特許第6671071号(P6671071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671071
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】旋削加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 29/24 20060101AFI20200316BHJP
   B23Q 1/56 20060101ALI20200316BHJP
   B23B 3/16 20060101ALN20200316BHJP
【FI】
   B23B29/24 A
   B23Q1/56 A
   !B23B3/16 A
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-63405(P2016-63405)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-77622(P2017-77622A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2019年1月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-206021(P2015-206021)
(32)【優先日】2015年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 博覧会名:メカトロテックジャパン2015 開催日:2015年10月21日〜2015年10月24日 発行者名:高松機械工業株式会社 刊行物名:T−news 発行年月日:2016年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591014835
【氏名又は名称】高松機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】石野 嘉章
【審査官】 山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−014291(JP,U)
【文献】 特開平06−226510(JP,A)
【文献】 特開2004−001139(JP,A)
【文献】 特開2002−205202(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0221525(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 25/06,29/00,29/04,29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸を回転自在に支持するための主軸部と、被加工物を着脱自在に保持して前記主軸と一体的に回動するチャック手段と、切削工具を取り付けるための工具取付部を有するタレットと、前記タレットの前記工具取付部に前記切削工具を取り付けるための工具取付手段と、を備えた切削加工装置において、
前記工具取付手段は、前記タレットの前記工具取付部に取り付けられた取付本体と、前記取付本体に取り付けられた工具取付部材と、前記取付本体に対して前記工具取付部材を相対的に回動させるための角度位置調整手段とを備え、前記工具取付部材の工具保持部に前記切削工具が取り付けられており、
前記工具取付部材及び前記取付本体のいずれか一方には支持軸部が設けられ、それらの他方には取付凹部が設けられ、前記支持軸部を前記取付凹部に挿入することによって、前記工具取付部材が前記取付本体に所定角度範囲にわたって回動自在に取り付けられており、
前記角度位置調整手段は、前記取付本体に回動自在に装着された第1及び第2偏芯ピンを備え、前記第1偏芯ピンが所定方向に回動されてその第1偏芯作用部が前記工具取付部材の一部に作用することにより、前記工具取付部材は前記支持軸部を中心として片側に回動され、また前記第2偏芯ピンが前記所定方向と反対方向に回動されてその第2偏芯作用部が前記工具取付部材の他部に作用することにより、前記工具取付部材は前記支持軸部を中心として他側に回動され、これによって、前記取付本体に対する前記工具取付部材の相対的角度位置が調整されることを特徴とする切削加工装置。
【請求項2】
前記工具取付部材には、前記第1及び第2偏芯ピンに対応して第1及び第2受孔が設けられ、前記第1偏芯ピンの前記第1偏芯作用部が前記工具取付部材の前記第1受孔内に位置しているとともに、前記第2偏芯ピンの前記第2偏芯作用部が前記工具取付部材の前記第2受孔内に位置しており、
前記第1偏芯ピンを前記所定方向に回動して前記第1偏芯作用部が前記工具取付部材の前記第1受孔の外側の内側面に作用することによって、前記工具取付部材が前記支持軸部を中心として片側に回動されて前記工具取付部材の片側の角度が位置決めされ、前記第2偏芯ピンを前記所定方向と反対方向に回動して前記第2偏芯作用部が前記工具取付部材の前記第2受孔の外側の内側面に作用することによって、前記工具取付部材が前記支持軸部を中心として他側に回動されて前記工具取付部材の他側の角度が位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の切削加工装置。
【請求項3】
主軸を回転自在に支持するための主軸部と、被加工物を着脱自在に保持して前記主軸と一体的に回動するチャック手段と、切削工具を取り付けるための工具取付部を有するタレットと、前記タレットの前記工具取付部に前記切削工具を取り付けるための工具取付手段と、を備えた切削加工装置において、
前記工具取付手段は、前記タレットの前記工具取付部に取り付けられた取付本体と、前記取付本体に所定角度範囲にわたって回動自在に取り付けられた工具取付部材と、前記取付本体に対して前記工具取付部材を相対的に回動させるための角度位置調整手段とを備え、前記工具取付部材の工具保持部に前記切削工具が取り付けられており、
前記角度位置調整手段は、前記工具取付部材に回動自在に装着された第1及び第2偏芯ピンを備え、前記第1偏芯ピンは、所定方向に回動されてその第1偏芯作用部が前記タレットの前記工具取付部の一部に作用するように構成されるとともに、前記第2偏芯ピンは、前記所定方向と反対方向に回動されてその第2偏芯作用部が前記タレットの前記工具取付部の他部に作用するように構成され、これによって、前記取付本体に対する前記工具取付部材の相対的角度位置が調整されることを特徴とする切削加工装置。
【請求項4】
前記タレットの前記工具取付部には、第1及び第2取付部が所定の間隔をおいて設けられ、前記工具取付手段の前記取付本体は、前記第1及び第2取付部にわたって取り付けられ、前記第1偏芯ピンの前記第1偏芯作用部は、前記第1取付部の内側に配置され、前記第2偏芯ピンの前記第2偏芯作用部は、前記第2取付部の内側に配置されており、
前記第1偏芯ピンを前記所定方向に回動して前記第1偏芯作用部が前記第1取付部の内側面に作用し、これによって、前記第1偏芯ピンの作用により前記工具取付部材の片側の角度が位置決めされ、前記第2偏芯ピンを前記所定方向と反対方向に回動して前記第2偏芯作用部が前記第2取付部の内側面に作用し、これによって、前記第2偏芯ピンの作用により前記工具取付部材の他側の角度が位置決めされることを特徴とする請求項3に記載の切削加工装置。
【請求項5】
ベッド本体に第1案内支持機構を介して往復テーブルが水平なZ軸方向に移動自在に支持され、前記往復テーブルに第2案内支持機構を介して下支持テーブルが水平な前後方向に移動自在に支持され、前記下支持テーブルに第3案内支持機構を介して上支持テーブルが前に向けて下方に傾斜したX軸方向に移動自在に支持され、前記上支持テーブルにタレット型刃物台が取り付けられ、前記タレットは前記タレット型刃物台に回転自在に支持され、前記上支持テーブルは前記第2案内支持機構及び第3案内支持機構による移動の組合せにより前記X軸に対して垂直なY軸方向に移動されることを特徴とする請求項1又は3に記載の切削加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を切削加工するための切削加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、NC旋盤などの切削加工装置においては、スカイビング加工用の切削工具を用いて被加工物にスカイビング加工を施すことができるものが提案されている。このような切削加工装置では、切削工具を取り付けるための工具取付手段に改良が施され、スカイビング加工用の切削工具は、工具取付手段を介して例えばタレットの工具取付部に取外し可能に取り付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この工具取付手段は、タレットの工具取付部に取り付けられる工具ホルダと、工具ホルダに取り付けられた切削工具と、工具取付部に対する工具ホルダの相対的角度を調整するための角度調整手段とを備えている。更に説明すると、工具取付部の取付面には取付凹部が設けられ、また工具ホルダには取付突部が設けられ、この取付突部が取付凹部に挿入されることによって、工具ホルダが工具取付面に回動可能に取り付けられる。また、角度調整手段は偏芯ピンを備え、この偏芯ピンが取付面に回動自在に取り付けられ、偏芯ピンの偏芯作用部が工具ホルダに設けられた長孔に回動自在に且つ移動自在に受け入れられる。
【0004】
このように構成されているので、偏芯ピンを所定方向(又は所定方向と反対方向)に回動させると、その偏芯作用部が長孔の片側側面(又は他側側面)に作用し、これによって、工具ホルダが取付突部を中心として時計方向(又は反時計方向)に回動され、かくして、タレットの工具取付部に対する相対的角度位置、換言するとチャック手段に保持された被加工物に対する切削工具の加工位置を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4092019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した工具取付手段を備えた切削加工装置では、工具ホルダの角度位置を調整するための偏芯ピンが一つであるために、工具ホルダを所望角度位置に保持固定することが難しく、大きな加工負荷が生じたときに工具ホルダの角度位置(換言すると、切削工具の加工位置)がずれるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、切削工具を所望の角度位置に確実に保持固定することができる切削加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の切削加工装置は、主軸を回転自在に支持するための主軸部と、被加工物を着脱自在に保持して前記主軸と一体的に回動するチャック手段と、切削工具を取り付けるための工具取付部を有するタレットと、前記タレットの前記工具取付部に前記切削工具を取り付けるための工具取付手段と、を備えた切削加工装置において、
前記工具取付手段は、前記タレットの前記工具取付部に取り付けられた取付本体と、前記取付本体に取り付けられた工具取付部材と、前記取付本体に対して前記工具取付部材を相対的に回動させるための角度位置調整手段とを備え、前記工具取付部材の工具保持部に前記切削工具が取り付けられており、
前記工具取付部材及び前記取付本体のいずれか一方には支持軸部が設けられ、それらの他方には取付凹部が設けられ、前記支持軸部を前記取付凹部に挿入することによって、前記工具取付部材が前記取付本体に所定角度範囲にわたって回動自在に取り付けられており、
前記角度位置調整手段は、前記取付本体に回動自在に装着された第1及び第2偏芯ピンを備え、前記第1偏芯ピンが所定方向に回動されてその第1偏芯作用部が前記工具取付部材の一部に作用することにより、前記工具取付部材は前記支持軸部を中心として片側に回動され、また前記第2偏芯ピンが前記所定方向と反対方向に回動されてその第2偏芯作用部が前記工具取付部材の他部に作用することにより、前記工具取付部材は前記支持軸部を中心として他側に回動され、これによって、前記取付本体に対する前記工具取付部材の相対的角度位置が調整されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の切削加工装置では、前記工具取付部材には、前記第1及び第2偏芯ピンに対応して第1及び第2受孔が設けられ、前記第1偏芯ピンの前記第1偏芯作用部が前記工具取付部材の前記第1受孔内に位置しているとともに、前記第2偏芯ピンの前記第2偏芯作用部が前記工具取付部材の前記第2受孔内に位置しており、
前記第1偏芯ピンを前記所定方向に回動して前記第1偏芯作用部が前記工具取付部材の前記第1受孔の外側の内側面に作用することによって、前記工具取付部材が前記支持軸部を中心として片側に回動されて前記工具取付部材の片側の角度が位置決めされ、前記第2偏芯ピンを前記所定方向と反対方向に回動して前記第2偏芯作用部が前記工具取付部材の前記第2受孔の外側の内側面に作用することによって、前記工具取付部材が前記支持軸部を中心として他側に回動されて前記工具取付部材の他側の角度が位置決めされることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の切削加工装置は、主軸を回転自在に支持するための主軸部と、被加工物を着脱自在に保持して前記主軸と一体的に回動するチャック手段と、切削工具を取り付けるための工具取付部を有するタレットと、前記タレットの前記工具取付部に前記切削工具を取り付けるための工具取付手段と、を備えた切削加工装置において、
前記工具取付手段は、前記タレットの前記工具取付部に取り付けられた取付本体と、前記取付本体に所定角度範囲にわたって回動自在に取り付けられた工具取付部材と、前記取付本体に対して前記工具取付部材を相対的に回動させるための角度位置調整手段とを備え、前記工具取付部材の工具保持部に前記切削工具が取り付けられており、
前記角度位置調整手段は、前記工具取付部材に回動自在に装着された第1及び第2偏芯ピンを備え、前記第1偏芯ピンは、所定方向に回動されてその第1偏芯作用部が前記タレットの前記工具取付部の一部に作用するように構成されるとともに、前記第2偏芯ピンは、前記所定方向と反対方向に回動されてその第2偏芯作用部が前記タレットの前記工具取付部の他部に作用するように構成され、これによって、前記取付本体に対する前記工具取付部材の相対的角度位置が調整されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の切削加工装置では、前記タレットの前記工具取付部には、第1及び第2取付部が所定の間隔をおいて設けられ、前記工具取付手段の前記取付本体は、前記第1及び第2取付部にわたって取り付けられ、前記第1偏芯ピンの前記第1偏芯作用部は、前記第1取付部の内側に配置され、前記第2偏芯ピンの前記第2偏芯作用部は、前記第2取付部の内側に配置されており、
前記第1偏芯ピンを前記所定方向に回動して前記第1偏芯作用部が前記第1取付部の内側面に作用し、これによって、前記第1偏芯ピンの作用により前記工具取付部材の片側の角度が位置決めされ、前記第2偏芯ピンを前記所定方向と反対方向に回動して前記第2偏芯作用部が前記第2取付部の内側面に作用し、これによって、前記第2偏芯ピンの作用により前記工具取付部材の他側の角度が位置決めされることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項5に記載の切削加工装置では、ベッド本体に第1案内支持機構を介して往復テーブルが水平なZ軸方向に移動自在に支持され、前記往復テーブルに第2案内支持機構を介して下支持テーブルが水平な前後方向に移動自在に支持され、前記下支持テーブルに第3案内支持機構を介して上支持テーブルが前に向けて下方に傾斜したX軸方向に移動自在に支持され、前記上支持テーブルにタレット型刃物台が取り付けられ、前記タレットは前記タレット型刃物台に回転自在に支持され、前記上支持テーブルは前記第2案内支持機構及び第3案内支持機構による移動の組合せにより前記X軸に対して垂直なY軸方向に移動されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の切削加工装置によれば、切削工具を取り付けるための工具取付手段は、タレットの工具取付部に取り付けられた取付本体と、この取付本体に取り付けられた工具取付部材と、工具取付部材の角度位置を調整するための角度位置調整手段とを備え、工具取付部材及び取付本体のいずれか一方に設けられた支持軸部をそれらの他方に設けられた取付凹部に挿入することによって、工具取付部材が取付本体に所定角度範囲にわたって回動自在に取り付けられているので、角度位置調整手段によって、取付本体(即ち、タレットの工具取付部)に対する工具取付部材の相対的角度位置(換言すると、支持軸部を旋回中心とする切削工具の加工位置)を調整することができ、これにより、切削工具の加工位置を調整することができ、また取付本体に対する工具取付部材の角度位置を保った状態でタレットの工具取付部への取付け、取外しを行うことができる。更に、角度位置調整手段は、取付本体に回動自在に装着された第1及び第2偏芯ピンを備え、第1偏芯ピンは所定方向に回動されてその第1偏芯作用部が工具取付部材の一部に作用し、これによって、工具取付部材が支持軸部を中心として片側に回動されるように構成され、また第2偏芯ピンは所定方向と反対方向に回動されてその第2偏芯作用部が工具取付部材の他部に作用し、これによって、工具取付部材がこの支持軸部を中心として他側に回動されるように構成されているので、これら第1及び第2偏芯ピンは両側に拡げる方向に工具取付部材に作用して位置決めが行われ、かくして、工具取付部材を所望の角度位置に確実に保持固定することができる。
【0014】
また、本発明の請求項2に記載の切削加工装置によれば、第1偏芯ピンの第1偏芯作用部が工具取付部材の第1受孔内に受け入れられ、第2偏芯ピンの第2偏芯作用部がこの工具取付部材の第2受孔内に受け入れられているので、第1偏芯ピンを所定方向に回動して第1偏芯作用部が第1受孔の外側の内側面に作用することにより、工具取付部材が支持軸部を中心として片側に回動されてその片側の位置決めが行われ、また第2偏芯ピンを所定方向と反対方向に回動して第2偏芯作用部が第2受孔の外側の内側面に作用することにより、工具取付部材が支持軸部を中心として他側に回動されてその他側の位置決めが行われ、かくして、工具取付部材側の第1及び第2偏芯ピンと取付本体側の第1及び第2受孔とを利用して工具取付部材を所望の角度位置に確実に保持固定することができる。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の切削加工装置によれば、上述した工具取付手段と同様の基本的構成を有しているので、角度位置調整手段によって、取付本体(即ち、タレットの工具取付部)に対する工具取付部材の相対的角度位置(換言すると、切削工具の加工位置)を調整することができる。更に、角度位置調整手段は、工具取付部材に回動自在に装着された第1及び第2偏芯ピンを備え、第1偏芯ピンは所定方向に回動されてその第1偏芯作用部がタレットの工具取付部の一部に作用するように構成され、また第2偏芯ピンは所定方向と反対方向に回動されてその第2偏芯作用部がこの工具取付部の他部に作用するように構成されているので、この場合においても第1及び第2偏芯ピンは両側に拡げる方向にタレットの工具取付部に作用して位置決めされ、かくして、工具取付部材を所望の角度位置に確実に保持固定することができる。
【0016】
また、本発明の請求項4に記載の切削加工装置によれば、第1偏芯ピンは、タレットの工具取付部における第1取付部の内側に配置され、また第2偏芯ピンは、この工具取付部における第2取付部の内側に配置されているので、第1偏芯ピンを所定方向に回動して第1偏芯作用部が第1取付部の内側面に作用することにより、工具取付部材の片側の位置決めが行われ、また第2偏芯ピンを所定方向と反対方向に回動させて第2偏芯作用部が第2取付部の内側面に作用することにより、工具取付部材の他側の位置決めが行われ、かくして、工具取付部材側の第1及び第2偏芯ピンとタレット側の第1及び第2取付部とを利用して工具取付部材を所望の角度位置に確実に保持固定することができる。
【0017】
更に、本発明の請求項5に記載の切削加工装置では、ベッド本体に第1案内支持機構を介して往復テーブルが水平なZ軸方向に移動自在に支持され、この往復テーブルに第2案内支持機構を介して下支持テーブルが水平な前後方向に移動自在に支持され、また下支持テーブルに第3案内支持機構を介して上支持テーブルが前に向けて下方に傾斜したX軸方向に移動自在に支持され、このように支持された上支持テーブルにタレット型刃物台が取り付けられているので、工具取付手段の工具取付部を取付本体に対してZ軸方向に延びる旋回軸線を中心として相対的に回動させて角度調整すると、工具取付部に取り付けられた切削工具の切削刃は、このZ軸回りに角度調整されるとともにY軸回りにも角度調整され、これによって、切削工具の切削刃をスカイビング加工に適した状態に角度調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に従う切削加工装置の一例としてのNC旋盤の一実施形態を簡略的に示す正面図。
図2図1のNC旋盤におけるタレットの一部を示す斜視図。
図3図2のタレットの工具取付部に取り付けられた工具取付手段及びその近傍を示す正面図。
図4図3におけるIV−IV線による断面図。
図5】工具取付手段の取付本体に対する工具取付部材の角度位置調整を説明するための説明図。
図6】工具取付手段の変形形態を適用したタレットの一部を示す正面図。
図7図6におけるVII−VII線による断面図。
図8】本発明に従う切削加工装置の一例としてのNC旋盤の他の実施形態を簡略的に示す斜視図。
図9図8のNC旋盤を正面から見た正面図。
図10図8のNC旋盤を左側から見た左側面図。
図11図8のNC旋盤のタレットの一部をZ軸方向から見て示す部分拡大図。
図12図10のタレットの一部をY軸方向から見て示す部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う切削加工装置の一例としてのNC旋盤の一実施形態について説明する。尚、この実施形態では、2軸(2スピンドル)のNC旋盤に適用して説明するが、1軸(1スピンドル)のNC旋盤、通常の旋盤などの他の切削加工装置にも同様に適用することができる。
【0020】
図1において、切削加工装置の一例としての図示のNC旋盤は、工場などの床面に設置される旋盤本体2(ベッド本体を構成する)を備え、この旋盤本体2の一端部(図1において左端部)に第1主軸部4が設けられている。第1主軸部4内には第1主軸(図示せず)が回転自在に支持され、この第1主軸に第1チャック手段6が装着され、この第1チャック手段6に加工すべき第1被加工物(図示せず)が取り付けられ、第1駆動源(図示せず)によって、第1主軸、第1チャック手段6及び第1被加工物が所定方向に回動される。また、旋盤本体2の他端部(図1において右端部)に第2主軸部8が設けられている。第2主軸部8内には第2主軸(図示せず)が回転自在に支持され、この第2主軸に第2チャック手段10が装着され、この第2チャック手段10に加工すべき第2被加工物(図示せず)が取り付けられ、第2駆動源(図示せず)によって、第2主軸、第2チャック手段10及び第2被加工物が所定方向に回動される。
【0021】
第1主軸部4と第2主軸部8との間には往復テーブル12が配置され、この往復テーブル12は、第1案内支持機構14を介してZ軸方向(図1において左右方向)に往復移動自在に旋盤本体2に支持されている。また、この往復テーブル12には刃物テーブル20が装着され、この刃物テーブル20は、第2案内支持機構22を介してX軸方向(Z軸方向に対して垂直な方向であって、図1において紙面に垂直な方向)に往復移動自在に往復テーブル12に支持されている。
【0022】
この実施形態では、刃物テーブル20の片側部(図1において左側部)に刃物取付台24が設けられ、この刃物取付台24の工具取付部に加工工具28、例えば切削工具が取り付けられる。加工工具28は第1主軸部4の第1チャック手段6に対向して位置し、第1チャック手段6に保持された第1被加工物に加工を施す。
【0023】
また、刃物テーブル20の他側部(図1において右側部)にタレット型刃物台30が設けられている。このタレット型刃物台30は、刃物テーブル20に取り付けられたタレット取付部32と、このタレット取付部32に回転軸(図示せず)を介して回転自在に支持されたタレット34を備え、このタレット34の工具取付部36に後述する工具取付手段38を用いて切削工具40(図2参照)、例えばスカイビング加工用の切削工具40が取り付けられる(図2参照)。切削工具40は第2主軸部8の第2チャック手段10に対向して位置し、第2チャック手段10に保持された第2加工物に所要の切削加工を施す。
【0024】
次に、図2図4を参照して、切削工具40を取り付けるための工具取付手段38について説明する。図示の工具取付手段38は、タレット34の工具取付部36に取り付けられる取付本体42と、この取付本体42に取り付けられた工具取付部材44と、この取付本体42に対する工具取付部材44の相対的角度位置を調整するための角度位置調整手段46とを備えている。タレット34の外周部には、周方向に間隔をおいて複数(この形態では、12個)の工具取付部36が設けられている。各工具取付部36は、周方向に所定の間隔をおいて配設された一対の取付部48を有し、一対の取付部48の内側部位が、それらの間の部位50に配置される工具取付手段38の取付部として機能する。
【0025】
例えば、特定部位50Aに関して説明すると、図2において時計方向に見てこの特定部位50Aの上流側に位置する取付部48における外面の内側部が、工具取付手段38の片側を取り付けるための第1取付部52aとして機能し、この特定部位50Aの下流側に位置する取付部48における外面の内側部が、工具取付手段38の他側を取り付けるための第2取付部52bとして機能する。また、図2において時計方向に見てこの特定部位50Aの上流側に位置する取付部48における前端面の内側部位が、工具取付手段38の背面片側が当接する第1当接端面54aとして機能し、この特定部位50Aの下流側に位置する取付部48における前端面の内側部位が、工具取付手段38の背面他側が当接する第2当接端面54bとして機能する。換言すると、各取付部48の外面における図2において時計方向に見て下流側の側部が第1取付部52aとして機能し、その外面における図2において時計方向に見て上流側の側部が第2取付部52bとして機能する。また、各取付部48の前端面における図2において時計方向に見て下流側の側部が第1当接端面54aとして機能し、その前端面における図2において時計方向に見て上流側の側部が第2当接端面54bとして機能する。
【0026】
工具取付手段38の取付本体42は、矩形状の取付本体部62と、この取付本体部62の先端部に設けられた取付支持部64とを有し、この取付支持部64の一端側(図4において上端側)は、取付本体部62から図4において上方に突出し、その他端側(図4において下端側)は、この取付本体部62から図4において下方に突出している。このような取付本体42は、その取付支持部64を隣接する取付部48の当接端面(第1及び第2当接端面54a,54b)に当接させた状態で取付部48の外面に取り付けられる。例えば、取付本体42の取付支持部64の背面片側部を、第1取付部52aの第1当接端面54a(図2において時計方向に見て上流側の取付部48の当接端面)に当接させるとともに、その取付支持部64の背面他側部を、第2取付部52bの第2当接端面54b(図2において時計方向に見て下流側の取付部48の当接端面)に当接させるように位置付け、また取付本体42の取付本体部62の片側部を第1取付部52aの外面(取付面)に載置するとともに、その取付本体部62の他側部を第2取付部52bの外面(取付面)に載置し、このような状態で、固定用ボルト66を用いてこの取付本体部62(即ち、取付本体42)が第1及び第2取付部52a,52bの外面に取り付けられる。
【0027】
また、工具取付部材44は、取付本体42の取付支持部64の前面側に取り付けられる。この実施形態では、工具取付部材44は、略矩形状のブロック状であり、取付支持部64の外形形状に略対応した外形形状を有している。この工具取付部材44の背面略中央部には、背面側に突出する円柱状の支持軸部68が設けられ、また取付本体42の取付支持部64の前面には、工具取付部材44側の支持軸部68に対応して円形状の取付凹部70が設けられ、この支持軸部68を取付凹部70に挿入することによって、工具取付部材44が取付本体42に回動自在に支持され、この支持軸部68の中心軸線が工具取付部材44の旋回中心軸線となる。尚、この構成に代えて、工具取付部材44側に取付凹部70を設け、取付本体42(取付支持部64)側に支持軸部68を設けるようにしてもよい。
【0028】
この工具取付部材44の前面側には、工具保持部として機能する工具取付凹部72が設けられ、この工具取付凹部72に切削工具40(例えば、スカイビング加工用のもの)が取り付けられる。工具取付凹部72の幅は切削工具40の工具本体部74の幅よりも大きく、従って、切削工具40を取り付けた状態にて工具取付凹部72に生じるスペースに、切削工具40を固定するためのスペーサ手段76が介在される。このようなスペーサ手段76としては、ブロック状部材及びシム部材を組み合わせたもの、特開2010−120093号公報に開示されたものなどを用いることができる。
【0029】
この形態では、工具取付部材44の前面側に、工具取付凹部72(即ち、切削工具40の工具本体部74及びスペーサ手段76)を覆うようにカバー部材78が配設され、このカバー部材78は、取付ボルト80により工具取付部材44に取り付けられる。
【0030】
次に、角度位置調整手段46について説明すると、この角度位置調整手段46は、一対の偏芯ピン、即ち第1及び第2偏芯ピン82,84を備えている。第1偏芯ピン82は、取付本体42の取付支持部64の下端部片側(図3及び図5において左側)に配設され、第2偏芯ピン84は、この取付支持部64の下端部他側(図3及び図5において右側)に配設されている。第1及び第2偏芯ピン82,84はこの取付支持部64に回動自在に装着され、それらの取付支持部64から突出する端部に係止リング86(例えば、Eリング)が係止されている。第1及び第2偏芯ピン82,84は、回動中心に対して偏芯した第1及び第2偏芯作用部88,90を備え、このことに対応して、取付支持部64には第1及び第2受孔92,94が設けられ、第1及び第2偏芯作用部88,90は、対応する第1及び第2受孔92,94内に受け入れられている。第1及び第2偏芯作用部88,90は、第1及び第2受孔92,94より幾分小さく、この第1及び第2受孔92,94内で回動且つ所定範囲にわたって移動することが許容される。更に、この第1及び第2偏芯ピン82,84の回動を阻止するための第1及び第2止めねじ96,98が取付支持部64に螺着されている。
【0031】
取付本体42に対する工具取付部材44の相対的回動許容するために、工具取付部材44には貫通孔100が設けられ、工具取付部材44を取り付けるための取付ボルト102は、工具取付部材44の貫通孔100を通して取付本体42(取付支持部64)に取り付けられるが、これら貫通孔100の内径は、取付ボルト102の軸部の外形よりも大きくなっている(図3参照)。
【0032】
このような工具取付手段38を備えたNC旋盤では、次のようにして取付本体42に対する工具取付部材44の角度位置を調整することができる。主として、図4及び図5を参照して、この角度位置を調整するには、第1及び第2止めねじ96,98を緩めるとともに、工具取付部材44を固定していた取付ボルト102を緩める。そして、このように取付ボルト102並びに第1及び第2止めねじ96,98を緩めた状態で、工具取付部材44(それに取り付けられた切削工具40)の角度位置を調整する。例えば、第1偏芯ピン82を所要の通りに回動させ、最終的に所定方向(即ち、図3及び図5において反時計方向)に回動させて工具取付部材44の片側の角度(切削工具40の切削刃が工具取付部材44の支持軸部68を中心として時計方向に回動するのを阻止する角度)の位置決めを行い、その後第2偏芯ピン84を上記所定方向と反対方向(図3及び図5において時計方向)に回動させて工具取付部材44の他側の角度(切削工具40の切削刃が上記支持軸部68を中心として反時計方向に回動するのを阻止する角度)の位置決めを行う。
【0033】
このとき、第1偏芯ピン82を回動させて第1偏芯作用部88が工具取付部材44の第1受孔92の外側の内側面に作用すると、工具取付部材44は、その支持軸部68を中心として時計方向に回動されて所定角度位置に位置決めされ、また第2偏芯ピン84を回動させて第2偏芯作用部90が第2受孔94の外側の内側面に作用すると、工具取付部材44は、その支持軸部68を中心として反時計方向に回動されて所定角度位置に位置決めされ、このようにして取付本体42に対する工具取付部材44の角度位置の調整、換言すると第2チャック手段10に保持された第2被加工物(図示せず)に対する切削工具40の加工位置の調整が行われる。
【0034】
例えば図5において実線で示す角度位置から二点鎖線で示す角度位置に回動させて位置決めするときには、第2偏心ピン84を図5において時計方向に回動させて第2偏心作用部90を工具取付部材44の第2受孔94の外側の内側面に作用させ、その後第1偏心ピン92を図5において反時計方向に回動させて第1偏心作用部88を工具取付部材44の第1受孔92の外側の内側面に作用させるように操作するのが望ましく、これとは反対に、例えば図5において二点鎖線で示す角度位置から実線で示す角度位置に回動させて位置決めするときには、上述とは反対に、第1偏心ピン82を図5において反時計方向に回動させて第1偏心作用部88を工具取付部材44の第1受孔92の外側の内側面に作用させ、その後第2偏心ピン94を図5において時計方向に回動させて第2偏心作用部90を工具取付部材44の第2受孔94の外側の内側面に作用させるように操作するのが望ましく、このように操作することによって、取付本体42に対する工具取付部材44の角度位置を容易に調整することができる。
【0035】
このようにして工具取付部材44の角度位置の調整を行った後に、第1及び第2止めねじ96,98を締め付けて第1及び第2偏芯ピン82,84を固定し、また取付ボルト102を締め付けて工具取付部材44を取付本体42(取付支持部64)に固定し、このようにして工具取付部材44の角度位置の調整を行うことができる。
【0036】
このように一対の第1及び第2偏芯ピン82,84を用いて所定角度位置に位置決めすると、それらの第1及び第2偏芯作用部88,90は両側に拡げる方向に(換言すると、第1偏芯ピン82にあっては、所定方向の回動により第1偏芯作用部88における半径が大きくなる部位が作用するように、また第2偏芯ピン84にあっては、所定方向に対して反対方向の回動により第2偏芯作用部90における半径が大きくなる部位が作用するように)に工具取付部材44に作用し、従って、工具取付部材44を図3において反時計方向に旋回させようとする負荷に対しては第2偏芯ピン84の第2偏芯作用部90が食い込むように作用し、また工具取付部材44を図3において時計方向に旋回させようとする負荷に対しては第1偏芯ピン82の第1偏芯作用部88が食い込むように作用し、これによって、工具取付部材44を所望の角度位置に確実に保持固定することができる。
【0037】
尚、上述した例では、第1偏芯ピン82を最終的に所定方向に回動させて工具取付部材44の片側の角度位置を決め、その後第2偏芯ピン84を所定方向と反対方向に回動させて工具取付部材44の他側の角度位置を決めているが、上述とは反対に、第2偏芯ピン84を最終的に所定方向と反対方向に回動させて工具取付部材44の他側の角度位置を決め、その後第1偏芯ピン82を所定方向に回動させて工具取付部材44の片側の角度位置を決めるようにすることもできるが、工具取付部材44の回動方向に対して上述したように第1及び第2偏心ピン82,84を回動操作するのが望ましい。
【0038】
次に、図6及び図7を参照して、工具取付手段の変形形態について説明する。この変形形態では、第1及び第2偏芯ピンは第1及び第2取付部に関連して配設されている。尚、以下の形態では、上述した実施形態と実質上同一の部材には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0039】
図6及び図7において、この変形形態においても、工具取付手段38Bの角度位置調整手段46Bは一対の偏芯ピン、即ち第1及び第2偏芯ピン82B,84Bを備え、これら第1及び第2偏芯ピン82B,84Bは、タレット34の工具取付部36における隣接する一対の取付部48、即ち、図6において時計方向に見て上流側の第1取付部52aと上記時計方向に見て下流側の第2取付部52bに関連して設けられている。第1偏芯ピン82Bは、第1取付部52aの内側(図6において時計方向に見て第1取付部52aの下流側)に配設され、工具取付部材44Bの下端部に設けられた取付貫通孔(図示せず)に回動自在に支持され、また第2偏芯ピン84Bは、第2取付部52bの内側(図6において時計方向に見て上流側)に配設され、工具取付部材44Bの下端部に設けられた取付貫通孔112に回動自在に支持されている。
【0040】
第1及び第2偏芯ピン82B,84Bの先端側は、かかる取付貫通孔112から背面側(即ち、タレット34の前面側)に突出しており、これらの突出端部に第1及び第2偏芯作用部88B,90Bが設けられている。尚、第1及び第2偏芯ピン82B,84Bの離脱を防止するために離脱防止プレート114が設けられ、この離脱防止プレート114が工具取付部材44Bの下端部背面に取り付けられている。図示していないが、離脱防止プレート114の両端部には係止凹部が設けられ、一方の係止凹部は、第1偏芯ピン82Bの軸部に設けられた係止溝に係止され、他方の係止凹部は、第2偏芯ピン84Bの軸部116に設けられた係止溝118に係止されている。また、第1及び第2偏芯ピン82B,84Bに関連して、それらの回動を止めるための第1及び第2止めねじ96,98が設けられている。この変形形態におけるその他の構成は、上述した実施形態と実質上同一である。
【0041】
この変形形態の工具取付手段38Bにおいては、次のようにして取付本体42に対する工具取付部材44Bの角度位置を調整することができる。工具取付部材44B(即ち、切削工具40)の角度位置を調整するには、上述したと同様に、第1及び第2止めねじ96,98並びに取付ボルト102を緩め、このような状態で、例えば、工具取付部材44Bの取付貫通孔112を通して第1偏芯ピン82Bを所要の通りに回動させ、最終的に所定方向(即ち、図6において反時計方向)に回動させて工具取付部材44Bの片側の角度の位置決めを行い、その後第2偏芯ピン84Bを上記所定方向と反対方向(図6において時計方向)に回動させて工具取付部材44Bの他側の角度の位置決めを行う。
【0042】
このとき、第1偏芯ピン82Bを回動させて第1偏芯作用部88Bがタレット34の工具取付部36における第1取付部52aの内側面に作用すると、工具取付部材44Bは、その支持軸部68を中心として反時計方向に回動されて所定角度位置に位置決めされ、また第2偏芯ピン84Bを回動させて第2偏芯作用部90Bがこの工具取付部36における第2取付部52bの内側面に作用すると、工具取付部材44Bは、その支持軸部68を中心として時計方向に回動されて所定角度位置に位置決めされ、上述したと同様に、取付本体42に対する工具取付部材44Bの角度位置の調整を行うことができる。
【0043】
このように第1及び第2偏芯ピン82B,84Bを用いて所定角度位置に位置決めすると、この変形形態においても、それらの第1及び第2偏芯作用部88B,90Bは、上述したと同様に、両側に拡げる方向に工具取付部36(即ち、第1及び第2取付部52a,52b)に作用し、従って、工具取付部材44Bを図6において反時計方向に旋回させようとする負荷に対しては、第1偏芯ピン82Bの第1偏芯作用部88Bが食い込むように作用し、また工具取付部材44Bを図6において時計方向に旋回させようとする負荷に対しては、第2偏心ピン90Bの第2偏心作用部90Bが食い込むように作用し、従って、上述したと同様に、工具取付部材44を所望の角度位置に確実に保持固定することができる。
【0044】
以上、本発明に従う切削加工装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
【0045】
例えば、上述した実施形態では、被加工物に対して切削工具40がZ軸(図1において左右方向)及びX軸(図1において紙面に垂直な方向)に相対的に移動する2軸制御の切削加工装置に適用しているが、このようなスカイビング加工用の切削工具を用いる場合、切削工具40が上記Z軸及び上記X軸に加えてY軸(図1において上下方向)にも相対的に移動する3軸制御の切削加工装置に適用するのが望ましい。
【0046】
3軸制御の切削加工装置の一例としてのNC旋盤の他の実施形態を示す図8図10において、図示のNC旋盤では、この旋盤本体2C(ベッド本体を構成する)の片側(図8及び図9において左部)に主軸部4Cが設けられている。主軸部4C内には主軸(図示せず)が回転自在に支持され、この主軸にチャック手段6Cが装着され、このチャック手段6Cに加工すべき被加工物(図示せず)が取り付けられ、第1駆動源7C(例えば、駆動モータ)によって、主軸、チャック手段6C及び被加工物が所定方向に回動される。
【0047】
また、旋盤本体2Cの他側(図8及び図9において右部)にタレット型刃物台30Cが配設されている。この形態では、旋盤本体2Cの右部には、第1案内支持機構14Cを介して往復テーブル12Cが水平に延びるZ軸方向(図8において左上から右下の方向、図9において左右方向、図10において紙面に垂直な方向)に移動自在に支持され、この往復テーブル12Cは、第1駆動モータ15Cによって第1案内支持機構14Cに沿ってZ軸方向に往復移動される。この往復テーブル12Cには、第2案内支持機構22Cを介して下支持テーブル20Cが水平な前後方向(図8において左下から右上の方向、図9において紙面に垂直な方向、図10において左右方向)に移動自在に支持され、この下支持テーブル20Cは、第2駆動モータ23Cによって第2案内支持機構22Cに沿って前後方向(後述するY軸に対して傾斜した方向)に往復移動される。また、下支持テーブル20Cには、第3案内支持機構25Cを介して上支持テーブル27Cが移動自在に支持され、この上支持テーブル27Cにタレット型刃物台30Cが取り付けられ、このタレット型刃物台30Cは、第3駆動モータ29Cによって第3案内支持機構25Cに沿って往復移動される。
【0048】
この形態では、第3案内支持機構25Cは、旋盤本体2Cの前面側に向けて下方に傾斜して延び、水平方向に対するその下方への所定角度α(図10参照)は、例えば30度程度である。このように構成することによって、タレット型刃物台30Cは、第3案内支持機構25Cに沿って移動される。従って、このNC旋盤においては、タレット型刃物台30Cが往復動される斜め方向がX軸となり、タレット34に取り付けられた工具取付手段38(これに取り付けられた切削工具40)は、このX軸方向に移動してチャック手段6Cに保持された被加工物に対して近接及び離隔する。尚、この傾斜角度αは、例えば、45度、60度などの適宜の角度とすることができる。
【0049】
旋盤本体2CのX軸が上述したように旋盤本体2Cの前側に向けて斜め下方に傾斜して延びるので、旋盤本体2CのY軸は、図8及び図10に示すように、X軸に対して垂直に(即ち、水平に対して斜め上方に)延びる。従って、タレット型刃物台30C(即ち、タレット34)のY軸方向の移動量は、第2案内支持機構22Cを介しての前後方向の移動と第3案内支持機構25Cを介してのX軸方向の移動とを組み合わせた移動量として制御される。
【0050】
このタレット型刃物台30Cには、上述した同様の構成のタレット34が回転自在に支持され、このタレット34の工具取付部36には、図11及び図12に示すように、上述したと同様の工具取付手段38が取り付けられ、タレット34及びその工具取付部36に取り付けられる工具取付手段38は、上述した形態と実質上同一の構成のもの(図2図5に示す形態のもの、又は図6及び図7に示す形態のもの)でよい。
【0051】
この他の実施形態の切削加工装置では、タレット型刃物台30CがZ軸方向及びX軸方向に加えてY軸方向にも往復移動されるので、スカイビング加工を行うのに好都合に用いることができる。そして、タレット34の工具取付部36に工具取付手段38を所要の通りに取り付けた状態において、取付本体42に対して工具取付部材44を支持軸部68(旋回中心軸線)を中心にZ軸(図11において紙面に垂直な方向)回りに回動させて角度位置調整すると、図11に示すように、工具取付部材44に取り付けた切削工具40の切削刃部41(被加工物を切削加工を施す刃部)は、このZ軸回りの角度が調整されるとともに、このZ軸を中心とする回動によって、図12に示すように、Y軸回りの角度も変化し、その結果、切削工具40の切削刃部41のZ軸回りの角度調整及びY軸回りの角度調整を行うことが可能となり、スカイビング加工に好都合に適用することができる。
【0052】
尚、上述の形態では、タレット型刃物台30Cを支持する第3案内支持機構25Cを旋盤本体2Cの前側に向けて下方に傾斜するように配設するとともに、上支持テーブル27Cを支持する第2案内支持機構22Cを旋盤本体2Cの前後方向に水平となるように配設し、このように配設して、旋盤本体2CのX軸については、旋盤本体2Cの前側に向けて下方に傾斜して延び、そのY軸については、このX軸に対して垂直に旋盤本体2Cの前側に向けて斜め上方に延びるように構成しているが、このような構成に代えて、タレット型刃物台30Cを支持する第3案内支持機構25Cを旋盤本体2Cの上下方向に延びるように配設するとともに、上支持テーブル27Cを支持する第2案内支持機構22Cを旋盤本体2Cの前後方向に水平に延びるように配設するようにしてもよく、この場合、下支持テーブル20Cの移動方向が旋盤本体2CのX軸となり、タレット型刃物台30Cを支持する上支持テーブル27Cの移動方向がそのY軸方向となる。
【符号の説明】
【0053】
2,2C 旋盤本体
30,30C タレット型刃物台
34 タレット
36 工具取付部
38,38B 工具取付手段
40 切削工具
41 切削刃部
42 取付本体
44,44B 工具取付部材
46,46B 角度位置調整手段
48 取付部
68 支持軸部
82,82B,84,84B 偏芯ピン
88,88B,90,90B 偏芯作用部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12