(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1の実施形態を
図2に基づいて詳述する。
【0013】
図2は、モータパルス制御回路5、クロック発生部300、時刻モータ駆動部100、衝撃検出部110、クロノモータ駆動部200、クロノモータ衝撃検出回路214、時刻モータ1、クロノモータ2より構成される。クロック発生部300は、発振回路3、分周回路4より構成され、時刻モータ駆動部100は、時刻モータ主駆動パルス発生回路111、時刻モータ駆動パルス選択回路101、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113、時刻モータ回転検出回路112、時刻モータドライバ回路108を含む。時刻モータ衝撃検出部110は、時刻モータロックパルス発生回路102、時刻モータ衝撃検出回路114で構成され、クロノグラフモータ駆動部200は、クロノモータ駆動パルス発生回路201、クロノモータドライバ回路208より構成される。以下、各回路の動作について説明する。
【0014】
発振回路3で生成した一定周期の信号F0は、分周回路4で分周されて周期の異なる複数の信号に変換した後、制御回路5に入力される。モータパルス制御回路5は、この周期の異なる複数の信号からそれぞれ駆動タイミング信号を生成し、時刻モータ主駆動パルス発生回路111、モータ補正駆動パルス発生回路113、時刻モータロックパルス発生回路102、クロノモータ駆動パルス発生回路201に入力する。
【0015】
時刻モータ主駆動パルス発生回路111は、時刻モータ1を駆動させるための時刻モータ主駆動パルスPSAを発生し、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113は、時刻モータ1を補正駆動するための時刻モータ補正駆動パルスPFAを発生し、時刻モータロックパルス発生回路102は、時刻モータ1を停止させるための時刻モータロックパルスPLAを発生する。
【0016】
時刻モータパルス選択回路101は時刻モータ1に対して、主駆動するときは時刻モータ主駆動パルスPSA、補正駆動するときは時刻モータ補正駆動パルスPFA、停止させるときは時刻モータロックパルスPLAを選択して、時刻モータドライバ回路108に入力する。時刻モータドライバ回路108は、時刻モータ1の駆動仕様に合わせて時刻モータパルス選択回路101で選択された駆動パルスを増幅し、時刻モータ1を駆動する。
【0017】
時刻モータ回転検出回路112は、時刻モータ1が時刻モータ主駆動パルスPSAによりモータ駆動に成功したか失敗したか、すなわちロータ10が180度回転したか否かを、ロータ10の駆動後の余振動により判定している。具体的には、ロータ10の余振動によりコイル13に発生する電流波高値を検出して回転したか否かを判定する。ロータ10が回転していないと判断した場合に時刻モータ回転検出回路112は、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に補正駆動パルスPFAの出力を要請する信号を送り、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113は時刻モータパルス選択回路101と時刻モータドライバ回路108を介して、時刻モータ主駆動パルスPSAよりも大きな駆動力を有するパル
スである時刻モータ補正駆動パルスPFAを時刻モータ1に出力し、ロータ10を駆動し回転させる。一方、ロータ10が回転していると判断した場合は、補正駆動パルスPFAが不要であり、時刻モータ回転検出回路112は時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に補正駆動パルスPFAを出力しないよう要請する信号を送る。
【0018】
時刻モータ衝撃検出回路114は、衝撃が加わった際に生じるロータ10の振動により、コイル13に発生する電流を検知し衝撃の有無を判定して、時刻モータロックパルス発生回路102に信号を伝達する。具体的には、時刻モータ1、またはそれに連結した歯車のいずれかに指針が取り付けられていて、外部から衝撃を受けると指針が移動し、これに応じて時刻モータ1のロータ10も回転するため、コイル13に電流が発生する。時刻モータ衝撃検出回路114は、この電流波形の波高値が閾値を越えると衝撃が加わったと判定し、時刻モータロックパルス発生回路102に判定結果を伝達する。衝撃が検出されると時刻モータロックパルス発生回路102は、時刻モータパルス選択回路101に時刻モータロックパルスPLAを出力して、時刻モータ1のロータ10を電磁的に停止させる。
【0019】
クロノモータ駆動パルス発生回路201は、クロノモータドライバ回路208を介してクロノモータ2にクロノモータ駆動パルスPSBを送り回転駆動する。クロノモータ2にはクロノモータ衝撃検出回路214が接続されていて、衝撃が加わった際に生じるロータ20の振動により、コイル23に発生する電流をクロノモータ衝撃検出回路214が検知し衝撃の有無を判定して、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に信号を伝達する。具体的な衝撃の検出方法については、上記時刻モータと同じであるため省略する。なお、クロノモータ2は常時動作するわけでは無いので消費電流が多くてもよく、ロータ20の回転駆動力が高くなるようクロノモータ駆動パルスPSBを設定しているので、ロータ20が回転に失敗することは無く、従って時刻モータ1のような回転検出回路を必要としない。
【0020】
次に、外部から衝撃が加わったときの回路動作について、詳しく説明する。
【0021】
図3は、外部から時計に衝撃が加わったときに動作する、時刻モータ1に係る信号のタイムチャートである。横軸は時間、
図3(a)、(c)の縦軸はコイル13に発生する電流の波高値、
図3(b)、(d)の縦軸は、パルス、衝撃判定信号の電圧である。
【0022】
また、
図4はステップモータを構成するステータ15とロータ10の関係を表した原理図である。ステップモータ1は、
図4に示されるようにコイル13とステータ15、ロータ10から構成されており、N極とS極を有するロータ10の回転方向を決定するため、ステータ15の一部には、ロータとの距離が近い部位が設けられる。ステータ15は未着磁の金属磁性部材であり、ロータ10は、近接したステータ15の導体面の広い位置と正対するように回転が静止し安定する。その安定位置は、一般に「静的安定点」と呼ばれる。以下、ステップモータ1を例にとり説明する。
【0023】
図4(a)はステータ15が未導電で、ロータ10が静的安定点で静止している様子を示している。 また、
図4(b)は、
図4(a)の状態において紙面横方向から衝撃を受けたときに、ロータ10が時計回りに回転する様子を示していて、
図4(c)は、ロータ10が反時計回りに回転する様子を示している。
図4(d)は、ステータ15に導電し発生した磁極に正対する位置で、ロータが固定されている様子を示している。
【0024】
図4(a)の状態において、紙面横方向より外部から衝撃を受けるとロータ10は、時刻モータ1、またはそれに連結した歯車のいずれかに取り付けられた指針の移動に伴って
図4(b)または
図4(c)の矢印方向に回転し、回転によってコイル13に
図3(a)のような誘起電流波形が発生し、衝撃を受けた場合には大きな波高値となり、その後は逆
極性側に小さな波高値で周期の長い波形となる。
図3(c)は、衝撃による誘起電流波形1を含んだコイル13の誘起電流波形である。
【0025】
時刻モータ衝撃検出回路114は、コイル13の誘起電流波形2[
図3(c)]と衝撃検出閾値とで電圧を比較し、衝撃検出閾値以上の誘起電流波形が生じている時に、外部からの衝撃ありと判定し、
図3(d)に示す衝撃判定信号を時刻モータロックパルス発生回路102に出力する。 これにより、直ちに時刻モータロックパルス発生回路102から
図3(b)に示した時刻モータロックパルスPLAが出力され、時刻モータ駆動パルス選択回路101、時刻モータドライバ回路108を介して時刻モータ1に出力される。
【0026】
時刻モータロックパルスPLAによってコイル13に発生する電流は、
図3(c)のb2のような波形となり、外部衝撃によるロータ10の回転によって発生する電流[
図3(c)のb1]と逆極性の電流となる。この逆極性の電流を流すことで、時刻モータロックパルスPLAによってコイル13に発生する磁界は、ロータ回転時にコイル13に発生する磁界と逆の極性となり、ロータ10の回転を
図4(d)のような状態に引き戻して、その後再び
図4(a)のような状態で停止させることで、衝撃によって回転させられるのを防止する。
【0027】
以上のように、外部から時計に衝撃が加わったときに、衝撃に伴ったロータ10の回転によってコイル13に発生する電流が衝撃検出閾値以上と判定した場合に、時刻モータドライバ回路108より時刻モータロックパルスPLAを出力し、ロータ10の回転を引き戻し、停止させることで、時刻モータ1の指針位置ズレを防止している。
【0028】
上記で述べた、外部からの衝撃を検出してロータ10の回転を停止させる動作は、時刻モータ1を駆動する前の6msの期間と、駆動している最中には行わない。その理由について次に説明する。
【0029】
時刻モータ1での衝撃検出を許可している状態では、衝撃によりコイル13に流れる誘起電流を検出しやすいようコイル13の両端の電位をオープン状態としているが、時刻モータ1を駆動する際には運針を安定させるため駆動前の6msの期間は、コイル13の両端の電位をグラウンドに固定しており、この期間に時計外部からの衝撃を検出して時刻モータロックパルスPLAを出力しないよう、時計外部からの衝撃の検出を禁止している。
【0030】
また、時刻モータ1を駆動する際、時刻モータ駆動パルスPSAによってロータ10は回転し、回転後に余振が発生する。以後、この駆動パルスによって回転を開始するタイミングから回転後の余振が停止するまでの期間を「運針期間」と称する。時刻モータ運針期間において、コイル13には、時刻モータ主駆動パルスPSAによるロータ10の回転とその余振により誘起される誘起電流が流れている。このとき、ロータ10の回転とその余振によってコイル13に流れる電流を、衝撃検出回路114が衝撃として検出してロックパルスPLAを出力しないように、時刻モータ運針期間は衝撃検出を禁止している。
【0031】
時刻モータ1の駆動パルスと、コイル13に流れる電流と、衝撃検出禁止の期間の関係について
図5と
図6を用いて説明する。
【0032】
図5と
図6は、時刻モータの運針期間における、時刻モータ1に係る信号のタイムチャートであり、
図5はロータ10が回転した場合、
図6はロータ10が非回転の場合を示している。
【0033】
図5に示したように、時刻モータ1の運針期間は、
図5(a)の時刻モータ主駆動パルスPSAによって時刻モータ1のロータ10は回転しており、それに伴いコイル13には
図5(b)のような波形の電流が誘起される。この際、ロータ10が180度回転すると誘起電流波形に波高値の高いb1、b2の余振波形が現れ、ロータ10が回転しなかった場合は
図6(b)のごとくb1、b2の波高値は低いので、b2の発生するタイミングで時刻モータ回転検出期間[
図5(c)]を設けて、b2の波高値が回転判定閾値を越えたか否かにより、ロータ10の回転を判断する。つまり、時刻モータ回転検出回路112は、回転検出期間中に回転判定閾値を越えるb2の波高値を検出することでロータ10が回転したと判定し、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に
図5(d)の回転判定信号「1」を伝達し、時刻モータ補正駆動パルスPFAを時刻モータ1に出力せずに運針を終了する。
【0034】
また、回転検出期間にb2の波高値がロータ回転判定閾値を越えなかった場合[
図6(b)]には時刻モータ回転検出回路112は、ロータ10が非回転と判定し時刻モータ回転判定信号[
図6(d)]として「0」を時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に伝達する。これにより、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113は時刻モータ1に時刻モータ補正駆動パルスPFAを印加し[
図6(e)]、ロータ10を強制的に回転させる。
【0035】
このように、時刻モータ1の運針期間にはコイル13に
図5(b)、
図6(b)のような誘起電流が流れており、時刻モータ衝撃検出回路114が動作していると運針による誘起電流を衝撃として誤検出してしまう。この誤検出を防止するため、時刻モータ主駆動パルスPSAの印加開始から誘起電流波形が収束するまでの期間、時計外部からの衝撃の検出を禁止している。この期間と、時刻モータ主駆動パルス印加前の6ms期間を合わせて、時刻モータ衝撃検出禁止期間[
図5(f)、
図6(f))として設け、時刻モータ衝撃検出回路114の動作を禁止している。
【0036】
図7は、衝撃検出禁止期間を「運針前衝撃検出禁止期間SK1」と「運針パルス出力期間SK2」と「回転検出期間SK3」と「運針後衝撃検出禁止期間SK4」の4つの期間に分解したタイムチャートであり、どの期間に衝撃が発生したかによって、指針位置ズレが発生するか否か、また指針位置ズレの発生メカニズムが異なる。
【0037】
運針前衝撃検出禁止期間SK1は、時刻モータ主駆動パルスPSAをコイル13に印加する前に、ロータ10を安定して駆動させるため、衝撃の検出を禁止しコイル13の両端の電位を開放状態から固定状態に切り替えている期間[
図7(e)の信号が1の期間]であり、運針パルス出力期間SK2は、駆動パルスを出力し、コイル13に電流を流すことでロータ10を回転させている期間[
図7(f)の信号が1の期間]である。
【0038】
回転検出期間SK3は、ロータ10の余振によってコイル13に流れる電流を検出することでロータ10が回転に成功したか否かを判定している期間[
図7(g)の信号が1の期間]であり、運針後衝撃検出禁止期間SK4は、時刻モータ1の運針と回転検出を行った後のロータ10の余振を時刻モータ衝撃検出回路114が検出するのを防止している期間[
図7(h)の信号が1の期間]のことをいう。
【0039】
上記4つの期間における時計外部からの衝撃によって発生する指針位置ズレについて以下に説明する。
【0040】
図8は、本発明を実施せず時刻モータ衝撃検出禁止期間に時計外部から衝撃が発生した場合に、指針位置ズレが発生するまでの過程を示したフローチャートである。
【0041】
まず、時刻モータ運針の開始タイミング[
図5、
図6のs1]の6ms前に時刻モータの衝撃検出を禁止する処理[FP1]が行われ、時刻モータ主駆動パルスPSA出力まで[運針前衝撃検出期間SK1]に外部より衝撃がなかった場合[FP2:N]はPSAに
より時刻モータ1は正常に駆動され、時刻モータ1の回転検出へ移行する。時刻モータ回転検出開始後、時刻モータ1が回転に成功した場合[FP3:Y]は、時刻モータ1の衝撃検出を許可する処理をして、指針位置ズレがない状態でフローを終了する。
【0042】
時刻モータ回転検出により回転に失敗したことが判明した場合に[FP3:N]、時刻モータ回転検出終了後からPFAを出力するまでの期間である回転検出期間SK3に、外部からの衝撃がなければ[FP4:N]PFAが出力され時刻モータ1を回転させるが、衝撃が印加された場合は[FP4:Y]PFAが出力されず、時刻モータ1を回転補正できないため位置ズレが発生する。
【0043】
時刻モータ補正駆動パルスPFA出力後から時刻モータ1の衝撃検出を許可するまでの期間である運針後衝撃検出期間SK4に、外部からの衝撃がなければ[FP5:N]指針の位置ズレが生じることはないが[END(a)]、衝撃が印加された場合は[FP5:Y]、コイル13の両端が開放されているため磁気的な制動が利かず、ロータ10が動き指針の位置ズレが発生する。
【0044】
時刻モータ衝撃検出禁止処理[FP1]後、時刻モータ主駆動パルスPSA出力までの期間である運針前衝撃検出期間SK1に外部衝撃があり[FP2:Y]、その衝撃によるロータ10の回転方向が正転方向であった場合[FP9:正転]、静的安定点からずれてロータ10が静止したところに駆動パルスが印加されるため、充分な駆動力が得られず、時刻モータ主駆動パルスPSAによる時刻モータ1の回転に失敗する[FP10]。
【0045】
ただし、この場合、時刻モータ回転検出回路112が回転失敗と判定し、時刻モータ補正駆動パルスPFAが出力されるため時刻モータ1は補正回転され、その後のフローはPFA出力までに衝撃がなかった場合と同様となる。
【0046】
時刻モータ主駆動パルスPSA出力の6ms前からPSA出力までの期間である運針前衝撃検出期間SK1に外部衝撃があり[FP2:Y]、その衝撃によるロータ10の回転方向が逆転方向であった場合は[FP9:逆転]、ロータ10とステータ15との磁極の位置関係から、時刻モータ主駆動パルスPSAが加わることによって時刻モータ1は逆転し[FP11]指針位置ズレが発生する[FP12]。
【0047】
その後、時刻モータ回転検出回路112が、正常にロータ10が回転しなかったことを検出し、時刻モータ補正駆動パルスPFBは出力されるが、すでにロータ10は逆転方向に回ってしまっているので、指針位置ズレを正常位置に戻す事はできず、指針位置がずれた状態でフローを終了する。
【0048】
以上のように、時刻モータ衝撃検出禁止期間の中で、時刻モータ主駆動パルス出力前に衝撃が発生した場合、回転検出期間に衝撃が発生した場合、そして、フォローパルス出力後に衝撃が発生した場合においてそれぞれ指針位置狂いズレが発生する。
【0049】
[運針前衝撃検出禁止期間SK1に衝撃が発生した場合]
まず、運針前衝撃検出禁止期間SK1に時計外部から衝撃が発生した場合に、衝撃によってロータ10が回転して指針位置ズレが発生するメカニズムについて説明する[
図8のEND(d)]。
【0050】
運針前衝撃検出禁止期間SK1に時計外部から衝撃があった場合の時刻モータ1に係る信号のタイムチャートを
図9に示す。
【0051】
また
図10、
図11は運針前衝撃検出禁止期間SK1に時計外部から衝撃を受けたとき
の、ステータ15とロータ10の関係を表した原理図であり、
図10(a)は
図4(a)の状態において衝撃を受けたときに、ロータ10が時計回りに回転する様子、
図10(b)は、
図10(a)においてロータ回転中に時刻モータ主駆動パルスPSAが印加されたときのロータ10の回転位置を示した図であり、
図10(c)は、
図10(b)において時刻モータ主駆動パルスPSAによりステータ15に発生する磁極を示した図である。
図10(d)は、
図10(c)においてステータ15の磁極により回転するロータ10を示した図である。
【0052】
図11(a)は
図4(a)の状態において衝撃を受けたときに、ロータ10が反時計回りに回転する様子、
図11(b)は、
図11(a)においてロータ回転中に時刻モータ主駆動パルスPSAが印加されたときのロータ10の回転位置を示した図であり、
図11(c)は、
図11(b)において時刻モータ主駆動パルスPSAによりステータ15に発生する磁極を示した図である。
図11(d)は、
図11(c)においてステータ15の磁極により回転するロータ10を示した図である。
【0053】
運針前衝撃検出禁止期間SK1に時計外部から衝撃を受けた場合、ロータ10は衝撃によって
図10(a)もしくは
図11(a)の矢印方向に回転する。衝撃によってロータ10が
図10(a)の矢印方向に回転し、
図10(b)のような状態で時刻モータ駆動タイミング[
図9のs1]に到達した場合、時刻モータ主駆動パルスPSA[
図9(a)]によって
図10(c)に示すような磁界がステータ15に発生するため、その磁界とロータ10の磁極とが反発し、
図10(d)の矢印方向である時計回りに、ロータ10が回転しようとする。このとき、静的安定点で停止している状態に対して時刻モータ主駆動パルスPSAを時刻モータ1に印加するよりも、ステータ15とロータ10の同極同士が正対している面の距離が大きくなるため反発力が低下して駆動トルクが弱まり、回転力不足によって時刻モータ主駆動パルスPSAでの回転に失敗する可能性がある。
【0054】
また、衝撃によってロータ10が
図11(a)の矢印方向に回転し、
図11(b)のような状態で時刻モータ駆動タイミング[
図9のs1]に到達した場合、時刻モータ主駆動パルスPSAによって
図11(c)に示すような磁界がステータ15に発生するため、その磁界とロータ10の磁極とが反発し、
図11(d)の矢印方向にロータ10が回転する。この回転は、静的安定点で停止している状態に対して時刻モータ主駆動パルスPSAを時刻モータ1に印加した場合の回転方向とは逆方向であり、指針位置がずれてしまい、指針位置のズレに対して補正をかけることは出来ない。
[運針パルス出力期間SK2に衝撃が発生した場合]
次に、運針パルス出力期間SK2に時計外部から衝撃が発生した場合について説明する[
図8のEND(a)]。
【0055】
図12は、時刻モータ運針パルス出力期間SK2に外部から時計に衝撃が加わったときにコイル13に発生する誘起電流波形と、時刻モータ運針期間に動作する時刻モータ1に係る信号を示したタイムチャートであり、
図12(a)は時刻モータ主駆動パルスPSA、
図12(b)は時刻モータ主駆動パルスPSA出力中に時計外部から衝撃が加わり、ロータ10が回転に成功した場合に時刻モータに誘起される時刻モータ誘起電流波形1、
図12(c)は時刻モータ主駆動パルスPSA出力中に時計外部から衝撃が加わり、ロータ10が回転に失敗した場合に時刻モータに誘起される時刻モータ誘起電流波形2、
図12(d)は時刻モータ補正駆動パルスPFA出力中に時計外部から衝撃が加わり、時刻モータに誘起される時刻モータ誘起電流波形3、
図12(e)は時刻モータ回転検出期間[信号が1の期間]、
図12(f)は時刻モータ補正駆動パルスPFA、
図12(g)は、時刻モータ運針期間に対し設定している衝撃検出禁止期間[信号が1の期間]を示している。
【0056】
時刻モータ運針パルス出力期間SK2において、時刻モータ主駆動パルスPSA出力中
のss1のタイミングで衝撃があった場合に、ロータ10が回転しているときに衝撃が加わることによって、ロータ10の回転速度が低下し、ロータ10が逆転することがある。この結果、ロータ10が止まることなく回転に成功した場合の誘起電流による波形は
図12(b)であり、回転に失敗した場合の誘起電流波形は
図12(c)のような波形となる。
【0057】
回転に成功した場合は、時刻モータ回転検出期間[
図12(e)]において、時刻モータ誘起電流波形1が回転検出閾値を越えるため[
図12(b)のb2]時刻モータ回転検出回路112は、ロータ10が回転したことを検出することができ、時刻モータ補正駆動パルスPFA[
図12(f)]を出力せずに駆動を終了する。回転に失敗した場合には時刻モータ誘起電流波形1が回転検出閾値を越えないため、時刻モータ回転検出回路112は回転電流波形が未検出と判定することができ[
図12(c)、b2波形なし]、時刻モータ補正駆動パルスPFA[
図12(f)]が出力される。
【0058】
このように、時刻モータ運針パルス出力期間SK2に時計外部から衝撃が加わった場合は、時刻モータ1の回転の検出結果に応じて時刻モータ補正駆動パルスPFAが出力されるため、SK2に衝撃がない場合と大差なく実行され、指針位置のズレが生じることはない。
【0059】
また、時刻モータ補正駆動パルスPFA出力中にsf1のタイミングで時計外部から衝撃があった場合には
図12(d)のような波形の誘起電流がコイル13に流れるが、補正駆動パルスPFA出力中のロータ10のモーメントは非常に大きく、ステータ15の磁界が長時間維持されるため、時刻モータ補正駆動パルスPFA出力中に外部からの衝撃よって指針位置ズレが起きることはない。
【0060】
[回転検出期間SK3に衝撃が発生した場合]
次に、時刻モータ1の回転検出期間SK3において時計外部から衝撃が発生した場合について説明する[
図8のEND(c)]。
【0061】
時刻モータ回転検出期間SK3において時刻モータ回転検出回路112は、コイル13に流れる電流を検出しているため、時計外部からの衝撃によってコイル13に発生する電流波形を、ロータ10が正常に回転したものとして、時刻モータ回転検出回路112が誤検出し、時刻モータ補正パルスPFAが必要であるにもかかわらず供給されないなど負荷補償機能の誤動作を引き起こす可能性がある。負荷補償機能の誤動作の発生メカニズムと、誤動作による影響について
図13を用いて詳細に説明する。
【0062】
図13は、時刻モータ1の回転検出中に時計外部より衝撃が加わった場合のタイムチャートである。なお、
図13に表される信号は
図6と同じく時刻モータ1に係る信号であり、回転検出期間TKA[
図13(c)]に衝撃が印加されている点で異なっている。
【0063】
時刻モータ1の回転検出期間TKAには、ロータ10が時刻モータ主駆動パルスPSAにより駆動された後に回転慣性で移動しているため、衝撃によりロータ10が動きやすく、コイル13に発生した衝撃による誘起電流波形[
図13(b)b3]は回転検出閾値を越えてしまう。これにより、時刻モータ回転検出回路112は、ロータ10が回転していないにもかかわらず回転したと判定し、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に回転判定信号「1」を伝達し、時刻モータ補正駆動パルスPFAを時刻モータ1に出力せずに運針を終了する。従って、時計で保持している計時時刻と指針で表示している時刻とのずれが生じてしまう。
【0064】
このように、時刻モータ主駆動パルスPSAで時刻モータ1のロータ10が回転できな
かったにもかかわらず、時刻モータ1の回転検出期間に時計外部より衝撃が与えられると、ロータ10が回転したと誤判定し、時刻モータ補正駆動パルスPFAによる補正をかけることができず、時計で保持している計時時刻と指針で表示している時刻とのズレが生じてしまい、指針位置ズレが起きることになる。
【0065】
[運針後衝撃検出禁止期間SK4に衝撃が発生した場合]
次に、時刻モータ1の運針後衝撃検出禁止期間SK4において、時計外部から衝撃が発生した場合について説明する[
図8のEND(b)]。
【0066】
運針後衝撃検出禁止期間において時計外部からの衝撃が発生した場合には、時刻モータ衝撃検出回路114が動作しておらず、衝撃によるロータ10の回転をコイル13によって検出することができない。よって、衝撃によるロータ10の回転を時刻モータロックパルスPLAによって停止することが出来ず、指針位置ズレが発生する。
【0067】
以上のように、衝撃検出禁止期間において「運針前衝撃検出禁止期間SK1」と「回転検出期間SK3」と「運針後衝撃検出禁止期間SK4」に時計外部からの衝撃が加えられると指針位置ズレが生じる事になる。「運針前衝撃検出禁止期間SK1」と「回転検出期間SK3」と「運針後衝撃検出期間SK4」における時計外部からの衝撃による指針位置ズレを防止する方法について以下にそれぞれ説明する。
【0068】
[指針位置ズレの防止方法]
時刻モータ1では衝撃の検出ができない、時刻モータ衝撃検出禁止期間においては、クロノモータ衝撃検出回路214を用いて衝撃を検出する。
【0069】
本発明の時計は、時刻モータ衝撃検出回路114とクロノモータ衝撃検出回路214の二つの衝撃検出回路を搭載しており、また時刻指針とクロノ指針を、同時に誘起電流が発生しないように別々のタイミングで駆動している。時刻モータ1の運針期間にクロノモータ2が運針することは無く、また時刻モータ運針期間に、クロノモータ2に運針による誘起電流が発生していることは無いため、時刻モータ1では衝撃を検出できない期間において、クロノモータ衝撃検出回路214を用いて、時計への衝撃を検出する。
【0070】
つまり、時刻モータ1の衝撃検出禁止期間には、クロノモータ衝撃検出回路214で外部衝撃を検出し、それ以外の期間は、時刻モータ衝撃検出回路114によって外部衝撃を検出することで、全ての期間における時計への外部衝撃を検出することが可能となる。
【0071】
以下に、時刻モータ1の衝撃検出禁止期間SK1、SK3、SK4における指針位置ズレの防止方法についてそれぞれ述べる。
【0072】
[運針前衝撃検出禁止期間SK1における指針ズレ防止]
クロノモータ衝撃検出回路214によって、時刻モータ衝撃検出禁止期間の中の時刻モータ主駆動パルスPSA出力前(運針前衝撃検出禁止期間SK1)に時計外部からの衝撃を検出した場合、時刻モータ主駆動パルスPSAの出力を禁止し、時刻モータ補正駆動パルスPFAのみで駆動することで、衝撃によってロータ10が回転している状態での時刻モータ主駆動パルスPSAによるロータ10の回転力不足ないし逆回転を防止する。
【0073】
[回転検出期間SK3における指針ズレ防止]
クロノモータ衝撃検出回路214によって、時刻モータ衝撃検出禁止期間の中の時刻モータ回転検出期間SK3に時計外部からの衝撃を検出した場合には、時刻モータ1の回転検出の結果が回転であっても非回転であっても、回転検出期間終了後に、時刻モータ1に時刻モータ補正駆動パルスPFAを出力することで強制的にロータ10を回転させ、非回
転時の補正パルスの未出力を防止する。
【0074】
[運針後衝撃検出禁止期間SK4における指針ズレ防止]
また、クロノモータ衝撃検出回路214によって、時刻モータ衝撃検出禁止期間の中の運針後衝撃検出禁止期間SK4に時計外部からの衝撃を検出した場合には時刻モータ1に時刻モータロックパルスPLAを出力し、外部衝撃によるロータ10の回転を停止させることで指針位置ズレを防止する。
【0075】
これらの方法をとることで、時刻モータ衝撃検出禁止期間に外部衝撃を検出することが可能となり、時刻モータ運針前の衝撃検出期間に時計外部から衝撃が加わった場合と、時刻モータ回転検出回路112が外部衝撃を時刻モータ1の回転として検出した場合と、時刻モータ運針後の衝撃検出禁止期間に、時計外部から衝撃が加わった場合に指針位置ズレを防止することができる。
【0076】
次に
図14〜
図19を用いて回路動作について説明する。
【0077】
図14は時刻モータ1に係る信号のタイムチャートであり、
図14(a)に示す正秒のタイミングs1で時刻モータ主駆動パルス発生回路111から出力された時刻モータ主駆動パルスPSAは、時刻モータパルス選択回路101及び時刻モータドライバ回路108を介してコイル13へ出力され、ロータ10を駆動する。
【0078】
時刻モータ回転検出回路112は、時刻モータ回転検出期間TKA[
図14(c)]の間にコイル13に生じる誘起電流を検出し、ロータ10の回転の成功/失敗を判定し、回転判定信号を、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に伝達する。
【0079】
このとき、時刻モータ主駆動パルスPSAで駆動された際の運針を安定化し、時刻モータ主駆動パルスPSAによるロータ10の回転波形を時刻モータ衝撃検出回路114で誤検出することを防止するため、時刻モータ1の運針の数6ms前から運針の10ms後までの期間を、
図14(f)のように時刻モータ衝撃検出禁止期間として設け、この期間、時刻モータ衝撃検出回路114は衝撃の検出を停止し、コイルの両端の電位を固定している。
【0080】
図15は、外部から時計に衝撃が加わったときの時刻モータ1に係る信号のタイムチャートであり、
図15(a)は衝撃を検出することで時刻モータ1へ出力される時刻モータロックパルスPLAであり、
図15(b)は衝撃と時刻モータロックパルスPLAによってコイル13に発生する誘起電流波形であり、
図15(c)は衝撃を検出した際に「1」が伝達される衝撃判定信号であり、
図15(d)は時刻モータロックパルスPLA出力後に設定している衝撃検出禁止期間を示している。
【0081】
また、
図16は、時刻モータ主駆動パルスPSAに係る信号と、全駆動期間において衝撃検出を、時刻モータ1で検出するか、クロノモータ2で検出するか、を示すタイムチャートである。
図16(a)は、時刻モータ主駆動パルスPSAであり、
図16(b)は時刻モータ主駆動パルスPSAによる誘起電流波形であり、
図16(c)は時刻モータ主駆動パルスPSAによる回転を判定する回転検出期間であり、
図16(d)は時刻モータ1の駆動に伴い時刻モータよる衝撃の検出を禁止している時刻モータ衝撃検出禁止期間を示している。
図16(e)は、時刻モータ1に対し印加された衝撃を、時刻モータ衝撃検出回路114により検出する期間を時刻モータ衝撃自己検出期間TAA、クロノモータ衝撃検出回路214で検出する期間を時刻モータ衝撃非自己検出期間TABとし、時刻モータ1の駆動サイクルと対比して示している。ここで、TAAは時刻モータ衝撃検出禁止期間TLSと同期間である。
【0082】
まず、時刻モータ衝撃自己検出期間TAAにおいて、時計外部から衝撃が加わった場合の回路動作について
図15を用いて説明する。
【0083】
時刻モータ衝撃自己検出期間TAAにおいて、時刻モータ衝撃検出回路114は、コイル13の誘起電流波形[
図15(b)]と衝撃検出閾値とで電圧を比較しており、衝撃検出閾値以上の誘起電圧波形が生じている時に、外部からの衝撃ありと判定し、
図15(c)に示す衝撃判定信号を時刻モータロックパルス発生回路102に出力する。これにより、直ちに時刻モータロックパルス発生回路102から
図15(a)に示した時刻モータロックパルスPLAを出力し、時刻モータパルス選択回路113を介して時刻モータドライバ回路108から時刻モータロックパルスPLAが時刻モータ1に出力され、ロータ10の振動が停止し、ロータ10が衝撃によって回転させられるのを防止する。
【0084】
時刻モータロックパルスPLA出力後にはロータ10の振動が残るため、時刻モータ衝撃検出回路114が作動したままだとこの余振を衝撃によるものと誤判定してしまうため、衝撃検出直後から時刻モータの衝撃検出禁止期間TLSが始まる。さらに、時刻モータロックパルスPLAの出力終了後は、ロータ10を停止させる動作の余振によりコイル13に
図15(b)のb1のような誘起電流波形が発生するため、この電流を衝撃として検出しないよう、時刻モータロックパルスPLA出力後、ロータ10の余振が納まるまでの10msの期間を
図15(d)のように、衝撃検出禁止期間TLSとして設けている。この衝撃検出禁止期間TLSにおいて時刻モータ衝撃検出回路114は、衝撃検出を停止する。
【0085】
次に、時刻モータ衝撃非自己検出期間TABにおいて、時計外部から衝撃が加わった場合の回路動作について
図17、
図18、
図19を用いて説明する。
【0086】
[運針前衝撃検出禁止期間SK1において衝撃検出した場合の回路動作]
図17は、時刻モータ衝撃非自己検出期間TAB、特に時刻モータ駆動パルスPSA出力前の期間である運針前衝撃検出期間SK1に外部から衝撃を受けたときの回路動作を示すタイムチャートである。
図17(a)〜(f)は
図9と同じ信号であり、
図17(g)は時計外部からの衝撃によってクロノモータ2に発生する誘起電流波形、
図17(h)はクロノモータ衝撃検出回路214によって時計への衝撃ありと判定した場合に「1」を伝達する衝撃判定信号である。
【0087】
時刻モータ駆動パルスPSA出力前の6ms間に外部からの衝撃があると、クロノ指針が外部衝撃によって移動するためクロノ指針に連結しているクロノモータ2のロータ20が振動し、これによりコイル23で電流が誘起され、
図17(g)に示すg2のようなクロノモータ誘起電流波形が生じる。一方、
図17(b)は、コイル13に流れる誘起電流の波形を示しており、
図17(b)のb4のような波形が出ている期間は、ロータ10は回転しており、
図10(b)ないし
図11(b)のような状態となっている。これらの状態でタイムチャート(
図17)のs1タイミングに到達し時刻モータ主駆動パルスPSAが出力された場合、先に説明したように時刻モータ1の駆動力不足によるロータ10の回転の失敗や逆回転を誘発する。
【0088】
しかし、クロノモータ誘起電流波形の電圧が衝撃検出閾値電圧を越えるため、クロノモータ衝撃検出回路214から衝撃判定信号「1」が時刻モータ主駆動パルス発生回路111に入力されることで、時刻モータ主駆動パルスPSAが出力されずに時刻モータ補正駆動パルスPFA[
図17(e)]が時刻モータ1に出力されるため、ロータ10が駆動され回転に成功する。時刻モータ補正駆動パルスPFAの出力が終了すると、ロータ10の振動が収まると推測される一定期間、例えば10ms経過後、時刻モータ衝撃自己検出期
間TAAに移行する。
【0089】
[回転検出期間SK3において衝撃検出した場合の回路動作]
図18は、時刻モータ衝撃非自己検出期間TAB、特に時刻モータ回転検出期間SK3に外部から衝撃を受けたときの回路動作を示すタイムチャートであり、
図17と信号名は同じである。
【0090】
時刻モータ回転検出期間SK3に外部からの衝撃があると、クロノ指針が外部衝撃によって移動するためクロノ指針に連結しているクロノモータ2のロータ20が振動し、これによりコイル23で電流が誘起され、
図18(g)に示すg2のようなクロノモータ誘起電流波形が生じる。
図18(b)は、時刻モータ1のコイル13に流れる誘起電流の波形を示しており、衝撃が加わったSTの時点において時刻モータ1は回転検出を実行している。この衝撃に伴い、時刻指針が衝撃により移動するためロータ10が振動することで、時刻モータ1にb3のような誘起電流波形が発生し、誘起電流波形の電圧が回転検出閾値の電圧を越え、時刻モータ回転検出回路112は、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に回転判定信号「1」を伝達する。その一方で同じ衝撃により、クロノモータ誘起電流波形の電圧が衝撃検出閾値電圧を越えるため、クロノモータ衝撃検出回路214から衝撃判定信号「1」が時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に入力される。
【0091】
回転判定信号「1」が入力されると、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113は時刻モータ補正駆動パルスPFAを出力しないが、クロノモータ衝撃判定信号「1」が入力された場合は、こちらの信号を優先して時刻モータ補正駆動パルスPFA[
図18(e)]が時刻モータ1に出力される。これにより時刻モータ1のロータ10が回転していない場合に時計外部からの衝撃によって回転判定信号「1」が伝達されたとしても、ロータ10を補正駆動パルスで駆動し、時刻モータ1の回転に成功する。時刻モータ補正駆動パルスPFAの出力が終了すると、ロータ10の振動が収まると推測される一定期間、例えば10ms経過後、時刻モータ衝撃自己検出期間TAAに移行する。
【0092】
[運針後衝撃検出禁止期間SK4において衝撃検出した場合の回路動作]
図19は、時刻モータ衝撃非自己検出期間TAB、特に時刻モータ補正駆動パルスPFA出力後に外部から衝撃を受けたときの回路動作を示すタイムチャートである。
図19(a)〜(h)は
図18と信号名が同じであり説明を省略する。
図19(i)は、クロノモータ衝撃検出回路214が時計への衝撃ありと判定したときに、時刻モータ1に出力する時刻モータロックパルスPLAである。
【0093】
時刻モータ補正駆動パルスPFA出力後から、補正パルスによる回転の余振が収まるまでの時刻モータ運針後衝撃検出禁止期間SK4に、外部からの衝撃があると、クロノ指針が移動するためクロノ指針に連結しているクロノモータ2のロータ20が振動し、これによりコイル23で電流が誘起され、
図19(g)に示すg2のようなクロノモータ誘起電流波形が生じる。このクロノモータ誘起電流波形の電圧が衝撃検出閾値電圧を越えるため、クロノモータ衝撃検出回路214から衝撃判定信号「1」が時刻モータロックパルス発生回路102に入力されることで、時刻モータロックパルスPLA[
図19(i)]が時刻モータ1に出力されロータ10の回転を停止させることで、時計外部からの衝撃によってロータ10が回転させられるのを防止する。
【0094】
以上のように、時刻モータ1で衝撃を検出できない期間にはクロノモータ2で衝撃を検出し、衝撃を検出した場合は時刻モータ1の運針状況に応じて、時刻モータ主駆動パルスPSAを出力せず、回転検出結果を問わず時刻モータ補正駆動パルスPFAを出力する制御をすることで、時刻モータ衝撃検出禁止期間の衝撃による時刻モータの指針位置ズレを防止することができる。
【0095】
図20は、本発明における時刻モータ衝撃検出禁止期間における動作の流れを示したフローチャートである。
【0096】
まず、時刻モータ運針タイミングの6ms前にクロノモータ2による衝撃検出を許可する処理[FP13]を行ない、その直後に時刻モータ1による衝撃検出を禁止する処理[FP1]が行われ、運針前衝撃検出期間SK1に移行する。時刻モータ主駆動パルスPSA出力までの、運針前衝撃検出期間SK1にクロノモータ衝撃検出回路が衝撃なしと判定した場合[FPN2:N]は時刻モータ主駆動パルスPSAを出力し、時刻モータ1の回転検出[FP3]へ移行する。
【0097】
PSAによる時刻モータ1の回転に成功したと判定した場合[FP3:Y]は回転検出期間SK3にクロノモータ衝撃検出回路214が衝撃を検出したか否かの判定[FPN4]に移行する。回転検出期間SK3にクロノモータ衝撃検出回路214が衝撃を検出しなかったと判定した場合[FPN4:N]時刻モータ1による衝撃検出を許可し、その直後にクロノモータ2による衝撃検出を禁止し、フローを終了する。
【0098】
時刻モータ主駆動パルスPSA出力までの、運針前衝撃検出期間SK1にクロノモータ衝撃検出回路214が衝撃ありと判定した場合[FPN2:Y]と、PSAによる時刻モータ1の回転に失敗したと判定した場合[FP3:Y]と、回転検出期間SK3にクロノモータ衝撃検出回路214が衝撃を検出したと判定した場合[FPN4:Y]は、時刻モータ補正駆動パルスPFAの出力[FP14]へ移行する。
【0099】
時刻モータ補正駆動パルスPFA出力後は、運針後衝撃検出禁止期間[SK4]に移行し、運針後衝撃検出禁止期間SK4にクロノモータ衝撃検出回路214が衝撃なしと判定した場合[FPN5:N]は、時刻モータ1の衝撃検出を許可し、その直後にクロノモータ2の衝撃検出を禁止し、フローを終了する。運針後衝撃検出禁止期間SK4にクロノモータ衝撃検出回路214が衝撃ありと判定した場合[FPN5:N]は、時刻モータロックパルスPLAを出力し、その後時刻モータ1の衝撃検出を許可し、その直後にクロノモータの衝撃検出を禁止し、フローを終了する。
【0100】
以上のように、本発明における第1の実施形態は、時刻モータ衝撃検出禁止期間はクロノモータ2の衝撃検出回路214で衝撃検出をしていること、時刻モータ運針前衝撃検出禁止期間SK1にクロノモータ衝撃検出回路214で衝撃を検出したときに時刻モータ主駆動パルスを出力せず時刻モータ補正駆動パルスPFAを出力すること、時刻モータ回転検出期間SK3にクロノモータ衝撃検出回路214で衝撃を検出したときに時刻モータ補正駆動パルスPFAを出力すること、時刻モータ補正駆動パルスPFA出力後の運針後衝撃検出禁止期間SK4にクロノモータ衝撃検出回路214で衝撃を検出したときは時刻モータロックパルスPLAを出力することを特徴としており、これらの処理によって、時刻モータ衝撃検出禁止期間における時計外部からの衝撃による指針位置狂いを防止している。
【0101】
次に、本発明の第2の実施形態について図面に基づき説明する。
【0102】
第1の実施形態は、時刻モータ1が駆動され回転している期間に外部から加わった衝撃を、クロノモータ2のロータ振動によって検出するが、クロノ指針の針ズレを防止するものではない。第2の実施形態は、時刻モータとクロノモータを搭載した時計において、時刻モータとクロノモータ両方の指針位置ズレを防止するものである。以下に具体例をあげ各モータの指針位置ズレ防止の方法について説明する。
【0103】
図21は第2の実施形態の回路構成を示すブロック図であり、
図2の回路構成に201のクロノモータ駆動パルス選択回路、202のクロノモータロックパルス発生回路を追加したものである。
【0104】
クロノモータ駆動パルス選択回路201はクロノモータ2に対して、駆動するときにクロノモータ駆動パルスPSB、停止させるときにクロノモータロックパルスPLBを選択して、クロノモータドライバ回路208に入力する。クロノモータロックパルス発生回路202は、クロノモータ衝撃検出回路214がクロノモータ2に衝撃有りと検出したとき、クロノモータロックパルスPLBをクロノモータ駆動パルス選択回路201に出力し、クロノモータ2の回転を静止する。
【0105】
図21は、時刻モータ1の運針期間に外部から衝撃が加わると、クロノモータ2の誘起電流波形から衝撃検出回路214で衝撃を検知し、衝撃による時刻モータ1の指針位置ズレを防止しているのは
図2と同じであるが、クロノモータ2の衝撃検出回路214で衝撃を検知すると、クロノモータ2にクロノモータロックパルスPLBを出力し、ロータ20を停止させている点に特徴がある。
【0106】
これにより、クロノモータ2の指針が衝撃で動いてしまうことを防止できるので、時刻モータ1とクロノモータ2の双方に対して、指針位置ズレを防ぐことができる。以下、外部から衝撃が加わったときの、クロノモータ2の指針位置ズレを防止する方法について説明する。
【0107】
ここで、クロノモータ2をパルス駆動する前の例えば6msの期間を「運針前衝撃検出禁止期間CSK1」と呼び、クロノモータ2をパルス駆動している期間を「運針パルス出力期間CSK2」と呼ぶ。また、クロノモータ2の駆動後にロータ20の余振が収束するまでの例えば10msを「運針後衝撃検出禁止期間CSK4」と呼ぶ。上記CSK1からCSK4にわたる期間のことをクロノモータ衝撃禁止期間という。
【0108】
外部から衝撃を受けたときのクロノモータ2に対する制御は、クロノモータ衝撃検出禁止期間とそれ以外の期間で異なる。
【0109】
クロノモータ衝撃検出禁止期間以外の期間において衝撃を受けたときは、衝撃によるロータ20の回転によってコイル23に誘起電流波形が発生する。その波高値が衝撃検出閾値以上と判定した場合に、クロノモータドライバ回路208よりロックパルスPLBを出力し、ロータ20の回転を引き戻し、静止させることで、クロノモータ2の指針位置ズレを防止する。誘起電流波形から衝撃検出し、モータロックパルスによりロータを静止させる過程は、先に説明した時刻モータの動作[
図3]と同じであるため、ここでの説明は省く。
【0110】
一方、クロノモータ衝撃検出禁止期間において衝撃を受けたときは、衝撃に伴ったロータ20の回転によってコイル23に発生する誘起電流波形が衝撃検出閾値以上と判定した後に、クロノモータロックパルスを出力しない。具体的には、クロノモータ衝撃検出期間は先に述べたようにCSK1、2、4の期間に分かれるが、CSK1、2の期間においてロックパルスPLBを出力しない。
【0111】
図22はクロノモータ運針タイミングにおける、クロノモータ2に係る信号のタイムチャートであり、クロノモータ2の駆動パルスとそれに伴いコイル23に生じる誘起電流波形、クロノモータ衝撃検出期間の時間的な関係を示している。
図22(a)に示すクロノモータ運針のタイミングsc1でクロノモータ駆動パルス発生回路211から出力されたクロノモータ駆動パルスPSBは、クロノモータパルス選択回路201及びクロノモータ
ドライバ回路208を介してコイル23へ出力され、ロータ20を駆動する。ロータ20の駆動に伴いコイル23には
図22(b)のようなクロノモータ誘起電流波形が誘起される。
【0112】
CSK1の期間では、クロノモータ2を駆動する直前に運針を安定させるため駆動前の6msにわたりコイル23の両端の電位をグラウンドに固定しているため、衝撃が生じたとしても誘起電流が生じないため衝撃検出ができない。
【0113】
CSK2の期間は、
図22(a)に示すようにクロノモータをパルス駆動している期間であり、先にも述べたようにロータ20の回転駆動力が高くなるようクロノモータ駆動パルスPSBを設定しているので、ロータ20が回転に失敗することは無く、ステータの磁力によりロータ20の動きが規制されているため、衝撃を受けたとしてもロータ20が回転する事は無く、クロノモータロックパルスPLBが不要となる。
【0114】
またCSK4の期間では、ロータ20の駆動に伴いコイル23に
図22(b)のようなクロノモータ誘起電流波形が誘起され、衝撃によるものとして誤検出してしまう。従ってこの誤検出を防ぐために、CSK4においても衝撃検出を行わない。
【0115】
従って、CSK1、2、4の期間をクロノモータ衝撃検出禁止期間として、クロノモータ衝撃検出回路214による衝撃検出を禁止している。
【0116】
図23は、時刻モータ1とクロノモータ2を交互に駆動するモータ制御方式において、衝撃の発生するタイミングに応じて、時刻モータ1とクロノモータ2のいずれの衝撃検出回路で検出を行うか示したタイムチャートである。
図23における(a)から(e)の信号は、
図14(a)から(e)と同じであるため説明を省略する。
図23(f)はクロノモータ駆動パルスPSB、
図23(g)はクロノモータ誘起電流波形、
図23(h)はクロノモータ衝撃検出禁止期間であり、それぞれ時刻モータ1の運針タイミングと対比して示している。
【0117】
図23(e)は、時刻モータ1において時刻モータ衝撃検出回路114が衝撃を検出する衝撃自己検出期間と、衝撃を検出しない衝撃非自己検出期間を示している。この衝撃非自己検出期間には、クロノモータ衝撃検出回路214が衝撃を検出する。また、
図23(h)はクロノモータ衝撃検出回路214の衝撃検出禁止期間と衝撃禁止許可期間を示している。
【0118】
図23(e)と(h)を対比したのが
図24であり、衝撃の検出期間としては、時刻モータ1が衝撃自己検出期間でクロノモータ2が衝撃検出許可期間である期間XA1[
図24(c)]、時刻モータ1が衝撃非自己検出期間でクロノモータ2が衝撃検出許可期間である期間XB1[
図24(d)]、時刻モータ1が衝撃自己検出期間でクロノモータ2が衝撃検出禁止期間である期間XC1[
図24(e)]、の3つに大別できる。このそれぞれに期間で、指針位置ズレ防止における制御の過程が異なる。各期間おける回路動作について以下に説明する。
【0119】
まず、衝撃検出期間XA1に外部から衝撃が印加されたときの動作について
図25を用いて説明する。
【0120】
図25は、衝撃検出期間XA1に外部から時計に衝撃が加わったときの時刻モータ1、クロノモータ2に係る信号のタイムチャートであり、
図25(a)は衝撃を検出することで時刻モータ1へ出力される時刻モータロックパルスPLA、
図25(b)は衝撃と時刻モータロックパルスPLAによってコイル13に発生する誘起電流波形、
図25(c)は時
刻モータ衝撃検出回路114が衝撃を検出した際に「1」が伝達される衝撃判定信号、
図25(d)は時刻モータロックパルスPLA出力後からロータの余振が収まるまで衝撃検出を禁止する時刻モータ衝撃検出禁止期間、
図25(e)は衝撃を検出することでクロノモータ2へ出力されるクロノモータロックパルスPLB、
図25(f)は衝撃とクロノモータロックパルスPLBによってコイル23に発生する誘起電流波形、
図25(g)はクロノモータ衝撃検出回路214が衝撃を検出した際に「1」が伝達されるクロノモータ衝撃判定信号、
図25(h)はクロノモータロックパルスPLBの出力後からロータ20の余振が収まるまで衝撃検出を禁止するクロノモータ衝撃検出禁止期間のタイムチャートである。
【0121】
衝撃検出期間XA1では、時刻モータ1とクロノモータ2の両方で衝撃を検出しており、外部から衝撃が印加されたときは時刻指針とクロノ指針が外部衝撃によって移動するため、時刻指針とクロノ指針それぞれに連結している時刻モータ1のロータ10、クロノモータ2のロータ20が振動し、これにより時刻モータ1のコイル13、時刻モータ2のコイル23の双方に電流が誘起され、コイル13には
図25(b)のb11、コイル23には
図25(f)のf11に示すような誘起電流波形がそれぞれ生じる。
【0122】
このとき時刻モータ側では、時刻モータ誘起電流波形の電圧が衝撃検出閾値電圧を越えるため、時刻モータ衝撃検出回路114から衝撃判定信号「1」が時刻モータロックパルス発生回路102に入力されることで、コイル13に
図25(a)に示す時刻モータロックパルスPLAが出力され、ロータ10が停止して指針の動きが止まり、衝撃による時刻モータ1の指針位置ズレを防止することができる。
【0123】
また同様にクロノモータ側でも、クロノモータ誘起電流波形の電圧も衝撃検出閾値電圧を越えるため、クロノモータ衝撃検出回路214から衝撃判定信号「1」がクロノモータロックパルス発生回路202に入力され、コイル23に
図25(e)に示すクロノモータロックパルスPLBが出力され、ロータ20が停止し指針の動きが止まり、衝撃によるクロノモータ2の指針位置ズレを防止することができる。
【0124】
上記では、時刻モータ1とクロノモータ2の両方で衝撃を検出し、それぞれが自己のモータに対してロックパルスを出力しており、衝撃検出時の制御をモータごとに完結させているが、時刻モータ1、あるいはクロノモータ2のいずれかで衝撃を検出し、両方のモータにロックパルスを出力しても良い。
【0125】
次に、衝撃検出期間XB1に外部から衝撃が印加されたときの動作について
図26を用いて説明する。
【0126】
図26は、衝撃検出期間XB1に時計外部より衝撃があった場合のタイムチャートであり、
図19に示した信号に加えて、クロノモータロックパルスPLBが追加されている。ここでは時刻モータ回転検出期間に外部から衝撃を受けたとき、回転の成否にかかわらず時刻モータ補正駆動パルスPFAを強制的に出力するとともに、クロノモータロックパルスPLBを出力する場合の動作を示している。
【0127】
衝撃検出期間XB1は時刻モータ回転検出期間であり、この期間に外部からの衝撃があると、クロノモータ側では以下のように動作し指針位置ズレを防止する。
【0128】
クロノ指針が外部衝撃によって移動するためクロノ指針に連結しているクロノモータ2のロータ20が振動し、これによりコイル23で電流が誘起され、
図26(g)に示すg2のようなクロノモータ誘起電流波形が生じる。このとき、クロノモータ誘起電流波形の電圧が衝撃検出閾値電圧を越えるため、クロノモータ衝撃検出回路214から衝撃判定信
号「1」がクロノモータロックパルス発生回路202に入力されることで、コイル23に
図26(i)に示すクロノモータロックパルスPLBが出力され、これによりロータ20が停止して指針の動きが止まり、衝撃によるクロノモータ2の指針位置ズレを防止することができる。
【0129】
一方、時刻モータ側では、衝撃が加わったSTの時点において時刻モータ1は回転検出を行っており、衝撃に伴い時刻指針が移動しロータ10が振動することで、
図26(b)に示すコイル13の誘起電流波形においてb3のような誘起電流波形が発生し、誘起電流波形の電圧が回転検出閾値の電圧を越え、時刻モータ回転検出回路112はモータの回転に成功したと誤判定し、時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に回転判定信号「1」を伝達する。
【0130】
しかし、先にも述べたように、クロノモータ衝撃検出回路214で衝撃を検出しており、衝撃があったことを示す衝撃判定信号「1」が時刻モータ補正駆動パルス発生回路113に入力され、時刻モータ補正駆動パルスPFA[
図26(e)]が時刻モータ1に出力される。これにより時刻モータ1のロータ10が回転していないにもかかわらず、衝撃により回転判定信号「1」が伝達されたとしても、ロータ10を駆動し時刻モータ1を回転させることができ、指針位置ずれを防止することが可能となる。衝撃検出期間XB1では、時刻モータ補正駆動パルスPFAに対してクロノモータ衝撃判定信号を優先して、時刻モータ補正駆動パルスPFAを出力するように制御すると良い。
【0131】
時刻モータ補正駆動パルスPFAの出力後から、ロータ10の振動が収まると推測される一定期間、例えば10msを経て時刻モータ衝撃自己検出期間TAAに移行する。
【0132】
衝撃検出期間XC1に外部より衝撃があった場合は、クロノモータ2での衝撃検出を実施せず時刻モータ1のみで衝撃検出を行い、第1の実施形態の
図16で説明した時刻モータ衝撃自己検出期間TAAに衝撃を受けたときと同じ制御になるため、ここでの説明を省略する。
【0133】
従って、本発明の第2の実施形態によれば、時刻モータ1が運針中であっても時計への衝撃の検出が可能であり、時刻モータ1の運針中に外部から加わった衝撃による時刻モータ1の指針位置ズレを防止し、かつ、外部から加わった衝撃によるクロノモータ2の指針位置ズレを防止することが可能となる。
【0134】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0135】
本発明における第3の実施形態によれば、負荷補償機能、すなわちモータを回転検出し回転不足であれば補正駆動パルスを印加してモータを回転させる機能が、時計モータ1だけで無くクロノモータ2にも付帯する場合に、外部からの衝撃を受けてもそれを検知し指針を正しい位置に保持することが可能になる。
【0136】
先に述べたように、クロノグラフの指針に子針が使われることが多く、回転モーメントが少ないため駆動に要する消費電流も少なくて済み、駆動力抑制した駆動パルスを用い回転結果により補正パルスを付加する負荷補償方式を用いることは少ない。しかし、クロノグラフの指針が大きい場合は、時刻モータ同様に負荷補償方式を用いて効率的な指針の駆動を行うことがある。第3の実施形態はこの場合にも適合し、衝撃による指針位置のズレを防止することが可能である。
【0137】
以下に、時刻モータ1とクロノモータ2両方に負荷補償回路を搭載した時計において、各モータの指針位置ズレ防止の方法について説明する。
【0138】
第3の実施形態では、クロノモータ2の衝撃検出禁止期間に外部からの衝撃があると、時刻モータ衝撃検出回路114で衝撃を検知し、クロノモータ2の運針に補正をかけることで、クロノモータ2の指針位置ズレを防止するとともに、時刻モータ1にロックパルスPLAを送りロータ10を停止させ指針の移動を抑制している点で、第2の実施形態と異なる。
【0139】
図27は第3の実施形態の回路構成を示すブロック図であり、
図21の回路構成に加えて、クロノモータ主駆動パルス発生回路211、クロノモータ回転検出回路212、クロノモータ補正駆動パルス発生回路213が追加されている。クロノモータ主駆動パルス発生回路211は、クロノモータ2を駆動させるためのクロノモータ主駆動パルスPSBを発生し、クロノモータ補正駆動パルス発生回路213は、クロノモータ2を補正駆動するためのクロノモータ補正駆動パルスPFBを発生し、クロノモータロックパルス発生回路202は、クロノモータ2を停止させるためのクロノモータロックパルスPLBを発生する。
【0140】
クロノモータパルス選択回路201はクロノモータ2に対して、主駆動するときはクロノモータ主駆動パルスPSB、補正駆動するときはクロノモータ補正駆動パルスPFB、停止させるときはクロノモータロックパルスPLBを選択して、クロノモータドライバ回路208に入力する。クロノモータドライバ回路208は、クロノモータ2の駆動仕様に合わせてクロノモータパルス選択回路201で選択されたパルスを増幅し、クロノモータ2を駆動する。
【0141】
以下、
図27に新たに付加した回路の動作を説明する。
【0142】
クロノモータ回転検出回路212は、クロノモータ2がクロノモータ主駆動パルスPSBによりモータ駆動に成功したか失敗したか、すなわちロータ20が180度回転したか否かを、ロータ20の駆動後の余振動により判定している。具体的には、ロータ20の余振動によりコイル23に発生する電流波高値を検出して回転したか否かを判定する。
【0143】
ロータ20が回転していないと判断した場合にクロノモータ回転検出回路212は、クロノモータ補正駆動パルス発生回路213に補正駆動パルスPFBの出力を要請する信号を送り、クロノモータ補正駆動パルス発生回路213はクロノモータパルス選択回路201とクロノモータドライバ回路208を介して、クロノモータ主駆動パルスPSBよりも大きな駆動力を有するクロノモータ補正駆動パルスPFBをクロノモータ2に入力し、ロータ20を駆動し回転させる。一方、ロータ20が回転していると判断した場合は、補正駆動パルスPFBが不要であり、クロノモータ回転検出回路212はクロノモータ補正駆動パルス発生回路213に補正駆動パルスPFBを出力しないよう要請する信号を送る。
【0144】
次に、外部から衝撃が加わったときの制御について説明する。
【0145】
図27における回路構成では、
図21に対してクロノモータ2の回転を検出して補正駆動パルスを付加する回路が付加されるのみであるため、クロノモータの回転検出を行う期間に衝撃を受けたときの制御方法について述べる。なお、以下ではクロノモータの回転検出期間をCSK3と呼ぶ。
【0146】
時刻モータとクロノモータの双方に衝撃検出回路と回転検出回路と補正駆動パルス発生回路を有した構成において、クロノモータ回転検出期間SK3は、衝撃の検出を時刻モータで行うとともに、クロノモータ衝撃検出回路214における衝撃検出を禁止する。ここで、CSK1、CSK2、CSK4の期間は第2の実施形態と同様の制御となるため、C
SK1からCSK4までの期間は、衝撃の検出を時刻モータで行いクロノモータ衝撃検出回路における衝撃検出を禁止する制御を行う。以下で詳しく説明する。
【0147】
図28は、クロノモータ2に係る信号のタイムチャートであり、ロータ20が非回転の場合を示している。
【0148】
クロノモータ回転検出期間CSK3には、クロノモータ誘起電流波形[
図28(b)]の波高値b2と回転判定閾値とを比較してロータ20の回転の正否判定を行っているため、クロノモータ衝撃検出回路214が動作していると、クロノモータ2の運針による誘起電流を衝撃として誤検出してしまう。この誤検出を防止するため、運針前衝撃検出禁止期間CSK1、運針パルス出力期間CSK2、クロノモータ回転検出期間CSK3、運針後衝撃検出禁止期間CSK4、をクロノモータ衝撃検出禁止期間[
図28(f)]とし、クロノモータ2による時計外部からの衝撃の検出を禁止している。
【0149】
上記の制御に加えて、CSK3の期間に加わった衝撃は、時刻モータ衝撃検出回路114を用いて検出する。これについて次に詳しく説明する。
【0150】
図27の構成において、時刻モータ衝撃検出回路114とクロノモータ衝撃検出回路214の二つの衝撃検出回路を搭載しており、時刻指針とクロノ指針は同時に誘起電流が発生しないように別々のタイミングで駆動している。従って、時刻モータ1の運針期間にクロノモータ2が運針することは無く、また時刻モータ運針期間に、クロノモータ2の運針による誘起電流が発生していることは無いため、時刻モータ1では検出できない期間における時計への衝撃はクロノモータ衝撃検出回路214を用いて検出し、クロノモータ2では検出できない期間における時計への衝撃を、時刻モータ衝撃検出回路114を用いて検出する。
【0151】
つまり、クロノモータ衝撃検出禁止期間の衝撃は、時刻モータ衝撃検出回路114で検出し、それ以外の期間は、クロノモータ衝撃検出回路114により衝撃を検出する。具体的にCSK1から4の期間の制御について説明する。
【0152】
CSK1の期間に時刻モータ衝撃検出回路114によって衝撃を検出した場合は、クロノモータ主駆動パルスPSBの出力を禁止し、クロノモータ補正駆動パルスPFBでクロノモータ2を駆動することにより、衝撃によるロータ20の回転力不足を補うとともに逆回転を防止する。
【0153】
CSK2の期間に衝撃を検出した場合には、時刻モータ1における時刻モータ主駆動パルス出力期間SK2に衝撃を受けた場合と同様であり、クロノモータ2の回転の検出結果に応じて時刻モータ補正駆動パルスPFAが出力され、CSK2の期間に衝撃がない場合と大差なく実行されるため、衝撃によって指針位置のズレが生じることはない。
【0154】
CSK3の期間に衝撃を検出した場合には、クロノモータ2の回転検出の結果が回転であっても非回転であっても、回転検出期間終了後に、クロノモータ2にクロノモータ補正駆動パルスPFBを出力することで強制的にロータ20を回転させ、非回転時の補正パルスの未出力を防止する。
【0155】
CSK4の期間に衝撃を検出した場合には、クロノモータ2にクロノモータロックパルスPLBを出力し、外部衝撃によるロータ20の回転を停止させることで指針位置狂いを防止する。
【0156】
上記のように、クロノモータ衝撃検出禁止期間にも外部からの衝撃を検出することが可
能となり、指針位置ズレを防止することができる。
【0157】
クロノモータ衝撃検出禁止期間については、クロノモータロックパルスPLB出力後にも設定しているが、こちらについては、
図16の時刻モータで示した制御過程とほぼ同じであるので、ここでの説明を省略する。
【0158】
図29は、時刻モータ主駆動パルスPSA及びクロノモータ主駆動パルスPSBをもとに、各駆動パルスに係る信号を示したタイムチャートであり、各期間に応じて時刻モータまたはクロノモータに生じた衝撃を、時刻モータ1で検出するか、クロノモータ2で検出するかを示したものである。
【0159】
図29(a)〜(e)の信号は、第1の実施形態で示した
図17(a)〜(e)と同じ信号であり、
図29(f)はクロノモータ主駆動パルスPSB、
図29(g)はクロノモータ2の誘起電流波形、
図29(h)はクロノモータ2の回転を判定するクロノモータ回転検出期間、
図29(i)はクロノモータ2による衝撃の検出を禁止しているクロノモータ衝撃検出禁止期間を示している。
【0160】
図29(j)は、クロノモータ衝撃検出回路214により衝撃検出する期間をクロノモータ衝撃自己検出期間TBB、時刻モータ衝撃検出回路114で衝撃検出する期間をクロノモータ衝撃非自己検出期間TBAとして設け、クロノモータ2の駆動サイクルと対比して示している。なお、クロノモータ衝撃自己検出期間においてはクロノモータ衝撃検出回路214を使用、クロノモータ衝撃非自己検出期間においては時刻モータ衝撃検出回路114を使用して衝撃を検出して、クロノモータ2の指針位置ズレを防止している。
【0161】
時刻モータ1とクロノモータ2の両方に負荷補償機能と指針位置狂い防止機能を搭載している時計においては、
図29(e)、(j)のように、時刻モータ1とクロノモータ2それぞれに、衝撃自己検出期間と衝撃非自己検出期間が存在している。これらを対比させ衝撃検出期間を区分したのが
図30である。
【0162】
衝撃検出期間は、時刻モータ1とクロノモータ2のどちらも衝撃自己検出期間である期間「XA2」、時刻モータ1が衝撃非自己検出期間でクロノモータ2が衝撃自己検出期間である期間「XB2」、時刻モータ1が衝撃自己検出期間でクロノモータ2が衝撃非自己検出期間である期間「XC2」、の3つに大別でき、そのいずれの期間に衝撃が加わったかにより制御が異なる。
【0163】
XA2に衝撃を受けたときの制御方法は、第2の実施形態におけるXA1に衝撃が加わったときと同じであり、XA1に衝撃を受けたときの制御方法は、第2の実施形態におけるXB1に衝撃を受けた場合と同じであるため、ここでの説明を省略する。
【0164】
次に、XC2に衝撃を受けたときの制御方法について説明する。
【0165】
XC2は、先に述べたクロノモータ衝撃禁止期間、すなわちCSK1からCSK4までの期間が主になり、ここではCSK1、CSK3、CSK4に衝撃を受けた場合を例に説明する。
【0166】
図31はCSK1の期間に、外部から衝撃を受けたときの回路動作を示すタイムチャートである。
【0167】
図31(a)は、クロノモータ主駆動パルスPSB、
図31(b)は、ロータ20の回転動作によってコイル23に発生する誘起電流波形、
図31(c)は、クロノモータ回転
検出信号、
図31(d)は、クロノモータ回転検出回路212によってクロノモータ2が回転したと判定した場合に「1」を伝達するクロノモータ回転判定信号、
図31(e)は、クロノモータ回転検出回路212によってクロノモータ1が回転失敗と判定した場合に出力されるクロノモータ補正駆動パルスPFB、
図31(f)はクロノモータ運針期間において衝撃検出を禁止しているクロノモータ衝撃検出禁止期間、
図31(g)は、時計外部からの衝撃によって時刻モータ2に発生する誘起電流波形、
図31(h)は時刻モータ衝撃検出回路114によって時計への衝撃ありと判定した場合に「1」を伝達する衝撃判定信号、
図31(i)は、時刻モータ衝撃検出回路114が衝撃を検出した場合に発生する時刻モータロックパルスPLAである。
【0168】
CSK1の期間に衝撃があると時刻モータ側では、時刻指針が外部衝撃によって移動するため時刻指針に連結している時刻モータ1のロータ10が振動し、これによりコイル13で電流が誘起され、
図31(g)に示すg2のような時刻モータ誘起電流波形が生じる。このとき、時刻モータ誘起電流波形の電圧が衝撃検出閾値電圧を越えるため、時刻モータ衝撃検出回路114から衝撃判定信号「1」が時刻モータロックパルス発生回路102に入力されることで、コイル13に
図31(i)に示す時刻モータロックパルスPLAが出力され、これによりロータ10が停止し指針の動きが止まり衝撃による時刻モータ1の指針位置ズレを防止することができる。
【0169】
一方クロノモータ側では、CSK1の期間に受けた衝撃によりロータ20が移動し、
図31(b)のようにコイル23に誘起電流の波形が生じる。このときロータ20は、
図10(b)ないし
図11(b)のような状態となっている。これらの状態で駆動パルスが出力された場合、駆動力が不足するためロータ20の回転の失敗や逆回転を誘発するが、時刻モータ衝撃検出回路114が衝撃を検出し、クロノモータ主駆動パルス発生回路211に信号を伝達することで、クロノモータ主駆動パルスPSBが出力されることがない。
【0170】
さらにこの後、ロータ20が静的安定点に停止した状態でクロノモータ補正駆動パルスPFB[
図31(e)]がクロノモータ2に出力され、ロータ20の回転に成功する。クロノモータ補正駆動パルスPFBの出力した後は、ロータ20の振動が収まると推測される一定期間、例えば10ms経過後に、クロノモータ衝撃自己検出期間TBBに移行する。
【0171】
図32は、CSK3の期間に外部から衝撃を受けたときの回路動作を示すタイムチャートである。
図32の信号名は、
図31と同じであるのでここでの説明を省略する。
【0172】
CSK3の期間に衝撃があると時刻モータ側では、CSK1と同じ処理を行いロータ10が停止させ、指針を静止させるのでここでの説明は省略する。
【0173】
クロノモータ側では、CSK3では衝撃が加わったSTの時点で回転検出を実行している。この衝撃に伴い、クロノ指針が衝撃により移動するためロータ20が振動し、クロノモータ2にb3のような誘起電流波形が発生する。 この誘起電流波形の電圧が回転検出閾値の電圧を越え、クロノモータ回転検出回路212は、クロノモータ補正駆動パルス発生回路213に回転判定信号「1」を伝達する。また、衝撃を受け時刻モータ誘起電流波形の電圧が衝撃検出閾値電圧を越えるため、時刻モータ衝撃検出回路114から衝撃判定信号「1」がクロノモータ補正駆動パルス発生回路213に入力される。
【0174】
回転判定信号「1」が入力されるとクロノモータ補正駆動パルス発生回路213は、クロノモータ補正駆動パルスPFBを出力しないように制御しているが、時刻モータ衝撃判定信号「1」が入力された場合はこちらの信号を優先してクロノモータ補正駆動パルスPFBを出力するように制御することで、クロノモータ補正駆動パルスPFB[
図32(e
)]がクロノモータ2に出力される。これによりロータ20を補正駆動し、クロノモータ2の回転に成功する。クロノモータ補正駆動パルスPFBの出力した後には、ロータ20の振動が収まると推測される一定期間、例えば10ms経過後に、クロノモータ衝撃自己検出期間TBBに移行する。
【0175】
図33は、CSK4の期間に衝撃を受けたときの回路動作を示すタイムチャートである。
図33(a)〜(i)は
図31と信号名が同じであるためここでの説明を省略する。
【0176】
図33(j)は、時刻モータ衝撃検出回路114が時計への衝撃ありと判定したときに、クロノモータ2に出力するクロノモータロックパルスPLBである。
【0177】
CSK4の期間に衝撃があると時刻モータ側では、CSK1と同じ処理を行いロータ10が停止させ、指針を静止させるのでここでの説明は省略する。
【0178】
クロノモータ側では、CSK4の期間に受けた衝撃により時刻モータ衝撃検出回路114から衝撃判定信号「1」がクロノモータロックパルス発生回路202に入力されることで、クロノモータロックパルスPLB[
図33(j)]がクロノモータ2に出力される。これによりロータ20の回転を停止させることができ、時計外部からの衝撃によってロータ20が回転させられるのを防止することができる。
【0179】
CSK4の後は、クロノモータドライバ回路208がクロノモータ2にクロノモータ主駆動パルスPSBを印加する6ms前まで、すなわち次のクロノモータ衝撃検出禁止期間に到達するまでの期間においては、ロータ20の振動によりコイル23に電流が発生できる状態にしておくため、コイル23の両端子の電位を固定せず、開放している。
【0180】
以上で説明したように、本発明の第3の実施形態によれば、時刻モータ1が運針中であっても、クロノモータ2が運針中であっても、時計への衝撃の検出が可能であり、時刻モータ1とクロノモータ2の指針位置ズレを防止することが可能である。
【0181】
次に、本発明の第4の実施形態について図面に基づき説明する。
【0182】
第2の実施形態、第3の実施形態においては、時刻モータ1とクロノモータ2の両方が衝撃自己検出期間となる衝撃検出期間XA1または衝撃検出期間XA2では、時刻モータ1とクロノモータ2の両方で衝撃を検出しそれぞれのモータに対してロックパルスを出力するか、或いはいずれか一方のモータで衝撃を検出し両方のモータにロックパルスを出力することで、衝撃による指針位置狂いを防止している。衝撃検出期間XA1または衝撃検出期間XA2は、時刻モータ1とクロノモータ2の両方が衝撃自己検出期間であり同じ意味であるので、便宜上ここではXAと呼ぶことにする。
【0183】
これに対し第4の実施形態は、衝撃検出期間XAにおいて時刻モータ1とクロノモータ2のうちの衝撃検出感度の高いモータで時計外部からの衝撃を検出し、時刻モータ1とクロノモータ2両方の指針位置ズレを防止するものである。
【0184】
以下に、具体例を挙げ、各モータの指針位置ズレ防止の方法について説明する。
【0185】
時刻モータ1の方がクロノモータ2に比べて衝撃検出感度が高い例を用いて、
図34、
図35により説明する。
【0186】
図34は時刻モータとクロノモータを搭載した時計の指針配置の一例であり、時計外部より衝撃が加わった場合の時刻秒針とクロノ指針の動きを表した図である。図中の矢印は
それぞれの指針の移動方向である。
【0187】
図35は、
図34のような指針配置の時計において、衝撃検出期間XAに衝撃が加わった場合の誘起電流波形と、誘起電流に伴って動作する信号のタイムチャートであり、(a)は衝撃によって時刻モータ1に発生する時刻モータ誘起電流波形1、(b)は時刻モータ1へ出力される時刻モータロックパルスPLA、(c)は衝撃と、時刻モータロックパルスPLAによって時刻モータ1に発生する時刻モータ誘起電流波形2、(d)は時刻モータ衝撃検出回路114が衝撃を検出した際に「1」が伝達される衝撃判定信号、(e)は衝撃によってクロノモータ2に発生するクロノモータ誘起電流波形1、(f)はクロノモータ2へ出力されるクロノモータロックパルスPLB、(g)は衝撃と、クロノモータロックパルスPLBによってクロノモータ2に発生するクロノモータ誘起電流波形2、(h)はクロノモータ衝撃検出回路214が衝撃を検出した際に「1」が伝達される衝撃判定信号、をそれぞれ示している。
【0188】
図34のように、時刻モータ秒針が、クロノモータ指針よりも大きい場合、衝撃を受けてクロノ指針より時刻秒針の方が大きく移動する。このとき、ロータの回転量も時刻モータ1の方が大きく、ステータに発生する磁界の変化も時刻モータ1の方が大きくなり、クロノモータ誘起電流1[
図35(e)]よりも時刻モータ誘起電流波形1[
図35(a)]のほうが大きくなる。従って、小さな衝撃や、距離の離れたクロノグラフモータ側に印加された衝撃であっても、時刻モータ衝撃検出回路114であれば検出が可能になる。
【0189】
また、時刻モータ誘起電流波形1の衝撃による波高値が大きくなる為、時刻モータ誘起電流が衝撃検出閾値を越えるタイミング[
図35(a)のST1]が、クロノモータ誘起電流が衝撃検出閾値を越えるタイミング[
図35(e)のST3]よりも早くなるため、クロノモータ2で衝撃を検出するよりも、時刻モータ1で衝撃を検出する方が、早く衝撃を検出することができる。従って、衝撃によってクロノモータ2が動き出して、クロノモータ2の誘起電流波形が衝撃検出閾値を越えるタイミングよりも前に、つまり回転角速度が大きくなる前に[
図35(e)のST2]、クロノモータ2にクロノモータロックパルスPLB[
図35(f)]を出力することが出来るため、衝撃によって回転するロータ20の移動量を最小限にすることができ、停止させる能力が向上する。
【0190】
図36は第4の実施形態の回路構成を示すブロック図である。
図36は、
図27の構成されるブロックと同じであるが、各ブロックから出力される信号の行き先が異なっている。各ブロックの動作について
図37を用いて説明する。
【0191】
図37は、時刻モータ主駆動パルスPSA及びクロノモータ主駆動パルスPSBを基準に、時計モータ1とクロノモータ2に対する衝撃を、時刻モータ1あるいはクロノモータ2のいずれで検出するかを示したタイムチャートである。
【0192】
図37(a)〜(j)の信号は、
図26の第3の実施形態と同じ信号であるため、ここでの説明を省略する。
【0193】
時刻モータ1とクロノモータ2の両方が衝撃自己検出期間となる衝撃検出期間XAにおいて、時刻モータ1とクロノモータ2のうちの衝撃検出感度の高い時刻モータ1で衝撃を検出するので、全体時間から見ると、時刻モータ1の衝撃検出期間[
図37(d)]のみをクロノモータ衝撃検出回路214で衝撃を検出し、それ以外の期間は全て時刻モータ衝撃検出回路114で検出することになる。
【0194】
以上で説明したように、本発明の第4の実施形態によれば、時刻モータ1とクロノモータ2の両方が衝撃自己検出期間となるXAの期間において、衝撃検出感度の高いモータで
時計外部からの衝撃を検出することで、一つのモータの衝撃検出回路で他のモータに加わる衝撃に対しても検出が可能となる。 また、時刻モータとクロノモータの衝撃検出回路を動作制御するにあたり、時刻モータの運針期間でクロノモータ衝撃検出回路114を動作させ、その期間以外は時刻モータの衝撃検出回路を動作させていればよいので、制御が簡素になり回路が小さくなる。さらに、検出感度の低いモータよりも早いタイミングで衝撃を検知できるため、針ズレ防止の性能が向上する。
【0195】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
【0196】
本発明の第5の実施形態では、時刻モータ1とクロノモータ2など、複数モータのすべてが衝撃自己検出期間となるXAの期間において、運針頻度の低いモータの衝撃検出回路で時計外部からの衝撃を検出する。
【0197】
ここでいう運針頻度とは、モータに印加される主駆動パルスの時間間隔(サイクル)の長さのことであり、サイクルの長さが長いほど運針頻度は低くなる。
【0198】
例えば、第1国の時刻を時刻指針が表示し第2国の時刻(ローカルタイム)を別のローカルタイム指針で表示している場合に、時刻指針は時分秒を表示しローカルタイム指針は時分のみの表示となることが多い。従って、時刻指針を駆動する時刻モータ1は1秒に1度運針し、ローカルタイム指針を駆動するローカルタイムモータ2は1分に1度運針する。
【0199】
これまでに説明してきたように、運針中のモータは自己の衝撃検出回路で衝撃検出することが困難であるため、他方のモータの衝撃検出回路で衝撃検出し指針位置ズレが起きないよう制御を行う。従って、両方のモータが衝撃自己検出期間となるXAの期間、つまり両方のモータが運針していない期間の衝撃検出を、運針頻度の低いローカルタイムモータ3の衝撃検出回路で行うことにより、時刻モータ1の衝撃検出回路を動作させる間隔が1分毎で済む。一方、XAの期間における衝撃検出を時刻モータ1の衝撃検出回路で行った場合は1秒ごとに回路を切換えて、ローカルタイムモータ3の衝撃検出回路を動作させることになり制御が煩雑になる。従って、第5の実施形態によれば、衝撃検出回路の制御が簡素化され、回路が小さくてすむ。
【0200】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
【0201】
本発明の第6の実施形態では、時刻モータ1とクロノモータ2など、複数モータのすべてが衝撃自己検出期間となるXAの期間において、稼働時間の少ないモータの衝撃検出回路で時計外部からの衝撃を検出する。
【0202】
ここでいう稼働時間とは、一定時間たとえば24時間における、モータの主駆動パルスの総数でも良いし、モータが動作している相時間でもよい。
【0203】
例えば、時刻モータ1とクロノモータ2を比較した場合に、時刻モータ1は24時間駆動し続け主駆動パルスの総数も多いが、クロノモータ2は長くても1時間程度の動作時間であり主駆動パルス数も時刻モータ1に比べて少ない。従って、稼働時間の少ないのはクロノモータ2であり、XAの期間においてクロノモータ2の衝撃検出回路が衝撃を検出する。
【0204】
これにより、クロノモータ2を稼動させていない多くの時間は、クロノグラフ2の衝撃検出回路で衝撃を検出するため、衝撃検出回路の切換制御が簡素化され、回路が小さくてすむ。
【0205】
また、前述の一定時間をクロノモータ2が稼動している期間としてもよい。クロノモータ2は1秒に5度運針するためクロノモータ稼動期間においては、クロノモータ2よりも時刻モータ1の方が稼働時間は短い。従って、クロノモータ稼動期間におけるXAでは、時刻モータ1の衝撃検出回路で衝撃を検出するため、衝撃検出回路の切換間隔は1秒で済む。一方、XAの期間における衝撃検出をクロノモータ2の衝撃検出回路で行った場合は0.2秒ごとに回路を切換えて、時刻モータ1の衝撃を動作させることになり制御が煩雑になる。
【0206】
上記に加えて、クロノ稼動期間が終了した後は時刻モータ1のみが稼動するため、XAでの衝撃検出をクロノモータ2の衝撃検出回路で行うようにすれば、次にクロノモータ2が稼動するまで衝撃回路の切換が不要であり、衝撃検出回路の切換制御をさらに簡素化でき、制御回路が小さくてすむ。
【0207】
従って、本発明の第6の実施形態によれば、クロノグラフ機能の使用状況に応じてモータの衝撃検出回路を切り替えることで、制御の切り替えが少なくなり、回路の制御を簡略化することが出来る。
【0208】
これまでに説明した時刻モータとクロノモータの衝撃検出禁止期間において、主駆動パルスがモータに出力される前の時間を6ms、及びモータの回転検出期間後の時間を10ms、と説明してきたが、この時間は一例であって各モータのロックパルス発生回路の動作クロックに応じて、1〜10msの範囲で定めればよい。