込むことによって、第二ガスセンサ17に流路管8内の呼気が導入され、第二ガスセンサ17が呼気に含まれるガス成分の濃度を測定することができる。第二ガスセンサ17を使用する場合として、例えばガスセンサ9を呼気に含まれるエタノール濃度とアセトン濃度に反応するガスセンサとし、第二ガスセンサ17をエタノール濃度を測定するセンサとすることができる。そうすると、結果判定部45がガスセンサ9の測定したエタノールとアセトンの濃度値から、第二ガスセンサ17の測定したエタノール濃度値の差を計算することによってアセトン濃度値を算出ことができる。人体において脂肪を燃焼するとアセトンが発生するため、呼気のアセトン濃度が高くなることが分かっており、アセトン濃度を測定することは、ダイエットがうまくいっているかどうかの目安にされる点で有用である。なお、上述のフローにおいてガスセンサ9のみによってガス濃度を測定する例を説明したとおり、第二ガスセンサ17、エアバレル19及びソレノイド18は必須ではない。
【0058】
<変形例1>
図17に示すように流路を構成してもよい。図17の変形例においては、前述の実施形態における図4と同じ機能を有する要素には同じ符号を用いて、説明を省略する。図17においては、呼気吹込み用アタッチメント6の管路6aの内径をA、呼気吹込み用アタッチメント6の突出部6cの内径をB、流入口2aの内径をC、流路管8の内径をDとして説明する。変形例1においては、図4の実施形態と比べて、流路において呼気吹込み用アタッチメント6の突出部6cの内径B及び流入口2aの内径Cが流路管8の内径をDよりも大きく構成している。
【0059】
このような構成であっても、呼気吹込み用アタッチメント6の管路6aの流路管側端部6dから流路管8側へ管路6aを延長したと仮定した領域50は、領域50以外の領域に比べて流速が早くなり、領域50以外の領域は領域50に比較して流速が遅くなる。そのため、前述の図4に示した実施形態と同等の効果が得られる。
【0060】
<変形例2>
図18に示すように流路を構成してもよい。図18の変形例2において、図17と同じ機能を有する要素には同じ符号を用いて説明を省略する。この変形例においは、突出部6cの内径が呼気吹込み用アタッチメント6の管路6aと同じであり、呼気吹込み用アタッチメント6の管路6aの流路管側端部6dが、流入口2aまで達している。
【0061】
そのような構成であっても、呼気吹込み用アタッチメント6の管路6aの流路管側端部6dから流路管8側へ管路6aを延長したと仮定した領域50は、領域50以外の領域に比べて流速が早くなり、領域50以外の領域は領域50に比較して流速が遅くなる。そのため、前述の実施形態と同等の効果が得られる。
【0062】
また、図示は省略するが、図18において、流入口2aの内径Cを呼気吹込み用アタッチメント6の管路6aの内径と同じ大きさに構成してもよい。そのような構成であっても、呼気吹込み用アタッチメント6の管路6aの流路管側端部6dから流路管8側へ管路6aを延長したと仮定した領域50は、領域50以外の領域に比べて流速が早くなり、領域50以外の領域は領域50に比較して流速が遅くなる。そのため、同等の効果が得られる。
【0063】
<変形例3>
図19に示すように流路を構成してもよい。図19の変形例3において、図17及び図18と同じ機能を有する要素には同じ符号を用いて説明を省略する。図19においては、呼気吹込み用アタッチメント6が流入口2aに嵌合されるとともに、呼気吹込み用アタッチメント6が流路管8に接して、管路6aの流路管側端部6dが流路管8の呼気吹込み用アタッチメント側端部と当接している。
【0064】
そのような構成であっても、呼気吹込み用アタッチメント6の管路6aの流路管側端部6dから流路管8側へ管路6aを延長したと仮定した領域50は、領域50以外の領域に比べて流速が早くなり、領域50以外の領域は領域50に比較して流速が遅くなる。そのため、前述の実施形態と同等の効果が得られる。
【0065】
これらの実施形態において、呼気吹込み用アタッチメント6には、ストロー取付け孔6bを設けてストローを取付けて使用している例を示したが、ストロー取付け孔6bを設けずに、呼気吸い込み用アタッチメント6をマウスピースとして使用するように構成してもよい。
【0066】
また、本実施形態の呼気成分測定装置本体は、アセトンを検出するためのものとして説明したが、アルコールセンサにおいても使用できる。その他本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0067】
<変形例4>
上述した実施形態では、図15を参照して説明したように、圧力センサ26によって検出された圧力の変化量が第1閾値ref1を超えたことを判定した後に、ガスセンサ9よって検出されたガスの濃度の変化量が第2閾値ref2を超えることを判定したが、本発明は2つの要素の判定順序に限定されない。即ち、ガスセンサ9よって検出されたガスの濃度の変化量が第2閾値ref2を超えることを判定した後に、圧力センサ26によって検出された圧力の変化量が第1閾値ref1を超えたことを判定してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…呼気成分測定装置、2…正面ケース、3…背面ケース、4…蓋、2a…流入口、2b…呼気吹込み用アタッチメント取付け穴、3a…排出口、6…呼気吹込み用アタッチメント、6a…管路、6b…ストロー取付け孔、6c…突出部、6d…流路管側端部、7…ストロー、8…流路管、8a…内面、8b…ガスセンサ取付け部、8c…開口部、8d…第一の導入管、8e…第二の導入管、8f…突出部、8h…流路管側端部、9…ガスセンサ、9b…ガス取込口、9g…ガスセンサ素子、14…メイン基板、16…板、17…第二ガスセンサ、18…ソレノイド、19…エアバレル、26…圧力センサ、27…圧力伝達管、40…制御部、50…領域。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19