特許第6671203号(P6671203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6671203コンデンサマイクロホンユニットとコンデンサマイクロホン並びにコンデンサマイクロホンユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671203
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】コンデンサマイクロホンユニットとコンデンサマイクロホン並びにコンデンサマイクロホンユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 19/04 20060101AFI20200316BHJP
   H04R 31/00 20060101ALI20200316BHJP
   H04R 1/08 20060101ALI20200316BHJP
【FI】
   H04R19/04
   H04R31/00 C
   H04R1/08
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-59414(P2016-59414)
(22)【出願日】2016年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-213817(P2016-213817A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-95479(P2015-95479)
(32)【優先日】2015年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】秋野 裕
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−073195(JP,A)
【文献】 実開昭62−151293(JP,U)
【文献】 実開昭57−069369(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/04
H04R 1/08
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波導入孔を備えるユニットケースと、
前記ユニットケースに収納され、前記音波導入孔からの音波により振動する振動板と、
前記音波導入孔と前記振動板との間に配置された音響抵抗体と、
を有してなり、
前記音響抵抗体は、
互いに圧接された開口を有する金属製で板状の2つの弾性部材
を備え、
前記2つの弾性部材の少なくともいずれか一方は、前記圧接前には凸状に湾曲していて、
前記凸状に湾曲する一方の弾性部材の凸側面は、他方の弾性部材との圧接面である、
ことを特徴とするコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項2】
前記振動板は、電気音響変換器を構成し、
前記音響抵抗体は、前記ユニットケースと前記電気音響変換器との間に挟持される、
請求項1記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項3】
前記電気音響変換器は、前記振動板を張設する振動板保持体を備え、
前記2つの弾性部材は、前記振動板保持体から前記ユニットケース側に押圧されて圧接する、
請求項2記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項4】
前記ユニットケースは、有底筒状で、
前記音波導入孔は、前記ユニットケースの底面に配置され、
前記2つの弾性部材は、前記底面に設けられたフランジ部から前記振動板側に押圧されて圧接する、
請求項1記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項5】
前記圧接前に凸状に湾曲しているのは、前記一方の弾性部材の平面視中央部分である、
請求項1記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項6】
前記2つの弾性部材は、それぞれ前記圧接前に凸状に湾曲しており
記2つの弾性部材それぞれの凸側面同士が圧接する、
請求項1記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項7】
前記2つの弾性部材は、ニッケル製である、
請求項1記載のコンデンサマイクロホンユニット。
【請求項8】
コンデンサマイクロホンユニット、
を有してなり、
前記コンデンサマイクロホンユニットは、請求項1乃至のいずれかに記載のコンデンサマイクロホンユニットである、
ことを特徴とするコンデンサマイクロホン。
【請求項9】
音波導入孔を備えるユニットケースと、
前記ユニットケースに収納され、前記音波導入孔からの音波により振動する振動板と、
前記音波導入孔と前記振動板との間に配置された音響抵抗体と、
を有してなるコンデンサマイクロホンユニットの製造方法であって、
前記音響抵抗体は、互いに圧接された開口を有する金属製で板状の2つの弾性部材を備え、
前記2つの弾性部材の少なくともいずれか一方は、前記圧接前には凸状に湾曲していて、
前記2つの弾性部材を前記ユニットケースに収納する工程と、
前記振動板を前記ユニットケースに収納しながら前記2つの弾性部材を圧接させる工程と、
を有してなる、
ことを特徴とするコンデンサマイクロホンユニットの製造方法。
【請求項10】
前記2つの弾性部材を前記ユニットケースに収納する工程は、前記振動板を前記ユニットケースに収納しながら前記2つの弾性部材を圧接させる工程と同時に実行される、
請求項記載のコンデンサマイクロホンユニットの製造方法。
【請求項11】
前記振動板は、電気音響変換器を構成し、
前記電気音響変換器は、前記振動板を張設する振動板保持体を備え、
前記2つの弾性部材は、前記振動板保持体から前記ユニットケース側に押圧されて前記ユニットケースと前記電気音響変換器との間に挟持されて圧接する、
請求項または10記載のコンデンサマイクロホンユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサマイクロホンユニットとコンデンサマイクロホン並びにコンデンサマイクロホンユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無指向性のコンデンサマイクロホンの制御の方式は、弾性制御である。そのため、無指向性のコンデンサマイクロホンの機械振動系の共振周波数は、収音帯域の上限付近の高い周波数に設計される。その結果、無指向性のコンデンサマイクロホンの共振周波数以下の周波数帯域の周波数応答は、平坦となる。
【0003】
コンデンサマイクロホンの共振周波数が可聴帯域外に設定されると、収音帯域全体の周波数応答は平坦になるが、コンデンサマイクロホンの感度は低下する。一方、コンデンサマイクロホンの共振周波数が収音帯域の中央付近に設定されると、コンデンサマイクロホンの感度は高まるが、共振周波数以上の周波数帯域では−12dB/Octの傾斜で周波数応答が低下する。そのため、収音帯域の上限付近(約10kHz)に共振周波数が設定されて共振鋭度が調整されることで、コンデンサマイクロホンの収音帯域の周波数応答は平坦にされている。
【0004】
図5は、従来の無指向性のコンデンサマイクロホンユニットの側面視断面図である。
コンデンサマイクロホンユニット(以下「ユニット」という)2aは、ユニットケース2cと電気音響変換器20とを有してなる。電気音響変換器20は、音源からの音波を電気信号に変換して出力する。電気音響変換器20は、ユニットケース2cに収納される。ユニット2aは、回路ケース(不図示)に取り付けられる。
【0005】
ユニットケース2cは、金属製である。ユニットケース2cは、有底円筒状である。ユニットケース2cの底面は、ユニットケース2cの前方(収音時に音源側に向けられるマイクロホンの方向。以下、同じ。)側に位置する。ユニットケース2cは、音波導入孔2hと開口端2eとフランジ部2fと雌ねじ部2sと、を備える。音波導入孔2hは、音源からの音波をユニットケース2c内に導入する。音波導入孔2hは、ユニットケース2cの底面に配置される。開口端2eは、ユニットケース2cの後方端である。フランジ部2fは、音波導入孔2hが配置されたユニットケース2cの底面により構成される。雌ねじ部2sは、図示しない回路ケースの雄ねじ部に対応する。雌ねじ部2sは、ユニットケース2cの内周面の後端側に配置される。
【0006】
電気音響変換器20は、振動板保持体(ダイヤフラムリング)21と、振動板22と、スペーサ23と、固定極24と、絶縁体25と、支持体26と、絶縁座27と、電極引出端子28と、コンタクトピン29と、を有してなる。
【0007】
振動板保持体21は、振動板22を保持する。振動板保持体21は、リング状である。振動板保持体21は、中央に孔を備える。振動板22は、円板状である。振動板22は、片面に金属(好ましくは金)蒸着膜を有する。振動板22は、合成樹脂の薄膜である。振動板22は、所定の張力が付与された状態で振動板保持体21に保持される。スペーサ23は、合成樹脂などを素材とする。スペーサ23は、薄いリング状である。固定極24は、金属製である。固定極24は、円板状である。固定極24の少なくとも一面側、例えば、振動板22との対向面側にはエレクトレット板が貼り付けられる。固定極24とエレクトレット板とは、エレクトレットボードを構成する。振動板22は、スペーサ23を介して固定極24に対向して配置される。振動板22と固定極24との間には、スペーサ23の厚さに相当する幅の空気層(隙間)が形成される。振動板22と固定極24とは、コンデンサを構成する。このコンデンサの静電容量は、音波導入孔2hを通過する音源からの音波により振動板22が振動することで変化する。
【0008】
絶縁体25は、固定極24をユニットケース2cと振動板22とに対して電気的に絶縁した状態で支持する。絶縁体25は、複数の連通孔を備える。連通孔の貫通方向は、絶縁体25の厚さ方向(図5の紙面左右方向)である。
【0009】
支持体26は、絶縁体25の後面に気密状態で取り付けられる。固定極24と絶縁体25との間、および、絶縁体25と支持体26との間には、絶縁体25の連通孔を介して空気室が形成される。
【0010】
絶縁座27は、支持体26の後方に配置される。絶縁座27は、連結孔を備える。連結孔の貫通方向は、絶縁座27の厚さ方向(図5の紙面左右方向)である。
【0011】
電極引出端子28は、固定極24からの信号を取り出す。電極引出端子28は、絶縁体25の中央部に取り付けられる。電極引出端子28の後端部は、絶縁座27の連結孔の前半部に挿通される。コンタクトピン29は、導電性のスポンジなどの弾性材(不図示)を介して電極引出端子28と電気的に接続する。コンタクトピン29は、絶縁座27の連結孔の後半部に挿入される。
【0012】
電気音響変換器20は、雌ねじ部2sに嵌め込まれるロックリング20rにより、ユニットケース2c内に固定される。
【0013】
回路ケースには、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)や、回路が組み込まれる。FETは、電気音響変換器20のインピーダンス変換器を構成する。回路は、例えば、振動板22と固定極24との間で生じる静電容量の変化を電気信号に変換して出力する回路である。
【0014】
図6は、従来の無指向性のコンデンサマイクロホンの機械等価回路である。
図中、pは音源からの音波の音圧、m0は振動板22の質量、s0は振動板22のスチフネス、r0は振動板22と固定極24との間の空気層による振動板22の制動抵抗、rfは振動板22の前方(リング状の振動板保持体21の孔の対向する2つの開口端のうち振動板22が保持された後側の開口端に対向する前側の開口端)の音響抵抗、sfは振動板22の前方の空気室(リング状の振動板保持体21の孔の内部空間)のスチフネス、s1は振動板22の後方の空気室のスチフネスである。
【0015】
振動板22の制動抵抗r0は、共振鋭度をある程度は低下させる。ただし、形状効果により、共振周波数以上の周波数帯域の周波数応答が上昇する。そのため、振動板22の前方に音響抵抗材を付加することで周波数応答の調整が必要となる。これまでにも、振動板の前方の音響抵抗材の音響抵抗を可変とすることで、周波数応答を調整することが提案されている(例えば、「特許文献1」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2000−50386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、振動板22の前方に振動板22の振動部分と同程度の面積がある音響抵抗材を付加すると、周波数応答は、音響抵抗材の振動による内部損失の影響を受ける。
【0018】
図7は、振動板の前方に音響抵抗材が付加されていないコンデンサマイクロホンの周波数応答を示すグラフである。
同図は、共振周波数以上の周波数帯域の周波数応答が上昇していることを示す。
【0019】
図8は、振動板の前方に不織布からなる音響抵抗材が付加されたコンデンサマイクロホンの周波数応答を示すグラフである。
同図は、音響抵抗材の振動により2〜3kHz付近の周波数応答が上昇し、素材の内部損失により15kHz付近の周波数応答が低下していることを示す。
【0020】
本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消するためになされたもので、高い周波数帯域での周波数応答を平坦にすることができるコンデンサマイクロホンユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、音波導入孔を備えるユニットケースと、ユニットケースに収納され、音波導入孔からの音波により振動する振動板と、音波導入孔と振動板との間に配置された音響抵抗体と、を有してなり、音響抵抗体は、互いに圧接された2つの弾性部材を備え、2つの弾性部材の少なくともいずれか一方は、圧接前には凸状に湾曲していて、凸状に湾曲する一方の弾性部材の凸側面は、他方の弾性部材との圧接面である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い周波数帯域での周波数応答を平坦にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明にかかるコンデンサマイクロホンユニットの側面視断面図である。
図2図1のコンデンサマイクロホンユニットの側面視分解断面図である。
図3】本発明にかかるコンデンサマイクロホンの側面視断面図である。
図4図3のコンデンサマイクロホンの周波数応答を示すグラフである。
図5】従来のコンデンサマイクロホンユニットの側面視断面図である。
図6】従来のコンデンサマイクロホンの機械等価回路である。
図7】従来のコンデンサマイクロホンの周波数応答を示すグラフである。
図8】従来の別のコンデンサマイクロホンの周波数応答を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるコンデンサマイクロホンユニットとコンデンサマイクロホン並びにコンデンサマイクロホンユニットの製造方法の実施の形態について説明する。
【0025】
●コンデンサマイクロホンユニット
図1は、本発明にかかるコンデンサマイクロホンユニット(以下、「ユニット」という。)の実施の形態を示す側面視断面図である。
図2は、ユニットの側面視分解断面図である。
【0026】
ユニット2は、ユニットケース2cと、電気音響変換器20と、音響抵抗体50と、を有してなる。電気音響変換器20は、音源からの音波を電気信号に変換して出力する。電気音響変換器20は、ユニットケース2cに収納される。音響抵抗体50の作用は、後述する。
【0027】
ユニット2は、図5に示した従来のユニット2aに音響抵抗体50が付加されている点で、ユニット2aと相違する。
【0028】
ユニットケース2cは、金属製である。ユニットケース2cは、有底円筒状である。ユニットケース2cの底面は、ユニットケース2cの前方(収音時に音源側に向けられるマイクロホンの方向。以下、同じ。)側に位置する。ユニットケース2cは、音波導入孔2hと、開口端2eと、フランジ部2fと、雌ねじ部2sと、を備える。音波導入孔2hは、音源からの音波をユニットケース2c内に導入する。音波導入孔2hは、ユニットケース2cの底面に配置される。開口端2eは、ユニットケース2cの後方端である。フランジ部2fは、音波導入孔2hが配置されたユニットケース2cの底面により構成される。雌ねじ部2sは、ユニットケース2cの内周面の後端側に配置される。
【0029】
電気音響変換器20は、振動板保持体(ダイヤフラムリング)21と、振動板22と、スペーサ23と、固定極24と、絶縁体25と、支持体26と、絶縁座27と、電極引出端子28と、コンタクトピン29と、を有してなる。
【0030】
振動板保持体21は、振動板22を保持する。振動板保持体21は、リング状である。
【0031】
振動板22は、円板状である。振動板22は、片面に金属(好ましくは金)蒸着膜を有する。振動板22は、合成樹脂の薄膜である。振動板22は、振動板保持体21に所定の張力が付与された状態で保持(張設)される。
【0032】
スペーサ23は、合成樹脂などを素材とする。スペーサ23は、薄いリング状である。
【0033】
固定極24は、金属製である。固定極24は、円板状である。固定極24の少なくとも一面側、例えば、振動板22との対向面側にはエレクトレット板が貼り付けられる。固定極24とエレクトレット板とは、エレクトレットボードを構成する。
【0034】
振動板22は、スペーサ23を介して固定極24に対向して配置される。振動板22と固定極24との間には、スペーサ23の厚さに相当する幅の空気層(隙間)が形成される。振動板22と固定極24とは、コンデンサを構成する。このコンデンサの静電容量は、音波導入孔2hを通過する音源からの音波により振動板22が振動することで変化する。
【0035】
絶縁体25は、固定極24をユニットケース2cと振動板22とに対して電気的に絶縁した状態で支持する。絶縁体25は、複数の連通孔を備える。連通孔の貫通方向は、絶縁体25の厚さ方向(図1の紙面左右方向)である。
【0036】
支持体26は、絶縁体25の後面に気密状態で取り付けられる。固定極24と絶縁体25との間、および、絶縁体25と支持体26との間には、絶縁体25の連通孔を介して空気室が形成される。
【0037】
絶縁座27は、支持体26の後方に配置される。絶縁座27は、連結孔を備える。連結孔の貫通方向は、絶縁座27の厚さ方向(図1の紙面左右方向)である。
【0038】
電極引出端子28は、固定極24からの信号を取り出す。電極引出端子28は、絶縁体25の中央に取り付けられる。電極引出端子28の後端部は、絶縁座27の連結孔の前半部に挿通される。コンタクトピン29は、導電性のスポンジなどの弾性材(不図示)を介して電極引出端子28と電気的に接続する。コンタクトピン29は、絶縁座27の連結孔の後半部に挿通される。
【0039】
電気音響変換器20は、雌ねじ部2sに嵌め込まれるロックリング20rにより、ユニットケース2c内に固定される。
【0040】
音響抵抗体50は、円板状である。音響抵抗体50は、弾性部材51,52を備える。弾性部材51,52は、板材である。弾性部材51,52は、円板状である。弾性部材51,52は、例えば、電気鋳造により作製される。弾性部材51,52は、例えば、ニッケル製である。弾性部材51,52は、複数の開口を備える。開口の貫通方向は、弾性部材51,52の厚さ方向(図2の紙面左右方向)である。弾性部材51,52は、互いに圧接される。
【0041】
弾性部材51,52のそれぞれは、圧接前には平面視中央部分(図2の紙面上下方向の中央部分)が凸状に湾曲している。つまり、弾性部材51は、後方(図2の紙面右方向)側に湾曲している。弾性部材52は、前方(図2の紙面左方向)側に湾曲している。
【0042】
弾性部材51,52のそれぞれにおいて、凸状に湾曲する凸側面が他方の弾性部材との圧接面である。つまり、弾性部材51の凸側面(図2の右側の面)は、弾性部材52との圧接面である。弾性部材52の凸側面(図2の左側の面)は、弾性部材51との圧接面である。弾性部材51,52は、それぞれの圧接面である凸側面同士が圧接されて、円板状の音響抵抗体50を構成する。
【0043】
なお、音響抵抗体50を構成する2つの弾性部材のうち、少なくとも一方の弾性部材が圧接前に凸状に湾曲していればよい。この場合、他方の弾性部材は湾曲していない平板状である。湾曲している弾性部材の凸側面は、他方の弾性部材との圧接面である。
【0044】
●コンデンサマイクロホンユニットの製造方法
次に、ユニット2の製造方法について説明する。
【0045】
先ず、弾性部材51,52がユニットケース2cに収納される。このとき、弾性部材51,52は、それぞれの凸側面が対向するように配置される。ユニットケース2cに収納された弾性部材51,52のうち、弾性部材51はフランジ部2fに当接する。その結果、弾性部材51はユニットケース2c内に位置決めされる。
【0046】
次いで、振動板22を備える電気音響変換器20がユニットケース2cに収納される。このとき、電気音響変換器20が弾性部材51,52を圧接する。すなわち、ユニットケース2cに収納される電気音響変換器20の振動板保持体21が、弾性部材52をユニットケース2cのフランジ部2f側に押圧する。その結果、弾性部材51は、弾性部材52からフランジ部2f側に押圧される。ユニットケース2cに収納された電気音響変換器20は、ロックリング20rによりユニットケース2c内に固定される。
【0047】
電気音響変換器20がユニットケース2c内に収納されたとき、弾性部材51,52は、振動板保持体21からフランジ部2f側に押圧されると同時に、フランジ部2fから振動板保持体21(振動板22)側に押圧される。つまり、弾性部材51,52は、互いに押し付けあうように内部応力が加わった状態で、ユニットケース2cと電気音響変換器20との間に挟持される。弾性部材51,52は、ユニットケース2c内に保持される。
【0048】
●コンデンサマイクロホン
次に、本発明にかかるコンデンサマイクロホン(以下、「マイクロホン」という。)について説明する。
【0049】
図3は、マイクロホンの実施の形態を示す側面視断面図である。
マイクロホン1は、先に説明したユニット2と、回路ケース3cと、コネクタ支持体31と、ホルダ32と、コンタクトプローブ33と、基板固定部34と、音声信号出力回路基板35と、出力トランス36と、連結部材37と、コネクタケース40と、出力コネクタと、を有してなる。
【0050】
回路ケース3cは、金属製である。回路ケース3cは、円筒状である。回路ケース3cは、雌ねじ部3sを備える。雌ねじ部3sは、回路ケース3cの前端側の内周面に配置される。
【0051】
回路ケース3cには、コネクタ支持体31と、ホルダ32と、コンタクトプローブ33と、基板固定部34と、音声信号出力回路基板35と、出力トランス36と、コネクタケース40と、が収納される。
【0052】
コネクタ支持体31は、絶縁材料製である。コネクタ支持体31は、ホルダ32に保持される。コネクタ支持体31は、ホルダ32を介して回路ケース3c内の前端に取り付けられている。コネクタ支持体31は、孔を備える。孔の貫通方向は、コネクタ支持体31の厚さ方向(図3の紙面左右方向)である。コンタクトプローブ33は、ユニット2のコンタクトピン29に電気的に接続される。コンタクトプローブ33は、コネクタ支持体31の孔に挿通される。
【0053】
基板固定部34は、音声信号出力回路基板35を保持する。基板固定部34は、ホルダ32と一体に設けられる。音声信号出力回路基板35は、略矩形の板状である。音声信号出力回路基板35は、基板固定部34に保持される。音声信号出力回路基板35は、基板固定部34を介して回路ケース3c内に固定される。音声信号出力回路基板35には、例えば、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)や、回路が組み込まれる。FETは、電気音響変換器20のインピーダンス変換器を構成する。回路は、例えば、振動板22と固定極24との間で生じる静電容量の変化を電気信号に変換して出力する回路である。FETのゲートは、電極引出端子28とコンタクトピン29とコンタクトプローブ33とを介して固定極24に電気的に接続される。
【0054】
出力トランス36は、センタータップ付きの2次コイルを有する。出力トランス36は、音声信号出力回路基板35からの信号のホット側とコールド側の出力インピーダンスを同一にする。
【0055】
連結部材37は、ユニットケース2cと回路ケース3cとを連結する。連結部材37は、円筒状である。連結部材37は、雄ねじ部37sを備える。雄ねじ部37sは、連結部材37の外周面に配置される。
【0056】
ユニットケース2cは、連結部材37を介して回路ケース3cに取り付けられる。連結部材37の雄ねじ部37sは、ユニットケース2cの雌ねじ部2sと回路ケース3cの雌ねじ部3sと、に嵌め込まれる。ユニットケース2cには、前述のとおり、電気音響変換器20と音響抵抗体50とが収納される。
【0057】
コネクタケース40は、黄銅合金などの金属製である。コネクタケース40は、円筒状である。出力コネクタは、コネクタケース40に収納される。出力コネクタは、例えば、JEITA RC−5236「音響機器用ラッチロック式丸型コネクタ」に規定される接地用の1番ピン(不図示)と、信号のホット側の2番ピン42とコールド側の3番ピン43と、を備える。1番ピンは、接地としてのコネクタケース40に電気的に接続される。出力コネクタは、コネクタベース41を備える。コネクタベース41は、ポリブタジエンテレフタレート樹脂などの絶縁材からなる。コネクタベース41は、円板状である。1番ピンと2番ピン42と3番ピン43とは、コネクタベース41に圧入される。1番ピンと2番ピン42と3番ピン43とは、コネクタベース41を貫通する。出力コネクタは、コネクタケース40を介して回路ケース3c内の後端側に装着される。コネクタケース40は、出力コネクタのシールドケースとしても作用する。
【0058】
電気音響変換器20は、音波導入孔2hからユニットケース2c内に入る音源からの音波により振動板22が振動することにより電気信号を出力する。マイクロホン1は、電気音響変換器20からの電気信号を、音声信号出力回路基板35と出力トランス36とコネクタケース40内の出力コネクタとを介して外部装置に出力する。
【0059】
音波導入孔2hと振動板22との間に配置された音響抵抗体50は、ユニットケース2cと電気音響変換器20とにより挟持される。そのため、音響抵抗体50は、音源からの音波を受けても振動しない。その結果、マイクロホン1の高い周波数帯域での周波数応答は、平坦となる。
【0060】
図4は、マイクロホン1の周波数応答を示すグラフである。
同図は、図7,8に示した従来のマイクロホンの周波数応答に比べて、マイクロホン1の高い周波数帯域での周波数応答が平坦であることを示す。
【0061】
●まとめ
以上説明した実施の形態によれば、ユニットケース2cと電気音響変換器20とにより挟持された音響抵抗体50は、音源からの音波を受けても振動しない。そのため、本実施の形態にかかるマイクロホン1は、マイクロホン1の高い周波数帯域での周波数応答を平坦にすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 コンデンサマイクロホン
2 コンデンサマイクロホンユニット
2c ユニットケース
2e 開口端
2f フランジ部
2h 音波導入孔
2s 雌ねじ部
20 電気音響変換器
20r ロックリング
21 振動板保持体
22 振動板
23 スペーサ
24 固定極
25 絶縁体
26 支持体
27 絶縁座
28 電極引出端子
29 コンタクトピン
3c 回路ケース
3s 雌ねじ部
31 コネクタ支持体
32 ホルダ
33 コンタクトプローブ
34 基板固定部
35 音声信号出力回路基板
36 出力トランス
37 連結部材
37s 雄ねじ部
40 コネクタケース
41 コネクタベース
42 ホット側のピン
43 コールド側のピン
50 音響抵抗体
51 弾性部材
52 弾性部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8