【実施例】
【0010】
以下、本発明の一実施例によるヘルメットについて説明する。
【0011】
図1は本実施例によるヘルメットの内側を側方から見た斜視図、
図2は同ヘルメットの内側を前方から見た斜視図、
図3は同ヘルメットに装着されるヘッドバンド係止部及びヘッドバンド調節具の斜視図、
図4は同ヘルメットに装着される前側バンド部の(a)背面図及び(b)正面図、
図5は同前側バンド部を取り付けたヘルメットの内側の状態を後方から見た一部拡大図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、ヘルメット10は、硬質の帽体11の内面に、使用者の頭部を包囲するヘッドバンド20、ヘッドバンド20を係止するヘッドバンド係止部30、衝撃吸収ライナ40、顎紐を保持する顎紐保持部50、及びヘッドバンド調節具60を有する。
ヘルメット10は、帽体11の外面に、照明器具等の外装部材の取付ベルトを掛止する外装部材掛止部70を有する。外装部材掛止部70は、帽体11の前方側の左右二箇所と後方側の中央一箇所の、計3箇所に設けられている。また、帽体11に通風口80となる複数の開口が形成されている。帽体11の前方側の左右二箇所に設けられた外装部材係止部70は、それぞれ通風口80の一部を覆うように配置されている。
【0013】
帽体11は、使用者の前頭部から頭頂部付近にかけて配置される前方帽体11Aと、使用者の後頭部に配置される後方帽体11Bとからなる。前方帽体11Aと後方帽体11Bは、前方帽体11Aの後方側内面に後方帽体11Bの前方側外面が接するように接合されている。帽体11を二分割することで、前方と後方とで形状を異ならせることが容易となる。本実施例では、前方帽体11Aの形状を流線形として空気抵抗を軽減するとともに、後方帽体11Bの形状を丸みを帯びた形として後頭部を広く覆って安全性を高めている。
【0014】
ヘッドバンド20は、使用者の前頭部から側頭部にかけて包囲する固定長の前側バンド部21と、使用者の後頭部から側頭部にかけて包囲する固定長の後側バンド部22とからなる。前側バンド部21及び後側バンド部22は、それぞれ一本の帯状であり、弧状に取り付けられる。また、中央部には通気及び軽量化のための複数の開口21A、22Aが形成されている。
【0015】
図1から
図4に示すように、前側バンド部21は、一方の端部に略円形の開口である第1孔部23Aを有し、他方の端部に略円形の開口である第2孔部23Bを有する。
後側バンド部22は、一方の端部に略円形の開口である第3孔部24Aを有し、他方の端部に略円形の開口である第4孔部(図示無し)を有する。
【0016】
ヘッドバンド係止部30とヘッドバンド調節具60とは一体的に設けられている。なお、ヘッドバンド係止部30とヘッドバンド調節具60を別々に設けてもよい。ヘッドバンド係止部30及びヘッドバンド調節具60は、帽体11の内面の左右側部に一対で配置される。
ヘッドバンド調節具60は、本体部90、使用者がヘッドバンド調節具60の操作に用いる操作部110、及び歯面を有するレール部120を備え、帽体11の内面の側部に固定されている。
【0017】
図3及び
図5に示すように、ヘッドバンド係止部30は、帽体11の内側の一方の側面に配置された第1バンド係止部31A及び第3バンド係止部32Aと、帽体11の内側の他方の側面に配置された第2バンド係止部31B及び第4バンド係止部32Bを備える。
第1バンド係止部31A及び第2バンド係止部31Bは、本体部90の一方の側部の上端から延出して設けられている。第3バンド係止部32A及び第4バンド係止部32Bは、本体部90に配置されている。第3バンド係止部32A及び第4バンド係止部32Bは、第1バンド係止部31A及び第2バンド係止部31Bよりも帽体11の開口端側に配置されている。
【0018】
第1バンド係止部31Aは略円柱状の突起である第1突起部34Aを有し、第2バンド係止部31Bは略円柱状の突起である第2突起部34Bを有する。
第1突起部34A、第2突起部34Bの直径は、それぞれ第1孔部23A、第2孔部23Bの直径よりも小さい。第1突起部34Aと第1孔部23Aとが嵌着されることによって、前側バンド部21の一方の端部が第1バンド係止部31Aに係止される。第2突起部34Bと第2孔部23Bとが嵌着されることによって、前側バンド部21の他方の端部が第2バンド係止部31Bに係止される。第1孔部23Aの内周面と第1突起部34Aの外周面との間、及び第2孔部23Bの内周面と第2突起部34Bの外周面との間には回動可能なように隙間が設けられている。このようにして、前側バンド部21が帽体11に対して回動可能に取り付けられている。
なお、第1突起部34A及び第2突起部34Bを略円柱状の突起とし、第1孔部23A及び第2孔部23Bを略円形の開口としたことで、前側バンド部21を滑らかに回動させることができる。
また、第1突起部34Aには、外周面から外側に延出した第1突起壁部34Aa、34Abが180度異なる位置に対称に設けられている。第1孔部23Aには、内周面から内側に延出した細長の第1孔壁部23Aa、23Abが互いの側面が対向するように設けられている。第1突起部34Aと第1孔部23Aとが嵌着されたときに、第1突起壁部34Aa、34Abに第1孔壁部23Aa、23Abが接することで、第1突起部34Aから第1孔部23Aが外れることが防止される。
同様に、第2突起部34Bには、外周面から外側に延出した第2突起壁部34Ba、34Bbが180度異なる位置に対称に設けられている。第2孔部23Bには、内周面から内側に延出した細長の第2孔壁部23Ba、23Bbが互いの側面が対向するように設けられている。第2突起部34Bと第2孔部23Bとが嵌着されたときに、第2突起壁部34Ba、34Bbに第2孔壁部23Ba、23Bbが接することで、第2突起部34Bから第2孔部23Bが外れることが防止される。
【0019】
第3バンド係止部32Aは略円環状の突起である第3突起部35Aを有し、第4バンド係止部32Bは略円環状の突起である第4突起部35Bを有する。
第3突起部35A、第3突起部35Bの直径は、それぞれ第3孔部24A、第4孔部の直径よりも小さい。第3突起部35Aと第3孔部24Aが嵌着されることによって、後側バンド部22の一方の端部が第3バンド係止部32Aに係止される。第4突起部35Bと第4孔部とが嵌着されることによって、後側バンド部22の他方の端部が第4バンド係止部32Bに係止される。第3孔部24Aの内周面と第3突起部35Aの外周面との間、及び第4孔部の内周面と第4突起部35Bの外周面との間には回動可能なように隙間が設けられている。このようにして、後側バンド部22が帽体11に対して回動可能に取り付けられている。
なお、第3突起部35A及び第4突起部35Bを略円環状の突起とし、第3孔部24A及び第4孔部を略円形の開口としたことで、後側バンド部22を滑らかに回動させることができる。
また、第3突起部35Aには、外周面から外側に延出した第3突起壁部35Aa、35Abが180度異なる位置に対称に設けられている。第3孔部24Aには、内周面から内側に延出した細長の第3孔壁部24Aa、24Abが互いの側面が対向するように設けられている。第3突起部35Aと第3孔部24Aとが嵌着されたときに、第3突起壁部35Aa、35Abに第3孔壁部24Aa、24Abが接することで、第3突起部35Aから第3孔部24Aが外れることが防止される。
同様に、第4突起部35Bには、外周面から外側に延出した第4突起壁部35Ba、35Bbが180度異なる位置に対称に設けられている。第4孔部には、内周面から内側に延出した細長の第4孔壁部(図示無し)が互いの側面が対向するように設けられている。第4突起部35Bと第4孔部とが嵌着されたときに、第4突起壁部35Ba、35Bbに第4孔壁部が接することで、第4突起部35Bから第4孔部が外れることが防止される。
【0020】
図5(a)は前側バンド部21が水平の状態を示し、
図5(b)は前側バンド部21が上方に回動した状態を示す。なお、後側バンド部22は省略している。
例えば使用者の額に照明器具等の機材を配置しようとする場合は、前側バンド部21が通常の使用位置(
図5(a)に示す水平の状態)にあると、前側バンド部21と機材が干渉するため機材を配置することが困難である。しかし、本実施例において前側バンド部21は回動可能に取り付けられているので、前側バンド部21を上方に回動させて
図5(b)に示す位置に変更することによって、前側バンド21が通常位置する領域を空けて機材の配置箇所を確保できる。
また、前側バンド21の回動角度と後側バンド22の回動角度を別々に調節できるので、ヘルメット10を頭部にしっかりと固定することができる。例えばヘルメット10を後ろ下がり又は前下がりに被るときなどヘルメット10の着帽角度に合わせて後側バンド22を下方又は上方に回動させる場合は、前側バンド21を後側バンド22との平行を保つように回動させることで、ヘルメット10を頭部にしっかりと固定することができる。あるいは、着帽角度が変わっても常に前側バンド21が水平となるように回動角度を調節してもよい。
【0021】
前側バンド部21は、前側角度保持部によって所定の回動角度で保持される。
図3及び
図4に示すように、前側角度保持部は、前側バンド部21の一方の端部に設けられた第1バンド保持部25と、前側バンド部21の他方の端部に設けられた第2バンド保持部26と、第1バンド係止部31Aに設けられた第3バンド保持部27と、第2バンド係止部31Bに設けられた第4バンド保持部(図示無し)とからなる。
第1バンド保持部25は複数の円形の第1の凹部25Aからなり、前側バンド部21の一方の端部の背面(第1バンド係止部31Aと対向する面)側に配置される。第2バンド保持部26は複数の円形の第2の凹部26Aからなり、前側バンド部21の他方の端部の背面(第2バンド係止部31Bと対向する面)側に配置される。第3バンド保持部27は複数の円形の第1の凸部27Aからなり、第1バンド係止部31Aの表面(前側バンド部21の一方の端部と対向する面)側に配置される。第4バンド保持部は複数の円形の第2の凸部(図示無し)からなり、第2バンド係止部31Bの表面(前側バンド部21の他方の端部と対向する面)側に配置される。
前側バンド部21を回動させて第1の凹部25Aと第1の凸部27A、及び第2の凹部26Aと第2の凸部が重なると、第1の凹部25Aと第1の凸部27Aとが嵌合し、第2の凹部26Aと第2の凸部が嵌合して前側バンド部21をその回動角度で保持することができる。回動角度を変更するときは、回動方向に力を加えることで第1の凹部25Aと第1の凸部27A、及び第2の凹部26Aと第2の凸部との嵌合が解除される。
【0022】
後側バンド部22は、後側角度保持部によって所定の回動角度で保持される。
図3及び
図5に示すように、後側角度保持部は、後側バンド部22の一方の端部に設けられた第5バンド保持部(図示無し)と、後側バンド部22の他方の端部に設けられた第6バンド保持部(図示無し)と、第3バンド係止部32Aに設けられた第7バンド保持部36と、第4バンド係止部32Bに設けられた第8バンド保持部37とからなる。
第5バンド保持部は複数の第3の凹部(図示無し)からなり、後側バンド部22の一方の端部の背面(第3バンド係止部32Aと対向する面)側に配置される。第6バンド保持部は複数の第4の凹部(図示無し)からなり、後側バンド部22の他方の端部の背面(第4バンド係止部32Bと対向する面)側に配置される。第7バンド保持部36は第3突起部35Aの外周面に設けられた複数の第3の凸部(歯面)36Aからなり、第3バンド係止部32Aの表面(後側バンド部22の一方の端部と対向する面)側に配置される。第8バンド保持部37は第4突起部35Bの外周面に設けられた複数の第4の凸部(歯面)37Aからなり、第4バンド係止部32Bの表面(後側バンド部22の他方の端部と対向する面)側に配置される。
後側バンド部22を回動させて第5バンド保持部の第3の凹部と第3の凸部36A、及び第6バンド保持部の第4の凹部と第4の凸部37Aが重なると、第5バンド保持部の第3の凹部と第3の凸部36Aとが嵌合し、第6バンド保持部の第4の凹部と第4の凸部37Aが嵌合して後側バンド部22をその回動角度で保持することができる。回動角度を変更するときは、回動方向に力を加えることで第5バンド保持部の第3の凹部と第3の凸部36A、及び第6バンド保持部の第4の凹部と第4の凸部37Aとの嵌合が解除される。
なお、後側角度保持部の構成と前側角度保持部の構成とを同じにしてもよい。
【0023】
図6は本実施例による顎紐を取り付けたヘルメットの内側の状態を示す図である。なお、顎紐の一部等を省略している。
顎紐12を保持する顎紐保持部50は、帽体11の内側の一方の側面と他方の側面に一対で配置される前側顎紐保持部51と、後面中央に配置される後側顎紐保持部52とを備える。前側顎紐保持部51及び後側顎紐保持部52は、帽体11の開口端近傍に設けられており、衝撃吸収ライナ40に覆われていない。
前側顎紐保持部51には顎紐12の端部が接続され、後側顎紐保持部52には顎紐12の中間部が通されている。
【0024】
図7は本実施例による顎紐を取り付けたヘルメットの内側の状態を示す一部拡大図、
図8は本実施例による顎紐を取り外したヘルメットの内側の状態を示す一部拡大図である(衝撃吸収ライナ等は省略している)。
前側顎紐保持部51は、帽体11に固定された第1固定保持部53と、第1固定保持部53に脱着可能に係止される第1自由保持部54とからなる。
帽体11の前方側の外面に設けられた外装部材係止部70の下方の帽体11には貫通孔14(
図5参照)が形成されており、第1固定保持部53は、その貫通孔14を介して帽体11の前方側に設けられた外装部材係止部70に固定されている。
第1固定保持部53は略円形であり、中央に円筒状の固定円筒部53Aが設けられ、その周囲に凹部53Bが形成されている。固定円筒部53Aの中央にはネジ孔が設けられており、ネジ孔に螺入されたネジ55が帽体11に形成された貫通孔14を通って、第1固定保持部53と帽体11の前方側の外面に設けられた外装部材係止部70とをネジ止めする。このように、第1固定保持部53を帽体11に直接固定するのではなく、帽体11の外面に設けられた外装部材掛止部70に固定することで、帽体11の厚みを厚くしたり別部材を設けたりする必要が無い。
【0025】
図9は本実施例による第1固定保持部の斜視図である。
第1固定保持部53の凹部53Bは、略円形のリング部53Baと、第1自由保持部54との対向面側にリング部53Baの内周に沿って設けられた鍔部53Bbと、鍔部53Bbの一部を切欠いて形成された切欠部53Bdとを備える。また、第1回転阻害部として、リング部53Baの外周の一部に径方向外側に突出したリング突起部53Bcが設けられている。
鍔部53Bbは略円形であり、リング部53Baの厚みよりも薄い。鍔部53Bbの内周と固定円筒部53Aの外周との間に略円形の円形孔部53Beが形成される。
切欠部53Bdは、鍔部53Bbの二箇所に形成され、一方の切欠部53Bdと他方の切欠部53Bdとは180度離れて位置する。切欠部53Bdは、帽体11に第1固定保持部53が固定された状態において、
図8に示すように、上方側(頭頂部側)と下方側(反頭頂部側)に位置している。切欠部53Bdの幅は、固定円筒部53Aの直径とほぼ等しい。
リング突起部53Bcは、円形孔部53Be及び切欠部53Bdを挟んで二箇所に設けられている。一方のリング突起部53Bcと他方のリング突起部53Bcは、帽体11に第1固定保持部53が固定された状態において、上方側(頭頂部側)の斜め左右にそれぞれ位置している。リング突起部53Bcは山形であり、先端に向かうにつれて幅が狭くなるように両側が傾斜している。
【0026】
図10は本実施例による第1自由保持部の斜視図である。
第1自由保持部54は、所定の厚みを有する略円形の小片である。第1自由保持部54は、本体部54Aの外周の一部から延出した延出部54Bを有し、延出部54Bには細長い弧状の開口である接続開口54Cが形成されている。顎紐12の端部は、接続開口54Cに接続される。
第1自由保持部54の一方の面には、凹部53Bに嵌合する凸部54Dが設けられている。他方の面には凸部54Dが設けられていないので、第1自由保持部54を常に正しい向きで第1固定保持部53に装着できる。したがって、顎紐12の捩れを防止することができる。
凸部54Dは、略円形の外側円環部54Daと、外側円環部54Daよりも径が小さい略円形の内側円環部54Dbとを備える。外側円環部54Daの内周と内側円環部54Dbの外周との間には、略円形の溝部54Dcが形成されている。溝部54Dcの径は凹部53Bのリング部53Baの径よりもやや大きく、第1自由保持部54を第1固定保持部53に装着する際に溝部54Dcにリング部53Baが挿入される。
外側円環部54Daは、第1円弧部54Daaと、第1円弧部54Daaよりも短い第2円弧部54Dabとからなる。第2回転阻害部となる第2円弧部54Dabは第1円環部54Daaの両端間に設けられ、第1円弧部54Daaと第2円弧部54Dabとは離間している。すなわち外側円環部54Daは、途中二箇所で途切れている。第1円弧部54Daaは、延出部54Bと連接している。第2円弧部54Dabは、延出部54Bと180度離れた位置に設けられている。
第1円弧部54Daa及び第2円弧部54Dabは、それぞれ内周側に段差54Dac、54Dadを有する。
内側円環部54Dbは、外周の二箇所に径方向外側に突出した爪部54Ddを有する。一方の爪部54Ddと他方の爪部54Ddとは180度離れて位置する。爪部54Ddの幅は凹部53Bの切欠部53Bdの幅よりも小さく、第1自由保持部54を第1固定保持部53に装着する際に爪部54Ddは切欠部53Bdに挿入される。また、内側円環部54Dbの内径は、固定円筒部53Aの外径よりも大きく、第1自由保持部54を第1固定保持部53に装着する際に内側円環部54Dbに固定円筒部53Aが挿入される。
【0027】
図11は本実施例による第1自由保持部と第1固定保持部が嵌合した状態を第1固定保持部側から見た斜視図である。
第1自由保持部54を第1固定保持部53に係止する場合には、凹部53Bの切欠部53Bdの向きと凸部54Dの爪部54Ddの向きを合わせて、凹部53Bに凸部54Dを挿入する。これにより
図11(a)に示す状態となる。
凹部53Bに凸部54Dが嵌合された状態において、第1円弧部54Daaの段差54Dacはリング突起部53Bcの下端よりも低く、第2円弧部54Dabの段差54Dadはリング突起部53Bcの下端と同じかそれよりも1mm〜5mm程度高い。そのため、リング突起部53Bc(第1回転阻害部)と第2円弧部54Dab(第2回転阻害部)が係合する位置においては、リング突起部53Bcと第2円弧部54Dabが当接して第1自由保持部54が回転し難くなっている。したがって、当該個所で第1自由保持部54を回転させるためには使用者が力をかける必要がある。
図11(a)に示す状態から、延出部54Bが下方(反頭頂部側)となるように使用者が第1自由保持部54を90度回転させると
図11(b)に示す状態となる。これにより第1自由保持部54は第1固定保持部53に対して回転可能に係止される。このとき爪部54Ddは鍔部53Bbの背面側に潜りこみ、爪部54Ddの表面が鍔部53Bbの背面に接触する。したがって、この状態で第1自由保持部54を引っ張っても爪部54Ddが鍔部53Bbに引っ掛かるので容易に外れることはない。また、リング突起部53Bc(第1回転阻害部)と第2円弧部54Dab(第2回転阻害部)の係合によって回転が所定範囲に制限されるので、顎紐12の一定の変位(振れ)を許容しつつ、意図せず第1自由保持部54が外れてしまうことを防止できる。
【0028】
このように、凸部54Dを凹部53Bに差し込んだ後に第1自由保持部54を所定角度回転させることによって、凸部54Dと凹部53Bが嵌合してロックされる。第1自由保持部54の第1固定保持部53からの取り外しは、第1自由保持部54を所定角度回転させてロックを解除し、凸部54Dを凹部53Bから引き抜くことにより行う。なお、第1固定保持部53に凸部を設け、第1自由保持部54に凹部を設けてもよい。
また、
図9及び
図11において、一方のリング突起部53Bcと他方のリング突起部53Bcとは左右対称の位置に設けられているが、両者の円周方向の間隔は第1自由保持部54が意図せず外れない範囲で変更してもよい。例えば
図9及び
図11において、一方のリング突起部53Bcを左側とすると、第1自由保持部54の回転許容範囲(顎紐12の変位)を大きくしたい場合には、右側の他方のリング突起部53Bcを反時計回りに約170度離れた位置に設け、第1自由保持部54の回転許容範囲(顎紐12の変位)を小さくしたい場合には、右側の他方のリング突起部53Bcを反時計回りに約45から100度離れた位置に設ける。なお、リング突起部53Bcを3箇所以上に配置してもよい。
【0029】
また、
図1及び
図6に示すように、衝撃吸収ライナ40の端面の一部は前側顎紐保持部51の周縁に沿うように配置されている。衝撃吸収ライナ40の端面と前側顎紐保持部51の周縁との隙間は、帽体11の前方側に比べて後方側が狭くなっている。
これにより、第1自由保持部54は、凹部53Bの切欠部53Bdの向きと凸部54Dの爪部54Ddの向きを合わせて凹部53Bに凸部54Dを挿入した状態から、帽体11の前方側に約100度回転すると延出部54Bが衝撃吸収ライナ40の端面に当接し、帽体11の後方側に約20度回転すると延出部54Bが衝撃吸収ライナ40に当接するので、一回転することができない。このように第1自由保持部54の回転を一定の範囲に規制して一回転しないようにすることで、顎紐12の捩れを効果的に防止することができる。
【0030】
図12は本実施例による顎紐を取り付けたヘルメットの内側の状態を示す一部拡大図であり、
図13は本実施例による顎紐を取り外したヘルメットの内側の状態を示す一部拡大図である(衝撃吸収ライナ等は省略している)。
後側顎紐保持部52は、帽体帽体11に固定された第2固定保持部56と、第2固定保持部56に脱着可能に係止される第2自由保持部57とからなる。
帽体11の後方側の外面に設けられた外装部材係止部70の下方の帽体11には貫通孔(図示無し)が形成されており、第2固定保持部56は、その貫通孔を介して帽体11の後方側の外面に設けられた外装部材係止部70に固定されている。
第2固定保持部56は略円形であり、外周の一部から延出した接続延出部56Aが設けられ、内周側に凹部56Bが形成されている。接続延出部56Aによって第2固定保持部56と帽体11の後方側の外面に設けられた外装部材係止部70とが固定される。このように、第2固定保持部56を帽体11に直接固定するのではなく、帽体11の外面に設けられた外装部材掛止部70に固定することで、帽体11の厚みを厚くしたり別部材を設けたりする必要が無い。
【0031】
凹部56Bは、略円形のリング部56Baと、第2自由保持部57との対向面側にリング部56Baの内周に沿って設けられた鍔部56Bbと、鍔部56Bbの一部を切欠いて形成された切欠部56Bdとを備える。
リング部56Baは、二つの第3円弧部56Baaと、第3円弧部56Baaよりも高い二つの第4円弧部56Babとからなる。第3円弧部56Baaと第4円弧部56Babは切れ目なく連接して交互に配置されている。第1回転阻害部となる第4円弧部56Babの両端には軸方向に突出したリング突起部56Bcが設けられている。
鍔部56Bbは略円形であり、リング部56Baの厚みよりも薄い。鍔部56Bbの内周側に円形孔部56Beが形成される。
切欠部56Bdは、鍔部56Bbの二箇所に形成され、一方の切欠部56Bdと他方の切欠部56Bdとは180度離れて位置する。切欠部56Bdは、帽体11に第2固定保持部56が固定された状態において、上方側(頭頂部側)と下方側(反頭頂部側)に位置している。
第4円弧部56Babの中心は、切欠部56Bdから90度離れた位置に設けられている。
【0032】
図14は本実施例による第2自由保持部の斜視図である。
第2自由保持部57は、所定の厚みを有する略円形の小片である。第2自由保持部57の一方の面の中央部には、凹部56Bに嵌合する凸部57Aが設けられている。他方の面には凸部57Aが設けられていないので、第2自由保持部57を常に正しい向きで第2固定保持部56に装着できる。したがって、顎紐12の捩れを防止することができる。
凸部57Aのさらに内側には細長い直線状の開口である二つの接続開口57Bが形成されている。顎紐12の中間部は、接続開口57Bに通されている。
凸部57Aは、円板状の円板部57Aaと、円板部57Aaの内側に設けられた略円形の内側円環部57Abとを備える。
内側円環部57Abには、外周の二箇所に径方向外側に突出した爪部57Acが設けられている。一方の爪部57Acと他方の爪部57Acとは180度離れて位置する。爪部57Acの幅は凹部56Bの切欠部56Bdの幅よりも小さく、第2自由保持部57を第2固定保持部56に装着する際に爪部57Acは切欠部56Bdに挿入される。
円板部57Aaの外周と爪部57Acとの間には、第2回転阻害部となる二つの円板突起部57Adが設けられている。円板突起部57Adは、軸方向に突出している。
【0033】
図15は本実施例による第2自由保持部と第2固定保持部が嵌合した状態の斜視図である。
第2自由保持部57を第2固定保持部56に係止する場合には、凹部56Bの切欠部56Bdの向きと凸部57Aの爪部57Acの向きを合わせて、凹部56Bに凸部57Aを挿入する。
凹部56Bに凸部57Aが嵌合された状態から使用者が第2自由保持部57を90度回転させると、
図15(b)に示すように、円板突起部57Adが一つ目のリング突起部56Bcを乗り越えて第4円弧部56Babに位置した状態となる。これにより、第2自由保持部57は、第2固定保持部56に対して回転可能に係止される。
なお、
図15(a)は円板突起部57Adが一つ目のリング突起部56Bcを乗り越える前の状態を示している。
第4円弧部56Babの高さは第3円弧部56Baaよりも高くなっているので、第4円弧部56Bab(第1回転阻害部)と円板突起部57Ad(第2回転阻害部)が係合する位置においては、第2自由保持部57が回転し難い。さらに第4円弧部56Babは両端にリング突起部56Bcを有するので、円板突起部57Adを第4円弧部56Babから第3円弧部56Baaに移動させようとする場合には、使用者が力をかける必要がある。
図15(b)に示す状態のとき爪部57Acは鍔部56Bbの背面側に潜りこみ、爪部57Acの表面が鍔部56Bbの背面に接触する。したがって、この状態で第2自由保持部57を引っ張っても爪部57Acが鍔部56Bbに引っ掛かるので容易に外れることはない。また、第4円弧部56Bab(第1回転阻害部)と円板突起部57Ad(第2回転阻害部)の係合によって第2自由保持部57の回転が抑制され、顎紐12の変位を抑えることができる。また、
図15(b)に示す状態から
図15(a)に示す状態になるには、円板突起部57Adがリング突起部56Bcを乗り越える必要があるため、意図せず第2自由保持部57が外れてしまうことを防止できる。
このように、凸部57Aを凹部56Bに差し込んだ後に第2自由保持部57を所定角度回転させることによって、凸部57Aと凹部56Bが嵌合してロックされる。第2自由保持部57の第2固定保持部56からの取り外しは、第2自由保持部57を所定角度回転させてロックを解除し、凸部57Aを凹部56Bから引き抜くことにより行う。なお、第2固定保持部56に凸部を設け、第2自由保持部57に凹部を設けてもよい。
また、顎紐12の変位を抑える必要がないときは、第4円弧部56Babの高さを第3円弧部56Baaの高さ以下にしてもよい。更に、第2自由保持部57の回転許容範囲(顎紐12の変位)を大きくしたい場合には、第4円弧部56Babの円周方向の長さを大きくすればよい。第4円弧部56Babの円周方向の長さを大きくすると、その両端に設けたリング突起部56Bcの間隔が大きくなるため、第2自由保持部57の回転許容範囲(顎紐12の変位)も大きくなる。第2自由保持部57が意図せず外れない範囲を考慮すると、両端に設けたリング突起部56Bcの間隔は最大約170度であるが、それほど第2自由保持部57の回転許容範囲(顎紐12の変位)を大きくする必要が無い場合には、その間隔を約30から110度の範囲内とすることが第2自由保持部57の外れ防止の観点から好ましい。
【0034】
このように、第1自由保持部54に顎紐12の端部が接続され、第2自由保持部57に顎紐12の中間部が通されているので、第1自由保持部54及び第2自由保持部57を第1固定保持部53及び第2固定保持部56から取り外すことで、顎紐12を帽体11から取り外すことができる。したがって、顎紐12が汚損した場合などに容易に交換することができる。
なお、本実施例において顎紐保持部50は、帽体11の内側の一方の側面と他方の側面に一対で配置される前側顎紐保持部51と、後面中央に配置される後側顎紐保持部52とを備える場合を説明したが、個数や配置は任意に変更することができる。また、前側顎紐保持部51に凹部56Bと凸部57Aを用いることも可能であり、後側紐保持部52に凹部53Bと凸部54Dを用いることも可能である。
【0035】
図16は本発明の他の実施例によるヘルメットの内側を側方から見た斜視図、
図17は同ヘルメットに装着されるヘッドバンド調節具の一部透過概略構成図、
図18は同ヘッドバンド調節具の分解図、
図19は
図18と反対の視点からみた同ヘッドバンド調節具の分解図、
図20は同ヘッドバンド調節具の組立図である。なお、上記実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
図16に示すように、ヘルメット10は、硬質の帽体11の内面に、使用者の前頭部から側頭部にかけて包囲する固定長の前側バンド部21、使用者の後頭部から側頭部にかけて包囲する固定長の後側バンド部22、及び掛止具13を有している。
前側バンド部21及び後側バンド部22の、それぞれの一方の端部と他方の端部には、ヘッドバンド調節具60との接続用の略円形の開口が形成されている。
掛止具13は、第1掛止片13aと第2掛止片13bとからなり、帽体11の内面の左右側部に一対ずつ対称に固定される。第1掛止片13aと第2掛止片13bとは所定の間隔をあけて固定されており、ヘッドバンド調節具60は、第1掛止片13aと第2掛止片13bとの間に差し込まれる。差し込まれたヘッドバンド調節具60の両端は、第1掛止片13a及び第2掛止片13bによって保持される。
【0036】
ヘッドバンド調節具60は、帽体11の一方の側部の内面に配置する第1調節具60Aと、帽体11の他方の側部の内面に配置する第2調節具60Bとからなる。帽体11の内面にヘッドバンド調節具60を配置することによって、ヘルメット10の外面の凹凸を少なくすることができる。
図17から
図20に示すように、第1調節具60A及び第2調節具60Bは、本体部90、本体部90に水平動可能に係合するスライド部100、後側バンド部22の端部が係止される第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)、使用者がスライド部100を水平方向に動かす操作に用いる操作部110、上面に複数の歯121を有するレール部120、及びカバー部130をそれぞれ備える。
【0037】
本体部90は、矩形の板状の板部91と、板部91の一方の側部91aの上端から延出した第1バンド係止部31A(第2バンド係止部31B)を備え、長手方向が帽体11の前後方向となるように掛止具13によって帽体11の側部の内面に固定される。
第1バンド係止部31A(第2バンド係止部31B)には略円柱状の第1突起部34A(第2突起部34B)が設けられている。第1調節具60Aの第1突起部34A(第2突起部34B)に前側バンド部21の一方の端部に形成された開口が嵌着され、第2調節具60Bの第1突起部34A(第2突起部34B)に前側バンド部21の他方の端部に形成された開口が嵌着されることによって、前側バンド部21の両端がヘッドバンド調節具60に固定される。
また、本体部90は、帽体11の側部の内面形状に沿って湾曲している。本体部90を帽体11の側部の内面形状に沿って湾曲させることで、本体部90と帽体11との接触面積を大きくすることができ、ヘッドバンド調節具60を帽体11に取り付けたときの安定性が向上する。
板部91は、収納部93と、固定用スリット部(開口)94を備える。
収納部93は、板部91の両側部(一方の側部91a及び他方の側部91b)が外方向に折り曲げられ、折り曲げられた両側部91a、91bの下部を棒状の下部接続部95で接続することによって形成される。すなわち収納部93は、板部91と帽体11の側部の内面との間に位置する。また、収納部93の下部には、レール部120の両端を保持するレール保持部93a、93bを備える。レール保持部93a、93bは、例えば、板部91の折り曲げられた両側部91a、91bの下端を延出し、延出した部分がそれぞれ対向する側部の方向に折り曲げられることによって形成される。
固定用スリット部94は、板部91の長手方向にわたる矩形状の開口である。後述のように、スライド部100と第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)とは固定用スリット部94を貫通するスライド接続部39を介して接続することができるので、両者の接続が最短距離で済み、ヘッドバンド調節具60を小型化することができる。
【0038】
レール部120は、板部91の長手方向の長さとほぼ同じ長さを有する直方体であり、上面には複数の歯121が設けられ、下面には凹部122が設けられている。凹部122の位置は、上面に設けた歯121と歯121の間の部分に対応する。歯121は、前後方向のどちらかに傾くことなく直立している。
レール部120は、複数の歯121による歯面が形成された上面を上方向に向けた状態で、レール保持部93a、93bによって保持される。
このように本体部90とレール部120とを別部材で構成することによって、本体部90にレールを形成する場合と比べて、本体部90の厚みを薄くすることができるとともに、レール部120に必要な剛性を低く抑えることができる。
【0039】
第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)は、本体部90より内側すなわち板部91の内面側(収納部93が形成されていない側)に配置される。第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)は、上端に鍵爪部38を有する。鍵爪部38は、第1鍵爪片38aと、第2鍵爪片38bとからなり、第1鍵爪片38aと第2鍵爪片38bとは所定の間隔をあけて配置される。鍵爪片38a、38bを板部91の上端に引っ掛けることによって第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)が本体部90に装着される。なお、鍵爪片38a、38bと板部91の上端との間にわずかな隙間を設けることで、第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)が板部91の内面に沿って水平動すること、すなわち前後方向への移動を可能としている。
第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)は、内面(板部91への取付け側とは反対の面)に、後側バンド部22の端部が係止される第3突起部35A(第4突起部35B)を備え、その外面(板部91への取付け側の面)に、スライド部100と接続するスライド接続部39を備える。
第3突起部35A(第4突起部35B)は、円環状の突起を成し外周面に歯面を有する。第1調節具60Aの第3突起部35A(第4突起部35B)に後側バンド部22の一方の端部に形成された開口が嵌合され、第2調節具60Bの第3突起部35A(第4突起部35B)に後側バンド部22の他方の端部に形成された開口が嵌合されることによって、
後側バンド部22の両端がヘッドバンド調節具60に固定される。
スライド接続部39は、第1突設片39aと、第2突設片39bとからなり、第1突設片39aと第2突設片39bとは所定の間隔をあけて配置される。第1突設部39a及び第2突設部39bは、固定用スリット部94を貫通し、それぞれの先端部が板部91の外面側に配置される。
【0040】
スライド部100は、プラスチックばね等の弾性材で構成され、立柱部(当接部)101と、立柱部101の両側に設けた二つの拡縮部102と、立柱部101の下部に設けた土台部103とからなる。
拡縮部102は、棒状の弾性材が側方に突出した後に約180度湾曲してU字状に形成され、下部は鉛直方向に突出している。
土台部103は、逆T字状であり、上端と下端との間には窪み103aを設けている。
スライド部100は、本体部90の板部91と帽体11の側部の内面との間に位置する収納部93に、立柱部101と土台部103でレール部120を上下に挟みこむように配置される。このとき窪み103aにはレール部120が嵌合し、立柱部101の下端はレール部120の歯面に当接する。また、鉛直方向に突出した拡縮部102の下部は、第1突設片39a及び第2突設片39bと係合することによって固定される。したがって、スライド部100は第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)と接続される。スライド部100はプラスチックばね等の弾性材で構成されているので、自らの付勢力によって立柱部101の下端はレール部120に押し付けられる。したがって、スライド部100に別部材で構成した付勢部を設ける必要が無いため、部品点数を減らして軽量化を図ることができる。
また、レール部120及びスライド部100が配置された収納部93にはカバー部130が配置され、各部材の脱落が防止される。
【0041】
操作部110は、所定長を有する操作アーム部111と、操作本体部112とを備える。
操作アーム部111は、第1操作アーム部111Aと第2操作アーム部111Bとからなる。第1操作アーム部111Aは、一方の端部111Aaがスライド部100の土台部103の下端に配置され、他方の端部111Abが斜め前下方に突出して配置される。第2操作アーム部111Bは、一方の端部111Baがスライド部100の土台部103の下端に配置され、他方の端部111Bbが斜め後下方に突出して配置される。
第1操作アーム部111Aの他方の端部111Ab及び第2操作アーム部111Bの他方の端部111Bbには、使用者が押圧する押圧部113を備える。また、第1操作アーム部111Aの一方の端部111Aa及び第2操作アーム部111Bの一方の端部111Baには、使用者が押圧部113を水平方向(前後方向)に押圧したときに土台部103の下端と接触する押上部114を備える。
押上部114の上面は傾斜しており、端部側114aが反端部側114bよりも低くなっている。
操作本体部112には、第1操作アーム部111A及び第2操作アーム部111Bが装着される。操作本体部112には、装着された第1操作アーム部111A及び第2操作アーム部111Bがそれぞれ所定間を往復動するための山型の経路112aが設けられている。
操作部110は、本体部90の板部91と帽体11の側部の内面との間に位置する収納部93に、スライド部100の下側に位置するように配置され、第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)の下部に操作本体部112が接続される。
【0042】
上記のように構成されたヘッドバンド調節具60が装着されたヘルメット10の使用者が、後側バンド部22を締めようとするときには、ヘルメット10を頭部に載置した状態で第2操作アーム部111Bの押圧部113を前方向に押す。すると、第2操作アーム部111Bが前方向に移動し、傾斜上面を有する押上部114によって土台部103が上方向に押し上げられる。スライド部100の拡縮部102の下端はスライド接続部39に固定されているため、土台部103が上方向に押し上げられると拡縮部102が拡がる。拡縮部102の上方向に拡がる力が立柱部101を下方向(レール部120方向)に押し付けている力を上回ると立柱部101が上方向に持ち上げられる。立柱部101の下端が歯121の先端近傍まで持ち上げられると、歯121によるスライド部100の水平動(前後方向への動き)の規制が解除され、スライド部100は前方向に移動する。スライド部100には後側バンド部22の端部が係止された第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)が接続されているので、スライド部100の前方向への移動に伴って第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)も前方向に移動し、使用者の頭部は後側バンド部22によって締め付けられる。
使用者が後側バンド部22を緩めようとするときには、ヘルメット10を頭部に載置した状態で第1操作アーム部111Aの押圧部113を後方向に押す。すると、第1操作アーム部111Aが後方向に移動し、傾斜上面を有する押上部114によって土台部103が上方向に押し上げられる。スライド部100の拡縮部102の下端はスライド接続部39に固定されているため、土台部103が上方向に押し上げられると拡縮部102が拡がる。拡縮部102の上方向に拡がる力が立柱部101を下方向(レール部120方向)に押し付けている力を上回ると立柱部101が上方向に持ち上げられる。立柱部101の下端が歯121の先端近傍まで持ち上げられると、歯121によるスライド部100の水平動(前後方向への動き)の規制が解除され、スライド部100は後方向に移動する。スライド部100の後方向への移動に伴って第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)も後方向に移動し、使用者の頭部を締め付けていた後側バンド部22が緩むこととなる。
後側バンド部22を緩める又は締め付ける操作を行っていた使用者が操作部110から手を離すと、第1操作アーム部111A又は第2操作アーム部111Bが移動して元の位置に戻るため、押上部114によって上方向に押し上げられていた土台部103も下方向に移動して元の位置に戻る。土台部103が下方向に移動すると、拡がっていた拡縮部102は縮まって元の形状に戻る。拡縮部102が元の形状に戻ると、立柱部101の下端はレール部120の歯121と歯121との間の部分に再度当接する。立柱部101の下端は立柱部101自らの付勢力によってレール部120に押し付けられるため、スライド部100、及びスライド部100に接続する第3バンド係止部32A(第4バンド係止部32B)がその位置で固定され、後側バンド部22の位置が決まる。
このように、使用者が操作部110に加えた水平方向の押圧力は、上方向への力に変換されるため、使用者は、後側バンド部22を緩めようとするときは操作部110を後方向に押し、締めようとするときは操作部110を前方向に押すという、直観的な操作を行うことができる。また、操作部110を前方向又は後方向に押し、任意の位置で手を離すだけで操作が完了するので、素早く後側バンド部22の締め付け力を調節することができる。
【0043】
なお、操作部110は、一方の端部がスライド部100の土台部103の下端に配置され、他方の端部が横方向(帽体11の側部と垂直になる方向)の斜め下方に突出して配置された、一つの操作アーム部を備えるものとしてもよい。この場合に使用者は、操作アーム部を左方向又は右方向に水平に押圧した状態で前後に動かすことによって後側バンド部22の位置を調節することができる。したがって、この場合にも使用者は直観的な操作を行うことができる。
【0044】
なお、上記実施例においてヘッドバンド調節具60は、帽体11の左右側面に一対の調節具(第1調節具60A,第2調節具60B)を配置するものとして説明したが、ヘッドバンド調節具60は一箇所のみに配置するものとすることもできる。その場合には、例えば、帽体11の後部の内面にヘッドバンド調節具60を配置し、使用者の頭部を包囲するヘッドバンドの一方の端部をヘッドバンド調節具60のスライド部に接続し、ヘッドバンドの他方の端部を帽体11の内面等に固定する。
【0045】
図21は本発明の更に他の実施例によるヘッドバンド調節具を示す一部透過概略構成図である。なお、上述の実施例と同一機能部には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例によるヘッドバンド調節具60の本体部90は、板部91に、水平方向(長手方向)に細長い矩形状の開口294が形成され、開口294に複数の歯271が設けられている。すなわち、
図16から
図19に示すようにレール部120を本体部90とは別に設けるのではなく、スライド部100と嵌合するレールと本体部90とを一体化している。このように歯面を有するレールを本体部90に設けることによって、本体部90とレール部を別部材で構成した場合と比べて、部品点数を減らして軽量化を図ることができる。
なお、板部91に開口294を設けず、板部91の上面に複数の歯271からなる歯面を設けてもよい。
【0046】
図22は本発明の更に他の実施例によるヘッドバンド調節具を示す概略構成図である。なお、上述の実施例と同一機能部には同一符号を付して説明を省略する。
本実施例によるヘッドバンド調節具60のスライド部200の上部には、付勢部として金属製の第1ばね201が配置されている。第1ばね201の下面は、スライド部200の上面に接しており、第1ばね201の鉛直方向の付勢力によって、スライド部200はレール部120に押し付けられる。なお、付勢部は、第1ばね201のようにスライド部200の上側から付勢するものではなく、レール部120の下側に設けられ、スライド部200を下側から引っ張ることでレール部120に押し付けるものであってもよい。
また、第1操作アーム部111Aと第2操作アーム部111Bとの間には、第2ばね202が設けられている。第2ばね202の前後方向の長さは、第1操作アーム部111Aと第2操作アーム部111Bとの間隔にほぼ等しい。したがって第2ばね202は、使用者が第1操作アーム部111A又は第2操作アーム部111B押圧したときには、第1操作アーム部111Aと第2操作アーム部111Bの間隔が狭まることにより圧縮されて縮み、使用者が手を離すと元の形状に戻る。したがって、第1操作アーム部111A又は第2操作アーム部111Bが元の位置に戻るのを付勢することができる。