(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属管は、軸方向に延びる前記スリットが形成されている部分における先端側領域および後端側領域が絶縁被覆されることにより、前記2つの領域に挟まれた中間領域のみに高周波通電がなされることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の肺癌治療用電極カテーテル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような肺癌治療用電極カテーテルにおいて、気管支鏡のチャンネル内に挿通させ、その先端電極を末梢の気管支(細気管支)に到達させるためには、カテーテルシャフトおよび先端電極の外径をある程度細くする必要がある。
【0006】
然るに、そのような細径の先端電極を備えた肺癌治療用電極カテーテルによっては太い気管支にできた癌細胞に対して十分な焼灼治療を行うことができず、例えば、主気管支の周囲(全周)にできた癌細胞に対して、先端電極が接触している部位の近傍の癌細胞しか焼灼することができない。
【0007】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、治療部位における気管支の太さに応じて電極の外径を変化させることができ、気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を行うことができる肺癌治療用電極カテーテルを提供することにある。
本発明の第2の目的は、末梢の気管支(細気管支)や肺胞にできた癌細胞を焼灼することができるとともに、主気管支のような太い気管支の周囲(全周)にできた癌細胞に対して、当該気管支の周方向に沿って均一に焼灼することができる肺癌治療用電極カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の肺癌治療用電極カテーテルは、カテーテルシャフトと、
前記カテーテルシャフトの先端に固定され、軸方向に延びるスリットが複数形成された金属管から構成され、軸方向に圧縮されたときに、前記スリットが開いて径方向に拡張し、複数のスパインからなるバスケット状に変形する高周波通電用の電極と、
前記電極の先端に固定された先端チップと、
前記カテーテルシャフトの基端に固定された操作ハンドルと、
前記電極に電気的に接続され、前記カテーテルシャフトの内部に延在する導線と、
前記先端チップに固定された先端部を有し、前記カテーテルシャフトの内部を軸方向に移動可能に延在し、その基端が引張操作可能である操作用ワイヤと
、
前記電極に固定された測温部を有し、前記カテーテルシャフトの内部に延在する温度センサとを備えてなり、
前記温度センサの前記測温部は、螺旋状のスリットが形成された収縮チューブにより、前記電極を構成する少なくとも1本の前記スパインの内周側であって当該電極の最大径部に相当する位置に固定されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成の電極カテーテルによれば、軸方向に延びるスリットが複数形成された金属管によって電極が構成されているので、縮径時における電極の外径を十分小さくすることができ、当該電極を末梢の気管支(細気管支)まで到達させることができ、細気管支や肺胞にできた癌細胞を焼灼することが可能となる。
【0010】
また、操作用ワイヤを引張操作して、電極(複数のスリットが形成された金属管)を軸方向に圧縮することにより、当該電極は径方向に拡張してバスケット状に変形する。これにより、拡径時における電極の外径(最大径)を十分に大きくすることができ、主気管支のような太い気管支の周囲(全周)にできた癌細胞を当該気管支の周方向に沿って均一に焼灼することが可能となる。
【0011】
また、拡張時における電極(バスケット状の電極)を構成するスパインは、金属管に形成されたスリットが開くことで当該金属管の管壁が周方向に分割されて形成されるので、細径の金属管であっても多数のスパインを確実に形成することができ、これにより、気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を行うことができる。
また、前記電極に固定された測温部を有し、前記カテーテルシャフトの内部に延在する温度センサを備え、前記温度センサの前記測温部は、螺旋状のスリットが形成された収縮チューブにより、前記電極を構成する少なくとも1本の前記スパインの内周側であって当該電極の最大径部に相当する位置に固定されていることにより、電極(スパイン)が接触している部位(気管支の内壁)の温度を確実に測定することができる。
また、螺旋状のスリットが形成された収縮チューブを使用することにより、軸方向に形成されているスリットが金属管の端部に至るものでなくても、当該収縮チューブをスパインに巻き付けることができるので、温度センサの測温部をスパインに確実に固定することができる。
【0012】
(2)本発明の電極カテーテルにおいて、前記金属管は、軸方向に延びる前記スリットが形成されている電極構成部分と、
前記電極構成部分の基端側において絶縁被覆されて前記カテーテルシャフトを構成するシャフト構成部分とからなり、
前記シャフト構成部分には、螺旋状のスリットまたは溝が形成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成の電極カテーテルによれば、カテーテルシャフトの先端に電極を確実に固定することができるとともに、金属管のシャフト構成部分に螺旋状のスリットまたは溝が形成されていることにより、カテーテルシャフトの先端部分における可撓性・柔軟性を十分確保することができる。
【0014】
(3)本発明の電極カテーテルにおいて、前記カテーテルシャフトは、前記金属管の前記シャフト構成部分よりも基端側においてマルチルーメン構造を有していることが好ましい。このような構成の電極カテーテルによれば、操作用ワイヤ、導線および温度センサを、互いに干渉させることなく、カテーテルシャフトの内部に延在させることができる。
【0015】
(4)本発明の電極カテーテルにおいて、前記カテーテルシャフトの外径は、2.0mm以下であることが好ましい。
このような構成の電極カテーテルによれば、カテーテルシャフトを気管支鏡のチャンネル内に挿通させることができるとともに、カテーテルシャフトの先端に固定された電極を末梢の気管支(細気管支)まで確実に到達させることができる。
【0016】
(5)本発明の電極カテーテルにおいて、前記金属管に形成された軸方向に延びる前記スリットの数が6本以上であることが好ましい。
このような構成の電極カテーテルによれば、気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を確実に行うことができる。
【0019】
(6)本発明の電極カテーテルにおいて、前記電極は、先端側円錐形部と、円筒状の直胴部と、後端側円錐形部とを備えていることが好ましい。
このような構成の電極カテーテルによれば、電極の直胴部を気管支の内壁に当接(面接触)させることにより、当該気管支の周方向だけでなく軸方向に沿っても均一な焼灼治療が可能となる。
【0020】
(7)本発明の電極カテーテルにおいて、前記金属管は、軸方向に延びる前記スリットが形成されている部分における先端側領域および後端側領域が絶縁被覆されることにより、前記2つの領域に挟まれた中間領域のみに高周波通電がなされる(この中間領域が高周波通電用の電極となる)ことが好ましい。
このような構成の電極カテーテルによれば、バスケットの中間領域のみに高周波通電がなされるので、高周波エネルギーのロスを抑制することができる。
【0021】
(8)本発明の電極カテーテルは、気管支鏡のチャンネル内に挿通されて用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の肺癌治療用電極カテーテルは、治療部位における気管支の太さに応じて電極の外径(最大径)を変化させることができ、気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を行うことができる。
また、縮径状態の電極によって末梢の気管支(細気管支)や肺胞にできた癌細胞を焼灼することができるとともに、操作用ワイヤを引張操作して電極を拡径させることにより、主気管支のような太い気管支の周囲(全周)にできた癌細胞に対して当該気管支の周方向に沿って均一に焼灼治療を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<第1実施形態>
図1〜
図13に示す本実施形態の肺癌治療用電極カテーテル100は、カテーテルシャフト10と、カテーテルシャフト10の先端に固定され、縮径時において軸方向に延びる16本のスリット21が形成された金属管M1から構成され、軸方向に圧縮されたときに、スリット21が開いて径方向に拡張(拡径)し、スリット21が開いたことで金属管M1の管壁が分割されて形成された16本のスパイン23からなるバスケット状に変形する高周波通電用の電極20と、電極20の先端に固定された先端チップ25と、カテーテルシャフト10の基端に固定された操作ハンドル30と、電極20に電気的に接続され、カテーテルシャフト10の内部に延在する導線40と、電極20に固定された測温部55を有し、カテーテルシャフト10の内部に延在する温度センサ50と、先端チップ25に固定された先端部61を有し、カテーテルシャフト10の内部を軸方向に移動可能に延在し、その基端が引張操作可能である操作用ワイヤ60とを備えている。
【0025】
本実施形態の電極カテーテル100を構成するカテーテルシャフト10は、基端部11と、先端部12と、最先端部13とからなる。
【0026】
図8Aおよび
図8Bに示すように、カテーテルシャフト10の基端部11および先端部12は、インナー部17と、インナー部17を被覆するアウター部18とにより形成され、基端部11および先端部12のインナー部17には、中央ルーメン15が形成されているとともに、その周囲にサブルーメン161〜168が形成されている。
【0027】
中央ルーメン15には操作用ワイヤ60が延在し、サブルーメン161には導線40が延在し、サブルーメン165には温度センサ50が延在している。
【0028】
図8Bに示すように、基端部11のアウター部18には編組19が編み込まれており、編組19が編み込まれた基端部11(ブレードチューブ)は、可撓性とともにある程度の剛性を兼ね備えたものとなり、これにより、電極カテーテル100は良好なプッシャビリティおよびトルク伝達性を有するものとなる。
【0029】
基端部11および先端部12の構成材料としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)などの合成樹脂を使用することができ、これらのうち、PEBAXを使用することができる。
また、基端部11のアウター部18に編み込まれた編組19の構成材料としては、埋設されることによって補強効果を発揮できる金属または樹脂材料を挙げることができる。
【0030】
基端部11を構成する樹脂の硬度としては、通常55D〜80Dとされ、好ましくは63D〜75Dとされる。
先端部12を構成する樹脂の硬度としては、通常25D〜55Dとされ、好ましくは30D〜45Dとされる。
【0031】
図7および
図9に示すように、カテーテルシャフト10の最先端部13は、先端部12に連結された金属管M1の基端部分が樹脂層14によって絶縁被覆されてなる。
金属管M1の基端部分(シャフト構成部分)には、螺旋状のスリット131が形成されており、これにより、最先端部13の可撓性(柔軟性)が確保されている。
螺旋状のスリット131のピッチは先端方向に向かって狭くなっており、これにより、操作性の向上を図ることができる。
【0032】
カテーテルシャフト10の長さとしては、通常1100〜2000mmとされ、好適な一例を示せば1200mmである。
また、基端部11(マルチルーメン構造のブレードチューブ)の長さは、通常900〜1970mmとされ、好適な一例を示せば1120mmである。
また、先端部12(マルチルーメン構造のノンブレードチューブ)の長さは、通常30〜200mmとされ、好適な一例を示せば80mmである。
また、最先端部13の長さは、通常10〜40mmとされ、好適な一例を示せば25mmである。
【0033】
カテーテルシャフト10の外径は2.0mm以下であることが好ましく、更に好ましくは1.7mm以下とされ、好適な一例を示せば1.35mmである。
このような細径のカテーテルシャフト10であれば、気管支鏡のチャンネル内(ガイディングシースを使用する場合には、当該ガイディングシースのルーメン)に挿通させることができ、また、当該カテーテルシャフト10の先端に配置した電極を末梢の気管支(細気管支)や肺胞における治療部位に到達させることができる。
【0034】
本実施形態の電極カテーテル100を構成する高周波通電用の電極20は、縮径時において軸方向に延びる16本のスリット21が、周方向に沿って等角度間隔で形成された金属管M1から構成されている。
【0035】
図1、
図3および
図4に示すように、縮径時における電極20の形状は円筒状である。 電極20(金属管M1の電極構成部分)に形成された16本のスリット21は、周方向に沿って等角度間隔(22.5°間隔)に形成されている。
また、16本のスリット21は、互いに同じ軸方向位置に形成され、16本のスリット21の先端および後端は、金属管M1の先端および後端には至っていない。
【0036】
縮径状態の電極20が軸方向に圧縮されると、スリット21の各々が開いて当該電極20(金属管M1の電極構成部分)が径方向に拡張する。
このとき、スリット21の各々が開くことによって電極構成部分における金属管M1の管壁が周方向に16分割され、これにより、16本のスパインが形成されて当該電極20はバスケット状に変形する。
【0037】
本実施形態の電極カテーテル100において、拡張時における電極20の形状は、
図2、
図5および
図6に示したような楕円球形(金属管M1の管軸を回転軸とする回転楕円体)であり、軸方向の中央位置が最大径部となっている。
【0038】
なお、縮径状態の電極20は、完全な円筒状態ではなく、拡径時にスパイン23となる管壁の中央位置を僅かに外側へ湾曲させて中高の形状としておくことが好ましい。
これにより、当該電極20を圧縮したときに、スパイン23となるべき管壁部分の一部が内側に湾曲するようなことはなく、確実に拡張させて楕円球形とすることができる。
【0039】
縮径時における電極20の外径は、カテーテルシャフト10の外径と略同一である。
縮径時における電極20の細径化は、当該電極20を金属管M1から構成することによりはじめて達成することができる。
【0040】
拡張時における電極20の外径(バスケット状電極の最大径)は、1.35mm以上であることが好ましく、更に好ましくは1.5〜2.0mmとされ、好適な一例を示せば1.6mmである。これにより、主気管支のような太い気管支の内壁に対して電極20の最大径部を接触させることができ、当該気管支の周囲(全周)にできた癌細胞を均一に焼灼することが可能となる。
【0041】
電極20を構成する金属管M1の管壁の肉厚(スパイン23の厚み)としては0.3mm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.2mmとされ、好適な一例を示せば0.05mmである。
この肉厚が過大である場合には、収縮時における金属管の外径が過大となり、末梢の気管支(細気管支)や肺胞における治療部位に電極20を到達させることが困難となる。
【0042】
電極20(金属管M1)の構成材料としては従来公知のアブレーションカテーテルの先端電極と同一の材料を使用することができる。
具体的には、X線造影性が高い白金、金、白金−イリジウム合金などを挙げることができるが、好適な材料としてNi−Ti合金を挙げることができる。
【0043】
電極20の先端には先端チップ25が固定されており、この先端チップ25を介して、電極20の先端部と操作用ワイヤ60の先端部61とが連結される。
先端チップ25の構成材料としては、白金、金、白金−イリジウム合金などを挙げることができる。
【0044】
図1および
図2に示すように、カテーテルシャフト10の基端には操作ハンドル30が固定されている。
本実施形態の電極カテーテル100を構成する操作ハンドル30は、ハンドル本体31と、摘み32を有する回転板33とを備えた操作部である。
【0045】
図9に示すように、電極20を構成する金属管M1の基端部分(シャフト構成部分)の内周面には、図示しないはんだによって導線40の先端が固定され、これにより、導線40と電極20とが電気的に接続されている。
本実施形態の電極カテーテル100を構成する導線40は、カテーテルシャフト10の内部(サブルーメン161)を延在し、操作ハンドル30の内部まで引き通されている。また、導線40の基端部は、操作ハンドル30の内部に装着されたコネクタに接続されている。
【0046】
図10〜
図13に示すように、拡張時における電極20を構成する16本のスパイン23のうち1本のスパイン231の内周側であって、このスパイン231の長さ方向の中央位置(電極20の最大径部に相当する位置)には、熱電対からなる温度センサ50の測温部55が、収縮チューブ57により固定されている。
【0047】
スパイン231の長さ方向の中央位置(拡張時における電極20の最大径部に相当する位置)に測温部55が配置されていることにより、電極20(スパイン231)が接触している部位(気管支の内壁)の温度を確実に測定することができる。
【0048】
温度センサ50は、スパイン231の内周側に沿ってカテーテルシャフト10(最先端部13)の内部に進入し、カテーテルシャフト10の内部(サブルーメン165)を延在して、操作ハンドル30の内部ままで引き通されている。温度センサ50の基端部は操作ハンドル30の内部に装着されたコネクタに接続されている。
【0049】
図13に示すように、温度センサ50の測温部55をスパイン231に固定するための収縮チューブ57には、螺旋状のスリット59が形成されている。
【0050】
既述したように、スパイン231を区画するスリット21の先端および後端は、金属管M1の先端および後端には至っていない(スパイン231の先端または後端は自由端になっていない)。
このため、通常の収縮チューブではスパイン231に装着することはできないが、螺旋状のスリット59が形成されている収縮チューブ57であれば、これを引き伸ばすことによりリボンスクリュー状とした後、温度センサ50の測温部55とともにスパイン231に巻き付けることにより、当該測温部55をスパイン231に保持させることができる。 そして、この収縮チューブ57を加熱することにより、当該収縮チューブ57は通常の収縮チューブと同様に収縮し、これにより、温度センサ50の測温部55をスパイン231の内周側に固定することができる。
【0051】
図11に示すように、温度センサ50の測温部55は、樹脂58により絶縁被覆された状態で、スパイン231の内周側に固定されている。これにより、電極カテーテルの100の使用時(高周波通電時)において、互いに金属からなるスパイン231と測温部55(温度センサ50)との間の導通を防止することができ、この結果、正確な温度測定を行うことができる。
【0052】
なお、測温部55を固定している収縮チューブ57の内部(隙間)に接着剤を充填したり、収縮チューブ57の周囲に接着剤を塗布したりすることにより、スパイン231(電極20)に対する温度センサ50の測温部55の固着力を向上させることもできる。
【0053】
図6に示すように、本実施形態の電極カテーテル100を構成する操作用ワイヤ60は、その先端部61が図示しないはんだにより先端チップ25に固定され、電極20の内部を通ってカテーテルシャフト10の内部(最先端部13)に進入し、カテーテルシャフト10の内部(中央ルーメン15)を延在して操作ハンドル30の内部まで引き通されている。
【0054】
操作用ワイヤ60の基端部は、操作ハンドル30の回転板33に固定されている。
操作用ワイヤ60の構成材料としては、ステンレスやNi−Ti系の超弾性合金などの金属材料、高強度の非導電性材料などを挙げることができる。
【0055】
操作ハンドル30の回転板33を回転させて、操作用ワイヤ60の基端を引張操作することにより、カテーテルシャフト10の内部において操作用ワイヤ60が基端側に移動し、操作用ワイヤ60の先端部61が固定されている先端チップ25が基端側に移動することで、縮径状態の電極20は軸方向に圧縮される。これにより、金属管M1の電極構成部分が径方向に拡張し、電極20が楕円球形のバスケット状に変形する。
【0056】
本実施形態の電極カテーテル100は、内視鏡である気管支鏡のチャンネル内に挿通されて、目視による観察下で使用される。
例えば、気管支鏡のチャンネル内にガイディングシースを挿通し、気管支鏡の先端開口から延び出させたガイディングシースのルーメンに本実施形態の電極カテーテル100を挿通し、ガイディングシースの先端から延び出させた電極カテーテル100の電極20を目的とする治療部位まで到達させ、この電極20と、患者の体表に貼付された対極板との間に高周波電流を通電して肺癌細胞を焼灼する。
【0057】
本実施形態の電極カテーテル100によれば、治療部位となる気管支の太さに応じて電極20の外径(バスケット状電極の最大径)を変化させることができ、当該気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を行うことができる。
【0058】
また、軸方向に延びる16本のスリット21が形成された金属管M1(電極構成部分)により電極20が構成されているので、縮径時における電極20の外径を十分小さくする(カテーテルシャフト10の外径と同等程度とする)ことができる。
これにより、末梢の気管支(細気管支)まで電極20を到達させることができ、細気管支や肺胞にできた癌細胞に対しても焼灼治療を行うことができる。
【0059】
また、操作用ワイヤ60を引張操作して金属管M1に圧縮力を作用させることによって電極20が径方向に拡張してバスケット状に変形するので、電極20の外径(最大径)を十分に大きくすることができる。
これにより、主気管支のような太い気管支の周囲(全周)にできた癌細胞に対しても、当該気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を行うことができる。
【0060】
また、拡張時におけるバスケット状の電極20を構成する16本のスパイン23の各々は、金属管M1に形成されたスリット21が開くことで、当該金属管M1(電極構成部分)の管壁が周方向に分割されて形成されるので、当該金属管M1が細径のものであっても、16本のスパイン23を確実に形成することができる。
また、金属管M1に軸方向のスリット21を形成することで、バスケット状の電極20を構成することができるので、電極20の作製が容易で、電極カテーテルとしての生産性に優れている。
【0061】
ここに、バスケット状電極を構成するスパインの各々を、例えば、リング電極が外周に装着された樹脂チューブによって構成しようとすると、樹脂チューブの内部に導線やコアワイヤなどを配置させることから、当該スパインの作製作業が煩雑になるとともに、当該樹脂チューブからなるスパインの外径はかなり太くなる。
そして、このようなスパインによって、本実施形態の電極カテーテル100を構成する電極20と同様のバスケット状電極を製造しようとしても、16本のスパイン(樹脂チューブ)の基端部の束状体をカテーテルシャフトの内部に挿通させることは不可能である。 また、カテーテルシャフトの内部に基端部の束状体を挿通可能な程度にスパインの本数を減らす(カテーテルシャフト内部に挿通可能な本数は精々数本程度である。)と、そのようなバスケット状電極によっては、気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を行うことはできない。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の電極カテーテルは、これらに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、バスケット状の電極を構成するスパインの数は16本に限定されない。
本発明の電極カテーテルにおいて、電極を構成するスパインの数(金属管に形成されるスリットの数に一致する)としては6本以上であることが好ましく、より好ましくは8本以上、更に好ましくは12本以上である。
【0063】
スパイン(スリット)の数が過少である場合には、気管支の周囲(全周)にできた癌細胞に対して、当該気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を行うことが困難となる。
スパインの数が少ない場合には、気管支の周方向における電極の配置ギャップが大きくなり、当該気管支の周方向に沿って均一な焼灼治療を行うことが困難となる。
【0064】
また、本発明の電極カテーテルを構成する温度センサの数は1本に限定されるものではなく、それぞれの測温部が周方向に沿って等角度間隔で電極に固定されている2本または3本以上の温度センサを備えていてもよい。また、温度センサとして、サーミスタ温度計など熱電対以外のセンサを使用してもよい。
また、本発明の電極カテーテルは、カテーテルシャフトの先端部分を屈曲させる機構を備えた先端偏向操作可能カテーテルであってもよい。
本発明の電極カテーテルは、肺の良性腫瘍の治療にも使用することができる。
【0065】
<第2実施形態>
図14および
図15に示す本実施形態の肺癌治療用電極カテーテル200は、電極の構成(バスケットの形状)が第1実施形態の電極カテーテルと異なっている。
図14および
図15において、
図3〜
図5と同一の符号で示した部分は、第1実施形態と同様の構成であり、その説明を省略する。
【0066】
本実施形態の電極カテーテル200を構成する電極70は、先端側円錐形部701と、直胴部702と、後端側円錐形部703とからなる。
【0067】
この電極70は、カテーテルシャフト10の先端に固定され、円筒形の直胴部702において軸方向に延びている16本のスリット71が形成された金属管M2から構成され、軸方向に圧縮されたときに、直胴部702を構成する管壁の軸方向における直線性が維持されながら、スリット71が開いて径方向に拡張(拡径)し、スリット71が開いたことで金属管M2の管壁が分割されて形成された16本のスパイン73からなるバスケット状に変形する。
【0068】
縮径時において金属管M2に形成されている16本のスリット71は、それぞれ、先端側円錐形部701の先端から後端側円錐形部703の後端にわたり形成されている。
16本のスリット71は、それぞれ、電極70の直胴部702において軸方向(金属管M2の管軸方向)に延びており、先端側円錐形部701においては径方向(金属管M2の管径方向)内側に傾斜しながら先端方向に延びており、後端側円錐形部703においては径方向内側に傾斜しながら後端方向に延びている。
【0069】
16本のスリット71によって区画され、拡張時においてそれぞれスパイン73となる金属管M2の管壁のうち、電極70の直胴部702を構成する管壁部分は、当該金属管M2を軸方向に圧縮して径方向に拡張させたときであっても、それぞれの直線性が維持されるよう形状記憶されている。これにより、拡張状態の電極70における直胴部702も円筒形状を有している。
【0070】
このような電極70は、軸方向に延びる16本のスリットが形成された金属管(第1実施形態の電極20を構成する円筒形の金属管M1)を、金型内で加熱処理して成形する(直胴部と円錐形部との境界に曲げ癖をつける)ことにより製造することができる。
【0071】
本実施形態の電極カテーテル200によれば、第1実施形態によって発揮される効果をすべて発揮することができる。
また、拡径状態においても、電極70の直胴部702が円筒形を維持することができるので、気管支の内壁に直胴部702を当接(面接触)させることにより、気管支の周方向だけでなく軸方向に沿っても均一な焼灼治療が可能となる。
【0072】
<第3実施形態>
図16に示す本実施形態の肺癌治療用電極カテーテル300は、電極の構成が第1実施形態の電極カテーテルおよび第2実施形態の電極カテーテルと異なっている。
図16において、
図14および
図15と同一の符号で示した部分は、第2実施形態(第1実施形態)と同様の構成であり、その説明を省略する。
【0073】
本実施形態の電極カテーテル300は、第2実施形態の電極カテーテルを構成する電極の先端側円錐形部(軸方向に延びるスリットが形成されている部分における先端側領域801)および後端側円錐形部(軸方向に延びるスリットが形成されている部分における後端側領域803)に絶縁被覆85が施されてなる。
これにより、本実施形態の電極カテーテル300では、先端側領域801および後端側領域803においては高周波通電がなされず、絶縁被覆85が施されていない中間領域802(第2実施形態の電極カテーテルを構成する電極の直胴部)のみに高周波通電がなされ、当該中間領域802のみが電極80として機能する。
【0074】
本実施形態の電極カテーテル300によれば、第2実施形態によって発揮される効果をすべて発揮することができる。
また、気管支の内壁に接触する中間領域802(直胴部)のみに高周波通電がなされ、内壁に接触しない先端側領域801および後端側領域803には、高周波通電がなされないので、高周波エネルギーのロスを抑制することができる。