【発明が解決しようとする課題】
【0008】
神経変調および/または他の神経刺激の効果をより良く理解するため、ならびに、例えば、神経反応フィードバックによって制御される刺激子を提供するため、刺激によるCAPを正確に検出することが望ましい。誘発反応は、アーチファクトよりも後の時間に現れる際または信号対雑音比が十分に高い際は、検出はそれほど難しくはない。アーチファクトは刺激から1〜2ms後の時間に限定される場合が多く、従って、この時間窓の後に神経反応が検出されるならば、反応測定をより容易に得ることができる。これは、刺激場所から記録電極への伝播時間が2msを超えるような、刺激電極と記録電極との間に大きな距離(例えば、60ms
−1で伝導している神経の場合は12cmを超える)がある手術モニタリングにおける事例である。
【0009】
しかし、後索からの反応を特徴付けるため、高い刺激電流および電極間の近接近が必要とされ、従って、そのような状況では、測定プロセスは、アーチファクトを直接克服しなければならない。しかし、神経測定において観察されるCAP信号成分は、通常、マイクロボルトの範囲の最大振幅を有するため、これは、難しいタスクであり得る。対照的に、CAPを誘発するために印加される刺激は、通常、数ボルトであり、電極アーチファクトを生じさせ、電極アーチファクトは、神経測定において、CAP信号と同時に部分的にまたは全体的に数ミリボルトの減衰出力として現れ、はるかに小さな対象のCAP信号の分離(または検出までも)への著しい障害を提示する。
【0010】
例えば、入力5Vの刺激の存在下で1μVの分解能を有する10μV CAPを解決するには、例えば、134dBのダイナミックレンジを有する増幅器が必要とされ、それは、移植システムでは実用的ではない。神経反応は刺激および/または刺激アーチファクトと同時のものであり得るため、CAP測定は、測定増幅器設計の難題を提示する。実際には、多くの非理想的な回路の態様はアーチファクトにつながり、これらの大部分が正または負の極性であり得る指数関数的に減衰する外観を有するため、それらの識別および除去は、多くの時間と労力を要するものであり得る。
【0011】
この問題の困難は、移植デバイスにおけるCAP検出の実装を試みる際にさらに悪化する。典型的な移植物は、所望のバッテリ寿命を維持するため、刺激ごとに限られた数(例えば、幾百または数千)のプロセッサ命令が認められる電力予算を有する。それに従って、移植デバイスのためのCAP検出器が規則的(例えば、1秒間に1回)に使用されることになっている場合は、検出器は、好ましくは、電力予算のほんの一部のみを消費すべきであり、従って、望ましくは、そのタスクを完了するために、プロセッサ命令のうちのほんの数十のみを必要とすべきである。
【0012】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品または同様のものについての論考は、単に、本発明のための文脈を提供するためのものである。これらの事項のいずれかまたはすべてが、先行技術基盤の一部を形成するか、あるいは、この出願の各請求項の優先日前に存在していたために、本発明に関連する分野において共通の一般的な知識であったことの承認として受け取ってはならない。
【0013】
この明細書全体を通じて、「備える、含む(comprise)」という用語または「備える、含む(「comprises」または「comprising」)」などのその変形語は、述べられる要素、整数もしくはステップ、または、要素、整数もしくはステップ群の包含を含意するが、他の任意の要素、整数もしくはステップ、または、要素、整数もしくはステップ群の除外は含意しないと理解されよう。
【0014】
この明細書では、要素がオプションのリスト「の少なくとも1つ」であり得るという言明は、要素が、リストされるオプションのいずれか1つでも、リストされるオプションのうちの2つ以上の任意の組合せでもあり得ると理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様によれば、本発明は、神経測定において神経反応が存在するかどうかを検出するために、アーチファクトの存在下で得られた神経測定を処理するための方法であって、
1つまたは複数の検知電極から神経測定を得るステップと、
フィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップであって、フィルタテンプレートが、窓によって振幅変調された交流波形の少なくとも3つの半周期を含む、ステップと、
相関の出力から、神経測定において神経反応が存在するかどうかを決定するステップと
を含む方法を提供する。
【0016】
第2の態様によれば、本発明は、神経測定において神経反応が存在するかどうかを検出するために、アーチファクトの存在下で得られた神経測定を処理するための移植可能デバイスであって、
1つまたは複数の検知電極から神経測定を得るための測定回路と、
フィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるように構成されたプロセッサであって、フィルタテンプレートが、窓によって振幅変調された交流波形の少なくとも3つの半周期を含む、プロセッサであり、相関の出力から、神経測定において神経反応が存在するかどうかを決定するようにさらに構成される、プロセッサと
を備えるデバイスを提供する。
【0017】
窓は、三角窓を含み得る。三角窓は、以下の、すなわち、
Lが奇数の場合:
1≦n≦(L+1)/2に対して、w(n)=2n/(L+1)
(L+1)/2+1≦n≦Lに対して、w(n)=2−2n
/(L+1)
Lが偶数の場合:
1≦n≦L/2に対して、w(n)=(2n−1)/L
L/2+1≦n≦Lに対して、w(n)=2−(2n−1)/L
の係数w(n)を含む長さLの標準の三角窓であり得る。より好ましくは、三角窓は、サ
ンプル1およびLが0であるバートレット窓であり、本明細書における三角窓との記載は
、標準の三角窓と、上記で説明されるようなバートレット窓の両方を包含し、他の実質的
に三角形のまたはテント形状の窓関数も包含することが意図されることを理解されたい。
あるいは、窓は、バートレット窓、ハニング窓、矩形窓、または、適切なベータ値のカイ
ザーベッセル窓を含み得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、フィルタテンプレートは、交流波形の4つの半周期を含む。得られた神経測定に対して相関させるために使用される、どこか予期される3つのピークを有するCAP反応のような形状の3つのピークを有するテンプレートを含む一致フィルタは、雑音が白色である際にSNRを最適化できるが、アーチファクトは白色雑音ではなく、そのような3つのピークを有する一致フィルタは、アーチファクトの存在下でのCAP検出ではそれほど最適には実行できないことをそのような実施形態は認識している。
【0019】
フィルタテンプレートは、三角窓によって振幅変調されることによって修正された正弦波の4つの半周期を含み得、従って、4つの交流ピークを含む。あるいは、フィルタテンプレートは、三角窓内に振幅を収めることによって修正された余弦波の4つの半周期を含み得、従って、5つの交流ピークを含む。そのようなフィルタテンプレートの逆(すなわち、異極性を有する)は、いくつかの実施形態において採用することができる。代替の実施形態の交流波形は、非正弦曲線であり得るが、好ましくは、連続曲線であり、いくつかの実施形態では、4つの半周期を含むが、神経反応のプロファイルに似ている場合がある。
【0020】
従って、本発明は、アーチファクト拒絶が改善されたフィルタテンプレートの選択に備える。本発明は、別個の時定数を有する2つの指数関数の総和としてアーチファクトをかなり正確にモデル化でき、バートレットフィルタテンプレート窓がe
xのテイラー展開の最初の3つの項(すなわち、DC、線形および二次の項)を拒絶するため、本発明のそのような実施形態は、アーチファクト拒絶を容易にすることを認識している。
【0021】
第3の態様によれば、本発明は、神経測定において神経反応が存在するかどうかを検出するために、アーチファクトの存在下で得られた神経測定を処理するための方法であって、
1つまたは複数の検知電極から神経測定を得るステップと、
第1の時間オフセットにおいて、第1の測定値m
1を生成するために、第1のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップであって、第1のフィルタテンプレートが、第1の位相の交流波形を含む、ステップと、
第1の時間オフセットにおいて、第2の測定値m
2を生成するために、第2のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップであって、第2のフィルタテンプレートが、第1の位相に対して90度のオフセットが設けられた第2の位相の交流波形を含む、ステップと、
第1の時間オフセットから180度の非整数倍のところにあるオフセットである第2の時間オフセットにおいて、第3の測定値m
3を生成するために、第1のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップと、
第2の時間オフセットにおいて、第4の測定値m
4を生成するために、第2のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップと、
神経測定において神経反応が存在するかどうかを検出するために、m
1〜m
4を処理するステップと
を含む方法を提供する。
【0022】
第4の態様によれば、本発明は、神経測定において神経反応が存在するかどうかを検出するために、アーチファクトの存在下で得られた神経測定を処理するためのデバイスであって、
1つまたは複数の検知電極から神経測定を得るための測定回路と、
プロセッサであって、
第1の時間オフセットにおいて、第1の測定値m
1を生成するために、第1のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップであって、第1のフィルタテンプレートが、第1の位相の交流波形を含む、ステップと、
第1の時間オフセットにおいて、第2の測定値m
2を生成するために、第2のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップであって、第2のフィルタテンプレートが、第1の位相に対して90度のオフセットが設けられた第2の位相の交流波形を含む、ステップと、
第1の時間オフセットから180度の非整数倍のところにあるオフセットである第2の時間オフセットにおいて、第3の測定値m
3を生成するために、第1のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップと、
第2の時間オフセットにおいて、第4の測定値m
4を生成するために、第2のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップと、
神経測定において神経反応が存在するかどうかを検出するために、m
1〜m
4を処理するステップと
を行うように構成されたプロセッサと
を備えるデバイスを提供する。
【0023】
第3および第4の態様のいくつかの実施形態では、第1のフィルタテンプレートは、虚数のDFT出力を作成するために反対称であり得、第2のフィルタテンプレートは、実数のDFT出力を作成するために対称であり得る。
【0024】
第3および第4の態様のいくつかの実施形態では、第2の時間オフセットは、第1の時間オフセットから90度または270度のオフセットである。
【0025】
第3および第4の態様のいくつかの実施形態では、第1および/または第2のフィルタテンプレートは各々が、三角窓によって振幅変調された交流波形の4つの半周期を含む。例えば、第1のフィルタテンプレートは、三角窓によって振幅変調された正弦波形の4つの半周期を含み、第2のフィルタテンプレートは、三角窓によって振幅変調された余弦波形の4つの半周期を含む。あるいは、本発明の第3および第4の態様のいくつかの実施形態における第1および第2のフィルタテンプレートの交流波形は、カイザーベッセル窓(例えば、β=6を有する)によって振幅変調することができる。
【0026】
本発明の第1から第4までの態様は、神経測定とのフィルタテンプレートの相関の実行は、通常、プロセッサ命令のうちのほんの数十のみを必要とするという点で、移植デバイスに関連して適用される際にさらに有利であり、従って、例えば、幾百のプロセッサ命令を必要とする二重指数関数的な一致フィルタ手法と比較して、典型的な移植物の電力予算の適切なほんの一部のみを消費する。本発明の第1から第4までの態様の好ましい実施形態では、事前に定義された最適な時間遅延で、相関の単一のポイントのみが計算される。
【0027】
本発明の第1から第4までの態様のいくつかの実施形態は、信号対アーチファクト比が1より大きい際に、神経測定とフィルタテンプレートとの間の相互相関の第1または単一のポイントを生成すべきである最適な時間遅延を効率的に決定するための方法であって、
神経反応とフィルタテンプレートとの間の近似時間遅延で、神経測定のDFTの基本周波数の実数および虚数部分を演算するステップと、
実数および虚数部分によって定義された位相を計算するステップと、
基本周波数に対して、計算された位相をπ/2に変更するために必要とされる時間調整を計算するステップと、
近似時間遅延と時間調整との総和として最適な時間遅延を定義するステップと
を含む方法を提供することができる。
【0028】
本発明の第3および第4の態様の他の実施形態は、神経測定とフィルタテンプレートとの間の相互相関の第1または単一のポイントを生成すべきである最適な時間遅延を効率的に決定するための方法であって、
第1の時間オフセットにおいて、第5の測定値m
5を生成するために、第3のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップであって、第3のフィルタテンプレートが、第1のフィルタテンプレートの周波数の2倍の第3の位相の交流波形を含む、ステップと、
第2の時間オフセットにおいて、第6の測定値m
6を生成するために、第3のフィルタテンプレートに対して神経測定を相関させるステップと、
m
5およびm
6から、第1の時間オフセットと第2の時間オフセットとの間のアーチファクトの減衰を決定するステップと
を含む方法を提供することができる。
【0029】
次いで、最適な時間遅延を使用して、神経測定とフィルタテンプレートとの間の相互相関を生成すべきである単一のポイントを定義することができる。最適な時間遅延は、例えば、神経反応の検出の毎回の試みの前もしくは時折、例えば、1秒間隔で、または、ユーザの姿勢の変化の検出に応答して、規則的に計算することができる。
【0030】
基本周波数は、CAPの3つの位相の周波数および/またはフィルタテンプレートの4つの周期の周波数であり得る。
【0031】
フィルタテンプレートの長さは、好ましくは、フィルタテンプレートが、神経測定が評価されるサンプリングレートにおいて典型的な神経反応の持続時間の4/3である多くのフィルタポイントを含むように選択される。
【0032】
好ましい実施形態では、測定は、本出願人による国際公開第2012/155183号の教示に従って得られる。さらなる好ましい実施形態では、検出器出力は、例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、本出願人による国際公開第2012/155188号の教示と併せて、神経変調を制御するために閉ループフィードバック回路において使用される。
【0033】
従って、本発明は、フィルタテンプレートが、アーチファクトと実質的に直交し、誘発反応と一致する一致フィルタのものに近い反応とのドット積を有するならば、神経測定とフィルタテンプレートのドット積を計算することによって誘発反応の振幅を測定できることを認識している。フィルタテンプレートは、好ましくは、DCを拒絶し、一次信号(一定の傾きを有する信号)を拒絶し、アーチファクトなどの指数関数的にまたは同様に減衰する低周波信号を拒絶する。フィルタは、好ましくは、刺激のすぐ後に発生した信号に対して動作できるように構成される。
【0034】
4つの極値部分がアーチファクトの拒絶と雑音利得との間の最適なトレードオフを提供しているが、本発明の代替の実施形態は、より多くのまたはより少ない極値部分を含むフィルタテンプレートを有効に採用することができる。そのような実施形態では、フィルタテンプレートは、例えば、正弦曲線二項変換(SBT)から導き出される1つまたは複数の基底関数を含み得る。3つまたは5つの極値部分を有するフィルタテンプレートを含む実施形態では、DCおよびテイラー展開のランプ成分をより良く拒絶し、従って、アーチファクトをより良く拒絶するため、窓は、好ましくは、例えば、三角ピークというよりむしろ、SBTによって返されるような平らな中央部分を含む。本発明のいくつかの実施形態は、複数の同一のフィルタテンプレート要素であるが、時間がシフトされたものを使用することができる。これらが直交ではないとしても、複合テンプレートを作成する逐次近似法は、より良い近似を提供することができる。それに加えてまたはその代替として、いくつかの実施形態は、異なる周波数のテンプレート、異なるオフセットのテンプレートおよび/または異なる数の極値部分のテンプレートの総和であるテンプレートを使用することができる。
【0035】
ここでは、添付の図面を参照して、本発明の例を説明する。