(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第IA族および第IIA族金属は、0より大から14000ppmまでの範囲の総濃度で、液体反応組成物中に存在する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプロセス。
液体反応組成物は、5〜35重量%の濃度に維持された無水酢酸と、20〜50重量%の濃度の酢酸と、および残部が酢酸メチル、ヨウ化メチル、金属塩、および第VIII族金属触媒、および任意に第VIII族金属触媒用の一つ以上の促進剤を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のプロセス。
【背景技術】
【0002】
無水酢酸および無水酢酸と酢酸との混合物は、酢酸メチル、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物を、実質無水条件下で、ロジウムのような第VIII族金属触媒およびヨウ化メチルの存在下でカルボニル化することにより生産可能である。このような液相カルボニル化プロセスにおいて、無水酢酸および酢酸の粗混合物は、カルボニル化反応器から液体反応組成物を取り出し、且つ取り出された液体反応組成物をフラッシュ分離領域に導入し、酢酸、無水酢酸およびヨウ化メチルを含む気体画分と、無水酢酸および触媒を含む液体画分とを生産することにより回収される。この気体画分は、次いで一つ以上の蒸留段階に通過され、無水酢酸および酢酸生産物が回収される一方で、液体画分は典型的には反応器に再循環される。無水酢酸は酢酸よりも高い沸点を有し、一般的に、酢酸は無水酢酸よりも揮発性が高いため、酢酸に優先して無水酢酸を回収することは困難なままである。
【0003】
酢酸および無水酢酸の併産用プロセスにおいて、ロジウム触媒のための触媒促進剤として、第IA族および/または第IIA族の金属塩を使用することは既知である。すなわち、US6,541,666号公報には、酢酸メチルおよび/またはジメチルエーテルを含むカルボニル化される供給原料をカルボニル化反応器に導入して無水酢酸および酢酸を併産するプロセスにおいて、無水酢酸、酢酸、ロジウムカルボニル化触媒、ヨウ化アルキル共触媒および本質的にアルカリ金属ヨウ化物および/またはアルカリ土類金属ヨウ化物からなるヨウ化物塩促進剤を含む液体反応組成物が保持され、この液体反応組成物中で、カルボニル化される供給原料と一酸化炭素とを接触させて酢酸および無水酢酸を生産し、且つカルボニル化反応器に対して供給される液体成分の総供給量の0.1〜20重量%の範囲で、ギ酸メチルおよび/またはギ酸を該反応器に導入することが記載されている。
【0004】
WO2007/145795公報には、酢酸または酢酸と無水酢酸との混合物の液相における生産プロセスが記載されている。このWO2007/145795公報に開示された触媒系では、促進剤成分を含み、この成分は、(1)ヨウ化リチウム、または第四級有機リンまたは有機窒素化合物のような、ヨウ化物塩、または(2)無機化合物または有機リン化合物または有機窒素化合物であって、カルボニル化反応領域においてヨウ化物塩を形成する化合物となり得る。
【0005】
WO99/55658号公報には、液相における無水酢酸の製造プロセスが開示される。WO99/55658号公報に開示される触媒系は促進剤成分を含み、これは(1)ヨウ化リチウム、または第四級有機リンまたは有機窒素化合物のような、ヨウ化物塩、または(2)無機化合物、または有機リン化合物または有機窒素化合物であって、カルボニル化反応領域においてヨウ化物塩を形成する化合物となり得る。
【0006】
CH152249号公報には、アルカリまたはアルカリ土類金属酢酸塩を使用し、水溶液および非水溶液中で、無水酢酸および酢酸を分離することが記載される。CH152249号公報には、酢酸および無水酢酸の併産プロセスについては記載されていない。
【0007】
連続カルボニル化プロセスによる、無水酢酸および酢酸の併産プロセス中、望ましくない副産物として、アセトンが形成されることは既知である。典型的には、アセトンは、反応器および/または酢酸メチルおよびヨウ化メチルを含むプロセス再循環流中に蓄積され、更にタールのような他の望ましくない副産物を生じさせ、および/または全体的なプロセス効率の低下につながる可能性がある。アセトン、酢酸メチルおよびヨウ化メチルからなる混合物からアセトンを分離させるプロセスがいくつか知られている。
【0008】
すなわち、US4,717,454公報には、酢酸メチルおよび/またはジメチルエーテルをカルボニル化して得られた反応混合物から副産物のアセトンを除去するプロセスが記載され、ここには、副産物のアセトンを0.01〜150barの圧力をかけて50℃〜250℃の温度で凝縮させて、主に高沸点副産物を得られるようにし、連続蒸留領域において、蒸留により分離可能にする。
【0009】
酢酸メチルおよび/またはジメチルエーテルをカルボニル化して、無水酢酸および酢酸を併産するプロセスにおいて、反応器中の無水酢酸の濃度が望ましくない副産物の形成に影響することが見出された。理論により拘束されることなく、このようなカルボニル化プロセスにおいて、反応器中の無水酢酸の一部が、分解してアセトン及び二酸化炭素を形成すると考えられている。したがって、反応器中の無水酢酸の濃度が増加すると、一般的に、対応する望ましくない副産物が形成されることになる。しかしながら、反応器における無水酢酸の濃度が減少すると、無水酢酸の生産率に対して望ましくない低下が生じる。
【0010】
無水酢酸は、酢酸よりも沸点が高く、一般的に、酢酸は無水酢酸よりも揮発性が高い。したがって酢酸に優先して無水酢酸の回収は困難なままである。しかしながら、無水酢酸は、より経済的に価値があるため、酢酸に対してできるだけ多くの無水酢酸を回収することが有利である。
【0011】
酢酸生産物または無水酢酸生産物のいずれかの相対的な量を容易に変更できるように、酢酸および無水酢酸の併産において、柔軟性を維持することが更に望ましい。操作上、カルボニル化プロセスの供給原料として使用できる酢酸メチルを調製する際にメタノールでエステル化するために使用できるよう、酢酸の過剰量で酢酸の連続生産を維持することが望ましい。このような過剰な酢酸が使用され、酢酸精製システムを通して十分な酢酸流を維持させることにより、酢酸精製システムにおいて十分な装填が維持されるため、所定の動作の閾値を満足させる、および/または、精製システムにおいて、例えばプロセスの起動または中断のような、特定の状況下で、酢酸の出口量の増加に応じて起動させる必要がなく、同様に、この二つの生産物に対して相対的な需要の変化に応じて応答できるようにする必要がない。
【0012】
したがって、無水酢酸の生産を増大させると共に、反応領域において無水酢酸の濃度を増加させる必要性がない、酢酸および無水酢酸の改良された併産プロセスを提供することが望ましい。また、無水酢酸の生産量を増大させる一方で、副産物の形成率を抑制させるか少なくとも維持させることが望ましい。
【0013】
したがって、本発明は酢酸および無水酢酸の併産のための連続プロセスを提供し、該プロセスは、:
(a)反応領域において、一酸化炭素を、酢酸メチル、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物、第VIII族金属触媒、ヨウ化メチル、酢酸、無水酢酸、0.1重量%以下の濃度の水を含む液体反応組成物と接触させ;
(b)液体反応組成物を反応領域から取り出し、且つ取り出した液体反応組成物の少なくとも一部をフラッシュ分離領域に導入し;そして
(c)フラッシュ分離領域から、無水酢酸、酢酸およびヨウ化メチルを含む気体画分と、無水酢酸および第VIII族金属触媒を含む液体画分とを除去する;
工程を含み、
ここで、液体反応組成物およびフラッシュ分離領域に導入させる取り出した液体反応組成物のうちの少なくとも一つが、第IA族および第IIA族金属の塩から選択された少なくとも一つの金属塩を含み、且つフラッシュ分離領域から除去した気体画分における、酢酸対無水酢酸のモル比が、1より大または1に維持され、好適には1.2より大または1.2に維持される。
【0014】
有利には、フラッシュ分離領域から除去した気体画分における、酢酸対無水酢酸のモル比が、1より大または1に維持され、好適には1.2より大または1.2に維持されることにより、無水酢酸の純生産量が増加する一方で、カルボニル化反応領域における無水酢酸の濃度を所定値に維持し且つ副産物形成における対応する増加のないことが見出された。
【0015】
典型的には、無水酢酸と酢酸の併産プロセスにおける反応物質として使用するための酢酸メチルは、酢酸でメタノールをエステル化するプロセスにより生成される。このようなエステル化プロセス用の酢酸は、無水酢酸と酢酸との併産プロセスにおいて生産される酢酸の少なくとも一部により供給可能である。したがって、本発明の更なる利点は、フラッシュ分離領域から除去された気体画分における、酢酸対無水酢酸のモル比が、1より大または1に維持されることにより、十分な酢酸が生産され(少なくとも1モルの酢酸)、その結果、メタノールおよび酢酸反応物質から、酢酸メチルを生成するためのエステル化プロセスに利用可能であり;好適には、フラッシュ分離領域から除去された気体画分における、酢酸対無水酢酸のモル比が、1.2より大または1.2に維持されることにより、十分な酢酸が生産され、その結果メタノールおよび酢酸反応物質から酢酸メチルを生成するためのエステル化プロセスに利用可能である一方で、それ自体が生成物として任意に回収可能な酢酸の量を維持しおよび/または酢酸精製システムを通して該酢酸精製システムの連続操作を維持できる酢酸の量を維持する。
【0016】
本発明によれば、反応領域において、一酸化炭素は、酢酸メチル、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物、第VIII金属触媒、ヨウ化アルキル、酢酸、無水酢酸、0.1重量%以下の濃度の水を含む液体反応組成物と接触される。
【0017】
酢酸メチル、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物と一酸化炭素とのカルボニル化反応は、反応領域において生じる。この反応領域は、単一反応領域または複数の反応領域から構成できることを理解すべきである。
【0018】
この反応領域は、撹拌のための手段を備えることができる圧力容器を一つ以上含んでよい。
【0019】
適切には、反応領域は、高められた温度および圧力で維持され、例えば温度が150℃〜220℃、好適には175℃〜200℃であり、且つ全圧が、1000kPa〜10000kPa(10〜100bara)、好適には全圧が2000〜5000kPa(20〜50bara)である。
【0020】
本発明で使用される一酸化炭素は、実質純粋な原料、好適には少なくとも95%純粋な原料として使用可能であり、必要に応じて、二酸化炭素、窒素、メタンおよび不活性ガスのような不活性希釈剤が存在し得る。あるいは、一酸化炭素は、水素との混合物を使用することができ、例えば、一酸化炭素と0より大から10vol%の水素との混合物として使用できる。
【0021】
酢酸メチル、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物は連続的に反応領域に供給可能である。これは、もちろん、ジメチルエーテルがカルボニル化反応で酢酸メチルに変換されることにより、酢酸メチル前駆体と考えられることは理解される。
【0022】
液体反応組成物における、酢酸メチルおよびジメチルエーテルの総濃度は、適切には約5〜約30重量%の範囲、好適には約10〜約20重量%の範囲に維持される。適切には、液体反応組成物における、酢酸メチルの濃度が、約5〜約30重量%の範囲、好適には約10〜約20重量%の範囲に維持される。
【0023】
酢酸メチルおよび/またはジメチルエーテルのカルボニル化反応は、任意の適切な第VIII族金属触媒、例えばロジウム又はイリジウム触媒を使用して促進される。好適には、第VIII族金属触媒は、ロジウム触媒である。酢酸メチルまたはジメチルエーテルのカルボニル化反応に有用な任意の可溶性ロジウム触媒が本発明に使用可能である。このロジウム源は、例えば、塩化ロジウム(III)、塩化ロジウム(III)三水和物、臭化ロジウム(III)または、ヨウ化ロジウム(III)のような単純な無機塩;ロジウムのカルボニル錯体またはロジウムの有機金属錯体、または配位金属錯体、例えば、[Rh(CO)
2Cl]
2、[Rh(CO)
2I]
2、[Rh(Cod)Cl]
2、酢酸ロジウム(III)、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、RhCl
3(PPh
3)
3およびRhCl(CO)(PPh
3)
2が含まれる。
【0024】
触媒の量は重要ではなく、広い範囲にわたり変更可能である。しかしながら、典型的には、反応領域における液体反応組成物に存在するロジウム金属の濃度は、約50〜約2000ppmの範囲、例えば約100〜約1000ppmの範囲にある。
【0025】
本発明によれば、液体反応組成物、およびフラッシュ領域に導入される取り出された液体反応組成物のうちの少なくとも一つは、第IA族および第IIA族金属塩の塩から選択される少なくとも一つの金属塩を含む。したがって、適切には、一つの金属塩が、反応領域中の液体反応組成物に存在しあるいは加えられ、または、反応領域から取り出された後であってフラッシュ分離領域に導入される前に、液体反応組成物に加えられる。好適には、反応領域中の液体反応組成物は少なくとも一つの金属塩を含む。
【0026】
誤解を避けるため、元素周期律表の第IA族の元素は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。第IIA族の元素は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。
【0027】
金属塩は、液体反応組成物に溶解するか、またはそれらの可溶型に変換可能な任意の第IA族または第IIA族の金属塩であって良い。適切には、金属塩は第IA族または第IIA族の金属酢酸塩、または第IA族または第IIA族の金属ハロゲン化物、例えば第IA族または第IIA族の金属ヨウ化物である。
【0028】
金属塩は、固体として、または液体反応組成物と相溶性のある、例えば酢酸のような溶媒中の溶液として添加できる。
【0029】
本発明の態様において、金属塩は、リチウム塩、例えば、酢酸リチウムおよびハロゲン化リチウムから選択される少なくとも一つのリチウム塩、例えばヨウ化リチウムである。
【0030】
更なる態様において、反応領域における液体反応組成物は、リチウム塩である金属塩、例えば、酢酸リチウムおよびハロゲン化リチウムから選択される少なくとも一つのリチウム塩、例えばヨウ化リチウムを含む。
【0031】
酢酸および無水酢酸の併産用の液体反応組成物中に、第IA族または第IIA族の金属塩の少なくとも一つが存在することにより、酢酸に対する無水酢酸の相対揮発度が高まる効果があることが現に見出された。したがって、液体反応組成物が第IA族または第IIA族の金属塩の少なくとも一つを含み、且つ液体反応組成物がフラッシュ領域に導入されるプロセスでは、液体反応組成物に第IA族および第IIA族の金属塩を全く含まないプロセスで得られた気体画分に含まれる無水酢酸の量に比較して、より多くの無水酢酸がフラッシュ領域から除去された気体画分に存在し得る。
【0032】
フラッシュ分離領域において、酢酸に対して無水酢酸の相対分離を促進させる金属塩の能力は、無水酢酸と酢酸のフラッシュ因子の比から決定できる。一成分のフラッシュ因子(FF)は、以下の式に従って決定することができる:
【0033】
FF(成分)=(フラッシュ気体中の成分の質量×フラッシュ気体の質量流量)/(フラッシュへの液体反応組成物中の成分の質量×フラッシュへの液体反応組成物の質量流
量)、ここで「成分」は、酢酸または無水酢酸である。
【0034】
フラッシュ因子比は、FF(酢酸)/FF(無水酢酸)から算出される。
【0035】
したがって、フラッシュ因子比の値が低いほど、反応領域における、酸対無水物のモル比が、1より大または1、すなわち、≧1:1、好ましくは酸対無水物のモル比が、1.2より大または1.2、すなわち、≧1.2:1を達成するために必要な無水酢酸の濃度が低くなる。
【0036】
適切には、フラッシュ因子比が約0.2〜約1.4の範囲、例えば約0.3〜約1.4の範囲、または約0.2〜約1.0の範囲、例えば約0.3〜約1.0の範囲、約0.2〜約0.75の範囲、または約0.3〜約0.75の範囲にある。
【0037】
本発明にしたがって使用される金属塩の量は、液体反応組成物における塩の溶解限度の範囲内にすべきであり、且つフラッシュ分離領域からの気体画分中酢酸対無水酢酸のモル比が1より大または1であり、好適には1.2より大または1.2を達成するのに十分な有効量とすべきである。
【0038】
適切には、第IA族および第IIA族の金属塩、好適には第IA金属塩は、液体反応組成物中に、総濃度で、第IA族または第IIA族の金属の、0より大から約14000ppmまでの範囲内、例えば約1000〜約6000ppmの範囲、例えば約1000ppm〜約5000ppmの範囲にある。
【0039】
本発明の一態様において、使用する金属塩は、第IA金属塩、例えば、リチウム塩、例えば酢酸リチウムまたはヨウ化リチウムであり、液体反応組成物におけるリチウム塩の濃度は、リチウムの0より大〜約14000ppmの範囲、例えばリチウムの約1000〜約6000ppmの範囲、例えばリチウムの約1000〜約5000ppmの範囲にある。
【0040】
有利には、本発明のプロセスは、反応領域における無水酢酸の濃度の対応する増加を必要とせずに、無水酢酸の生産を増大できる。液体反応組成物に存在する第IA族または第IIA族の金属の濃度が高いほど、フラッシュ気体画分における酢酸対無水酢酸のモル比を1より大または1(すなわち≧1:1)、好適には、1.2より大または1.2(すなわち、≧1.2:1)に維持するために必要な反応領域中の無水酢酸の濃度が低くなる。
【0041】
望ましくは、反応領域における液体反応組成物中の無水酢酸の濃度は、約5〜約35重量%の範囲、例えば約5〜約30重量%の範囲、例えば約5〜約25重量%の範囲、例えば約10〜約25重量%の範囲に維持される。
【0042】
本発明の態様において、フラッシュ因子比は約0.2〜1.4の範囲、例えば約0.3〜約1.0、例えば約0.3〜約1.0の範囲、好適には約0.3〜約0.75の範囲に維持され、且つ反応領域における液体反応組成物中の無水酢酸の濃度は、約5〜約30重量%、例えば約5〜約25重量%、約10〜約25重量%の範囲に維持される。
【0043】
他の態様において、反応領域における液体反応組成物中の無水酢酸の濃度は、約5〜約30重量%の範囲、例えば約5〜約25重量%の範囲、例えば約10〜約25重量%の範囲に維持され、且つ第IA族および第IIA族金属塩の総濃度は、第IA族および第IIA族の金属の約0より大〜約14000ppm、例えば第IA族および第IIA族の金属の約1000〜約13500ppmの範囲にある。
【0044】
反応領域における液体反応組成物は、追加的に第VIII族の金属触媒用の一つ以上の促進剤、例えばロジウム触媒用の一つ以上の促進剤を含むことができる。適切な促進剤は、(i)第四級の有機リン化合物または有機窒素化合物のヨウ化物塩、または(ii)リチウムヨウ化物のような無機ヨウ化物塩、または(iii)液体反応組成物にヨウ化物塩を形成する無機塩または有機窒素化合塩または有機リン化合物を含む。
【0045】
第四級の有機リン化合物または有機窒素化合物の適切なヨウ化物塩は、テトラアルキルホスホニウムヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨウ化物、トリフェニル(アルキル)ホスホニウムヨウ化物、及びΝ,Ν'−ジアルキルイミダゾリウムヨウ化物であって、該アルキル基が8個までの炭素原子を含むヨウ化物を含む。
【0046】
Ν,Ν'−ジアルキルイミダゾリウムヨウ化物の例は、1,3−ジアルキル−4−アルキルイミダゾリウムヨウ化物を含み、ここで該アルキル基は8個までの炭素原子を含み、好適にはメチルまたはエチルアルキル基である。
【0047】
無機塩である促進剤の一部または全ては、液体反応組成物において、ヨウ化物塩を形成する塩として供給可能である。したがって、促進剤は、酢酸塩、水酸化物、塩化物または臭化物の形態で最初に提供されて良い。有機リン含有または有機窒素含有促進剤は、リンまたは窒素原子が三価である化合物、例えば、トリブチルホスフィン、トリブチルアミン、イミダゾールおよびN−メチルイミダゾールであって、液体反応組成物中に存在するヨウ化メチルによって四級化されている化合物として供給される。
【0048】
液体反応組成物中の促進剤の量は、様々な要因によって、特に使用される特定の促進剤によって変更可能である。適切には、有機リン含有または有機窒素含有促進剤の量は液体反応組成物中に、促進剤対触媒のモル比が少なくとも0.5:1、例えば、0.5:1〜10
5:1の範囲にあるような量で、存在可能である。
【0049】
第IA族または第IIA族の金属塩を促進剤として使用することが望まれる場合、該金属塩は、反応領域中の液体反応組成物において、フラッシュ分離領域からの気体画分における酢酸対無水酢酸のモル比が1より大または1、好適には、1.2より大または1.2に到達するような濃度で存在する。
【0050】
メチルヨウ化物が反応領域における液体反応組成物中に、約1〜約30重量%、例えば約5〜約20重量%の量で存在可能である。
【0051】
酢酸は、反応領域における液体反応組成物中に約15〜約50重量%、例えば約20〜約50重量%、例えば約20〜約30重量%の量で維持され得る。
【0052】
適切には、液体反応組成物は、5〜35重量%、例えば5〜25重量%の濃度で維持された無水酢酸と、20〜50重量%の濃度で維持された酢酸と、および残部が酢酸メチル、ヨウ化メチル、リチウム塩のような金属塩、および第VIII族金属触媒、および任意で、第VIII族金属触媒用の一つ以上の促進剤、例えば一つ以上のイミダゾリウム塩を含む。
【0053】
適切には、液体反応組成物は、5〜35重量%、例えば5〜25重量%の濃度で維持された無水酢酸と、20〜50重量%の濃度の酢酸と、および残部が酢酸メチル、ヨウ化メチル、リチウム塩のような金属塩、および第VIII族金属触媒、および任意で、第VIII族金属触媒のための一つ以上の促進剤、例えば一つ以上のイミダゾリウム塩を含み、且つ液体反応組成物は、175℃〜200℃の範囲の温度且つ20〜50bargの範囲の圧力でフラッシュ分離領域に導入される。
【0054】
カルボニル化反応は、反応領域内で、実質無水条件下で実施される。すなわち、液体反応組成物に存在する水の濃度は、0.1重量%未満である。好適には、反応領域に存在する液体反応組成物には、水は全く存在しない。
【0055】
本発明の態様において、酢酸および無水酢酸の併産のための連続プロセスは、:
(a)反応領域において、一酸化炭素を、酢酸メチル、ジメチルエーテル、またはそれらの混合物と、ロジウム触媒と、ヨウ化メチルと、酢酸と、5〜25重量%の濃度の無水酢酸と、0.1重量%以下の濃度水とを含む液体反応組成物とを接触させ;
(b)反応領域から液体反応組成物を取り出し、且つ取り出した液体反応組成物の少なくとも一部をフラッシュ分離領域に導入し;および
(c)フラッシュ分離領域から、無水酢酸、酢酸およびヨウ化メチルを含む気体画分と、無水酢酸、ロジウム触媒を含む液体画分とを除去する;
工程を含み、
ここで、液体反応組成物、およびフラッシュ分離領域に導入させる取り出した液体反応組成物の少なくとも一つは、第IA族および第IIA族金属の塩から選択される少なくとも一つの金属塩を含み、且つフラッシュ分離領域から除去させる気体画分中の酢酸対無水酢酸のモル比は1より大または1、好適には1.2より大または1.2に維持される。
【0056】
本発明のプロセスにおいて、液体反応組成物は、反応領域から取り出され、且つフラッシュ分離領域に導入され、ここで液体反応組成物は、気体画分と液体画分に分離される。
【0057】
液体反応組成物の除去速度は、フラッシュバルブにより制御可能であり、このバルブを横断して、圧力は、反応領域における圧力から、フラッシュ分離領域における圧力まで減圧される。
【0058】
フラッシュの深さを増加させるため、反応領域から取り出される液体反応組成物の温度は、フラッシュ分離領域に導入する前に、例えばヒーターを用いて適切に増加される。
【0059】
適切には、液体反応組成物は、反応領域から取り出された際の温度よりも、約10℃〜約20℃高められた温度で、フラッシュ分離領域に導入される。
【0060】
フラッシュ分離領域は、断熱フラッシュ容器を含むことができる。あるいは、フラッシュ分離領域は、一つ以上の加熱手段を設けることができる。
【0061】
フラッシュ分離領域の温度および圧力条件は、変更可能であり、液体反応組成物に存在する無水酢酸および酢酸の相対量のような因子に依存可能である。液体反応組成物に存在する無水酢酸は、気体画分および液体画分の間で分配されるように条件が選択される。望ましくは、フラッシュ分離領域は、液体画分の凝固点よりも上の温度であるものの、液体反応組成物の全てが揮発される温度よりも低い温度であって、且つ好適には、液体反応組成物の成分の望ましくない分解が回避あるいは軽減される温度で操作される。
【0062】
適切には、フラッシュ分離領域は、約50℃〜約400℃の温度、例えば約50℃〜約300℃の温度で操作される。
【0063】
フラッシュ分離領域は、ある圧力範囲で作動することができ、気体画分と液体画分の間に、無水酢酸の所望の分配を提供するように、特定の作動圧力が選択できる。フラッシュ分離領域は、大気圧未満、大気圧、または加圧下で操作可能であり、適切には、0bargから10bargまでの圧力で、例えば0bargから3bargまでの圧力で操作可能である。
【0064】
フラッシュ分離領域から除去される気体画分は、無水酢酸、酢酸および低沸点成分、例えばヨウ化メチル、酢酸メチルおよび/またはジメチルエーテルを含む。この気体画分は、またアセトンのような副産物を少量含み得る。
【0065】
適切には、フラッシュ分離領域から取り除かれる気体画分における酢酸対無水酢酸のモル比は、1〜3.5:1の範囲、例えば1〜3:1の範囲、好適には1.2〜3.5:1の範囲、より好適には1.2〜3:1の範囲、例えば1.2〜2.8:1の範囲、例えば1.2〜2.5:1の範囲、例えば1.2〜1.5:1の範囲に維持される。本発明の一つの特定の態様においては、フラッシュ分離領域から除去される気体画分における酢酸対無水酢酸のモル比は、約1:1に維持される。
【0066】
本発明の態様において、フラッシュ分離領域から除去される気体画分における酢酸対無水酢酸のモル比は、1〜3:1の範囲、好適には1.2〜3:1の範囲にあり、且つ液体反応組成物における無水酢酸の濃度は、約5〜約35重量%の範囲、例えば約5〜約25重量%の範囲に維持される。
【0067】
本発明の別の態様において、フラッシュ分離領域から除去される気体画分における酢酸対無水酢酸のモル比は、1〜3:1の範囲、好適には1.2〜3:1の範囲にあり、且つ液体反応組成物は、5〜35重量%の濃度、例えば5〜25重量%の濃度で維持された無水酢酸、20〜50重量%の濃度の酢酸、および残部が酢酸メチル、ヨウ化メチル、金属塩例えばリチウム塩、および第VIII族金属触媒成分を含む。
【0068】
本発明の別の態様において、フラッシュ分離領域から除去される気体画分における酢酸対無水酢酸のモル比は、1〜3:1の範囲、好適には1.2〜3:1の範囲にあり、且つフラッシュ因子比が約0.2〜約1の範囲、好適には約0.3〜約1の範囲、例えば約0.3〜約0.75の範囲にある。この態様において、液体反応組成物における無水酢酸の濃度は、適切には、約5〜約25重量%の範囲にある。
【0069】
フラッシュ分離領域から除去される液体画分は、無水酢酸中に、または無水酢酸および酢酸の混合物中に、触媒の溶液を含む。液体画分は、一般的には、金属塩および/または触媒促進剤も含み得る。
【0070】
適切には、フラッシュ分離領域からの液体画分の少なくとも一部は、反応領域に再循環される。
【0071】
適切には、フラッシュ分離領域からの気体画分の少なくとも一部は、無水酢酸生成物と酢酸生成物を分離し、回収するための精製領域に移送される。
【0072】
精製領域は、一つ以上の蒸留領域を含み得る。例えば、精製領域は、一つの第一蒸留領域を含むことができ、ここで、無水酢酸生成物と酢酸生成物とは、ヨウ化メチルおよび酢酸メチルのような軽質成分から分離される。この軽質成分は、第一蒸留領域からのオーバーヘッドとして除去され、そして反応領域に再循環可能である。この精製領域は、好適には、少なくとも一つの別の蒸留領域を含み、酢酸生成物と無水酢酸生成物とを分離させる。
【0073】
各蒸留領域は、無水酢酸および酢酸の併産に使用される任意の従来の蒸留装置とすることができる。
【0074】
本発明の一態様において、蒸留領域から回収された酢酸、あるいはその一部はエステル化工程に供給され、ここでメタノールと反応し、酢酸メチル、および水および任意に未反応エタノールを含むエステル化生成物を生成する。水の一部あるいは全部をエステル化生成物から除去し、そして、酢酸メチルを含む残存するエステル化生成物を、反応物質として、反応領域に供給可能である。
【0075】
本発明は以下の実施例を参考にして説明される。
【0076】
参考例
この参考例では、液体反応領域において、酢酸メチル、メタノール、ロジウム触媒、ヨウ化メチル及びイミダゾリウム塩を、実質無水条件下、約190℃の温度および約35bargの圧力で一酸化炭素と接触させて、無水酢酸および酢酸を含む液体反応組成物を生産した。
【0077】
実施例1〜3
これらの実施例において、液体反応組成物を、酢酸リチウムの量を変更して、反応領域に加えたこと以外は、参考例に沿って生産した。液体反応組成物を、反応領域から取り出し、そして約135℃および約2bargの圧力で稼働したフラッシュ分離領域に導入した。無水酢酸および酢酸を含む気体画分を、フラッシュ分離領域からのオーバーヘッドとして除去し、そして無水酢酸、酢酸および触媒成分を含む液体画分をベースストリームとしてそこから除去した。
【0078】
フラッシュ気体および液体画分に存在し、且つ取り出した液体反応組成物に存在する酢酸および無水酢酸の質量をガスクロマトグラフィーにより測定した。フラッシュ気体画分および液体画分および取り出した液体反応組成物の流量はオリフィス計を用いて計測した。
【0079】
フラッシュ分離領域における酢酸に対する無水酢酸の相対的な分離を促進させる金属塩の能力は、無水酢酸に対する酢酸のフラッシュ因子の比により決定した。得られた結果を以下の表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
表1から理解されるように、この結果から、金属塩の付加により無水酢酸に対する酢酸のフラッシュ因子を減少させており、したがって、酢酸に対して無水酢酸の方がフラッシュ分離領域においてより多く分離されていることが実証されている。
【0082】
実施例4
酢酸メチル、酢酸、ヨウ化メチル、無水酢酸、第VIII族金属触媒、触媒促進剤および任意にヨウ化リチウムを含む液体反応組成物を商業規模の反応器に連続的に供給した。一酸化炭素ガスを反応器において、散布装置を用いて反応組成物と接触させ、無水酢酸と酢酸とを生産した。液体反応混合物を、連続的に反応器から取り出し、そしてフラッシュバルブを介して、反応器と比較して減圧で稼働されたフラッシュ領域に移送し、酢酸および無水酢酸を含むオーバーヘッド気体画分と酢酸および触媒成分を含む液体画分とを生成した。金属塩の存在下および非存在下で生成された酢酸および無水酢酸の量(tpd(1日当りのトン))を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果は、本発明が、反応器中の無水酢酸の濃度を増加させる必要なく、酢酸に対する無水酢酸の相対的な生産率を増加させることを明確に実証する。
【0085】
実施例5
本実施例は、反応器において異なる濃度の無水酢酸を維持しながら、フラッシュ気体画分における、無水酢酸に対する酢酸のモル比を1に維持するために、必要なリチウム濃度を示す。無水酢酸(5〜35重量%)、酢酸(20〜50重量%)、および残部(45重量%)が酢酸メチル、ヨウ化メチル、リチウム塩および第VIII族金属触媒成分を含む液体反応組成物を、実質無水条件下、約190℃の温度および約36bargの圧力で稼働された反応器中で、連続的に一酸化炭素と接触させて、無水酢酸および酢酸を併産させた。反応組成物を、フラッシングバルブを介して約135℃の温度且つ約2bargの圧力で稼働させたフラッシュ容器に供給して、無水酢酸および酢酸を含む気体画分と、酢酸、リチウムおよび触媒成分を含む液体画分を生成するために分離させた。
【0086】
【表3】
【0087】
表3から理解されるように、反応器において、与えられた固定濃度の無水酢酸に対して、金属塩の付加と、フラッシュ気体における無水酢酸に対する酢酸のモル比を1とすると、酢酸に対して生産される無水酢酸の相対量が増加することが、フラッシュ因子比の減少によって示されている。
【0088】
実施例6
金属塩と、酢酸対無水酢酸のモル比を、1.2、1.8、2.4および3にする組合せを適用して、実施例5を繰り返した。この結果を、表4〜7にそれぞれ示す。表4〜7には、反応器における所定の固定濃度の無水酢酸に対して、酢酸に対する無水酢酸の相対量を増加させるのに必要な金属塩の量が、フラッシュ気体における酢酸対無水酢酸の特定のモル比における、フラッシュ因子比の減少により示されている。
【0089】
【表4】
【0090】
【表5】
【0091】
【表6】
【0092】
【表7】