特許第6671212号(P6671212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6671212
(24)【登録日】2020年3月5日
(45)【発行日】2020年3月25日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200316BHJP
【FI】
   H02M7/48 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-66351(P2016-66351)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-184384(P2017-184384A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】中村 一樹
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 宣之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健一
【審査官】 小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−028785(JP,A)
【文献】 特開平11−127583(JP,A)
【文献】 特開2015−012743(JP,A)
【文献】 特開2014−020980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータをスイッチングするパワーモジュールを収納するパワーモジュールケースと、
前記パワーモジュールケースに設けられ前記パワーモジュールを制御する回路基板と、 前記パワーモジュールケースに設けられ前記パワーモジュールから前記モータへ接続されるバスバーと、
前記バスバーに流れる電流を検出する電流センサと、を備える電力変換装置において、
前記電流センサは、
前記パワーモジュールケースに埋設されたコアと、
前記回路基板に実装されたホール素子とからなり、
前記パワーモジュールケースには、
断面が長方形である前記バスバーが埋設されており、
前記バスバーの断面の長手方向の一方の延長線上に前記ホール素子が前記コアの近傍まで挿入される挿入孔が設けられ
前記バスバーの断面の長手方向の他方にコア挿入溝が形成されており、
前記ホール素子が前記挿入孔に配置され、
前記コアは、C形状で前記バスバーの断面の幅よりも広い開口部が設けられており、
前記コアは、埋設された前記バスバーを囲みつつ、前記開口部に前記ホール素子が設けられるように前記バスバーの断面の長手方向の他方から前記コア挿入溝に嵌められ、
前記コアと前記コア挿入溝は前記バスバーの断面の長手方向の他方から樹脂でモールディングされていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
前記バスバーは、該バスバーのモータ側端部に端子部を有し、前記パワーモジュールケースの側面視で、前記コアと隣接するようにオフセットした位置に前記端子部が配置されていることを特徴とする請求項1記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記挿入孔は、該挿入孔の孔口が外へ広がるテーパー面を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電力変換装置。
【請求項4】
モータをスイッチングするパワーモジュールを収納するパワーモジュールケースと、前記パワーモジュールケースに設けられ前記パワーモジュールを制御する回路基板と、前記パワーモジュールケースに設けられ前記パワーモジュールから前記モータへ接続されるバスバーと、前記バスバーに流れる電流を検出する電流センサと、を備える電力変換装置において、
前記電流センサは、前記パワーモジュールケースに埋設されたコアと、前記回路基板に実装されたホール素子とからなり、
前記パワーモジュールケースには、前記ホール素子が前記コアの近傍まで挿入される挿入孔が設けられており、
前記バスバーは、該バスバーのモータ側端部に端子部を有し、
前記パワーモジュールケースは、該パワーモジュールケースの上面に前記回路基板を備えると共に、該回路基板と前記端子部とを仕切るために該回路基板の載置方向に延長したケース延長部を有していることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリとモータの間に配置されバッテリで貯えた電力を制御してモータを駆動する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動させる電力変換装置は、各種のものが知られている(例えば、特許文献1(図2)参照)。
【0003】
特許文献1の図2に示されるように、電力変換装置は、バスバー(44)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)を流れる電流を検出する電流センサ(26、26、26)を備えている。
そして、ヒートシンク(48)に、パワーモジュール(42)がねじ止めされると共に電流センサ(26、26、26)がねじ止めされる。
【0004】
すなわち、パワーモジュール(42)をねじ止めする工程と、電流センサ(26、26、26)をねじ止めする工程が個別に発生し、組み立て時間が長くなると共に組み立てコストが嵩む。
また、電流センサ(26、26、26)が紛失しないように電流センサ(26、26、26)を管理する必要があり、管理コストが嵩む。
【0005】
電力変換装置のコストダウンが求められる中、上記した組み立てコストや管理コストが低減できるような電力変換装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−81308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電流センサに起因する組み立てコストや管理コストが低減できるような構造の電力変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、モータをスイッチングするパワーモジュールを収納するパワーモジュールケースと、
前記パワーモジュールケースに設けられ前記パワーモジュールを制御する回路基板と、 前記パワーモジュールケースに設けられ前記パワーモジュールから前記モータへ接続されるバスバーと、
前記バスバーに流れる電流を検出する電流センサと、を備える電力変換装置において、
前記電流センサは、
前記パワーモジュールケースに埋設されたコアと、
前記回路基板に実装されたホール素子とからなり、
前記パワーモジュールケースには、
断面が長方形である前記バスバーが埋設されており、
前記バスバーの断面の長手方向の一方の延長線上に前記ホール素子が前記コアの近傍まで挿入される挿入孔が設けられ
前記バスバーの断面の長手方向の他方にコア挿入溝が形成されており、
前記ホール素子が前記挿入孔に配置され、
前記コアは、C形状で前記バスバーの断面の幅よりも広い開口部が設けられており、
前記コアは、埋設された前記バスバーを囲みつつ、前記開口部に前記ホール素子が設けられるように前記バスバーの断面の長手方向の他方から前記コア挿入溝に嵌められ、
前記コアと前記コア挿入溝は前記バスバーの断面の長手方向の他方から樹脂でモールディングされていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、バスバーは、該バスバーのモータ側端部に端子部を有し、前記パワーモジュールケースの側面視で、前記コアと隣接するようにオフセットした位置に端子部が配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、挿入孔は、該挿入孔の孔口が外へ広がるテーパー面を有していることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、モータをスイッチングするパワーモジュールを収納するパワーモジュールケースと、前記パワーモジュールケースに設けられ前記パワーモジュールを制御する回路基板と、前記パワーモジュールケースに設けられ前記パワーモジュールから前記モータへ接続されるバスバーと、前記バスバーに流れる電流を検出する電流センサと、を備える電力変換装置において、
前記電流センサは、前記パワーモジュールケースに埋設されたコアと、前記回路基板に実装されたホール素子とからなり、
前記パワーモジュールケースには、前記ホール素子が前記コアの近傍まで挿入される挿入孔が設けられており、
前記バスバーは、該バスバーのモータ側端部に端子部を有し、
前記パワーモジュールケースは、該パワーモジュールケースの上面に前記回路基板を備えると共に、該回路基板と前記端子部とを仕切るために該回路基板の載置方向に延長したケース延長部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、電流センサの主要素であるコアがパワーモジュールケースに一体形成され、電流センサの他の主要素であるホール素子がコアに対応するように回路基板に実装されている。パワーモジュールケースに回路基板を取り付けるだけで、電流センサが完成する。
【0013】
仮に、電流センサが別部品であれば、別部品をパワーモジュールケースに取り付ける工数が発生するが、本発明ではこのような取り付け工数は不要となり、電力変換装置の組み立てコストを低減することができる。
また、別部品であれば紛失しないように部品を管理する必要があるが、本発明ではその虞がないため、管理コストが低減できる。
よって、本発明によれば、電流センサに起因する組み立てコストや管理コストが低減できるような構造の電力変換装置が提供される。
【0014】
請求項2に係る発明では、パワーモジュールケースの側面視で、コアと隣接するようにオフセットした位置に端子部が配置されているため、端子部を大きくすることなくコア、すなわち電流センサを構成することができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、挿入孔は、孔口に外へ広がるテーパー面を有している。テーパー面のガイド作用により、ホール素子を円滑に挿入孔へ挿入することができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、回路基板と端子部とを仕切るケース延長部を設けたので、回路基板と端子部との間の絶縁距離を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る電力変換装置の分解斜視図である。
図2】パワーモジュールケースの要部の拡大図である。
図3】電流センサの主要素であるコアの埋設手順を説明する図である。
図4】電流センサの別の主要素であるホール素子の挿入手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。図面の座標方向XYZは、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向と定義する。
【実施例】
【0019】
本発明に係る電力変換装置10は、バッテリとモータとの間に配置される。バッテリ及びモータは周知であるため、図示は省略する。モータが発電機として使用される場合は、発電された電力をバッテリに貯える。よって、本発明の電力変換装置10は、バッテリとモータとの間又は発電機とバッテリの間に配置することができる。
【0020】
図1に示すように電力変換装置10は、例えば、ロアケース11と、ミドルケース12と、アッパカバー13とで構成される筐体と、この筐体に内蔵されるコンデンサ14と、モータに接続されるモータ側バスバー15と、パワーモジュールを内蔵するパワーモジュールケース17とを備える。パワーモジュールケース17は、上面に回路基板18を備え、下面に冷却器19を備える。
【0021】
図2(a)は、図1の中に丸で囲んだ2aの要部拡大図であり、図2(b)は、図2(a)のb矢視図である。
図2(a)、図2(b)に示すように、パワーモジュールケース17にケース側バスバー21が設けられている。このケース側バスバー21は図面奥から手前に延びた後に図面で左に折り曲げられ(Y方向手前に延びた後にX方向左に折り曲げられ)、その端面が略矩形の端子部22となる。すなわち、ケース側バスバー21はモータ側へ延び、モータ側端部に端子部22を有している。
端子部22は、裏にナット23を備えており、モータ側バスバー(図1、符号15)がボルト(図4(c)、符号34)で締結可能となっている。
【0022】
このような端子部22は、逆U字形の突条部24で囲われ、この突条部24の上部がパワーモジュールケース17の上面から距離Hだけ上方(Z方向)へ張り出している。すなわち、パワーモジュールケース17は上方に延長したケース延長部25を備えている。
このケース延長部25は、図2(a)において、パワーモジュールケース17の上に取り付けられる回路基板18と端子部22との絶縁距離を稼ぐ役割を果たす。そして、突条部24の図面右側(X方向)にスロット状の挿入孔26が設けられている。
【0023】
図2(c)は、挿入孔26の中央で断面した図、すなわち、図2(b)より奥の部位での断面図(図2(a)のC−C断面図)である。
図2(c)に示すように、パワーモジュールケース17に埋設されたケース側バスバー21の真上に挿入孔26が設けられている。挿入孔26は孔口に外に(上に)広がるテーパー面27、27を有している。
そして、パワーモジュールケース17は、下部に下方へ開口するコア挿入溝28が設けられている。
【0024】
図3(a)に示すように、パワーモジュールケース17を反転して、コア挿入溝28を上にする。次に、電流センサ(図4、符号30)の主要素であるC形状のコア31をコア挿入溝28へ嵌める。すなわち、コア31でケース側バスバー21を囲うようにする。
次に、図3(b)に示すように、コア挿入溝28に樹脂32を充填する。すなわち、コア31をモールディングする。これで、コア31はパワーモジュールケース17に埋設される。
その後、パワーモジュールケース17を再反転して、挿入孔26を上に向ける。
【0025】
図4(a)に示すように、回路基板18にホール素子33が実装されている。このホール素子33を挿入孔26に挿入するようにして回路基板18を下げる。このときに、挿入孔26は孔口にテーパー面27、27を有しており、テーパー面27、27のガイド作用により、ホール素子33は円滑に挿入孔26内へ導かれる。
【0026】
図4(b)に示すように、コア31の開口部31a近傍にホール素子33が挿入される。この状態で、回路基板18はビスなどによりパワーモジュールケース17に固定される。
すなわち、パワーモジュールケース17に埋設されたコア31と、回路基板18に実装されたホール素子33とから電流センサ30が構成される。ケース側バスバー21を流れる電流の大きさをコア31及びホール素子33で検知し、得られた電流情報を回路基板18へ伝達する。
【0027】
図4(c)は、図4(b)のC−C線断面図であり、モータ側バスバー15を端子部22に当て、ボルト34で締結する。これで、ケース側バスバー21にモータ側バスバー15が電気的に接続される。
【0028】
パワーモジュールケース17は、上面に回路基板18を備えると共に、この回路基板18と端子部22とを仕切るために上方へ延長したケース延長部25を有している。回路基板18と端子部22との間の絶縁距離を増加することができる。絶縁距離が大きくなるため、回路基板18と端子部22とをさらに接近させることも可能となる。
【0029】
図4(b)で示したように、コア31がパワーモジュールケース17に一体形成され、ホール素子33がコア31に対応するように回路基板18に実装されている。パワーモジュールケース17に回路基板18を取り付けるだけで、電流センサ30が完成する。電流センサ30が別部品であれば、別部品をパワーモジュールケース17に取り付ける工数が発生するが、本発明ではこのような取り付け工数は不要である。別部品であれば欠品が起こらないように部品管理が不可欠となるが、本発明では欠品の虞がないため、部品管理は不要である。
よって、本発明によれば、電流センサ30に起因する組み立てコストや管理コストが低減できる。
【0030】
また、図2(b)と図2(c)とから明らかなように、パワーモジュールケース17の側面視で、コア(図4、符号31)と隣接するように中心間距離でLだけオフセットした位置に端子部22が配置されているため、端子部22を大きくすることなく電流センサ(図4、符号30)を構成することができる。
【0031】
尚、電力変換装置10は、電動車両や、いわゆるハイブリッド車両に搭載される他、舶用や一般産業用に供することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両に搭載される電力変換装置に好適である。
【符号の説明】
【0033】
10…電力変換装置、17…パワーモジュールケース、18…回路基板、21…バスバー(ケース側バスバー)、22…端子部、25…ケース延長部、26…挿入孔、27…テーパー面、28…コア挿入溝、30…電流センサ、31…コア、31a…開口部、32…樹脂、33…ホール素子。
図1
図2
図3
図4