特許第6671050号(P6671050)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671050
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】離型フィルム付銅箔
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/22 20060101AFI20200316BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200316BHJP
   B32B 15/04 20060101ALI20200316BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20200316BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B32B3/22
   B32B27/00 L
   B32B15/04 Z
   H05K1/09 Z
   C23C14/06 N
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-70710(P2016-70710)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-177651(P2017-177651A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】391057421
【氏名又は名称】東レKPフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】西山 剛司
(72)【発明者】
【氏名】都地 輝明
(72)【発明者】
【氏名】藤 信男
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/054812(WO,A1)
【文献】 特開2015−104891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/22
B32B 15/04
B32B 27/00
C23C 14/06
H05K 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムの少なくとも一方の面に部分的に剥離層を有する離型フィルムの該剥離層側に蒸着法を用いて銅膜が設けられた離型フィルム付銅箔であって、銅膜とフィルムが直接接する領域がスジ状に存在することを特徴とする離型フィルム付銅箔。
【請求項2】
該スジ状がフィルムの両端部に施され、該剥離層は該フィルムの両端からフィルム全幅に対し一領域の幅で0.5%以上距離が離れた領域で形成されている請求項1に記載の離型フィルム付銅箔。
【請求項3】
該銅膜と該離型フィルムの引き剥がし強さが、該剥離層が形成されている部位で1.0×10−3N/mm以上1.0×10−2N/mm以下であり、該剥離層が形成されていない部位で5.0×10−2N/mm以上である請求項1または2に記載の離型フィルム付銅箔。
【請求項4】
該剥離層は厚みが0.5nm以上5.0nm以下の炭素層であり、該銅膜は厚みが0.3μm以上3.0μm以下であり、表面粗さRaが0.10μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の離型フィルム付銅箔。
【請求項5】
該フィルムはポリイミドフィルムまたはポリエステルフィルムであり、該銅膜が厚み方向に対して柱状晶を有する請求項1〜4のいずれかに記載の離型フィルム付銅箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板、電子部品、電磁波シールド用途等に好適に使用される離型フィルム付銅箔に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータのマイクロプロセッサ等として使用される半導体集積回路素子(以下、「半導体素子」ということがある。)は、近年、高性能化、多機能化が進んでいる。このため、半導体素子の端子間ピッチは狭ピッチ化が求められており、半導体素子が搭載されるプリント配線板であるパッケージ基板等も配線パターンの微細化が求められている。
【0003】
プリント配線板の配線パターンを形成する方法は、銅張積層板の銅層をエッチングやめっき加工することにより製造されてきた。銅張積層板とは絶縁層樹脂に銅箔を貼り付けたものである。例えばサブトラクティブ法は銅張積層板から不要な銅層部分を取り除いて回路を形成する方法であり、配線として残したい部分にインクや塗料を塗布して覆い、金属腐食性の薬品で銅層をエッチングして必要な回路を形成する方法である。また、セミアディティブ法は絶縁層基板に回路パターンを後から付け加える方法であり、パターンを形成しない部分にレジストを形成し、めっきを施しパターンを形成する方法である。
【0004】
近年の小型軽量化の図られた電子機器等に掲載するプリント配線板は、部品実装密度を向上させ狭小領域に配置されるため、ファインピッチ回路を形成することが求められてきた。
【0005】
配線材料には銅箔が好適に用いられ、この要求に応えるために銅箔の厚みを小さくすることが求められていた。ところが、薄い銅箔を使用するほど銅箔のハンドリングが困難になり、シワ等の結果が発生しやすくなる。銅箔にシワやピンホールがあると、プレス成型時に銅箔のシワ部分から亀裂が発生し、流動化した絶縁層樹脂が亀裂から浸み出し、銅張積層板の表面が汚染されたり、銅箔の平坦度を損ねたりするおそれがある。これら銅張積層板の欠陥は、その後のプリント配線板の製造工程において形成される配線回路のショートや断線等を起こす原因となる。
【0006】
フレキシブルタイプの銅張積層板を製造する場合のロールラミネート、キャスティング法等のプレス加工とは異なる方法を用いた場合でも、銅箔に存在したシワは銅張積層板の状態になった以降もその表面に凹凸として残り、同様の問題を起こす。
【0007】
この問題を解決するため様々な提案がなされている。例えばキャリアシートを用いたキャリア付銅箔が提案されている(例えば、特許文献1)。キャリアシート上に金属層および炭素層を形成し、この上に銅めっきによって極薄の銅箔を形成する方法である。キャリアシートを用いることで銅箔のハンドリングの問題を解決し、3〜5μmの薄い銅箔を実現している。この方法では300℃以上の高温加熱後でもキャリアシートを剥離することを可能としている。
【0008】
しかしながら、近年の回路システムにおける高速動作を実現するために、高周波信号を伝送可能な配線基板が要求されている。一般に、配線基板の導体層に高周波信号を伝送させる場合は、導体表面の近傍に電流が集中する表皮効果が生じ、周波数が高くなるほど表皮効果の影響によって導体損失が増加していく。そして導体層の表面が粗い場合は表皮効果により電流が導体表面の凹凸部分を集中的に流れることになるため、導体損失の増加が顕著となる。したがって高周波信号を伝送可能な配線基板を作製するためには表面粗さRaが0.10μm以下の平滑な銅箔である必要がある。 特許文献1のようなキャリア付銅箔の場合は銅箔の表面粗さRaは一般的に0.20μm以上のものが多く、めっき液の組成を変更してレベリング性を向上しても表面粗さRaが0.10μm以下の銅箔を作製することは難しい。
【0009】
また、キャリアとして銅箔を用いたキャリア箔付銅箔が提案されている(例えば、特許文献2)。キャリアである銅箔上に炭素層および金属層を形成し、物理蒸着法によって銅箔を形成する方法である。金属層にチタン層を用いることで常態では剥離しないが300℃以上の高温加熱後ではキャリア箔を剥離することを可能としている。
【0010】
特許文献2では物理蒸着法によってキャリア箔上に銅箔を形成している。またキャリアの銅箔の表面粗さRaは一般的に0.20μm以上のものが多く、蒸着法によって形成された銅箔は基材の表面粗さの影響を受けるため得られた銅箔の表面粗さもRaが0.20μmとなり、表面粗さRa0.10μm以下の銅箔を作製することは難しい。また工程中に基材と銅箔が剥離しないように、離型性を有する炭素層と銅層の間に金属層を設けているが、剥離するためには300℃以上の高温加熱を有する。
【0011】
これらの問題について炭素層を剥離層として設けた離型フィルムに物理蒸着法によって銅層を設けた離型フィルム付銅箔がある(例えば、特許文献3,4)。蒸着法によって形成された銅箔は基材の表面粗さの影響を受けるため表面粗さRaが0.10μm以下の平滑なフィルム上に銅層を形成することで表面粗さRa0.10μm以下の平滑な銅箔を実現している。また、銅箔表面の結晶粒径を制御することで平滑性を維持したまま、絶縁層樹脂と高密着を得ることを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−255462号公報
【特許文献2】特開2007−307767号公報
【特許文献3】特開2015−104891号公報
【特許文献4】特願2015−150347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
離型フィルム付銅箔は絶縁層樹脂との貼り合わせまでに確実に保持する必要があるが、現状では、離型フィルムは低剥離であり、わずかなきっかけで剥離してしまい、収率低下の要因となっていた。
【0014】
そこで本発明では絶縁層樹脂の貼り合わせ完了まで確実に銅箔を保持して、貼り合わせ後には剥離することができる銅箔厚みが0.3μm以上3.0μm以下、かつ表面粗さRaが0.10μm以下を維持した離型フィルム付銅箔を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討した結果、剥離層を有しない箇所を設けることによって、工程中に銅層と剥離層の間に空間を生じさせず収縮差による剥離およびシワを生じず幅が広くても銅箔とフィルムが剥離することのない離型フィルム付銅箔を得るに至った。
【0016】
すなわち本発明は、フィルムの少なくとも一方の面に部分的に剥離層を有する離型フィルムの該剥離層側に銅層が設けられた離型フィルム付銅箔であって、銅層とフィルムが直接接する領域がスジ状に存在することを特徴とする離型フィルム付銅箔に関する。
【0017】
好ましい態様は、該スジ状がフィルムの両端部に施され、該剥離層は該フィルムの両端からフィルム全幅に対し一領域の幅で0.5%以上距離が離れた領域で形成されている離型フィルム付銅箔に関する。
【0018】
好ましい態様は、該銅膜と該離型フィルムの引き剥がし強さが、該剥離層が形成されている部位で1.0×10−3N/mm以上1.0×10−2N/mm以下であり、該剥離層が形成されていない部位で5.0×10−2N/mm以上である離型フィルム付銅箔に関する。
【0019】
好ましい態様は、該剥離層は厚みが0.5nm以上5.0nm以下の炭素層であり、該銅膜は厚みが0.3μm以上3.0μm以下であり、表面粗さRaが0.10μm以下である離型フィルム付銅箔に関する。
【0020】
好ましい態様は、該フィルムはポリイミドフィルムまたはポリエステルフィルムであり、該銅膜が厚み方向に対して柱状晶を有する離型フィルム付銅箔に関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、絶縁層樹脂との貼り合わせ完了まで銅箔を保持して、貼り合わせ後には剥離することができる銅箔厚みが0.3μm以上3.0μm以下、かつ表面粗さRaが0.10μm以下を維持した離型フィルム付銅箔を提供することができる。また本発明の離型フィルム付銅箔は厚みが薄くその表面が平滑なものであり、この離型フィルム付銅箔と絶縁層シートとを貼りあわせることで銅膜表面が平滑な銅張積層板が得られ、高周波回路用途に適した回路基板を作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について以下詳細に説明する。
【0023】
本発明の離型フィルム付銅箔は、フィルムの片面に剥離層を有し、この剥離層側に銅膜が形成されている。
【0024】
本発明で用いられるフィルムとは、合成樹脂などの高分子を薄い膜状に成型したものである。
【0025】
本発明における銅膜は、物理蒸着法における真空蒸着法により形成されることが好ましい。
【0026】
本発明における銅膜の厚みは0.3μm以上3.0μm以下であることが好ましい。3.0μmを超えると蒸着時にフィルムにかかる熱量が大きくなるため、フィルムが熱変形してしまうおそれがあり好ましくない。厚みが0.3μm未満であると銅膜中の未蒸着部が増えてしまい、樹脂と貼り合わせるプレス工程等で流動化した絶縁層樹脂が亀裂から浸み出し、銅張積層板の表面が汚染されたり、銅箔の平坦度を損ねたりするおそれがあり好ましくない。ここで未蒸着部とはフィルム上にあるゴミやキズによって蒸着に抜けが生じ蒸着されなかった領域のことである。
【0027】
真空蒸着法には誘導加熱蒸着法、抵抗加熱蒸着法、レーザービーム蒸着法、電子ビーム蒸着法などがある。どの蒸着法を用いても構わないが高い成膜速度を有する観点から電子ビーム蒸着法が好適に用いられる。蒸着中は基材の温度が上昇しないようにフィルムを冷却しながら蒸着を行うことが好ましい。また真空蒸着法で形成した後、絶縁層樹脂との密着向上のために銅表面にスパッタリング法により銅膜を形成しても構わない。スパッタリング法は真空蒸着と同じ装置内で逐次的に膜形成が可能なマグネトロンスパッタリング法が好ましく用いられる。
【0028】
本発明では生産性の観点から真空蒸着法によってロールトゥロールでフィルム上に銅膜を形成されるのが好ましく、その場合、蒸着時にフィルムは熱に曝される。このとき、フィルムは冷却ロールにより冷却されるが、フィルムの耐熱温度が低かったりフィルムの熱収縮が大きかったりするとフィルムの変形に伴って冷却ロールから浮いてしまい、冷却が十分にされず高温になり溶融により穴が空いてしまったりする。よってフィルムは耐熱温度が高く、また、熱収縮が小さい方が望ましい。電子ビーム蒸着法によって銅膜を形成するときのフィルム上の温度は100〜120℃程度であることが想定される。このため耐熱温度が120℃以上あり、120℃での熱収縮率がフィルムの長手方向(MD方向ともいう)、幅方向(TD方向ともいう)のいずれも2.0%以下であることが好ましい。2.0%を超えると蒸着工程で張力変更やロールの冷却によってフィルムの変形を制御することが難しく、上記銅膜の厚みを形成しようとするとフィルムがロールから離れてフィルムの温度が上昇し溶融して穴が空いてしまうおそれがある。より好ましくは熱収縮率が1.8%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。フィルムの熱収縮率は所定の温度で20分間熱処理した前後の寸法変化率により得ことが出来る。
【0029】
本発明の離型フィルム付銅箔は、絶縁層樹脂と貼り合わせる工程において加熱工程を有することがあり、その場合、フィルムの耐熱性が要求される。ここで絶縁層樹脂はエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂を含んでおり貼り合わせ時に樹脂を硬化させる必要があるため、真空熱プレス等による貼り合わせ工程を必要とする。この温度条件は絶縁層樹脂の種類によって様々であるが微細配線を必要とする樹脂では220℃程度の温度条件を必要とする。よってフィルムの融点は220℃以上であることが好ましい。さらに好ましくは230℃以上である。
【0030】
本発明で好適に用いられるフィルムとして、例えばポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、シンジオタクチックポリスチレンフィルム、芳香族ポリアミドフィルム、変性ポリフェニレンエーテルフィルム、フッ素フィルム、液晶ポリマーフィルム等が例示される。このうちポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムがより好ましく用いられる。これらのフィルムは単独で用いても構わないし、複合されたものを用いても構わない。また該貼り合わせ工程の温度条件を満たせば表面に樹脂等をコーティングしたものを用いても構わない。
【0031】
またかかるフィルムの厚みは25μm以上150μm以下であることが好ましい。フィルムの厚みが25μm未満であると蒸着中に生じる応力によってフィルムが変形したり破れたりしてしまう可能性がある。また150μmを超えるとフィルムを張力で制御できなくなり、巻きズレ等を起こしてしまうおそれがあり、また一度の蒸着で投入できる量が減ってしまい生産性を悪くしてしまうことがある。より好ましくは35μm以上125μm以下である。
【0032】
本発明では、フィルムの少なくとも一方の面に剥離層を有しており、フィルムと剥離層を含めて離型フィルムとしている。絶縁層樹脂と離型フィルム付銅箔の銅箔面を貼り合わせた後、離型フィルムを銅箔から剥離できればよく、剥離する際、後工程で悪影響を及ぼさない限り、剥離層はフィルムと銅箔のどちらの表面に残っていても構わない。ただし、銅箔表面に残った剥離層が後工程で悪影響を及ぼす場合は、銅箔表面には残らないように剥離できることが好ましい。
【0033】
本発明における剥離層はメラミン樹脂、セルロース樹脂、炭素層等が好適に用いられる。なかでも炭素層が好ましく用いられる。メラミン樹脂やセルロース樹脂はフィルム上に塗工することによって形成されるのに対し、炭素層はスパッタリング法やCVD法で形成できるため1つの装置内で銅膜の形成と同時に行うことが出来る。このため、炭素層が好ましく用いられる。
【0034】
本発明において例えば電子ビーム法を用いて蒸着を行うと、フィルムや剥離層は電子線の影響を受ける。電子線によって分子鎖が切断したり、また切断した分子同士が架橋したりすることが想定される。このためフィルム自体が劣化することや、フィルムと剥離層が化学的に結合してしまい剥離できなくなってしまうことが生じる。このことからも電子ビーム蒸着法を用いる場合は炭素層が好適に用いられる。
【0035】
剥離層の形成方法は蒸着による方法や有機溶媒中から炭素膜を電気的に析出させる方法もある。蒸着による方法では、アークイオンプレーティング法、マグネトロンスパッタリング法、高周波プラズマCVD法、パルス方式直流プラズマCVD法、イオン化蒸着法プラズマイオン注入成膜法などが例示される。比較的簡易に装置化できるマグネトロンスパッタリング法が好適に用いられる。マグネトロンスパッタリング法ではアルゴンガスや窒素ガスが好ましく用いられる。
【0036】
かかる炭素層の厚みは0.5nm以上5.0nm以下であることが好ましい。0.5nm未満であると密着強度が強くなり剥離できない。また、5.0nmを超えると炭素層と銅膜の剥離力が弱くなってしまい、蒸着搬送中に剥離を起こしてしまうおそれがある。より好ましくは1.0nm以上4.0nm以下である。
【0037】
かかる炭素層の厚みは直接測定することが困難であるが透過率から後述するランバート・ベールの法則
【0038】
【数1】
【0039】
を用いて算出することが出来る。ここでIは薄膜通過前の光量、Iは薄膜通過後の光量、αは吸光係数、Zは膜厚、kは消衰係数、λは波長である。
【0040】
本発明における剥離層にメラミン樹脂やセルロース樹脂を用いた場合、剥離層の厚みは特に限定されないが、該樹脂を溶媒で希釈してフィルム表面に塗工し溶媒を乾燥させて該剥離層を形成する。このため0.1μm以上2.0μm以下とすることが好ましい。0.1μm未満は膜厚を調整することが困難であり、2.0μmを超えると溶媒を希釈する量が増えるため乾燥に時間を要してしまう。より好ましくは0.2μm以上1.0μm以下である。
【0041】
本発明における剥離層はフィルムの全面に作製されるのではなく、フィルム面の一部分に剥離層を設けず、フィルムと銅が直接接する領域がスジ状に存在することが望ましい。フィルム上に直接銅箔が形成される領域は剥離層を有する部分よりもフィルムと銅箔の密着力が格段に強いため、銅箔がフィルムにより強く保持される。ゆえにフィルムと銅箔が直接形成される領域があることで、製造工程中にフィルムと銅箔の熱膨張あるいは熱収縮差による内部応力が生じたとしても、銅膜とフィルムが位置ズレを起こさず、銅箔とフィルムの間に空間を生じさせることがないため、製造工程中で剥離してしまう不具合なく離型フィルム付銅箔を得ることができる。
【0042】
フィルムと銅が直接接する領域がスジ状に存在するとは例えば、フィルム両端部に存在することが挙げられる。銅箔と離型フィルムが貼り合わせられた端部は、製造工程中のフィルムと銅箔の熱膨張あるいは熱収縮差による内部応力や外部からの力が集中しやすく、銅箔とフィルムの間に空間を発生させやすい。フィルム両端部にフィルム上に直接銅膜が形成される領域が存在し、銅箔が安定に保持することで、製造後も剥離しない離型フィルム付銅箔を得ることができる。
【0043】
また、フィルムと銅が直接接する領域がスジ状に存在する箇所はロール状に巻かれた離型フィルム付銅箔の巻きだした両端部、あるいは両端部および中央部であっても構わない。この中央部は1カ所または数カ所存在しても構わない。幅の広いフィルムで離型フィルム付銅箔を作製する場合、スリットする領域の中央部にあらかじめフィルムと銅が直接接する領域を設けることにより、スリット後のフィルムの両端にフィルムと銅が直接接する領域が存在する離型フィルム付銅箔を得ることが出来る。
【0044】
また、剥離層はフィルムの両端からフィルム全幅に対し一領域の幅で0.5%以上距離が離れた領域で形成されていることが好ましい。フィルムと銅膜が直接接する領域がフィルム全幅に対し距離が0.5%未満であるとフィルムと銅膜の収縮差により位置ズレを防止できない可能性がある。より好ましくは距離が1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上である。またフィルムと銅箔が直接接する領域が大きいことに特に問題はないが、得られる離型フィルム銅箔の幅が小さくなってしまうため生産性の悪化を招いてしまう。よって5.0%以下が好ましい。
【0045】
本発明の離型フィルム付銅箔の銅膜と離型フィルムを引き剥がした時の強さは剥離層が形成されている部分では1.0×10−3N/mm以上1.0×10−2N/mm以下であることが好ましい。1.0×10−3N/mm未満であると銅箔の重みによって自然に剥離してしまうおそれがある。また1.0×10−2N/mmより大きいと、剥離が困難となり無理に引き剥がそうとして剥離時にシワ等が生じてしまうおそれがある。より好ましくは1.0×10−3N/mm以上8.0×10−3N/mm以下、さらに好ましくは2.0×10−3N/mm以上6.0×10−3N/mm以下である。
【0046】
フィルムと銅膜が直接接する領域の引き剥がし強さは5.0×10−2N/mm以上であることが好ましい。5.0×10−2N/mm未満であるとフィルムと銅膜の収縮差により位置ズレを防止できない可能性がある。引き剥がし強さの上限については特になく、強いほど位置ズレ防止には有効である。
【0047】
本発明の離型フィルム付銅箔の銅層は物理蒸着法によって好ましく形成される。物理蒸着法で金属を形成する場合、基板の温度が金属の融点より低いと厚み方向に対して柱状晶になることが知られている。本発明では離型フィルム上に銅蒸着を行い、フィルムの溶融を抑制するためフィルムを冷却しながら蒸着を行いことが好ましい。このためフィルムの温度は金属の融点より低くなるため、厚み方向に対して柱状晶を有していることが好ましい。柱状晶を有していると厚み方向のエッチング性がよく、直線性のよい配線が得られる。
【0048】
本発明の離型フィルム付銅箔は、剥離層と接していない面の銅膜の表面粗さRaが0.01μm以上0.10μm以下であることが好ましい。高周波化に伴い、表皮効果と呼ばれる現象で電気信号は導体である銅箔の表面に集中する。信号の周波数が60GHzなら表面厚み0.27μm、100GHzなら表面厚み0.21μmに信号が集中することとなる。このため信号を減衰させないためには表面粗さRaが0.10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05μm以下、さらに好ましくは0,03μm以下である。銅膜の表面粗さは例えばレーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-8500)を用いて表面観察を行いJIS B0601-1994に準拠して行うことで得ることができる。
【0049】
また本発明の離型フィルム付銅箔の銅膜はフィルムの表面粗さに依存する。かかる理由からフィルムについても少なくとも剥離層と接する面の表面粗さRaが0.10μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.05μm以下、さらに好ましくは0,03μm以下である。
【0050】
本発明で得られる銅箔は真空熱プレスや真空ラミネートなどの220℃までの熱処理後も剥離可能であり、絶縁層シートと貼りあわせることで銅膜表面が平滑な銅張積層板が得られる。この銅張積層板はエッチングすることで配線上に欠点が少なく良好な回路パターンのプリント配線板を得ることが出来る。またこの銅張積層板は高周波用途にも好適に用いることができる。
【0051】
また本発明で得られる銅箔は回路用途が主であるがこれに限らず、例えば、電磁波などのシールド用途、タッチパネルなどの転写箔の用途などに用いることができる。
【0052】
なお、本発明は、以上に説明した各構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0054】
(表面粗さの測定)
表面粗さRaはJIS B 0601-1994に定義される算術平均粗さのことであり、粗さ曲線からその平均線の方向に基準粗さ(l)だけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を、X軸と直行する方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)であらわしたときに、次の式によって求められる値である。
【0055】
【数2】
【0056】
フィルムおよび離型フィルム付銅箔をレーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-8500)を用いて表面観察を行いJIS B0601-1994に準拠して行った。解析は株式会社キーエンス製の解析アプリケーションソフトVK-H1Wを用い、カットオフ値は0.25μmとした。該ソフトにおいて、100μmの長さを指定して表面粗さRaを求めた。測定はサンプルのある一方向とその垂直な方向で測定して値の大きな方を表面粗さRaとした。表面粗さRaは0.05μm以下のものを◎、0.05μmより大きく0.10μm以下のものを○、0.10μmより大きいものを×とした。
【0057】
(銅膜の厚み測定)
離型フィルム付銅箔の銅膜の厚みは蛍光X線膜厚計(エスエスアイ・ナノテクノロジー製、SFT9400)にて測定した。
【0058】
(炭素層の厚み)
フィルムに成膜した炭素層の透過率を透過率計で測定し、得られた値からランバート・ベールの法則
【0059】
【数3】
【0060】
から膜厚を算出した。ここでIは薄膜通過前の光量、Iは薄膜通過後の光量、αは吸光係数、Zは膜厚、kは消衰係数、λは波長である。I/Iを透過率として波長632.8nmのときの消衰係数0.047の値を採用し、炭素層の膜厚とした。
【0061】
(離型フィルム付銅箔の剥離力測定)
離型フィルム付銅箔を150mm×10mmの大きさにカットした。カットしたサンプルの銅膜面を両面テープ(ナイスタック強力タイプ)でアクリル板に固定した。剥離層を介してフィルムを銅膜から一部剥離してテンシロンに固定し、銅膜を180°ピールで剥離して得られた値を1cm当りの剥離力に換算して剥離力とした。ここで剥離層を有していない箇所の剥離力については幅方向で剥離層を有した箇所から測定を行い剥離層が無くなり剥離力が上昇した時の値を読み取り、剥離力値とした。
【0062】
(真空プレス後の剥離試験)
離型フィルム付銅箔を340mm×340mmの大きさにカットして、アドフレマNC0204(ナミックス(株)製)との貼り合わせを行った。貼り合わせは110℃、30min、0.5MPaの後、180℃で105min、3.0MPaの条件で真空プレスを行った。真空条件は16torrとした。貼り合わせ後にフィルムがスムーズに剥離可能であったものを◎とし、剥離可能であったが、剥離中に一部剥離が困難であったものを○とし、剥離できなかったものは×とした。
【0063】
(実施例1)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0064】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1080mmの幅で形成されるようにした(両端部から10mmずつは炭素層が形成されない)。またスパッタガン中央部に100mmの防着版を設置し、中央部100mmも炭素層が形成されないようにした。
炭素層の透過率は99.8%であり換算式から算出した炭素層膜厚は2.5nmであった。
【0065】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは2.06μm、表面粗さRaは0.03μmで◎であった。
【0066】
離型フィルム付銅箔は蒸着中において剥離することなく作製することができた。またこの離型フィルムをスリット半裁したところ、剥離することなくロール状に巻きあげることが出来た。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.002N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
【0067】
(実施例2)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0068】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1080mmの幅で形成されるようにした(両端部から10mmずつは炭素層が形成されない)。スパッタガン中央部には防着版を設置しなかった。
炭素層の透過率は99.8%であり換算式から算出した炭素層膜厚は2.5nmであった。
【0069】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは2.04μm、表面粗さRaは0.03μmで◎であった。
【0070】
離型フィルム付銅箔は蒸着中において剥離することなく作製することができた。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.002N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
【0071】
(実施例3)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0072】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて2kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1094mmの幅で形成されるようにした(両端部から3mmずつは炭素層が形成されない)。スパッタガン中央部には防着版を設置しなかった。
炭素層の透過率は99.9%であり換算式から算出した炭素層膜厚は1.0nmであった。
【0073】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは2.04μm、表面粗さRaは0.02μmで◎であった。
【0074】
離型フィルム付銅箔は銅膜剥がれが生じている箇所が一部発生したが大部分は剥離することなく作製することが出来た。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.005N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
【0075】
(実施例4)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0076】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて1.2kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1080mmの幅で形成されるようにした(両端部から10mmずつは炭素層が形成されない)。またスパッタガン中央部に100mmの防着版を設置し、中央部100mmも炭素層が形成されないようにした。
炭素層の透過率は99.94%であり換算式から算出した炭素層膜厚は0.6nmであった。
【0077】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは2.04μm、表面粗さRaは0.04μmで◎であった。
【0078】
離型フィルム付銅箔は蒸着中において剥離することなく作製することができた。またこの離型フィルムをスリット半裁したところ、剥離することなくロール状に巻きあげることが出来た。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.014N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。剥離力が多少強く、引き剥がし時にシワが発生した。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
(実施例5)
厚さ50μm、幅1048mmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商標名“カプトン”タイプ:200EN)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0079】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて12.1kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1030mmの幅で形成されるようにした(両端部から9mmずつは炭素層が形成されない)。スパッタガン中央部には防着版を設置しなかった。
炭素層の透過率は99.4%であり換算式から算出した炭素層膜厚は6.2nmであった。
【0080】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは2.00μm、表面粗さRaは0.05μmで◎であった。
【0081】
離型フィルム付銅箔は銅膜剥がれが生じている箇所が一部発生したが大部分は剥離することなく作製することが出来た。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.0008N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
【0082】
(実施例6)
厚さ75μm、幅1100mmのポリイミドフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:S10)に、グラビアコート法でメラミン樹脂を0.4μmの厚さにコーティングし、剥離層をもつ離型フィルムを作製した。コート幅は1080mmとし、両端部から9mmずつは剥離層が形成されないようにした。
【0083】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは2.03μm、表面粗さRaは0.02μmで◎であった。
【0084】
離型フィルム付銅箔は蒸着中において剥離することなく作製することができた。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.02N/mm、端部および中央部の剥離層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。剥離力が多少強く、引き剥がし時にシワが発生した。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
【0085】
(実施例7)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0086】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1080mmの幅で形成されるようにした(両端部から10mmずつは炭素層が形成されない)。スパッタガン中央部には防着版を設置しなかった。
炭素層の透過率は99.8%であり換算式から算出した炭素層膜厚は2.5nmであった。
【0087】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度4.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで4.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは4.06μm、表面粗さRaは0.03μmで◎であった。
【0088】
離型フィルム付銅箔は銅膜剥がれが生じている箇所が一部発生したが大部分は剥離することなく作製することが出来た。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.001N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
【0089】
(実施例8)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0090】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて2kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1080mmの幅で形成されるようにした(両端部から10mmずつは炭素層が形成されない)。スパッタガン中央部には防着版を設置しなかった。
炭素層の透過率は99.8%であり換算式から算出した炭素層膜厚は2.5nmであった。
【0091】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度10.0m/minで0.2μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは0.21μm、表面粗さRaは0.03μmで◎であった。
【0092】
離型フィルム付銅箔は銅膜剥がれが生じている箇所が一部発生したが大部分は剥離することなく作製することが出来た。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.029N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、一部離型フィルム剥離が困難となり、剥離困難な部分に銅面に樹脂の浸み出しが生じており、○であった。
【0093】
(実施例9)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0094】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1080mmの幅で形成されるようにした(両端部から10mmずつは形成されない)。炭素層の透過率は99.8%であり換算式から算出した炭素層膜厚は2.5nmであった。
【0095】
この離型フィルムの離型面にマグネトロンスパッタリング法で銅膜を形成した。銅膜形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて10kwを採用した。スパッタリング法で0.08μmの銅の厚みを製膜した。その後、この銅表面に銅めっきによって2.0μm厚みの銅膜を形成した。この銅膜の厚みは平均2.12μmであったが測定箇所による厚みばらつきは大きかった。表面粗さRaは0.09μmで○であった。
【0096】
離型フィルム付銅箔は銅膜剥がれが生じている箇所が一部発生したが大部分は剥離することなく作製することが出来た。この離型フィルムの中央部の引き剥がし強さは0.005N/mm、端部の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。剥離力が多少強く、引き剥がし時にシワが発生した。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有しておらず粒上であった。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
【0097】
(実施例10)
厚さ75μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:X10S)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0098】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1080mmの幅で形成されるようにした(両端部から10mmずつは炭素層が形成されない)。またスパッタガン中央部に100mmの防着版を設置し、中央部100mmも炭素層が形成されないようにした。
炭素層の透過率は99.8%であり換算式から算出した炭素層膜厚は2.5nmであった。
【0099】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは2.01μm、表面粗さRaは0.13μmで×であった。
【0100】
離型フィルム付銅箔は蒸着中において剥離することなく作製することができた。またこの離型フィルムをスリット半裁したところ、剥離することなくロール状に巻きあげることが出来た。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.002N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、良好に剥離することが出来、◎であった。
【0101】
(比較例1)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0102】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1100mmの幅で形成されるようにした(両端部の形成されない箇所は無し)。
炭素層の透過率は99.91%であり換算式から算出した炭素層膜厚は2.5nmであった。
【0103】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製しようとしたが工程中に銅膜剥がれが生じて離型フィルム付銅箔を作製できなかった。
(比較例2)
厚さ100μm、幅1100mmの2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商標名“ルミラー”タイプ:U483)に、マグネトロンスパッタリング法で炭素層を形成して離型フィルムを作製した。
【0104】
炭素層形成のスパッタリング条件としては、70mm×550mmサイズのターゲットを用い、真空到達度は1×10−2Pa以下、スパッタリング出力はDC電源を用いて5kwを採用した。また、スパッタ膜は防着板を用いて1100mmの幅で形成されるようにした。
炭素層の透過率は99.8%であり換算式から算出した炭素層膜厚は2.5nmであった。
【0105】
この離型フィルムの炭素層形成面に電子ビーム蒸着法によって銅を成膜速度2.0μm・m/min、ライン速度1.0m/minで2.0μmの厚さに真空蒸着して離型フィルム付銅箔を作製した。この銅膜の厚みは2.06μm、表面粗さRaは0.03μmで◎であった。
【0106】
離型フィルム付銅箔は蒸着中において剥離が生じたが枚葉サンプルは採取することが出来た。枚葉サンプルは銅膜と離型フィルムが剥がれている箇所が生じていた。この離型フィルムの剥離部の引き剥がし強さは0.002N/mm、端部および中央部の炭素層が形成されていない箇所の引き剥がし強さは0.2N/mm以上あった。また銅箔の断面をTEM観察したところ柱状晶を有していた。この離型フィルム付銅箔と樹脂の貼り合わせを行い、その後離型フィルムを剥離したところ、銅箔に亀裂が生じており樹脂が浸みだして剥離することが出来ず、×であった。