(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワークを保持する複数の主軸と、前記複数の主軸がそれぞれ保持するワークを加工する際に駆動される複数のモータと、前記モータのそれぞれの動作に応じて発生する回生電流及び消費電流を検出する電流検出手段と、いずれかの前記モータで発生した前記回生電流を、他のいずれかの前記モータの前記消費電流に充当して前記モータの動作の制御を行う駆動制御手段とを備え、
前記駆動制御手段が、異なる前記複数のモータの動作の実行タイミングをずらすことによって、前記消費電流に充当する前記回生電流の量を調節し、
複数の前記主軸で保持したワークに対する加工の1サイクルの時間が互いに異なるときは、前記駆動制御手段が、前記複数の主軸で保持したワークに対する加工の1サイクルの時間の最小公倍数を、前記複数のモータの間で前記回生電流を互いに前記消費電流に充当し合うための期間である充当対象期間に設定し、前記充当対象期間ごとに前記消費電流に充当する前記回生電流を調整するワークの加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るワークの加工装置の実施形態について、図面を参照して説明する。
<自動旋盤システムの構成>
図1は本発明のワークの加工装置の一実施形態である自動旋盤システム1を示すブロック図、
図2は、
図1の自動旋盤システム1における自動旋盤2,3の詳細を示すブロック図である。
【0010】
自動旋盤システム1は、
図1に示すように、2台の自動旋盤2,3を備えている。2台の自動旋盤2,3はいずれも数値制御による旋盤である。2台の自動旋盤2,3は基本的に同じ装置であるが、本実施形態においては、2つの自動旋盤2,3は互いに接続されているとともに、それぞれ電源に接続されて電源から電流の供給を受けている。
【0011】
自動旋盤2は、
図2に示すように、主軸21aや工具台21b等を有し、主軸21aで保持したワークを加工する加工部21と、供給された電流によって加工部21を駆動する駆動部22と、駆動部22の動作を制御する制御部23とを備えている。駆動部22は、供給された電流によって加工部21を駆動するサーボモータ22aと、電流検出部22bとを備えている。サーボモータ22aの動作により、主軸21aが回転したり、工具台21bが移動したりする。つまり、サーボモータ22aは、主軸21aが保持するワークを加工する際に駆動されるモータの一例である。制御部23は、記憶部23aを備え、駆動部22の動作を制御する。
【0012】
自動旋盤3も自動旋盤2と同様に、主軸31a及び工具台31b等を有する加工部31と、サーボモータ32a及び電流検出部32bを有し加工部31を駆動する駆動部32と、記憶部33aを有し駆動部32の動作を制御する制御部33とを備えている。制御部33は制御部23と接続されている。本実施形態の自動旋盤システム1は、上述したように、全体として2つの加工部21,31及び2つのサーボモータ22a,32aを備えている。
【0013】
電流検出部22b,32bは、対応する自動旋盤2,3が稼働している期間中、各サーボモータ22a,32aが消費する消費電流(消費電力)及び各サーボモータ22a,32aが発生する回生電流(回生電力)を検出する。検出された消費電流及び回生電流は、制御部23,33により、これらの消費電流及び回生電流が記憶部23a,33aに記憶される。
【0014】
この消費電流及び回生電流の検出及び記憶の動作は、オペレータが制御部23,33にその指示を入力した場合に行うことができる。なお、消費電流は、自動旋盤2,3のそれぞれが稼働するために必要とする、外部から供給を受ける電流であり、回生電流は、主軸21a,31aの減速時などにおいてサーボモータ22a,32aから発生する電流である。
【0015】
自動旋盤2,3は、稼働(力行)時に電源から電流の供給を受けており、制御部23と制御部33とが互いに接続されていて、制御部23,33の制御により、自動旋盤2,3で発生した回生電流を互いに融通し合うように制御される。つまり、自動旋盤2,3が同時に稼働している期間中、制御部23,33は、一方の自動旋盤2(又は自動旋盤3)のサーボモータ22a(又はサーボモータ32a)が発生した回生電流を、他方の自動旋盤3(又は自動旋盤2)のサーボモータ32a(又はサーボモータ22a)の消費電流として充当する。
【0016】
制御部23と制御部33とは接続により互いに通信をして、記憶部23a,33aに記憶された、自動旋盤2,3の1つのワークを加工する動作の1サイクルの時系列的な消費電流及び回生電流に基づき、2つの自動旋盤2,3の1サイクルにおいて、消費電流に充当する回生電流の量(充当量)が最大となるように、2つの自動旋盤2,3の加工の実行タイミングを調整する。
【0017】
<自動旋盤システムの動作>
次に、本実施形態の自動旋盤システム1の動作(作用)について説明する。
まず、オペレータが、各自動旋盤2,3の制御部23,33に、同一種類のワークに同じ加工を施し、その加工の稼働中の時系列的な消費電流及び回生電流を検出及び記憶する指示を入力する。
【0018】
制御部23は、入力された指示にしたがい、駆動部22に対して、加工部21がワークを加工する動作を行うように制御する。このとき、自動旋盤2は、電源からのみ電流の供給を受ける。制御部33も同様に、入力された指示にしたがい、駆動部32に対して、加工部31がワークを加工する動作を行うように制御する。このとき、自動旋盤3も、電源からのみ電流の供給を受ける。
【0019】
自動旋盤2において、電流検出部22bは、上述した1つのワークを加工する動作の1サイクルにおける、自動旋盤2の消費電流及び回生電流を検出する。そして、制御部23は、検出された消費電流及び回生電流を動作の経過時間と対応づけて記憶部23aに記憶させる。同様に、自動旋盤3においても、電流検出部32bは、1サイクルにおける、自動旋盤3の消費電流及び回生電流を検出する。そして、制御部33は、検出された消費電流及び回生電流を動作の経過時間と対応づけて記憶部33aに記憶させる。
【0020】
図3Aは、上段が、自動旋盤2の、記憶部23aに記憶された1サイクルでの消費電流及び回生電流の波形を時系列的に示すグラフであり、下段は、自動旋盤3の、記憶部33aに記憶された1サイクルでの消費電流及び回生電流の波形を時系列的に示すグラフである。このグラフにおける横軸は稼働からの経過時間を示し、縦軸はサーボモータ22a,32aで消費または回生される電流値を示し、縦軸の(正)の範囲では消費電流、縦軸の(負)の範囲では回生電流が発生していることを示している。
【0021】
自動旋盤システム1は、自動旋盤2と自動旋盤3とが同一の構成であり、しかも、同一種類のワークに対して、同一の加工を施すため、
図3Aに示すように、自動旋盤2によるワークの加工の動作と、自動旋盤3によるワークの加工の動作とは全く同一になる。したがって、記憶部23aに記憶された自動旋盤2の1サイクルでの消費電流及び回生電流の波形(上段)と、記憶部33aに記憶された自動旋盤3の1サイクルでの消費電流及び回生電流の波形(下段)とは同じになる。つまり、自動旋盤2と自動旋盤3とは、同じタイミングで電流を消費し、かつ同じタイミングで回生電流を発生している。
【0022】
ここで、自動旋盤2の加工の実行のタイミング(サーボモータ22aの動作の実行タイミング(駆動開始のタイミングや駆動停止のタイミングの他、加速のタイミングや減速のタイミングなどを含む。以下、同じ。))と自動旋盤3の加工の実行のタイミング(サーボモータ32aの動作の実行タイミング)とをずらすと、自動旋盤2と自動旋盤3との間で、消費電流の生じるタイミングと回生電流の生じるタイミングとがずれる。
【0023】
この場合、制御部23,33により、一方の自動旋盤2のサーボモータ22a(又は自動旋盤3のサーボモータ32a)が特定のタイミングで発生した回生電流を、他方の自動旋盤3のサーボモータ32a(又は自動旋盤2のサーボモータ22a)で消費する電流に充当するように駆動部22,32を制御する。制御部23,33が、他方の自動旋盤から供給された回生電流を消費電流に充当するときは、電源からの電流の供給よりも優先するように、駆動部22,32を制御する。この結果、自動旋盤システム1は、全体として、電源からの電流の供給を抑制することができ、自動旋盤システム1の稼働に要する消費電流量を低減することができる。
【0024】
なお、本実施形態においては、制御部23,33は、消費電流に対する回生電流の充当量が最大となるように、すなわち、電源からの電流の供給の抑制量が最大となるように、自動旋盤2の加工の実行開始から自動旋盤3の加工の実行開始までの遅れ時間を設定する。制御部23,33が設定する遅れ時間は、消費電流に対する回生電流の充当量が最大となるものでなくてもよい。すなわち、制御部23,33は、消費電流に対する回生電流の充当量が最大よりも少ない量に対応した遅れ時間を設定することもできる。
【0025】
その際には、充当量を大きくすることによる消費電流を低減するメリットと全体の加工時間の延長との比較考量により、充当量の調整を行うことができ、そのような設定にしたがって、異なる自動旋盤2,3での加工の実行タイミングのずれ量が変化して消費電流に充当する回生電流の量を調節する。
【0026】
図3Bは、制御部23,33が遅れ時間を設定するときの具体的に設定方法を説明する図である。
図3Aと同様、
図3Bの上段が自動旋盤2の消費電流及び回生電流の波形を示し、下段が自動旋盤3の消費電流及び回生電流の波形を示す。上述したように、制御部23,33が遅れ時間を設定するとき、
図3Bに示すように、制御部23,33が、自動旋盤2の加工の実行開始から所定の遅れ時間だけ遅らせて自動旋盤3の加工の実行を開始させたと想定する。
【0027】
このとき、制御部23,33は、記憶部23a,33aに記憶された自動旋盤2,3ごとの時系列の消費電流及び回生電流(
図3Aのグラフ)に基づいて、自動旋盤2の1サイクルで発生した回生電流2xを、その回生電流2xが発生したタイミングで稼働する自動旋盤3の消費電流3yに充当し、自動旋盤3で発生した回生電流3xを、その回生電流3xが発生したタイミングで稼働する自動旋盤2の消費電流2yに充当することができる。
【0028】
制御部23,33は、回生電流2x,3xの消費電流3y,2yへの充当量が最大となるように遅れ時間を設定し、その設定された遅れ時間を記憶部23a,33aに記憶させる。
【0029】
例えば、各制御部23,33が、所定のサンプリング時間ごとに、各自動旋盤2,3の電流検出部22b,32bによって、各々対応する自動旋盤2,3の消費電流及び回生電流を検出し、各自動旋盤2,3で発生する消費電流と回生電流とを相殺するように加算して算出される各サンプリング時間における消費電流を1サイクル分合計することによって、所定の遅れ時間における消費電流を算出することができる。
【0030】
予め定められた時間ずつ遅れ時間を増加させ、各遅れ時間ごとに、各遅れ時間における消費電流を算出し、算出される消費電流が最小となる遅れ時間を、回生電流2x,3xの消費電流3y,2yへの充当量が最大となる遅れ時間とすることができる。なお、各サンプリング時間における消費電流の算出は、各自動旋盤2,3の消費電流及び回生電流の遅れ時間分ずれた部分では、いずれか一方において、ずれた部分同士を対応させ、各サンプリング時間における消費電流として算出する。
【0031】
上述した遅れ時間の設定の後、自動旋盤システム1により、自動旋盤2,3を稼働させてそれぞれにより上述した同一種類のワークに同一の加工を施す作業を行うに際しては、一方の自動旋盤2の制御部23は駆動部22に対して駆動開始の制御信号を送信する。自動旋盤2は、駆動部22が駆動開始の制御信号を受けて、
図3Bの上段に示すように加工の実行を開始する。
【0032】
一方、他方の自動旋盤3の制御部33は、自動旋盤2の制御部23との連携により、。制御部23が駆動部22に駆動開始の制御信号を送信した時点で、制御部33が、記憶部33aに記憶された遅れ時間を参照する。そして、制御部23が駆動開始の制御信号を送信してから、参照した遅れ時間だけ遅延した時点で、制御部33が駆動部32に対して駆動開始の制御信号を送信し、駆動部32が駆動開始の制御信号を受けて、
図3Bの下段に示すように加工の実行を開始する。
【0033】
以上のように、自動旋盤システム1によれば、制御部23,33が、2つの自動旋盤2,3に共通する1サイクルの時間を、2つの自動旋盤2,3の間で回生電流を互いに充当し合うための期間(充当対象期間)として設定し、充当対象期間において充当する回生電流が最大となるように、2つの自動旋盤2,3の遅れ時間を調整する。これにより、自動旋盤システム1は、2台の自動旋盤2,3を、回生電流によるエネルギを有効に利用するように適切に動作させることができ、電源からの供給電流を最大限に抑制することができる。
【0034】
また、自動旋盤システム1は、自動旋盤2と自動旋盤3とで、加工の実行タイミングをずらしているため、自動旋盤2の消費電流のピークが発生するタイミングと自動旋盤3の消費電流のピークが発生するタイミングとがずれる。つまり、自動旋盤システム1は、自動旋盤2と自動旋盤3とで加工の実行タイミングがずれていない従来の自動旋盤システムに比べて、自動旋盤システム1の全体の消費電流のピークを低下させることができる。
【0035】
また、自動旋盤システム1は、電流検出部22b,32bが、ワークの加工のための1サイクル分の動作を予め行うことで、実際にその自動旋盤2,3で行う加工の動作に対応した消費電流及び回生電流を取得することができるため、ワークの種類が変わったり、ワークに対する加工の内容が変わったりした場合にも、消費電流及び回生電流を確実に取得することができる。
【0036】
また、自動旋盤システム1は、回生電流を消費電流に充当し合う対象となるサーボモータ22a,32aが、主軸21a,31a及び工具台21b,31bを動作させるものであるが、本発明に係るワークの加工装置におけるモータは、この形態に限定されるものではなく、主軸が保持するワークを加工する際に駆動されるものであればよい。したがって、例えば、主軸を駆動するモータや工具台を駆動するモータの他、切削液を供給するモータなどを適用することができる。
【0037】
なお、本発明の自動旋盤システム1のように両自動旋盤2,3の各制御部23,33同士が連携して自動旋盤2と自動旋盤3の加工の実行タイミングをずらす等の制御を行うように構成することができる他、両自動旋盤2,3の各制御部23,33を外部コントローラーとしてPLC(Programmable Logic Controller)などを介して接続し、PLC等を介して連携させるように構成することもできる。
【0038】
また、自動旋盤システム1は、回生電流を消費電流に充当し合う対象となるサーボモータ22a,32aが、主軸21a,31a及び工具台21b,31bを動作させるものであるが、本発明に係るワークの加工装置におけるモータは、この形態に限定されるものではなく、主軸が保持するワークを加工する際に駆動されるものであればよい。したがって、例えば、主軸を駆動するモータや工具台を駆動するモータの他、切削液を供給するモータなどを適用することができる。
【0039】
さらに、自動旋盤2の制御部23に、各自動旋盤2,3の1サイクルの終了を検出し、自動旋盤2の1サイクルの終了から自動旋盤3の1サイクルの終了までの時間を算出する遅れ時間検出手段と、遅れ時間検出手段によって算出された時間と設定された遅れ時間とに基づいて、各自動旋盤2,3の1サイクルの開始を調節する開始調節手段とを設けることができる。これらは、駆動制御手段の一部として制御部23,33によって実現することができる。
【0040】
図3Cは、自動旋盤2の1サイクルの時間と自動旋盤3の1サイクルの時間とが徐々にずれた場合に、制御部23,33が遅れ時間を設定するときの具体的に設定方法を説明する図である。
図3Aと同様、
図3Cの上段が自動旋盤2の消費電流及び回生電流の波形を示し、下段が自動旋盤3の消費電流及び回生電流の波形を示す。
【0041】
遅れ時間検出手段によって算出された時間が、
図3Cに示すように、例えばT1であった場合、自動旋盤3は、自動旋盤2の開始から、時間T1だけ遅れて開始される。通常は、自動旋盤2と自動旋盤3との開始の時間差(T1)は一定であるが、何らかの要因で、自動旋盤3の1サイクル目の運転の終了が時間差T1よりも遅れたり早まったりする場合が起こり得る。
例えば、自動旋盤3の運転の終了が遅れたり、自動旋盤2の運転の終了が早まったりして、遅れの時間T2が当初の時間T1よりも長くなっていた場合は、2サイクル目の運転では、遅れの時間T2が時間T1より長くなった時間(=T2−T1)を解消することはできない。遅れ時間検出手段は、この長くなった時間(=T2−T1)を検出し、
図3Cに示すように、3サイクル目での自動旋盤2の運転の開始のタイミングを、開始調整手段が長くなった時間(=T2−T1)だけ遅らせる制御を行う。これにより3サイクル目の運転では、最適な遅れ時間T1での運転に復旧させることができる。
【0042】
これとは反対に、例えば、自動旋盤3の運転の終了が早まったり、自動旋盤2の運転の終了が遅れたりして、遅れの時間T2が当初の時間T1よりも短くなっていた場合は、2サイクル目の運転では、自動旋盤3の運転の開始を、自動旋盤2の運転の終了のタイミングから時間T1だけ遅れるように、開始調整手段が自動旋盤3の運転の開始のタイミングを調整するように制御する。これにより、2サイクル目の運転では、最適な遅れ時間T1での運転を継続させることができる。
【0043】
以上のように、遅れ時間検出手段と開始調節手段とを有する補正手段によって、両自動旋盤2,3の1サイクルの開始のずれを、設定された遅れ時間T1に維持することができる。例えば、自動旋盤3の1サイクルの終了が自動旋盤2の1サイクルの終了に対して遅れている場合、遅れが判断されたサイクルに対する次のサイクルで、両自動旋盤2,3の1サイクルの開始のずれを、設定された遅れ時間に維持することができる。なお、遅れ時間検出手段は、自動旋盤3の制御部33からの情報に基づき自動旋盤3の1サイクルの終了を検出することができる。
【0044】
遅れ時間検出手段は、自動旋盤2の1サイクルの開始から自動旋盤3の1サイクル開始までの時間を算出するように構成することもできる。補正手段は、制御部23と制御部33との間に設けられていればよいため、制御部23に設ける他、制御部33側に設けることや、両制御部23,33がPLCを介して接続されている場合にはPLC側に設けること、あるいは両制御部23,33との間に単独で設けること等もできる。
【0045】
<変形例>
上述した実施形態の自動旋盤システム1は、2つの自動旋盤2,3にそれぞれ1つの加工部21,31を有していて、2つの自動旋盤2,3の間で、回生電流を消費電流に充当し合う形態であるが、本発明に係るワークの加工装置は、この形態に限定されるものではない。すなわち、実施形態の自動旋盤システム1において、3つ以上の自動旋盤2,3,…にそれぞれ1つの加工部21,31,…を有していて、それら3つ以上の自動旋盤2,3,…の間で、回生電流を消費電流に充当し合う形態であってもよい。
【0046】
また、例えば1つの自動旋盤が、正面主軸と背面主軸又は2つの正面主軸というように2つの加工部を備えていて、各加工部に対応した2つの駆動部が備えられている場合、この1つの自動旋盤の2つの駆動部の間で、回生電流を消費電流に充当し合うようにしてもよく、このような形態においては、それら2つの加工部及び2つの駆動部を備えた1つの自動旋盤も、本発明に係るワークの加工装置の一例である。なお、1つの自動旋盤が、3つ以上の加工部及び3つ以上の駆動部を備えたもので、それら3つ以上の駆動部の間で回生電流を消費電流に充当し合うようにしてもよく、その1つの自動旋盤は本発明に係るワークの加工装置の一例である。
【0047】
また、実施形態の自動旋盤システム1は、自動旋盤2,3が備えた電流検出部22b,32bが、実際のワークの加工の動作の1サイクルを行って、その1サイクルの消費電流及び回生電流を検出して記憶部23a,33aに記憶させる構成であるが、電流検出部22b,32bは、自動旋盤2,3の本体とは別体のものであってもよいし、又は自動旋盤2,3とは別の自動旋盤や他の加工装置に備えられたものであってもよい。この場合、そのような電流検出部22b,32bによって、各自動旋盤2,3の、1サイクルにおける消費電流及び回生電流を検出して、その検出した消費電流及び回生電流を予め記憶部23a,33aに記憶させておくことにより、ワークを加工する本来の使用目的での加工動作の際には、自動旋盤2,3の本体に電流検出部22b,32bを一体に備えなくてもよい。
【0048】
例えば、特定の1つの自動旋盤システムにおいて、上述した実施形態の自動旋盤システム1での説明通りに、電流検出部22b,32bで、実際のワークの加工の動作の1サイクルを行って、そのときの消費電流及び回生電流を検出して記憶部23a,33aに記憶させる。その後に、特定の1つとは別の自動旋盤システムでは、特定の1つの自動旋盤システムで得られた消費電流及び回生電流を利用して遅れ時間を記憶部23a,33aに記憶させればよい。この場合、別の自動旋盤システムは電流検出部22b,32bを備えないことによるコスト低減と、消費電流及び回生電流を検出するための1サイクルの動作の手間とを省くことができる。
【0049】
上述した自動旋盤システム1は、2つの自動旋盤2,3が同じ構成であり、同一種類のワークに対して同一の加工を行うため、1サイクルの加工の動作によって生じる消費電流及び回生電流は、
図3Aに示すように、自動旋盤2と自動旋盤3とで同じ波形となる。したがって、2つの自動旋盤2,3の間で回生電流を互いに充当し合うための充当対象期間は、自動旋盤2の1サイクルの時間であるとともに自動旋盤3の1サイクルの時間でもある。しかし、本発明に係るワークの加工装置は、2台の加工部の1サイクルの加工の動作によって生じる消費電流及び回生電流の波形が同じ形状のものに限定されない。
【0050】
すなわち、回生電流を充当し合う2つの加工装置が、同じ構成ではない場合や、2つの加工装置がそれぞれ加工する対象のワークが互いに異なる場合や、2つの加工装置で加工する内容が互いに異なる場合などであっても、本発明に係るワークの加工装置は適用される。この場合、2つの加工装置の1サイクルの時間が同じ場合は、上述した実施形態の自動旋盤システム1と同様に、自動旋盤2の1サイクルの時間又は自動旋盤3の1サイクルの時間を、充当対象期間として設定すればよい。
【0051】
一方、2つの加工装置のそれぞれの1サイクルの時間が互いに異なる場合は、2つの加工装置をそれぞれ連続して稼働させた場合に、2つの加工装置の消費電流及び回生電流の波形が1サイクルの時間が経過するごとに時系列にずれていくため、1サイクルごとに回生電流の充当量が変化し、充当量を制御することができなくなる。また、2つの加工装置の1サイクルの消費電流及び回生電流の波形のずれを常に一定にするために2つの加工装置の稼働のタイミングを一定のずれに固定すると、1サイクルの時間が短い方の加工装置を常に一定時間停止させる必要があり、加工装置の稼働効率が低下する。
【0052】
この場合、制御部23,33は、一方の加工装置の1サイクルの時間と他方の加工装置の1サイクルの時間との最小公倍数を、2つの加工装置の間での充当対象期間と設定して、その充当対象期間での、消費電流に充当する回生電流の量が最大となるように、制御部23,33が遅れ時間を設定すればよい。
【0053】
図4Aは、自動旋盤システム1の自動旋盤2と自動旋盤3とで、1サイクルの時間が互いに異なる消費電流及び回生電流の各波形を示す
図3A相当のグラフであり、上段は自動旋盤2の消費電流及び回生電流の波形を示し、下段は自動旋盤3の消費電流及び回生電流の波形を示す。
図4Aに示した2つのグラフでは、自動旋盤2の1サイクルの時間T2が自動旋盤3の1サイクルの時間T3の1.5倍となっている。したがって、自動旋盤2の1サイクルの時間T2(=1.5×T3)と自動旋盤3の1サイクルの時間T3との最小公倍数として、自動旋盤2の2サイクルの時間(2×T2(=3×T3))を設定し、自動旋盤3の3サイクルの時間(3×T3)を設定すると、2つの自動旋盤2,3の稼働時間を一致させることができる。
【0054】
制御部23,33は、このように、自動旋盤2の2サイクルの時間及び自動旋盤3の3サイクルの時間を充当対象期間に設定した上で、この充当対象期間での2つの自動旋盤2,3間の回生電流の充当量が最大となるように、充当対象期間ごとの遅れ時間を設定し、記憶部23a,33aに記憶させる。
図4Bは、制御部23,33に設定された遅れ時間を以て、自動旋盤2と自動旋盤3とを加工の実行を開始させたときの消費電流及び回生電流の各波形を示すグラフである。
【0055】
このように構成された自動旋盤システム1によれば、2つの自動旋盤2,3間で1サイクルの時間が互いに相違する場合にも、制御部23,33が、2つの自動旋盤2,3の充当対象期間における、消費電流3y,2yとして充当する回生電流2x,3xが最大となるように、2つの自動旋盤2,3の加工の実行タイミングを調整する。これにより、自動旋盤システム1は、2つの自動旋盤2,3を、稼働効率を低下させずに、回生電流によるエネルギを有効に利用するように適切に稼働させることができ、電源からの供給電流を最大限に抑制することができる。
【0056】
本発明のワークの加工装置は、実施形態の自動旋盤システム1のように、2つの自動旋盤2,3のみを備えたものに限定されない。
図5は、6台の自動旋盤2,3,4,5,6,7を備えた自動旋盤システム11を示すブロック図であり、この自動旋盤システム11も本発明に係るワークの加工装置の一例である。なお、自動旋盤4〜7は、一例として自動旋盤2,3と同じ構成である。
【0057】
この自動旋盤システム11は、自動旋盤システム1と同様に自動旋盤2,3の間で互いの回生電流を相手方の消費電流に充当し合い、自動旋盤4,5の間及び自動旋盤6,7の間で、自動旋盤2,3と同様に互いの回生電流を相手方の消費電流に充当し合う。この自動旋盤システム11によっても、自動旋盤システム1と同様の作用、効果を得ることができる。
【0058】
なお、本発明に係る加工装置は、2つのサーボモータの間でのみ、回生電流を消費電流に充当し合うものに限定されない。すなわち、例えば、自動旋盤システム11の例では、自動旋盤2,3,4をひとまとめの組とし、自動旋盤5,6,7をひとまとめの組とし、各組の3つの自動旋盤2,3,4間及び自動旋盤5,6,7間でそれぞれ回生電流を消費電流に充当し合うように、各自動旋盤2〜7の制御部が各自動旋盤2〜7の加工の実行タイミングを設定してもよい。また、自動旋盤システム11の例では、6つの自動旋盤2〜7の間で回生電流を消費電流に充当し合うように、自動旋盤2〜6の制御部が、各自動旋盤2〜7の加工の実行タイミングを設定してもよい。
【0059】
本発明のワークの加工装置は、加工部として主軸や工具台を備えた自動旋盤を適用したものに限定されるものではなく、回生電流を発生するその他のサーボモータで駆動される加工部を備えた加工装置であってもよい。