特許第6671163号(P6671163)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671163排ガス処理ハニカム触媒およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671163
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】排ガス処理ハニカム触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/28 20060101AFI20200316BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20200316BHJP
   B01J 23/34 20060101ALI20200316BHJP
   B01J 23/22 20060101ALI20200316BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20200316BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20200316BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20200316BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20200316BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20200316BHJP
   C04B 38/00 20060101ALI20200316BHJP
   C04B 35/46 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   B01J23/28 A
   B01J23/30 A
   B01J23/34 A
   B01J23/22 A
   B01J37/00 D
   B01J35/04 301N
   B01J35/10 301F
   B01D53/94 222
   B01D53/86 222
   C04B38/00 303Z
   C04B38/00 304Z
   C04B35/46
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-238418(P2015-238418)
(22)【出願日】2015年12月7日
(65)【公開番号】特開2016-129885(P2016-129885A)
(43)【公開日】2016年7月21日
【審査請求日】2018年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-3645(P2015-3645)
(32)【優先日】2015年1月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】足立 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 健太郎
【審査官】 中村 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−286730(JP,A)
【文献】 特開2004−041893(JP,A)
【文献】 特開昭59−199586(JP,A)
【文献】 特開2004−309300(JP,A)
【文献】 特開2004−102467(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/143028(WO,A1)
【文献】 国際公開第01/015877(WO,A1)
【文献】 特開2012−139625(JP,A)
【文献】 特開2013−132624(JP,A)
【文献】 特開2005−021780(JP,A)
【文献】 特開2003−093880(JP,A)
【文献】 特開2001−062292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00− 38/74
B01D 53/73
B01D 53/86− 53/90
B01D 53/94
B01D 53/94
C04B 35/46
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A成分とB成分との混合物からなる担体と、活性金属成分とを含む排ガス処理ハニカム触媒であって、
前記A成分が、TiO2からなる無機単一酸化物、または、WO3およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとTiO2との無機複合酸化物であり、
前記B成分が、SiO2からなる無機単一酸化物、または、TiO2およびWO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとSiO2との無機複合酸化物であり、
前記A成分の含有率が10〜90質量%であり、
SiO2の含有率が0.05〜16質量%である、
300℃で1時間、前処理した後に行うBET法(一点法)による比表面積(SABET)と、300℃で1時間、前処理した後に、水銀圧入角130度、表面張力473erg/cm2にて行う水銀圧入ポロシメトリー法による5nmから5μmの触媒細孔の比表面積(SAHg)との差(SABET−SAHg)が25〜35m2/gの範囲にあることを特徴とする排ガス処理ハニカム触媒。
【請求項2】
隔壁に0.005mm以上かつセル目開き幅未満のスリットを有し、スリット数が、隔壁数(矩形のハニカム構造体の端面における一方の辺におけるセル数をXとし、他方の辺におけるセル数をYとして、X(Y−1)+Y(X−1)から算出される値)に対して、0.03〜3%(片端面あたり)である、請求項1に記載の排ガス処理ハニカム触媒。
【請求項3】
前記スリットの最大長が、長手方向の長さの5〜80%である、請求項に記載の排ガス処理ハニカム触媒。
【請求項4】
ハニカムセルの肉厚を0.50mm、目開きの幅を3.20mmとしたハニカム触媒とした場合の圧縮強度が50〜200N/cm2である、請求項1〜のいずれかに記載の排ガス処理ハニカム触媒。
【請求項5】
前記B成分に含まれるSiO2の固形分量が5〜20質量%である、請求項1〜のいずれかに記載の排ガス処理ハニカム触媒。
【請求項6】
前記活性金属成分が、バナジウム、モリブデン、マンガン、ランタン、イットリウムおよびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜のいずれかに記載の排ガス処理ハニカム触媒。
【請求項7】
下記の工程(a)〜(c)を備え、請求項1〜のいずれかに記載の排ガス処理ハニカム触媒が得られる、排ガス処理ハニカム触媒の製造方法。
工程(a):Tiを含むスラリー、または、WおよびMoからなる群から選ばれる少なくとも1つとTiとを含むスラリーを脱水し、焼成して、TiO2からなる無機単一酸化物原料、または、WO3およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとTiO2との無機複合酸化物原料を得る工程。
工程(b):Siを含むスラリー、または、TiおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つとSiとを含むスラリーを脱水し、焼成して、SiO2からなる無機単一酸化物原料、または、TiO2およびWO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとSiO2との無機複合酸化物原料を得る工程。
工程(c):工程(a)において得られた無機単一酸化物原料または無機複合酸化物原料と、工程(b)において得られた無機単一酸化物原料または無機複合酸化物原料とを混合し、ハニカム状に押し出して成形し、乾燥、焼成する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理ハニカム触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばセメント製造排ガスは熱回収するため、排ガス温度が80℃程度となる場合がある。よって、このような低温(70〜250℃程度)の排ガスを処理した場合に高い脱硝性能を発揮する触媒の開発が望まれる。
【0003】
また、燃焼排ガス中の窒素酸化物の除去方法としては、還元剤であるアンモニアの存在下に接触分解する方法が知られているが、通常、燃焼排ガス中には二酸化硫黄が含有されているため、分解温度が300℃以下の場合は、アンモニアとの反応により硫酸アンモニウムが触媒表面に析出して触媒性能を低下させる問題がある。
【0004】
さらに、排ガス中に排煙処理触媒に対する被毒物質が含まれていると、排煙処理触媒が失活し易い。ここで主な被毒物質としてアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。例えば、セメント製造排ガスに含まれるダストの主成分はカルシウムであることが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−49580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温(70〜250℃程度)の排ガスを処理した場合に高い脱硝性能を発揮し、さらにアルカリ金属またはアルカリ土類金属(特にカルシウム)を含む被毒成分ならびに硫安類を多く含む排ガスに用いた場合であっても失活し難い、排ガス処理ハニカム触媒およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記の課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の(1)〜(8)である。
(1)異なる2種類以上の無機単一酸化物または無機複合酸化物の混合物からなる担体と、活性金属成分とを含む排ガス処理ハニカム触媒であって、
BET法による比表面積(SABET)と、水銀圧入ポロシメトリー法による5nmから5μmの触媒細孔の比表面積(SAHg)との差(SABET−SAHg)が25〜35m2/gの範囲にあることを特徴とする排ガス処理ハニカム触媒。
(2)前記担体がA成分とB成分との混合物からなり、
前記A成分が、TiO2からなる無機単一酸化物、または、WO3およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとTiO2との無機複合酸化物であり、
前記B成分が、SiO2からなる無機単一酸化物、または、TiO2およびWO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとSiO2との無機複合酸化物であり、
前記A成分の含有率が10〜90質量%であり、
SiO2の含有率が0.05〜16質量%である、上記(1)に記載の排ガス処理ハニカム触媒。
(3)隔壁に0.005mm以上かつセル目開き幅未満のスリットを有し、スリット数が、隔壁数(矩形のハニカム構造体の端面における一方の辺におけるセル数をXとし、他方の辺におけるセル数をYとして、X(Y−1)+Y(X−1)から算出される値)に対して、0.03〜3%(片端面あたり)である、上記(1)または(2)に記載の排ガス処理ハニカム触媒。
(4)前記スリットの最大長が、長手方向の長さの5〜80%である、上記(3)に記載の排ガス処理ハニカム触媒。
(5)ハニカムセルの肉厚を0.50mm、目開きの幅を3.20mmとしたハニカム触媒とした場合の圧縮強度が50〜200N/cm2である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の排ガス処理ハニカム触媒。
(6)前記B成分に含まれるSiO2の固形分量が5〜20質量%である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の排ガス処理ハニカム触媒。
(7)前記活性金属成分が、バナジウム、モリブデン、マンガン、ランタン、イットリウムおよびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の排ガス処理ハニカム触媒。
(8)下記の工程(a)〜(c)を備え、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の排ガス処理ハニカム触媒が得られる、排ガス処理ハニカム触媒の製造方法。
工程(a):Tiを含むスラリー、または、WおよびMoからなる群から選ばれる少なくとも1つとTiとを含むスラリーを脱水し、焼成して、TiO2からなる無機単一酸化物原料、または、WO3およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとTiO2との無機複合酸化物原料を得る工程。
工程(b):Siを含むスラリー、または、TiおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つとSiとを含むスラリーを脱水し、焼成して、SiO2からなる無機単一酸化物原料、または、TiO2およびWO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとSiO2との無機複合酸化物原料を得る工程。
工程(c):工程(a)において得られた無機単一酸化物原料または無機複合酸化物原料と、工程(b)において得られた無機単一酸化物原料または無機複合酸化物原料とを混合し、ハニカム状に押し出して成形し、乾燥、焼成する工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温(70〜250℃程度)の排ガスを処理した場合に高い脱硝性能を発揮し、さらにアルカリ金属またはアルカリ土類金属(特にカルシウム)を含む被毒成分ならびに硫安類を多く含む排ガスに用いた場合であっても失活し難い、排ガス処理ハニカム触媒およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ハニカム構造体の好適例の概略斜視図である。
図2】圧縮強度の測定方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の触媒>
本発明について説明する。
本発明は、異なる2種類以上の無機単一酸化物または無機複合酸化物の混合物からなる担体と、活性金属成分とを含む排ガス処理ハニカム触媒であって、BET法による比表面積(SABET)と、水銀圧入ポロシメトリー法による5nmから5μmの触媒細孔の比表面積(SAHg)との差(SABET−SAHg)が25〜35m2/gの範囲にあることを特徴とする排ガス処理ハニカム触媒である。
このような排ガス処理ハニカム触媒を、以下では「本発明の触媒」ともいう。
【0011】
本発明の触媒は、BET法によって測定した比表面積(SABET)が50〜100m2/gであることが好ましく、60〜100m2/gであることがより好ましい。
【0012】
BET法(BET比表面積)の測定方法について説明する。
まず、乾燥させた試料(0.2g)を測定セルに入れ、窒素ガス気流中、300℃で60分間脱ガス処理を行い、その上で試料を窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料の温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、試料の比表面積を測定する。
このようなBET比表面積測定法(窒素吸着法)は、例えば従来公知の表面積測定装置を用いて行うことができる。
【0013】
本発明の触媒は、水銀圧入ポロシメトリー法によって測定した比表面積(SAHg)が20〜60m2/gであることが好ましく、25〜55m2/gであることがより好ましい。
【0014】
水銀圧入ポロシメトリー法とは、ポロシメーターを使用する水銀圧入法であり、例えば従来公知の測定装置を用いて測定することができる。
【0015】
本発明の触媒は、BET法による比表面積(SABET)と、水銀圧入ポロシメトリー法による比表面積(SAHg)との差(SABET−SAHg)が25〜35m2/gとなる。この値は27〜30m2/gとなることが好ましい。
SABET−SAHgが上記のような範囲にあると、低温(70〜250℃程度)の排ガスを処理した場合に高い脱硝性能を発揮し、さらにアルカリ金属またはアルカリ土類金属(特にカルシウム)を含む被毒成分ならびに硫安類を多く含む排ガスに用いた場合であっても失活し難い。
【0016】
<担体>
本発明の触媒における担体について説明する。
本発明の触媒において担体は、異なる2種類以上の無機単一酸化物または無機複合酸化物の混合物からなる。
具体的に、担体は、異なる2種類であるA成分とB成分との混合物からなるものであることが好ましい。
ここでA成分は、TiO2からなる無機単一酸化物、または、WO3およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとTiO2との無機複合酸化物である。すなわち、A成分は、Tiを含む単一酸化物、TiとWとを含む複合酸化物、TiとMoとを含む複合酸化物、TiとWとMoとを含む複合酸化物のいずれかを意味する。
【0017】
また、B成分は、SiO2からなる無機単一酸化物、または、TiO2およびWO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとSiO2との無機複合酸化物ある。すなわち、B成分は、Siを含む単一酸化物、SiとTiとを含む複合酸化物、SiとWとを含む複合酸化物、SiとTiとWとを含む複合酸化物のいずれかを意味する。
B成分は、SiとTiとを含む複合酸化物であることが好ましい。
また、B成分に含まれるSiO2の固形分量が5〜40質量%であることが好ましい。
【0018】
担体におけるA成分の含有率は10〜90質量%であることが好ましく、20〜85質量%であることがより好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0019】
担体におけるSiO2の含有率は0.05〜16質量%であることが好ましく、0.10〜13質量%であることがより好ましく、0.15〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0020】
担体は、上記のようなA成分およびB成分以外の成分を20質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下の割合で含んでもよい。また、担体は実質的にA成分およびB成分からなることが好ましい。ここで「実質的になる」とは、原料や製造過程から不可避的に含まれる不純物等は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味する。
【0021】
<活性金属成分>
本発明の触媒における活性金属成分について説明する。
本発明の触媒は、上記のような担体に活性金属成分が担持している。
本発明の触媒において活性金属成分は、タングステン、バナジウム、モリブデン、マンガン、ランタン、イットリウムおよびセリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0022】
本発明の触媒は、上記のような担体および活性金属成分以外の成分を20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下の割合で含んでもよい。また、本発明の触媒は実質的に前記担体および前記活性金属成分からなることが好ましい。ここで「実質的になる」とは、原料や製造過程から不可避的に含まれる不純物等は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味する。
上記のような担体および活性金属成分以外の成分として、例えばCr、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au、Pd、Nd、In、SnおよびIrが挙げられる。
【0023】
<ハニカム構造体>
本発明の触媒は、上記のような担体に活性金属成分が担持しているハニカム状の構造体である。
ハニカム状の構造体とは、平行に貫通した多数の小孔(セル)を有する構造体を意味する。このような構造の触媒は、通常、反応管内にぴったりと収めて使用される。また、セルの形(断面形状)としては、六角形、四角形、三角形、円形などがある。通常、セルの大きさ(径)は目開き、セルとセルとの間は隔壁、1つのセルに注目した場合に対向する左右または上下の壁の各中心間の距離はピッチと呼ばれる。
【0024】
図1に、本発明の触媒に相当するハニカム状の構造体の概略斜視図を例示する。
図1において本発明の触媒(1)は、8目×8目のセル(3)を有し、セル(3)の断面形状は四角形の態様のものである。セル(3)の大きさ(径)は目開きの幅(5)、セル(3)とセル(3)との間は隔壁(7)、隔壁(7)の厚さ(9)を肉厚ともいう。さらに、セル(3)の開口部が露出している面を端面(11)とし、それ以外の面を側面(13)とする。また、ハニカム構造体の長手方向の長さをXとする。
【0025】
本発明の触媒は、図1に示すように、隔壁(7)に0.005mm以上かつセル目開き幅(5)未満のスリット(15)を有するものであることが好ましい。ここでスリットの幅(17)の測定は、ハニカム構造体の端面(11)をマイクロスコープや顕微鏡等を用いて観察して確認し、その端面(11)における幅を測定して得た値を意味するものとする。
【0026】
そして、同様にしてハニカム構造体の端面(11)をマイクロスコープや顕微鏡等を用いて観察して確認して得られたスリット数が、隔壁数(すなわち、セル数×(セル数−1)×2)に対して0.03〜3%(片端面あたり)であることが好ましく、0.06〜2%であることが好ましい。この比率が低すぎると、初期性能低く、被毒成分耐性低くなる傾向がある。逆に、この比率が高すぎると、触媒の強度に問題が生じたり、生産性(ハニカム状形状を製造できない)に問題が生じたりする場合がある。
なお、ハニカム構造体の端面がほぼ正方形である場合のように、その端面における一方の辺におけるセル数と、他方の辺におけるセル数とが同一の場合、隔壁数は、上記のようにセル数×(セル数−1)×2から算出できる。しかしながら、ハニカム構造体の端面が長方形である場合のように、その端面における一方の辺におけるセル数と、他方の辺におけるセル数とが異なる場合、隔壁数は、一方の辺におけるセル数をX、他方の辺におけるセル数をYとすると、X(Y−1)+Y(X−1)の式から算出される。ハニカム構造体の端面における一方の辺におけるセル数と、他方の辺におけるセル数とが同一の場合は、この式においてX=Yの場合に相当するため、上記の通り、セル数×(セル数−1)×2から隔壁数を算出する場合と同一になる。
【0027】
さらに、スリット15の長さ(すなわち、ハニカム構造体の長手方向と略平行な方向へのスリットの深さ)の最大長が、ハニカム構造体の長手方向の長さ(X)の5〜80%であることが好ましく、5〜70%であることがより好ましい。この比率が低すぎると、初期性能低く、被毒成分耐性低くなる傾向がある。逆に、この比率が高すぎると、触媒の強度に問題が生じたり、生産性(ハニカム状形状を製造できない)に問題が生じたりする場合がある。
【0028】
本発明の触媒は、セルの肉厚(9)を0.50mm、目開きの幅(5)を3.20mmとしたハニカム触媒とした場合の圧縮強度が50〜200N/cm2であることが好ましい。このような場合、本発明の触媒は圧縮強度が十分に高いので好ましい。
なお、圧縮強度の測定方法は、後述する実施例において詳細に説明する。
【0029】
本発明の触媒は、セメント製造排ガス、ゴミ焼却排ガス、ガラス溶融炉排ガス、鉄鋼コークス炉の排ガス処理触媒として好ましく用いることができる。
【0030】
本発明の触媒は、排ガスに有機塩素化化合物(ダイオキシン類等)が含有されている場合、これを分解除去する装置にも用いることができる。
【0031】
本発明の触媒は、排ガスに水銀が含有されている場合、本触媒を設置し水銀をハロゲン化する装置にも用いることができる。
【0032】
次に、本発明の触媒の製造方法について説明する。
本発明の触媒において担体は、収縮率の異なる2種類以上の無機酸化物を混合して製造することができる。例えば特開2004−41893号公報や特開2005−021780号公報に記載された方法で製造することができる。
本発明の触媒は、前記担体もしくはその原料および前記活性金属成分もしくはその原料を混合してなる混合物を得た後、押出成形法等によってハニカム構造の形状に成形する方法や、ハニカム構造の基材上に担体成分および活性成分を含浸・担持する方法によって製造することができる。
【0033】
本発明の触媒は、下記の工程(a)〜(c)を備える製造方法によって製造することが好ましい。
工程(a):Tiを含むスラリー、または、WおよびMoからなる群から選ばれる少なくとも1つとTiとを含むスラリーを脱水し、焼成して、TiO2からなる無機単一酸化物原料、または、WO3およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとTiO2との無機複合酸化物原料を得る工程。
工程(b):Siを含むスラリー、または、TiおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つとSiとを含むスラリーを脱水し、焼成して、SiO2からなる無機単一酸化物原料、または、TiO2およびWO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとSiO2との無機複合酸化物原料を得る工程。
工程(c):工程(a)において得られた無機単一酸化物原料または無機複合酸化物原料と、工程(b)において得られた無機単一酸化物原料または無機複合酸化物原料とを混合し、ハニカム状に押し出して成形し、乾燥、焼成する工程。
このような好ましい製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0034】
<本発明の製造方法>
工程(a)について説明する。
工程(a)では、初めに、Tiを含むスラリー、または、WおよびMoからなる群から選ばれる少なくとも1つとTiとを含むスラリーを得る。
このスラリーは、例えばTiを含む化合物や、さらにWを含む化合物、Moを含む化合物を、水等の溶媒に溶解した後、酸やアルカリを用いてpHを調整することでTiの酸化物や、さらにWの酸化物、Moの酸化物を析出させて得ることができる。析出させた後、30〜98℃で0.5〜12時間、熟成させることが好ましい。
【0035】
ここでTiを含む化合物としては、メタチタン酸が好ましく、硫酸法による二酸化チタンの製造工程より得られる硫酸チタン溶液を用い、さらにこの硫酸チタンを加水分解してメタチタン酸を得ることが好ましい。
【0036】
Wを含む化合物としては、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウム、燐タングステン酸アンモニウムおよびテトラチオタングステン酸アンモニウムなどのタングステン含有窒素化合物、二硫化タングステン、三硫化タングステンなどのタングステン含有硫黄化合物、六塩化タングステン、二塩化タングステン、三塩化タングステン、四塩化タングステン、五塩化タングステン、二塩化二酸化タングステン、四塩化酸化タングステンが挙げられる。
【0037】
Moを含む化合物としては、パラモリブデン酸アンモニウム、メタモリブデン酸アンモニウム、燐モリブデン酸アンモニウムおよびテトラチオモリブデン酸アンモニウムなどのモリブデン含有窒素化合物、二硫化モリブデン、三硫化モリブデンなどのモリブデン含有硫黄化合物、六塩化モリブデン、二塩化モリブデン、三塩化モリブデン、四塩化モリブデン、五塩化モリブデン、二塩化二酸化モリブデン、四塩化酸化モリブデンが挙げられる。
【0038】
Tiを含む化合物の他にWを含む化合物を用いる場合、Tiを含む化合物とWを含む化合物との量比は特に限定されないが、TiO2(Tiの全てがTiO2であると仮定した換算値)100質量部に対してWO3(Wの全てがWO3であると仮定した換算値)が1〜15質量部となるように調整することが好ましい。
【0039】
Tiを含む化合物の他にMoを含む化合物を用いる場合、Tiを含む化合物とMoを含む化合物との量比は特に限定されないが、TiO2(Tiの全てがTiO2であると仮定した換算値)100質量部に対してMoO3(Moの全てがMoO3であると仮定した換算値)が1〜15質量部となるように調整することが好ましい。
【0040】
上記のようにしてスラリーを得た後、これを脱水し、焼成する。
脱水方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法、具体的には遠心分離法等を適用して脱水することができる。
焼成方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法、具体的には焼成炉等を用いて焼成することができる。焼成温度は、例えば110℃以上(好ましくは300℃以上)、700℃以下とする。
脱水後に得られるケーキを焼成する前に、乾燥してもよい。乾燥は、例えば従来公知の方法、具体的には電気乾燥機等を用いることができる。乾燥温度は、例えば30〜200℃とする。
【0041】
このような工程(a)によって、TiO2からなる無機単一酸化物原料、または、WO3およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとTiO2との無機複合酸化物原料を得ることができる。
【0042】
工程(b)について説明する。
工程(b)では、初めに、Siを含むスラリー、または、TiおよびWからなる群から選ばれる少なくとも1つとSiとを含むスラリーを得る。
このスラリーは、例えばSiを含む化合物や、さらにTiを含む化合物、Wを含む化合物を、水等の溶媒に溶解または分散した後、酸やアルカリを用いてpHを調整することでSiの酸化物や、さらにTiの酸化物、Wの酸化物を析出させて得ることができる。析出させた後、30〜98℃で0.5〜12時間、熟成させることが好ましい。
【0043】
ここでSiを含む化合物としては、シリカゾル、ケイ酸液、ヒュームドシリカ、シリコンアルコキシド等が挙げられる。
【0044】
Tiを含む化合物およびWを含む化合物としては、工程(a)の場合と同様のものを用いることができる。
【0045】
Siを含む化合物の他にTiを含む化合物を用いる場合、Siを含む化合物とTiを含む化合物との量比は特に限定されないが、SiO2(Siの全てがSiO2であると仮定した換算値)100質量部に対してTiO2(Tiの全てがTiO2であると仮定した換算値)が150〜900質量部となるように調整することが好ましい。
【0046】
Siを含む化合物の他にWを含む化合物を用いる場合、Siを含む化合物とWを含む化合物との量比は特に限定されないが、SiO2(Siの全てがSiO2であると仮定した換算値)100質量部に対してWO3(Wの全てがWO3であると仮定した換算値)が12.5〜1500質量部となるように調整することが好ましい。
【0047】
上記のようにしてスラリーを得た後、これを脱水し、焼成する。
脱水方法および焼成方法は特に限定されず、工程(a)の場合と同様であってよい。また、工程(a)の場合と同様に乾燥処理を行ってもよい。
【0048】
このような工程(2)によって、SiO2からなる無機単一酸化物原料、または、TiO2およびWO3からなる群から選ばれる少なくとも1つとSiO2との無機複合酸化物原料を得ることができる。
【0049】
工程(c)について説明する。
工程(c)では、工程(a)において得られた無機単一酸化物原料または無機複合酸化物原料(以下ではこれらを原料(a)ともいう)と、工程(b)において得られた無機単一酸化物原料または無機複合酸化物原料(以下ではこれらを原料(b)ともいう)とを混合する。
この混合比は特に限定されないものの、原料(a)および原料(b)の合計質量に対する原料(a)の割合(原料(a)の質量/(原料(a)の質量+原料(b)の質量)×100(%))が10〜95質量%となるように、水分を添加した上で混合することが好ましい。
【0050】
上記のように原料(a)および原料(b)を、水分を添加した上で混合する際に、必要に応じて成形助剤を、さらに添加して混合してもよい。成形助剤としては、例えば従来公知のものを用いることができ、具体的には、ポリエチレンオキサイド、結晶性セルロース、グリセリン、ポリビニルアルコール等の有機物、または粘土鉱物が挙げられる。
【0051】
そして、得られた混合物を、例えば従来公知の成形機を用いてハニカム状に成形し、その後、乾燥、焼成する。
乾燥方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法、具体的には電気乾燥機等を適用して乾燥することができる。乾燥温度は、例えば30〜200℃とする。
焼成方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法、具体的には焼成炉等を用いて焼成することができる。焼成温度は、例えば450〜700℃とする。
【0052】
このような本発明の製造方法によって、本発明の触媒を得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明について実施例に基づき説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0054】
[原料調製1(Ti酸化物原料:TiO2原料)]
メタチタン酸スラリー(石原産業製)を還流器付攪拌機に仕込み、25質量%アンモニア水をpH7.5以上となるように添加した後、60℃で3時間に亘り十分な撹拌を行いつつ加熱熟成した。そして、得られたスラリーを脱水洗浄し、脱水ケーキを110℃乾燥の後500℃で焼成して、Ti酸化物原料を得た。
【0055】
[原料調製2(Ti-Si原料:TiO2−20質量%SiO2複合酸化物原料)]
メタチタン酸スラリー(石原産業製)を還流器付攪拌機に仕込み、これにシリカゾル(日揮触媒化成社製、S−20L)を、TiO2100質量部に対してSiO2が20質量部となるように添加し、加えて25質量%アンモニア水をpH7.5以上となるように添加した後、60℃で3時間に亘り十分な撹拌を行いつつ加熱熟成した。
そして、得られたスラリーを脱水洗浄し、脱水ケーキを110℃乾燥の後500℃で焼成して、Ti−Si複合酸化物原料を得た。
【0056】
[原料調製3(Ti−W−Si原料:TiO2−5質量%WO3−10%SiO2複合酸化物原料)]
メタチタン酸スラリー(石原産業製)を還流器付攪拌機に仕込み、これにパラタングステン酸アンモニウム(日本新金属社製)を、TiO2100質量部に対してWO3が5質量部となるように添加し、さらにシリカゾル(日揮触媒化成社製、S−20L)を、TiO2100質量部に対してSiO2が10質量部となるように添加し、加えて25質量%アンモニア水をpH7.5以上となるように添加した後、60℃で3時間に亘り十分な撹拌を行いつつ加熱熟成した。
そして、得られたスラリーを脱水洗浄し、脱水ケーキを110℃乾燥の後500℃で焼成して、Ti−W−Si複合酸化物原料を得た。
【0057】
[原料調製4(Ti−Mo原料:TiO2−5質量%MoO3複合酸化物原料)]
メタチタン酸スラリー(石原産業製)を還流器付攪拌機に仕込み、これにパラモリブデン酸アンモニウムを、TiO2100質量部に対してMoO3が5質量部となるように添加し、加えて25質量%アンモニア水をpH7.5以上となるように添加した後、60℃で3時間に亘り十分な撹拌を行いつつ加熱熟成した。
そして、得られたスラリーを脱水洗浄し、脱水ケーキを110℃乾燥の後500℃で焼成して、Ti−Mo複合酸化物原料を得た。
【0058】
[原料調製5(Ti−W原料:TiO2−5質量%WO3複合酸化物原料)]
メタチタン酸スラリー(石原産業製)を還流器付攪拌機に仕込み、これにパラタングステン酸アンモニウム(日本新金属社製)を、TiO2100質量部に対してWO3が5質量部となるように添加し、加えて25質量%アンモニア水をpH7.5以上となるように添加した後、60℃で3時間に亘り十分な撹拌を行いつつ加熱熟成した。
そして、得られたスラリーを脱水洗浄し、脱水ケーキを110℃乾燥の後500℃で焼成して、Ti−W複合酸化物原料を得た。
【0059】
触媒調製
[比較例1]
上記のようにして得たTi酸化物原料22.7kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、パラモリデン酸アンモニウム(太陽鉱工製)920g、25質量%アンモニア水2.10kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるようにミキサーにて混練後、ハニカム状に押して60℃で72時間乾燥後、500℃で3時間焼成し触媒を得た。得られたハニカム状触媒は、隔壁の肉厚:0.50mm、目開き:3.20mm、外形75mmの態様であった。
【0060】
[比較例2]
上記のようにして得たTi-Si複合酸化物原料22.7kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、パラモリデン酸アンモニウム(太陽鉱工製)920g、25質量%アンモニア水2.10kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるようにミキサーにて混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出してサンプルを得ようとしたが、ハニカム形状にならず、ハニカムサンプルが採取できなかった。
【0061】
[比較例3]
同様に、上記のようにして得たTi酸化物原料1.29kgとTi−Si複合酸化物原料21.39kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、パラモリデン酸アンモニウム(太陽鉱工製)920g、25質量%アンモニア水2.30kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるように混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出して60℃で72時間乾燥後、500℃で3時間焼成し触媒を得た。
【0062】
[実施例1]
同様に、上記のようにして得たTi酸化物原料21.91kgとTi−Si複合酸化物原料0.773kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、パラモリデン酸アンモニウム(太陽鉱工製)920g、25質量%アンモニア水2.30kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるように混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出して60℃で72時間乾燥後、500℃で3時間焼成し触媒を得た。
【0063】
[実施例2]
同様に、Ti酸化物原料12.37kgとTi−Si複合酸化物原料10.31kgを使用すること以外は実施例1と同様にして触媒を得た。
【0064】
[実施例3]
同様に、Ti酸化物原料3.35kgとTi−Si複合酸化物原料19.33kgを使用すること以外は実施例1と同様にして触媒を得た。
【0065】
[実施例4]
同様に、Ti酸化物原料5.93kgとTi−W−Si複合酸化物原料16.75kgを使用すること以外は実施例1と同様にして触媒を得た。
【0066】
[実施例5]
同様に、Ti−Si複合酸化物原料0.73kgとTi−Mo複合酸化物原料21.91kgを使用すること以外は実施例1と同様にして触媒を得た。
【0067】
[実施例6]
同様に、Ti−Si複合酸化物原料0.73kgとTi−W複合酸化物原料21.91kgを使用すること以外は実施例1と同様にして触媒を得た。
【0068】
[実施例7]
同様に、上記のようにして得たTi酸化物原料13.66kgとTi−Si複合酸化物原料10.31kgに、50質量%硝酸マンガン水溶液4.53kg、パラモリデン酸アンモニウム(太陽鉱工製)920g、25質量%アンモニア水2.30kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるように混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出して60℃で72時間乾燥後、500℃で3時間焼成し触媒を得た。
【0069】
[実施例8]
同様に、上記のようにして得たTi酸化物原料13.66kgとTi−Si複合酸化物原料10.31kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、硝酸ランタン六水和物2.03kg、25質量%アンモニア水2.30kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるように混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出して60℃で72時間乾燥後、500℃で3時間焼成し触媒を得た。
【0070】
[実施例9]
同様に、上記のようにして得たTi酸化物原料13.66kgとTi−Si複合酸化物原料10.31kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、硝酸イットリウム六水和物2.57kg、25質量%アンモニア水2.30kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるように混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出して60℃で72時間乾燥後、500℃で3時間焼成し触媒を得た。
【0071】
[実施例10]
同様に、上記のようにして得たTi酸化物原料13.66kgとTi−Si複合酸化物原料10.31kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、硝酸第一セリウム六水和物2.53kg、25質量%アンモニア水2.30kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるように混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出して60℃で72時間乾燥後、500℃で3時間焼成し触媒を得た。
【0072】
[比較例4]
同様に、Ti−Mo複合酸化物原料22.7kgを使用すること以外は比較例1と同様にして触媒を得た。
【0073】
[比較例5]
同様に、上記のようにして得たTi酸化物原料0.52kgとTi−Si複合酸化物原料22.16kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、パラモリデン酸アンモニウム(太陽鉱工製)920g、25質量%アンモニア水2.30kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるように混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出して85℃で48時間乾燥後 、500℃で3時間焼成し触媒を得た。
【0074】
[比較例6]
同様に、上記のようにして得たTi酸化物原料0.52kgとTi−Si複合酸化物原料22.16kgに、メタバナジン酸アンモニウム(新興化学工業社製)1.285kg、パラモリデン酸アンモニウム(太陽鉱工製)920g、25質量%アンモニア水2.30kgと水、ポリエチレングリコール(第一工業製薬社製 PEG−20000)125g、結晶セルロース(セオラスTG−101)125gを添加し、水分濃度が30質量%になるように混練後、隔壁厚0.50mm、目開き3.20mm、外径75mmのハニカム状に押し出して60℃の熱風をハニカム孔内に通風 させ48時間乾燥後、500℃で3時間焼成し触媒を得た。
【0075】
[試験例1] BET比表面積測定、水銀ポロシメータ比表面積測定によるスリット由来比表面積の見積もり
実施例および比較例において得られた各触媒について、BET比表面積測定値と、水銀ポロシメータによる5nmから5μmの細孔が占める比表面積測定値の比較を行った。BET法による比表面積SABETは大小全ての細孔およびスリットによって形成される比表面積の値であるため、この値から水銀ポロシメータによる5nmから5μmの細孔が占める比表面積SAHgの測定値を引いた値は、スリットの比表面積値と相関する値となり、また、触媒表面に一様にスリットが分布していることを示す指標となる。
BET比表面積測定及び水銀ポロシメータ比表面積測定は以下の条件で行った。
BET比表面積測定装置:Mountech HM model-1220
BET比表面積測定条件:前処理300℃1時間、BET一点法
水銀ポロシメータ比表面積測定装置:Quantachrome PoreMaster
水銀ポロシメータ比表面積測定条件:前処理300℃1時間、水銀圧入角130度、表面張力473erg/cm2
【0076】
第1表に、BET比表面積測定値(SABET)、水銀ポロシメータ比表面積測定における5nmから5μmの細孔が占める比表面積測定値(SAHg)を示す。SABET−SAHgの値は、実施例1〜8の触媒の場合は25〜35の範囲内となった。一方、比較例1〜6の触媒の場合は、この範囲を外れる値となった。また、実施例1〜8の触媒におけるスリットは触媒表面の一部分のみではなく一様に分布しているといえる。
【0077】
[試験例2] スリット割合の測定
マイクロスコープを全貫通孔内に挿入し、ハニカム端面における幅が0.005mm以上かつセルの目開き(3.2mm)以下である隔壁のスリットに数を数えた(隣り合う貫通孔の間に存在する重複したスリットは同一のものと見なす)。
【0078】
次に、隔壁数(20セル×(20セル−1)×2=760)に対する割合(百分率)を求めた。
結果を第1表に示す。
第1表に示すように、実施例1〜8の触媒の場合、スリット割合(すなわち、スリット数/隔壁数×100)は0.03〜3%(片端面あたり)の範囲内となった。
【0079】
[試験例3] スリット長さの測定
マイクロスコープを貫通孔内に挿入し、スリット長を測定し、その中で最大値をスリット長さとした。
【0080】
[試験例4] 圧縮強度測定
実施例1〜8および比較例1〜6の各々において得られた触媒を長さ75mmに切断し、75mm×75mmの大きさの立方体形状に切り出した後、図2に示すように、触媒貫通孔と垂直な方向に圧縮し、触媒が完全に破壊した時の圧力を測定した。
結果を第1表に示す。実施例1〜8の触媒の場合、圧縮強度が50〜200N/cm2の範囲内となった。すなわち、圧縮強度が高いハニカム状触媒であることを確認できた。
【0081】
[試験例5] CaCl2溶液スプレー、硫安による触媒の加速劣化試験
実施例および比較例において得られた各触媒について、4目×4目×107mmLに切り出し(肉厚:0.50mm、目開きの幅:3.20mm)、石英反応管にセットした後、Fresh状態での触媒脱硝性能を測定した。ここで触媒接触前後のガス中の窒素酸化物(NOx)の脱硝率は、下記式により求めることができる。このとき、NOxの濃度は化学発光式の窒素酸化物分析計(株式会社 アバテック・ヤナコ社製、ECL−88AO)で測定した。
脱硝率(%)={(未接触ガス中のNOx(体積ppm)−接触後のガス中のNOx(体積ppm))/未接触ガス中のNOx(体積ppm)}×100
ここで求められた初期脱硝率をη0(%)とした。また反応速度定数k0=―AV×ln(1−η0/100)を算出した。
その後、石英反応管中にCaCl2溶液を噴霧するためのノズルを取り付け、触媒上流側からCaCl2溶液を添加した。ノズルは石英反応管の上流側の端面から300mm離して設置した。CaCl2溶液の濃度は0.1質量%、噴霧時間は48時間で実施した。CaCl2溶液スプレー後、再び触媒の脱硝性能を測定した。ここで求められた劣化後脱硝率をη(%)からk=―AV×ln(1−η/100)を算出した。そして、k/k0を求めて、Fresh状態の性能との比較を行った。性能測定及びCaCl2溶液スプレーはいずれも130℃で実施した。測定条件は以下に示す通りである。
活性測定条件
反応温度:130℃、SV=3000(1/h)、ガス風量=0.075(Nm3/h)、AV=3.30(Nm3/m2h)、NO=180(体積ppm)、NH3=180(体積ppm)、SO2=40(体積ppm)、O2=7体積%、H2O=10体積%、N2=バランス
加速劣化試験条件
SV=3000(1/h)、ガス風量=0.075(Nm3/h)、AV=3.30(Nm3/m2h)、NO=0(体積ppm)、NH3=0(体積ppm)、SO2=1000(体積ppm)、O2=7体積%、H2O=10体積%(CaCl2溶液として)、N2=バランス
【0082】
結果を第1表に示す。比較例1〜6の触媒に比べ、実施例1〜8の触媒はCaCl2溶液スプレー後も活性が高いことがわかる。
【0083】
[試験例6] 低温脱硝試験
実施例および比較例において得られた各触媒について、4目×4目×107mmLに切り出し(肉厚:0.50mm、目開きの幅:3.20mm)、石英反応管にセットした後、低温脱硝性能を測定した。
ここで触媒接触前後のガス中の窒素酸化物(NO)の脱硝率は、上記式により求めた。このときNOの濃度は化学発光式の窒素酸化物分析計(株式会社 アナテック・ヤナコ製、ECL-88AO)にて測定した。
【0084】
低温脱硝性能の測定方法は次の通りである。
反応温度:110℃、空塔速度(SV)=3000hr−1
モデルガス組成:NO=180体積ppm、NH3=180体積ppm、O2=7体積%、H2O=10体積%、N2=バランス
【0085】
結果を第1表に示す。第1表では低温脱硝性能が65%以上であったものを良好(○)、65%未満であったものを不良(×)と記した。
【0086】
【表1】
【0087】
第1表に示すように、実施例1〜10の触媒は、SABET−SAHgの値が25〜35の範囲内となり、スリット数/隔壁数×100の値が0.03〜3%(片端面あたり)の範囲内となり、スリット長さは、ハニカム触媒の長手方向に対して5〜80%の範囲内となり、圧縮強度は50〜200N/cm2の範囲内となり、CaCl2溶液スプレー後の活性が高く、低温脱硝性能が高いことがわかった。
【0088】
これに対して、成分Bを含まない態様である比較例1および比較例4は、SABET−SAHgの値が低くなり、スリットが形成されなかった。このような比較例1および比較例4の場合、CaCl2溶液スプレー後の活性が低くなった。
また、成分Aを含まない態様である比較例2は、成形状態(生産性)も悪く、得られた成形体の強度不足等により崩壊してしまい、ハニカム状の触媒とならなった。
また、成分Aと成分Bとの比率が5:83であり、触媒中のSiO含有率が16質量%を超えている比較例3は、SABET−SAHgの値が高くなり、圧縮強度が低くなった。比較例5および比較例6についても同様の傾向であった。
図1
図2