特許第6671110号(P6671110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671110
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】混繊糸製造装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/08 20060101AFI20200316BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20200316BHJP
   D01D 5/098 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   D01D5/08 G
   D02G3/04
   D01D5/098
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-101507(P2015-101507)
(22)【出願日】2015年5月19日
(65)【公開番号】特開2016-216846(P2016-216846A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 正宏
【審査官】 岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−221505(JP,A)
【文献】 特開平05−247715(JP,A)
【文献】 特開2013−204183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00−13/02
D02G 1/00−3/48
D02J 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸装置から紡出された複数の糸として第1の糸及び第2の糸の両方を送る糸送りローラと、
前記糸送りローラよりも糸送り速度が速いローラであって、前記糸送りローラから送られる前記複数の糸のうちの前記第1の糸が巻き掛けられ、前記糸送りローラとの間で延伸された前記第1の糸を加熱しつつ送る、第1延伸ローラと、
前記糸送りローラよりも糸送り速度が速く、且つ、前記第1延伸ローラよりもローラ表面温度が低いローラであって、前記糸送りローラから送られる前記複数の糸のうちの前記第2の糸が巻き掛けられ、前記糸送りローラとの間で延伸された前記第2の糸を送る、第2延伸ローラと、
前記第1延伸ローラから送られた前記第1の糸と、前記第2延伸ローラから送られた前記第2の糸を合糸する合糸部と、
を備え、
前記第1延伸ローラの糸送り速度は、前記第2延伸ローラの糸送り速度よりも速いことを特徴とする混繊糸製造装置。
【請求項2】
前記第1延伸ローラは、その表面に巻き掛けられた前記第1の糸を加熱する加熱ローラであり、
前記第2延伸ローラは、その表面に巻き掛けられた前記第2の糸を加熱しない非加熱ローラであることを特徴とする請求項1に記載の混繊糸製造装置。
【請求項3】
前記第1延伸ローラの糸送り速度と前記第2延伸ローラの糸送り速度の速度差が、前記第1延伸ローラの糸送り速度の0.25%〜2.5%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の混繊糸製造装置。
【請求項4】
前記第1延伸ローラに対して、前記第1の糸が360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられ、
前記第2延伸ローラに対して、前記第2の糸が360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の混繊糸製造装置。
【請求項5】
前記第1延伸ローラと前記第2延伸ローラは、共に、所定方向に延びており、
前記第1延伸ローラに巻き掛けられる前の前記第1の糸と、前記第2延伸ローラに巻き掛けられる前の前記第2の糸は、前記所定方向において並んだ状態で走行し、
前記第1延伸ローラに対して、前記第1の糸が360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられ、
前記第2延伸ローラには、セパレートローラが近接して配置され、
前記第2の糸は、前記第2延伸ローラと前記セパレートローラとの間に、1回以上巻き掛けられることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の混繊糸製造装置。
【請求項6】
前記第1延伸ローラは、前記第1の糸のみを送り、
前記第2延伸ローラは、前記第2の糸のみを送ることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の混繊糸製造装置。
【請求項7】
紡糸装置から紡出された複数の糸を送る糸送りローラと、
前記糸送りローラよりも糸送り速度が速いローラであって、前記糸送りローラから送られる前記複数の糸のうちの第1の糸が巻き掛けられ、前記糸送りローラとの間で延伸された前記第1の糸を加熱しつつ送る、第1延伸ローラと、
前記糸送りローラよりも糸送り速度が速く、且つ、前記第1延伸ローラよりもローラ表面温度が低いローラであって、前記糸送りローラから送られる前記複数の糸のうちの第2の糸が巻き掛けられ、前記糸送りローラとの間で延伸された前記第2の糸を送る、第2延伸ローラと、
前記第1延伸ローラから送られた前記第1の糸と、前記第2延伸ローラから送られた前記第2の糸を合糸する合糸部と、
を備え、
前記第2延伸ローラの径は、前記第1延伸ローラの径よりも小さいことを特徴とする混繊糸製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の糸を合糸して混繊糸を製造する、混繊糸製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物性等が異なる2種類の糸を合糸(混繊)した混繊糸が知られている。その代表的なものとして、熱収縮率が異なる2種類の糸を混繊した異収縮混繊糸がある。一般的な異収縮混繊糸は、延伸後に熱処理(熱セット)を行った熱処理糸と、延伸後に熱セットを行っていない非熱処理糸とを、空気交絡等によって合糸することによって生産される。
【0003】
初期の異収縮混繊糸は、熱処理糸と非熱処理糸とを別々に生成して合糸することによって生産されていた。その後、未延伸糸(UDY)や中間配向糸(POY)等の原糸を延伸する延伸機を用いて、延伸と同時に異収縮混繊糸を製造する技術が開発された(例えば、特許文献1参照)。図8に、従来の異収縮混繊糸の製造装置の一例を示す。この装置100は、加熱ローラである第1ローラ101と、非加熱ローラである第2ローラ102と、第1ローラ101と第2ローラ102との間に配置されたヒータ103と、ヒータ103をバイパスするように設けられたガイド104と、合糸部105を備えている。
【0004】
上記装置で異収縮混繊糸を生産する際には、まず、未延伸糸(UDY)や中間配向糸(POY)等の原糸が巻かれた2つのパッケージPa,Pbを準備する。一方のパッケージPaの糸Yaは、第1ローラ101からヒータ103を経て第2ローラ102に至る糸道を走行するようにセットされる。糸Yaは、第1ローラ101で延伸可能な温度まで加熱された後、第1ローラ101と第2ローラ102との間で延伸されるが、その延伸の途中で、ヒータ103によって糸Yaに熱処理が行われる。これに対して他方のパッケージPbの糸Ybは、第1ローラ101からガイド104を経て第2ローラ102に至る糸道を走行するようにセットされる。糸Ybは、第1ローラ101によって延伸可能な温度まで加熱された後、第1ローラ101と第2ローラ102との間で延伸されるが、糸Yaとは異なり、糸Ybは延伸の際に熱処理は行われない。
【0005】
延伸後に熱処理が行われた糸Yaは、熱収縮率が低い低収縮糸となり、熱処理されない糸Ybは、熱収縮率が高い高収縮糸となる。これら2種類の糸Ya,Ybが、合糸部105において空気交絡等で合糸されることにより、異収縮混繊糸Yxが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57−193543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の混繊糸の製造では、予め、UDYやPOY等の原糸のパッケージを準備し、これらの原糸を使用して熱収縮率の異なる2種類の糸を生成している。つまり、原糸のパッケージを生産する工程と、それらのパッケージを使用して2種類の糸を生成し混繊する工程の、少なくとも2以上の工程を経て混繊糸を生産することになるため、手間もコストもかかるものとなっていた。
【0008】
本発明の目的は、紡糸から混繊糸の製造までを連続的に行うことが可能な、混繊糸製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
第1の発明の混繊糸製造装置は、紡糸装置から紡出された複数の糸を送る糸送りローラと、前記糸送りローラよりも糸送り速度が速いローラであって、前記糸送りローラから送られる前記複数の糸のうちの第1の糸が巻き掛けられ、前記糸送りローラとの間で延伸された前記第1の糸を加熱しつつ送る、第1延伸ローラと、前記糸送りローラよりも糸送り速度が速く、且つ、前記第1延伸ローラよりもローラ表面温度が低いローラであって、前記糸送りローラから送られる前記複数の糸のうちの第2の糸が巻き掛けられ、前記糸送りローラとの間で延伸された前記第2の糸を送る、第2延伸ローラと、前記第1延伸ローラから送られた前記第1の糸と前記第2延伸ローラから送られた前記第2の糸を合糸する合糸部と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の混繊糸製造装置は、紡糸装置2から紡出された複数の糸を送る糸送りローラと、糸送りローラよりも糸送り速度の速い2つの延伸ローラを有する。前記複数の糸のうち、第1の糸は、糸送りローラと第1延伸ローラとの間で延伸され、第2の糸は、糸送りローラと第2延伸ローラとの間で延伸される。ここで、第2延伸ローラは、第1延伸ローラよりもローラ表面温度が低い。つまり、第1延伸ローラによって延伸される第1の糸は、第2の糸と比べて、延伸後に高い温度で加熱されるため、延伸後の第1の糸と第2の糸との間では、熱収縮率等の物性が異なるものとなる。その後、第1の糸と第2の糸は合糸部で合糸されて混繊糸となる。
【0011】
本発明では、紡糸装置から紡出された複数の糸から、物性の異なる2種類の糸を生成し、さらに2種類の糸の合糸までを連続的に行う。つまり、紡糸から混繊糸の製造までを連続的に行うことができるため、従来と比べて手間やコストを大幅に減らすことが可能となる。
【0012】
第2の発明の混繊糸製造装置は、前記第1の発明において、前記第1延伸ローラは、その表面に巻き掛けられた前記第1の糸を加熱する加熱ローラであり、前記第2延伸ローラは、その表面に巻き掛けられた前記第2の糸を加熱しない非加熱ローラであることを特徴とするものである。
【0013】
本発明では、糸送りローラと第1延伸ローラとの間で延伸された第1の糸は、加熱ローラである第1延伸ローラにおいて加熱される。一方、糸送りローラと第2延伸ローラとの間で延伸された第2の糸は、非加熱ローラである第2延伸ローラに巻き掛けられるため、第2の糸は第2延伸ローラで加熱されない。
【0014】
第3の発明の混繊糸製造装置は、前記第1又は第2の発明において、前記第1延伸ローラの糸送り速度は、前記第2延伸ローラの糸送り速度よりも速いことを特徴とするものである。
【0015】
延伸後に第1延伸ローラで高い温度で加熱された第1の糸は、第2の糸と比べて剛直な糸になる。この剛直さの違いは、合糸部において2種類の糸が絡みにくくなる1つの要因となる。本発明では、第1延伸ローラの糸送り速度が、第2延伸ローラよりも速いため、合糸時の糸張力に差が生じ、第1の糸の張力が第2の糸と比べて低くなる。これにより、剛直な第1の糸が屈曲しやすくなり、合糸部において第1の糸と第2の糸とが絡みやすくなる。
【0016】
尚、合糸直前における第1の糸と第2の糸の合糸時の張力差はあまり大きすぎないことが好ましい。具体的には、第1延伸ローラの糸送り速度と第2延伸ローラの糸送り速度の速度差は、前記第1延伸ローラの糸送り速度の0.25%〜2.5%であることが好ましい(第4の発明)。
【0017】
第5の発明の混繊糸製造装置は、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記第1延伸ローラに対して、前記第1の糸が360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられ、前記第2延伸ローラに対して、前記第2の糸が360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられることを特徴とするものである。
【0018】
本発明では、第1の糸と第2の糸の、延伸ローラに対する巻き掛け角度が、共に360度未満である。即ち、糸は、各延伸ローラに対して1回以上巻き掛けられないため、各延伸ローラへの糸掛けが容易である。
【0019】
第6の発明の混繊糸製造装置は、前記第1〜第4の何れかの発明において、前記第1延伸ローラと前記第2延伸ローラは、共に、所定方向に沿って延びており、前記第1延伸ローラに巻き掛けられる前の前記第1の糸と、前記第2延伸ローラに巻き掛けられる前の前記第2の糸は、前記所定方向において並んだ状態で走行し、前記第1延伸ローラに対して、前記第1の糸が360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられ、前記第2延伸ローラには、セパレートローラが近接して配置され、前記第2の糸は、前記第2延伸ローラと前記セパレートローラとの間に、1回以上巻き掛けられることを特徴とするものである。
【0020】
第2延伸ローラは、第1延伸ローラと違って、糸を高い温度に加熱するものではないため、ローラの径を小さくすることができる。しかし、第2延伸ローラの径を小さくすると、第2の糸の接触長さが短くなってグリップ力が低下する。この点、本発明では、第2の糸は、第2延伸ローラとセパレートローラとの間に1回以上巻き掛けられる。そのため、第2延伸ローラに対する第2の糸の接触長さが長くなってグリップ力が高くなり、第2の糸がスリップしにくくなる。
【0021】
また、本発明では、第1の糸と第2の糸が、ローラ軸方向に沿った方向に並んでいる。第1の糸は、第1延伸ローラに対して360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられるため、第1延伸ローラの巻き掛けの前後で、第1の糸の糸道はずれにくい。一方、第2の糸は、第2延伸ローラとセパレートローラとの間に1回以上巻き掛けられるため、第2延伸ローラの巻き掛けの前後で、第2の糸の糸道がずれる。これにより、第1延伸ローラにより送られる第1の糸と、第2延伸ローラにより送られる第2の糸の糸道を、合糸部の直前で一致させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る紡糸引取装置の正面図である。
図2】保温ボックス、予熱ローラ、第1延伸ローラ、及び、第2延伸ローラの斜視図である。
図3】変更形態の紡糸引取装置の正面図である。
図4】別の変更形態の紡糸引取装置の正面図である。
図5】別の変更形態の混繊糸製造装置の正面図である。
図6】別の変更形態の紡糸引取装置の正面図である。
図7】別の変更形態の紡糸引取装置の正面図である。
図8】従来の混繊糸製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態に係る紡糸引取装置の正面図である。尚、図1の上下方向、及び、左右方向を、それぞれ紡糸引取装置の上下方向、及び、左右方向と定義する。また、図1の紙面垂直方向を、紡糸引取装置の前後方向と定義する。尚、図1の紙面手前側が前方である。図1に示すように、紡糸引取装置1は、混繊糸製造装置3、巻取装置4、制御装置5等を備えている。
【0024】
紡糸引取装置1の上方には、紡糸装置2の複数の紡糸口金7(7a,7b)が配置されている。尚、図1では、紡糸口金7が2つしか示されていないが、実際には、左右方向に沿って複数の紡糸口金7が並べて配置されている。複数の紡糸口金7からは、合成繊維(例えば、ポリエステル繊維)の糸Y(Y1,Y2)がそれぞれ紡出される。各紡糸口金7の下方には、紡出された糸Yに油剤を付与する油剤ガイド8が設置されている。
【0025】
混繊糸製造装置3は、油剤が付与された糸Yを引き取る複数のローラ10〜19を備えている。混繊糸製造装置3は、上記の複数のローラ10〜19で引き取る間に、糸Yに対して延伸や熱処理を行って物性の異なる2本の糸Y1,Y2をそれぞれ生成する。さらに、2本の糸Y1,Y2を合糸することによって1本の混繊糸Ymを製造する。混繊糸製造装置3の詳細構成については後述する。
【0026】
巻取装置4は、混繊糸製造装置3で製造された複数の混繊糸Ymをそれぞれ巻取るものである。巻取装置4は、ボビンホルダ21と、コンタクトローラ22等を備えている。ボビンホルダ21は、前後方向(図1の紙面垂直方向)に延びる長尺な形状を有し、図示しないモータによって回転駆動される。このボビンホルダ21には、その長手方向に沿って複数のボビン23が並べて装着される。巻取装置4は、ボビンホルダ21を回転させることによって、複数のボビン23に複数の混繊糸Ymをそれぞれ巻取り、複数のパッケージ24を形成する。コンタクトローラ22は、複数のパッケージ24の表面に接触して所定の接圧をそれぞれ付与することにより、各パッケージ24の形状を整える。
【0027】
制御装置5は、紡糸引取装置1の様々な動作の制御パラメータを設定するための、設定部25を有する。制御装置5は、オペレータによって設定部25から設定されたパラメータに基づいて、混繊糸製造装置3、及び、巻取装置4の各部をそれぞれ制御する。例えば、制御装置5は、混繊糸製造装置3のローラ10〜19を駆動するモータ(図示省略)の速度制御や、ローラ11〜15にそれぞれ設けられたヒータ30の温度制御等を行う。
【0028】
次に、混繊糸製造装置3の構成について詳細に説明する。図1に示すように、混繊糸製造装置3は、ローラ10、保温ボックス20、予熱ローラ11,12,13(本発明の糸送りローラ)、第1延伸ローラ14,15、第2延伸ローラ16、ローラ17,18,19、及び、交絡装置26を備えている。
【0029】
ローラ10〜19は、それぞれの軸方向が前後方向に沿った姿勢で配置されている。尚、ローラ10〜19の全てについて、軸方向が前後方向と平行である必要はなく、少なくとも一部のローラの軸方向が前後方向に対して、多少上下に傾いて配置されてもよい。また、ローラ18,19は、軸方向が左右方向に沿った姿勢で配置されてもよい。紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、ローラ10〜19によって送られることにより、前後に並んだ状態で走行する。
【0030】
ローラ10には、紡糸装置2の複数の紡糸口金7から紡出された複数(例えば8本)の糸Yが、ローラ10の軸方向(図1の紙面垂直方向)に並んだ状態で巻き掛けられる。ローラ10は、図示しないモータで駆動され、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yを引き取って保温ボックス20へ送る。
【0031】
図2は、保温ボックス20、予熱ローラ11〜13、第1延伸ローラ14,15、及び、第2延伸ローラ16の斜視図である。保温ボックス20は、断熱性材料で形成されている。この保温ボックス20の右壁部には、糸導入口20a、第1糸導出口20b、及び、第2糸導出口20cが形成されている。糸導入口20aは、保温ボックス20の右壁部の下端部に形成されている。第1糸導出口20bは、保温ボックス20の右壁部の上端部に形成され、第2糸導出口20cは右壁部の上下方向中央部に形成されている。
【0032】
ローラ10から送られた複数の糸Yは、糸導入口20aから保温ボックス20内に導入される。保温ボックス20内には、3つの予熱ローラ11〜13と2つの第1延伸ローラ14,15の、合計5つの加熱ローラが収容されている。3つの予熱ローラ11〜13は、保温ボックス20内の下側空間に配置され、2つの第1延伸ローラ14,15は、保温ボックス20内の上側空間に配置されている。
【0033】
5つの加熱ローラは、図示しないモータによってそれぞれ回転駆動される。3つの予熱ローラ11〜13の糸送り速度はそれぞれV1,V2,V3である。尚、糸Yの弛みを防止するために、3つの予熱ローラ11〜13の糸送り速度の関係はV1<V2<V3となっており、3つの予熱ローラ11〜13の間で、糸Yの走行速度を徐々に上げている。一方、2つの第1延伸ローラ14,15の糸送り速度はそれぞれV4,V5であり、V4とV5はほぼ等しい。また、2つの第1延伸ローラ14,15の糸送り速度V4,V5は、3つの予熱ローラ11〜13の糸送り速度V1〜V3よりも速い。
【0034】
5つの加熱ローラ(3つの予熱ローラ11〜13と2つの第1延伸ローラ14,15)は、それぞれ内部にヒータ30を備えている。各加熱ローラに巻き掛けられた糸Yは、ヒータ30によって所定温度に維持されたローラ表面において加熱される。3つの予熱ローラ11〜13は、糸Yを延伸可能な温度まで加熱するための加熱ローラである。3つの予熱ローラ11,12,13のローラ表面温度はそれぞれT1,T2,T3である。まず、予熱ローラ13のローラ表面温度T3は、ガラス転移温度以上の温度(例えば、ポリエステル繊維の場合は80〜95℃)に設定される。また、短時間で効率的に糸Yの温度をガラス転移温度まで上昇させるため、3つの予熱ローラ11〜13の温度の関係は、T1>T2>T3となっている。尚、隣接する2つの予熱ローラ間の温度差は、例えば、5℃程度である。
【0035】
一方、2つの第1延伸ローラ14,15は、糸Yを延伸した後に加熱してその状態を固定するための加熱ローラである。以下、延伸後の糸に対して行う熱処理のことを「熱セット」とも呼ぶ。2つの第1延伸ローラ14,15のローラ表面温度はそれぞれT4,T5である。T4とT5は等しくてもよいが、異なってもよい。また、T4,T5は、T3よりも高い温度(例えば、120〜150℃)に設定される。
【0036】
第2延伸ローラ16は、保温ボックス20の外側の、第2糸導出口20cの右側の位置に配置されている。この第2延伸ローラ16も図示しないローラで駆動され、第2延伸ローラ16の糸送り速度V6は、予熱ローラ11〜13の糸送り速度V1〜V3よりも速い。尚、本実施形態では、第1延伸ローラ14,15の糸送り速度V4,V5は、第2延伸ローラ16の糸送り速度V6よりも速く設定される。その理由は後で説明する。
【0037】
また、第2延伸ローラ16は、ヒータを備えていない。つまり、第2延伸ローラ16は、その表面に巻き掛けられた糸を加熱しない非加熱ローラである。従って、第2延伸ローラ16のローラ表面温度T6は、周囲の環境温度とほぼ等しく(例えば、40℃)、2つの第1延伸ローラ14,15のローラ表面温度T4,T5よりもかなり低くなっている。
【0038】
紡糸装置2から紡出されてローラ10で引き取られた複数の糸Yは、糸導入口20aから保温ボックス20内に導入され、3つの予熱ローラ11〜13に順に巻き掛けられる。その後、複数の糸Yは、保温ボックス20内で二手に分かれて、2つの糸導出口20b,20cからそれぞれ導出される。
【0039】
まず、複数の糸Yのうち、図1の左側の紡糸口金7aから紡出される糸Y1(本発明の第1の糸)について説明する。糸導入口20aから保温ボックス20内に導入された糸Y1は、まず、3つの予熱ローラ11〜13の前側部分にそれぞれ巻き掛けられ、下側3つの予熱ローラ11〜13によって延伸可能な温度まで予熱される、さらに、予熱された糸Y1は、上側の2つの第1延伸ローラ14,15に巻き掛けられる。このとき、糸Y1は、予熱ローラ13と第1延伸ローラ14の間の糸送り速度差によって延伸される。また、糸Y1は、上側2つの第1延伸ローラ14,15によって送られる間にさらに高い温度まで加熱されて、延伸された状態が熱セットされる。熱セットされた糸Y1は、第1糸導出口20bから保温ボックス20の外へ導出される。
【0040】
次に、図1の右側の紡糸口金7bから紡出された糸Y2(本発明の第2の糸)について説明する。糸導入口20aから保温ボックス20内に導入された糸Y2は、3つの予熱ローラ11〜13の後側部分にそれぞれ巻き掛けられ、これら予熱ローラ11〜13によって延伸可能な温度まで予熱される、ここまでは、糸Y1と同じであるが、糸Y2は、上側2つの第1延伸ローラ14,15には巻き掛けられずに、第2糸導出口20cから保温ボックス20の外へ導出される。
【0041】
第2糸導出口20cから導出された糸Y2は、第2延伸ローラ16に巻き掛けられる。このとき、糸Y2は、予熱ローラ13と第2延伸ローラ16の間の糸送り速度差によって延伸される。但し、第2延伸ローラ16は、ヒータを備えていない非加熱ローラである。従って、予熱ローラ13と第2延伸ローラ16との間で延伸された糸Y2は、糸Y1とは違って、延伸後に熱セットされない。これにより、2本の糸Y1,Y2は、熱収縮率等の物性が互いに異なるものとなる。
【0042】
熱収縮率に関して言えば、延伸後に熱セットがされない糸Y2は、熱セットされる糸Y1と比べて、熱収縮率が高くなる。即ち、熱セットされた糸Y1が、熱収縮率が低い低収縮糸となり、熱セットされない糸Y2が、熱収縮率が高い高収縮糸となる。糸Y1の熱収縮率(沸水収縮率)は、例えば、5〜10%であり、糸Y2の熱収縮率は、例えば、10〜20%である。
【0043】
尚、本実施形態では、図1図2に示すように、前側の糸Y1は、3つの予熱ローラ11〜13と2つの第1延伸ローラ14,15のそれぞれに対して、360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられている。また、後側の糸Y2も、3つの予熱ローラ11〜13と第2延伸ローラ16のそれぞれに対して、360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられている。即ち、糸Y1,Y2は、各ローラに対して1回以上巻き掛けられないため、糸掛けが容易になる。尚、本実施形態では、図2に示すように、糸Y2が後側、糸Y1が前側を走行していることから、糸Y2の糸掛けを先に行ってから、その後に、糸Y1の糸掛けを行う。また、糸Y1が後側、糸Y2が前側を走行してもよく、その場合は、糸Y1の糸掛けを先に行う。
【0044】
但し、各ローラへの巻き掛け角度が360度未満であると、各ローラへの巻き掛けの前後で糸Y1,Y2の糸道がずれないため、糸Y1と糸Y2が前後に並んだ状態で走行することになる。そこで、第2延伸ローラ16のローラ軸方向を前後方向に対して少し傾けるなどして糸Y2の糸道をずらすようにすれば、糸Y1と糸Y2の糸道を無理なく合わせることができる。
【0045】
図1に示すように、保温ボックス20の第1糸導出口20bから導出された糸Y1と、第2糸導出口20cから導出されて第2延伸ローラ16から送られる糸Y2は、共に、ローラ17,18に巻き掛けられる。
【0046】
ローラ18の糸走行方向下流側には、2種類の糸Y1,Y2を交絡させる交絡装置26(本発明の合糸部)が配置されている。交絡装置26は、特定の構成のものに限定されるものではないが、例えば、糸Yの走行方向と直交する方向から空気流を噴射して、多数のフィラメントを互いに絡ませる、インターレースノズルを有する構成を採用できる。例えば、図2に示すように、糸Y1と糸Y2の本数がそれぞれ4本である場合には、交絡装置26は4個のインターレースノズルを備える。各インターレースノズルには1本の糸Y1と1本の糸Y2が挿入され、各ノズルにおいて2本の糸Y1,Y2を構成するフィラメントが空気流の作用で交絡する。これにより、交絡装置26によって4本の混繊糸Ymが生成される。交絡装置26で生成された複数の混繊糸Ymはローラ19によって巻取装置4へ送られ、巻取装置4において複数のボビン23にそれぞれ巻取られる。
【0047】
尚、以上の説明において、予熱ローラ11〜13、第1延伸ローラ14,15、第2延伸ローラ16を含む、各種ローラの糸送り速度の設定、及び、5つの加熱ローラ11〜15に設けられたヒータ30の温度設定は、オペレータによる設定部25の操作によって行われる。制御装置5は、設定部25で設定された、糸送り速度の設定値、及び、温度設定値に基づき、各ローラを駆動するモータの回転速度や、ヒータ30の加熱温度を制御する。
【0048】
本実施形態では、紡糸装置2から紡出された複数の糸Yのうち、糸Y1については延伸後に熱セットし、糸Y2については延伸後に熱セットしないようにして、物性の異なる2種類の糸Y1,Y2を生成する。さらに2種類の糸Y1,Y2の合糸までを連続的に行う。つまり、紡糸から混繊糸Ymの製造までを連続的に行うことができるため、従来と比べて手間やコストを大幅に減らすことが可能となる。
【0049】
尚、糸Y2が巻き掛けられる第2延伸ローラ16は、糸を加熱して熱セットを行うローラではないため、糸Y2の接触長さをそれほど長くする必要はない。つまり、第2延伸ローラ16は、糸Y2がスリップしない程度のグリップ力が得られる程度の大きさのローラでよく、第1延伸ローラ14,15よりも径の小さいローラとすることができる。本実施形態の紡糸引取装置1は、既存の設備と比較して、第2延伸ローラ16が追加で設置された構成であるが、第2延伸ローラ16の径を小さくできる分、設備がそれほど大型化しない。
【0050】
高い温度で熱セットされた糸Y1は、熱セットされない糸Y2と比べて剛直な糸になる。この剛直さの違いは、交絡装置26において2種類の糸Y1,Y2が絡みにくくなる1つの要因となる。この点、本実施形態では、第1延伸ローラ14,15の糸送り速度V4,V5が、第2延伸ローラ16の糸送り速度V6よりも速いため、合糸時の糸張力に差が生じ、糸Y1の張力が糸Y2と比べて低くなる。これにより、剛直な糸Y1が屈曲しやすくなり、交絡装置26において2種類の糸Y1と糸Y2が絡みやすくなる。但し、合糸時の2種類の糸Y1,Y2の糸張力差はあまり大きすぎないことが好ましい。そこで、第1延伸ローラ14,15と第2延伸ローラ16の速度差は、第1延伸ローラ14,15の糸送り速度V4,V5の0.25%〜2.5%であることが好ましい。
【0051】
尚、本実施形態の紡糸引取装置は、2種類の糸Y1,Y2を生成して合糸する、混繊糸Ymの製造だけでなく、同じ種類の糸のみを製造する装置としても使用することができる。例えば、紡糸装置2の複数の紡糸口金7から紡出された複数の糸Yの全てを、2つの第1延伸ローラ14,15に巻き掛け、第2延伸ローラ16には糸Yを巻き掛けないようにしてもよい。これにより、複数の糸Yの全てについて、延伸後に熱セットを行って、熱収縮率の低い糸のみを生産することができる。また、上記とは逆に、複数の紡糸口金7から紡出された複数の糸Yの全てを第2延伸ローラ16に巻き掛けて、複数の糸Yの全てについて、延伸後に熱セットを行わないようにして、熱収縮率の高い糸のみを生産することができる。
【0052】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0053】
1]低収縮糸である糸Y1と高収縮糸である糸Y2との間で、糸の太さ(フィラメントの太さやフィラメントの数)を異ならせてもよい。巻き取られた混繊糸Ymに対して、後工程で熱処理が行われたときに、低収縮糸である糸Y1は外側に位置して鞘糸となり、高収縮糸である糸Y2は内側に位置して芯糸となる。そこで、例えば、鞘糸となる糸Y1を細い糸とし、芯糸となる糸Y2を太い糸とすれば、ハリやコシが強く、且つ、柔らかな手触りの糸となり、風合いの面でも好ましい。尚、糸Y1と糸Y2の太さを変えるには、それぞれの糸を紡出する紡糸口金7の構成(フィラメントを紡出する孔の大きさ、あるいは、孔の数)、あるいは、ポリマーの吐出量を異ならせればよい。
【0054】
2]前記実施形態では、糸Y2が巻き掛けられる第2延伸ローラ16は、ヒータを備えていない非加熱ローラであったが、図3に示すように、第2延伸ローラ16がヒータ31を備えた加熱ローラであってもよい。この場合、制御装置5は、第2延伸ローラ16のローラ表面温度が、第1延伸ローラ14,15のローラ表面温度よりも低くなるように、ヒータ31を制御することで、熱収縮率の異なる2種類の糸Y1,Y2を生成できる。また、制御装置5が、生産する糸の種類に応じて、第2延伸ローラ16のヒータ31のON/OFFを切り換えてもよい。
【0055】
3]図4に示すように、第2延伸ローラ16に、セパレートローラ33が近接して配置され、糸Y2は、第2延伸ローラ16とセパレートローラ33との間に、1回以上巻き掛けられてもよい。
【0056】
先の実施形態中でも説明したが、第2延伸ローラ16は、延伸後の糸Y1を熱セットする第1延伸ローラ14,15と比べて径を小さくすることができる。しかし、第2延伸ローラ16の径が小さいと、糸Y2の接触長さが短くなってグリップ力が低下する。この点、図4のように、糸Y2が第2延伸ローラ16とセパレートローラ33との間に1回以上巻き掛けられていると、第2延伸ローラ16に対する糸Y2の接触長さが長くなってグリップ力が高くなり、糸Y2がスリップしにくくなる。尚、グリップ力を高めることが主目的であるため、糸Y2の巻き掛け回数はそれほど多くする必要はなく、1回か2回で十分である。
【0057】
また、前記実施形態でも説明したように、第1延伸ローラ14,15に巻き掛けられる前の糸Y1と、第2延伸ローラ16に巻き掛けられる前の糸Y2は、前後方向に並んだ状態で走行する(図2参照)。前側の糸Y1は、第1延伸ローラ14,15に対して360度未満の巻き掛け角度で巻き掛けられるため、第1延伸ローラ14,15の巻き掛けの前後で、糸Y1の糸道はずれない。一方、後側の糸Y2については、第2延伸ローラ16とセパレートローラ33との間に1回以上巻き掛けられることで、第2延伸ローラ16の巻き掛け後の糸Y2の糸道が、巻き掛け前の糸道に対して前方にずれる。これにより、第1延伸ローラ14,15により送られる糸Y1と、第2延伸ローラ16により送られる糸Y2の糸道とを、交絡装置26での合糸の前に一致させることが可能となる。
【0058】
より詳細には、糸Y2を、第2延伸ローラ16とセパレートローラ33に1回巻き掛けることで、糸Y1と糸Y2の糸道を一致させることができる。糸Y2の巻き掛け回数が2回になると、糸Y2の糸道が糸Y1に対して逆方向にずれるが、まだそのズレ量は小さいため、糸Y1と糸道を合わせることはそう困難ではない。但し、糸Y2の巻き掛け回数がそれ以上になると、糸Y1との糸道のズレがさらに大きくなって糸道合わせが難しくなっていく。従って、糸Y2の巻き掛け回数を1回又は2回とすれば、糸Y1と糸Y2の糸道を合わせることが容易になる。逆に言えば、糸Y2の巻き掛け回数を1回又は2回とし、その回数で必要以上のグリップ力が得られるように、第2延伸ローラ16の径を決定することもできる。尚、図4の形態では、先に後側の糸Y2の糸掛けを行い、第2延伸ローラ16とセパレートローラ33においては、糸Y2を後側から前側へ1回又は2回巻き掛ける。その後、前側の糸Y1の糸掛けを行う。
【0059】
4]前記実施形態では、紡糸装置2から紡出された複数の糸Y(糸Y1と糸Y2の両方)を送る糸送りローラ(予熱ローラ11〜13)が加熱ローラであったが、この糸送りローラが非加熱ローラであってもよい。例えば、繊維材料がナイロンである場合は、ガラス転移温度が低い(40〜50℃程度)ため、延伸前の予熱が不要であることが多い。そのような場合には、前記糸送りローラを非加熱ローラとすることができる。
【0060】
5]各種ローラの個数やレイアウト等についても適宜変更が可能である。
(1)図5(a)に示すように、第2延伸ローラ16が、ローラ17よりも右側に配置されていてもよい。これにより、第2延伸ローラ16への糸Y2の巻き掛け角度が大きくなり、グリップ力が上昇する。また、例えば、図1では、第2延伸ローラ16は、紡糸口金7からローラ10までの糸道と、ローラ17とローラ18の間の糸道との間のスペースに設置されている。しかし、実際には上記のスペースは狭く、それゆえ、糸掛け作業がやりにくくなり慎重な作業が求められる。これに対して、図5(a)では、第2延伸ローラ16は、ローラ17とローラ18の間の糸道よりも右側のスペースに配置されているため、上記のような問題が生じない。
【0061】
また、図5(b)に示すように、第2延伸ローラ16によって送られた糸Y2が、ローラ17に巻き掛けられずに、直接ローラ18に送られてもよい。また、図5(c)に示すように、糸Y2が、ローラ17に巻き掛けられずに直接ローラ18に送られる構成は、図5(b)と同じとした上で、糸Y2が、第2延伸ローラ16とセパレートローラ33との間に1回以上巻き掛けられてもよい。
【0062】
(2)図6の紡糸引取装置61は、保温ボックス40に収容された2つの予熱ローラ41,42及び2つの第1延伸ローラ43,44と、保温ボックス40の外側に配置された第2延伸ローラ45とを備えている。
【0063】
2つの予熱ローラ41,42は保温ボックス40内の上側空間に配置され、2つの第1延伸ローラ43,44は保温ボックス40内の下側空間に配置されている。これら4つのローラ41〜44は、それぞれヒータ50を備えた加熱ローラである。一方、第2延伸ローラ45はヒータを備えていない非加熱ローラであり、保温ボックス40の下方に配置されている。
【0064】
制御装置5は、保温ボックス40内の2つの予熱ローラ41,42と2つの第1延伸ローラ43,44のそれぞれについて、モータ(図示省略)及びヒータ50をそれぞれ制御する。2つの第1延伸ローラ43,44の糸送り速度V3,V4は、2つの予熱ローラ41,42の糸送り速度V1,V2よりも速く設定される。また、2つの第1延伸ローラ43,44のローラ表面温度T3,T4は、2つの予熱ローラ41,42のローラ表面温度T1,T2よりも高く設定される。
【0065】
さらに、制御装置5は、第2延伸ローラ45のモータを制御する。第2延伸ローラ45の糸送り速度V5は、2つの予熱ローラ41,42の糸送り速度V1,V2よりも速く設定される。尚、第2延伸ローラ45は非加熱ローラであることから、第2延伸ローラ45のローラ表面温度T5は、2つの第1延伸ローラ43,44のローラ表面温度T3,T4よりも低い。
【0066】
紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、糸導入口40aから保温ボックス40内に導入される。複数の糸Yのうちの糸Y1は、まず、2つの予熱ローラ41,42に巻き掛けられ、2つの予熱ローラ41,42によって送られる間に延伸可能な温度まで予熱される。次に、糸Y1は2つの第1延伸ローラ43,44に巻き掛けられる。糸Y1は、糸送り速度が異なるローラ42,43の間で延伸され、さらに、2つの第1延伸ローラ43,44によって高い温度に加熱されて熱セットされる。その後、糸Y1は、第1糸導出口40bから保温ボックス40の外側に導出されて、ローラ47に巻き掛けられる。
【0067】
一方、複数の糸のうちの糸Y2も、2つの予熱ローラ41,42に巻き掛けられ、2つの予熱ローラ41,42によって送られる間に延伸可能な温度まで予熱される。次に、糸Y2は、第2糸導出口40cから保温ボックス40の外側に導出され、第2延伸ローラ45に巻き掛けられる。糸Y2は、糸送り速度が異なるローラ42,45の間で延伸される。但し、第2延伸ローラ45は非加熱ローラであるため、糸Y2は延伸後に熱セットされない。その後、糸Y2は、ローラ46,47によって送られて、ローラ47,48の間に配置された交絡装置49で糸Y1と合糸される。合糸によって生成された混繊糸Ymは巻取装置4で巻き取られる。
【0068】
(3)上記図6の構成において、先の図4と同様の変更を行ってもよい。即ち、図7に示すように、第2延伸ローラ45にセパレートローラ51が近接して配置され、糸Y2は、第2延伸ローラ45とセパレートローラ51との間に、1回以上巻き掛けられてもよい。尚、第2延伸ローラ45に糸Y2が1回以上巻き掛けられる図7の構成では、図6のローラ46は省略できる。
【符号の説明】
【0069】
1 紡糸引取装置
2 紡糸装置
3 混繊糸製造装置
11,12,13 予熱ローラ
14,15 第1延伸ローラ
16 第2延伸ローラ
26 交絡装置
33 セパレートローラ
41,42 予熱ローラ
43,44 第1延伸ローラ
45 第2延伸ローラ
49 交絡装置
51 セパレートローラ
61 紡糸引取装置
Y 糸
Y1 糸
Y2 糸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8