(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
まず、本実施形態の概要を説明して、その後、本実施形態の具体的内容について図面を参照しながら説明する。なお以下において移動体ユーザUとは、移動体10を使用するユーザUをいい、例えば登山やハイキングにおいては事故や遭難時に移動体10用いて捜索者に救助要請を行う捜索対象者になり得る者(登山者やハイキングを行う者)とする。
【0010】
図1を参照して、本実施形態の一例の概略を説明する。本実施形態では、移動体ユーザUが移動体10を起動する。移動体10は外部通信機30A〜30Cとの通信が確保できるまで移動を行い、通信が確保できた位置で移動体10の現在位置を外部通信機30A〜30Cへと送信する。
【0011】
外部通信機30A〜30Cとは、移動体10から離れて設けられた通信用の機器であり、サイトの一例に相当する。なお、サイトとは、ある位置を占め、その位置を特定できる特徴物(例えば、建造物、機械等)であり、位置を特定できれば、時間とともにその位置が変化してもよいし、変化しなくともよい。
【0012】
[構成]
図2を参照して、本実施形態に係る移動体10の構成例を説明する。本実施形態では、移動体10は、バッテリ11と、制御部12と、通信部13と、判定部14と、移動機構15と、位置特定部16と、現在位置記録部17とを備える。また、移動体10は、移動体10の各部への電力供給を開始する電源スイッチ(図示せず)を備える。
【0013】
(バッテリ11)
電源スイッチが入れられると、バッテリ11は、制御部12と、通信部13と、判定部14と、移動機構15と、位置特定部16と、に電力を供給する。
【0014】
バッテリ11は、バッテリ11の状態(以下、「バッテリ情報」という)を測定する機能を備えてもよい。バッテリ情報とは、例えばバッテリ残量等である。また、その結果をバッテリ情報として制御部12へと送信してもよい。バッテリ11は、例えば、小型化されたドローン等に広く利用され、小型軽量で充電可能な、リチウムイオンバッテリ、リチウムポリマーバッテリ、燃料電池等を、単一セル或いは複数セル備えればよい。
【0015】
(制御部12)
制御部12は、バッテリ11と、通信部13と、判定部14と、移動機構15と、位置特定部16と、現在位置記録部17と、を制御する。例えば、制御部12は、後述の判定部14からの通信確立判定信号(通信が確立したと判定したことを通知する信号)を受けて、移動機構15を制御する。
【0016】
制御部12が行う制御は、制御部12に予め備えられた制御プログラムによって自動的に行われても良い。また、移動体ユーザUがコントローラを介し、制御信号を移動体10に送信し、その制御信号を通信部13が受信する構成でもよい。移動体ユーザUによる当該制御信号によって、制御部12は、移動体10の各部を制御してもよいし、上記制御プログラム立ち上げて自動制御を行ってもよい。
【0017】
(通信部13)
通信部13は、送信・受信アンテナを備え、制御部12からの制御を受けて、信号の送受信を行う。通信部13は、外部通信機30A〜30Cへの所定の送信信号を発信し、また外部通信機30A〜30Cからの信号を受信する。通信部13は、外部通信機30A〜30Cからの信号を受信したときは、受信信号を判定部14に送る。また、通信部13は、外部通信機30A〜30Cからの信号を受信していないときは、判定部14に信号は送らない。
【0018】
また、通信部13が外部通信機30A〜30Cへと送信する所定の送信信号は、例えば、通信部13に設けられたメモリに記録された定型的な信号であってもよい。
【0019】
通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信は、例えば、外部通信機30A〜30Cが所定の間隔毎に送信する同報信号(ビーコン)を通信部13が受信することとしてもよい。通信部13は、同報信号を、受信信号としてもよい。
【0020】
通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信は、例えば、通信部13が所定の間隔毎に外部通信機30A〜30Cに対する問い合わせ信号を送信し、当該問い合わせ信号を受信した外部通信機30A〜30Cからの返信信号を受信することとしてもよい。通信部13は外部通信機30A〜30Cからの返信信号を、受信信号としてもよい。
【0021】
また、通信部13は、前記コントローラからの制御信号を受信し、制御部12へ送信することもできる。
【0022】
また、通信部13が備える送信・受信アンテナの送信・受信可能な周波数帯域は、可変とすることができる。受信アンテナは、外部通信機30A〜30Cおよびユーザ端末(例えば、前記コントローラ、携帯端末等;図示しない)からの信号を全方向から受信できるように、無指向に配置されているとよい。送信アンテナは、送信信号を全方位に送信できるように、無指向に配置されているとよい。
【0023】
また、通信部13は、バッテリ11からの電力供給を受けても良いが、通信部13が専用のバッテリを備えていてもよい。当該バッテリの容量は、前記所定の送信信号を所定の期間、送信できるだけの容量があればよい。また、このバッテリは、小型軽量で充電可能なバッテリが望ましい。
【0024】
また、通信部13は、通信部13が送信を開始したこと、或いは外部通信機30A〜30Cからの信号を受信したことを、移動体ユーザUに対して知らせる手段を持っていてもよい。例えば、移動体10において、移動体ユーザUが視認できる位置に、フラッシュライトを設ける。このフラッシュライトを、送信・受信に応じて点滅させてもよい。或いは、通信部13から、移動体ユーザU側の前記コントローラに対し、送信・受信確認信号を送信してもよい。
【0025】
(判定部14)
判定部14は、受信信号を通信部13から受け取る。
【0026】
通信部13から受信信号を受け取った場合、判定部14は、通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信が確立したと判定する。判定部14は、通信確立信号を制御部12へと送信する。
【0027】
通信部13から受信信号を所定の時間に受け取らなかった場合、判定部14は、通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信が確立していないと判定する。判定部14は、通信未確立信号(通信が未確立であることを通知する信号)を制御部12へと送信する。
【0028】
(移動機構15)
制御部12から制御を受けて、移動機構15は、移動体10を一体的に移動させる。前述したように、制御部12が判定部14から通信未確立信号を受け取った場合、移動機構15は、制御部12の制御を受けて、移動体10を一体的に移動させる。
【0029】
移動機構15は、例えば、バッテリ11からの電力供給により駆動するモータ(図示せず)を動力源とし、モータ軸の回転を利用して、プロペラなどの部材を介して、浮力・推力等を得て、移動体10を制御可能に移動させるものであればよい。電力供給によって移動体10を移動させる機構であれば、上記モータを動力源とした機構にこだわらず、その他の移動機構を採用してもよい。
【0030】
移動動作として、例えば、移動体10が移動機構15により上昇し、所定の高度になった位置で、次に水平移動を行うように、制御部12が移動機構15を制御してもよい。
【0031】
(位置特定部16)
位置特定部16は、入力部(図示せず)を備え、入力部を介して、移動体10の現在位置に関する物理信号(「物理的入力」)を受け取る。物理的入力として、例えば、温度・圧力信号や、全球測位衛星システムからの航法信号等がある。
【0032】
温度・圧力信号とは、例えば、移動体10に設けられた温度センサ・圧力センサの測定値(移動体10の高度(深度)に応じた温度・圧力)を指す。
【0033】
全球測位衛星システムからの航法信号とは、例えば、全球測位衛星システム(GNSS;Global Navigation Satellite System)を構成する衛星が送信する信号(信号発信時刻及び衛星軌道に係る情報を含む)である。
【0034】
位置特定部16は、物理的入力を解析し現在位置を特定する。
【0035】
位置特定部16は、移動体10に備えられた電源スイッチが入力状態であれば、移動体10の現在位置を特定する。
【0036】
位置特定部16は、特定した現在位置を、現在位置記録部17へと記録する。
【0037】
位置特定部16は、所定の時間間隔で移動体10の現在位置を特定してもよい。また、位置特定部16は、所定の時間間隔で特定した現在位置を、当該所定の時間間隔で現在位置記録部17へと記録してもよい。また、位置特定部16は、制御部12の制御を受けて、移動体10が移動体ユーザUによって起動されてから移動を開始する前の現在位置を現在位置記録部17へと記録するように予め設定されていてもよい。このように位置特定部16を構成することにより、移動体ユーザUが存在した位置の情報を外部通信機30A〜30Cに発信することができる。そのため第三者は、移動体ユーザUが存在した位置の情報を外部通信機30A〜30Cを通じて取得した場合は、移動体ユーザUが存在した位置を把握することができる。なお、移動体10が移動体ユーザUによって起動されてから移動を開始する前における現在位置は、例えば移動体ユーザUによって移動体10が起動されたときの現在位置であり、移動体10の電源スイッチがオンされたときの現在位置等を含む。
【0038】
制御部12が判定部14から通信確立信号を受け取った場合、制御部12の制御により、位置特定部16は、特定した現在位置を通信部13から、外部通信機30A〜30Cへと送信する。
【0039】
位置特定部16が特定する現在位置は、1次元位置として、重力方向に沿った深度・高度であってもよい。また、2次元位置として緯度・経度であってもよい。更に、3次元位置として緯度、経度、深度・高度であってもよい。また、位置特定部16が特定する現在位置は、緯度、経度、深度、高度のうち少なくとも1つであってもよい。
【0040】
1次元位置を特定するのであれば、位置特定部16として、例えば温度センサ、圧力センサ(水圧計・気圧計)を搭載し、その結果を基に深度・高度に変換計算してもよい。或いは、位置特定部16として、超音波センサ(例えば、ヴィジョンポジショニングセンサ)等を搭載し、地表・海底等から移動体10までの距離を測ってもよい。
【0041】
2次元位置或いは3次元位置を特定するのであれば、前記入力部として、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)からの航法信号を物理的入力とする専用アンテナを搭載し、位置特定部16が単独測位解析等を行ってもよい。前記専用アンテナは、通信部13の受信アンテナと兼用してもよい。単独測位等の解析から付随して得られる測定誤差等の情報を評価し、例えば、高度の値を他のセンサで得られた高度の値と入れ替えてもよい。また、前記入力部として、例えば3軸加速度センサを搭載して、位置特定部16が慣性航法による解析から移動開始点からの移動軌跡を求めて、移動開始点に対する現在の3次元相対位置を特定してもよい。
【0042】
(現在位置記録部17)
現在位置記録部17は、位置特定部16により特定された現在位置を記録する。
【0043】
制御部12が判定部14から通信確立信号を受け取った場合、制御部12の制御により、位置特定部16は、現在位置記録部17に記録された現在位置を読み出し、通信部13から外部通信機30A〜30Cへと送信してもよい。
【0044】
現在位置記録部17は、揮発性メモリと不揮発性メモリの何れであってもよい。これらのメモリは、低電力消費、小型軽量であることが望ましい。
【0045】
[動作]
図3は、本実施形態における処理の流れを示す図である。以下に、
図3を参照して、移動体10の動作を、ステップ番号(S1〜S6)に添って説明する。
【0046】
(S1)
移動体ユーザUが移動体10の電源スイッチを入れる。
【0047】
(S2)
制御部12からの制御に従って、通信部13は、外部通信機30A〜30Cとの送受信を行う。通信部13は、受信信号を判定部14へ送る。
【0048】
(S3)
受信信号を所定時間に受け取らなかった場合、判定部14は、通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信が未確立であると判定する(S3;No)。更に、判定部14は、通信未確立信号を、制御部12へと送り、処理を次のステップ(S4:移動体10を移動させる)へと進める。
【0049】
受信信号を受け取った場合、判定部14は、通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信が確立していると判定する(S3;Yes)。更に、判定部14は、通信確立信号を、制御部12へと送り、処理を次のステップ(S5:移動体10の現在位置特定)へと進める。
【0050】
(S4)
制御部12は、判定部14から送られた通信未確立信号を受けて、位置特定部16を制御して、移動体10を移動させる。処理をステップ(S2)へと戻す。
【0051】
(S5)
制御部12は、判定部14から送られた通信確立信号を受けて、位置特定部16を制御して、移動体10の現在位置を特定する。
【0052】
(S6)
制御部12は、位置特定部16を制御して、位置特定部16が特定した移動体10の現在位置を、現在位置記録部17に記録する。
【0053】
(S7)
制御部12は、通信部13を制御し、特定した現在位置を通信部13から外部通信機30A〜30Cへと送信する。
【0054】
[効果]
本実施形態によれば、移動体ユーザによって起動され、かつバッテリから電力の供給を受けて移動する移動体は、移動機構と、通信部と、判定部と、制御部と、位置特定部と、現在位置記録部とを備える。判定部が通信部と外部通信機との通信が未確立と判定したとき、制御部は移動機構を制御して、移動体を移動させることができる。判定部が通信部と外部通信機との通信が確立されと判定したとき、制御部は、位置特定部が物理的入力に基づいて特定した現在位置を、通信部から外部通信機へと発信することができる。
【0055】
<第2の実施形態>
本実施形態の目的は、所定の条件を満たす外部通信機を選択し、選択した外部通信機に向けて移動体を移動させることであり、例えば、より通信が確保しやすい環境に移動体を移動させることができると期待される。
【0056】
本実施形態では、移動体は、移動体の現在位置と位置情報記憶部に記録された複数の外部通信機の位置情報と、に基づいて、いずれかの外部通信機を選択する。更に、移動体は、選択された外部通信機に向けて移動する。
【0057】
本実施形態は、第1の実施形態の構成に、更に、位置情報記憶部18と選択部19とを備えた移動体10である。したがって、その構成は、第1の実施形態の構成と共通な部分があり、共通部分に関して詳細な説明を省略することがある。この実施形態に係る移動体10の構成例を
図4に示す。
【0058】
[構成]
図4を参照して、本実施形態に係る移動体10の構成例を説明する。移動体10は、バッテリ11と、制御部12と、通信部13と、判定部14と、移動機構15と、位置特定部16と、現在位置記録部17と、位置情報記憶部18と、選択部19とを備える。また、移動体10は、移動体10の各部への電力供給を開始する電源スイッチ(図示せず)を備える。
【0059】
追加された構成である位置情報記憶部18と選択部19とに関して、詳細に説明する。また、位置情報記憶部18と選択部19とが加わることで追加された、制御部12の制御に関しても説明する。
【0060】
(位置情報記憶部18)
位置情報記憶部18は、1または複数の外部通信機30A〜30Cに関する情報(特に、位置情報)をハードディスク等の不揮発性メモリに記憶している。記憶した情報項目は、位置特定部16に記録された情報と同じ項目を少なくとも含んでいる。外部通信機30A〜30Cのリストは、移動体10と通信可能な領域内にある全ての外部通信機30A〜30Cを網羅していることが望ましい。
【0061】
位置情報記憶部18に記憶された外部通信機30A〜30Cの位置情報は、制御部12からの制御を受けた選択部19(後述する)が、読み出す。
【0062】
(選択部19)
制御部12からの制御を受けて、選択部19は、現在位置記録部17から移動体10の現在位置情報を取り出す。また、選択部19は、位置情報記憶部18に記憶された1または複数の外部通信機30A〜30Cの位置情報を取り出す。
【0063】
現在位置情報と1または複数の外部通信機30A〜30Cの位置情報とから、選択部19は、移動体10が向かう最適な外部通信機30の位置を選択する。そのため、選択部19は、例えば、現在位置から1または複数の外部通信機30A〜30Cまでの距離を、各々の外部通信機30A〜30Cについて、求める。
【0064】
これら現在位置から1または複数の外部通信機30A〜30Cまでの距離から、最短の距離となる外部通信機30を選択する。
【0065】
選択部19は、選択した外部通信機30の位置と移動体10の現在位置とを、制御部12に送る。
【0066】
この距離は、3次元座標(例えば、緯度、経度、高度(深度))間から計算した距離でもよく、2次元平面座標(例えば、緯度、経度)から計算した距離でもよい。
【0067】
(制御部12)
制御部12は、選択部19から送られた移動体10の現在位置、及び最適な外部通信機30の位置から、制御部12は、移動体10を外部通信機30へと近づけるように、移動機構15を制御する。
【0068】
また、位置情報記憶部18に3次元地図(地表面の緯度、経度、高度(深度))情報等を格納しておいて、制御部12は、移動体10の現在位置と外部通信機30の位置と、当該3次元の地図情報等とを利用してもよい。これらの情報から、制御部12は、移動体10の現在位置と外部通信機30との間の最適な軌跡を計算してもよい。そして、移動体10が当該最適な軌跡上を外部通信機30へと近づけるように、制御部12は、移動機構15を制御してもよい。
【0069】
[動作]
図5は、本実施形態における処理の流れを示す図である。以下に、
図5を参照して、移動体10の動作を、ステップ番号(S21〜S31)に添って説明する。
【0070】
(S21)
移動体ユーザUが移動体10の電源スイッチを入れる。
【0071】
(S22)
制御部12からの制御に従って、通信部13は、外部通信機30A〜30Cとの送受信を行う。通信部13は、受信信号を判定部14へ送る。
【0072】
(S23)
受信信号を所定時間に受け取らなかった場合、判定部14は、通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信が未確立であると判定する(S23;No)。更に、判定部14は、通信未確立信号を、制御部12へと送り、処理を次のステップ(S24:移動体10の現在位置特定)へと進める。
【0073】
受信信号を受け取った場合、判定部14は、通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信が確立していると判定する(S23;Yes)。更に、判定部14は、通信確立信号を、制御部12へと送り、処理を次のステップ(S29:移動体10の現在位置特定)へと進める。
【0074】
(S24)
制御部12は、判定部14から送られた通信未確立信号を受けて、位置特定部16を制御して、移動体10の現在位置を特定する。
【0075】
(S25)
制御部12は、位置特定部16を制御して、位置特定部16が特定した移動体10の現在位置を、現在位置記録部17に記録する。
【0076】
(S26)
選択部19は、現在位置記録部17に記録された現在位置と、位置情報記憶部18に記録された1または複数の外部通信機30A〜30Cの位置情報を読み出す。
【0077】
(S27)
選択部19は、移動体10の現在位置と1または複数の外部通信機30A〜30Cの位置情報とから、移動体10が向かう最適な外部通信機30の位置を選択する。
【0078】
(S28)
移動体10の現在位置と最適な外部通信機30の位置とから、制御部12は、移動体10の移動方向を決め、移動機構15を制御して、移動体10を移動させる。処理をステップ(S22)へと戻す。
【0079】
(S29)
制御部12は、判定部14から送られた通信確立信号を受けて、位置特定部16を制御して、移動体10の現在位置を特定する。
【0080】
(S30)
制御部12は、位置特定部16を制御して、位置特定部16が特定した移動体10の現在位置を、現在位置記録部17に記録する。
【0081】
(S31)
制御部12は、通信部13を制御し、特定した現在位置を通信部13から外部通信機30A〜30Cへと送信する。
【0082】
<第3の実施形態>
本実施形態の目的は、移動体の現在位置と移動体ユーザUに関連する情報(以下、ユーザ関連情報とする)とを、外部通信機へと発信することであり、例えば移動体ユーザUの発見、特定、確保をより迅速、確実にすることができると期待される。
【0083】
本実施形態は、第2の実施形態の構成に、更に、ユーザ関連情報記憶部20を備えた移動体10である。したがって、その構成は、第2の実施形態の構成と共通な部分があり、共通部分に関して詳細な説明を省略することがある。この実施形態に係る移動体10の構成例を
図6に示す。
【0084】
[構成]
図6を参照して、本実施形態に係る移動体10の構成例を説明する。移動体10は、バッテリ11と、制御部12と、通信部13と、判定部14と、移動機構15と、位置特定部16と、現在位置記録部17と、位置情報記憶部18と、選択部19と、ユーザ関連情報記憶部20とを備える。また、移動体10は、移動体10の各部への電力供給を開始する電源スイッチ(図示せず)を備える。
【0085】
追加された構成であるユーザ関連情報記憶部20に関して、詳細に説明する。また、ユーザ関連情報記憶部20が加わることで追加された、制御部12による制御に関しても説明する。
【0086】
(ユーザ関連情報記憶部20)
ユーザ関連情報記憶部20は、移動体ユーザUに関する情報(以下、「ユーザ関連情報」という)を記録している。
【0087】
あるいは、ユーザ関連情報記憶部20は、簡易入力装置(例えば、簡易キーボード、録音マイク、デジタルカメラ、簡易医療機器等)、を備え、ユーザ関連情報が、当該簡易入力装置を介して、随時追加入力されてもよい。その保存形式は、例えば文字列、音声、画像等でもよい。また、ユーザ関連情報の入力は移動体10以外の外部装置によるものであってもよい。
【0088】
ユーザ関連情報は、少なくとも移動体ユーザUが非常事態にあることを示す情報が含まれることが好ましい。この非常事態にあることを示す情報には、遭難したことを示す情報、救助を求めることを示す情報等が含まれることが好ましい。また、ユーザ関連情報は、例えば、移動体ユーザUを認識できる情報(氏名等)、その場で逐次的に蓄積する医療情報(体温、血圧等)、移動体ユーザUからのメッセージ(これまでの移動経路、今後の行動予定等)、移動体ユーザU周辺の環境情報(気温、湿度等)等であってもよい。
【0089】
ユーザ関連情報記憶部20は、ハードディスク等の不揮発性メモリを利用しておいてもよいし、揮発性メモリであってもよい。
【0090】
(制御部12)
判定部14が通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信が確立していると判定したとき、制御部12は、通信部13を制御して、ユーザ関連情報記憶部20に記録されたユーザ関連情報を、外部通信機30A〜30Cへと送信する。
【0091】
[動作]
図7は、本実施形態における処理の流れを示す図である。以下に、
図7を参照して、移動体10の動作を、ステップ番号(S41〜S53)に添って説明する。なお、本実施形態の(S41:電源投入)から(S51:現在位置送信)までのステップは、第2の実施形態(
図5)のステップ(S21〜S31)と同じであるので、説明は省略する。
【0092】
(S52)
制御部12は、ユーザ関連情報記憶部20に記録されたユーザ関連情報を読み出す。
【0093】
(S53)
制御部12は、通信部13を制御し、ユーザ関連情報記憶部20に記録されたユーザ関連情報を、外部通信機30A〜30Cへと送信する。
【0094】
なお、第3の実施形態は、位置情報記憶部18と、選択部19とを備えない構成でもよい。その場合、外部通信機30A〜30Cの選択に係る上記処理は行われない。
[効果]
本実施形態によれば、移動体ユーザUによって起動され、かつバッテリから電力の供給を受けて移動する移動体は、移動機構と、通信部と、判定部と、制御部と、ユーザ関連情報記憶部と、位置特定部と、現在位置記録部とを備える。判定部が通信部と外部通信機との通信が未確立と判定したとき、制御部は移動機構を制御して、移動体を移動させることができる。判定部が通信部と外部通信機との通信が確立されたと判定したとき、制御部は、位置特定部が物理的入力に基づいて特定した現在位置を、通信部から外部通信機へと発信することができる。また、制御部は、判定部が通信部と外部通信機との通信が確立されたと判定したとき、移動体ユーザUに関連する情報より詳しくは非常事態にあることを示す情報を外部通信機に向けて送信することができる。これにより第三者は、移動体ユーザUに関連する情報を外部通信機30A〜30Cを通じて取得した場合は、ユーザが非常事態にある旨を把握することができる。
【0095】
<第4の実施形態>
本実施形態の目的は、移動体ユーザ及びその周辺環境に関する画像を撮影し、外部通信機へと送ることであり、例えば捜索者側は、移動体ユーザとその周辺状況、移動体の移動経路等の情報を取得し、移動体ユーザの確保をより迅速且つ確実にできると期待される。
【0096】
本実施形態は、第3の実施形態の構成に、更に、撮影部21を備えた移動体である。したがって、その構成は、第3の実施形態の構成と共通な部分があり、共通部分に関して詳細な説明を省略することがある。この実施形態に係る移動体10の構成例を
図8に示す。
【0097】
[構成]
図8を参照して、本実施形態に係る移動体10の構成例を説明する。移動体10は、バッテリ11と、制御部12と、通信部13と、判定部14と、移動機構15と、位置特定部16と、現在位置記録部17と、位置情報記憶部18と、選択部19と、ユーザ関連情報記憶部20と、撮影部21とを備える。また、移動体10は、移動体10の各部への電力供給を開始する電源スイッチ(図示せず)を備える。
【0098】
追加された構成である撮影部21に関して、詳細に説明する。また、撮影部21が加わることで追加された、制御部12による制御に関しても説明する。
【0099】
(撮影部21)
撮影部21は、デジタルカメラを備えている(図示していない)。当該デジタルカメラによる撮影は、移動体10に備わる電源スイッチが投入された直後(ステップS1)から所定の間隔で行われてもよい。得られた画像は、デジタルカメラ内部に備わるメモリに保存される。当該デジタルカメラで撮影された画像は、移動体10と外部通信機30A〜30Cとの通信が確立しているときに、制御部12の制御により、通信部13から外部通信機30A〜30Cへと送信される。ここで、画像とは、静止画像及び動画像の少なくともいずれかを含む。
【0100】
撮影部21に備えられたデジタルカメラは、例えば3軸安定装置を備えたカメラマウントを介して、移動体10本体との物理的な干渉(接触)が起きない範囲で、旋回自由に移動体10に取り付けられているとよい。また、その旋回自由度の範囲で、デジタルカメラは撮影アングルを選択できるとよい。
【0101】
また、撮影部21に備えられたデジタルカメラは、高解像度の画像(静止画像、動画像の何れも)を撮影でき、さらに、可視光あるいは赤外線(光)カメラであることが望ましい。また、得られた画像は、デジタルカメラに備わる出力端子から出力できるとよい。また、デジタルカメラはズーム機能を備え、広範囲の画角で撮影できるとよい。また、デジタルカメラは、顔認識機能を備えていることが望ましい。
【0102】
また、撮影部21による撮影は、ユーザ端末の操作によって、制御部12を介して制御されてもよい。または、制御部12に予め備えられた制御プログラムによって制御されてもよい。或いは、移動体ユーザUによる、ユーザ関連情報記憶部20に備わった簡易入力装置からの入力によって、制御されてもよい。
【0103】
撮影部21による撮影は、例えば、移動体ユーザUの撮影、移動体ユーザUの近傍の撮影、及び移動体10の初期位置から現在位置までの経路の何れかの地点からの撮影であればよい。
【0104】
(制御部12)
判定部14により通信が確立していると判定されたとき、制御部12は、撮影部21が撮影した画像を、外部通信機30A〜30Cへと送信する。その際、制御部12は、撮影した画像を制御部12に搭載したソフトウエアで圧縮してから送信してもよいし、そのままの形式で送信してもよい。
【0105】
また、制御部12は、撮影部21に備わったデジタルカメラ等を使って、衝突や墜落を避ける安全航法を行うように、移動機構15を制御してもよい。
【0106】
制御部12が安全航法を行えるように、移動体10は、撮影部21に備わったデジタルカメラに加えて、例えば、3軸加速度センサ、3軸ジャイロ、3軸磁力センサ、超音波高度センサ、圧力センサ、対地速度計測用の垂直カメラ等を備えていることが望ましい。制御部12は、これらセンサ類からの入力を利用して、安全航法を実施することが望ましい。
【0107】
[動作]
図9は、本実施形態における処理の流れを示す図である。以下に、
図9を参照して、移動体10の動作を、ステップ番号(S61〜S75)に添って説明する。なお、本実施形態の(S61:電源投入)から(S73:ユーザ関連情報送信)までのステップは、第3の実施形態(
図7)のステップ(S41〜S53)と同じであるので、説明は省略する。
【0108】
(S74)
撮影部21は、移動体ユーザUの撮影、移動体ユーザUの近傍の撮影、及び初期位置から現在位置までの経路の何れかの地点からの撮影、により画像を取得する。
【0109】
(S75)
制御部12は、通信部13を制御し、撮影部21が撮影した画像を、外部通信機30A〜30Cへと送信する。
【0110】
なお、第4の実施形態は、位置情報記憶部18と、選択部19と、ユーザ関連情報記憶部20とを備えない構成でもよい。その場合、外部通信機30A〜30Cの選択に係る上記処理、及びユーザ関連情報に係る上記処理は、行われない。
【0111】
<変形例>
以上に説明した構成は、この発明を実施するための一例にすぎない。よって、この発明の要旨の範囲内における任意の変形(省略、置換、付加等)を適宜に施すことが可能である。任意の変形の一例について、以下、説明する。
【0112】
第1の実施形態から第4の実施形態のいずれの実施形態であっても、通信部13がユーザ端末とデータ通信が可能であり、判定部14により移動体10と外部通信機30A〜30Cとの通信が確立されていると判定されたとき、制御部12は、ユーザ端末と外部通信機30A〜30Cとの間の通信を中継できるように構成することが可能である。
【0113】
なお、中継とは、一方からの受信データを加工し、或いは加工せずに、他方に転送することである。
【0114】
第1の実施形態から第4の実施形態のいずれの実施形態であっても、制御部12が、判定部14の判定結果を、移動体ユーザUのユーザ端末に送信するように構成することが可能である。この変形例においてユーザ端末は、携帯電話である。
【0115】
また、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれの実施形態であっても、制御部12が、判定部14によって通信が確立されていると判定された後、移動機構15を制御して、移動体10を退避位置に移動させる構成とすることが可能である。
【0116】
なお、退避位置に移動するとは、移動体10の状態に応じた、着陸、停止等であればよい。例えば、移動体10は飛行による移動を行うラジコンヘリ、ドローン等の飛行体とすることとして、制御部12は、移動体ユーザUに関連する情報を外部通信機30A〜30Cに向けて送信するときの現在位置を外部通信機30A〜30Cに向けて送信し、現在位置を外部通信機30A〜30Cに向けて送信した後に鉛直下向き方向に移動し着陸するように構成することが可能である。このように鉛直下向きに移動することにより、移動体ユーザUに関連する情報を外部通信機30A〜30Cに向けて送信するときの飛行体の現在位置と、飛行体が着陸する位置における、緯度及び経度(水平面での位置)の差を小さくすることができる。そのため、例えば、第三者が外部通信機30A〜30Cに送信された当該現在位置を把握した場合に、飛行体が着陸した位置を容易に推定できると期待される。なお、移動体10は、飛行体のみならず陸上や海上を移動するように構成することも可能である。
【0117】
また、移動にあたって、バッテリ残量、或いは通信部13が外部通信機30A〜30Cから受信した信号の強度等を基に、移動方向を決めてもよい。決定された移動方向に移動体10が移動するように、制御部12は、移動機構15を制御してもよい。
【0118】
また、移動体10が移動体ユーザUによって起動されてから移動を開始する前における現在位置が現在位置記録部17に記録されている場合に、制御部12は、当該現在位置に移動するように(戻るように)移動機構15を制御してもよい。更に、制御部12は、初期位置(移動体10が移動体ユーザUによって起動されてから移動を開始する前における現在位置)まで戻ったときに、通信が完了した旨を移動体ユーザUに報知させたり、あるいは、移動体ユーザUに関連する情報を外部通信機30A〜30Cに向けて送信したことを移動体ユーザUに報知してもよい。この報知は、図示しない表示部か、音声出力部による報知であってもよい。これにより、移動体10が移動体ユーザUによって起動されてから移動を開始する前における現在位置(移動体が戻る位置)に移動体ユーザUが存在する場合は、外部通信機30A〜30Cとの通信ができたことを移動体ユーザUが認知することができる。
【0119】
また、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれの実施形態であっても、通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信に際して電波中継地点を介在させるように構成することも可能である。すなわち、電波中継地点とは、通信部10と外部通信機30A〜30Cとの通信の際に電波を中継する機器を有する場所であり、基地局や無線LAN機器等が設置されている場所となる。電波中継地点とは、サイトの一例に相当する。
【0120】
つまり、移動体10において、位置情報記憶部18は、通信部13と外部通信機30A〜30Cとの通信の際に電波を中継する複数の電波中継地点の位置情報を記憶し、選択部19は、制御部12からの制御を受けて複数の電波中継地点の位置情報を読み出し、また選択部19は、位置特定部16により特定された現在位置と複数の電波中継地点の位置情報とに基づいて、現在位置から複数の電波中継地点までの距離を、各々の電波中継地点について求め、更に選択部19は、複数の電波中継地点のうち、現在位置からの距離が最短となる電波中継地点を選択し、制御部12は、選択部19により選択された電波中継地点に移動するように移動機構15を制御するように構成することが可能である。このため、移動体10が電波中継地点の位置情報を記憶していない場合に比べて、移動体10の存在する現在位置から最も近い電波中継地点へ近づくことができる。
【0121】
また、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれの実施形態であっても、移動体10を非常事態モード(様式)に設定するための非常事態設定部を更に有するように構成してもよい。非常事態モードとは、移動体ユーザUが非常事態にある場合に対応して、移動体10が機能の発揮や動作を行う状態をいう。例えば、制御部12は、判定部14により通信が確立されていないと判定され、かつ、移動体10が非常事態モードに設定されているときに現在位置から移動するように移動機構15を制御するように構成することが可能である。また、移動体ユーザUに関連する情報、より詳しくは移動体ユーザUが非常事態にあることを示す情報は、判定部14により通信が確立されていると判定され、かつ、移動体10が非常事態モードに設定されているときに、通信部13を介して外部通信機30A〜30Cに送信するように構成することも可能である。非常事態モードへの設定は、例えば、移動体10に非常事態用のボタン、スイッチ、又はアイコンを設け、移動体ユーザUがこれらを押下、タッチ等することにより行われるようにする。また、移動体10が起動されるとともに非常事態モードに設定されるようにしてもよい。
【0122】
また、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれの実施形態であっても、移動体10は、携帯可能な構成とすることが好ましい。携帯可能とは、移動体10が、移動体ユーザUが手で持つことができる、または移動体ユーザUが抱えることができる、若しくは移動体ユーザUがリュック等に入れて持ち運ぶことができるように形成された構成をいい、折り畳み可能な構成や分解可能な構成または組み立て可能な構成を含む。また、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれの実施形態にあっても20kg以内の重量及び0.027m^3(立方メートル)以内の大きさを携帯可能な重量及び大きさとするものとし、移動体ユーザUが登山やハイキング等において移動体10を携帯することを考慮した場合、移動体10の重量と大きさはそれぞれ10kg以下、0.004m^3(立方メートル)以下とすることが好ましく、更に5kg以下、0.002m^3(立方メートル)以下とすることが好ましい。なお、携帯可能な重量及び大きさの移動体10であっても、通常移動体ユーザUが携帯するものではない移動体10については、携帯用ではないものとする。
【0123】
また、以下の様な構成を備える実施形態でもよい。本体と、前記本体に設けられ、外部通信機と通信を行う通信部と、前記本体に設けられ、前記本体を移動させる移動機構と、前記通信部が前記外部通信機と通信を行うことが可能であるかを判定する判定部と、前記通信部が前記外部通信機と通信を行うことが可能である位置に前記本体を移動させるように前記移動機構を制御する制御部と、を備えることを特徴とする移動体、であってもよい。
【0124】
また、当該実施形態に従属して、以下の様な構成を更に備える実施形態でもよい。前記判定部は、前記通信部が前記外部通信機と通信を行うことが可能であるか否かを判断し、前記通信部が前記外部通信機と通信を行うことが可能でないと判断した場合、前記制御部は、前記通信部が前記外部通信機と通信を行うことが可能である位置に前記本体を移動させるように前記移動機構を制御することを特徴とする移動体であってもよい。
【0125】
第1の実施形態から第4の実施形態、及び変形例において、バッテリから電力の供給を受けて移動する移動体は、移動機構と、通信部と、判定部と、制御部と、を少なくとも備える。そして、第1の実施形態から第4の実施形態、及び変形例は、判定部が通信部と外部通信機との通信が未確立と判定したとき、制御部は移動機構を制御して、移動体を移動させることができる、という共通の効果がある。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。